(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
飛散する花粉のアレルゲン不活性化方法であって、請求項1から3のいずれかの花粉アレルゲン不活性化剤からの気体によって花粉アレルゲンを不活性化させることを特徴とする花粉アレルゲン不活性化方法。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の花粉アレルゲン不活性化剤は、良好に花粉の外膜を割り、破壊する性質を有し、花粉アレルゲン不活性化することができる。本発明の花粉アレルゲン不活性化剤は、花粉に直接作用することにより、花粉自体が全く無害なものとすることができるため、結果として花粉症を予防することができる。
【0018】
具体的には、花粉アレルゲンとしては、例えばスギ花粉(Cry j1、Cry j2)、ヒノキ花粉(Cha o1、Cha o2)、ブタクサ花粉(Amb a1)、ソバ花粉、などを例示することができる。例えば、スギ花粉症は、外部から鼻や目あるいは咽喉の粘膜に着床したスギ花粉により引き起こされるものであるが、花粉そのものが抗原となるのではなく、花粉の表面に存在する花粉症アレルゲンCry j1や花粉内部に存在する花粉症アレルゲンCry j2によって引き起こされる。本発明の花粉アレルゲン不活性化剤は、これら花粉アレルゲンの抗原性を低下させ、不活性化することができる。
【0019】
また、本発明の花粉アレルゲン不活性化剤による花粉破壊作用、アレルゲン不活性化作用は、花粉が蛋白質であることに由来すると考えられるため、どのような種類の花粉に対しても花粉破壊作用を発揮することができる。したがって、本発明の花粉アレルゲン不活性化剤を用いることにより、ほぼ全ての種類の花粉症を予防することができる。具体的には、例えば、スギ、ブタクサ、カモガヤ、セイタカアワダチソウ、ヨモギ、ヒノキなど各種の花粉が対象となる。
【0020】
本発明の花粉アレルゲン不活性化剤は、二酸化塩素ガス発生成分、金属イオン、アパタイト系化合物を含有する。
【0021】
二酸化塩素ガス発生成分は、二酸化塩素ガスを発生させるメカニズムを有する公知の成分を使用することができる。具体的には、例えば、溶媒としての水に溶存した二酸化塩素水溶液を例示することができる。二酸化塩素水溶液は、例えば、公知の方法によって生成した二酸化塩素ガスを取り出して、バブリング法などにより水に溶存させる方法によって得たものや、市販の亜塩素酸塩水溶液などを水に希釈したものなどを使用することができる。具体的には、例えば、亜塩素酸ナトリウム水溶液、亜塩素酸リチウム水溶液、亜塩素酸マグネシウム水溶液などを例示することができる。
【0022】
また、その他の二酸化塩素ガス発生成分としては、例えば、トリクロロイソシアヌル酸などを例示することができる。
【0023】
本発明の花粉アレルゲン不活性化剤に使用可能な二酸化塩素水溶液を含む市販品は、例えば、セイバーケミカルエンジニアリング社、バイオサイド・インターナショナル社、エンゲルハード社(バイオット)、インターナショナルディオキサイド社、株式会社助川化学、株式会社アマテラ、株式会社パスタライズなどから製造販売されている。
【0024】
本発明の花粉アレルゲン不活性化剤に含まれる二酸化塩素は、例えば、上記の市販品などを適宜な濃度に希釈した希釈液として使用することができる。二酸化塩素の希釈液濃度は、本発明の花粉アレルゲン不活性に使用形態に応じて適宜設定することができる。
【0025】
具体的には、本発明の花粉アレルゲン不活性化剤は、液状の状態のものを自然気化させて使用する場合には、二酸化塩素の希釈液濃度は、例えば500ppm〜5000ppmの範囲内に調製することができる。
【0026】
また、例えば、本発明の花粉アレルゲン不活性剤を散布して使用する場合には、二酸化塩素の希釈液濃度は、例えば100ppm〜1000ppmの範囲内、より好ましくは、200pp〜700ppmの範囲で調製することができる。
【0027】
さらに、例えば、本発明の花粉アレルゲン不活性化剤にゲル化剤を添加してゲル状態で使用する場合は、二酸化塩素の希釈液濃度は、2000ppm〜6000ppmの範囲内、より好ましくは、3000ppm〜5000ppmの範囲内で調製することができる。
