(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5888968
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】ゲーム実行システム
(51)【国際特許分類】
A63F 13/31 20140101AFI20160308BHJP
A63F 13/77 20140101ALI20160308BHJP
A63F 13/30 20140101ALI20160308BHJP
【FI】
A63F13/31
A63F13/77
A63F13/30
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2011-277231(P2011-277231)
(22)【出願日】2011年12月19日
(65)【公開番号】特開2013-126496(P2013-126496A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2014年1月8日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】308033283
【氏名又は名称】株式会社スクウェア・エニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【弁理士】
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】青柳 秀俊
【審査官】
植田 泰輝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−240210(JP,A)
【文献】
特開2005−95601(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63F 13/00−13/98,9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a) サーバ装置と、当該サーバ装置と通信ネットワークを介して通信可能に接続された1台以上の端末装置と、からなるゲーム実行システムにおいて、
(b) 前記サーバ装置は、
(c) ゲーム実行において必要とされるゲームデータとして、ゲーム進行に必須な第1のデータと当該第1のデータ以外の第2のデータとを含むゲームデータを保持するファイル保持手段と、
(d) 前記第1のデータと第2のデータを前記端末装置に提供するデータ提供手段と、
を備え、
(e) 前記端末装置は、
(f) 前記ゲームデータに基づいてゲームを進行させるゲーム進行手段と、
(g) 前記ゲーム進行手段からの要求に応じて前記サーバ装置よりゲームデータを取得するデータ取得手段と、
を備え、
(h) 前記データ取得手段は、前記ゲームデータを取得する際に、各ゲームデータを第1のデータとして扱うか第2のデータとして扱うかを示すデータ取扱情報に基づき、前記ゲームデータのうち、前記第1のデータの取得を、第2のデータの取得よりも優先させるものであり、
(i) 前記ゲーム進行手段は、前記ゲームデータのうち、前記第2のデータが取得できてなくても、少なくとも前記第1のデータを取得した時点でゲームを進行させるものであり、
前記端末装置は、
(j)前記サーバ装置の前記ファイル保持手段に保持されている各ゲームデータを前記第1のデータとして扱うか前記第2のデータとして扱うかを選択するデータ種類選択手段をさらに備えるものである、
ことを特徴とするゲーム実行システム。
【請求項2】
請求項1記載のゲーム実行システムにおいて、
前記データ種類選択手段は、前記サーバ装置と前記端末装置との通信環境に応じて、前記ファイル保持手段に保持されている各ゲームデータを前記第1のデータとして扱うか前記第2のデータとして扱うかを所定の基準に基づいて自動で選択するものである
ことを特徴とするゲーム実行システム。
【請求項3】
請求項1記載のゲーム実行システムにおいて、
前記サーバ装置の前記データ提供手段は、前記サーバ装置から前記端末装置への前記ゲームデータの提供をピアツーピアファイル送信により行わせるための送信管理手段を有する
ことを特徴とするゲーム実行システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバ装置と、当該サーバ装置と通信ネットワークを介して通信可能な端末装置とを有し、サーバ装置から前記端末装置にゲーム実行に必要なゲームデータを送信して前記端末装置でのゲーム実行を可能にするゲーム実行システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機、パーソナルコンピュータ、スマートフォン、携帯電話機など、プラットフォームを問わず、ゲーム実行に必要なプログラムやデータを、インターネット等の通信ネットワークを介してサーバ装置から各端末装置に取得させるサービス形態をとるものが増えている。サービスの形態によっては、アップデートのためのパッチデータ等でもギガバイトを超えるものもあり、ダウンロードするデータの大サイズ化が問題になることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−166057号公報
