(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5888900
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】運動装置
(51)【国際特許分類】
A63B 22/02 20060101AFI20160308BHJP
A63B 23/04 20060101ALI20160308BHJP
A63B 71/16 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
A63B22/02
A63B23/04 Z
A63B71/16
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-175934(P2011-175934)
(22)【出願日】2011年8月11日
(65)【公開番号】特開2013-39144(P2013-39144A)
(43)【公開日】2013年2月28日
【審査請求日】2014年7月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】391010596
【氏名又は名称】昭和電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有本 健
(72)【発明者】
【氏名】竹中 雄三
(72)【発明者】
【氏名】布袋 智輝
(72)【発明者】
【氏名】足立 真也
【審査官】
青山 玲理
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−360644(JP,A)
【文献】
特表2011−500149(JP,A)
【文献】
特開2001−112886(JP,A)
【文献】
米国特許第5133339(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 22/02
A63B 23/04
A63B 71/16
A61H 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者が出入可能な開口部を備えるチャンバと、前記チャンバの前記開口部を気密に閉じるシール部材と、前記チャンバ内を加圧する圧力調整装置と、前記チャンバに収容される運動器具とを備える運動装置であって、
前記チャンバの前記開口部に設けられる係合リングと、前記係合リングに設けられ、前記チャンバの内部に突出するストッパーとをさらに備え、
前記シール部材は、前記使用者に装着され、前記係合リングの内径より大きいスカートと、前記スカートの外周端に取り付けられ、弾性を有するチューブとを備え、
前記ストッパーは、前記チューブが当たることで、前記スカートが前記係合リングから抜け出ないように、その内方に前記スカートを保持し、
前記スカートは、前記チャンバ内が加圧されることにより、前記係合リングに密接される運動器具。
【請求項2】
前記係合リングは、内周端に保護リングを備える請求項1に記載の運動装置。
【請求項3】
前記スカートは、前記使用者が装着するパンツを備える請求項1又は2に記載の運動装置。
【請求項4】
前記チャンバ内に、送風機をさらに備える請求項1〜3のいずれかに記載の運動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気圧差を利用した運動装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、空気圧差を利用した運動装置は、主として、トレーニング装置、あるいは、下肢部の筋力低下者や麻痺患者等に対する歩行訓練用のリハビリ装置として使用されてきた。このような運動装置は、特許文献1に示されるように、トレッドミル等の運動器具と、運動器具を覆い、使用者が出入可能な開口部を有するチャンバと、使用者とチャンバの開口部との間に配置され、チャンバ内を気密にするシール部材と、チャンバ内の圧力を調整する圧力調整装置とで構成されている。使用者は、開口部からチャンバ内に入り、チャンバの開口部に取り付けられたシール部材を腰部に装着することでチャンバ内を気密にした後、チャンバ内を高圧にする。これにより、使用者の下半身部が加圧され、体重が免荷された結果、ソフトなトレーニングにより、筋力や関節などに負担を掛けずに筋力強化が可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5133339号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に示されるシール部材は、チャンバの開口部に直接取り付けられているため、使用の際に、使用者は、シール部材を着脱することが困難であるという問題が生じていた。また、シール部材を介してチャンバが使用者の腰部にまとわり付くため、使用者は、運動を行いにくいという問題が生じていた。さらに、使用者の動きに順応しないため、使用者の動きに応じて隙間ができて、チャンバの開口部を十分に気密にできないという問題が生じていた。