【0028】
また、例えば、本発明の花粉アレルゲン不活性剤を、タブレット状や顆粒状などに固形化して使用する場合には、二酸化塩素の希釈液濃度は、例えば、5000ppm〜500000ppmの範囲、より好ましくは、10000ppm〜400000ppmの範囲内で調製することができる。
【0029】
例えば、上記のような二酸化塩素の希釈液を使用して、花粉アレルゲン不活性化剤の全量に対する二酸化塩素の濃度は、0.0001%〜8%(重量%、以下同様)、好ましくは、0.01%〜4%程度配合することができる。花粉アレルゲン不活性化剤の全量に対して二酸化塩素の配合量が0.0001%以下である場合、花粉アレルゲンを不活性化することが難しい場合がある。
【0030】
金属イオンは、例えば、金属微粒子として、銀、亜鉛、金、チタン、銅、錫、アルミニウム、これらの酸化物などのうちの1種または2種以上を添加することができる。しかしながら金属微粒子の場合、二酸化塩素の成分により溶解又は、結合をなすことで溶液中に分散しなければならず、これらの問題を解決する為には、混合時にイオン化若しくは、有機結合をなしており、容易に二酸化塩素の成分に分散できる状態が好ましい。なかでも、銀、亜鉛は、有機酸との溶解性に優れており、金属の持つ特性である抗菌性に優れ花粉の成分であるタンパク質との結合が容易に生じるため、特に好ましい。金属イオンの配合量は、花粉アレルゲン不活性化剤の全量に対して0.000001%〜0.01%程度、好ましくは0.00001%〜0.01%程度とすることができる。
【0031】
また、本発明の花粉アレルゲン不活性化剤に含まれる金属イオンとして、アミノ酸金属塩を添加することもできる。
【0032】
アミノ酸金属塩のアミノ酸の具体例としては、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トレオニン、トリプトファン、メチオニン、アスパラギン酸、リジン、アルギニン、ヒスチジンピドール酸、L−グルタミン酸、L−グルチム酸、L−グルチミン酸、L−グルタミン酸ラクタム、L−グルチミニン酸、L−ピロリドンカルボン酸、L−ピログルタミン酸、オキソプロリンのうちの1種または2種以上を例示することができる。これらの中でも、L−ピロリドンカルボン酸は、花粉破壊作用に優れているためより好ましい。
【0033】
アミノ酸金属塩の金属としては、例えば、銀、銅、亜鉛、錫、アルミ、チタンなどを例示することができる。アミノ酸金属は水中に分散されて、金属がイオン化した状態となる。
【0034】
アミノ酸金属塩の中でも、アミノ酸銀、アミノ酸亜鉛は、抗菌性に優れ花粉タンパク質との結合性に優れるため、特に好ましい。
【0035】
具体的には、使用するアミノ酸銀は、例えば、0.00001%〜1%の範囲、好ましくは、0.01〜0.2%の範囲のものを適宜使用することができる。本発明の花粉アレルゲン不活性化剤の全量に対しては、一応の目安として、例えば、花粉アレルゲン不活性化剤(溶液)の全量1000mlの場合には、これに対し、0.1%のアミノ酸銀を1ml〜25ml程度添加することで好ましい配合とすることができる。
【0036】
また、金属イオンとしてアミノ酸亜鉛を添加する場合も同様に0.00001%〜1%の範囲、好ましくは、0.01〜0.2%の範囲のものを適宜使用することができる。本発明の花粉アレルゲン不活性化剤の全量に対しては、一応の目安として、例えば、花粉アレルゲン不活性化剤(溶液)の全量1000mlに対し、0.1%のアミノ酸亜鉛を1ml〜25ml程度添加することで好ましい配合とすることができる。
【0037】
さらに、金属イオンとして、例えば、アセチルアセトン亜鉛錯体などを添加することもできる。アセチルアセトン亜鉛錯体を添加する場合も、その濃度などは、アミノ酸亜鉛を添加する場合などと同様に調製されたものを使用することができる。なお、この場合、希釈剤としてアルコール類を用いて溶解することが好ましい。
【0038】
このような金属イオンを加えることで、アレルゲン不活性化効果を向上させることができるとともに、自然気化によって生じた、金属イオンを含む二酸化塩素ガスによって飛散する花粉を効率的に破壊し、花粉アレルゲンを不活性化させることに寄与する。また、二酸化塩素特有の塩素臭を抑制することも可能となる。
