特許第5889577号(P5889577)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5889577
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】吸収体および吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/49 20060101AFI20160308BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   A41B13/02 B
【請求項の数】6
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2011-186765(P2011-186765)
(22)【出願日】2011年8月30日
(65)【公開番号】特開2012-143535(P2012-143535A)
(43)【公開日】2012年8月2日
【審査請求日】2014年6月11日
(31)【優先権主張番号】特願2010-287972(P2010-287972)
(32)【優先日】2010年12月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100164345
【弁理士】
【氏名又は名称】後藤 隆
(72)【発明者】
【氏名】石橋 京子
(72)【発明者】
【氏名】大西 玲子
(72)【発明者】
【氏名】長原 進介
【審査官】 米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−237382(JP,A)
【文献】 特開2010−233839(JP,A)
【文献】 特開2008−237384(JP,A)
【文献】 特開2009−297048(JP,A)
【文献】 特開2006−141615(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
A61F 13/15−13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体を長手方向に3区分した中間部の第1吸収部と、前記第1吸収部の一方側に区分された第2吸収部と、前記第1吸収部の他方側に区分された第3吸収部とを有し、各吸収部には、一方の面にまたは両方の面の対向する位置に溝状に窪んだ凹部を有しており、
前記第1吸収部に配される第1凹部は平面視した前記第1吸収部の外縁より内側にあって前記長手方向に配され、
前記第2、第3吸収部のそれぞれに配される第2、第3凹部はそれぞれ前記長手方向に対して斜め方向に配され、
前記第1、第2凹部同士および前記第1、第3凹部同士が連続した凹部に構成されているかまたは
前記第1凹部と前記第2凹部および前記第3凹部とが離間されていて、
前記第2、第3凹部のそれぞれの底部の前記吸収体の坪量は、前記第1凹部の底部の前記吸収体の坪量よりも大きい
吸収体。
【請求項2】
前記第2凹部は平面視した前記第2吸収部の外縁より内側にあり、前記第3凹部は平面視した前記第3吸収部の外縁より内側にある
請求項1記載の吸収体。
【請求項3】
前記第1、第2、第3凹部は、それぞれの底部に前記吸収体の一部を有する
請求項1または2記載の吸収体。
【請求項4】
前記第2凹部のうちの複数本の凹部は、前記第1凹部が配される領域内でつながっており、
前記第3凹部のうちの複数本の凹部は、前記第1凹部が配される領域内でつながっている
請求項1、請求項2または請求項3に記載の吸収体。
【請求項5】
前記第1凹部は複数配され、前記長手方向と交差する方向に前記第1凹部同士をつなぐ連絡凹部が配された
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の吸収体。
【請求項6】
肌当接面側に配置される液透過性の表面シートと、
非肌当接面側に配置される液不透過性の裏面シートと、
前記両シートに介在される吸収体とを有し、
前記吸収体は、その長手方向に3区分した中間部の第1吸収部と、前記第1吸収部の一方側に区分された第2吸収部と、前記第1吸収部の他方側に区分された第3吸収部とを有し、各吸収部には、一方の面にまたは両方の面の対向する位置に溝状に窪んだ凹部を有しており、
前記第1吸収部に配される第1凹部は平面視した前記第1吸収部の内側にあり前記長手方向に配され、
前記第2、第3吸収部のそれぞれに配される第2、第3凹部はそれぞれ前記長手方向に対して斜め方向に配され、
前記第1、第2凹部同士および前記第1、第3凹部同士が連続した凹部に構成されていて、
前記第2、第3凹部のそれぞれの底部の前記吸収体の坪量は、前記第1凹部の底部の前記吸収体の坪量よりも大きい
吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸収体および吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
使い捨ておむつ等の吸収性物品においては、各部材の材料や構造を改良し、その機能や着用感の向上が図られてきた。この吸収性物品に適用される吸収体についても、かかる改良を企図して開発がなされ、特に最近では使用状況や物品の種類に応じた機能性を有するものが種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、吸収性物品として、パネル同士間で屈曲可能な腹部パネルと股部パネルと背部パネルと外縁部パネルとが間隔を置いて配置され、各パネルが全体として1枚の吸収コアパネルとして保持されたものが開示されている。各パネルは、それぞれ独立して各パネル面内で前後左右に屈曲可能に構成されている。そのため、図13に示すように、着用時に、各パネル111、112間、112、113間のそれぞれの屈曲部B1、B2においてモデル120の肌面120Sとの間に隙間C1、C2を生じることがある。