【特許文献2】特開2007−185315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のようなサービス形態のゲームでは、必要となるデータまたはプログラムをすべて端末装置にダウンロードし終わった後に、はじめて当該端末装置でのゲーム実行を開始できる構成をとっているものが多い。そのため、ユーザーは、ダウンロードが完了するまでゲームを開始あるいは再開できず、その間待たされるという不都合が生じていた。特に、先にも述べたようにダウンロードするデータの大サイズ化が進んでいることから、ユーザーの待ち時間も長くなる傾向にあり、問題は深刻である。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、サーバ装置から通信ネットワークを介して端末装置にゲームデータを配信するゲームシステムにおいて、端末装置における待ち時間を減らしユーザビリティを向上させることのできるゲーム実行システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この本発明の主要な観点によれば、サーバ装置と、当該サーバ装置と通信ネットワークを介して通信可能に接続された1台以上の端末装置と、からなるゲーム実行システムにおいて、前記サーバ装置は、ゲーム実行において必要とされるゲームデータとして、ゲーム進行に必須な第1のデータと、当該第1のデータ以外の第2のデータとを保持するファイル保持手段と、前記第1のデータと第2のデータを前記端末装置に提供するデータ提供手段と、を備え、前記端末装置は、前記ゲームデータに基づいてゲームを進行させるゲーム進行手段と、前記ゲーム進行手段からの要求に応じて前記サーバ装置よりゲームデータを取得するデータ取得手段とを備え、前記ゲーム進行手段は、前記ゲームデータのうち少なくとも前記第1のデータを得た場合にゲームを進行させるものであり、前記データ取得手段は、前記ゲームデータを取得する際に前記第1のデータの取得を優先させるものであることを特徴とするゲーム実行システムが提供される。
【0007】
このように、前記サーバ装置が前記端末装置に提供するゲームデータにはゲーム進行に必須である第1のデータと当該第1のデータ以外の第2のデータがあり、前記端末装置は少なくとも第1のデータを得た場合にゲームを進行させるので、前記端末装置ではゲームデータが全部集まらなくてもゲームを進行させることができる。例えば、前記サーバ装置が3Dの静止画や動画を含むゲームデータを配信する場合、第1のデータを、そのゲームの世界やキャラクタのポリゴンメッシュ、オブジェクト同士のコリジョン処理の情報、バイナリー空間分割(BSP)に関する情報、ゲームソフトの思考ルーチン(AI)等とし、第2のデータを、そのゲームの世界やキャラクタの詳細なグラフィックデータや一連の動画データや音響データとすることができる。この場合、詳細なグラフィックデータや動画データや音響データは一般にデータ量が多く配信に時間がかかるが、前記ゲーム進行手段はゲームデータのうち少なくとも前記第1のデータを得た場合にゲームを進行させるので、ゲーム起動迄や次のステージの読み込み時間が短縮され、例えば上記第1のデータ中のゲーム世界のポリゴンメッシュやオブジェクト同士のコリジョン処理の情報が集まった時点でゲームの起動や進行ができるようになる。
【0008】
また、前記端末装置は前記ゲームデータのうちゲームの進行に必須である第1のデータから優先して取得するので、前記ゲーム起動や進行迄の時間短縮がより効果的に実現される。
【0009】
また、本発明の実施形態によれば、前記端末装置が、前記サーバ装置の前記ファイル保持手段に保持されている各ゲームデータを前記第1のデータとして扱うか前記第2のデータとして扱うかを選択するデータ種類選択手段をさらに備えていることを特徴とするゲーム実行システムが提供される。
【0010】
また、本発明の他の実施形態によれば、前記データ種類選択手段が、前記サーバ装置と前記端末装置との通信環境に応じて、前記ファイル保持手段に保持されている各ゲームデータを前記第1のデータとして扱うか前記第2のデータとして扱うかを所定の基準に基づいて自動で選択するものであることを特徴とするゲーム実行システムが提供される。
【0011】
また、本発明のさらに他の実施形態によれば、前記サーバ装置の前記データ提供手段は、前記サーバ装置から前記端末装置への前記ゲームデータの提供をピアツーピアファイル送信により行わせるための送信管理手段を有することを特徴とするゲーム実行システムが提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明のゲーム実行システムによれば、サーバ装置から通信ネットワークを介して端末装置にゲームデータを配信するゲームシステムにおいて、ゲーム起動や進行迄の時間を短縮できるので、端末装置における待ち時間を減らしユーザビリティを向上させることができる。
