(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、定格600Vの電力ケーブルを対象とした場合を一例として説明するが、対象とする電圧に応じてサイズや形状は変わり得る。本発明に係る絶縁防水部材は、対象となる電圧の大きさに限定されるものではない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る絶縁防水部材1を示す斜視図であり、使用前の状態を示している。
図2は、使用後の絶縁防水部材1を示す図であり、(a)は外観を示し、(b)は断面を示している。
図1及び
図2に示すように、絶縁防水部材1は、ケーブル100の接続部101を絶縁及び防水する。なお、本実施形態において「ケーブル」という語は、電線、電纜を含むものとして用いる。本実施形態では、ケーブル100をY分岐接続する場合を例として説明する。接続部101では、主幹ケーブル100Aに対して、主幹ケーブル100B及び分岐ケーブル100Cが接続されている。主幹ケーブル100Aの被覆除去部102Aと、主幹ケーブル100Bの被覆除去部102Bと、分岐ケーブル100Cの被覆除去部102Cとが圧着具103で接続されることによって、接続部101が形成される。絶縁防水部材1は、接続部101を覆うためのシール材2と、接続部101をシール材2を介して覆うための(すなわち、シール材2を更に外側から覆う)保護シート3と、を備えている。接続部101は、少なくとも電線が露出している被覆除去部102A,102B,102C及び圧着具103の部分の全てがシール材2で覆われ、当該接続部101を覆うシール材2が完全に保護シート3で覆われる(
図2参照)。なお、主幹ケーブル100Aと主幹ケーブル100Bとは、互いに切断されたものであり、圧着具103によって、互いの切断部分を分岐ケーブル100Cと共に接続するものであってよい。または、主幹ケーブル100Aと主幹ケーブル100Bとが連続した1本のケーブルであってもよい。この場合、一本のケーブルの途中の被覆を除去することにより被覆除去部を形成し、当該被覆除去部に分岐ケーブル100Cを接続することができる。
【0018】
保護シート3は、粘着性を有し、耐水性、絶縁性、耐候性に優れた材料からなるシートである。保護シート3の材料として、例えば、ポリエチレン、PVC(ポリ塩化ビニル)などを適用することができる。保護シート3の厚さは、例えば1mm程度に設定できるが、引き伸ばすことができる厚さであって、覆った中身のものを保護できる厚さであれば特に限定されず、あらゆる寸法に設定可能である。保護シート3は、シール材2側の面である内面3aに粘着剤層を有している。一方、保護シート3は、シール材2とは反対側の面である外面3bには粘着剤層を有していない。従って、保護シート3は、接続部101が配置される側の内面3aは粘着性を有しており、接続部101に対して外側の外面3bは粘着性を有していない。
【0019】
保護シート3は、接続部101を覆うための本体部10と、本体部10から第1の方向D1へ延在する延在部11と、を有している。ここで、延在部11が延在する方向である第1の方向D1に対して、当該第1の方向D1と交わる(ここでは直交している)方向である第2の方向D2が設定されるものとして、以下の説明を行う。なお、接続部101を絶縁・防水する際、主幹ケーブル100A,100Bが第2の方向に沿って延びるように、接続部101が配置される。
【0020】
本実施形態では、本体部10は、矩形状に形成されており、第1の方向D1に平行な外縁10a,10bと、第2の方向D2に平行な外縁10c,10dと、を有している。外縁10aと外縁10bとの間の寸法は、140〜280mm程度に設定される。外縁10cと外縁10dとの間の寸法は、130〜230mm程度に設定される。なお、本体部10と延在部11A、11B,11Cとは、一体的に連結されているので、両者の境界である外縁10dは目視することができず、図においても仮想線で示されている。本体部10には、第2の方向における一端側(本実施形態では、外縁10a側)の領域である第1の領域12Aと、第2の方向における他端側(本実施形態では、外縁10b側)の領域である第2の領域12Bと、第1の領域12Aと第2の領域12Bとの間の領域である第3の領域12Cと、が設定されている。
