(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5889024
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】容器及び容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 3/22 20060101AFI20160308BHJP
B65D 3/06 20060101ALI20160308BHJP
B65D 81/38 20060101ALI20160308BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
B65D3/22 C
B65D3/06 B
B65D81/38 E
B65D81/34 U
【請求項の数】4
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-24532(P2012-24532)
(22)【出願日】2012年2月7日
(65)【公開番号】特開2013-159381(P2013-159381A)
(43)【公開日】2013年8月19日
【審査請求日】2014年9月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000223193
【氏名又は名称】東罐興業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101856
【弁理士】
【氏名又は名称】赤澤 日出夫
(74)【代理人】
【識別番号】100097250
【弁理士】
【氏名又は名称】石戸 久子
(72)【発明者】
【氏名】松本 晃明
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 恒昭
【審査官】
家城 雅美
(56)【参考文献】
【文献】
実開昭51−025007(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0204069(US,A1)
【文献】
特表2009−543738(JP,A)
【文献】
特開2005−082165(JP,A)
【文献】
実開平06−048474(JP,U)
【文献】
特開平06−071790(JP,A)
【文献】
特開昭59−037139(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 3/00−3/30
B65D81/34
B65D81/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底部及び、この底部に向かって縮径されるようにテーパ状に形成された側壁を有し、上端に開口を画成するコップ状の本体と、
前記本体の側壁の外側に配設されるスリーブと、
を備える容器であって、
前記スリーブの肉厚は前記本体の側壁より薄く、
前記スリーブの上端と前記本体の側壁とは圧入接続されて、圧入接続部が形成されており、
前記本体の側壁と前記スリーブとの間には、前記圧入接続部の下端から前記底部に向かって空隙が形成されており、
前記圧入接続部よりも下方に前記本体の側壁と前記スリーブとを接着剤で接着する接着部が設けられており、
前記本体の開口の周囲には、前記本体の側壁の外側に向かうカール部が形成されており、
前記スリーブの上端が、前記カール部近傍に位置づけられることを特徴とする容器。
【請求項2】
前記接着部は、前記空隙内に少なくとも1箇所設けられていることを特徴とする請求項1記載の容器。
【請求項3】
前記本体の側壁を周方向に継ぐためのシーム部と、前記スリーブを周方向に継ぐためのシーム部とは、互いの周方向位置がずれていることを特徴とする請求項1または請求項2記載の容器。
【請求項4】
底部及び、この底部に向かって縮径されるようにテーパ状に形成された側壁を有し、上端に開口を画成するコップ状の本体と、前記本体の側壁の外側に配設されるスリーブとを備える容器の製造方法であって、
前記スリーブの肉厚は前記本体の側壁より薄く形成され、該スリーブの上端の内径が、対応する前記本体の側壁の外径よりも小さくなるように前記スリーブを形成し、
前記本体を前記底部側から前記スリーブ内に挿入し、前記スリーブの上端と前記本体の側壁との間を圧入状態とした圧入接続部を形成すると共に前記スリーブの前記上端を、前記本体の前記開口の周囲に前記本体の側壁の外側に向かうよう形成されたカール部の近傍に位置づけ、
前記本体の側壁と前記スリーブとの間に、前記圧入接続部の下端から前記底部に向かって空隙を形成し、
前記圧入接続部よりも下方に前記本体の側壁と前記スリーブとを接着剤で接着する接着部を設ける、
