(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
固定子と、該固定子によって外周面を囲まれるように配設された回転子とを備え、該回転子が、円筒面状の外周面を有するヨーク部材と、ヨーク部材の外周面に周方向に相隣接して配置された複数の永久磁石片からなる永久磁石部とを有するブラシレスDCモータであって、
上記各永久磁石片は、その周方向の中央部に位置し且つ径方向の厚みが最小になる最薄部と、その周方向の両端部に位置し且つ径方向の厚みが最大になる最厚部と、最薄部と最厚部との間に位置し且つ最薄部から最厚部に向けて径方向の厚みが徐々に増加する徐変部と、を有し、
上記永久磁石部の外周面は、その周方向にN極とS極とが交互に並ぶように、且つ、磁極の境界位置が各永久磁石片の周方向の中央部に位置するように着磁され、
上記永久磁石部の外周面のうち上記各永久磁石片の最厚部を除く部分と、上記永久磁石部における少なくとも一方の軸方向端面とを樹脂で被覆してなる被覆部を有しているブラシレスDCモータ。
固定子と、該固定子によって外周面を囲まれるように配設された回転子とを備え、該回転子が、円筒面状の外周面を有するヨーク部材と、ヨーク部材の外周面に周方向に相隣接して配置された複数の永久磁石片からなる永久磁石部とを有するブラシレスDCモータであって、
上記各永久磁石片は、その周方向の中央部に位置し且つ径方向の厚みが最小になる最薄部と、その周方向の両端部に位置し且つ径方向の厚みが最大になる最厚部と、最薄部と最厚部との間に位置し且つ最薄部から最厚部に向けて径方向の厚みが徐々に増加する徐変部と、を有し、
上記永久磁石部の外周面は、その周方向にN極とS極とが交互に並ぶように、且つ、磁極の境界位置が各永久磁石片の周方向の中央部に位置するように着磁され、
磁石片の最薄部の径方向外側に配設され且つ軸方向に延びる複数の飛散防止柱と、該各飛散防止柱の両端部をヨーク部材に連結固定する連結部と、を有しているブラシレスDCモータ。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態に係るブラシレスDCモータ1(以下、単にモータ1という)であって、回転子2と、回転子2の外周を囲むように配設された固定子3とを備えている。
【0012】
モータ1は、有底円筒状で内部に回転子2を収容する収容空間4が形成された樹脂製のモータケーシング6と、モータケーシング6の開口側を覆う金属製のブラケットカバー7とを備えている。回転子2の径方向外側には、その回転位置を検出するための位置検出センサ9が配設されている。位置検出センサの例としては、ホール素子や、ホールICが用いられる。位置検出センサ9は、制御用基板10に設けられた制御回路に接続されている。位置検出センサ9は、検出した磁束波形を基に位置検出信号を生成して該制御回路へと送信する。
【0013】
シャフト8は、回転子2に固定されて、回転子2と一体に回転する。シャフト8は、一対の軸受け11a,11bに回動可能に支持されている。一方の軸受け11aは、ブラケットカバー7に形成された円筒部12に圧入固定されている。軸受け11aの端面とブラケットカバー7と間には、ウェーブワッシャ22が配設されている。他方の軸受け11bは、モータケーシング6の底壁部13に形成された円筒ボス部14に金属製の軸受けブラケット15を介して圧入固定されている。シャフト8には、スナップリング21が軸受け11a,11bの端面に当接する状態で係合固定されている。
【0014】
モータケーシング6は、固定子3がモールド樹脂により埋設するように一体成型されている。但し、固定子3の内周面は収容空間4へ露出している。また、モータケーシング6の底壁部13には、上記制御用基板10がモールド樹脂により一体成型されて埋設されている。上記制御用基板10には、固定子コイル20が電気的に接続されるとともに、インバータ回路や制御回路が設けられている。この制御回路では、上記位置検出センサ9からの位置検出信号を基に、インバータ回路をPWM制御することによりモータ1の回転制御を行う。
【0015】
固定子3は、所定形状に打ち抜かれた複数の鋼板を積層してなるリング状の固定子コア16を有している。固定子コア16は、周方向に並ぶ複数のティース部17を有しており、固定子コア16の各ティース部17には、インシュレータ(図示省略)を介して固定子コイル20が巻回されている。
【0016】
上記回転子2は、
図2及び
