特許第5889047号(P5889047)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニーの特許一覧

<>
  • 特許5889047-絶縁防水部材及び絶縁防水方法 図000002
  • 特許5889047-絶縁防水部材及び絶縁防水方法 図000003
  • 特許5889047-絶縁防水部材及び絶縁防水方法 図000004
  • 特許5889047-絶縁防水部材及び絶縁防水方法 図000005
  • 特許5889047-絶縁防水部材及び絶縁防水方法 図000006
  • 特許5889047-絶縁防水部材及び絶縁防水方法 図000007
  • 特許5889047-絶縁防水部材及び絶縁防水方法 図000008
  • 特許5889047-絶縁防水部材及び絶縁防水方法 図000009
  • 特許5889047-絶縁防水部材及び絶縁防水方法 図000010
  • 特許5889047-絶縁防水部材及び絶縁防水方法 図000011
  • 特許5889047-絶縁防水部材及び絶縁防水方法 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5889047
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】絶縁防水部材及び絶縁防水方法
(51)【国際特許分類】
   H01R 4/70 20060101AFI20160308BHJP
   H01R 43/00 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   H01R4/70 J
   H01R43/00 A
【請求項の数】6
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-51905(P2012-51905)
(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公開番号】特開2013-187068(P2013-187068A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2015年2月9日
(73)【特許権者】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼須 憲吾
【審査官】 楠永 吉孝
(56)【参考文献】
【文献】 実開平01−069332(JP,U)
【文献】 特開平11−297382(JP,A)
【文献】 実開平03−003116(JP,U)
【文献】 実開平01−093918(JP,U)
【文献】 特開2000−134784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/70
H01R 43/00
H02G 15/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケーブルの接続部を絶縁及び防水する絶縁防水部材であって、
前記接続部を覆うためのシール材と、
前記シール材側の面に粘着剤層を有し、前記接続部を前記シール材を介して覆うための保護シートと、を備え、
前記保護シートは、
前記接続部を覆うための本体部と、
前記本体部から第1の方向へ延在する延在部と、を有し、
前記延在部は、前記第1の方向と交わる第2の方向における前記本体部の一端側の第1の領域、前記本体部の他端側の第2の領域、及び前記第1の領域と前記第2の領域との間の第3の領域で、前記接続部を覆う前記シール材及び前記本体部に対して圧力を付与可能であり、
前記保護シートは、複数の前記延在部を有し、
前記本体部の前記第1の領域から延在する第1の延在部と、
前記本体部の前記第2の領域から延在する第2の延在部と、
前記本体部の前記第3の領域から延在する第3の延在部と、を少なくとも有し、
前記第1の延在部、前記第2の延在部、及び前記第3の延在部は、前記本体部に連結され、
前記第1の延在部、前記第2の延在部、及び前記第3の延在部同士は、互いに独立している、絶縁防水部材。
【請求項2】
前記第1の延在部と前記第3の延在部との間、及び前記第2の延在部と前記第3の延在部との間はV字状に形成されている請求項1記載の絶縁防水部材。
【請求項3】
ケーブルの接続部を絶縁及び防水する絶縁防水部材であって、
前記接続部を覆うためのシール材と、
前記シール材側の面に粘着剤層を有し、前記接続部を前記シール材を介して覆うための保護シートと、を備え、
前記保護シートは、
前記接続部を覆うための本体部と、
前記本体部から第1の方向へ延在する延在部と、を有し、
前記延在部は、前記第1の方向と交わる第2の方向における前記本体部の一端側の第1の領域、前記本体部の他端側の第2の領域、及び前記第1の領域と前記第2の領域との間の第3の領域で、前記接続部を覆う前記シール材及び前記本体部に対して圧力を付与可能であり、