これらは、運動装置を激しい運動を伴うトレーニング装置として使用する場合に、特に顕著に問題となっていた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、チャンバ内の気密性が保たれ、かつ、使用者が容易に着脱できるシール部材を備える運動装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る運動装置は、使用者が出入可能な開口部を備えるチャンバと、前記チャンバの前記開口部を気密に閉じるシール部材と、前記チャンバ内を加圧する圧力調整装置と、前記チャンバに収容される運動器具とを備える運動装置であって、前記チャンバの前記開口部には、係合リングが設けられ、前記シール部材は、前記使用者に装着されるスカートと、弾性を有するチューブとを備え、前記チューブは、前記スカートの外周端に取り付けられ、前記スカートの外周端を前記係合リングに接触させており、前記スカートは、前記チャンバ内が加圧されることにより、前記係合リングに密接されている。
【0007】
上記運動装置において、前記係合リングは、内周端に保護リングを備えることができる。
【0008】
また、上記運動装置において、前記スカートは、前記使用者が装着するパンツを備えることができる。
【0009】
さらに、上記運動装置において、前記チャンバ内に、送風機をさらに備えることができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る運動装置のシール部材によれば、チャンバ内の気密性が保たれ、かつ、使用者が容易に着脱することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の運動装置の一実施形態を示す部分断面側面図である。
【
図3】
図1の運動装置のチャンバを縮めた時の側面図である。
【
図4】
図1の運動装置のシール部材付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係る運動装置の一実施形態について添付図面を参照して説明する。
図1に示すように、運動装置1は、トレッドミルなどの運動器具2、チャンバ10、シール部材20、圧力調整装置30から構成されている。以下では、運動器具2を使用する使用者40が向く方向を前方向として、前後左右方向を定義する。
【0013】
運動器具2には、一般に市販されている種々のトレッドミルを使用可能である他、エアロバイクなどの様々な運動器具を使用可能である。なお、陸上競技トレーニングに使用するためには、相応の速度が出せるものが好ましい。この運動器具2は、台座3上に配置されている。台座3は、運動器具2を配置するのに十分な大きさを有しており、運動器具2上で使用者40がトレーニングを行った場合でも耐え得るように形成されている。台座3には、折畳み可能な脚4及びキャスター5が取り付けられても良い。これにより、運動装置1を使用するときには、脚4を伸ばして台座3が動かないように固定することができ、運動装置1を移動させたい場合は、脚4を折畳むことで、キャスター5を使用して任意の場所に移動させることができる。
【0014】
次に、
図2及び
図3を併せて参照して、チャンバ10について説明する。チャンバ10は、気密性を有するシートで形成され、端部が台座3の外周端に取り付けられ、袋状に形成されている。シートには、透明なシート、又は不透明なシートを使用することができる。また、不透明シートを使用する場合には、前後左右の一部に透明シートで形成された透明窓11を設けることが好ましい。これにより、外部からトレーナーが使用者40のトレーニング状態を把握することができる。
【0015】
チャンバ10の上端部には、使用者40の下半身部が出入可能な大きさの円形状の開口部12が形成されている。
図4及び
図5に示すように、この開口部12の内周端には、後述するスカート22に取り付けられるチューブ23が係合可能な所定の幅を有した係合リング13が取り付けられている。この係合リング13は、内径が開口部12より小さく、かつ、外径が開口部12より大きいサイズで形成されている。また、係合リング13は、シール部材20と密接してチャンバ10を気密に閉じることができるように、剛性の高い材料で形成されている。係合リング13の内周端には、下方よりに、後述するスカート22を保護する断面略円形状の保護リング14が取り付けられており、係合リング13の外周側には、チャンバ10の内部に突出する環状のストッパー15が全周にわたって取り付けられている。
【0016】
また、チャンバ10の開口部12の左右両側には、
図2に示すように、チャンバ10を上下に伸縮させるための一対のレバー16,16が取り付けられている。各レバー16は、台座3の左右両側部に取り付けられた一対のスライドバー6,6に上下動可能に支持されており、スライドバー6,6に沿って上下に移動し、任意の高さでスライドバー6,6上に保持される。これにより、使用者40の身長にかかわらず、使用者40の腰部あたりにチャンバ10の上端を位置させることができる。また、使用者40が運動装置1を使用する際には、