図3に示すように、外周面が円筒面状をなすヨーク部材19と、該ヨーク部材19の外周面に接着剤を介して固定された永久磁石部25とで構成されている。ヨーク部材19の軸心部には、シャフト8が挿入されるシャフト挿入孔26が形成されている。回転子2の軸心及びヨーク部材19の軸心は、モータ軸心Xに一致している。ヨーク部材19としては、電磁鋼板に代表される高透磁率軟磁性材料を使用することが好ましい。尚、ヨーク部材19は、外周面が円筒面状に形成されていれば、どのような形状であってもよい。
【0017】
永久磁石部25は、
図2に示すように、固定子3との間のエアギャップが最小になる8つの厚肉部27を有している。8つの厚肉部27は、周方向に等間隔に配置されており、永久磁石部25は、この厚肉部27にて周方向に分割されている。そうして、永久磁石部25は、回転子2の周方向に互いに隣接して並ぶ8つの永久磁石片28により構成されている。これら8つの永久磁石片28は、互いに密着して略隙間無く配設されている。尚、
図2では、見易いように、各永久磁石片28の間に僅かに隙間を設けている。
【0018】
ヨーク部材19の外周面には、その軸心X方向に延びて、周方向に等間隔に配置された8つの凸条部29が形成されている。各永久磁石片28の内周面には、この凸条部29に係合する凹条部31が形成されている。各永久磁石片28は、この凹条部31と上記凸条部29との係合により周方向の位置決めがなされている。尚、各永久磁石片28の内周面に凸条部29を形成して、ヨーク部材19の外周面に凹条部31を形成するようにしてもよい。
【0019】
永久磁石部25の外周面(固定子3に対向する面)は、N極に着磁された部分とS極に着磁された部分とが周方向に交互に並んでなり、このN極とS極との境界位置は、各永久磁石片28の周方向の中央位置(
図2の二点鎖線で示す位置)に一致している。すなわち、各永久磁石片28は、その外周面の極性が周方向の中央位置を境に反転するように構成されている。尚、この磁極の境界位置は、着磁誤差等を考慮して、周方向の中央位置に対して例えば±2°程ずれていてもよい。
【0020】
永久磁石片28は、所定形状に成形された焼結体に対して研磨を行った後に着磁処理を施すことで形成される。各永久磁石片28の着磁処理は、ヨーク部材19の外周面に焼結体を接着固定した状態で径方向から磁界を印加することで行われる。したがって、各永久磁石片28の内周面(ヨーク部材19との接着面)の極性は、外周面の極性とは反対になる(
図2参照)。
【0021】
上記永久磁石片28は、
図4(b)及び
図5に拡大して示すように、その周方向の中央部に位置し且つ径方向の厚みが最小になる最薄部32と、その周方向の両端部に位置し且つ径方向の厚みが最大になる最厚部33と、最薄部32と最厚部33との間に位置し且つ最薄部32から最厚部33に向けて径方向の厚みが徐々に増加する徐変部34とで構成されている。そして、上記永久磁石片28の互いに隣接する端部同士(最厚部33同士)が上記厚肉部27を構成している。永久磁石片28は、この厚肉部27(永久磁石片28の境界部)に磁極中心が位置するように着磁されている。永久磁石片28の周方向の両端部に位置する4つの角部はそれぞれ、円弧状に面取りされており、上記厚肉部27の頂部には、この面取り部によって形成される微小な凹部35が形成されている(
図4(b)参照)。
【0022】
永久磁石片28の内周面(径方向内側面)は、ヨーク部材19の外周面の形状に対応した円筒面状に形成されている。一方、永久磁石片28の外周面(径方向外側面)は、ヨーク部材の外周面と同心状をなし且つ最厚部33の外周面に接する仮想円筒面41(
図5参照)に対して径方向内側に凹んで形成されている。この凹み部42は、最薄部32の外周面32aと、最薄部32を挟んでその両側に位置する徐変部34の外周面34aとによって形成されている。
【0023】
上記最薄部32は、回転子2の軸心回りの位相角で見て(モータ1の電気角で見て)、永久磁石片28の周方向の中央位置を中心とする所定角度範囲θを占めるように形成されている。この所定角度範囲θは、例えば、本実施形態に係る8極のモータ1では、±4°以上であることが好ましい。
【0024】
上記最薄部32の外周面32aは、モータ軸心X方向から見て、円弧状に形成されていて、その曲率中心は、永久磁石片28の内周面(ヨーク部材19の外周面)の曲率中心に一致している。
【0025】