【0039】
アパタイト系化合物には、一般式として、Ca
10(PO
4)
6X
2(ここでXはハロゲン原子や水酸基を示す)で表わされるリン酸カルシウム系アパタイトの各種のものが含まれる。例えば、水酸アパタイト:Ca
10(PO
4)
6(OH)
2や、フッ素アパタイト:Ca
10(PO
4)
6F
2などを例示することができる。
【0040】
本発明の花粉アレルゲン不活性化剤では、金属イオンがフッ素アパタイトやリン酸アパタイトなどのアパタイト系化合物によって被覆されるとともに、このアパタイト系化合物は多孔質であることから、二酸化塩素が吸着した状態となっていると考えられる。
【0041】
したがって、例えば、本発明の花粉アレルゲン不活性化剤を花粉に対して直接作用させた場合には、二酸化塩素/金属イオンが花粉に確実に接触するため、花粉の外殻を破壊し、花粉アレルゲンを確実に不活性化することができる。
【0042】
また、アパタイト系化合物としては、特に、アパタイトチタンを好ましく使用することができる。アパタイトチタンは、アパタイトを主原料として、アパタイト1:チタン1〜アパタイト99:1の割合で使用することができる。
【0043】
アパタイト系化合物も添加量の一応の目安としては、例えば、二酸化塩素希釈液1000mlの場合には、これに対し、アパタイト系化合物を10μml〜200μmlの範囲、好ましくは、50μml〜150μmlの範囲で添加することができる。
【0044】
本発明に使用することができる市販のアパタイト系化合物としては、例えば、(1)株式会社ナノウエーブ社製 アパタイト担架二酸化チタン 商品名:ハーフメタル、(2)丸武産業株式会社製 二酸化チタン被膜アパタイト 商品名:アパテック、(3)フカヤ株式会社社製 フッ化アパタイト被覆二酸化チタン 商品名:フェイスガード、(4)昭和電工株式会社製 リン酸アパタイト二酸化チタン 商品名:ジュピターなどを例示することができる。
【0045】
さらに、アパタイトチタンを二酸化塩素希釈液に混合する場合には、安定剤としてアルコール類を好ましく添加することができる。アルコールとしては、エタノール、イソプロピレンなどを好ましく使用することができる。アルコールの添加量の一応の目安としては、例えば、二酸化塩素希釈液1000mlの場合、これに対し、0.1ml〜100mlの範囲、好ましくは1ml〜50mlの範囲を例示することができる。
【0046】
本発明の花粉アレルゲン不活性化剤は、例えば、自然気化によって生じた二酸化塩素を含む気体によっても花粉破壊作用およびアレルゲン不活性化を発揮することができる。本発明の花粉アレルゲン不活性化剤は、アパタイト系化合物に二酸化塩素/金属イオンが吸着した状態となっているため、溶存二酸化塩素/金属イオンの急速な気化が抑制され、花粉に対して有効量の金属イオンを含む二酸化塩素ガスを継続的に発生させることができる。したがって、例えば、本発明の花粉アレルゲン不活性化剤を屋内外に配置した場合には、花粉アレルゲン不活性化剤からの気体(二酸化塩素ガス、金属イオンを含む)を継続的に発生させることで、金属イオンを含む二酸化塩素ガスと花粉とを効率的に接触させることができるため、確実に花粉の外殻を破壊し、花粉アレルゲンを確実に不活性化することができる。
【0047】
また、本発明の花粉アレルゲン不活性化剤には、継続的な金属イオンを含む二酸化塩素ガスの発生の妨げとならない各種の成分を適宜添加することができる。具体的には、花粉アレルゲン不活性化剤の急速な蒸発(二酸化塩素ガスの発生)を抑制するための添加剤として、例えば、グリセリン、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系吸水性樹脂などを適宜添加することが好ましい。これらの添加剤の添加量は特に限定されないが、例えば、二酸化塩素希釈液1000mlの場合、これに対し、1ml〜100mlの範囲、好ましくは、1ml〜50mlの範囲を例示することができる。
【0048】
デンプン系吸水性樹脂としては、例えば、デンプン/ポリアクリル酸系樹脂(三洋化成社製、粉末)などを例示することができ、合成ポリマー系吸水性樹脂としては、例えば、架橋ポリアクリル酸系樹脂(荒川化学社製、粉末)、(花王社製、粉末)、(住友精化社製、粉末)、(三菱油化社製、粉末)、イソブチレン/マレイン酸系樹脂(クラレ社製、粉末)、ポバール/ポリアクリル酸塩系樹脂(住友化学社製、粉末)などを例示することができる。
