特許第5889076号(P5889076)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5889076
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】ナースカート
(51)【国際特許分類】
   A61G 12/00 20060101AFI20160308BHJP
   A47B 31/00 20060101ALI20160308BHJP
   B62B 3/00 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   A61G12/00 C
   A47B31/00 E
   A47B31/00 G
   A47B31/00 Z
   B62B3/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-70566(P2012-70566)
(22)【出願日】2012年3月27日
(65)【公開番号】特開2013-202054(P2013-202054A)
(43)【公開日】2013年10月7日
【審査請求日】2015年3月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000139780
【氏名又は名称】株式会社イトーキ
(73)【特許権者】
【識別番号】591130803
【氏名又は名称】株式会社東洋工芸
(74)【代理人】
【識別番号】100092679
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 盛之助
(72)【発明者】
【氏名】竹原 成規
(72)【発明者】
【氏名】臼本 浩人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 利幸
(72)【発明者】
【氏名】入野 尚之
(72)【発明者】
【氏名】塙 智明
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和則
(72)【発明者】
【氏名】岡村 秀男
【審査官】 今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】 登録実用新案第3159993(JP,U)
【文献】 特開2010−105540(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0025007(US,A1)
【文献】 実開昭62−152875(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61G 12/00
A47B 31/00
B62B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースフレームと、該ベースフレームの左右に設けた一対の支柱と、該一対の支柱の間に設けたトレイと、前記一対の支柱の上方に設けた天板を有するナースカートであって、
前記ベースフレームは、
左右方向に延びる横フレーム部と、該横フレーム部の左右両端からそれぞれ前後方向に延びる縦フレーム部からなり、平面視略H字状に形成され、
前記縦フレーム部の前後端側のそれぞれに、前記ナースカートを水平方向に移動可能なキャスタを備え、
前記横フレーム部の中央下面側に、上下方向に昇降可能なストッパを備え、
前記ストッパを下降させることにより、ナースカートの水平方向への移動を規制しつつ、当該ナースカートの向きを変えることができるようにした
ことを特徴とする、ナースカート。
【請求項2】
前記縦フレーム部は、側面視において上向き略アーチ形状に形成したことを特徴とする、請求項1記載のナースカート。
【請求項3】
前記ストッパは、下降時に前記ナースカートと床の設置面から下方向に0.5〜1mm突出するようにしたことを特徴とする、請求項1〜2のいずれかに記載のナースカート。
【請求項4】
前記ストッパは、下降時に床と当接する面に緩衝材を設けたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載のナースカート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はナースカートに関し、詳しくは、移動を規制しつつその場で向きを変えることが可能なナースカートに関する。
【背景技術】
【0002】
病院等の医療施設において看護師等が使用するナースカートとして、例えば特許文献1のようなものが知られている。
このナースカートは、縦長直方体の空間を上下に複数の空間に仕切り、最上位には天板を設け、その下側に複数のトレイを設けたものである。