前記延在部は、長尺な帯状に形成されている、絶縁防水部材。
【請求項4】
前記シール材は、前記保護シートの前記本体部に対して、一部分が接合されていると共に他の部分が非接合とされている請求項1〜3の何れか一項記載の絶縁防水部材。
【請求項5】
前記延在部は、引き伸ばされて前記シール材及び前記本体部を介して前記接続部に巻きつけられることにより、前記シール材及び前記本体部に圧力を付与する請求項1〜4の何れか一項記載の絶縁防水部材。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項記載の絶縁防水部材を用いて、前記接続部を絶縁及び防水する絶縁防水方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケーブルの接続部の絶縁防水部材及び絶縁防水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、保護シートの片面に粘性シール材を設けた防水シートの該シール材上に電線の分岐接続部を載置して本線と分岐線との並設電線群を横一列状態に配置し、該防水シートを粘性シール材を内側にして曲げて上記並設電線群をその曲げの曲率に応じて強制的に円弧状配置に変化させつつ防水シートの両端部を合わせ、防水シートを加圧する方法が記載されている。
【0003】
特許文献2には、絶縁シートと、該絶縁シートの一端の中央領域に粘着存置され且つ電線接続部の隙間を密封充填するに足る量の粘着性絶縁材と、該絶縁シートの粘着性絶縁材が粘着存置された面と同一面の他端に塗布された接着剤とからなる防水絶縁シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平4−324263号公報
【特許文献2】実開平1−69332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の絶縁防水部材は、ケーブルの接続部に単にシール材と保護シートを巻きつけるだけのものである。このような絶縁防水部材は、要求される防水性が十分に得られない場合がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、一の態様において、ケーブルの接続部を絶縁及び防水する絶縁防水部材であって、接続部を覆うためのシール材と、シール材側の面に粘着剤層を有し、接続部をシール材を介して覆うための保護シートと、を備え、保護シートは、接続部を覆うための本体部と、本体部から第1の方向へ延在する延在部と、を有し、延在部は、第1の方向と交わる第2の方向における本体部の一端側の第1の領域、本体部の他端側の第2の領域、及び第1の領域と第2の領域との間の第3の領域で、接続部を覆うシール材及び本体部に対して圧力を付与可能な絶縁防水部材である。
【0007】
この絶縁防水部材において、保護シートは、本体部から第1の方向へ延在する延在部を有している。ケーブルの接続部をシール材に配置し、当該接続部をシール材及び保護シートの本体部で覆った後、延在部は、シール材及び本体部に対して圧力を付与することで、防水性を高めることができる。この延在部は、第2の方向における一端側の第1の領域、他端側の第2の領域、及び第1の領域と第2の領域との間の第3の領域で、シール材及び本体部に対して圧力を付与可能である。従って、延在部は、両端側における防水性を確保すると共に、それらの間の領域においても防水性を確保できる。これにより、高い防水性を確保できる。
【0008】
他の態様において、保護シートは、複数の延在部を有し、本体部の第1の領域から延在する第1の延在部と、本体部の第2の領域から延在する第2の延在部と、本体部の第3の領域から延在する第3の延在部と、を少なくとも有する。これにより、第1の延在部は第1の領域へ確実に圧力を付与し、第2の延在部は第2の領域へ確実に圧力を付与し、第3の延在部は第3の領域へ確実に圧力を付与できる。このように、保護シートは、圧力付与の対象となる領域に対応する位置に延在部を有しているため、作業者にとっての作業性が向上する。
【0009】
他の態様において、第1の延在部と第3の延在部との間、及び第2の延在部と第3の延在部との間はV字状に形成されている。これにより、延在部と延在部との間で途切れることなく、シール材及び本体部に対してまんべんなく圧力を付与できる。
【0010】
他の態様において、延在部は、長尺な帯状に形成されている。長尺な帯状の延在部を、第2の方向における一端側から他端側に亘って巻きつけることで、第1の領域、第2の領域及び第3の領域に圧力を付与できる。
【0011】
他の態様において、シール材は、保護シートの本体部に対して、一部分が接合されていると共に他の部分が非接合とされている。これにより、作業者は、非接合とされているシール材の部分を容易に動かすことができる。従って、ケーブルとケーブルとの間の部分にシール材を容易に埋めることが可能となる。