ことを特徴とする容器の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、底部に向かって縮径されるようにテーパ状に形成された側壁を有し、上端に開口を画成する本体と、この側壁の外側に配設されるスリーブとを備えた容器、及び、このような容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、紙などを用いた容器(いわゆる紙コップ)が広く使用されている。こういった容器は、近年、飲料用のコップとして使用される以外に、使用される食材と組み合わせられた調理用の容器としても使用されており、容器内の食材に熱湯などを注いで調理するのに使用されたり、または、容器ごと電子レンジに投入されて電磁波で食材を加熱して調理するのに使用されたりするものもある。
【0003】
容器に注がれる液体が熱いものであったり、冷たいものであったりする場合、もしくは、調理にあたって熱湯または電磁波によって容器内の食材が加熱される場合、容器には断熱性が求められる。
【0004】
かかる断熱性を備えた容器として、例えば、特許文献1では、紙カップ本体と、紙カップ本体に接着された外筒とで構成される紙カップが開示されている。この紙カップでは、紙カップ本体と外筒との間に空隙が形成され、断熱効果を高めている。同様に、特許文献2では、紙カップ本体と、紙カップ本体に接着されたスリーブとで構成される紙カップが開示され、断熱効果を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実用新案登録第2571797号公報
【特許文献2】特許第3291262号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
使用される食材等によって容器の大きさや形状は様々であるものの、通常、容器は使用者の手で挟持される。例えば、熱湯が注がれた容器を持って食卓に運んだり、加熱後の容器を電子レンジの中から取り出すこともある。その際、使用者は容器の開口付近を片手又は両手で挟持するので、容器の変形による内容物の飛び出しを防止するためにも、容器にはこのような使用者の挟持に対する強度(以降「挟圧強度」という)が求められる。
【0007】
本発明はこのような現状に鑑みてなされたものであり、断熱性を備えると共に、十分な挟圧強度を備えた容器、及び容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、
本発明の一態様は、底部及び、この底部に向かって縮径されるようにテーパ状に形成された側壁を有し、上端に開口を画成するコップ状の本体と、
前記本体の側壁の外側に配設されるスリーブと、
を備える容器であって、
前記スリーブの上
端と前記本体の側壁とは圧入接続されて、圧入接続部が形成されており、
前記本体の側壁と前記スリーブとの間には、前記圧入接続部の下端から前記底部に向かって空隙が形成されていることを特徴とする。
【0009】
また、本発明の一態様は、前記本体の側壁と前記スリーブとを接着剤で接着する接着部が設けられており、該接着部は前記圧入接続部よりも下方に設けられることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の一態様は、前記接着部
が、前記空隙内に少なくとも1箇所設けられていることを特徴とする。
【0011】
また、本発明の一態様は、前記本体の側壁を周方向に継ぐためのシーム部と、前記スリーブを周方向に継ぐためのシーム部とは、互いの周方向位置がずれていることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の一態様は、前記本体の開口の周囲
に、側壁の外側に向かうカール部が形成されており、
前記スリーブの前記上端が、前記カール部近傍に位置づけられることを特徴とする。
【0013】
また、本発明の一態様は、底部及び、この底部に向かって縮径されるようにテーパ状に形成された側壁を有し、上端に開口を画成するコップ状の本体と、前記
本体の側壁の外側に配設されるスリーブとを備える容器の製造方法であって、
前記スリーブの上端の内径が、対応する前記本体の側壁の外径よりも小さくなるように前記スリーブを形成し、
前記本体を前記底部側から前記スリーブ内に挿入し、前記スリーブの上
端と前記本体の側壁との間を圧入状態とした圧入接続部を形成し、
前記本体の側壁と前記スリーブとの間に、前記圧入接続部の下端から前記底部に向かって空隙を形成する、
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、コップ状の本体と、スリーブとを備える容器において、スリーブの上部と本体の側壁とは圧入接続されて、圧入接続部が形成されており、且つ、本体の側壁とスリーブとの間には、圧入接続部の下端から底部に向かって空隙が形成されることで、断熱性に加えて、容器の剛性を高めて、十分な挟圧強度を持たせることができる。
【0015】
