(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5888788
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】線状発光体、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
F21S 2/00 20160101AFI20160308BHJP
G02B 6/00 20060101ALI20160308BHJP
G02B 6/02 20060101ALI20160308BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20160308BHJP
F21V 17/00 20060101ALI20160308BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20160308BHJP
【FI】
F21S2/00 432
G02B6/00 331
G02B6/16
G02B6/00 391
G02B6/02 C
G02B6/00 366
G02B6/00 336
F21V8/00 241
F21V17/00 402
G02B6/00 326
F21Y101:02
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-202389(P2013-202389)
(22)【出願日】2013年9月27日
(65)【公開番号】特開2015-69808(P2015-69808A)
(43)【公開日】2015年4月13日
【審査請求日】2015年5月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000010065
【氏名又は名称】フクビ化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076484
【弁理士】
【氏名又は名称】戸川 公二
(72)【発明者】
【氏名】金森 尚哲
(72)【発明者】
【氏名】小林 俊幸
【審査官】
竹中 辰利
(56)【参考文献】
【文献】
特開2013−057924(JP,A)
【文献】
特開平07−020323(JP,A)
【文献】
特開2010−266720(JP,A)
【文献】
特開昭62−265605(JP,A)
【文献】
特表2001−521200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21S 2/00
F21V 8/00
F21V 17/00
G02B 6/00
G02B 6/02
F21Y 115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明なアクリル系樹脂から成る棒状体であって、空気よりも屈折率が大きいコア層(1)と;このコア層(1)を被覆する半透明樹脂材料から成るシース体であって、コア層(1)よりも屈折率が小さく、かつ、空気よりも屈折率が大きいクラッド層(2)と;このクラッド層(2)の外周面上に部分的に形成された光反射層(3)と;この光反射層(3)の外側に設けられた接着層(4)とを含んで成り、
更に前記クラッド層(2)に、ポリアミド系樹脂に対しての接着性を付与する官能基が導入されたフッ素系樹脂が使用されると共に、光反射層(3)に、ポリアミド系樹脂が使用されて、当該光反射層(3)上に接着層(4)が直接設けられていることを特徴とすることを特徴とする線状発光体。
【請求項2】
クラッド層(2)に使用するフッ素系樹脂が、官能基が導入された、ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体であることを特徴とする請求項1記載の線状発光体。
【請求項3】
クラッド層(2)に使用するフッ素系樹脂に、カルボキシル基およびカルボン酸塩から選択された少なくとも1種の官能基が導入されていることを特徴とする請求項2記載の線状発光体。
【請求項4】
クラッド層(2)に使用するフッ素系樹脂が、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体に、この共重合体とグラフト化が可能な結合性基と接着性を付与する官能基とを含むグラフト性化合物がグラフトされたものであることを特徴とする請求項1記載の線状発光体。
【請求項5】
