(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来、自動車等の車両には、ウィンドシールド(払拭面)に付着した雨水や埃等を払拭するためのワイパ装置が搭載されている。ワイパ装置はワイパブレードを備え、当該ワイパブレードは、ラバーホルダ(ホルダ)とブレードラバーとを備えている。ブレードラバーはラバーホルダに保持されるヘッド部と、ウィンドシールドを払拭するリップ部と、ヘッド部とリップ部とを連結し、リップ部のヘッド部に対する傾動を許容するネック部とを備えている。これらのヘッド部,リップ部およびネック部は、いずれも溶融したゴム材料を連続して押出成形等することで一体化され、かつ長尺棒状に形成されている。
【0003】
ブレードラバーの材料としては、一般的に、柔軟性に優れた天然ゴム(NR)を用いており、これによりウィンドシールドに対するリップ部の密着性を向上させ、ひいてはウィンドシールドをムラ無く払拭できるようにしている。その一方で、ブレードラバーは車両の外部に設置されるため、直射日光を浴びたり空気中のオゾンに触れたりする機会が多くなる。そのため、天然ゴム(NR)をそのまま用いると、早期にブレードラバーが劣化して充分な払拭性能が得られなくなる等、耐劣化性が問題となる。
【0004】
そこで、このような耐劣化性を向上させるために、ブレードラバーの材料として、エチレンプロピレンゴム(EPDM)を用いることが知られている。エチレンプロピレンゴム(EPDM)は、特に耐オゾン性に優れており、したがって、天然ゴム(NR)に比して耐劣化性を向上させることが可能となる。このようなエチレンプロピレンゴム(EPDM)を材料としたブレードラバーとしては、例えば、特許文献1に記載された技術が知られている。
【0005】
特許文献1に記載されたワイパブレードゴム(ブレードラバー)は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)を主体とし、ブレードラバーを形成する基部(ヘッド部),ネック部,揺動部,リップ部の一部を、エチレンプロピレンゴム(EPDM)により形成している。そして、リップ部の表面に塩素化処理層を有するジエン系ゴム(天然ゴム(NR)等)を被覆させ、これによりジエン系ゴム部分でブレードラバーの払拭性能を確保しつつ、エチレンプロピレンゴム(EPDM)部分で耐劣化性の向上を図っている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述の特許文献1に記載されたブレードラバーによれば、ヘッド部,ネック部,揺動部,リップ部の一部を、エチレンプロピレンゴム(EPDM)によって形成しており、エチレンプロピレンゴム(EPDM)は天然ゴム(NR)よりも柔軟性が劣る。そのため、ブレードラバーの移動方向がウィンドシールドの上下反転位置で反転する際に、ネック部の柔軟性が不足してリップ部が傾動せず、所謂ビビリ音(振動ノイズ)が発生する虞があった。このビビリ音は比較的大きいため、車室内に伝達され易く、運転者や乗員に不快感を与えるばかりか、ブレードラバーの払拭性能を大幅に低下させることになる。
【0008】
本発明の目的は、耐劣化性の向上はもちろん、ネック部の柔軟性を向上させることが可能なブレードラバー
の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のブレードラバー
の製造方法は、ホルダに保持されるヘッド部と、前記ヘッド部に設けられ、板ばねが装着される装着溝と、前記ヘッド部の前記装着溝よりも払拭面側に設けられ、前記ホルダの保持爪が係合する係合溝と、前記払拭面を払拭するリップ部と、前記ヘッド部と前記リップ部とを連結し、前記リップ部の前記ヘッド部に対する傾動を許容するネック部と、を備えたブレードラバー