【0012】
他の態様において、延在部は、引き伸ばされてシール材及び本体部を介して接続部に巻きつけられることにより、シール材及び本体部に圧力を付与する。これにより、作業者は、延在部を引き伸ばして接続部に巻きつけるだけの容易な作業で、確実な防水性を確保することができる。
【0013】
本発明は、一の態様において、上記の絶縁防水部材を用いて、接続部を絶縁・防水する絶縁防水方法である。上記の絶縁防水部材を用いることで、前述の効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、高い防水性でケーブルの接続部を絶縁及び防水できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、本実施形態に係る絶縁防水部材を示す斜視図であり、使用前の状態を示している。
図2図2は、使用後の絶縁防水部材を示す図であり、(a)は外観を示し、(b)は断面を示している。
図3図3は、絶縁防水部材を用いて、ケーブルの接続部を絶縁及び防水する絶縁防水方法について説明するための図である。
図4図4は、絶縁防水部材を用いて、ケーブルの接続部を絶縁及び防水する絶縁防水方法について説明するための図である。
図5図5は、絶縁防水部材を用いて、ケーブルの接続部を絶縁及び防水する絶縁防水方法について説明するための図である。
図6図6は、比較例に係る絶縁防水部材及び実施例に係る絶縁防水部材を示す図である。
図7図7は、変形例に係る絶縁防水部材を示す図である。
図8図8は、変形例に係る絶縁防水部材を示す図である。
図9図9は、変形例に係る絶縁防水部材を示す図である。
図10図10は、図1に示すものとは異なる接続部を絶縁及び防水した様子を示す図である。
図11図11は、比較例に係る絶縁防水部材を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。なお、以下の実施形態では、定格600Vの電力ケーブルを対象とした場合を一例として説明するが、対象とする電圧に応じてサイズや形状は変わり得る。本発明に係る絶縁防水部材は、対象となる電圧の大きさに限定されるものではない。
【0017】
図1は、本実施形態に係る絶縁防水部材1を示す斜視図であり、使用前の状態を示している。図2は、使用後の絶縁防水部材1を示す図であり、(a)は外観を示し、(b)は断面を示している。図1及び図2に示すように、絶縁防水部材1は、ケーブル100の接続部101を絶縁及び防水する。なお、本実施形態において「ケーブル」という語は、電線、電纜を含むものとして用いる。本実施形態では、ケーブル100をY分岐接続する場合を例として説明する。接続部101では、主幹ケーブル100Aに対して、主幹ケーブル100B及び分岐ケーブル100Cが接続されている。主幹ケーブル100Aの被覆除去部102Aと、主幹ケーブル100Bの被覆除去部102Bと、分岐ケーブル100Cの被覆除去部102Cとが圧着具103で接続されることによって、接続部101が形成される。絶縁防水部材1は、接続部101を覆うためのシール材2と、接続部101をシール材2を介して覆うための(すなわち、シール材2を更に外側から覆う)保護シート3と、を備えている。接続部101は、少なくとも電線が露出している被覆除去部102A,102B,102C及び圧着具103の部分の全てがシール材2で覆われ、当該接続部101を覆うシール材2が完全に保護シート3で覆われる(図2参照)。なお、主幹ケーブル100Aと主幹ケーブル100Bとは、互いに切断されたものであり、圧着具103によって、互いの切断部分を分岐ケーブル100Cと共に接続するものであってよい。または、主幹ケーブル100Aと主幹ケーブル100Bとが連続した1本のケーブルであってもよい。この場合、一本のケーブルの途中の被覆を除去することにより被覆除去部を形成し、当該被覆除去部に分岐ケーブル100Cを接続することができる。
【0018】
保護シート3は、粘着性を有し、耐水性、絶縁性、耐候性に優れた材料からなるシートである。保護シート3の材料として、例えば、ポリエチレン、PVC(ポリ塩化ビニル)などを適用することができる。保護シート3の厚さは、例えば1mm程度に設定できるが、引き伸ばすことができる厚さであって、覆った中身のものを保護できる厚さであれば特に限定されず、あらゆる寸法に設定可能である。保護シート3は、シール材2側の面である内面3aに粘着剤層を有している。一方、保護シート3は、シール材2とは反対側の面である外面3bには粘着剤層を有していない。従って、保護シート3は、接続部101が配置される側の内面3aは粘着性を有しており、接続部101に対して外側の外面3bは粘着性を有していない。
【0019】