クラッド層(2)に使用するフッ素系樹脂に、カルボキシル基、カルボン酸無水物残基、エポキシ基および加水分解性シリル基から選択された少なくとも1種の官能基が導入されていることを特徴とする請求項4記載の線状発光体。
【請求項6】
透明なアクリル系樹脂から成る棒状体であって、空気よりも屈折率が大きいコア層(1)と;このコア層(1)を被覆する半透明樹脂材料から成るシース体であって、コア層(1)よりも屈折率が小さく、かつ、空気よりも屈折率が大きいクラッド層(2)と;このクラッド層(2)の外周面上に部分的に形成された光反射層(3)と;この光反射層(3)の外側に設けられた接着層(4)とを含んで成り、
更に前記クラッド層(2)に、フッ素系樹脂が使用されると共に、前記光反射層(3)に、フッ素系樹脂と接着性を有するポリオレフィン系接着性ポリマーが使用されて、当該光反射層(3)上に接着層(4)が直接設けられていることを特徴とすることを特徴とする線状発光体。
【請求項7】
光反射層(3)上に両面テープ(41)を貼り付けて接着層(4)が形成されていることを特徴とする請求項1〜6の何れか一つに記載の線状発光体。
【請求項8】
両面テープ(41)にアクリル系粘着剤が使用されていることを特徴とする請求項7記載の線状発光体。
【請求項9】
コア層(1)及びクラッド層(2)が、外周面の一部に平面部を有する断面半円状、断面半楕円状、断面扇状または断面矩形状に成形されると共に、前記クラッド層(2)の平面部を被覆するように光反射層(3)が設けられ、更にその外側に接着層(4)が形成されていることを特徴とする請求項1〜8の何れか一つに記載の線状発光体。
【請求項10】
請求項1または請求項6記載の線状発光体の製造方法において、コア層(1)、クラッド層(2)及び光反射層(3)を共押出成形により一体的に形成することを特徴とする線状発光体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状発光体の改良、詳しくは、被固定物への取付け作業が簡単に行えるだけでなく、使用時の発光性能にも優れ、しかも、製造を効率的に行うことも可能な線状発光体
およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
周知のとおり、街中で見かけるイルミネーションや電飾看板の多くは、ネオンライトのような線状発光体を利用しているが、本体がガラス管から構成されるネオンライトは、発光体そのものに可撓性がないため、発光体を曲げて取付け面の湾曲部に沿う形態や、任意の絵や文字の形態とすることができない。
【0003】
そこで、従来においては、直線状の線状発光体を自由に湾曲させて使用できるように、可撓性を有する光ファイバ型の線状発光体も開発され、本件出願人も以前に、透明なアクリル系樹脂から成るコア層と、半透明のフッ素系樹脂から成るクラッド層から成る線状発光体について特許出願を行っている(特許文献1参照)。
【0004】
また更に、本件出願人は、上記文献1中の
図6に記載しているように、線状発光体のクラッド層の外側に白色または銀色の不透明樹脂から成る光反射層を設けることによって、発光面(光反射層が形成されていない周面)を、光源から遠い位置まで明るく発光させることのできる発光性能に優れた線状発光体も開発している。
【0005】
しかしながら、上記光反射層を有する線状発光体においては、クラッド層と光反射層が接着されるように両層にフッ素系樹脂を使用していたものの、非粘着性のフッ素系樹脂から成る光反射層上に、両面テープの貼り付けや接着剤の塗布を直接行うことができなかったため、嵌合構造や係止構造を利用して線状発光体の取り付けを行う必要があった。
【0006】
また、線状発光体の外周面に接着層を設けるために、フッ素系樹脂および非フッ素系接着剤の両方に接着性を有するプライマー層を、光反射層と接着層の間に設ける方法も考えられたが、この方法を採用すると製造時に光反射層の外側にプライマーを塗布する工程を入れなければならないため、製造効率の悪化を招き易かった。
【0007】
一方、従来においては、非フッ素系樹脂との接着性を付与する官能基を導入したフッ素系樹脂材料や、このフッ素系樹脂を非フッ素系樹脂に接着・積層して作製したホース材等も公知となっているが(特許文献2,3参照)、線状発光体において、フッ素系樹脂の光学的性質を活かしつつ接着層を設けた技術は過去に見受けられない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2013−57924号公報
【特許文献2】特開2003−231718号公報