【0013】
なお、この発明の更なる他の特徴と顕著な効果は次の発明を実施するための最良の形態の項に記載された実施形態及び図面を参照することによって当業者に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】クライアント端末および中央サーバにおける処理を示す工程図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0016】
図1は本発明の一実施形態に係る全体構成を示す図である。このゲーム実行システムは、中央サーバ100と、当該中央サーバ100にインターネット等の公衆回線1を介して接続されている複数のクライアント端末200とを備えている。
図1ではクライアント端末AおよびBのみを示しているが、AおよびB以外にも複数のクライアント端末が存在する状況も当然あり得る。各クライアント端末200と中央サーバ100とは任意の通信プロトコルによって通信するようになっている。例えば各クライアント端末200は通信インターフェース210を介してサーバ装置100への要求やサーバ装置100からのデータの受け取りを行うようになっており、中央サーバ100も同様の構成となっている。
【0017】
中央サーバ100は、通信インターフェース110と、ゲーム用ファイル管理サーバ120とを備えている。本実施形態では、通信インターフェース110は所謂通信プロトコルスタックであり、中央サーバ100と外部の通信線やアンテナとの接続部(OSI参照モデルにおける物理層)と、PPP、HDLC、IPv4、IPX、TCP、UDP等の通信プロトコル(OSI参照モデルにおけるリンク層、ネットワーク層、トランスポート層等の任意の通信プロトコル)とを含むものである。通信インターフェース110は場合によってはトランスポート層及びネットワーク層を含んでいなくても良い。
【0018】
ゲーム用ファイル管理サーバ120は、例えばゲーム毎にゲームデータを格納するストレージ121を有する。ストレージ121内には例えば3Dの静止画および動画を使うゲームであるゲームAのゲームデータ300が格納されている。また、ストレージ121には、ゲームAのゲームデータとして、ゲームAの進行に必須である第1のデータ310の群と、第1のデータ以外の第2のデータ320の群とが格納されている。第1のデータ310の例としては、ゲームキャラクタやそのキャラクタが行動する世界のポリゴンメッシュ、オブジェクト同士のコリジョン処理に関する情報、バイナリー空間分割(BSP)に関する情報、ゲームソフトの思考ルーチン(AI)等が挙げられる。第2のデータ320の例としては、ゲームキャラクタそのキャラクタが行動する世界の詳細なグラフィックデータ、一連の動画データ、音響データ等が挙げられる。第2のデータ320としては、ゲームの進行に必須ではなくデータ量の大きなものを選定するのが好ましい。また、各第2のデータ320は、データ量が大きい場合はそれぞれ分割をすることも可能である。例えば、あるゲームキャラクタの詳細なグラフィックデータである場合は、そのデータを顔のデータと、衣装のデータと、手足のデータ、武器のデータとに分割し、各分割されたデータのヘッダに辞書情報(どのデータを分割したデータであるか等がわかる情報)を含ませることができる。なお、本実施形態では、分割の有無に拘わらず各ゲームデータがそれぞれデータヘッドに辞書情報(そのデータが何のデータであるか等がわかる情報)を含むものとする。さらに、ゲームA用の各ゲームデータを第1のデータ310として扱うか第2のデータ320として扱うかは、後述するように、各クライアント端末A,Bによって選択されるものであり、各クライアント端末A,Bで同じゲームデータの扱いが異なる場合もある。つまり、クライアント端末Aによって、ゲーム用ファイル管理サーバ120のストレージ121内のあるゲームデータが第1のデータ310とみなされている場合に、そのゲームデータがクライアント端末Bによって第2のデータ320としてみなされる場合もある。
【0019】
ゲーム用ファイル管理サーバ120は、各端末装置200からの要求に応じて、前記ストレージ121内の第1のデータ310と第2のデータ320を各端末装置200に提供するように中央サーバ100を動作させるデータ提供部130を有する。
【0020】
クライアント端末200は、通信インターフェース210と、表示装置221と、操作部222と、ゲーム進行部230と、ゲーム進行部230からの要求に基づきゲームデータを受信し、他のクライアント端末200からの要求に応じてゲームデータを送信するデータ受渡システム240とを有する。本実施形態のデータ受渡システム240は、後述するように、クライアント端末200から他のクライアント端末200へのゲームデータの提供をP2P通信により行わせるための送信管理手段としての機能も有する。また、本実施形態では、クライアント端末200の通信インターフェース210はサーバ端末100の前記通信インターフェース110と同様の構成を有する。