保護シート3は、接続部101を覆うための本体部10と、本体部10から第1の方向D1へ延在する延在部11と、を有している。ここで、延在部11が延在する方向である第1の方向D1に対して、当該第1の方向D1と交わる(ここでは直交している)方向である第2の方向D2が設定されるものとして、以下の説明を行う。なお、接続部101を絶縁・防水する際、主幹ケーブル100A,100Bが第2の方向に沿って延びるように、接続部101が配置される。
【0020】
本実施形態では、本体部10は、矩形状に形成されており、第1の方向D1に平行な外縁10a,10bと、第2の方向D2に平行な外縁10c,10dと、を有している。外縁10aと外縁10bとの間の寸法は、140〜280mm程度に設定される。外縁10cと外縁10dとの間の寸法は、130〜230mm程度に設定される。なお、本体部10と延在部11A、11B,11Cとは、一体的に連結されているので、両者の境界である外縁10dは目視することができず、図においても仮想線で示されている。本体部10には、第2の方向における一端側(本実施形態では、外縁10a側)の領域である第1の領域12Aと、第2の方向における他端側(本実施形態では、外縁10b側)の領域である第2の領域12Bと、第1の領域12Aと第2の領域12Bとの間の領域である第3の領域12Cと、が設定されている。図1に示す例では、本体部10に対して、第1の方向と平行な仮想線L1,L2を設定することにより、第2の方向に沿って三分割された領域が形成されている。外縁10aと仮想線L1との間に第1の領域12Aが形成され、仮想線L1と仮想線L2との間に第3の領域12Cが形成され、仮想線L2と外縁10bとの間に第2の領域12Bが形成されている。
【0021】
延在部11は、少なくとも、第1の領域12A、第2の領域12B、及び第3の領域12Cで、本体部10及び当該本体部10に覆われるシール材2に対して圧力を付与可能な構成となっている。具体的には、保護シート3は、本体部10の第1の領域12Aから第2の方向へ延在する第1の延在部11Aと、本体部10の第2の領域12Bから第2の方向へ延在する第2の延在部11Bと、本体部10の第3の領域12Cから第2の方向へ延在する第3の延在部11Cと、を有している。延在部11A,11B,11Cは、引き伸ばされてシール材2及び本体部10を介して接続部101に巻きつけられることにより、シール材2及び本体部10に圧力を付与する。
【0022】
延在部11A,11B,11Cは、矩形状の保護シート3の一の外縁3cに二つのV字状の切り込み部CT1及びCT2を入れることによって形成される。なお、切り込み部CT1,CT2が入っていない部分が本体部10となる。第1の延在部11Aは、本体部10の外縁10dの第1の領域12Aに対応する位置に連結されており、第1の方向に平行な外縁11Aaと、第2の方向に平行な先端縁11Abと、切り込み部CT1によって形成される傾斜縁11Acと、を有している。第2の延在部11Bは、本体部10の外縁10dの第2の領域12Bに対応する位置に連結されており、第1の方向に平行な外縁11Baと、第2の方向に平行な先端縁11Bbと、切り込み部CT2によって形成される傾斜縁11Bcと、を有している。第3の延在部11Cは、本体部10の外縁10dの第3の領域12Cに対応する位置に連結されており、第2の方向に平行な先端縁11Cbと、切り込み部CT1によって形成される傾斜縁11Caと、切り込み部CT2によって形成される傾斜縁11Ccと、を有している。
【0023】
第1の延在部11Aの外縁11Aaは、本体部10の外縁10aと連続した直線をなしている。第2の延在部11Bの外縁11Baは、本体部10の外縁10bと連続した直線をなしている。先端縁11Ab,11Bb,11Cbは、切り込み部CT1,CT2が入る前の保護シート3の外縁3cに該当するものであり、それぞれ同一直線上に形成される。先端縁11Ab,11Bb、11Cbと外縁10dとの間の寸法A、すなわち延在部11A,11B,11Cの延在量は、(図5(c)の作業において)少なくとも一周巻きつけることができる量とすることが好ましい。第1の延在部11Aと第3の延在部11Cとの間、すなわち傾斜縁11Acと傾斜縁11Caとの間は、V字状に形成されている。当該V字形状の角度は鋭角であることが好ましい。また、当該V字形状の先端ポイントP1は、本体部10の外縁10dと仮想線L1との交点上に配置される。第2の延在部11Bと第3の延在部11Cとの間、すなわち傾斜縁11Bcと傾斜縁11Ccとの間は、V字状に形成されている。当該V字の角度は鋭角であることが好ましい。また、当該V字形状の先端ポイントP2は、本体部10の外縁10dと仮想線L2との交点上に配置される。
【0024】
なお、本実施形態では、各領域12A,12B,12Cは、説明のために仮想線L1,L2を用いて明確に定義されているが、どのように設定するかは任意である。すなわち、第1の領域12Aが本体部10の第2の方向における一端側の領域であり、第2の領域12Bが本体部10の第2の方向における他端側の領域であり、第3の領域12Cが各領域12A,12Cの間の領域であるという位置関係を満たしている限り、各領域12A,12B,12Cがどのように設定されていてもよい。