の製造方法であって、前記ブレードラバーは連続押出成形による2色成形製とされ、天然ゴムにより形成され、前記リップ部および前記ネック部の殆どを占めるとともに、前記ネック部から前記ヘッド部の前記係合溝まで延び、かつ当該部分が前記ネック部の短手方向に沿う幅寸法よりも大きい幅寸法とされるコア部と、エチレンプロピレンゴムにより形成され、前記コア部を前記ブレードラバーの払拭方向から被覆して前記ヘッド部を形成する被覆部と、を有し、前記被覆部の前記リップ部および前記ネック部における厚み寸法が0.2mm〜0.5mmとされ、前記被覆部の前記リップ部に対応する部分のみに、摺動抵抗を低減させるための電子線照射法によるグラフト層が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のブレードラバー
の製造方法によれば、ヘッド部,リップ部およびネック部を、非ジエン系のゴム材料により形成し、ヘッド部,リップ部およびネック部のうちの少なくともネック部の内部に、ジエン系のゴム材料よりなるコア部を設けたので、ヘッド部,リップ部およびネック部の耐劣化性を向上させることができる。また、ネック部の内部にはジエン系のゴム材料よりなるコア部を設けたので、当該ネック部の柔軟性を、ジエン系のゴム材料単体での柔軟性に近付けることができる。よって、ネック部の充分な柔軟性を確保してブレードラバーを容易に反転させることが可能となり、ひいては、払拭性能を向上させつつビビリ音の発生を確実に抑制できる。
【0014】
本発明のブレードラバー
の製造方法によれば、ヘッド部,リップ部およびネック部のうちの少なくともリップ部の表面を、照射処理により表面改質したので、リップ部の払拭面に対する摩擦抵抗を小さく設定することができる。これにより、ブレードラバーの払拭面に対する追従性を向上させることが可能となり、ひいてはブレードラバーを揺動駆動する駆動源への負荷を小さくすることができる。
【0015】
本発明のブレードラバー
の製造方法によれば、照射処理では、照射対象部分に向けて電子線を照射するので、従前のように、ジエン系のゴム材料を用いる場合に必要であった塩素化処理が不要となり、ひいては環境への負荷を軽減することが可能となる。
【0016】
本発明のブレードラバー
の製造方法によれば、ブレードラバーを、非ジエン系のゴム材料およびジエン系のゴム材料を金型に供給し、連続押出成形により2色成形したので、ブレードラバーの製造工程を簡素化することができ、ブレードラバーの製造コストを低減することが可能となる。また、完成した長尺のブレードラバーを任意に切断することで、種々の長さのブレードラバーに対応することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0019】
図1は本発明に係るブレードラバーを備えたワイパブレードを示す斜視図を、
図2は
図1のA−A線に沿う断面図をそれぞれ表している。
【0020】
図1に示すように、ワイパブレード10は、自動車等の車両(図示せず)に搭載されるワイパ装置(図示せず)を構成するものである。ワイパブレード10はワイパアーム11の先端部に装着され、ワイパアーム11の基端部は車両に回動自在に設けられたワイパピボット(図示せず)に固定されている。
【0021】
ワイパ装置は、駆動源としてのワイパモータ(図示せず)を備え、当該ワイパモータは、リンク機構(図示せず)を介してワイパピボットを揺動運動させるようにしている。これによりワイパアーム11は中心線Bを中心に揺動運動する。そして、ワイパブレード10は、ワイパアーム11の揺動運動に伴い、ウィンドシールド12上に形成された払拭範囲13を矢印FWD方向および矢印REV方向に往復払拭動作し、払拭面としてのウィンドシールド12に付着した雨水や埃等を払拭するようになっている。
【0022】
ワイパブレード10は、所謂トーナメント方式のワイパブレードを採用している。ワイパブレード10は、ワイパアーム11の先端部に回動自在に装着されるプライマリレバー14と、当該プライマリレバー14の長手方向両端部に回動自在に装着される一対のセカンダリレバー15と、各セカンダリレバー15に保持されるブレードラバー20とを備えている。
【0023】
このように、プライマリレバー14をワイパアーム11に、また、各セカンダリレバー15をプライマリレバー14に、それぞれ回動自在に装着することで、所定の曲率半径を有するウィンドシールド12に対して、ブレードラバー20は追従して弾性変形可能となっている。ここで、各セカンダリレバー15は、それぞれ本発明におけるホルダを構成している。
【0024】