また、本体とスリーブとを接着剤で接着する接着部を設けることで、本体とスリーブとの更なる一体感を持たせることができると共に、この接着部を圧入接続部よりも下方に設けることにより、接着剤の臭気が圧入接続部によって上方へ漏れ出すことを阻止して、使用者が本体の開口付近に口を近づけたときに臭気を感じることを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の容器を説明するための図であり、中心線の左側は側面図を示し、右側は断面図を示す。
【
図2】本発明の容器を構成する本体の断面図である。
【
図3】本発明の容器を構成するスリーブの断面図である。
【
図4】(a)は本発明の容器の開口付近の
図1中4a部分の拡大断面図であり、(b)は糸底付近の
図1中4b部分の拡大断面図である。
【
図5】本発明の容器の製造方法を説明するための概略図である。
【
図6】本発明の容器の製造方法における、圧入工程を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照してこの発明に係る容器を説明する。
【0018】
図1は本発明の容器を説明するための図である。
図1に示されるように、容器10は、コップ状の本体20と、スリーブ30とで構成される。
【0019】
本体20は、
図2に示されるように、底部21と、上端から底部21に向かって外径及び内径が漸次縮径されるテーパ状に形成された側壁23とを備え、全体で略円錐台形状に形成されて、その上端が開放されて開口22が画成されている。開口22の周囲となる側壁23の上端には、側壁の外側に向かってカール24が形成されている。底部21の外周部は下方に折り曲げられており、側壁23の下端は、底部21の折り曲げ部を覆うように、または、任意には底部21の折り曲げ部よりも下方で、内側上方に折り返されることで糸底25を形成している。
【0020】
また、必要に応じて、側壁23には、液体の入り身線を表すための環状に延びる凹部または凸部26を設けることも可能である。
【0021】
本体20は、耐水性を持たせるためにポリエステル系樹脂等の被覆層がラミネートされた紙、または合成樹脂を主原料とする合成紙等から構成することができる。
【0022】
図1に示されるように、側壁23の外側にはスリーブ30が配設される。スリーブ30は、
図3に示すように、本体20の側壁23と同様に、上部開口31から下部開口32に向かって外径及び内径が漸次縮径されるテーパ状に形成されて、全体で略円錐台形状に形成されている。スリーブ30の下端には、内側に向かってカール33が形成されている。
【0023】
スリーブ30も本体20と同様に、ポリエステル系樹脂等の被覆層がラミネートされた紙、または合成樹脂を主原料とする合成紙等から構成することができるが、被覆層は省略することも可能である。また、本体20に比較して、スリーブ30の肉厚は薄くすることができる。
【0024】
テーパ状のスリーブ30と、テーパ状の本体20の側壁23とは、その傾斜角度が異なっており、スリーブ30の傾斜角度(鉛直線からの角度とする)の方が小さく、スリーブ30の下端のカール33が糸底25の近傍の側壁23外周面に当接し、その上端がカール24の近傍の側壁23外周面に当接するようになっている。尚、スリーブ30の上端が当接する地点は、カール24の直下か、またはカール24の内部でもよい。
【0025】
ここで、本体20とスリーブ30とが接続される前の寸法の関係について説明する。
図2に示されるように本体20の側壁23のスリーブ30の上端が当接する地点での外径をAとし、
図3に示されるようにスリーブ30の上端の内径をBとしたときに、この外径Aと内径Bとは、A>Bの関係を有するように設定される。例えば、内径Bは外径Aよりも0.2〜1.5mm程度、好ましくは1mm程度小さくなるように設定されるとよい。また、内径Bと外径Aとが等しくなる地点は、本体20の側壁23のスリーブ30の上端が当接する地点よりも0.2〜1.5mm程度、好ましくは1mm程度低い位置に設定されるとよい。
【0026】
本体20がその底部21側からスリーブ30内に相対的に挿入されて、スリーブ30は本体20の外側に配設される。ただし、前述したようにスリーブ30の内径Bは本体20の外径Aよりも小さいため、スリーブ30の上部と、それに対応する側壁23の部分とは、圧入状態で接続された圧入接続部42となる。
【0027】
この本体20とスリーブ30との接続構造について
図4を参照してより詳しく説明する。
図4(a)の参照符号42は、前述の圧入によってスリーブ30と本体20とが接続された部分である圧入接続部を示している。圧入接続部42では、スリーブ30は、側壁23の外径に適合するべく拡径されて接線引張応力を受けた状態となり、対応する本体20の側壁23は縮径されて接線圧縮応力を受けた状態で、スリーブ30と本体20の側壁23とが密着している。そして、スリーブ30と本体20の側壁23とのテーパ状の傾斜角度の相違から、圧入接続部42の下端から底部21方向には、空隙40が形成されている。