【0049】
また、本発明の花粉アレルゲン不活性化剤には、例えば、塩化アルミニウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、クエン酸、塩化カルシウム、炭酸水素ナトリウムなどの潮解性固形剤を添加することもできる。
【0050】
さらに、本発明の花粉アレルゲン不活性化剤には、ポリアクリル酸を配合することもできる。ポリアクリル酸を配合することにより、水中に分散している金属イオン(銀イオン、亜鉛イオン、チタンイオンなど)を取り込んで架橋及び分散することができるため、花粉アレルゲン不活性化剤の分散性が向上する。したがって、本発明の花粉アレルゲン不活性化剤は、ポリアクリル酸を含有する場合には、より効果的に花粉を破壊することができ、花粉アレルゲンを不活性化することができる。
【0051】
さらに、本発明の花粉アレルゲン不活性化剤には、二酸化塩素ガスの発生量を調整する固形光触媒として、例えば、リン酸アパタイト被覆酸化チタン、フッ化アパタイト被覆チタン、アパタイト混合二酸化チタン、酸化チタン(TiO
2)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化タングステン(WO
3)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO
3)、硫化カドミニウム(CdS)、チタン酸バリウム(BaTiO
3)、ニオブ酸カリウム(K
2NbO
3)、酸化鉄(Fe
2O
3)、酸化タンタル(Ta
2O
5)、酸化スズ(SnO
2)、酸化ビスマス(Bi
2O
3)、酸化ニッケル(NiO)、酸化銅(Cu
2O)、酸化ケイ素(SiO
2)、硫化モリブデン(MoS
2)、インジウム鉛(InPb)、酸化ルテニウム(RuO
2)、酸化セリウム(CeO
2)などの1種または2種以上を配合することもできる。また、これら固形光触媒に、白金(Pt)、ロジウム(Rh)、酸化ルテニウム(RuO
2 )、ニオブ(Nb)、銅(Cu)、スズ(Sn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)などの金属および/またはこれらの金属の酸化物を添加したものを使用することもできる。
【0052】
また、本発明の花粉アレルゲン不活性化剤は、例えば、イソプロピルアルコールやエチルアルコールを配合することで、蒸発を抑制して溶剤としての効果を持続させることもできる。
【0053】
さらに、本発明の花粉アレルゲン不活性化剤は、チタネートカップリング剤を含むことができる。チタネートカップリング剤としては、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルピロホスフェート)チタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネートなどを例示することができる。
【0054】
本発明の花粉アレルゲン不活性化剤は、液状、ゲル状、固形状など各種の形態で使用可能であり、花粉アレルゲン不活性化剤から発生する二酸化塩素/金属イオンを含むガスによって、花粉アレルゲンを確実に不活性化することができる。
【0055】
また、本発明の花粉アレルゲン不活性化剤は、花粉アレルゲン不活性化機能を有する各種の機能性物品や、繊維製品などに適用が可能である。
【0056】
例えば、繊維製品では、液状の状態の本発明の花粉アレルゲン不活性化剤を繊維製品に塗布、含浸などすることで、花粉症予防用の繊維製品とすることができる。具体的には、繊維製品には、例えば、顔や体を拭いたりするためのシート材や、マスク、ペット用の製品などが含まれる。
【0057】
機能性物品としては、例えば、液状の状態の本発明の花粉症予防用液剤をエアゾール・ディスペンサー容器に詰めたスプレー剤、空中散布剤、加湿器用充填液、気化器用液剤、本発明の花粉症予防用液剤を浸透させた紙(建物の壁紙など)などを例示することができる。本発明の花粉アレルゲン不活性化剤を建物の壁紙などに使用した場合には、屋内において自然気化によって生じた二酸化塩素/金属イオンを含む気体によって継続的に花粉アレルゲンを不活性化することができる。