上記徐変部34の外周面34aは、該徐変部34の外方側に凸となる凸曲面からなっていて、モータ軸心X方向から見て円弧状に形成されている。徐変部34の外周面34aの曲率中心はモータ軸心Xからずれた位置にあり、その曲率半径rは、永久磁石片28の内周面の曲率半径Rより小さい。
【0026】
ところで、磁極の境界位置が永久磁石片28の境界位置に一致する従来のモータ1では、永久磁石部25の磁化容易方向は、磁極中心から径方向外側に指向する(
図4(a)参照)。これに対して、本実施形態に係るモータ1では、永久磁石部25の磁化容易方向は、磁極中心から径方向外側に向かって、該磁極中心を挟んでその周方向の両側にそれぞれ傾斜する(
図4(b)参照)。このため、位置検出センサ9にて検出される磁束波形は、従来のモータ1が磁束φ=sinθ(θ:回転子の回転角、電気角)となるのに対し(
図6の二点鎖線で示すライン)、本実施形態に係るモータ1では磁束φ=sinθ+αsin3θとなる(
図6の太線で示すライン)。よって、本実施形態に係るモータ1では、磁束のピーク値Pkは低下するものの磁束の3次成分を増やして総磁束を増加させることができる。これにより、モータ1のコスト増加を招くことなく、その出力性能を向上させることができる。
【0027】
ここで、係数αは、永久磁石片28の磁力強度に関連する値であり、本実施形態では、αは0.1〜0.16に設定されている。永久磁石の磁力強度(つまり係数α)を調整することによって、例えば
図6の細線で示すように、磁束のピーク値を従来品と同レベルまで高めることができる。これにより、少ないコスト増加でモータ出力を可及的に向上させることができる。
【0028】
また、本実施形態では、各永久磁石片28の外周面は、磁極の境界位置(N極とS極との境界位置)が各永久磁石片28の周方向の中央位置に略一致するように着磁されている。
【0029】
この構成によれば、仮にヨーク部材19に対する永久磁石片28の貼り付け位置が周方向にずれたとしても、N極とS極との境界位置(磁極の変わり目)に隙間が生じることはなく、N極とS極との周方向の位置関係は維持される。したがって、永久磁石片28のヨーク部材19への貼り付け精度に左右されることなく、N極とS極との境界位置を位置検出センサ9により精度良く検出することができる。
【0030】
すなわち、本実施形態に係るモータ1では、位置検出センサ9によるN極とS極の境界位置の検出精度は、永久磁石片28のヨーク部材19への貼り付け精度よりも、永久磁石片28に対する磁極の着磁精度や、最薄部32の形状精度に左右される。そして、この着磁精度や形状精度は、永久磁石片28の貼り付け精度よりも格段に高いため、従来のモータ1に比べて、位置検出センサ9による磁極の境界位置の検出精度を向上させることができる。これにより、上記制御回路におけるモータ1の回転制御をより正確に行うことができ、モータ1の回転振動や騒音等を防止することができる。
【0031】
また、本実施形態では、各永久磁石片28の最薄部32は、モータ軸心回りの位相角で見て(モータ1の電気角で見て)、該永久磁石片28の周方向の中央位置を中心とする所定角度範囲(本実施形態では士2°)内を占めるように形成されている。そして、該最薄部32の外周面は、モータ軸心X方向から見て、ヨーク部材19の外周面と同芯の円弧状に形成されている。
【0032】
この構成によれば、各永久磁石片28への着磁誤差により、永久磁石片28の外周面における磁極の境界位置が周方向の中央位置に対して周方向にずれたとしても、位置検出センサ9にて検出される磁束波形が磁極境界の近傍で大きく歪んだりするのを防止することができる。よって、位置検出センサ9による磁極の境界位置の検出精度を可及的に向上させることができる。
【0033】
(変形例1)
図7は、上記実施形態1の変形例1を示し、ヨーク部材19の構成を上記実施形態とは異ならせたものである。
【0034】
すなわち、本変形例では、ヨーク部材19には、その軸心回りに複数の貫通孔51が形成されている。貫通孔51の数は、モータ1の極数と同数の8個とされ、各貫通孔51の孔形状は略正五角形状とされている。尚、貫通孔51の孔形状は、正五角形状に限らず、例えば円形状や四角形状であってもよい。
【0035】
上記8つの貫通孔51は、ヨーク部材19の軸心(モータ軸心X)回りに等間隔に且つ軸対称に形成されている。相隣接する貫通孔51の間には、ヨーク部材19におけるシャフト挿入孔26の周縁部と、ヨーク部材19の外周部とを連結するように延設部52が形成されている。延設部52の数は合計8つであり、これら8つの延設部52が、ヨーク部材19のシャフト挿入孔26付近から径方向外側に向かって放射状に延びている。永久磁石片28に作用する固定子3からの回転方向の駆動力は、ヨーク部材19の外周部からこれら8つの延設部52を介してシャフト8へと伝達される。