【0028】
好ましくは、空隙40内の適宜個所には、スリーブ30と本体20の側壁23とを接着するための接着剤51、52が塗布された接着部が設けられる。但し、接着部は、圧入接続部42よりも下方の位置とする。また、任意には、少なくとも1つの接着部を、入り身線用の凹部または凸部の位置と一致させてもよい。
【0029】
図4(b)に示されるように、カール33の頂部に対応する箇所にも接着剤53が塗布されており、これによりカール33は糸底25近傍の側壁23に接着される。尚、好ましくは、スリーブ30の下端は、糸底25の下端よりも上方になるように設定され、これによって、下端の平面度がカール33よりも正確になっている糸底25がテーブル等の設置面に直接、接触されるようにするとよい。
【0030】
次に、容器10の製造方法を説明する。
【0031】
本体20は、従来の方法により製造することができる。例えば、先ず、原料紙にポリエチレンフィルム等の被覆層を貼り付けるラミネート加工を行い、加工後の紙から本体20の側壁23となる扇状のブランクと、底部21となる底紙とを打ち抜き、その後、扇状のブランクの端部同士を接着したシーム部27を形成してテーパ状の側壁23を形成し、側壁23と底紙を接着し、底仕上げを行って底部21と糸底25とを形成し、回転させながら側壁23の上端にカール24を形成して本体20を完成させる。
【0032】
また、
図5の(1)に示されるように、本体20を回転させながら接着剤51、52及び53を側壁23の外側に塗布する。
【0033】
スリーブ30の製造では、
図5の(2)に示されるように、扇状のブランクを打ち抜く。この後、
図5の(3)に示されるように扇状のブランクの端部同士を接着したシーム部34を形成してテーパ状のスリーブに成型し、スリーブの下端にカール33を形成する(
図5の(4))。
【0034】
この後、
図5の(1)に示される本体20に対して、
図5の(4)に示されるスリーブ30を被せる。例えば、
図6に示されるように、スリーブ30内に本体20をその底部21側から挿入する。この挿入時に、スリーブ30の上端の内径Bは、本体20の側壁23の外径よりも途中までは大きいために、円滑に挿入されるが、スリーブ30の上端の内径Bが、本体20の側壁23の外径と等しくなると、その後は、圧入となり、スリーブ30の上部がやや拡径され、本体20の側壁23の対応する部分がやや縮径されて、
図4(a)に示されるような圧入接続部42が形成される。また、同時に、接着剤51、52及び53がスリーブ30の内周面に接触して、スリーブ30が本体20に接着される。
【0035】
尚、この挿入時に、スリーブ30のシーム部34と、本体20のシーム部27とは、周方向位置が一致しないようにするとよい。これにより、圧入時のシーム部の破損及び挿入時のカール33の破損を防ぐことができる。また、スリーブ30のシーム部34と本体20のシーム部27とは、好ましくは、これらのシーム部間でなす中心角が90度〜150度、または、210度〜270度のずれとなるように設定すると、使用者がスリーブ30を把持する周方向位置に挟圧強度があまり依存せずに、均一した挟圧強度が得られるため好ましい。
【0036】
圧入接続部42が形成されることで、スリーブ30の上部と本体20の側壁23との間の密着度及び一体性が増加し、その部分の剛性が高くなり、十分な挟圧強度が容器10に備わる。また、本体20の側壁23は圧縮応力を受けるものの、本体20の上端には剛性の高いカール24が形成されているために、圧入接続部42が本体20の上端の内径に影響を与えることを防ぐことができる。
【0037】
一方、本体20とスリーブ30との間には空隙40が形成されているため、従来通りの断熱性を維持することができる。
【0038】
さらに、本体20の開口22に近い圧入接続部42には、糊などの接着剤が使用されないため、飲食中の使用者が食材以外の臭気を感じることを防ぐことができる。そして、圧入接続部42よりも下方の位置に接着部を設けることで、接着剤の臭いが上昇して外部に漏れ出すことを圧入接続部42で阻止することができる。
【0039】
接着剤51、52による接着部は、本体20とスリーブ30との相対変位を防止し、本体20とスリーブ30との一体性を確保することができる。また、空隙40内に設けられることで、空隙40を確保するスペーサとしての機能も有することができる。接着剤がスリーブ30と本体20の間隙を埋めることで、剛性を付与することができる。
【符号の説明】
【0040】
10 容器
20 本体
21 底部
22 開口
23 側壁
24 カール
25 糸底
27 シーム部
30 スリーブ
34 シーム部
40 空隙
42 圧入接続部
51、52、53 接着剤
A スリーブの上端に対応する本体の側壁の外径
B スリーブの上端の内径