また、ナースカート下端の四隅には、ナースカートを水平方向へ移動可能とするためのキャスタが設けられている。
【0003】
ところで、上記のような従来のナースカートは、ナースカート下端四隅のキャスタにストッパが設けられていることが一般的である。このストッパによってキャスタの回転を止めることで、ナースカートの移動を規制するものである。
【0004】
近年の医療業務を行う上で、ナースカートの天板上にパーソナルコンピュータやタブレット型コンピュータ等の電子機器を載置される場合がある。この場合には、当該電子機器の画面を見せるためにナースカートの向きをその場で変えられると利便性が高い。
同様に、狭い場所での作業を行う場合等にも、ナースカートの向きをその場で変えられることが求められていた。
【0005】
しかし、従来のナースカートは移動のためにキャスタが設けられるのみであり、特に重量物を載置した状態での向きのみを変えることが難しいという問題があった。また、ナースカートが移動しないようにキャスタのストッパを使用している状況では、二輪以上のキャスタを止めてしまうとナースカートの向きを変えることができず、一輪のみを止めた状態では、当該一輪を支点にナースカートが大きく動いてしまうという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012−19900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の状況に着目し、移動を規制しつつその場で向きを変えることが可能なナースカートを提供することを、その課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決することを目的としてなされた本発明は、ベースフレームと、該ベースフレームの左右に設けた一対の支柱と、該一対の支柱の間に設けたトレイと、前記一対の支柱の上方に設けた天板を有するナースカートであって、前記ベースフレームは、左右方向に延びる横フレーム部と、該横フレーム部の左右両端からそれぞれ前後方向に延びる縦フレーム部からなり、平面視略H字状に形成され、前記縦フレーム部の前後端側のそれぞれに、前記ナースカートを水平方向に移動可能なキャスタを備え、前記横フレーム部の中央下面側に、上下方向に昇降可能なストッパを備え、前記ストッパを下降させることにより、ナースカートの移動を規制しつつ、当該ナースカートの向きを変えることができるようにしたことを特徴としている。
【0009】
本発明において、縦フレーム部は、側面視において上向き略アーチ形状に形成されていると好適である。
【0010】
また、ストッパは、下降時にナースカートと床の設置面から下方向に0.5〜1mm突出するようにすると好適である。また、ストッパは、下降時に床と当接する面に緩衝材をもうけてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明のナースカートによれば、ストッパを下降させて床と当接することにより、ナースカートの移動を規制しつつ、その場で向きを変えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明に係るナースカートの実施の一例における斜視図である。
図2】同実施例の正面図である。
図3】同実施例の側面図である。
図4】同実施例の底面図である。
図5】同実施例におけるストッパの側面図であり、(a)は上昇状態、(b)は下降状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態の一例を、図面を参照して説明する。
図1で示すように、本発明の実施例に係るナースカート1は、天板2と、左右一対の支柱3と、当該一対の支柱3の間に設けたトレイ4と、支柱3下端に接続されたベースフレーム5と、を主な構成とするものである。
【0014】
天板2は、図1〜3で示すように、平面視略矩形の木製板状部材であり、上面に医療器具やパーソナルコンピュータ等を載置するためのものである。
また、天板2下面の背面側には、ナースカート1背面方向に平面視略コ字状のハンドル6が設けられている。ハンドル6の背面側は上方向に突出して、天板2の背面側端面と並行なグリップ部が、天板2とほぼ同じ高さとなるように形成されている。
天板2にパーソナルコンピュータ等の電子機器を載置した場合には、グリップ部をアームレストとして使用することができる。
【0015】
支柱3は、天板2下面から上下方向に延びる左右一対の柱状部材であり、天板2と、後述のトレイ4を支持するものである。
