特許第5888813号(P5888813)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5888813
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス固定構造
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/30 20060101AFI20160308BHJP
   F16B 19/00 20060101ALI20160308BHJP
   B60R 16/02 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   H02G3/30
   F16B19/00 Q
   B60R16/02 623D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-106541(P2012-106541)
(22)【出願日】2012年5月8日
(65)【公開番号】特開2013-236440(P2013-236440A)
(43)【公開日】2013年11月21日
【審査請求日】2015年4月27日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100070002
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 隆夫
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100110733
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥野 正司
(74)【代理人】
【識別番号】100173978
【弁理士】
【氏名又は名称】朴 志恩
(72)【発明者】
【氏名】堂下 憲一
【審査官】 久保 正典
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−159062(JP,A)
【文献】 特開2004−350366(JP,A)
【文献】 実開平05−041986(JP,U)
【文献】 特開2007−259604(JP,A)
【文献】 特開平10−14062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/30
B60R 16/02
F16B 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワイヤハーネスを、ワイヤハーネスクリップを用いてパネルに固定するワイヤハーネス固定構造において、
前記ワイヤハーネスクリップが、板状に形成された板部と、前記板部の中央部に設けられ、前記パネルの孔に圧入係止される係止部と、を有し、
前記板部の全体と前記ワイヤハーネスが、弾性シートで覆われることにより固定され、
前記係止部が前記パネルの孔に圧入係止される前の状態では、前記板部の両端部の前記パネル側の表面が、前記中央部の前記パネル側の表面よりも前記パネル側に位置しており、
前記係止部が前記パネルの孔に圧入係止されることにより、前記板部が弾性変形するとともに、前記板部と前記パネルとの間の前記弾性シートが圧縮されて前記孔の外周部に密着する
ことを特徴とするワイヤハーネス固定構造。
【請求項2】
前記板部の両端部の前記パネル側の表面が、前記パネル側に突起状に突き出している
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス固定構造。
【請求項3】
前記板部の両端部が、前記パネル側に湾曲している
ことを特徴とする請求項1に記載のワイヤハーネス固定構造。
【請求項4】
前記弾性シートに、前記係止部が通される通し孔が形成されている
ことを特徴とする請求項1ないし請求項3のうちいずれか1項に記載のワイヤハーネス固定構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワイヤハーネスを、ワイヤハーネスクリップを用いてパネルに固定するワイヤハーネス固定構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図15は、従来のワイヤハーネスクリップを用いたワイヤハーネス固定構造の断面図である。図15において、符号Wは、複数の電線が束ねられて成るワイヤハーネスであり、符号300は、ワイヤハーネスクリップであり、符号306は、車体パネルである。
【0003】