図2に示すように、ブレードラバー20は、ヘッド部21,リップ部22およびネック部23を備えている。ブレードラバー20は、その長手方向(
図1中左右方向)に沿うよう棒状に形成され、ブレードラバー20の断面形状は、その長手方向に沿う全域で同一形状となっている。
【0025】
ヘッド部21は、略断面矩形に形成され、各セカンダリレバー15に抱え込まれるようにして保持される。ヘッド部21の短手方向に沿う両側(図中左右側)には、鋼板よりなる一対のバーティブラ(板ばね)24を装着するための一対の装着溝21aが設けられている。また、ヘッド部21の短手方向に沿う両側で、かつ各装着溝21aよりもウィンドシールド12側には、セカンダリレバー15に一体に設けられた一対の保持爪15aが係合する一対の係合溝21bが設けられている。
【0026】
ここで、各バーティブラ24は、ウィンドシールド12の曲率半径よりも小さい曲率半径に設定され、これにより各バーティブラ24のばね力は、ブレードラバー20を形成するリップ部22の長手方向に沿う全域をウィンドシールド12に密着させている。
【0027】
リップ部22は、その先端側(図中下方側)がウィンドシールド12に接触し、当該ウィンドシールド12の払拭範囲13(
図1参照)を往復払拭動作する部分となっている。リップ部22の断面形状は、その先端側が先細りとなった略三角形形状に形成され、これによりリップ部22のウィンドシールド12側の剛性を弱めて柔軟性を持たせ、ひいてはウィンドシールド12に密着できるようにしている。
【0028】
ヘッド部21とリップ部22との間にはネック部23が設けられている。ネック部23は、ヘッド部21およびリップ部22を連結するとともに、リップ部22のヘッド部21に対する傾動を許容するようになっている。ネック部23の短手方向に沿う幅寸法は、ヘッド部21やリップ部22の短手方向に沿う幅寸法よりも小さい幅寸法に設定され、これによりネック部23は充分な柔軟性を備えている。これにより、図中二点鎖線で示すように、ブレードラバー20の往復払拭動作に伴い、リップ部22がヘッド部21に対して図中矢印SWの方向に容易に傾動できるようになっている。
【0029】
ブレードラバー20は、耐劣化性に優れた非ジエン系のゴム材料と、柔軟性に優れたジエン系のゴム材料とを、図示しない連続押出成形機に供給し、これにより2色成形によって長尺棒状に形成されている。
【0030】
ブレードラバー20を形成するヘッド部21,リップ部22およびネック部23は、例えば、非ジエン系のゴム材料であるエチレンプロピレンゴム(EPDM)により形成され、被覆部CP1となっている。被覆部CP1の内部、つまりヘッド部21,リップ部22およびネック部23の内部には、例えば、ジエン系のゴム材料である天然ゴム(NR)よりなるコア部CP2が設けられている。ここで、コア部CP2は、エチレンプロピレンゴム(EPDM)を主体とするブレードラバー20に柔軟性を持たせるもので、ブレードラバー20の往復払拭動作時において最も弾性変形し得るリップ部22の内部のみに少なくとも設ければ良い。
【0031】
コア部CP2は、リップ部22の先端側(ウィンドシールド12側)からネック部23を経由し、ヘッド部21の各係合溝21bに臨むよう延在している。リップ部22においてはコア部CP2が殆どを占めており、リップ部22における被覆部CP1の厚み寸法は約0.5mmとなっている。つまり、リップ部22における柔軟性は、天然ゴム(NR)単体で形成した場合のリップ部の柔軟性と略等しくなっている。また、ネック部23においてもコア部CP2が殆どを占めており、ネック部23における被覆部CP1の厚み寸法は約0.2mmとなっている。つまり、ネック部23における柔軟性についても、天然ゴム(NR)単体で形成した場合のネック部の柔軟性と略等しくなっている。
【0032】
このように、リップ部22およびネック部23を形成する異種類のゴム材料のうち、その殆どをコア部CP2(ジエン系)とし、当該コア部CP2の外周部分を、約0.2mm〜約0.5mmの厚み寸法の被覆部CP1(非ジエン系)で覆うようにしている。これにより、被覆部CP1によってその内部のコア部CP2が外部のオゾン等に曝されるのを防止して、ブレードラバー20の耐劣化性を向上させている。また、コア部CP2によって充分な柔軟性を確保しており、リップ部22およびネック部23は容易に弾性変形可能となっている。よって、天然ゴム(NR)のみによって形成したブレードラバーと略同等の優れた払拭性能が得られるようになっている。