【0058】
本発明の花粉アレルゲン不活性化剤は、例えば、化粧品、医薬品などに使用することもできる。医薬品では、例えば、軟膏など皮膚外用組成物などに好適に使用することができる。
【0059】
さらに、本発明の花粉アレルゲン不活性化剤の応用形態としては、例えば、タブレット状、顆粒状に固形化されたものを適宜な容器や袋などに入れた機能性物品を好ましく例示することができる。このような機能性物品の場合には、屋内外を問わず、所望の場所に吊り下げて使用することで、固形化された花粉アレルゲン不活性化剤から、二酸化塩素/金属イオンを含むガスを発生させて、継続的かつ効率的に花粉アレルゲンを不活性させることができる。この場合には、適宜、クエン酸や塩化カルシウムなどを配合することも考慮される。
【0060】
本発明の花粉アレルゲン不活性化剤は、以上の形態に限定されることはない。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0062】
<実施例1>二酸化塩素混合物の調製
<1>二酸化塩素混合物Aの調製
以下の(1)〜(5)を混合し、二酸化塩素混合物Aを調整した。
(1)セイバーケミカルエンジニアリング社製の二酸化塩素希釈液3600ppm、900ml
(2)アミノ酸銀(株式会社CSL製)0.025%、90ml
(3)アパタイトチタン20%希釈液(株式会社CSL社製)0.1ml
(4)エタノール10ml
(5)グリセリン10ml
<2>二酸化塩素混合物Bの調製
以下の(1)〜(5)を混合し、二酸化塩素混合物Bを調整した。
(1)セイバーケミカルエンジニアリング社製の二酸化塩素希釈液3600ppm、900ml
(2)アミノ酸亜鉛(株式会社CSL製)0.025%、90ml
(3)アパタイトチタン20%希釈液(株式会社CSL社製)0.1ml
(4)エタノール10ml
(5)グリセリン10ml
<3>二酸化塩素混合物Cの調製
以下の(1)〜(6)を混合し、二酸化塩素混合物Cを調整した。
(1)セイバーケミカルエンジニアリング社製の二酸化塩素希釈液3600ppm、900ml
(2)アミノ酸銀(株式会社CSL製)0.03%、45ml
(3)アミノ酸亜鉛(株式会社CSL社製)0.03%、45ml
(4)アパタイトチタン20%希釈液(株式会社CSL社製)0.1ml
(5)エタノール10ml
(6)グリセリン10ml
<4>二酸化塩素混合物Dの調製
以下の(1)〜(6)を混合し、二酸化塩素混合物Dを調整した。
(1)セイバーケミカルエンジニアリング社製の二酸化塩素希釈液3600ppm、900ml
(2)アミノ酸銀(株式会社CSL製)0.05%、45ml
(3)アミノ酸亜鉛(株式会社CSL社製)0.05%、45ml
(4)アパタイトチタン20%希釈液(株式会社CSL社製)0.1ml
(5)エタノール10ml
(6)グリセリン10ml
<5>二酸化塩素混合物Eの調製
固形分であるトリクロロイソシアヌル酸30%と、炭酸水素ナトリウム69%に、アパタイトチタンに金属イオンを被覆した固形分(上記混合物A〜Dとほぼ同量のアパタイトチタンおよび金属イオンを含む)を混合し、圧力成型し固形化して、二酸化塩素混合物Eを調製した。
【0063】
<実施例2>花粉の形態変化の確認
1.試験方法
(1)スギの雄花から採取した花粉をスライドガラスに散布したものを9枚用意した。
(2)シャーレに、実施例1で調整した二酸化塩素混合物A(3500ppm)と、精製水をそれぞれ30ml入れた。また、何も入っていない空のシャーレも用意した。
(3)シャーレの上に、スライドガラスを固定して蓋付きの容器に入れた。
(4)インキュベーター内温度を25℃に設定し、インキュベートを開始した。
(5)経過時間毎(インキュベート開始0時間後、6時間後、12時間後)にスライドがガラスを取り出し、花粉の形態を顕微鏡観察し、花粉分子の形態変化が1分子以上確認された場合は(+)と判定し、顕著な形態変化が確認された場合は(++)と評価した。
【0064】
2.結果
結果を
図1に示す。