【特許文献3】特開平10−311461号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明は、上記の如き問題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、被固定物への取付け作業が簡単に行えるだけでなく、使用時の発光性能にも優れ、しかも、製造も効率的に行える線状発光体
およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者が上記課題を解決するために採用した手段は次のとおりである。
【0011】
即ち、本発明は、
透明なアクリル系樹脂から成る棒状体であって、空気よりも屈折率が大きいコア層1と;このコア層1を被覆する半透明樹脂材料から成るシース体であって、コア層1よりも屈折率が小さく、かつ、空気よりも屈折率が大きいクラッド層2と;このクラッド層2の外側に
外周面上に接着層を介さずに一体に形成された光反射層3と;この光反射層3の外側に設けられた接着層4とを含んで構成する
一方、前記クラッド層2に、
ポリアミド系樹脂に対しての接着性を付与する官能基が導入されたフッ素系樹脂を使用すると共に、光反射層3に
ポリアミド系樹脂を使用して、当該光反射層3上に接着層4を直接設けて発光体本体Rを構成した点に特徴がある。
【0012】
また、上記接着層4については、光反射層3上に両面テープ41を貼り付けて形成することができ、この両面テープ41に関しては、耐熱性に優れたアクリル系粘着剤が塗布されたものを好適に使用することができる。
【0013】
そしてまた、上記クラッド層2に使用するフッ素系樹脂に関しては、光学的性質および非フッ素系樹脂との接着性に優れた材料を選択して使用することができ、具体的には、官能基が導入された、ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体を好適に使用できる。なお、このフッ素系樹脂を選択する場合には、カルボキシル基およびカルボン酸塩から選択された少なくとも1種の官能基が導入されたものを使用するのが好ましい。
【0014】
一方、上記クラッド層2に使用するフッ素系樹脂には、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体に、この共重合体とグラフト化が可能な結合性基と接着性を付与する官能基とを含むグラフト性化合物をグラフトして製造されたものを使用することもできる。そして、その場合には、カルボキシル基、カルボン酸無水物残基、エポキシ基および加水分解性シリル基から選択された少なくとも1種の官能基が導入されたものを使用するのが好ましい。
【0016】
また更に、上記コア層1及びクラッド層2については、外周面の一部に平面部を有する断面半円状、断面半楕円状、断面扇状または断面矩形状に成形すると共に、前記クラッド層2の平面部を被覆するように光反射層3を設け、更にその外側に接着層4を設けることによって、発光体本体Rを湾曲させ易くなるため、被固定物への取り付けを更に容易化することができる。
【0017】
そしてまた、
上記線状発光体を製造する際に、コア層1、クラッド層2及び光反射層3を共押出成形により一体的に形成すれば、大量生産する場合でも効率的に製造を行うことが可能となる。
【0018】
一方、本発明では、上記発光体本体Rの構成を採用する代わりに、
クラッド層2に、フッ素系樹脂を使用すると共に、光反射層3に、フッ素系樹脂と接着性を有するポリオレフィン系接着性ポリマーを使用して、この光反射層3と接着層4とをプライマー層を介さずに直接一体化する構成を採用することもできる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、クラッド層の外側に光反射層を有するプラスチック製の線状発光体において、非フッ素系樹脂との接着性を有する特殊なフッ素系樹脂をクラッド層に採用し、更に光反射層の母材に粘着性を有する非フッ素系樹脂を採用したことにより、両面テープや接着剤を光反射層の外側に直接貼り付け又は塗布することができる。
【0020】
しかも、上記のように接着層を形成したことにより、線状発光体を被固定物に接着して簡単に取り付けることができるため、被固定物への取付け作業も容易化できる。また、本発明においては、光反射層と接着層の間にプライマー層を設ける必要もないため、製造工程が複雑化して製造効率が低下する心配もない。
【0021】