【0021】
ゲーム進行部230は、ゲームデータを取得すると、そのゲームデータと操作部222で受け付ける操作とに基づいて表示装置221上でゲームを進行させる。ゲーム進行部230は、クライアント端末200の一時メモリ上で割り振られた領域等を利用して前記ゲームの進行を行う。ここで、ゲーム進行部230は、ゲーム進行に必須である第1のデータ310が得られた時点でゲームAを進行させるように構成されている。例えば、ゲーム進行部230は、ゲームキャラクタやそのキャラクタが行動する世界の詳細なグラフィックデータ等の第2のデータ320の取得が完了する前に、ゲームAを進行させるように構成されている。
【0022】
データ受渡システム240は、データ取得部241と、データ情報送受信部242と、P2P(ピアツーピア)送受信部243と、ゲームデータ格納部244と、データ情報格納部245と、データ種類選択手段246を有する。
【0023】
データ取得部241は、ゲーム進行部230からの要求に基づき、中央サーバ100からゲームデータをダウンロードしてゲームデータ格納部244や一時メモリに記憶させるとともに、そのゲームデータをゲーム進行部230に渡すようにクライアント端末200を機能させる。なお、ダウンロードされた全てのゲームデータがゲームデータ格納部244に格納される場合もあり、一部のゲームデータがゲームデータ格納部244に格納される場合もあり、全く格納されない場合もある。本実施形態では、ゲームAについてダウンロードされたゲームデータ(第1のデータ310および第2のデータ320)の全てがゲームデータ格納部244に格納されるものとする。
【0024】
データ情報送受信部242は、自己のゲームデータ格納部244に格納されているデータの格納データ情報(例えばファイルヘッダの辞書情報等)を定期的に他のクライアント端末200に送信するようにクライアント端末200を機能させると共に、他のクライアント端末200から送信される格納データ情報を受信してデータ情報格納部245に格納するようにクライアント端末200を機能させる。尚、当該格納データ情報の通信には、近距離無線通信を用いてもよく、移動通信網やインターネット通信網を介した通信を用いてもよい。
【0025】
また、P2P送受信部243は、データ情報格納部245に格納されている前記格納データ情報に基づいて、自己のゲームデータ格納部244や他のクライアント端末200のゲームデータ格納部244に格納されているゲームデータをP2P通信によって相互に送受信し、受信したゲームデータをゲームデータ格納部244や一時メモリに記憶させると共に、そのゲームデータをゲーム進行部230に渡すようにクライアント端末200を機能させる。なお、P2P通信は、移動体通信網やインターネット通信網を使った通信や、近距離無線通信を用いて行うことが可能である。
【0026】
また、データ種類選択手段246は、ゲーム用ファイル管理サーバ120のストレージ121に格納されている各ゲームデータを第1のデータ310として扱うか第2のデータ320として扱うかを選択するための選択画面を、ゲーム進行部230等の機能を使って表示装置221に表示させる。この選択画面の一例として、ユーザーが第1のデータ310として選択するゲームデータの種別と第2のデータ320として選択するゲームデータの種別を指定する画面とすることが可能である。この選択画面では、前述のように、ゲームキャラクタやそのキャラクタが行動する世界のポリゴンメッシュ、オブジェクト同士のコリジョン処理に関する情報、空間分割に関する情報、ナビゲーションメッシュ情報、ゲームソフトの思考ルーチン(AI)や各種パラメータ、セーブデータ等の種別のゲームデータを第1のデータ310とし、ゲームキャラクタそのキャラクタが行動する世界の詳細なグラフィックデータやシェーダーデータ類、一連の動画データ、音響データ等の種別のゲームデータを第2のデータ320とすることができ、この選択を任意に変更することができる。他の例としては、グラフィックの解像度、全てのゲームデータが完全に集まってからゲームを進行するか否か等のユーザーの意向を入力する画面とすることが可能である。さらに他の例としては、ユーザーがゲームの進行スピードの意向を入力する画面とすることができる。この場合、クライアント端末200はデータ種類選択手段246により、通信帯域や通信速度等を考慮した通信環境に応じて、ゲーム用ファイル管理サーバ120のストレージ121に格納されている各ゲームデータを第1のデータ310として扱うか第2のデータ320として扱うかを所定の基準に基づいて自動で選択する。この所定の基準としては、通信帯域に関する基準であっても良く、通信速度に関する基準であっても良く、その他通信環境に関連した基準とすることが可能である。また、データ種類選択手段246は、各ゲームデータが第1のデータ310として扱われるか第2のデータ320として扱われるかのデータ取扱情報をゲーム進行部230、データ取得部241等と共有する。即ち、ゲーム進行部230は前記データ取扱情報に基づき、ゲーム進行に必須である第1のデータ310が得られた時点でゲームAを進行させるように構成されている。尚、本実施形態では、データ種類選択手段246の機能により第1のデータ310と第2のデータ320の選択を行うようにしているが、ゲーム進行部230側にその機能を持たせることも可能である。