上記ワイヤハーネスクリップ300は、円形皿状の第1皿状部301と、第1皿状部301から延設されワイヤハーネスWに沿わされるワイヤハーネス固定片302と、第1皿状部301の裏面中央に設けられ車体パネル306の孔307に圧入係止される係止部303と、第1皿状部301の裏面の係止部303まわりに形成された円形皿状の第2皿状部304と、を有している。また、第2皿状部304は、第1皿状部301よりも軟質の樹脂で形成されており、第1皿状部301、ワイヤハーネス固定片302、係止部303と一体成形されている。
【0004】
上記第1皿状部301の外周部は、裏面側へ斜め外方に立ち上がるように曲成されて、第1のスタビライザ311を形成している。
【0005】
上記第2皿状部304は、第1皿状部301よりも小径に形成されており、その底部が第1皿状部301の底部と一体化されている。また、第2皿状部304の外周部は、第1皿状部301の外周部と同様に裏面側へ斜め外方に立ち上がるように曲成されて、第2のスタビライザ341を形成している。この第2のスタビライザ341は、第1のスタビライザ311の内側に位置付けられている。
【0006】
上記係止部303は、第1皿状部301の裏面中央から突出した支柱331と、支柱331の先端から第1皿状部301側に延びた一対の係止片332と、を有している。各係止片332の先端には、段状の係止肩部321が形成されている。
【0007】
続いて、上記ワイヤハーネスクリップ300を用いてワイヤハーネスWを車体パネル306に固定する方法を説明する。まず、ワイヤハーネス固定片302をワイヤハーネスWに沿わせ、これらワイヤハーネス固定片302とワイヤハーネスWとをテープ等で固定する。そして、係止部303を車体パネル306の孔307に圧入し、係止肩部321を孔307の縁に係合させる。このことにより、第1のスタビライザ311及び第2のスタビライザ341が孔307の外周部に密着する。この結果、一対の係止片332と第1のスタビライザ311とが車体パネル306を弾性的に挟み込み、ワイヤハーネスクリップ300が車体パネル306に取り付けられるとともに、ワイヤハーネスWが車体パネル306に固定される。
【0008】
また、上記ワイヤハーネスクリップ300を用いたワイヤハーネス固定構造においては、第2のスタビライザ341が孔307の外周部に密着することにより、孔307に対するシール性が良好に保たれる(特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平10−14062号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したワイヤハーネスクリップ300においては、以下に示す問題があった。すなわち、ワイヤハーネスクリップ300は、孔307に対するシール性を高めるために、第2皿状部304が第1皿状部301とは異なる軟質性樹脂で形成されているので、当該ワイヤハーネスクリップ300を製造するのに特殊な設備が必要になり、コストが高くなってしまうという問題があった。
【0011】
そこで、本発明は、上記のような問題点に着目し、簡素で安価なワイヤハーネスクリップを用いながらも、パネルの孔に対するシール性に優れたワイヤハーネス固定構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために請求項1に記載された発明は、ワイヤハーネスを、ワイヤハーネスクリップを用いてパネルに固定するワイヤハーネス固定構造において、前記ワイヤハーネスクリップが、板状に形成された板部と、前記板部の中央部に設けられ、前記パネルの孔に圧入係止される係止部と、を有し、前記板部の全体と前記ワイヤハーネスが、弾性シートで覆われることにより固定され、前記係止部が前記パネルの孔に圧入係止される前の状態では、前記板部の両端部の前記パネル側の表面が、前記中央部の前記パネル側の表面よりも前記パネル側に位置しており、前記係止部が前記パネルの孔に圧入係止されることにより、前記板部が弾性変形するとともに、前記板部と前記パネルとの間の前記弾性シートが圧縮されて前記孔の外周部に密着することを特徴とするワイヤハーネス固定構造である。
【0013】
請求項2に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記板部の両端部の前記パネル側の表面が、前記パネル側に突起状に突き出していることを特徴とするものである。
【0014】
請求項3に記載された発明は、請求項1に記載された発明において、前記板部の両端部が、前記パネル側に湾曲していることを特徴とするものである。
【0015】