【0025】
シール材2は、耐水性、絶縁性、耐候性に優れた材料からなるシートである。シール材2の材料として、例えば、ブチルゴム、シリコンゴム、EPDM、NBRなどを含有する絶縁性のパテなどを適用することができる。シール材2の厚さは、例えば、3mm以上、4mm以上、または5mm以上、かつ8mm以下、10mm以下、または12mm以下とすることができる。
【0026】
シール材2は、矩形状に形成されており、互いに平行な外縁2c,2dと、当該外縁2c,2dと垂直をなすと共に互いに平行な外縁2e,2fと、を有している。シール材2は、外縁2c,2dが第1の方向D1と平行となり、外縁2e,2fが第2の方向D2と平行となるように、配置される。また、シール材2は、その外面2bが保護シート3の本体部10の内面3aに接合されるように、当該本体部10の内面3a上に重ね合わせられる。外縁2cと外縁2dとの間の寸法は、本体部10の外縁10aと外縁10bとの間の寸法よりも小さく、120〜220mm程度に設定される。外縁2eと外縁2fとの間の寸法は、本体部10の外縁10cと外縁10dとの間の寸法よりも小さく、120〜260mm程度に設定される。本実施形態では、外縁2cが本体部10の外縁10aよりも平面方向内側に配置され、外縁2dが本体部10の外縁10bよりも平面方向内側に配置される。なお、外縁2cと外縁10aとの間、及び外縁2dと外縁10bとの間には、延在部11A,11B,11Cを引き伸ばして巻きつけることによりシール材2が締め付けられた場合でも、当該シール材2が保護シート3からはみ出ない程度のクリアランスを確保することが好ましい。外縁2fは本体部10の外縁10dよりも平面方向内側に配置され、外縁2eは本体部10の外縁10cと略一致するように配置されている(完全に一致していてもよく、外縁2eが外縁10cより僅かに内側に配置されてもよい)。シール材2は、保護シート3の本体部10に対して、一部分が接合されていると共に他の部分が非接合とされている。本実施形態では、外縁2e側の略半分の領域が本体部10に接合されている。一方、外縁2f側の略半分の領域が本体部10の内面3aと非接合とされている。絶縁防水部材1の流通過程においては、当該領域に保護シート3とシール材2との間に離型紙P(図3(b)を参照)を介在させることで、シール材2と保護シート3が非接合となっている状態を維持する。なお、流通過程においては、粘着性を有する面である、保護シート3の内面3a及びシール材2の内面2aも離型紙で覆われている。
【0027】
次に、図3〜5を参照して、上述の絶縁防水部材1を用いて、ケーブル100の接続部101を絶縁及び防水する絶縁防水方法について説明する。なお、以下の説明では、定格600Vの電力ケーブルを対象とした場合を一例として説明しているが、対象とする電圧が異なる場合は、適宜サイズの変更が必要となる。
【0028】
まず、図3(a)に示すように、各ケーブル100A,100B,100Cのシース及び絶縁体を剥ぎ取る。この時、図に示すBの寸法を60〜110mm程度に設定し、図に示すCの寸法を45〜85mm程度に設定する。また、所定の工具にて、主幹ケーブル100Aの被覆除去部102Aと、主幹ケーブル100Bの被覆除去部102Bと、分岐ケーブル100Cの被覆除去部102Cとを圧着具103で接続する。以上によって、接続部101を形成する。次に、図3(b)に示すように、接続部101をシール材2の略中央位置に配置する。このとき、主幹ケーブル100A,100Bの離型紙P側の端面(図3(b)における紙面上側の端部)と、離型紙Pの接続部101側の端部(図3(b)における紙面下側の端部)が合うように、接続部101を配置する。このとき、図に示すDの寸法を30〜50mm程度に設定する。
【0029】
次に、図4(a)に示すように、離型紙P上のシール材2を持ち上げると共に、離型紙Pを取り除く。図4(b)に示すように、主幹ケーブル100Bと分岐ケーブル100Cとの間を開き、当該隙間にシール材2の外縁2fを入り込ませる。図4(c)に示すように、主幹ケーブル100Bと分岐ケーブル100Cに十分にシール材2を詰め込む。図4(d)に示すように、シール材2の残りの部分は、ケーブル100A,100B,100C及び接続部101に隙間なく巻きつける。
【0030】