【0033】
ここで、コア部CP2のヘッド部21側は、当該ヘッド部21の各係合溝21bに臨む程度で延在しており、リップ部22およびネック部23のようにヘッド部21の全域に設けていない。これは、ヘッド部21がブレードラバー20の往復払拭動作時に殆ど変形しないことに基づき、当該部分においては柔軟性の向上を図るよりも耐劣化性の向上を図った方が良いとの観点からである。
【0034】
なお、ヘッド部21の内部のコア部CP2は省略することもできるが、本実施の形態にようにヘッド部21の内部にコア部CP2を設けることで、ネック部23の内部のコア部CP2を、繰り返しの弾性変形による折損等から保護することができる。つまり、ヘッド部21の内部のコア部CP2は、ネック部23の内部のコア部CP2を補強するようになっている。
【0035】
リップ部22の先端側(ウィンドシールド12側)には、その表面を覆うようにしてグラフト層GS(
図5参照)が設けられている。このグラフト層GSは、ブレードラバー20のウィンドシールド12に対する摺動抵抗(摩擦抵抗)を低減させ、これによりブレードラバー20の追従性向上と、安定した往復払拭動作を実現している。
【0036】
次に、以上のように形成したブレードラバー20の製造方法について、グラフト層GSの成形工程を含めて、図面を用いて詳細に説明する。
【0037】
図3は
図2のブレードラバーの加工プロセスを示すフローチャート図を、
図4(a),(b)は連続押出成形工程(2色成形)を示す斜視図を、
図5(a),(b)はグラフト層成形工程(表面改質)を示す斜視図を、
図6はリップ部切断工程(ブレード分離)を示す斜視図をそれぞれ表している。
【0038】
図3に示すように、本実施の形態に係るブレードラバー20は、ステップS1の連続押出成形工程(2色成形),ステップS2のグラフト層成形工程(表面改質),ステップS3のリップ部切断工程(ブレード分離)をそれぞれ経て、製造されるようになっている。
【0039】
[連続押出成形工程]
図3のステップS1に示す連続押出成形工程では、まず、
図4(a)に示すように、連続押出成形装置(図示せず)の第1金型30により、一次成形品であるコア部CP2を成形する。具体的には、第1金型30にはコア部CP2を形作る第1成形孔31が設けられ、当該第1成形孔31の上流側(図中後方側)から、図示しない材料供給装置(ディスペンサ)を介して温められた所定の粘性を有する天然ゴム(NR)が所定圧で送り込まれる。すると、図中矢印に示すように、第1成形孔31の下流側(図中前方側)から所定形状に形成されたコア部CP2が排出される。
【0040】
第1金型30から排出されたコア部CP2は、その直後、同じライン上に設けられた冷却装置(図示せず)によって冷却され、引き続き、
図4(b)に示すように、連続押出成形装置の第2金型32の第2成形孔33に導入される。ここで、第2金型32は二次成形品である被覆部CP1をコア部CP2の周囲に形成するもので、第2金型32は第1金型30の下流側に所定間隔を持って配置されている(詳細図示せず)。
【0041】
そして、第2成形孔33の上流側から、コア部CP2とともに、図示しない材料供給装置(ディスペンサ)から温められた所定の粘性を有するエチレンプロピレンゴム(EPDM)が所定圧で送り込まれる。すると、図中矢印に示すように、第2成形孔33の下流側(図中前方側)からコア部CP2を覆うよう所定形状に形成された被覆部CP1が排出される。そして、その直後、同じライン上に設けられた他の冷却装置(図示せず)によって冷却される。
【0042】
このように、連続押出成形装置の第1金型30および第2金型32を介して連続押出成形工程を終えたワークWは、図中上下側で鏡像対象の形状、具体的には一対のブレードラバー20のリップ部22側を互いに突き合わせて一体化した形状となっている。つまり、ワークWからは、その上下側で一対のブレードラバー20が形成されるようになっている。ここで、