請求項4に記載された発明は、請求項1ないし請求項3のうちいずれか1項に記載された発明において、前記弾性シートに、前記係止部が通される通し孔が形成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1に記載された発明によれば、前記ワイヤハーネスクリップが、板状に形成された板部と、前記板部の中央部に設けられ、前記パネルの孔に圧入係止される係止部と、を有し、前記板部の全体と前記ワイヤハーネスが、弾性シートで覆われることにより固定され、前記係止部が前記パネルの孔に圧入係止される前の状態では、前記板部の両端部の前記パネル側の表面が、前記中央部の前記パネル側の表面よりも前記パネル側に位置しており、前記係止部が前記パネルの孔に圧入係止されることにより、前記板部が弾性変形するとともに、前記板部と前記パネルとの間の前記弾性シートが圧縮されて前記孔の外周部に密着するので、簡素で安価なワイヤハーネスクリップを用いながらも、パネルの孔に対するシール性に優れたワイヤハーネス固定構造を提供することができる。
【0017】
請求項2に記載された発明によれば、前記板部の両端部の前記パネル側の表面が、前記パネル側に突起状に突き出しているので、簡素で安価なワイヤハーネスクリップを用いながらも、パネルの孔に対するシール性に優れたワイヤハーネス固定構造を提供することができる。
【0018】
請求項3に記載された発明によれば、前記板部の両端部が、前記パネル側に湾曲しているので、簡素で安価なワイヤハーネスクリップを用いながらも、パネルの孔に対するシール性に優れたワイヤハーネス固定構造を提供することができる。
【0019】
請求項4に記載された発明によれば、前記弾性シートに、前記係止部が通される通し孔が形成されているので、板部とワイヤハーネスとを弾性シートで覆う作業を容易に行うことができ、品質にばらつきが生じないワイヤハーネス固定構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態にかかるワイヤハーネス固定構造のワイヤハーネスクリップを示す斜視図である。
図2図1中のB−B線に沿った断面図である。
図3図1中のC−C線に沿った断面図である。
図4図2に示されたワイヤハーネスクリップとワイヤハーネスとが自己粘着シートで覆われて固定された状態を示す断面図である。
図5図4中のD−D線に沿った断面図である。
図6図4に示されたワイヤハーネスクリップの係止部がパネルの孔に圧入係止された状態を示す断面図である。
図7図6中のE−E線に沿った断面図である。
図8】本発明の第2の実施形態にかかるワイヤハーネス固定構造のワイヤハーネスクリップを示す斜視図である。
図9図8中のG−G線に沿った断面図である。
図10図8中のH−H線に沿った断面図である。
図11図9に示されたワイヤハーネスクリップとワイヤハーネスとが自己粘着シートで覆われて固定された状態を示す断面図である。
図12図11のI−I線に沿った断面図である。
図13図11に示されたワイヤハーネスクリップの係止部がパネルの孔に圧入係止された状態を示す断面図である。
図14図13中のJ−J線に沿った断面図である。
図15】従来のワイヤハーネスクリップを用いたワイヤハーネス固定構造の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態にかかる「ワイヤハーネス固定構造」を、図1ないし図7を参照して説明する。
【0022】
図6,7に示す本発明のワイヤハーネス固定構造1Aは、ワイヤハーネス2を、ワイヤハーネスクリップ7を用いてパネル3に固定する構造である。ワイヤハーネス2は、自動車に配索されるワイヤハーネスであり、複数の電線2aが束ねられて構成されている。また、本発明においては、ワイヤハーネスが、1本の電線で構成されていても良い。パネル3は、前記自動車の車体パネルである。また、図6,7において、パネル3の上側は車両の外側となり、パネル3の下側は車両の内側となる。
【0023】
上記ワイヤハーネスクリップ7は、合成樹脂で構成されており、図1〜5に示すように、板状に形成された板部6と、板部6の中央部6aに設けられ、パネル3の孔3a(図6,7を参照。)に圧入係止される係止部5と、を一体に有している。
【0024】
上記板部6は、長手方向両端部6bのパネル3側の表面が、パネル3側に突起状に突き出している。板部6は、その全体がワイヤハーネス2とともに自己粘着シート4(請求項中の「弾性シート」に相当する。)で覆われることにより、ワイヤハーネス2に固定される。また、板部6は、パネル3と反対側の表面がワイヤハーネス2に沿わされた状態でワイヤハーネス2に固定される。
【0025】
また、ワイヤハーネスクリップ7とワイヤハーネス2とを自己粘着シート4で固定したものを、本発明では「クリップ付きワイヤハーネス」と呼び、符合10Aを付す。
【0026】