【0036】
この変形例では、永久磁石片28の構成を上記実施形態1と同じ構成としたことで、上記実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0037】
また、この変形例では、上記各永久磁石片28を、その周方向の中央位置が各延設部52の延長線上に位置するように配設している。これにより、ヨーク部材19の外周部において、永久磁石片28の周方向の中央部に隣接する部分の厚み(径方向の厚み)を大きくとることができる。したがって、磁束が多く流れる永久磁石片28の周方向の中央部付近に十分な磁路を確保することができる。よって、モータ性能の低下を防止しながら、モータ1の軽量化を図ることができる。
【0038】
(変形例2)
図8は、上記実施形態1の変形例2を示し、ヨーク部材19の構成を変形例1とは異ならせたものである。
【0039】
すなわち、本変形例に係るモータ1では、相隣接する貫通孔51の間に形成される延設部52が径方向の内側部分と外側部分とに分断されている点で上記変形例1とは異なっている。
【0040】
このように本変形例では、延設部52が分断されることにより、ヨーク部材19が、径方向内側の内側ヨーク部材19aと径方向外側の外側ヨーク部材19bとに分割されている。
【0041】
内側ヨーク部材19aは、シャフト挿入孔26が形成される中心側筒部53と、中心側筒部53の外周部から径方向外側に突出する複数の(本変形例では8つ)突起部54とで構成されている。この突起部54は、延設部52を分断した後の該延設部52の径方向内側の部分からなる。
【0042】
外側ヨーク部材19bは、永久磁石片28が接着される外周側筒部55と、該外周側筒部55の内周部から径方向内側に突出する複数(本変形例では8つ)の突起部56とで構成されている。この突起部56は、延設部52を分断した後の該延設部52の径方向外側の部分からなる。
【0043】
内側ヨーク部材19aの突起部54と、外側ヨーク部材19bの突起部56とは、径方向において相対向する状態で配置されており、両者の間には所定幅の隙間空間50が形成されている。
【0044】
上記各貫通孔51は、この隙間空間50を介して互いに連通している。本変形例では、この貫通孔51及び隙間空間50に熱可塑性の樹脂57を充填して固化させることにより、上記内側ヨーク部材19aと外側ヨーク部材19bとが一体化されている。上記内側及び外側ヨーク部材19a,19bに設けられた突起部54,56は、外側ヨーク部材19bに対して内側ヨーク部材19aが周方向に相対回転するのを規制する回り止めとして機能する。
【0045】
樹脂57は、貫通孔51及び隙間空間50に充填された柱状の充填部58と、該充填部58のモータ軸心X方向の両端面に接続された円環状板部59とで構成されている。円環状板部59は、ヨーク部材19の軸心方向の両端面に固着されている。円環状板部59の中心部には、ヨーク部材19のシャフト挿入孔26が露出するように円孔61が形成されている。
【0046】
ところで、本変形例に係るPWM制御を行うブラシレスDCモータ1では、ブラケットカバー7と固定子コア16との間に電位差が生じて、シャフト8→ヨーク部材19→永久磁石片28→固定子3→モータケーシング6→ブラケットカバー7→軸受け11a→シャフト8の経路(
図1のI二点鎖線で示す経路)で電流が循環して軸受け11aが電食により破損するという問題がある。
【0047】
これに対して、本変形例では、ヨーク部材19が、内側ヨーク部材19aと外側ヨーク部材19bとに分断されていて、両者の間(貫通孔51及び隙間空間50)に絶縁体である熱可塑性の樹脂57を充填するようにしたことで、ヨーク部材19に流れる電流を該絶縁体により遮断して、軸受け11aが電食に至るのを防止することができる。
【0048】
ここで、上記変形例1では、貫通孔51及び隙間空間50に熱可塑性の樹脂57を充填することにより、内側ヨーク部材19aと外側ヨーク部材19bとを一体化するようにしたが、これに限ったものではなく、例えば、熱可塑性樹脂に替えて熱硬化性樹脂やゴム材料等の弾性材料を充填するようにしてもよい。弾性材料を充填するようにした場合には、軸受け11aの電食を防止しながら、さらに、モータ1の回転振動や回転騒音を防止することができる。
【0049】
