【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は、鞘成分が高密度ポリエチレンよりなり、芯成分が前記高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリエステルよりなる第一芯鞘型複合長繊維の集積体からなる表面層、前記高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維の集積体からなる中間層及び鞘成分が前記高密度ポリエチレンの融点よりも低い融点を持つ線状低密度ポリエチレンよりなり、芯成分が前記線状低密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリエステルよりなる第二芯鞘型複合長繊維の集積体からなる裏面層を具備する積層不織布であり、前記第一芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの多くは溶融し芯成分から分離して前記極細繊維相互間に食い込んで固化し、これによって前記表面層と前記中間層とが貼合されていると共に、前記中間層の反対側に位置する前記表面層の面は比較的平滑になっており、前記第二芯鞘型複合長繊維の鞘成分である線状低密度ポリエチレンの多くは芯成分から分離せずに軟化又は溶融して固化し、前記裏面層と前記中間層とが貼合されていると共に、前記中間層の反対側に位置する前記裏面層の面に前記第二芯鞘型複合長繊維の鞘成分である線状低密度ポリエチレンが露出していることにより、前記裏面層がヒートシール層として機能しうることを特徴とする積層不織布に関するものである。なお、本発明における融点とは、パーキンエルマー社製の示差走査熱量計DSC−7型を用い、昇温速度20℃/分で測定したものである。
【0008】
[表面層について]
表面層は、本発明に係る積層不織布を用いて袋状物を得たとき、袋状物の外層となるものである。表面層は、鞘成分が高密度ポリエチレンよりなり、芯成分が高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリエステルよりなる第一芯鞘型複合長繊維の集積体からなる。高密度ポリエチレンの融点は120℃〜140℃であるのが好ましい。高密度ポリエチレンの融点が120℃未満になると、裏面層の線状低密度ポリエチレンとの融点差が小さくなり、裏面層の線状低密度ポリエチレンを溶融させるために、表面層からヒートシールバー等の熱源を当接する際に、高密度ポリエチレンも軟化又は溶融しやすくなり、熱源に高密度ポリエチレンが付着しやすくなる。また、高密度ポリエチレンの融点が140℃を超えると、積層不織布を製造する際に、極細繊維の軟化又は溶融を防止しながら、高密度ポリエチレンを溶融させて極細繊維相互間に食い込ませにくくなる。
【0009】
芯成分であるポリエステルの融点は、250℃〜260℃であるのが好ましい。この程度の融点であると、高密度ポリエチレンとの融点差が大きく、高密度ポリエチレンが溶融し芯成分であるポリエステルから分離して、極細繊維相互間に食い込んでいくような熱量を与えても、ポリエステルが軟化或いは溶融したり、又は劣化することなく、当初の繊維形態を維持する。これにより、表面層のフィルム化を防止しうるので好ましい。また、表面層には、高密度ポリエチレンが溶融し極細繊維相互間に食い込んでいくような熱量が与えられるため、表面層の表面(中間層の反対側に位置する面)は平滑化され、印刷適性に優れたものとなる。
【0010】
第一芯鞘型複合長繊維の芯成分と鞘成分の重量比は任意であるが、芯成分:鞘成分=0.25〜4:1であるのが好ましく、特に芯成分:鞘成分=0.4〜2.5:1であるのがより好ましく、芯成分:鞘成分=1:1であるのが最も好ましい。鞘成分の重量比がこの範囲を超えて少なくなると、鞘成分が極細繊維相互間に食い込みにくくなる傾向が生じる。また、鞘成分の重量比がこの範囲を超えて多くなると、表面層がフィルム化する恐れが生じる。
【0011】
第一芯鞘型複合長繊維の繊維径は任意であるが、引張強度等の物性面から、1〜7dtexであるのが好ましい。繊維径が1dtex未満であると、表面層の引張強度が低下する傾向が生じる。また、繊維径が7dtexを超えると、第一芯鞘型複合長繊維相互間の間隙が大きくなり、表面層の表面(中間層の反対側に位置する面)を平滑化しにくくなる傾向が生じる。
【0012】