支柱3が互いに対向する面には、上下方向にスリット7が複数設けられており、当該スリット7にはトレイ4を設置するためのスライドレール(図示しない)を固定することができる。スライドレールを固定するためのスリット7が上下方向に複数設けられていることにより、トレイ4を設置する高さを変更することができる。
【0016】
トレイ4は、平面側を開口した箱状の樹脂製部材であり、上下方向に3個配置されている。このうち、上側2つは深さが52mmであり、下側1つは深さが98mmに形成されている。
トレイ4の開口部における上端は、トレイ4の外側に向かって折り返された形状となっており、前述のスライドレールの上端に当該折り返し部分を載置することによってトレイ4はナースカート1に設置される。トレイ4がスライドレール上を滑動することにより、ナースカート1の前後方向にスライドすることができる。
また、スライドレールはトレイ4の折り返し部分によって覆わるので、スライドレールが目立たず、美観を損ねることが無い。
【0017】
ベースフレーム5は、図1及び図4で示すように、左右の支柱3の下端同士をつなぐように横方向に延びる横フレーム部5aと、横フレーム部5aの左右両端から前後に延びる縦フレーム5bからなり、平面視略H字状に形成されている。
また、ベースフレーム5は金属板を曲げ加工したものを複数組合せて上記形状としている。金属板の材質や厚み、加工方法等は任意のものを用いることができ、また、板状部材を組合せずに鋳造等による一体成型によるものでもよく、ナースカート1及びこれに載置する積載物の重量を支えることができれば金属以外の材質でもよい。
【0018】
縦フレーム部5bは、図3で示すように、横フレーム5aとの連結位置、すなわち支柱3の下端付近を頂上として、中央から前後端に向けて下降するようになだらかな傾斜が設けられている。これにより、縦フレーム部5bは側面視において上向き略アーチ形状の部材となっている。
縦フレーム部5bを支柱3の下端付近を頂上とした上向き略アーチ形状とすることで、ナースカート1及び積載物の荷重を受け止め、縦フレーム部5bの撓みを防ぐことができる。
後述のように、本実施例ではベースフレーム5にストッパ9を設置し、ストッパ9下降時の突出量を0.5〜1mmとしているが、ベースフレーム5が容易に撓んでしまうと突出量も大きく変化してしまう。本実施例では縦フレーム部5bを略アーチ形状とすることで撓みを防ぎ、ナースカート1や積載物の重量によるストッパ9の突出量の変化を防ぐことができる。
さらに、当該アーチの頂上に位置する横フレーム部5aと床面の間に後述のストッパ9を配置する空間を設けることができる。また、ナースカート1下側の前後に縦フレーム部5bが傾斜していることにより、別途用意した椅子等に腰掛けて作業を行う場合にはこの縦フレーム5bをフットレスト代わりに使用することができる。これにより、使用者に快適な作業環境を提供することができる。
【0019】
縦フレームの下面には、図1〜3で示すように、前後端それぞれに、ナースカート1を移動させるためのキャスタ8が設けられている。
【0020】
横フレーム5aの底面は、図2〜4で示すように、中央部を略四角柱状に下方向へ突出させたストッパ固定台5cが形成されている。ストッパ固定台5cは、後述のストッパ9を固定する台座として機能するとともに、ストッパ9を所定の高さに設置するものである。
なお、本実施例ではストッパ9はストッパ固定台5cに直接固定されるが、ストッパ9の全長や上端部の形状に合わせてストッパ9とストッパ固定台5cの間にブラケットやスペーサ等を設けても良い。このような構成とした場合は、様々な形状のストッパ9をナースカート1に用いることができる。経年劣化によりベースフレーム5が撓んでストッパ9と床面とのクリアランスが変化した等の場合であっても、ブラケットやスペーサを交換してクリアランスを調整することができる。
また、ストッパ固定台5cをベースフレーム5と一体形成せず、別部材としてもよい。この場合は、上記ブラケットの機能をストッパ固定台5c自体によって発揮することができる。
【0021】
ベースフレーム5の横フレーム5a下面には、図1〜4で示すように、ストッパ9が取り付けられる。
このストッパは図5(a)、(b)で示すように、ストッパ本体部9aと、ピストン9bと、ストッパ当接部9cと、昇降ペダル9e、9fと、を主な構成としている。
【0022】
ストッパ本体部9aは、ピストン9bを内部に昇降可能に収容するとともに、ストッパ9をストッパ固定台5cに設置するための部材である。ストッパ本体部9aは全体がナイロン樹脂を形成したもので、下端側にはピストン9bを収容するシリンダ(図示しない)が設けられており、上端側には平面視略矩形の板状部に形成されている。