図1に示す例では、本体部10に対して、第1の方向と平行な仮想線L1,L2を設定することにより、第2の方向に沿って三分割された領域が形成されている。外縁10aと仮想線L1との間に第1の領域12Aが形成され、仮想線L1と仮想線L2との間に第3の領域12Cが形成され、仮想線L2と外縁10bとの間に第2の領域12Bが形成されている。
【0021】
延在部11は、少なくとも、第1の領域12A、第2の領域12B、及び第3の領域12Cで、本体部10及び当該本体部10に覆われるシール材2に対して圧力を付与可能な構成となっている。具体的には、保護シート3は、本体部10の第1の領域12Aから第2の方向へ延在する第1の延在部11Aと、本体部10の第2の領域12Bから第2の方向へ延在する第2の延在部11Bと、本体部10の第3の領域12Cから第2の方向へ延在する第3の延在部11Cと、を有している。延在部11A,11B,11Cは、引き伸ばされてシール材2及び本体部10を介して接続部101に巻きつけられることにより、シール材2及び本体部10に圧力を付与する。
【0022】
延在部11A,11B,11Cは、矩形状の保護シート3の一の外縁3cに二つのV字状の切り込み部CT1及びCT2を入れることによって形成される。なお、切り込み部CT1,CT2が入っていない部分が本体部10となる。第1の延在部11Aは、本体部10の外縁10dの第1の領域12Aに対応する位置に連結されており、第1の方向に平行な外縁11Aaと、第2の方向に平行な先端縁11Abと、切り込み部CT1によって形成される傾斜縁11Acと、を有している。第2の延在部11Bは、本体部10の外縁10dの第2の領域12Bに対応する位置に連結されており、第1の方向に平行な外縁11Baと、第2の方向に平行な先端縁11Bbと、切り込み部CT2によって形成される傾斜縁11Bcと、を有している。第3の延在部11Cは、本体部10の外縁10dの第3の領域12Cに対応する位置に連結されており、第2の方向に平行な先端縁11Cbと、切り込み部CT1によって形成される傾斜縁11Caと、切り込み部CT2によって形成される傾斜縁11Ccと、を有している。
【0023】
第1の延在部11Aの外縁11Aaは、本体部10の外縁10aと連続した直線をなしている。第2の延在部11Bの外縁11Baは、本体部10の外縁10bと連続した直線をなしている。先端縁11Ab,11Bb,11Cbは、切り込み部CT1,CT2が入る前の保護シート3の外縁3cに該当するものであり、それぞれ同一直線上に形成される。先端縁11Ab,11Bb、11Cbと外縁10dとの間の寸法A、すなわち延在部11A,11B,11Cの延在量は、(
図5(c)の作業において)少なくとも一周巻きつけることができる量とすることが好ましい。第1の延在部11Aと第3の延在部11Cとの間、すなわち傾斜縁11Acと傾斜縁11Caとの間は、V字状に形成されている。当該V字形状の角度は鋭角であることが好ましい。また、当該V字形状の先端ポイントP1は、本体部10の外縁10dと仮想線L1との交点上に配置される。第2の延在部11Bと第3の延在部11Cとの間、すなわち傾斜縁11Bcと傾斜縁11Ccとの間は、V字状に形成されている。当該V字の角度は鋭角であることが好ましい。また、当該V字形状の先端ポイントP2は、本体部10の外縁10dと仮想線L2との交点上に配置される。
【0024】
なお、本実施形態では、各領域12A,12B,12Cは、説明のために仮想線L1,L2を用いて明確に定義されているが、どのように設定するかは任意である。すなわち、第1の領域12Aが本体部10の第2の方向における一端側の領域であり、第2の領域12Bが本体部10の第2の方向における他端側の領域であり、第3の領域12Cが各領域12A,12Cの間の領域であるという位置関係を満たしている限り、各領域12A,12B,12Cがどのように設定されていてもよい。
【0025】
シール材2は、耐水性、絶縁性、耐候性に優れた材料からなるシートである。シール材2の材料として、例えば、ブチルゴム、シリコンゴム、EPDM、NBRなどを含有する絶縁性のパテなどを適用することができる。シール材2の厚さは、例えば、3mm以上、4mm以上、または5mm以上、かつ8mm以下、10mm以下、または12mm以下とすることができる。
【0026】