図4においては、被覆部CP1とコア部CP2との区別を明確にするため、被覆部CP1は白抜きとし、コア部CP2は網掛けとしている。
【0043】
なお、被覆部CP1を成形するゴム材料としては、エチレンプロピレンゴム(EPDM)に限らず、他の非ジエン系のゴム材料(例えばシリコーンゴム(Q)等)を用いても良い。また、コア部CP2を成形するゴム材料としては、天然ゴム(NR)に限らず、他のジエン系のゴム材料(例えばイソプレンゴム(IR)等)を用いても良い。さらには、これらのゴム材料に、加硫剤(架橋剤),加硫促進助剤,軟化剤,老化防止剤,充填剤,シランカップリング剤,シリカ,カーボンブラック等の添加剤を配合しても良い。
【0044】
[グラフト層成形工程]
次に、連続押出成形工程を経たワークWは、連続押出成形装置から照射処理装置(図示せず)に搬送され、
図3のステップS2に示すグラフト層成形工程に移行する。ここでは、ブレードラバー20のリップ部22に対応する部分の表面を硬化させる表面硬化処理(表面改質)が施される。
【0045】
グラフト層成形工程では、まず、
図5(a)の網掛部分に示すように、ワークWのリップ部22に対応する部分の表面に反応液(モノマー)34を塗布する。ここで、反応液34の塗布は、図示しない塗布装置により刷毛方式またはスプレー方式等によって自動的に行われる。
【0046】
反応液34の塗布作業を終えた後は、これに引き続き
図5(b)に示すように、反応液34を塗布したリップ部22(照射対象部分)の表面に向けて、脱酸素雰囲気で照射線量が50〜500kGyに調整された電子線35を照射する。これにより、ワークWのリップ部22に対応する部分の表面に、グラフト重合によりグラフト層GS(図中破線円参照)が形成され、その表面が改質されて硬化する。ここで、
図5ないし
図7においては、ブレードラバー20を形成するリップ部22の部分を拡大しており、ヘッド部21の図示を省略している。
【0047】
このように、リップ部22に反応液34を塗布し、これに所定の照射線量に調整された電子線35を照射してグラフト重合を生じさせ、リップ部22の表面にグラフト層GSを形成している。これにより、非ジエン系であるエチレンプロピレンゴム(EPDM)と電子線35の照射とを組み合わせて、塩素化処理に依らず表面を改質して硬化させ、環境への負荷を軽減させている。
【0048】
ここで、本実施の形態に係るグラフト層成形工程においては、反応液34を塗布したリップ部22の表面に、所定の照射線量に調整された電子線35を照射してグラフト層GSを形成しているが、これに限らず、リップ部22の表面を、コロナ放電,プラズマ照射,紫外線照射等、他の照射処理により硬化させても良い。また、グラフト層GSの成形後(グラフト層成形工程後)に、必要に応じて、水,湯,アルコール等を用いてブレードラバー20の表面を洗浄しても良い。
【0049】
グラフト層成形工程での電子線35の照射処理は、リップ部22のウィンドシールド12寄り(
図5中網掛部分参照)の表面のみに施される。これにより、リップ部22の電子線35が照射された部分が硬化(表面改質)して、リップ部22とウィンドシールド12との摩擦抵抗を小さくし、ひいてはブレードラバー20のスムーズな動作を可能とする。
【0050】
ここで、ネック部23にはグラフト層GSを成形しないようにしているが、これは、ブレードラバー20の払拭性能を高めるのに、特にネック部23の柔軟性を高めることが重要である点に基づいている。つまり、ネック部23を表面改質せずに柔らかい状態としておくことで、リップ部22をブレードラバー20の移動方向に倒れ易くすることができ、これによりウィンドシールド12を良好に払拭可能としている。
【0051】
なお、グラフト層成形工程では、ブレードラバー20となるワークWの両側(
図5中上下側)について、それぞれ反応液34の塗布処理および電子線35の照射処理が施される。これにより、
図5中破線円に示すように、リップ部22の払拭方向の両側にそれぞれグラフト層GSが形成される。
【0052】
[リップ部切断工程]
次に、グラフト層成形工程を経たワークWは、照射処理装置から切断処理装置(図示せず)に搬送され、