図1に示したように、二酸化塩素混合物A(3500ppm)が自然気化した場合、6時間経過後および12時間経過後に、顕著な花粉の破壊が確認された。一方、精製水を入れた場合および何も入れなかった場合(DRY)には、顕著な花粉の破壊は確認されなかった。
【0065】
<実施例3>花粉アレルゲンに対する効果の確認
スギ花粉アレルゲン2種(Cryj-1,Cryj-2)の免疫染色(蛍光抗体法)を行い、抗原性への影響を確認した。具体的には、以下の方法で試験を行った。
【0066】
1.試験方法
<A>自然気化による接触
(1)スギの雄花から採取した花粉を、2区画に分けたスライドガラス上に載せたものを4枚用意した。
(2)二酸化塩素混合物A(3500ppm)を20mlと、対照検体として精製水20mlをそれぞれビーカーに入れた。
(3)ビーカー上にスライドガラスを固定し、蓋付き容器に入れた。
(4)インキュベーター内温度を25℃に設定し、蓋付き容器を入れ、インキュベートを開始した。
(5)0時間、12時間経過後のスライドガラスを取り出し、さらに以下の操作を行った。
【0067】
<B>免疫染色(蛍光抗体法)
(6)無蛍光シールを用いて、(5)のスライドガラス上の花粉を回収した。
(7)回収した花粉を洗浄・ブロッキング後、抗Cryj-1抗体、Cryj-2抗体を用いて一次抗体反応を行った。
(8)洗浄後、Alexa488ラベル抗体を用いて二次抗体反応を行った。
(9)蛍光顕微鏡(Axiovert(カールツァイス))を用いて、顕微鏡観察を行った。抗原性に変化がない(免疫染色による陽性部位の蛍光強度に変化がない)場合は(−)、変化が認められる場合に(+)、消失あるいは顕著な変化が認められる場合は(++)と評価した。
【0068】
2.結果
図2は、二酸化塩素混合物を配置してから0時間後の、Cryj-1およびCryj-2の状態を示す顕微鏡写真である。Cryj-1およびCryj-2について、図中の右側は、蛍光顕微鏡による写真であり、白く映る部分は抗原性がある部分を示している。
【0069】
図2に示すように、二酸化塩素混合物Aを配置してから0時間後では、花粉は原形を留め、花粉アレルゲンCryj-1、Cryj-2の抗原性が確認される。
【0070】
図3は、二酸化塩素混合物Aを配置してから12時間後の、Cryj-1の状態を示す顕微鏡写真であり、図中の右側は、蛍光顕微鏡による写真である。同様に、
図4は、二酸化塩素混合物Aを配置してから12時間後の、Cryj-2の状態を示す顕微鏡写真であり、図中の右側は、蛍光顕微鏡による写真である。
【0071】
図3、
図4に示したように、二酸化塩素混合物Aを配置してから12時間後では、自然気化した二酸化塩素ガスによって破壊された花粉アレルゲンCryj-1、Cryj-2の抗原性はほとんど認められなかった。
【0072】
一方、対照検体として精製水を配置した場合には、0時間後、12時間後においても花粉アレルゲンCryj-1、Cryj-2の抗原性が認められ、抗原性の変化は確認できなかった(
図5、
図6)。
【0073】
以上の結果を表1に示す。
【0074】
【表1】
【0075】
以上の結果から、二酸化塩素混合物Aは、自然気化させることによって花粉の外殻を破壊し、花粉アレルゲンを確実に不活性化できるため、花粉アレルゲン不活性化剤として有効に利用できることが確認された。また、この二酸化塩素混合物Aは、自然気化によって継続的に二酸化塩素ガスが発生し、花粉アレルゲン不活性化効果が長時間に亘って持続できることが確認された。
【0076】
また、実施例1で調製した二酸化塩素混合物B〜Dについても同様の効果が確認された。さらに、固形化した二酸化塩素混合物Eについても同様の効果が確認された。
【0077】
さらに、実施例1で調製した二酸化塩素混合物A〜Dについては、気化後に多少の微粉末が残り、乾燥後も花粉破壊効果(花粉アレルゲン不活性化効果)が維持されることが確認されたのに対し、500ppm〜3000ppmの二酸化塩素単独(アパタイト系化合物、金属イオンなどを含まない)の場合には、気化すると直ちに花粉破壊効果(花粉アレルゲン不活性化効果)は、消失することが確認された。したがって、実施例1で調製した二酸化塩素混合物A〜Eは、例えば、特許文献1のような二酸化塩素を含む従来のアレルゲン不活性化剤と比較して、特に効果の継続性の点で優位性が認められた。