シール材2は、矩形状に形成されており、互いに平行な外縁2c,2dと、当該外縁2c,2dと垂直をなすと共に互いに平行な外縁2e,2fと、を有している。シール材2は、外縁2c,2dが第1の方向D1と平行となり、外縁2e,2fが第2の方向D2と平行となるように、配置される。また、シール材2は、その外面2bが保護シート3の本体部10の内面3aに接合されるように、当該本体部10の内面3a上に重ね合わせられる。外縁2cと外縁2dとの間の寸法は、本体部10の外縁10aと外縁10bとの間の寸法よりも小さく、120〜220mm程度に設定される。外縁2eと外縁2fとの間の寸法は、本体部10の外縁10cと外縁10dとの間の寸法よりも小さく、120〜260mm程度に設定される。本実施形態では、外縁2cが本体部10の外縁10aよりも平面方向内側に配置され、外縁2dが本体部10の外縁10bよりも平面方向内側に配置される。なお、外縁2cと外縁10aとの間、及び外縁2dと外縁10bとの間には、延在部11A,11B,11Cを引き伸ばして巻きつけることによりシール材2が締め付けられた場合でも、当該シール材2が保護シート3からはみ出ない程度のクリアランスを確保することが好ましい。外縁2fは本体部10の外縁10dよりも平面方向内側に配置され、外縁2eは本体部10の外縁10cと略一致するように配置されている(完全に一致していてもよく、外縁2eが外縁10cより僅かに内側に配置されてもよい)。シール材2は、保護シート3の本体部10に対して、一部分が接合されていると共に他の部分が非接合とされている。本実施形態では、外縁2e側の略半分の領域が本体部10に接合されている。一方、外縁2f側の略半分の領域が本体部10の内面3aと非接合とされている。絶縁防水部材1の流通過程においては、当該領域に保護シート3とシール材2との間に離型紙P(
図3(b)を参照)を介在させることで、シール材2と保護シート3が非接合となっている状態を維持する。なお、流通過程においては、粘着性を有する面である、保護シート3の内面3a及びシール材2の内面2aも離型紙で覆われている。
【0027】
次に、
図3〜5を参照して、上述の絶縁防水部材1を用いて、ケーブル100の接続部101を絶縁及び防水する絶縁防水方法について説明する。なお、以下の説明では、定格600Vの電力ケーブルを対象とした場合を一例として説明しているが、対象とする電圧が異なる場合は、適宜サイズの変更が必要となる。
【0028】
まず、
図3(a)に示すように、各ケーブル100A,100B,100Cのシース及び絶縁体を剥ぎ取る。この時、図に示すBの寸法を60〜110mm程度に設定し、図に示すCの寸法を45〜85mm程度に設定する。また、所定の工具にて、主幹ケーブル100Aの被覆除去部102Aと、主幹ケーブル100Bの被覆除去部102Bと、分岐ケーブル100Cの被覆除去部102Cとを圧着具103で接続する。以上によって、接続部101を形成する。次に、
図3(b)に示すように、接続部101をシール材2の略中央位置に配置する。このとき、主幹ケーブル100A,100Bの離型紙P側の端面(
図3(b)における紙面上側の端部)と、離型紙Pの接続部101側の端部(
図3(b)における紙面下側の端部)が合うように、接続部101を配置する。このとき、図に示すDの寸法を30〜50mm程度に設定する。
【0029】
次に、
図4(a)に示すように、離型紙P上のシール材2を持ち上げると共に、離型紙Pを取り除く。
図4(b)に示すように、主幹ケーブル100Bと分岐ケーブル100Cとの間を開き、当該隙間にシール材2の外縁2fを入り込ませる。
図4(c)に示すように、主幹ケーブル100Bと分岐ケーブル100Cに十分にシール材2を詰め込む。
図4(d)に示すように、シール材2の残りの部分は、ケーブル100A,100B,100C及び接続部101に隙間なく巻きつける。
【0030】
次に、
図5(a)に示すように、主幹ケーブル100Bと分岐ケーブル100Cとを結束する結束バンドBDを取り付ける。また、シール材2が接合されている側(延在部11A,11B,11Cと反対側)の保護シート3を各ケーブル100A,100B,100Cに巻きつける。このとき、すでにケーブル等に巻きつけられているシール材2と、新たに巻きつけるシール材2とが隙間なく繋がるようにする。次に、
図5(b)に示すように、保護シート3の延在部11A,11B,11C側の部分をケーブル等に巻きつける。
図5(c)に示すように、中央部に位置する第3の延在部11Cの先端部を十分に引っ張って、引き伸ばした状態で巻きつけながら接着する。これによって、中央位置付近の第3の領域12Cにおける本体部10及びシール材2に圧力が付与され、当該部分で確実に防水性が確保される。次に、
図5(d)のように、第2の方向D2の一端側に位置する第1の延在部11Aの先端部を(