次に、図5(a)に示すように、主幹ケーブル100Bと分岐ケーブル100Cとを結束する結束バンドBDを取り付ける。また、シール材2が接合されている側(延在部11A,11B,11Cと反対側)の保護シート3を各ケーブル100A,100B,100Cに巻きつける。このとき、すでにケーブル等に巻きつけられているシール材2と、新たに巻きつけるシール材2とが隙間なく繋がるようにする。次に、図5(b)に示すように、保護シート3の延在部11A,11B,11C側の部分をケーブル等に巻きつける。図5(c)に示すように、中央部に位置する第3の延在部11Cの先端部を十分に引っ張って、引き伸ばした状態で巻きつけながら接着する。これによって、中央位置付近の第3の領域12Cにおける本体部10及びシール材2に圧力が付与され、当該部分で確実に防水性が確保される。次に、図5(d)のように、第2の方向D2の一端側に位置する第1の延在部11Aの先端部を(図5(c)に示すごとく)十分に引っ張って、引き伸ばした状態で巻きつける。これによって、第1の領域12Aにおける本体部10及びシール材2に圧力が付与され、当該部分で確実に防水性が確保される。このとき、本体部10の外縁10aに沿って、シール材2を隠すように巻きつけることが好ましい。また、第2の方向D2の他端側に位置する第2の延在部11Bの先端部を(図5(c)に示すごとく)十分に引っ張って、引き伸ばした状態で巻きつける。これによって、第2の領域12Bにおける本体部10及びシール材2に圧力が付与され、当該部分で確実に防水性が確保される。このとき、本体部10の外縁10bに沿って、シール材2を隠すように巻きつけることが好ましい。以上によって、図2(a)に示す状態となり、接続部101の絶縁・防水が完了する。
【0031】
次に、本実施形態に係る絶縁防水部材1の作用・効果について説明する。
【0032】
例えば、図6(a)に示す比較例に係る絶縁防水部材200のように、単なる矩形状の保護シート203をシール材2と共に接続部101に巻きつけるものであった場合、シール材2の接続部101に対する押し付けが不十分で、十分な防水性が確保できない場合がある。一方、本実施形態に係る絶縁防水部材1において、保護シート3は、本体部10から第1の方向D1へ延在する延在部11A,11B,11Cを有している。第2の方向D2に沿ってケーブル100が延びるように接続部101をシール材2に配置し、当該接続部101をシール材2及び保護シート3の本体部10で覆った後、延在部11A,11B,11Cは、シール材2及び本体部10に対して圧力を付与する。これによって、シール材2が接続部101に十分に押し付けられるため、防水性を高めることができる。
【0033】
また、延在部11A,11B,11Cは、本体部10から第1の方向(ケーブル100が延びる方向と交わる方向である)へ延在しているため、接続部101へ延在部11A,11B,11Cを巻きつけるようにして本体部10及びシール材2に圧力を付与できる。これにより、接続部101の形状によらず、あらゆる態様の接続部101に適用可能である。例えば、図11に示すように、比較例として、本体部10の外縁10bから第2の方向D2へ延在するような延在部261が形成されている保護シート253を挙げる(なお、被覆除去部102や圧着具103付近を部分的に覆う絶縁シートなどが配置されるが、図11では省略する)。比較例に係る保護シート253では、主幹ケーブル100Bと分岐ケーブル100Cとの間のY字分岐部に対して部分的にシール材252を詰め込み(図11(a)及び図11(b)を参照)、本体部10の外縁10bの延在部261でY字分岐部を覆う(図11(c)を参照)。このような保護シートでは、Y字分岐の接続部にしか対応することができず、他の形態の接続部(例えば、図10に示すような形態)には用いることができない。また、分岐部に部分的に詰め込むためのシール材252が必要となり、部品点数が増えてしまう。一方、本実施形態に係る絶縁防水部材1は、延在部11A,11B,11Cを接続部101に対して横から巻きつけるようにするものなので、接続部101の形態に関わらず、シール材を十分に接続部101に押し付けることができる。よって、図10(a)に示すように、一本のケーブル100Aに対して、三つのケーブル100B,100C,100Dが分岐するような形態の接続部にも対応可能であり、図10(b)に示すように、二本のケーブル100A,100Eに対して二本のケーブル100B,100Fを接続するX分岐の接続部にも対応可能である。また、分岐部分に部分的に詰め込むためのシール材を用いなくとも、一枚の矩形状のシール材2のみで、各形態の接続部に対応可能である。
【0034】
また、図6(b)に示す絶縁防水部材300の保護シート303のように、第2の方向D2における両端側には延在部311A,311Bが形成されているが、それらの間の領域には延在部が設けられておらず、真っ直ぐな外縁310dとなっている場合、中央位置付近においてシール材2及び本体部310に十分な圧力を付与することができない。従って、当該部分で十分な防水性が得られない場合がある。一方、本実施形態では、延在部11A,11B,11Cは、第2の方向D2における一端側の第1の領域12A、他端側の第2の領域12B、及び第1の領域12Aと第2の領域12Bとの間の第3の領域12Cで、シール材2及び本体部10に対してそれぞれ圧力を付与可能である。従って、延在部11A,11B,11Cは、両端側における防水性を確保すると共に、それらの間の領域においても防水性を確保できる。これにより、高い防水性を確保できる。