表面層を構成する第一芯鞘型複合長繊維の鞘成分は、中間層を構成している極細繊維相互間に食い込んでいるので、表面層と中間層を明確に分離することは困難である。しかしながら、概ね表面層と中間層とを分離した場合、表面層の繊維量は、10〜50g/m
2であるのが好ましい。表面層の繊維量が10g/m
2未満になると、中間層を隠蔽し保護する効果が低下する傾向が生じる。また、表面層の繊維量が50g/m
2を超えると、過剰品質であり、得られる袋状物の重量が重くなる傾向が生じる。
【0013】
[中間層について]
中間層は、表面層と裏面層の間に挟持されているものであり、袋状物内に収納した粉末(特に微粉末)を外部へ飛散させないようにするためのフィルター層として機能するものである。すなわち、中間層は極細繊維の集積体で構成されており、極細繊維相互間の間隙は微細になっており、微粉末が透過して外部に飛散するのを防止する。極細繊維の繊維径は、0.1〜10μmであるのが好ましく、特に0.5〜6μmであるのが好ましい。極細繊維の繊維径を0.1μm未満とするのは、製造上、困難である。また、極細繊維の繊維径が10μmを超えると、極細繊維相互間の間隙が大きくなって、袋状物内に収納される微粉末が外部に飛散する傾向が生じる。
【0014】
極細繊維はポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる。ポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維の融点は、表面層を構成している第一芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの融点よりも高くなっている。したがって、高密度ポリエチレンが溶融して、極細繊維相互間に食い込んでも、ポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維は、軟化又は溶融せずに、当初の極細繊維形態を維持している。よって、極細繊維の集積体が持つフィルター機能を十分に発揮するのである。ポリプロピレンよりなる極細繊維の融点は、第一芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンの融点よりも約10℃〜50℃高く、150℃〜170℃であるのが好ましい。また、ポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維の融点は、当該高密度ポリエチレンの融点よりも約80℃〜120℃高く、220℃〜240℃であるのが好ましい。
【0015】
中間層の繊維量は、5〜100g/m
2であるのが好ましく、特に7〜50g/m
2であるのが好ましい。中間層の繊維量が5g/m
2未満であると、極細繊維相互間で形成された微細な間隙が少なくなり、フィルター機能が低下する傾向が生じる。さらに、ヒートシール時において、裏面層を構成している第二芯鞘型複合長繊維の鞘成分である線状低密度ポリエチレンが、中間層を透過して、表面層の表面に滲み出す恐れがある。また、中間層の繊維量が100g/m
2を超えると、中間層の内部にまで、溶融した高密度ポリエチレンが食い込みにくくなり、中間層自体が層剥離する傾向が生じる。
【0016】
[裏面層について]
裏面層は、本発明に係る積層不織布を用いて袋状物を得るとき、ヒートシール層として機能するものである。裏面層は、鞘成分が高密度ポリエチレンの融点よりも低い融点を持つ線状低密度ポリエチレンよりなり、芯成分が線状低密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリエステルよりなる第二芯鞘型複合長繊維の集積体からなる。第二芯鞘型複合長繊維の鞘成分はヒートシール時に溶融固化して接着成分となるものである。すなわち、第二芯鞘型複合長繊維の鞘成分は、積層不織布の表面層に熱源を当接してヒートシールする際に、溶融するものである。したがって、表面層を構成している第一芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンよりも融点の低い線状低密度ポリエチレンを採用するのである。たとえば、第一芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンと同等の融点を持つものを、第二芯鞘型複合長繊維の鞘成分とすると、ヒートシール時に後者を溶融させようとすると、前者の高密度ポリエチレンも溶融してしまい、表面層に当接する熱源に高密度ポリエチレンが付着し、ヒートシールを続行することができない。また、裏面層と中間層とは、第二芯鞘型複合長繊維の鞘成分である線状低密度ポリエチレンの多くが芯成分から分離せずに軟化又は溶融して固化することによって、貼合されている。したがって、第二芯鞘型複合長繊維の鞘成分である線状低密度ポリエチレンの多くは、裏面層の表面(中間層の反対側に位置する面)に露出しており、ヒートシールする際の接着成分として有効に機能するのである。