図5(c)に示すごとく)十分に引っ張って、引き伸ばした状態で巻きつける。これによって、第1の領域12Aにおける本体部10及びシール材2に圧力が付与され、当該部分で確実に防水性が確保される。このとき、本体部10の外縁10aに沿って、シール材2を隠すように巻きつけることが好ましい。また、第2の方向D2の他端側に位置する第2の延在部11Bの先端部を(
図5(c)に示すごとく)十分に引っ張って、引き伸ばした状態で巻きつける。これによって、第2の領域12Bにおける本体部10及びシール材2に圧力が付与され、当該部分で確実に防水性が確保される。このとき、本体部10の外縁10bに沿って、シール材2を隠すように巻きつけることが好ましい。以上によって、
図2(a)に示す状態となり、接続部101の絶縁・防水が完了する。
【0031】
次に、本実施形態に係る絶縁防水部材1の作用・効果について説明する。
【0032】
例えば、
図6(a)に示す比較例に係る絶縁防水部材200のように、単なる矩形状の保護シート203をシール材2と共に接続部101に巻きつけるものであった場合、シール材2の接続部101に対する押し付けが不十分で、十分な防水性が確保できない場合がある。一方、本実施形態に係る絶縁防水部材1において、保護シート3は、本体部10から第1の方向D1へ延在する延在部11A,11B,11Cを有している。第2の方向D2に沿ってケーブル100が延びるように接続部101をシール材2に配置し、当該接続部101をシール材2及び保護シート3の本体部10で覆った後、延在部11A,11B,11Cは、シール材2及び本体部10に対して圧力を付与する。これによって、シール材2が接続部101に十分に押し付けられるため、防水性を高めることができる。
【0033】
また、延在部11A,11B,11Cは、本体部10から第1の方向(ケーブル100が延びる方向と交わる方向である)へ延在しているため、接続部101へ延在部11A,11B,11Cを巻きつけるようにして本体部10及びシール材2に圧力を付与できる。これにより、接続部101の形状によらず、あらゆる態様の接続部101に適用可能である。例えば、
図11に示すように、比較例として、本体部10の外縁10bから第2の方向D2へ延在するような延在部261が形成されている保護シート253を挙げる(なお、被覆除去部102や圧着具103付近を部分的に覆う絶縁シートなどが配置されるが、
図11では省略する)。比較例に係る保護シート253では、主幹ケーブル100Bと分岐ケーブル100Cとの間のY字分岐部に対して部分的にシール材252を詰め込み(
図11(a)及び
図11(b)を参照)、本体部10の外縁10bの延在部261でY字分岐部を覆う(
図11(c)を参照)。このような保護シートでは、Y字分岐の接続部にしか対応することができず、他の形態の接続部(例えば、
図10に示すような形態)には用いることができない。また、分岐部に部分的に詰め込むためのシール材252が必要となり、部品点数が増えてしまう。一方、本実施形態に係る絶縁防水部材1は、延在部11A,11B,11Cを接続部101に対して横から巻きつけるようにするものなので、接続部101の形態に関わらず、シール材を十分に接続部101に押し付けることができる。よって、
図10(a)に示すように、一本のケーブル100Aに対して、三つのケーブル100B,100C,100Dが分岐するような形態の接続部にも対応可能であり、
図10(b)に示すように、二本のケーブル100A,100Eに対して二本のケーブル100B,100Fを接続するX分岐の接続部にも対応可能である。また、分岐部分に部分的に詰め込むためのシール材を用いなくとも、一枚の矩形状のシール材2のみで、各形態の接続部に対応可能である。
【0034】
また、
図6(b)に示す絶縁防水部材300の保護シート303のように、第2の方向D2における両端側には延在部311A,311Bが形成されているが、それらの間の領域には延在部が設けられておらず、真っ直ぐな外縁310dとなっている場合、中央位置付近においてシール材2及び本体部310に十分な圧力を付与することができない。従って、当該部分で十分な防水性が得られない場合がある。一方、本実施形態では、延在部11A,11B,11Cは、第2の方向D2における一端側の第1の領域12A、他端側の第2の領域12B、及び第1の領域12Aと第2の領域12Bとの間の第3の領域12Cで、シール材2及び本体部10に対してそれぞれ圧力を付与可能である。従って、延在部11A,11B,11Cは、両端側における防水性を確保すると共に、それらの間の領域においても防水性を確保できる。これにより、高い防水性を確保できる。
