(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、電源コードなどを用いることなく、ワイヤレスで電力(電気エネルギー)を伝送する技術の開発が盛んとなっている。ワイヤレスで電力を伝送する方式の中でも、特に注目されている技術として、磁気共鳴方式と呼ばれるものがある。この磁気共鳴方式は2007年にマサチューセッツ工科大学の研究グループが提案したものであり、これに関連する技術は、例えば、特許文献1(特表2009−501510号公報)に開示されている。
【0003】
磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムは、送電側アンテナの共振周波数と、受電側アンテナの共振周波数とを同一とすることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うものであり、電力伝送距離を数十cm〜数mとすることが可能であることが大きな特徴の一つである。
【0004】
上記のような磁気共鳴方式のワイヤレス電力伝送システムを、電気自動車のような移動体に対する電力伝送に適用する場合は、移動体側に受電アンテナを搭載し、地中部に送電アンテナを埋設するような構成とすることが提案されている。
【0005】
例えば、特許文献2(特開2010−68657号公報)には、所定周波数の交流電力を出力する交流電力出力手段と、地面側に設けられた第1共鳴コイル、及び該第1共鳴コイルと対向配置された電気自動車搭載の第2共鳴コイルと、該第2共鳴コイルで受電された電力が充電されるバッテリとから構成されるワイヤレス電力送信装置が開示されている。
【特許文献1】特表2009−501510号公報
【特許文献2】特開2010−68657号公報
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
図1は本発明の実施形態に係るアンテナが用いられる電力伝送システムのブロック図である。なお、本発明に係るアンテナは、電力伝送システムを構成する受電側のアンテナと送電側のアンテナのいずれにも適用可能であるが、以下の実施形態においては主として送電側のアンテナに本発明のアンテナを適用した例につき説明する。
【0014】
本発明のアンテナが用いられる電力伝送システムとしては、例えば、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)などの車両への充電のためのシステムが想定されている。電力伝送システムは、上記のような車両に対して電力を非接触で伝送するため、当該車両を停車させることが可能な停車スペースに設けられる。車両充電用のスペースである当該停車スペースには、送電アンテナ105などが地中部に埋設されるような構成となっている。車両のユーザーはこの電力伝送システムが設けられている停車スペースに車両を停車させて、車両に搭載されている受電アンテナ201と、前記送電アンテナ105とを対向させることによって電力伝送システムからの電力を受電する。車両を停車スペースに停車させる際には、車両搭載の受電アンテナ201が、送電アンテナ105に対して伝送効率が良い位置関係となるようにする。
【0015】
電力伝送システムでは、電力伝送システム100側の送電アンテナ105から、受電側システム200側の受電アンテナ201へ効率的に電力を伝送する際、送電アンテナ105の共振周波数と、受電アンテナ201の共振周波数とを同一とすることで、送電側アンテナから受電側アンテナに対し、効率的にエネルギー伝達を行うようにする。
【0016】
送電側システム100におけるAC/DC変換部101は、入力される商用電源を一定の直流に変換するコンバータである。このAC/DC変換部101からの出力は高電圧発
生部102において、所定の電圧に昇圧されたりする。この高電圧発生部102で生成される電圧の設定は主制御部110から制御可能となっている。
【0017】
インバーター部103は、高電圧発生部102から供給される高電圧から所定の交流電圧を生成して、整合器104に入力する。
図2は電力伝送システムのインバーター部を示す図である。インバーター部103は、例えば
図2に示すように、フルブリッジ方式で接続されたQ
A乃至Q
Dからなる4つの電界効果トランジスタ(FET)によって構成されている。
【0018】
本実施形態においては、直列接続されたスイッチング素子Q
Aとスイッチング素子Q
Bの間の接続部T1と、直列接続されたスイッチング素子Q
Cとスイッチング素子Q
Dとの間の接続部T2との間に整合器104が接続される構成となっており、スイッチング素子Q
A
とスイッチング素子Q
Dがオンのとき、スイッチング素子Q
Bとスイッチング素子Q
Cがオ
フとされ、スイッチング素子Q
Bとスイッチング素子Q
Cがオンのとき、スイッチング素子Q
Aとスイッチング素子Q
Dがオフとされることで、接続部T1と接続部T2との間に矩形波の交流電圧を発生させる。なお、本実施形態においては、各スイッチング素子のスイッチングによって生成される矩形波の周波数の範囲は数100kHz〜数1000kHz程度である。
【0019】
上記のようなインバーター部103を構成するスイッチング素子Q
A乃至Q
Dに対する駆動信号は主制御部110から入力されるようになっている。また、インバーター部103を駆動させるための周波数は主制御部110から制御することができるようになっている。
【0020】