図3のステップS3に示すリップ部切断工程に移行する。ここでは、ワークWをその長手方向に沿うよう2つに切断し、一対のブレードラバー20とする切断処理(ブレード分離)が施される。このリップ部切断工程では、
図6の矢印に示すように、まず、ワークWのリップ部22の中央部分と対向するカッター刃36を下降駆動する。すると、ワークWがその長手方向に沿ってリップ部22を中心として切断される。これにより、同じ形状の一対のブレードラバー20が形成され、ブレードラバー20の製造が完了する。
【0053】
以上詳述したように、本実施の形態に係るブレードラバー20
の製造方法によれば、ヘッド部21,リップ部22およびネック部23を、非ジエン系のゴム材料であるエチレンプロピレンゴム(EPDM)で形成して被覆部CP1とし、当該被覆部CP1の内部に、ジエン系のゴム材料である天然ゴム(NR)よりなるコア部CP2を設けた。これにより、ヘッド部21,リップ部22およびネック部23の耐劣化性を向上させることができる。また、ネック部23の内部にジエン系のゴム材料よりなるコア部CP2を設けたので、当該ネック部23の柔軟性を、天然ゴム(NR)単体での柔軟性に近付けることができる。よって、ネック部23の充分な柔軟性を確保して、ブレードラバー20を容易に反転させることが可能となり、ひいては、払拭性能を向上させつつビビリ音の発生を確実に抑制できる。
【0054】
また、本実施の形態に係るブレードラバー20
の製造方法によれば、リップ部22の表面を、電子線35を照射する照射処理により硬化(表面改質)したので、リップ部22のウィンドシールド12に対する摩擦抵抗を小さくすることができる。これにより、ブレードラバー20のウィンドシールド12に対する追従性を向上させることができ、ひいてはブレードラバー20を揺動駆動するワイパモータへの負荷を小さくすることができる。
【0055】
さらに、本実施の形態に係るブレードラバー20
の製造方法によれば、所定の照射線量の電子線35をリップ部22の表面に向けて照射し、これにより表面改質を行うので、従前のように、ジエン系のゴム材料を用いる場合に必要であった塩素化処理が不要となり、ひいては環境への負荷を軽減することが可能となる。
【0056】
また、本実施の形態に係るブレードラバー20
の製造方法によれば、ブレードラバー20を、エチレンプロピレンゴム(EPDM)および天然ゴム(NR)をそれぞれ各金型30,32に供給し、連続押出成形により2色成形している。よって、それぞれを別の製造工程で製造した後で両者を接着する場合に比して、ブレードラバー20の製造工程を簡素化することができる。したがって、ブレードラバー20の製造コストを低減することができる。さらに、完成した長尺のブレードラバー20をその短手方向に任意に切断することで、種々の長さのブレードラバーに対応することができる。
【0057】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、上記実施の形態においては、ヘッド部21,リップ部22およびネック部23の内部にそれぞれコア部CP2を設けたものを示したが、本発明はこれに限らず、ブレードラバー20の払拭性能の善し悪しに大きく左右するネック部23の内部のみに、コア部CP2を設けても良い。
【0058】
また、上記実施の形態においては、ブレードラバー20を形成するリップ部22のみに電子線35を照射し、リップ部22の表面のみを硬化(表面改質)したものを示したが、本発明はこれに限らず、電子線35を照射する照射対象部分を拡げて、ヘッド部21やネック部23等の他の部分にも電子線35を照射するようにしても良い。この場合、他の部分にそれぞれに必要とされる柔軟性を考慮して表面改質を施すようにする。
【0059】
さらに、上記実施の形態においては、連続押出成形工程で一対のブレードラバー20となるワークWを成形し、その後、リップ部切断工程でワークWを切断して一対のブレードラバー20としたものを示したが、本発明はこれに限らず、連続押出成形工程で切断後のブレードラバー20を成形するようにしても良い。この場合、リップ部切断工程を省略することができ、ブレードラバー20の製造工程をより簡素化することができる。