ストッパ本体部9a上端の板状部には、四隅に前後左右それぞれ80mm間隔で直径約8.5mmの穴が上下方向に設けられている。ストッパ固定台5cにもこれに対応する位置にボルト穴が設けられており、上記穴にボルトを挿通してストッパ固定台5cに螺合することにより、ストッパ9をベースフレーム5に設置する。
【0023】
ストッパ本体部9aにはピストン9bが昇降可能に取り付けられており、ピストン9bの下端には、ナースカート1の移動を防止するために床面と当接するためのストッパ当接部9cが設けられている。
ストッパ当接部9cは直径約66mmの略円盤状の部材であり、下端にはゴム製の緩衝材9dが設けられている。
【0024】
また、ストップ本体部9aの上端側には、ピストン9bを下降させるために側面視略L字状の下降ペダル9eが回動可能に支持されており、ピストンの上端側には当該ピストンを上昇させるために側面視略L字状の上昇ペダル9fが回動可能に支持されている。また、昇降ペダル9e、9f、は、互いに中間部分で連結ピンによって回動可能に連結されている。
図5(a)に示すように、ストッパ上昇時には下降ペダル9eが上昇ペダル9fよりも上方向に位置している。ここで、下降ペダル9eを押し下げると、図5(b)に示すように、ピストン9bが下降するとともに上昇ペダル9fが上昇する。これにより、昇降ペダル9e、9fの操作によって、ピストン9b、ストッパ当接部9c、緩衝材9dを昇降することができる。
【0025】
ストッパ9は、昇降ストロークが25mmに設定されており、全長を上昇時148mmから下降時173mmまで変化させることができる。
このストッパ9をナースカート1に設置した状態において、ストッパ9の最下端、すなわちストッパ当接部9cの緩衝材9dは、ストッパ9上昇時において床面から24〜24.5mmの距離に位置するように設定され、ストッパ9を下降させると床面から下方向に0.5〜1mm突出する。ストッパ当接部9cの緩衝材9dが突出する量は、小さすぎると十分にストッパ当接部9c及び緩衝材9dを床面に圧接できず、大きすぎるとナースカート1が浮き上がり姿勢が安定しなくなるため、0.5mm〜1mm程度が望ましい。ただし、ピストン9bにバネ等の弾性部材を設けたストッパを用いる場合には、突出量を1mm以上としてもよい。
ストッパ9を下降するとストッパ当接部9cの緩衝材9dが床面に圧接され、緩衝材9dと床面の間の摩擦によってナースカート1の水平方向への移動は規制される。
この状態においてキャリア8の車輪はいずれも回転を規制されておらず、ストッパ9を中心にナースカート1の向きのみを変えることができる。この際、ストッパ当接部9cの緩衝材9dは床面に対して摺動することとなるが、ストッパ9の突出量を0.5mm〜1mmとすることで、向き変えに対して過大な抵抗とはならない。
ストッパ9はベースフレーム5の横フレーム5a中央に位置するので、ナースカート1の底面視において中央付近に位置することとなり、前後左右に障害物がある場合であってもナースカート1の向きを容易に変えることができる。
また、ストッパ当接部9cの下面に緩衝材9dを設けたことにより、床面との接触時に騒音を抑えるとともに、ナースカート1の移動を規制するために必要な摩擦力を発揮することができる。
【0026】
また、ナースカート1の天板2の背面側には、当該天板2とほぼ高さが同じ位置のグリップを備えるハンドル6が設けられている。
このハンドル6は、天板2にパーソナルコンピュータ等を載置した際にはアームレストとして使用することができるが、ナースカート1の向きを変えることで、アームレストの方向を容易に調節することができる。一台のパーソナルコンピュータ等を複数人で使用している場合には、操作を担当する者が変わる毎にナースカート1の向きを変えて、パーソナルコンピュータ等とアームレストの向きを同時に調節することができる。
【0027】
本実施例の具体的構成は以上であるが、本発明の構成は上記実施形態に限られるものでは無い。
例えば、本実施例ではストッパ9の突出量をストッパ固定台5cの高さによって規定しているが、前述のとおり、ストッパ9とストッパ固定台5cの間にブラケットやスペーサ等を介して調整できるようにしてもよい。
また、ナースカート1の向きをより容易に変えるために、ストッパ当接部9c及び緩衝材9dをストッパ本体部に対して回動可能としてもよい。
また、天板2は木製でなく例えば金属製や樹脂製であってもよい。
その他具体的構成についても上記実施例の形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲においてさまざまな変更が可能である。
【符号の説明】
【0028】
1 ナースカート
2 天板
3 支柱
4 トレイ
5 ベースフレーム
6 ハンドル
7 スリット
8 キャスタ
9 ストッパ

図1
図2
図3
図4
図5