【0027】
続いて、
図2を参照しながら、中央サーバ100および各クライアント端末200の処理の一例について以下に説明する。
【0028】
クライアント端末AおよびBのデータ受渡システム230は、前述のように、定期的に格納データ情報を交換している(ステップS1およびS2)。ここで、クライアント端末AのユーザーがゲームAを開始すると、クライアント端末Aのゲーム進行部230は表示装置221上でゲームを進行させる。ここで、ゲーム進行部230は、例えばゲームキャラクタが次に行く世界のゲームデータが必要な状態になると、そのゲームデータをデータ受渡システム240に要求する(ステップS3)。
【0029】
続いて、クライアント端末Aでは、データ受渡システム240によって、ゲーム進行部230からの要求に基づき、中央サーバ100や他のクライアント端末200から要求されたゲームデータを受取るための処理を行う。
【0030】
具体的には、データ取得部241によって、要求されたゲームデータが複数有る場合に、それぞれ第1のデータ310と第2のデータ320の何れであるか種別を判断する(ステップS5)。ここで、データ種類選択手段246の機能により、ユーザーが各ゲームデータをデータの種別に応じて第1のデータ310と第2のデータ320に指定している場合や、ゲームの設定上第1のデータ310と第2のデータ320が指定されている場合等、予め第1と第2のデータが指定されている場合は、ステップS5ではその指定に従って前記種別の判断を行う。一方、前述のように、データ種類選択手段246の機能により、通信帯域や通信速度等を考慮した通信環境に応じて、ゲーム用ファイル管理サーバ120のストレージ121に格納されている各ゲームデータを第1のデータ310として扱うか第2のデータ320として扱うかを所定の基準に基づいて自動で選択する場合、ステップS5を行う前に前記選択が自動で行われる(ステップS4)。
【0031】
続いて、ステップS5の後、要求されたゲームデータがP2P通信可能な他のクライアント端末Bのゲームデータ格納部244に格納されているか否かを自己のデータ情報格納部245の格納データ情報を参照して判断する(ステップS6)。ここでは、ゲーム進行部230からゲームデータa、b、cおよびdが要求されており、ゲームデータaとcが第1のデータ310であり、ゲームデータbとdが第2のデータ320であり、ゲームデータcとdがクライアント端末Bに格納されており、ゲームデータaとbが中央サーバ100のみに格納されているものとする。そして、クライアント端末Aは、データ取得部241によって、ゲームデータaおよびbの送信を中央サーバ100に要求し(ステップS7)、P2P送受信部243によって、ゲームデータcおよびdの送信を他のクライアント端末Bに要求する(ステップS8)。ここで、ステップS7では、第1のデータ310であるゲームデータaを先に送信するように要求し、ステップS8でも、第1のデータ310であるゲームデータcを先に送信するように要求する。
【0032】
続いて、中央サーバ100は、データ提供部130により、ゲームデータaおよびbをクライアント端末Aに送信し(ステップS9)、クライアント端末Bは、P2P送受信部243により、ゲームデータcおよびdをクライアント端末Aに送信する(ステップS10)。ここで、ステップS9では、前記ステップS6での要求通りにゲームデータaが優先して送信され、ステップS10でも、前記ステップS8で要求通りにゲームデータcが優先して送信される。
【0033】
続いて、クライアント端末Aは、データ取得部241やP2P送受信部243により、受信したゲームデータa〜dをゲームデータ格納部244に格納すると共に(ステップS11)、ゲーム進行部230に渡す(ステップS12)。
【0034】
尚、上記のステップS3〜S11のシチューエーションでは、クライアント端末Aがゲームデータを要求する端末装置として機能し、中央サーバ100およびクライアント端末Bがゲームデータを保持し且つ当該保持しているゲームデータを前記端末装置に提供するサーバ装置として機能している。
【0035】