整合器104は、所定の回路定数を有する受動素子から構成され、インバーター部103からの出力が入力される。そして、整合器104からの出力は送電アンテナ105に供給される。整合器104を構成する受動素子の回路定数は、主制御部110からの指令に基づいて調整することができるようになっている。主制御部110は、送電アンテナ105と受電アンテナ201とが共振するように整合器104に対する指令を行う。
【0021】
送電アンテナ105は、インダクタンス成分を有するコイルから構成されており、対向するようにして配置される車両搭載の受電アンテナ201と共鳴することで、送電アンテナ105から出力される電気エネルギーを受電アンテナ201に送ることができるようになっている。
【0022】
電力伝送システム100の主制御部110はCPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理部である。この主制御部110は、図示されている主制御部110と接続される各構成と協働するように動作する。
【0023】
また、通信部120は車両側の通信部220と無線通信を行い、車両との間でデータの送受を可能にする構成である。通信部120によって受信したデータは主制御部110に転送され処理されるようになっている。また、主制御部110は所定情報を、通信部120を介して車両側に送信することができるようになっている。
【0024】
次に、車両側に設けられている構成について説明する。車両の受電側のシステムにおいて、受電アンテナ201は、送電アンテナ105と共鳴することによって、送電アンテナ105から出力される電気エネルギーを受電するものである。このような受電アンテナ201は、車両の底面部に取り付けられるようになっている。
【0025】
受電アンテナ201で受電された交流電力は、整流部202において整流され、整流された電力は充電制御部203を通してバッテリー204に蓄電されるようになっている。充電制御部203は主制御部210からの指令に基づいてバッテリー204の蓄電を制御する。また、充電制御部203はバッテリー204の残量管理なども行い得るように構成される。
【0026】
主制御部210はCPUとCPU上で動作するプログラムを保持するROMとCPUのワークエリアであるRAMなどからなる汎用の情報処理部である。この主制御部210は、図示されている主制御部210と接続される各構成と協働するように動作する。
【0027】
インターフェイス部230は、車両の運転席部に設けられ、ユーザー(運転者)に対し所定の情報などを提供したり、或いは、ユーザーからの操作・入力を受け付けたりするものであり、表示装置、ボタン類、タッチパネル、スピーカーなどで構成されるものである。ユーザーによる所定の操作が実行されると、インターフェイス部230から操作データとして主制御部210に送られ処理される。また、ユーザーに所定の情報を提供する際には、主制御部210からインターフェイス部230に対して、所定情報を表示するための表示指示データが送信される。
【0028】
また、車両側の通信部220は送電側の通信部120と無線通信を行い、送電側のシステムとの間でデータの送受を可能にする構成である。通信部220によって受信したデータは主制御部210に転送され、また、主制御部210は所定情報を通信部220を介して送電システム側に送信することができるようになっている。
【0029】
電力伝送システムで、電力を受電しようとするユーザーは、上記のような送電側のシステムが設けられている停車スペースに車両を停車させ、インターフェイス部230から充電を実行する旨の入力を行う。これを受けた主制御部210は、充電制御部203からのバッテリー204の残量を取得し、バッテリー204の充電に必要な電力量を算出する。算出された電力量と送電を依頼する旨の情報は、車両側の通信部220から送電側のシステムの通信部120に送信される。これを受信した送電側システムの主制御部110は高電圧発生部102、インバーター部103、整合器104を制御することで、車両側に電力を伝送するようになっている。
【0030】
次に、以上のように構成される電力伝送システム100で用いるアンテナの具体的な構成について説明する。以下、送電アンテナ105に本発明の構成を採用した例について説明するが、本発明のアンテナは受電アンテナ201に対しても適用し得るものである。
【0031】
図3は本発明の実施形態に係る送電アンテナ105、受電アンテナ201を構成するコイル体300を説明する図である。また、
図4は本発明の実施形態に係る送電アンテナ105を説明する図である。
図4において(A)はアンテナにおけるコイル体300とフェライト基材280とアルミニウム基材290との配置関係を斜視的に示す図であり、また(B)はアンテナにおけるコイル体300とフェライト基材280とアルミニウム基材290との配置関係を側面から見た図である。なお、
図4において、コイル体300とフェライト基材280とアルミニウム基材290などのそれぞれの構成は、不図示のケースなどに取り付けられており、図示するような配置関係が維持されるようになっている。
【0032】
コイル体300は、送電アンテナ105、受電アンテナ201における磁気共鳴アンテナ部として機能する。磁気共鳴アンテナ部は、このコイル体300のインダクタンス成分のみならず、浮游容量などに基づくキャパシタンス成分、或いは意図的に設けたキャパシタンス成分をも含むものであり、その共振周波数はインダクタンス成分およびキャパシタンス成分により決定される。
【0033】