なお、上記光反射層には、クラッド層のフッ素系樹脂と接着性の良い非フッ素系樹脂を使用しているため、クラッド層と光反射層の層間剥離も防止できる。また、光反射層に関しては、白色等に着色されていれば、母材樹脂の光学的性質が発光性能に大きく影響を及ぼすことはないため、非フッ素系樹脂の使用によって発光性能が低下することもない。
【0022】
他方また、上記クラッド層に特殊なフッ素系樹脂を採用する代わりに、フッ素系樹脂との接着性に優れたポリオレフィン系接着性ポリマーを光反射層に使用することもできる。そして、この構造を採用した場合においても、光反射層の外側にプライマー層を設けることなく接着層を直接設けることができるため、上記と同様の効果が得られる。
【0023】
したがって、本発明により、フッ素系樹脂の光学的性質を利用して良好な発光性能が得られるだけでなく、使用時において線状発光体の接着層を被固定物の表面に貼り付けて簡単に固定できる実用性に優れた線状発光体を提供できることから、本発明の実用的利用価値は頗る高い。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】本発明の実施例1における線状発光体の構造を表わす全体斜視図および端部拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
『実施例1』
本発明の実施例1について、
図1に基いて説明する。なお同図において、符号1で指示するものは、コア層であり、符号2で指示するものは、クラッド層である。また符号3で指示するものは、光反射層であり、また符号4で指示するものは、接着層である。
【0026】
[線状発光体の構成]
まず実施例1では、発光体本体Rの導光部としてコア層1(透明樹脂材料から成る棒状体)を設け、更にこのコア層1の外側に、発光部として厚さ0.2mmのクラッド層2(半透明樹脂材料から成るシース体)を設けている(
図1参照)。なお本実施例では、コア層1の材料に、透明性に優れたポリメタクリル酸メチル(PMMA)を使用している。
【0027】
また更に、上記クラッド層2の材料には、官能基が導入された、ヘキサフルオロプロピレンとテトラフルオロエチレンとエチレンの共重合体(EFEP)を使用し、このフッ素系樹脂材料に二酸化チタンを光散乱粒子として0.2wt%添加することによって半透明状のクラッド層2を形成している。なお、上記フッ素系樹脂に導入する官能基としては、カルボキシル基やカルボン酸塩から選ばれる少なくとも一種の官能基を選択できる。
【0028】
そしてまた、上記コア層1に関しては、光学的性質が屈折率1.49、全光線透過率93%となるようにし、クラッド層2に関しては、光学的性質が屈折率1.38、ヘイズ値88.42%、全光線透過率64.41%となるようにしている。また、上記コア層1とクラッド層2の形態は、断面形状が幅6.0mm・高さ6.0mmの半楕円状(かまぼこ状)となるようにしている。
【0029】
そして、上記断面形状が半楕円状となるように成形したクラッド層2の外周面の平面部には、クラッド層2を被覆するように白色の不透明樹脂から成る厚み0.3mmの光反射層3を設けている。なお、この光反射層3の母材樹脂には、上記クラッド層2のフッ素系樹脂と接着性が良いポリアミド系樹脂を採用している。
【0030】
また、上記光反射層3は、二酸化チタンを1.0wt%樹脂に添加している。そして、上記光反射層3を設けた発光体本体Rを光源(LED)にセットして発光性能(発光量や発光バランス)を調べたところ、光反射層3のないものや、コア層1とクラッド層2の間に光反射層3を設けたものよりも良好な結果が得られた。
【0031】
また本実施例では、上記コア層1、クラッド層2及び光反射層3において、コア層1に成形温度が190〜250℃のアクリル系樹脂を、クラッド層2に成形温度が230〜300℃のフッ素系樹脂を使用すると共に、光反射層3にも成形温度230〜300℃のポリアミド樹脂を使用しているため、三層を共押出成形によって一体に成形することができる。
【0032】
そして、上記光反射層3の更に外側には、シート基材の両面に粘着剤が塗布された両面テープ41を直接貼り付けて接着層4を形成している。これにより、発光体本体Rの被固定物への取り付けを容易化できる。なお本実施例では、発砲樹脂から成るシート基材にアクリル系粘着剤が塗布された両面テープ41を使用している。
【0033】