上記係止部5は、板部6の中央部6aのパネル3側の表面から立設した支柱50と、支柱50の先端から板部6側に延びた一対の係止片52と、を有している。支柱50には、水抜き孔51が形成されている。一対の係止片52は、支柱50の先端側から板部6側に向かうにしたがって徐々に互いの間隔を広げるように、支柱50の立設方向に対して斜め方向に延びている。各係止片52の先端には、段状の係止肩部53が形成されている。
【0027】
このような係止部5は、支柱50の先端側からパネル3の孔3aに圧入され、一対の係止片52の各係止肩部53が孔3aの縁に係合することにより、孔3aに係止される。この際、一対の係止片52は、互いに近付く方向に弾性変形しながらパネル3の孔3aに挿入され、その後、弾性変形前の状態にある程度復元して各係止肩部53が孔3aの縁に係合する。
【0028】
上記自己粘着シート4は、片面が粘着面とされたシートである。この自己粘着シート4は、粘着面同士が重ね合わされることにより互いに接着される自己粘着性を有している。また、前記粘着面は、ワイヤハーネスクリップ7やワイヤハーネス2などの他部材には接着されない。さらに、自己粘着シート4には、係止部5が通される通し孔4aが形成されている。この通し孔4aは、楕円形に形成されており、パネル3の孔3aよりも小径に形成されている。
【0029】
また、上記自己粘着シート4は、加圧されるとその厚み方向に縮み、加圧が解除されると厚みが復元する弾力性を有し、圧縮された状態において前記粘着面と反対側の面が防水性を発揮するものを用いている。また、本実施形態においては、材質がポリプロピレン発泡材であり、厚みが2mm程度の自己粘着シート4を採用している。
【0030】
また、本発明では、上述した弾力性及び圧縮時における表面の防水性を有していれば、ポリプロピレン発泡材以外の材質、例えば、ゴム製、エラストマ製、その他の合成樹脂製、の自己粘着シートを採用することができる。また、本発明では、上述した弾力性及び圧縮時における表面の防水性を有していれば、自己粘着シートに限らず、接着剤が塗布された弾性シート等の種々の弾性シートを採用することができる。
【0031】
このような自己粘着シート4でワイヤハーネスクリップ7とワイヤハーネス2とを固定する際は、先に通し孔4aに係止部5を通して自己粘着シート4にワイヤハーネスクリップ7を組み付けておき、この自己粘着シート4でワイヤハーネス2を覆うようにする。また、本実施形態では、図5,7に示すように、自己粘着シート4を2つ折りにして、自己粘着シート4の折り返し部4b近傍を重ね合わせるとともに、自己粘着シート4の両端部4cを重ね合わせることにより、板部6全体とワイヤハーネス2とを覆って両者を固定する。
【0032】
上述したように板部6全体とワイヤハーネス2とが自己粘着シート4で覆われることにより組み立てられたクリップ付きワイヤハーネス10Aは、ワイヤハーネスクリップ7の係止部5がパネル3の孔3aに圧入係止されて、一対の係止片52と板部6とがパネル3を挟み込むことにより、パネル3に固定される。また、図4に示すように、係止部5がパネル3の孔3aに圧入係止される前の状態では、板部6の両端部6bのパネル3側の表面が、中央部6aのパネル3側の表面よりもパネル3側に位置しており、係止部5がパネル3の孔3aに圧入係止されることにより、板部6が弾性変形するとともに、板部6とパネル3との間の自己粘着シート4が圧縮されて孔3aの外周部に密着する。
【0033】
さらに詳細に説明すると、図6に示すように、係止部5がパネル3の孔3aに圧入係止されると、一対の係止片52の各係止肩部53を支点として板部6の両端部6bがパネル3に押されることにより(この際、両端部6bに加えられる力を矢印F1で表す。)、板部6の中央部6aがパネル3に近付く方向に押し上げられる(この際、中央部6aに生じる力を矢印F2で表す。)。このことにより、パネル3の外周部に位置する自己粘着シート4がパネル3に強く押し付けられ、パネル3の孔3aに対するシール性が良好に保たれる。よって、車両外から車両内への水や埃の浸入を防ぐことができる。
【0034】
このように、本発明によれば、簡素で安価なワイヤハーネスクリップ7を用いながらも、パネル3の孔3aに対するシール性に優れたワイヤハーネス固定構造1Aを提供することができる。また、本発明によれば、自己粘着シート4に、係止部5が通される通し孔4aが形成されているので、板部6とワイヤハーネス2とを自己粘着シート4で覆う作業を容易に行うことができ、品質にばらつきが生じないワイヤハーネス固定構造1Aを提供することができる。
【0035】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態にかかるワイヤハーネス固定構造を、図8ないし図14を参照して説明する。また、図8ないし図14において、前述した第1の実施形態と同一構成部分には同一符号を付して説明を省略する。