【0035】
例えば、絶縁防水部材1は、次の基準を満足する性能を得ることができる。なお、以下の項目は、「JCAA(日本電力ケーブル接続技術協会)」で制定したK1101「600V 架橋ポリエチレン絶縁電力ケーブル用接続部性能基準」の直線接続部の項目である。

商用耐電圧:3.5kV、10分間(通電温度上昇後は1.0kV、10分間)に耐える。

通電温度上昇:105℃、3時間、3回で異常が無い。

気密(外圧):98kPa、一時間で内部浸水がないこと。
【0036】
また、例えば、図9に示す変形例に係る保護シート903のように、長尺の帯状の延在部911を巻きつけて各領域に圧力を付与するタイプのものであった場合、作業者が位置を調整しながら巻きつけを行う必要がある。一方、本実施形態では、保護シート3は、本体部10の第1の領域12Aから延在する第1の延在部11Aと、本体部10の第2の領域12Bから延在する第2の延在部11Bと、本体部10の第3の領域12Cから延在する第3の延在部11Cと、を有する。すなわち、圧力を付与したい領域から、当該領域へ圧力付与可能な延在部が直接設けられている。これにより、作業者は特に巻きつけ位置を調整しなくとも、第1の延在部11Aで第1の領域12Aへ確実に圧力を付与し、第2の延在部11Bで第2の領域12Bへ確実に圧力を付与し、第3の延在部11Cで第3の領域12Cへ確実に圧力を付与できる。このように、保護シート3は、圧力付与の対象となる領域に対応する位置に延在部11A,11B,11Cを有しているため、作業者にとっての作業性が向上する。
【0037】
また、第1の延在部11Aと第3の延在部11Cとの間、及び第2の延在部11Bと第3の延在部11Cとの間はV字状に形成されている。例えば、図6(b)に示す比較例に係る保護シート303のように、延在部311Aと延在部311Bの間が途切れていた場合、当該途切れた位置(外縁310dの位置)でのシール材2及び本体部10に対する圧力が不十分となる。一方、V字状に形成しておくことで、各延在部の間で途切れることなく、シール材2及び本体部10に対してまんべんなく圧力を付与できる。また、矩形状の保護シートにV字状の切れ込み部CT1,CT2を入れるだけで容易に延在部11A,11B,11Cを形成することが可能となる。
【0038】
また、シール材2は、保護シート3の本体部10に対して、一部分が接合されていると共に他の部分が非接合とされている。これにより、作業者は、非接合とされているシール材2の部分を容易に動かすことができる。従って、主幹ケーブル100Bと分岐ケーブル100Cとの間の部分にシール材2を容易に埋めることが可能となる(図4(b)を参照)。
【0039】
また、延在部11A,11B、11Cは、引き伸ばされてシール材2及び本体部10を介して接続部101に巻きつけられることにより、シール材2及び本体部10に圧力を付与する。これにより、作業者は、延在部11A,11B、11Cを引き伸ばして接続部101に巻きつけるだけの作業で、確実な防水性を確保することができる。
【0040】
次に、図6を参照して、比較例に係る絶縁防水部材200,300と実施例に係る絶縁防水部材400の比較実験について説明する。比較例1に係る絶縁防水部材200を図6(a)に示す。比較例1に係る絶縁防水部材200は、延在部を有しておらず、矩形状の保護シート203に矩形状のシール材2を配置したものである。当該絶縁防水部材200をY字分岐の接続部101に巻きつけ、気密試験(内圧試験、49kPa、1時間)を行った。当該気密試験の結果、エア漏れが確認されたポイントを図においてALで示す。このように、巻きつけられた絶縁防水部材200の第2の方向D2における両端側からエア漏れが確認された。このように、両端側で防水性が得られないことが理解される。
【0041】
比較例2に係る絶縁防水部材300を図6(b)に示す。比較例2に係る絶縁防水部材300は、第2の方向D2における両端側に延在部311A,311Bをそれぞれ有しているが、延在部311A,311Bの間の領域には延在部が形成されておらず、本体部10の外縁310dが真っ直ぐに延びている。当該絶縁防水部材300をY字分岐の接続部101に巻きつけ、気密試験(内圧試験、49kPa、1時間)を行った。当該気密試験の結果、エア漏れが確認されたポイントを図においてALで示す。このように、巻きつけられた絶縁防水部材300の延在部が設けられていない外縁310dにてエア漏れが確認された。このように、中央部での防水性が得られないことが理解される。
【0042】