ちなみに、上記アクリル系粘着剤が塗布された両面テープ41は、金属(アルミニウム等)やプラスチック(ポリアミド樹脂等)、ガラス、木材に対する接着性、並びに耐熱性や耐候性、耐水性の面で優れているが、アクリル系以外のウレタン系やエポキシ系、ゴム系(EPDM、シリコーン等)の粘着剤が塗布された両面テープ41を使用することもできる。
【0034】
『実施例2』
次に、本発明の実施例2について、以下に説明する。この実施例2では、クラッド層2の材料に、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体(ETFE)に、この共重合体とグラフト化が可能な結合性基と接着性を付与する官能基とを含むグラフト性化合物をグラフトして製造されたフッ素系樹脂を使用し、その他の構成は実施例1と同様とした。その結果、実施例1と同様に、上記フッ素系樹脂から成るクラッド層2とポリアミド系樹脂から成る光反射層3をしっかりと接着することができた。
【0035】
なお、上記クラッド層1に使用するETFEに関しては、非フッ素系樹脂との接着性を付与する官能基として、カルボキシル基やカルボン酸無水物残基(1分子中の2つのカルボキシル基が脱水縮合した残基)、カーボネート基、カルボニルフルオリド基、エポキシ基、水酸基、イソシアネート基、エステル基、酸アミド基、アルデヒド基、アミノ基、加水分解性シリル基、シアノ基から選択された少なくとも1種の官能基が導入されたものを使用することができる。
【0036】
また、上記の官能基の中でも特に、カルボキシル基やカルボン酸無水物残基、エポキシ基、加水分解性シリル基、シアノ基から選択された少なくとも1種の官能基が導入されたETFEを採用するのが好ましい。
【0037】
また更に、上記ETFEに導入する結合性基に関しては、ラジカルの会合または付加に関与する不飽和もしくは飽和の炭化水素基、求核反応に関与するアミノ基やフェノール性水酸基などを採用できる。また、ラジカルを発生し易い基である、パーオキシン基やアゾ基なども採用できる。なお理想的には、炭素−炭素不飽和結合を有する基(特にα、β不飽和二重結合を末端に有する有機基)、パーオキシン基、アミノ基が好ましい。
【0038】
そしてまた、上記ETFEにグラフトするグラフト性化合物としては、不飽和ポリカルボン酸無水物、不飽和カルボン酸、エポキシ基含有不飽和化合物、加水分解性シリル基含有不飽和化合物、エポキシ基含有パーオキシン化合物などが好ましい。
【0039】
なお、上記不飽和ポリカルボン酸無水物には、無水マレイン酸、イタコン酸無水物、シトラコン酸無水物、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物などがある。また、不飽和カルボン酸には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノメチルエステル、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物などがある。
【0040】
また、上記エポキシ基含有不飽和化合物には、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリグリシジルエーテルなどがある。また、加水分解性シリル基含有不飽和化合物としては、ビニル基、アリル基、メタクリロイロキシアルキル基、アクリロイロキシアルキル基などの不飽和基含有有機基1個とアルコキシ基やアシル基などの加水分解性基2〜3個がケイ素原子に結合した化合物が好ましい。特に不飽和基含有有機基1個と少なくとも1個、好ましくは2〜3個の加水分解性基がケイ素原子に結合している場合は、残りの基はメチル基などの低級アルキル基であることが好ましい。
【0041】
また、具体的な加水分解性シリル基含有不飽和化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シランなどが挙げられる。
【0042】
そしてまた、上記パーオキシン化合物には、ジアシルパーオキシド類、ケトンパーオキシド類、ヒドロパーオキシド類、ヒドロパーオキシド類、パーオキシカーボネート類などがある。また、パーオキシン化合物としては、重合体型のグラフト性化合物が好ましい。
【0043】
『実施例3』
次に、本発明の実施例3について、以下に説明する。この実施例3では、クラッド層2に官能基が導入されていないETFEを使用すると共に、光反射層3に、クラッド層2のフッ素系樹脂と接着性を有するポリオレフィン系接着性ポリマー(本実施例では、住友化学製「ボンドファースト(登録商標)」)を使用して、この光反射層3と接着層4とをプライマー層を介さずに直接一体化している。