【0017】
線状低密度ポリエチレンの融点は75℃〜110℃であるのが好ましい。線状低密度ポリエチレンの融点が75℃未満になると、第二芯鞘型複合長繊維にべたつき感が生じ、取り扱いにくくなる傾向が生じる。また、線状低密度ポリエチレンの融点が110℃を超えると、表面層を構成する第一芯鞘型複合長繊維の鞘成分である高密度ポリエチレンとの融点差が小さくなり、ヒートシール時に高密度ポリエチレンが溶融して、熱源に付着する恐れがある。第二芯鞘型複合長繊維の芯成分であるポリエステルの融点は、線状低密度ポリエチレンの融点よりも高く、250℃〜260℃であるのが好ましい。この程度の融点であると、線状低密度ポリエチレンとの融点差が大きく、ヒートシール時に線状低密度ポリエチレンが溶融して、ポリエステルが軟化或いは溶融したり、又は劣化することなく、当初の繊維形態を維持する。これにより、ヒートシール箇所に芯成分が繊維形態で残存しており、ヒートシール箇所の引裂強力の低下を防止しうる。
【0018】
線状低密度ポリエチレンは、メタロセン重合触媒によって重合されたものを用いるのが好ましい。この理由は、線状低密度ポリエチレンの分子量分布が狭くなるからである。具体的には、Q値(重量平均分子量/数平均分子量)が3.5以下であるのが好ましい。Q値が3.5を超えて、分子量分布が広くなり、低分子量のものが多量に混入していると、第二芯鞘型複合長繊維にべたつき感が生じ、取り扱いにくくなる傾向が生じる。また、高分子量のものが多量に混入していると、ヒートシール時に溶融しにくくなり、接着力が低下する傾向が生じる。さらに、線状低密度ポリエチレンは、高密度ポリエチレンに比べて柔軟性があり、ヒートシール時において、所望の形態に馴染みやすい点でも、好ましいものである。
【0019】
線状低密度ポリエチレンのメルトフローレート(JIS K 6922に記載の方法に準拠し、温度190℃で荷重21.18Nで測定した。)は、10〜30g/10分であるのが好ましい。メルトフローレートが30g/10分を超えると、線状低密度ポリエチレンの流動性が高くなり、芯成分から分離する傾向が生じ、好ましくない。すなわち、裏面層の表面(中間層の反対側に位置する面)に残存しにくくなって、当該表面に線状低密度ポリエチレンが露出しにくくなり、ヒートシール時における接着力が低下する傾向が生じる。なお、メルトフローレートを10g/10分未満とすると、第二芯鞘型複合長繊維が製造しにくくなる傾向が生じる。
【0020】
第二芯鞘型複合長繊維の芯成分と鞘成分の重量比は任意であるが、芯成分:鞘成分=0.25〜4:1であるのが好ましく、特に芯成分:鞘成分=0.6〜2.5:1であるのがより好ましく、芯成分:鞘成分=1:1であるのが最も好ましい。鞘成分の重量比がこの範囲を超えて少なくなると、ヒートシール時における接着力が低下する傾向が生じる。また、鞘成分の重量比がこの範囲を超えて多くなると、裏面層がフィルム化する恐れが生じる。
【0021】
第二芯鞘型複合長繊維の繊維径は任意であるが、1〜7dtexであるのが好ましい。繊維径が1dtex未満であると、第二芯鞘型複合長繊維の鞘成分の絶対量が少なくなり、ヒートシール時における接着力が低下する傾向が生じる。また、繊維径が7dtexを超えると、裏面層の表面(中間層の反対側に位置する面)に凹凸が生じやすくなり、ヒートシール時における接着力が低下する傾向が生じる。
【0022】
裏面層と中間層も明確に分離することは困難であるが、概ね裏面層と中間層とを分離した場合、裏面層の繊維量は、10〜70g/m
2であるのが好ましい。裏面層の繊維量が10g/m
2未満になると、第二芯鞘型複合長繊維の鞘成分の絶対量が少なくなり、ヒートシール時における接着力が低下する傾向が生じる。また、裏面層の繊維量が70g/m
2を超えると、過剰品質であり、得られる袋状物の重量が重くなる傾向が生じる。