実施例1に係る絶縁防水部材400を図6(c)に示す。実施例1に係る絶縁防水部材400は、第2の方向D2における両端側に延在部411A,411Bをそれぞれ有しており、延在部411A,411Bの間に二つの延在部411C,411Dを有している。すなわち、第3の領域に該当する位置に、二つの延在部411C,411Dが形成されている。当該絶縁防水部材400をY字分岐の接続部101に巻きつけ、気密試験(内圧試験、49kPa、1時間)を行った。当該気密試験の結果、実施例1に係る絶縁防水部材を用いた場合、いずれの位置においてもエア漏れは確認されない。また、図1に示す実施形態に係る絶縁防水部材1についても、図6(c)に示す実施例1と同じく、いずれの位置においてもエア漏れは確認されなかった。これにより、十分な防水性が得られていることが理解される。なお、実施例1では延在部が4つ形成されているので、作業者が4回延在部の巻きつけを行う必要がある。一方、図1に示す絶縁防水部材1の場合は延在部が3つ形成されているので、作業者は3回の巻きつきを行えばよいので、更に作業性が向上している。
【0043】
本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0044】
例えば、上述の実施形態では、シール材2は、外縁2f側の略半分の領域が本体部10の内面3aと非接合とされていた。これに代えて、図7(a)に示すように、外縁2e側の略半分の領域が本体部10と非接続とされていてもよい。または、図7(b)に示すように、外縁2f側の一部の領域と外縁2e側の一部の領域が本体部10と非接合とされており、中央部のみが本体部10と接合されているような構成でもよい。また、図1及び図7に示す例では、非接合となる部分にはシール材2と本体部10との間に離型紙を配置することで非接合としていた。しかし、本体部10に対してシール材2をずらして配置し、シール材2の一部を本体部10の外縁10cよりも外側まではみ出させることにより、非接合な部分を形成してもよい。
【0045】
また、延在部の形状は特に限定されず、図8に示すように様々な形状に変更可能である。図8(a)に示す絶縁防水部材500の保護シート503は、外縁からポイントP1まで真っ直ぐな切れ込みSL1を入れると共に、外縁からポイントP2まで真っ直ぐな切れ込みSL2を入れることにより、第1の延在部511A、第2の延在部511B、第3の延在部511Cを有している。このように、真っ直ぐな切れ込みSL1,SL2を入れるだけの簡単な作業で、延在部511A,511B,511Cを形成することができる。更に、図8(b)に示す絶縁防水部材600の保護シート603は、切れ込みSL1,SL2に加えて、当該切れ込みSL1,SL2の外縁側の一部にV字状の切り込み部が形成されている。これにより、作業者は、延在部611A,611B,611C同士を容易に引き離すことができる。
【0046】
また、図8(c)に示す絶縁防水部材700の保護シート703は、三角形状の第1の延在部711A、第2の延在部711B、第3の延在部711Cを有している。更に、図8(d)に示す絶縁防水部材800の保護シート803は、三角形の先端に指でつかみやすいように丸い形状が付加された第1の延在部811A、第2の延在部811B、第3の延在部811Cを有している。
【0047】
図8(e)に示す絶縁防水部材350の保護シート353は、矩形状の第1の延在部361A、第2の延在部361B、第3の延在部361Cを有している。第1の延在部361Aと第3の延在部361Cとの間、及び第2の延在部361Bと第3の延在部361Cとの間には隙間が形成されている。このような形態であっても第1の領域、第2の領域、第3の領域に圧力を付与できる。ただし、延在部同士が途中で切れることなく連続している、図1及び図8(a)〜(d)に示す絶縁防水部材の方が、より確実に防水性を確保することができる。
【0048】
図9(a)に示すような絶縁防水部材900を採用してもよい。この絶縁防水部材900の保護シート903の延在部911は、長尺な帯状に形成されている。図9(b)に示すように、長尺な帯状の延在部911を、第2の方向D2における一端側から他端側に亘って巻きつけることで、第1の領域、第2の領域及び第3の領域に圧力を付与できる。
【符号の説明】
【0049】
1,350,400,500,600,700,800,900…絶縁防水部材、2…シール材、3,353,403,503,603,703,803,903…保護シート、10…本体部、11,361,411,511,611,711,811、911…延在部、11A,361A,411A,511A,611A,711A,811A…第1の延在部、11B,361B,411B,511B,611B,711B,811B…第2の延在部、11C,361C,411C,411D,511C,611C,711C,811C…第3の延在部、12A…第1の領域、12B…第2の領域、12C…第3の領域、100…ケーブル、101…接続部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11