【0044】
上記の構成を採用した場合も、クラッド層2と光反射層3、及び光反射層3と接着層4がしっかりと接着されるため、層間剥離等が起きる心配はなく、接着層3を被固定物に貼り付けて発光体本体Rの取り付けを容易に行うことができる。なお本実施例では、光反射層3の表面に接着剤を塗布して接着層4を形成しているが、接着剤としてはエポキシ系やアクリル系、ウレタン系、ゴム系等のものを採用できる。
【0045】
[線状発光体の剥離試験]
次に、上記実施例1〜3の線状発光体を用いて行った剥離試験の結果について以下に説明する。この剥離試験では、上記実施例1〜3の線状発光体をABS樹脂製の基板に貼り付け、更にこの基板を万能試験機の定盤に固定した状態で線状発光体を鉛直上方に引っ張り上げて、基板と線状発光体の接着強度を目視確認した。なお剥離試験条件は、試験速度(引上速度):200mm/min、試験雰囲気温度湿度:23±2℃・50±10%RHとした。
【0046】
その結果、上記実施例1〜3の線状発光体ともに剥離強度20N以上の数値を示し、充分な接着強度を得られることが確認できた。なお、これらの線状発光体と比較するために、光反射層3に一般的なフッ素樹脂を用いた線状発光体についても剥離試験を試みたが、光反射層3への両面テープの貼り合わせ自体ができなかった。
【0047】
本発明は、概ね上記のように構成されるが、記載した実施例にのみ限定されるものではなく、「特許請求の範囲」の記載内において種々の変更が可能であって、例えば、コア層1には、空気よりも屈折率が大きい1.45〜1.60のアクリル系樹脂を使用することができ、ポリメタクリル酸メチルだけでなく、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸n−ブチル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリメタクリル酸t−ブチル、ポリメタクリル酸2−エチルヘキシルなどを挙げることができる。なお、その際には、クラッド層2との屈折率差が0.01〜0.15となるように材料を選択する。
【0048】
また、上記クラッド層2の材料についても、屈折率がコア層1よりも屈折率が小さく、かつ、空気よりも屈折率が大きい1.35〜1.45のフッ素系樹脂を使用することができ、所定の非フッ素系樹脂に対しての接着性を付与する官能基が導入されたEFEPやETFE以外のものも使用できる。なお、光反射層3にポリオレフィン系接着性ポリマーを使用する場合には、官能基が導入されていないフッ素系樹脂も選択できる。
【0049】
そしてまた、上記クラッド層2の最大厚みは0.05〜1.0mmの範囲であれば、全光線透過率とヘイズ率を両立することができ、その際、クラッド層2の全光線透過率が60%以上、ヘイズ値が20%〜90%であれば、バランスの良い側面発光を得ることができる。
【0050】
また更に、上記クラッド層2においては、多層構造を採用して外側層の樹脂に光散乱粒子である二酸化チタンやシリカ粒子等の金属粒子や非金属の無機粒子を添加することもできる。また、クラッド層2を内側層と外側層を含む3層以上の樹脂層から構成することもできる。
【0051】
他方また、上記コア層1及びクラッド層2の断面形状については、外周面の一部に平面部を有する形状であれば断面半楕円状でなくとも、例えば、断面半円状、断面扇状または断面矩形状に成形してもよい。またその場合には、クラッド層2の平面部を被覆するように光反射層3を設け、更にその外側に接着層4を形成する。
【0052】
また、上記光反射層3については、白色または銀色の不透明樹脂材料によって形成することができ、クラッド層2に官能基が導入されたフッ素系樹脂を使用する場合には、導入された官能基と反応性を有する非フッ素系樹脂から自由に選択して使用できる。また、光反射層3に使用するポリオレフィン系接着性ポリマーについても、実施例で使用した以外のものを使用することもでき、何れのものも本発明の技術的範囲に属する。
【産業上の利用可能性】
【0053】
近年、イルミネーションや電飾看板等においてLEDの導入が進んでいる、そのような中で、本発明の線状発光体は、一つのLEDを端部にセットするだけで線状に発光させることができ、しかも、発光性能や使い勝手にも優れた有用な技術であるため、その産業上の利用価値は非常に高い。
【符号の説明】
【0054】
1 コア層
2 クラッド層
3 光反射層
4 接着層
41 両面テープ
R 発光体本体