図3に示すように、レバー16,16をスライドバー6,6の下端付近まで下げてチャンバ10を下方に圧縮することができ、これにより、使用者40は、容易に開口部12を介してチャンバ10内に入ることができる。
【0017】
次に、
図4及び
図5を参照して、シール部材20について説明する。シール部材20は、運動装置1の使用に際して、予め使用者40に装着されるものであり、パンツ21、パンツ21と一体に設けられるスカート22、及び、スカート22の外周端に取り付けられるチューブ23から形成されている。パンツ21には、伸縮性や弾性に優れた素材が使用されている。装着時のフィット感を高めるためには、ウエットスーツ等に用いられるクロロプレンゴム等の合成ゴムからなる素材が使用されるのが好ましい。
【0018】
スカート22は、パンツ21の腰部の周りにパンツ21と一体に設けられている。スカート22は、係合リング13の内径より大きく、かつ、ストッパー15の取り付け位置よりも小さいサイズのドーナツ状で形成されており、中央の開口から使用者40の脚を挿入してパンツ21を穿くことで装着可能である。スカート22には、気密性のある素材が使用されており、生地を4重に重ねて形成されている。後述するように、運動装置1を使用する際にチャンバ10内を高圧にするが、生地を4重に重ねて形成しているため、チャンバ10内が高圧となってもスカート22が膨らむことが抑えられ、その結果、スカート22の膨らみにより、スカート22が係合リング13から抜け出ることが防止されている。また、チューブ23は、ポリウレタン等の弾性のある素材で形成される環状のものであり、スカート22の下面の外周端に全周にわたって取り付けられている。
【0019】
再度、
図1を参照すると、チャンバ10には、前方に送風口17、後方に排気口18が備えられており、送風口17には、圧力調整装置30が取り付けられている。圧力調整装置30には、例えば、ブロア等の送風機が使用できる。圧力調整装置30を使用し、チャンバ10の外側の空気を吸気して、送風口17からチャンバ10内に送り込むことによって、チャンバ10内の圧力が高められる。また、チャンバ10内の圧力を下げる場合は、排気口18を使用し、排気口18からチャンバ10内の空気を排気することで、チャンバ10内の圧力が下げられる。これにより、チャンバ10内の圧力を調整する。
【0020】
また、チャンバ10内には、特に運動器具2の前方に設けられるカバー内に、送風機31が配置されている。この送風機31は、チャンバ10内の空気を吸気し、使用者40に対して前方から風を当てることができる。その風は、チャンバ10の後方に設けられている排気口18から排気され、これにより、チャンバ10内を循環する空気の流れが発生する。運動装置1によるトレーニングの際には、チャンバ10内がシール部材20により気密にされているため、使用者40の走行等の運動に伴う発汗によりチャンバ10内の湿度が上昇し、チャンバ10内が蒸れることがしばしばある。しかしながら、チャンバ10に送風機31を設け、チャンバ10内の空気を循環させるとともに、排気口18からチャンバ10内の湿気を排出することにより、チャンバ10内の湿度の上昇及び蒸れによる不快感を解消することができる。また、送風機31からの風は、使用者40の脚部に直接当るため、使用者40の下半身部、特に脚部を冷却することができる。
【0021】
次に、運動装置1の使用方法について説明する。まず、使用者40は、スカート22の中央開口から両脚を挿入してパンツ21を穿くことで、スカート22を使用者40の腰部に位置させる。そして、
図3に示すように、レバー16を下げ、チャンバ10の上端を台座3付近まで下げる。その後、使用者40は開口部12を介してチャンバ10内に入り、レバー16を上昇させてチャンバ10の上端を腰部まで上げて固定する。その状態で、使用者40はチューブ23を撓めて縮径させることで、開口部12を通過させてチャンバ10内にスカート22を入れる。このとき、チューブ23の弾性による復元力によりスカート22がチャンバ10内に広げられる。係合リング13にはストッパー15が設けられているため、チューブ23はストッパー15に当る位置に留められて、ストッパー15の内方でスカート22が位置決めされる。そして、スカート22の外径は係合リング13の内径より大きいため、スカート22の下面の外周端に取り付けられたチューブ23が係合リング13と係合することで、スカート22の外周端が係合リング13と密接する。これにより、スカート22が開口部12を覆う所定の位置に保持され、スカート22が一方へ偏ることにより、スカート22が係合リング13から抜け出ることが防止されている。
【0022】
その後、使用者40は、手元の操作パネル(図示せず)を操作して、圧力調整装置30を作動させ、チャンバ10内の圧力を高める。チャンバ10内の圧力が高まると、
図5の矢印Bに示すように、スカート22に内圧が掛かってスカート22が膨らみ、係合リング13に押し付けられると同時に、スカート22は、保護リング14とぴったりとくっつき、これにより、スカート22と係合リング13及び保護リング14とが密接して、開口部12が気密に閉じられる。このとき、係合リング13の内周端に取り付けられた保護リング14により、係合リング13の内周端がスカート22の生地に接触してスカート22が傷つくことが防止されている。