このように、本実施形態によれば、サーバ装置として機能する中央サーバ100および他のクライアント端末Bが、端末装置としてのクライアント端末Aに提供するゲームデータには、ゲーム進行に必須である第1のデータ310と第1のデータ310以外の第2のデータ320があり、クライアント端末Aのゲーム進行部230は少なくとも第1のデータ310を得た場合にゲームを進行させるので、クライアント端末Aでは、ゲームデータが全部集まらなくてもゲームを進行させることができる。ここで、クライアント端末Aで3Dの静止画および動画を使うゲームAが実行されている場合、第2のデータ320として例示したゲームキャラクタそのキャラクタが行動する世界の詳細なグラフィックデータ、一連の動画データ、音響データ等は一般にデータ量が多く配信に時間がかかるが、ゲーム進行部230はゲームデータのうち少なくとも前記第1のデータ310を得た場合にゲームを進行させるので、ゲーム起動や進行迄の時間が短縮され、例えばゲーム世界のポリゴンメッシュやオブジェクト同士のコリジョン処理の情報が集まった時点でゲームの起動や進行ができるようになる。このため、端末装置における待ち時間を減らしユーザビリティを向上させることができる。
【0036】
また、クライアント端末Aはゲームデータ300のうちゲームの進行に必須である第1のデータ310から優先して取得するので、前記ゲーム起動や進行迄の時間短縮がより効果的に実現される。
【0037】
また、本実施形態では、前記ステップS10において、クライアント端末Bのデータ受渡システム240は、第1のデータ310であるゲームデータcと第2のデータ320であるゲームデータdを、クライアント端末AにP2P送信する。このように、上記実施形態では、サーバ装置として機能するクライアント端末Bから端末装置として機能するクライアント端末AにP2P送信によってゲームデータが送信されるので、クライアント端末AとゲームデータをP2P送信可能なクライアント端末200が多く存在すればする程、クライアント端末Aにおけるゲームデータの取得が早くなり、ゲーム起動や進行迄の時間がより短縮される。また、クライアント端末BからP2P通信によるゲームデータの送信が行われる分、中央サーバ100のデータトラフィック量を軽減することができる。このため、クライアント端末Aに限らず、中央サーバ100からゲームデータを取得しようとする他のクライアント端末においても、データのダウンロード時間を短縮することが可能となる。
【0038】
また、クライアント端末200は、ゲーム用ファイル管理サーバ120のストレージ121に保持されている各ゲームデータを第1のデータ310として扱うか第2のデータ320として扱うかを選択するデータ種類選択処理部246を備えている。このため、ユーザー毎にゲームの起動や進行迄の時間を重要視するのかグラフィック等のゲームのクオリティーを重要視するのか嗜好が様々であるところ、各ユーザーがそれぞれの嗜好に合わせてゲームをプレイすることができるようになる。
【0039】
さらに、データ種類選択処理部246は、ゲーム用ファイル管理サーバ120とクライアント端末200との通信環境に応じて、ゲーム用ファイル管理サーバ120のストレージ121に保持されている各ゲームデータを第1のデータ310として扱うか第2のデータ320として扱うかを所定の基準に基づいて自動で選択する。これにより、例えば通信速度が遅い場所では多少グラフィック等の解像度を落とした段階の画像を第1のデータ310として扱うこと等が行われ、ゲーム起動や進行迄の時間短縮と各ユーザーの嗜好への対応のバランス取るとが可能となる。
【0040】
尚、本実施形態では、クライアント端末Aがゲームデータ300を必要とした際に、中央サーバ100およびクライアント端末Bからクライアント端末Aにゲームデータ300が送信されるものを示した。これに対し、クライアント端末Aがゲームデータ300を必要とした際に、中央サーバ100のみからクライアント端末Aにゲームデータ300が送信される場合もあり、クライアント端末Bおよび他のクライアント端末のみからクライアント端末Aにゲームデータ300が送信される場合もある。これらの場合でも、クライアント端末Aのゲーム進行部230は少なくとも第1のデータ310を得た場合にゲームを進行させ、クライアント端末Aはゲームデータ300のうちゲームの進行に必須である第1のデータ310から優先して取得するので、クライアント端末Aでゲームを楽しむプレーヤがゲームの進行の遅さに起因して感じるストレスを軽減又は解消することが可能である。
【0041】
尚、本実施形態では、クライアント端末Bはクライアント端末Aにゲームデータ300を提供するサーバ装置として機能しているが、クライアント端末Bは、ゲームデータ300を要求し中央サーバ100等から受け取る端末装置として機能することもある。
【符号の説明】
【0042】
1…公衆回線、100…中央サーバ、110…通信インターフェース、120…ゲーム用ファイル管理サーバ、121…ストレージ、130…ゲーム進行部、200…クライアント端末、210…通信インターフェース、221…表示装置、222…操作部、230…ゲーム進行部、240…データ受渡システム、241…データ取得部、242…データ情報送受信部、243…P2P送受信部、244…ゲームデータ格納部、245…データ情報格納部、246…データ種類選択処理部、300…ゲームデータ、310…第1のデータ、320…第2のデータ。