特許第5888750号(P5888750)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5888750
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】逆止弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 15/06 20060101AFI20160308BHJP
【FI】
   F16K15/06
【請求項の数】1
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-116603(P2013-116603)
(22)【出願日】2013年6月3日
(65)【公開番号】特開2014-234866(P2014-234866A)
(43)【公開日】2014年12月15日
【審査請求日】2014年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】特許業務法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】武部 重樹
【審査官】 冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−087897(JP,A)
【文献】 特開2001−056059(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流入室と、流出室と、流入室と流出室とを連通する弁孔を開設した弁座とを有する弁筐と、流出室内に弁孔の孔軸方向に移動自在に設けられた弁軸と、弁座に着座して弁孔を流出室側から閉塞可能な弁軸に連結された弁体と、弁軸を介して弁体を弁座に接近する閉じ方向に付勢するバネとを備える逆止弁であって、
弁体は、弾性材料で形成され、
弁軸は、弁体の弁座側とは反対側の背面に当接するフランジ部を有し、このフランジ部の弁体に当接する面の外周寄りの部分に、弁座に着座する弁体の外周寄りの部分が背面側に撓むことを許容するように弁体との間に所定幅の隙間を確保する逃げ面が形成されるものにおいて、
逃げ面に、フランジ部の外周面に達する凹溝又はフランジ部の弁体側とは反対の背面に達する孔若しくは切欠きが周方向に間隔を存して複数形成されることを特徴とする逆止弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流入室と、流出室と、流入室と流出室とを連通する弁孔を開設した弁座とを有する弁筐と、流出室内に弁孔の孔軸方向に移動自在に設けられた弁軸と、弁座に着座して弁孔を流出室側から閉塞可能な弁軸に連結された弁体と、弁軸を介して弁体を弁座に接近する閉じ方向に付勢するバネとを備える逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の逆止弁として、特許文献1記載のものが知られている。このものでは、弁体は、弾性材料で形成され、弁軸は、弁体の弁座側とは反対側の背面に当接するフランジ部を有し、このフランジ部の弁体に当接する面の外周寄りの部分に、弁座に着座する弁体の外周寄りの部分が背面側に撓むことを許容するように弁体との間に所定幅の隙間を確保する逃げ面が形成されている。
【0003】
これによれば、流体の逆流時に、弁軸が弁孔の孔軸に対し傾いて、弁体の外周寄りの部分の周方向一部分が他の部分よりも早く弁座に着座した場合でも、当該一部分が背面側に撓むことで弁体が更に閉じ側に変位して、弁体の外周寄りの他の部分も弁座に着座する。即ち、弁体の外周寄りの部分が全周に亘って弁座に着座して弁孔が閉塞され、逆流した流体が流入室に流れ込むことを防止できる。
【0004】
然しながら、上記従来例のものでは、弁体が開閉動作を繰り返すうちに、弁体の外周寄りの部分が、フランジ部の逃げ面に吸盤の如く貼り付いてしまうことがある。このような貼り付きを生ずると、弁軸が傾いた場合、弁体の外周寄りの部分の周方向一部分しか弁座に着座せず、流体の逆流を防止できなくなる。
【0005】