【0023】
[積層不織布の製造方法について]
本発明に係る積層不織布は、たとえば、以下の方法で得ることができる。まず、鞘成分が高密度ポリエチレンよりなり、芯成分が高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリエステルよりなる第一芯鞘型複合長繊維の集積体(A)、高密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリプロピレン又はポリブチレンテレフタレートよりなる極細繊維の集積体(B)及び鞘成分が高密度ポリエチレンの融点よりも低い融点を持つ線状低密度ポリエチレンよりなり、芯成分が線状低密度ポリエチレンの融点よりも高い融点を持つポリエステルよりなる第二芯鞘型複合長繊維の集積体(C)を準備する。集積体(A)は、第一芯鞘型複合長繊維を溶融紡糸法で形成し、これを集積して長繊維相互間を接着する、いわゆるスパンボンド法で得ることができる。長繊維相互間の接着は、第一芯鞘型複合長繊維の鞘成分の軟化又は溶融により、行うことができる。集積体(B)は、溶融させた樹脂を風力で吹き付けて細化し極細繊維として集積する、いわゆるメルトブロー法で得ることができる。極細繊維相互間は、極細繊維自体の粘着性によって接着されていてもよいし、接着されていなくてもよい。集積体(C)は、第二芯鞘型複合長繊維を溶融紡糸法で形成し、これを集積して長繊維相互間を接着する、いわゆるスパンボンド法で得ることができる。長繊維相互間の接着は、第一芯鞘型複合長繊維の場合と同様に、第二芯鞘型複合長繊維の鞘成分の軟化又は溶融により、行うことができる。
【0024】
次に、集積体(A)と集積体(B)を積層した二層積層体を、集積体(A)が金属製加熱平滑ロールの周面に当接させながら搬送して、所定時間加熱し、集積体(A)中の第一芯鞘型複合長繊維の鞘成分を溶融させる。そして、鞘成分の多くを第一芯鞘型複合長繊維の芯成分から分離させて、集積体(B)中の極細繊維相互間に食い込ませる。その後、集積体(B)面に集積体(C)を積層し、前記所定時間よりも短い時間加熱し、集積体(C)中の第二芯鞘型複合長繊維の鞘成分の多くを芯成分から分離させることなく、軟化又は溶融させる。その後、集積体(A)、集積体(B)及び集積体(C)の順で積層された三層積層体を冷却し、第一及び第二芯鞘型複合長繊維の鞘成分を固化させる。これによって、第一芯鞘型複合長繊維の鞘成分は、集積体(B)中の極細繊維相互間に食い込んだ状態で固化し、集積体(A)と集積体(B)が貼合される。一方、集積体(C)中の第二芯鞘型複合長繊維の鞘成分も固化し、集積体(B)と貼合される。以上のようにして、集積体(A)、集積体(B)及び集積体(C)の順で貼合され一体化された積層不織布が得られるのである。
【0025】
また、集積体(A)、集積体(B)及び集積体(C)を積層した三層積層体を、金属製加熱平滑ロールと弾性非加熱平滑ロールの間に通して、積層不織布を得てもよい。この場合、集積体(A)は、金属製加熱平滑ロールと弾性非加熱平滑ロールの間に通す前に、金属製加熱平滑ロールの周面に当接させて、十分に加熱することが肝要である。すなわち、いずれの方法においても、集積体(A)には熱量を多く与え、第一芯鞘型複合長繊維の鞘成分の多くが芯成分から分離する程度に溶融させ、集積体(B)中の極細繊維相互間に食い込ませるようにする。一方、集積体(C)には、集積体(A)に与えた熱量に比べて少ない熱量を与え、第二芯鞘型複合長繊維の鞘成分の多くが芯成分から分離することなく軟化又は溶融させ、集積体(B)と貼合しうるようにして積層不織布を製造するのである。
【0026】
本発明に係る積層不織布は、表面層、中間層及び裏面層の順で積層されてなるものであり、裏面層がヒートシール層として機能するものである。したがって、この裏面層同士を重ね合わせて、周縁をヒートシールして接着すると袋状物となる。また、この袋状物の中に炭や活性炭等の吸湿性粉末や脱臭性粉末を収納しておけば、各種食品等と共に包装することによって、吸湿材や脱臭材となる。特に、中間層が極細繊維の集積体よりなるため、吸湿性微粉末や脱臭性微粉末を収納しても、これが外部に飛散しにくく、好ましいものである。また、極細繊維の集積体がフィルム化していないので、1cc/cm
2・秒以上の通気度(JIS L 1096 通気性A法 フラジール形法)があり、吸湿性能や脱臭性能が低下しない。