【0023】
以上のように、本発明では、チャンバ10とシール部材20とを別個に設けているため、使用者40は、チャンバ10内に入る前に予めシール部材20を腰部に位置させることが可能であり、シール部材20を容易に着脱することができる。また、先にシール部材20を使用者40の腰部に位置させた状態で、使用者40はチャンバ10内に入るため、使用者40はチャンバ10への出入が容易になる。加えて、チャンバ10内を加圧することでスカート22に内圧がかかり、自動的にスカート22と係合リング13及び保護リング14とが密接する。そして、使用者40が激しい運動を行って、シール部材20が使用者40と共に動いたとしても、内圧によりスカート22と係合リング13及び保護リング14との密着性は保たれるため、チャンバ10内の開口部12の十分な気密性を保つことができる。さらに、チャンバ10とシール部材20とが別部材であるため、使用者40にチャンバ10がまとわり付くことなく、使用者40は運動を行いやすい。
【0024】
また、チャンバ10内に送風機31を設け、チャンバ10に排気口18を設けることで、チャンバ10内の空気を循環させるとともに、チャンバ10内の湿気を排出することができる。これにより、トレーニングを行う使用者40の発汗によりチャンバ10内が蒸れたとしても、それによる不快感を除去することができる。
【0025】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明はこの実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態では、開口部12及びスカート22の形状を、円形状としているが、開口部12及びスカート22の形状は、円形状に限られず、楕円形状、矩形状、多角形状等の種々の形状とすることができる。このとき、係合リング13は、開口部12と相似の形状に形成され、保護リング14及びストッパー15、並びに、チューブ23は、それぞれ係合リング13及びスカート22の形状に沿うように全周にわたって設けられる。また、必ずしも開口部12とスカート22とは相似形状である必要もなく、スカート22が開口部12の内周端に取り付けられる係合リング13と密接できるように形成され、十分な気密性を保てるものであればよい。
【0026】
さらに、上記実施形態では、係合リング13の内周端に保護リング14を設けているが、スカート22と係合リング13とで開口部12の気密性が十分に保たれ、かつ、スカート22が係合リング13により傷つけられる恐れがない場合には、特に保護リング14を設ける必要はない。また、係合リング13の内周端を剛性の低い材料で覆うことで、スカート22を保護することもできる。
【0027】
また、ストッパー15は必ずしも係合リング13の全周にわたって設けられる必要はなく、係合リング13の周方向の一部分にのみ設けてもよい。
【0028】
また、上記実施形態では、スカート22にパンツ21を一体に設けているが、スカート22の内周端にゴム等を取り付け、ゴム等により使用者40の腰部に保持できるようにスカート22を形成すれば、特にパンツ21を設ける必要はない。
【0029】
さらに、上記実施形態では、スカート22の生地を4重に重ねているが、2重又は3重に重ねた場合であっても十分にスカート22の膨らみを抑えることが可能であれば、あえて4重に重ねる必要はないし、4重に重ねても十分にスカート22の膨らみを抑えることができない場合には、5重以上に重ねることも可能である。
【0030】
また、上記実施形態では、チャンバ10を上下に伸縮させるために、一対のレバー16,16をチャンバ10の開口部12の左右両側に設けたが、例えば、チャンバ10の開口部12の前方又は後方に、一本の棒状のレバーを設けても良い。このレバーの左右両端は、一対のスライドバー6,6に、それぞれ上下可能に支持されている。このようにレバーを設けることで、チャンバ10の伸縮に際して左右のレバー16,16を同時に操作する必要はなく、一本のレバーを操作するだけで、容易にチャンバ10を伸縮させることができる。
【0031】
また、上記実施形態では、外部に設けた圧力調整装置30により、チャンバ10内の圧力を調整し、送風機31により、チャンバ10内の空気を循環させているが、必ずしも、
図1の実施形態には限られない。例えば、圧力調整装置30を、台座3の内部に設け、台座3の側面から外気を吸気し、台座3の上面からチャンバ10内に空気を挿入してもよい。これにより、運動装置1をよりコンパクトにすることができる。さらに、送風機31は、必ずしも設ける必要はなく、圧力調整装置30が送風機31の機能を兼ね備えても良い。
【符号の説明】
【0032】
1 運動装置
2 運動器具
10 チャンバ
12 開口部
13 係合リング
14 保護リング
20 シール部材
21 パンツ
22 スカート
23 チューブ
30 圧力調整装置
31 送風機
40 使用者