尚、弁体の外周寄りの部分がフランジ部の逃げ面に貼り付かないように、逃げ面と弁体との間の隙間をより広くすることも考えられる。然し、これでは、流出室の流体圧がある程度以上高くなった場合、弁体の外周寄りの部分が背面側に大きく撓んで縮径し、弁孔内に入り込んでしまうという不具合を生ずる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−56059号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み、弁体の外周寄りの部分がフランジ部の逃げ面に貼り付いたり弁孔内に入り込んだりすることを防止できるようにした逆止弁を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明は、流入室と、流出室と、流入室と流出室とを連通する弁孔を開設した弁座とを有する弁筐と、流出室内に弁孔の孔軸方向に移動自在に設けられた弁軸と、弁座に着座して弁孔を流出室側から閉塞可能な弁軸に連結された弁体と、弁軸を介して弁体を弁座に接近する閉じ方向に付勢するバネとを備える逆止弁であって、弁体は、弾性材料で形成され、弁軸は、弁体の弁座側とは反対側の背面に当接するフランジ部を有し、このフランジ部の弁体に当接する面の外周寄りの部分に、弁座に着座する弁体の外周寄りの部分が背面側に撓むことを許容するように弁体との間に所定幅の隙間を確保する逃げ面が形成されるものにおいて、逃げ面に、フランジ部の外周面に達する凹溝又はフランジ部の弁体側とは反対の背面に達する孔若しくは切欠きが周方向に間隔を存して複数形成されることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、逃げ面に対向する弁体の外周寄りの部分の背面に流出室の流体圧が凹溝、孔又は切欠きを介して作用する。そのため、弁体の外周寄りの部分がフランジ部の逃げ面に貼り付き気味になっても、弁体の外周寄りの部分が流体圧の作用で逃げ面から剥離される。従って、逃げ面と弁体との間の隙間を比較的狭くしても、弁体の外周寄りの部分が逃げ面に貼り付くことを防止できる。そして、弁体の外周寄りの部分が逃げ面に貼り付くことを防止する上で、逃げ面と弁体との間の隙間を広く確保する必要がないため、弁体の外周寄りの部分が大きく撓んで弁孔内に入り込むことも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の逆止弁の断面図。
図2】実施形態の弁軸の斜視図。
図3】第2実施形態の弁軸の斜視図。
図4】第3実施形態の弁軸の斜視図。
図5】第4実施形態の弁軸の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照して、本発明の実施形態の逆止弁は、入口11a及び出口11bと、入口11aに連通する流入室12aと、出口11bに連通する流出室12bと、流入室12aと流出室12bとを連通する弁孔13を開設した弁座14とを有する弁筐1を備えている。流出室12bの弁座14とは反対側の端面は、蓋体15で閉塞されている。尚、入口11a及び出口11bは、夫々図示省略した上流側の管路及び下流側の管路に接続されている。
【0012】
蓋体15には、弁孔13の孔軸方向に長手のガイドスリーブ16が一体に形成されている。そして、流出室12b内には、ガイドスリーブ16に一端側(図1では、右側)が摺動自在に挿入されて、弁孔13の孔軸方向に移動自在に支持される弁軸2が設けられている。弁軸2の他端側(図1では、左側)には、弁座14に着座して弁孔13を流出室12b側から閉塞可能なフッ素ゴムで形成された弁体3が連結されている。具体的に説明すれば、弁軸2は、他端側に、弁体3の弁座14側とは反対側の背面3bに当接するフランジ部21と、フランジ部21から突出して弁体3に挿通され、先端部が弁体3の弁座14側の正面3a中央部に係止される係止突出部22とを有し、弁体3がフランジ部21と係止突出部22との間に挟まれた状態で弁軸2に連結されるようにしている。また、蓋体15とフランジ部21との間に、バネ4を縮設して、弁軸2を介して弁体3を弁座14に接近する閉じ方向に付勢している。
【0013】