【0035】
例えば、絶縁防水部材1は、次の基準を満足する性能を得ることができる。なお、以下の項目は、「JCAA(日本電力ケーブル接続技術協会)」で制定したK1101「600V 架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル用接続部性能基準」の直線接続部の項目である。
商用耐電圧:3.5kV、10分間(通電温度上昇後は1.0kV、10分間)に耐える。
通電温度上昇:105℃、3時間、3回で異常が無い。
気密(外圧):98kPa、一時間で内部浸水がないこと。
【0036】
また、例えば、
図9に示す変形例に係る保護シート903のように、長尺の帯状の延在部911を巻きつけて各領域に圧力を付与するタイプのものであった場合、作業者が位置を調整しながら巻きつけを行う必要がある。一方、本実施形態では、保護シート3は、本体部10の第1の領域12Aから延在する第1の延在部11Aと、本体部10の第2の領域12Bから延在する第2の延在部11Bと、本体部10の第3の領域12Cから延在する第3の延在部11Cと、を有する。すなわち、圧力を付与したい領域から、当該領域へ圧力付与可能な延在部が直接設けられている。これにより、作業者は特に巻きつけ位置を調整しなくとも、第1の延在部11Aで第1の領域12Aへ確実に圧力を付与し、第2の延在部11Bで第2の領域12Bへ確実に圧力を付与し、第3の延在部11Cで第3の領域12Cへ確実に圧力を付与できる。このように、保護シート3は、圧力付与の対象となる領域に対応する位置に延在部11A,11B,11Cを有しているため、作業者にとっての作業性が向上する。
【0037】
また、第1の延在部11Aと第3の延在部11Cとの間、及び第2の延在部11Bと第3の延在部11Cとの間はV字状に形成されている。例えば、
図6(b)に示す比較例に係る保護シート303のように、延在部311Aと延在部311Bの間が途切れていた場合、当該途切れた位置(外縁310dの位置)でのシール材2及び本体部10に対する圧力が不十分となる。一方、V字状に形成しておくことで、各延在部の間で途切れることなく、シール材2及び本体部10に対してまんべんなく圧力を付与できる。また、矩形状の保護シートにV字状の切れ込み部CT1,CT2を入れるだけで容易に延在部11A,11B,11Cを形成することが可能となる。
【0038】
また、シール材2は、保護シート3の本体部10に対して、一部分が接合されていると共に他の部分が非接合とされている。これにより、作業者は、非接合とされているシール材2の部分を容易に動かすことができる。従って、主幹ケーブル100Bと分岐ケーブル100Cとの間の部分にシール材2を容易に埋めることが可能となる(
図4(b)を参照)。
【0039】
また、延在部11A,11B、11Cは、引き伸ばされてシール材2及び本体部10を介して接続部101に巻きつけられることにより、シール材2及び本体部10に圧力を付与する。これにより、作業者は、延在部11A,11B、11Cを引き伸ばして接続部101に巻きつけるだけの作業で、確実な防水性を確保することができる。
【0040】
次に、
図6を参照して、比較例に係る絶縁防水部材200,300と実施例に係る絶縁防水部材400の比較実験について説明する。比較例1に係る絶縁防水部材200を
図6(a)に示す。比較例1に係る絶縁防水部材200は、延在部を有しておらず、矩形状の保護シート203に矩形状のシール材2を配置したものである。当該絶縁防水部材200をY字分岐の接続部101に巻きつけ、気密試験(内圧試験、49kPa、1時間)を行った。当該気密試験の結果、エア漏れが確認されたポイントを図においてALで示す。このように、巻きつけられた絶縁防水部材200の第2の方向D2における両端側からエア漏れが確認された。このように、両端側で防水性が得られないことが理解される。
【0041】
比較例2に係る絶縁防水部材300を
図6(b)に示す。比較例2に係る絶縁防水部材300は、第2の方向D2における両端側に延在部311A,311Bをそれぞれ有しているが、延在部311A,311Bの間の領域には延在部が形成されておらず、本体部10の外縁310dが真っ直ぐに延びている。当該絶縁防水部材300をY字分岐の接続部101に巻きつけ、気密試験(内圧試験、49kPa、1時間)を行った。当該気密試験の結果、エア漏れが確認されたポイントを図においてALで示す。このように、巻きつけられた絶縁防水部材300の延在部が設けられていない外縁310dにてエア漏れが確認された。このように、中央部での防水性が得られないことが理解される。