また、この変形例では、永久磁石片28の構成を上記実施形態1と同じ構成としたことで、実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0050】
(変形例3)
図9は、上記実施形態1の変形例3を示し、永久磁石片28の最薄部32の外周面の形状を上記実施形態1及び各変形例とは異ならせたものである。
【0051】
すなわち、本変形例では、最薄部32の外周面32aは、モータ軸心X方向から見て直線状をなしている。この外周面32aは、モータ軸心X方向から見て、永久磁石片28の周方向の中央位置とヨーク部材19の中心とを通る直線Lに対して垂直に形成されている。
【0052】
この構成によれば、上記実施形態1と同様に、各永久磁石片28への着磁誤差により、永久磁石片28の外周面における磁極の境界位置が周方向の中央位置に対して周方向にずれたとしても、位置検出センサ9にて検出される磁束波形が磁極境界の近傍で大きく歪んだりすることもない。
【0053】
(実施形態2)
図10及び
図11は、本発明の実施形態2を示し、永久磁石片28の飛散を防止する飛散防止部材62を有する点で上記実施形態1とは異なっている。尚、以下の実施形態において、
図2及び
図3と実質的に同じ構成要素については同じ符号を付してその詳細な説明を適宜省略する。
【0054】
上記飛散防止部材62は、上記永久磁石部25及び上記ヨーク部材19に対して樹脂材料(モールド樹脂)を用いてモールド成型により一体固定されている。
【0055】
飛散防止部材62は、上記永久磁石部25の外周面のうち上記各永久磁石片28の最厚部33を除く部分と永久磁石片28及びヨーク部材19のモータ軸心X方向の両端部とを被覆する被覆部63を有している。被覆部63は、凹み部42内を埋めるように形成されている。被覆部63の外周面は円筒面状をなしていて、その曲率中心はヨーク部材19の軸心位置に一致している。被覆部63のモータ軸心X方向の両端部は、
図11に示すように、永久磁石片28のモータ軸心X方向の両端部を覆うようにコ字状に折れ曲がってヨーク部材19の両端面に固着されている。
【0056】
以上の如く、本実施形態では、永久磁石片28の構成を上記実施形態1と同じ構成としたことで、実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0057】
さらに、本実施形態では、各永久磁石片28の外周面を、モールド樹脂からなる被覆部63により押さえることで、各永久磁石片28がモータ回転時に遠心力により径方向外側に飛散するのを防止することができる。
【0058】
ところで、
図4(a)記載の従来のモータ1では、永久磁石片28の周方向の中央部に最厚部33を形成し且つ周方向の両端部に最薄部32を形成するようにしている。このため、モールド樹脂で永久磁石片を固定する場合、この樹脂と固定子3との干渉を避けるためや磁気特性を確保するために最厚部33を除く部分(例えば最薄部32)に樹脂を形成する。しかし、この構成では、モールド樹脂が、各永久磁石片28の境界部に位置して(上記特許文献1参照)、十分な飛散防止効果を期待できないという問題や、モールド樹脂にバリが発生するという問題がある。
【0059】
これに対して、本実施形態に係るモータ1では、各永久磁石片28の周方向の両端部が最厚部33とされている。このため、モールド樹脂を最厚部33を除く部分に形成したとしても、モールド樹脂を各永久磁石片28の境界部に位置させることなく周方向の中央寄りに位置させることができ、これにより、十分な飛散防止効果を得ることができるとともに、モールド樹脂にバリが発生するのを防止することができる。
【0060】
また、上記変形例2に示すヨーク部材19a、19bを備えたモータ1に対して、本実施形態の飛散防止構造を適用するようにしてもよい。この場合、円環状板部59と飛散防止部材62とは別体で形成してもよいが、円環状板部59と飛散防止部材62とを同じ樹脂材料で一体に形成するようにしてもよい。これにより、ヨーク部材19と永久磁石片28とをより強固に固着して、飛散防止効果及びヨーク部材19a,19bの周り止め効果を向上させることができる。
【0061】
(実施形態3)
図12及び
図13は、本発明の実施形態3を示し、永久磁石片28の飛散防止部材62を上記実施形態2とは異ならせたものである。
【0062】