ところで、弁軸2は、ガイドスリーブ16との間に生ずる摺動クリアランスの影響で、弁孔13の孔軸に対し傾くことがある。そして、流体の逆流時に弁軸2が傾くと、弁座14に着座する弁体3の外周寄りの部分の周方向一部分が他の部分よりも早く弁座14に着座し、このままでは、弁体3の外周寄りの他の部分が弁座14に着座不能となって、弁孔13を閉塞できなくなる。
【0014】
そこで、フランジ部21の弁体3に当接する面の外周寄りの部分には、弁体3の外周寄りの部分が背面3b側に撓むことを許容するように、弁体3との間に所定幅の隙間を確保する逃げ面21aが形成されている。これによれば、流体の逆流時に、弁軸2が弁孔13の孔軸に対し傾いて、弁体3の外周寄りの部分の周方向一部分が他の部分よりも早く弁座14に着座した場合でも、当該一部分が背面3b側に撓むことで弁体3が更に閉じ側に変位して、弁体3の外周寄りの他の部分も弁座14に着座する。即ち、弁体3の外周寄りの部分が全周に亘って弁座14に着座して弁孔13が閉塞され、逆流した流体が流入室12aに流れ込むことを防止できる。
【0015】
但し、弁体3が開閉動作を繰り返すうちに、弁体3の外周寄りの部分が、フランジ部21の逃げ面21aに吸盤の如く貼り付いてしまうことがある。このような貼り付きを生ずると、弁軸2が傾いた場合、弁体3の外周寄りの部分の周方向一部分しか弁座14に着座せず、流体の逆流を防止できなくなる。
【0016】
尚、逃げ面21aと弁体3との間の隙間を広くすれば、弁体3の外周寄りの部分が逃げ面21aに貼り付くことを防止できる。然し、これでは、流出室12bの流体圧がある程度以上高くなった場合、弁体3の外周寄りの部分が背面3b側に大きく撓んで縮径し、弁孔13内に入り込んでしまう。
【0017】
そこで、本実施形態では、逃げ面21aと弁体3との間の隙間の幅を、弁体3の外周寄りの部分が弁孔13内に入り込むほど大きく撓むことを阻止できるように設定し、更に、図2に示すように、フランジ部21の逃げ面21aに、フランジ部21の外周面に達する凹溝21bを、周方向に間隔を存して複数(例えば、4個)形成している。尚、図2に示すものでは、凹溝21bの形状が正面視扇形であるが、図3に示す第2実施形態の如く、正面視矩形であってもよい。また、凹溝21bに代えて、図4に示す第3実施形態の如く、逃げ面21aに、フランジ部21の弁体3側とは反対の背面に達する孔21cを、周方向に間隔を存して複数形成してもよい。更に、図5に示す第4実施形態の如く、逃げ面21aに、フランジ部21の弁体3側とは反対の背面に達する切欠き21dを、周方向に間隔を存して複数形成してもよい。
【0018】
これによれば、逃げ面21aに対向する弁体3の外周寄りの部分の背面3bに流出室12bの流体圧が凹溝21b、孔21c又は切欠き21dを介して作用する。そのため、弁体3の外周寄りの部分がフランジ部21の逃げ面21aに貼り付き気味になっても、弁体3の外周寄りの部分が流体圧の作用で逃げ面21aから剥離される。このように、弁体3の外周寄りの部分が逃げ面21aに貼り付くことを防止できるため、弁体3の外周寄りの部分は、弁軸2の傾きに応じて撓んで全周に亘り弁座14に着座し、弁孔13が確実に閉塞されて、逆流した流体が流入室12aに流れ込んでしまうことを防止できる。更に、弁体3の外周寄りの部分が逃げ面21aに貼り付くことを防止する上で、逃げ面21aと弁体3との間の隙間を広く確保する必要がないため、弁体3の外周寄りの部分が大きく撓んで弁孔13内に入り込むことも防止できる。
【0019】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、弁体3は、フッ素ゴムで形成されているが、合成ゴム等の他の弾性材料で形成されていてもよい。
【0020】
また、上記実施形態の逆止弁は、逆流を防止するという機能のみを有する単機能部品であるが、本発明はこれに限定されない。例えば、弁筐内に、他の機能を持つ部材(例えば、調圧弁、大気開放弁、流量センサ等)が組み込まれた複合機能部品であってもよい。
【符号の説明】
【0021】
1…弁筐、11a…入口、11b…出口、12a…流入室、12b…流出室、13…弁孔、14…弁座、2…弁軸、21…フランジ部、21a…逃げ面、21b…凹溝、21c…孔、21d…切欠き、3…弁体、4…バネ。
図1
図2
図3
図4
図5