【0042】
実施例1に係る絶縁防水部材400を
図6(c)に示す。実施例1に係る絶縁防水部材400は、第2の方向D2における両端側に延在部411A,411Bをそれぞれ有しており、延在部411A,411Bの間に二つの延在部411C,411Dを有している。すなわち、第3の領域に該当する位置に、二つの延在部411C,411Dが形成されている。当該絶縁防水部材400をY字分岐の接続部101に巻きつけ、気密試験(内圧試験、49kPa、1時間)を行った。当該気密試験の結果、実施例1に係る絶縁防水部材を用いた場合、いずれの位置においてもエア漏れは確認されない。また、
図1に示す実施形態に係る絶縁防水部材1についても、
図6(c)に示す実施例1と同じく、いずれの位置においてもエア漏れは確認されなかった。これにより、十分な防水性が得られていることが理解される。なお、実施例1では延在部が4つ形成されているので、作業者が4回延在部の巻きつけを行う必要がある。一方、
図1に示す絶縁防水部材1の場合は延在部が3つ形成されているので、作業者は3回の巻きつきを行えばよいので、更に作業性が向上している。
【0043】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0044】
例えば、上述の実施形態では、シール材2は、外縁2f側の略半分の領域が本体部10の内面3aと非接合とされていた。これに代えて、
図7(a)に示すように、外縁2e側の略半分の領域が本体部10と非接続とされていてもよい。または、
図7(b)に示すように、外縁2f側の一部の領域と外縁2e側の一部の領域が本体部10と非接合とされており、中央部のみが本体部10と接合されているような構成でもよい。また、
図1及び
図7に示す例では、非接合となる部分にはシール材2と本体部10との間に離型紙を配置することで非接合としていた。しかし、本体部10に対してシール材2をずらして配置し、シール材2の一部を本体部10の外縁10cよりも外側まではみ出させることにより、非接合な部分を形成してもよい。
【0045】
また、延在部の形状は特に限定されず、
図8に示すように様々な形状に変更可能である。
図8(a)に示す絶縁防水部材500の保護シート503は、外縁からポイントP1まで真っ直ぐな切れ込みSL1を入れると共に、外縁からポイントP2まで真っ直ぐな切れ込みSL2を入れることにより、第1の延在部511A、第2の延在部511B、第3の延在部511Cを有している。このように、真っ直ぐな切れ込みSL1,SL2を入れるだけの簡単な作業で、延在部511A,511B,511Cを形成することができる。更に、
図8(b)に示す絶縁防水部材600の保護シート603は、切れ込みSL1,SL2に加えて、当該切れ込みSL1,SL2の外縁側の一部にV字状の切り込み部が形成されている。これにより、作業者は、延在部611A,611B,611C同士を容易に引き離すことができる。
【0046】
また、
図8(c)に示す絶縁防水部材700の保護シート703は、三角形状の第1の延在部711A、第2の延在部711B、第3の延在部711Cを有している。更に、
図8(d)に示す絶縁防水部材800の保護シート803は、三角形の先端に指でつかみやすいように丸い形状が付加された第1の延在部811A、第2の延在部811B、第3の延在部811Cを有している。
【0047】
図8(e)に示す絶縁防水部材350の保護シート353は、矩形状の第1の延在部361A、第2の延在部361B、第3の延在部361Cを有している。第1の延在部361Aと第3の延在部361Cとの間、及び第2の延在部361Bと第3の延在部361Cとの間には隙間が形成されている。このような形態であっても第1の領域、第2の領域、第3の領域に圧力を付与できる。ただし、延在部同士が途中で切れることなく連続している、
図1及び
図8(a)〜(d)に示す絶縁防水部材の方が、より確実に防水性を確保することができる。
【0048】
図9(a)に示すような絶縁防水部材900を採用してもよい。この絶縁防水部材900の保護シート903の延在部911は、長尺な帯状に形成されている。
図9(b)に示すように、長尺な帯状の延在部911を、第2の方向D2における一端側から他端側に亘って巻きつけることで、第1の領域、第2の領域及び第3の領域に圧力を付与できる。