すなわち、本実施形態では、飛散防止部材62は、ヨーク部材19及び永久磁石片28とは別体のかご型部材からなる。飛散防止部材62は、各永久磁石片28の最薄部32の径方向外側に配設され且つモータ軸心X方向に延びる複数の飛散防止柱64と、該各飛散防止柱64のモータ軸心X方向の両端部とヨーク部材19とを連結する円環状連結部65とを備えている。
【0063】
上記各飛散防止柱64は、回転子2の軸心方向から見て、断面凸型状に形成されている。各飛散防止柱64は、その径方向内側の面が上記永久磁石片28の最薄部32の外周面32aに係合して固定されている。飛散防止柱64は、最厚部33の外周面に接する仮想円筒面41(
図5参照)の径方向内側に配設されていて、飛散防止柱64の厚さと永久磁石片28の最薄部32の厚さとの合計値は、永久磁石片28の最厚部33の厚さよりも小さい。すなわち、飛散防止柱64は、永久磁石片28の凹み部42内に納まるように配設されている。尚、飛散防止柱64の厚さと永久磁石片28の最薄部32の厚さとの合計値は、永久磁石片28の最厚部33の厚さに等しくてもよい。
【0064】
上記円環状連結部65は、その内周部がヨーク部材19の外周部に固着されている。円環状連結部65の外周部は、飛散防止柱64のモータ軸心X方向の両端部に連結されている。円環状連結部65の内周部と外周部との間の中間部は、各永久磁石片28におけるモータ軸心X方向の両端面に固着されている。
【0065】
以上の如く本実施形態では、永久磁石片28の構成を上記実施形態1と同じ構成としたことで、上記実施形態1と同様の作用効果を得ることができる。
【0066】
さらに、上記モータ1では、各永久磁石片28の外周面を、飛散防止柱64により押さえることで、各永久磁石片28がモータ回転時に遠心力により径方向外側に飛散するのを防止することができる。
【0067】
ところで、従来のモータ1では、永久磁石片28の周方向の中央部に最厚部33を形成し且つ周方向の両端部に最薄部32を形成するようにしている。このため、飛散防止柱64を固定子3との干渉を避けるために永久磁石片28の最薄部32に配置したとすると、飛散防止柱64が各永久磁石片28の境界部に位置してしまう。このため、1つの飛散防止柱64によって、その両側に位置する2つの永久磁石片28を押さえる必要が生じ、十分な飛散防止効果を期待できないという問題がある。
【0068】
これに対して、本実施形態に係るモータ1では、各永久磁石片28の周方向の中央部に最薄部32が形成されているため、飛散防止柱64を最薄部32に配置したとしても、飛散防止柱64を、各永久磁石片28の境界部に位置させることなく周方向の中央部に位置させることができる。これにより、1つの飛散防止柱64によって1つの永久磁石片28を押さえることができ、十分な飛散防止効果を得ることができる。
【0069】
また、上記モータ1では、ヨーク部材19及び永久磁石片28に対して、別体の飛散防止部材62を組み付けるだけで、回転子2に飛散防止部材62を取り付けることができる。したがって、飛散防止部材62をモールド成型する手間を省いて、回転子2の製造プロセスを簡素化することができる。
【0070】
また、飛散防止柱64により永久磁石片28を係止した後、さらに上記実施形態2のモールド成型による飛散防止部材62を用いることで、より強固な飛散防止構造となる。
【0071】
(他の実施形態)
本発明の構成は、上記実施形態及び変形例に限定されるものではなく、それ以外の種々の構成を包含するものである。
【0072】
すなわち、実施形態では、8個の永久磁石片28を有する8磁極のモータ1を例に説明を行ったが、これに限ったものではなく、例えば、4個の永久磁石片28を有する4磁極のモータ1や、16個の永久磁石片28を有する16磁極のモータ1などであってもよく、磁石片28の数及び磁極の数はこれらに限定されない(但し、磁極の数は2より多い偶数である)。
【0073】
また、上記変形例1では、内側ヨーク部材19aの突起部54と外側ヨーク部材19bの突起部56とが互いに向き合う例を示したが、これに限ったものではなく、内側ヨーク部材19aの突起部54と外側ヨーク部材19bの突起部56とが周方向にずれていてもよい。
【0074】
また、上記各実施形態及び各変形例では、モータ1は、固定子3や制御用基板10をモータケーシング6に一体成型した所謂モールドモータとされているが、必ずしもモールドモータ1である必要はなく、固定子3や制御用基板10がモータケーシング6と別体で構成されたモータ1であってもよい。
【0075】
また、本発明の構成として、上記各実施形態及び各変形例の任意の組合せが可能である。