【0036】
図13,14に示す本発明のワイヤハーネス固定構造1Bは、ワイヤハーネス2を、ワイヤハーネスクリップ9を用いてパネル3に固定する構造である。ワイヤハーネス2は、自動車に配索されるワイヤハーネスであり、複数の電線2aが束ねられて構成されている。また、本発明においては、ワイヤハーネスが、1本の電線で構成されていても良い。パネル3は、前記自動車の車体パネルである。また、図13,14において、パネル3の上側は車両の外側となり、パネル3の下側は車両の内側となる。
【0037】
上記ワイヤハーネスクリップ9は、合成樹脂で構成されており、図8〜12に示すように、板状に形成された板部8と、板部8の中央部8aに設けられ、パネル3の孔3a(図13,14を参照。)に圧入係止される係止部5と、を一体に有している。
【0038】
上記板部8は、長手方向両端部8bが、パネル3側に湾曲している。板部8は、その全体がワイヤハーネス2とともに自己粘着シート4(請求項中の「弾性シート」に相当する。)で覆われることにより、ワイヤハーネス2に固定される。また、板部8は、パネル3と反対側の表面がワイヤハーネス2に沿わされた状態でワイヤハーネス2に固定される。
【0039】
また、ワイヤハーネスクリップ9とワイヤハーネス2とを自己粘着シート4で固定したものを、本発明では「クリップ付きワイヤハーネス」と呼び、符合10Bを付す。
【0040】
本実施形態においても、自己粘着シート4でワイヤハーネスクリップ9とワイヤハーネス2とを固定する際は、先に通し孔4aに係止部5を通して自己粘着シート4にワイヤハーネスクリップ9を組み付けておき、この自己粘着シート4でワイヤハーネス2を覆うようにする。また、本実施形態でも、第1の実施形態と同様に、自己粘着シート4を2つ折りにして、自己粘着シート4の折り返し部4b近傍を重ね合わせるとともに、自己粘着シート4の両端部4cを重ね合わせることにより、板部8全体とワイヤハーネス2とを覆って両者を固定する。
【0041】
上述したように板部8全体とワイヤハーネス2とが自己粘着シート4で覆われることにより組み立てられたクリップ付きワイヤハーネス10Bは、ワイヤハーネスクリップ9の係止部5がパネル3の孔3aに圧入係止されて、一対の係止片52と板部8とがパネル3を挟み込むことにより、パネル3に固定される。また、図11に示すように、係止部5がパネル3の孔3aに圧入係止される前の状態では、板部8の両端部8bのパネル3側の表面が、中央部8aのパネル3側の表面よりもパネル3側に位置しており、係止部5がパネル3の孔3aに圧入係止されることにより、板部8が弾性変形するとともに、板部8とパネル3との間の自己粘着シート4が圧縮されて孔3aの外周部に密着する。
【0042】
さらに詳細に説明すると、図13に示すように、係止部5がパネル3の孔3aに圧入係止されると、一対の係止片52の各係止肩部53を支点として板部8の両端部8bがパネル3に押されることにより(この際、両端部8bに加えられる力を矢印F1で表す。)、板部8の中央部8aがパネル3に近付く方向に押し上げられる(この際、中央部8aに生じる力を矢印F2で表す。)。このことにより、パネル3の外周部に位置する自己粘着シート4がパネル3に強く押し付けられ、パネル3の孔3aに対するシール性が良好に保たれる。よって、車両外から車両内への水や埃の浸入を防ぐことができる。
【0043】
このように、本発明によれば、簡素で安価なワイヤハーネスクリップ9を用いながらも、パネル3の孔3aに対するシール性に優れたワイヤハーネス固定構造1Bを提供することができる。
【0044】
また、上述した第1,第2の実施形態では、自己粘着シート4を2つ折りにして板部6,8とワイヤハーネス2とを覆っていたが、本発明のワイヤハーネス固定構造においては、自己粘着シート4を2枚以上使い、これら自己粘着シート4同士を貼り合わせることにより板部6,8とワイヤハーネス2とを覆うようにしても良い。この場合も、自己粘着シート4を2つ折りにして覆うのと同様の効果を得られる。
【0045】
なお、前述した実施形態は本発明の代表的な形態を示したに過ぎず、本発明は、実施形態に限定されるものではない。本発明の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【符号の説明】
【0046】
1A,1B ワイヤハーネス固定構造
2 ワイヤハーネス
2a 電線
3 パネル
3a 孔
4 自己粘着シート(弾性シート)
5 係止部
6,8 板部
6a,8a 中央部
6b,8b 両端部
7,9 ワイヤハーネスクリップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15