コイル体300は、例えばガラスエポキシ樹脂のような矩形平板状の誘電性基材310と、この一面側に形成されている導電部により構成されている。より具体的には、誘電性基材310は主面として表裏の関係にある2つの面を有しており、このうち1つの面に渦巻きコイル状の導電部330がコイルとして形成されることで、送電アンテナ105にインダクタンス成分が付与される。
【0034】
まず、磁気共鳴アンテナ部のインダクタンス成分についてはコイル体300の導電部の幅、巻き数、レイアウトにより決定される。
【0035】
そして、磁気共鳴アンテナ部のキャパシタンス成分については、図示しない別体のコンデンサを設けるようにしてもよい。この場合、磁気共鳴アンテナ部のキャパシタンス成分は、前記別体のコンデンサに基づくキャパシタンス成分と、アンテナに発生する浮游容量との和になる。
【0036】
また、上記のような別体のコンデンサを設ける代わりに、磁気共鳴アンテナ部のキャパシタンス成分を、アンテナに発生する浮游容量のみにより賄うように設計することもできる。この場合、磁気共鳴アンテナ部のキャパシタンス成分は誘電性基材310の誘電率、厚さ、誘電性基材310に設けられる導電部の面積、及び導電部間の位置関係により決定される。したがって、それらのパラメータを調整することにより、キャパシタンス成分を設定し、所望の磁気共鳴アンテナ部を構成することができる。
【0037】
なお、本実施形態においては、導電部330を渦巻き状のコイルとして形成する例に基づいて説明するが、必要となるインダクタンス成分が確保することができるのであれば、渦巻き状のコイルに代えて、他の形状の導電部を用いるようにしてもよい。
【0038】
コイル体300の主面と平行に、誘電性基材310と鉛直方向に所定距離離されてフェライト基材280が配されている。フェライト基材280としては、比抵抗が大きく、透磁率が大きく、磁気ヒステリシスが小さいものが望ましい。フェライト基材280は、不図示のケース体に対して適当な手段により固着されることで、コイル体270と所定距離の空間を空けて配されるようになっている。このようなレイアウトにより、送電アンテナ105側で発生する磁力線は、フェライト基材280を透過する率が高くなり、送電アンテナ105から受電アンテナ201への電力伝送において、車両本体部を構成する金属物による磁力線への影響が軽微となる。
【0039】
また、本発明に係るアンテナにおいては、コイル体300の主面と平行に、かつ、フェライト基材280の主面と平行に、アルミニウム基材290が配されている。アルミニウム基材290は、基本的に、フェライト基材280と鉛直方向に所定距離をおいて配されるようになっている。このようなアルミニウム基材290に用いる金属材料としてはアルミニウム以外の金属を用いることも可能である。
【0040】
誘電性基材310上において、渦巻き状のコイルを形成する導電部330の内周側には最内端部331が、また、外周側には最外端部332がそれぞれ設けられている。
【0041】
誘電性基材310上の導電部330は、
図3に示すように、内端部331、最外端部332との間に電流が流されたときに、基材310上で電流が直線状に流れる直線導電部333と、内端部331、最外端部332との間に電流が流されたときに、基材310上で電流が曲線状に流れる曲線導電部334と、が混在するようになっている。
【0042】
誘電性基材310上の導電部330のうち、曲線導電部334の近傍(
図3において点
線で示される囲み部R)には磁束密度が集中する。そして、コイル体300の導電部330が曲率を有している曲線導電部334の近傍同様、フェライト基材280のコーナー部R’においても磁束密度が集中し、磁束密度が他の箇所に比べて磁束密度が高くなるが、このような磁束密度が集中するフェライト基材280のコーナー部R’では、発熱が著しくなる。
【0043】
そこで、本発明におけるアルミニウム基材290は、主面の垂線方向の、曲線導電部334の投影が形成されるフェライト基材280上の面とは接触すると共に、前記垂線方向の、直線導電部333の投影が形成されるフェライト基材280上の面とは接触しないようにされている。
【0044】
すなわち、アルミニウム基材290は、平板部291と、この平板部291の4隅から、平板部291の主面と垂直な方向に延在する4つの脚部292とを有しており、アルミニウム基材290の4つの脚部292が、フェライト基材280のコーナー部R’に接触して、フェライト基材280のコーナー部R’における発熱をアルミニウム基材290側に伝導、放散させるようにすることで、フェライト基材280の温度上昇を抑制する。
【0045】
このように、本発明に係るアンテナにおいては、曲線導電部334の投影が形成されるフェライト基材280上の面とアルミニウム基材290とは、接触するように構成されているので、本発明に係るアンテナによれば、アルミニウム基材290が放熱部材として機能することで、フェライト基材280における発熱を放散することが可能となり、フェライト基材280の温度上昇を抑制することが可能となる。
【0046】
なお、アルミニウム基材290には、さらに不図示の放熱部材を取り付けることで、フェライト基材280の温度上昇を抑制する効果をさらに高めることができる。
【0047】
以上述べたように、本発明に係るアンテナにおいては、曲線導電部の投影が形成される前記フェライト基材上の面とアルミニウム基材とは、接触するように構成されているので、本発明に係るアンテナによれば、アルミニウム基材が放熱部材として機能することで、フェライト基材における発熱を放散することが可能となり、フェライト基材の温度上昇を抑制することが可能となる。