【0004】
また、特許文献2には、表面シートと裏面シートとの間でかつ平面方向にわたって、個々に独立した多数の吸収部からなる吸収体が配置され、さらに吸収体と裏面シートとの間に中間シートが配されている吸収性物品が開示されている。この中間シートは、吸収性物品に排せつされた液の引き込みおよび液の拡散機能を有していて、固定点を介して吸収部を固定している。この固定点は、例えば超音波エンボスやホットメルト接着剤等である。したがって、吸収体と中間シートとは、その間に界面が存在し、一体成型されたものになっていない。
【0005】
特許文献1に開示された吸収性物品では、着用時に、各パネル間の屈曲部において肌面との間に隙間を生じると、その隙間を通じて液漏れを超こすことがあった。さらに、着用中に違和感を生じることがあった。また特許文献2に開示された吸収性物品では、中間シートと吸収部との間に固定部が介在するとともに界面を有しているので、中間シートから吸収体への拡散が固定部や界面に阻害されて不十分になる場合があり、吸収体の吸収性能が十分に引き出されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−049507号公報
【特許文献2】特開2009−273868号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、歩行時や座った時などでも体型適合性に優れ、優れた吸収性能を持つ吸収体およびそれを用いた吸収性物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、吸収体を長手方向に3区分した中間部の第1吸収部(股間部に対応する)と、前記第1吸収部の一方側に区分された第2吸収部(腹側部または背側部の一方に対応する)と、前記第1吸収部の他方側に区分された第3吸収部(腹側部または背側部の一方に対応する)とを有し、各吸収部には、一方の面または両方の面の対向する位置に溝状に窪んだ凹部を有しており、
前記第1吸収部に配される第1凹部は平面視した前記第1吸収部の内側にあり前記長手方向に配され、
前記第2、第3吸収部のそれぞれに配される第2、第3凹部はそれぞれ前記長手方向に対して斜め方向に配され、
前記第1、第2凹部同士および前記第1、第3凹部同士が連続した凹部に構成されているかまたは
前記第1凹部と第2凹部および第3凹部とが離間して構成されている吸収体を提供する。
【0009】
また、本発明は、肌当接面側に配置される液透過性の表面シートと、非肌当接面側に配置される液不透過性の裏面シートと、前記両シートに介在される吸収体とを有し、前記吸収体は、その長手方向に3区分した中間部の第1吸収部と、前記第1吸収部の一方側に区分された第2吸収部と、前記第1吸収部の他方側に区分された第3吸収部とを有し、前記第1吸収部に配される第1凹部は平面視した前記第1吸収部の内側にあり前記長手方向に配され、前記第2、第3吸収部のそれぞれに配される第2、第3凹部はそれぞれ前記長手方向に対して斜め方向に配され、前記第1、第2凹部間および前記第1、第3凹部間が連続した凹部に構成されている吸収性物品を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の吸収体および吸収性物品は、吸収体の第1凹部が前記吸収体の長手方向に配され、第2、第3凹部はそれぞれ長手方向に対して斜め方向に配され連続していることから、第1凹部による可撓性等の柔らかさを発現しつつ、第1凹部による長手方向への液の導液性に優れ、第2、第3凹部により体型によくフィットするように各吸収部の形状が変化しやすく、各吸収部の肌面に対する必要とされる部分での密着性が高められるので、歩行している時や座っている時などでも体型適合性に優れる。
さらに、第1凹部が平面視した第1吸収部の内側にあり長手方向に配されていることから、第1凹部によって吸収体の側縁部分がそけい部にフィットしやく、第1吸収部に供給された液体の横漏れを防止し、第1吸収部より長手方向にある第2、第3吸収部への導液性を高めることができる。また、第1凹部に連続するまたは離間して配される第2、第3凹部はそれぞれ長手方向に対して斜め方向に向けた複数凹部が配されていることから、第2、第3吸収部の液体の拡散性にも優れている。
よって、液拡散性が向上することにより、広い範囲に液体を拡散させることができるので、液体の吸収量が多くなり、吸収体全体としての吸収性能を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の吸収体の好ましい一実施形態の第1実施例を示した平面図である。
図2】各凹部のより好ましい配設例を示した平面図である。
図3】第3凹部の好ましい配設例を示した平面図である。
図4】本発明の吸収体に配された凹部近傍の断面形態の一例を示した断面模式図である。
図5】本発明の吸収体に配された平面視した凹部の形態の第1例を示した平面図である。
図6】本発明の吸収体に配された平面視した凹部の形態の第2例を示した平面図である。
図7】本発明の吸収体に配された平面視した凹部の形態の第3例を示した平面図である。
図8】本発明の吸収体に配された平面視した凹部の形態の第4例を示した平面図である。
図9】本発明の吸収体に配された平面視した凹部の形態の第5例を示した平面図である。
図10】本発明の吸収体に配された平面視した凹部の形態の第6例を示した平面図である。
図11】本発明の吸収体に配された平面視した凹部の形態の第7例を示した平面図である。
図12】本発明の吸収体を適用した吸収性物品の好ましい一実施形態を示した平面展開図である。
図13】従来技術の一例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る吸収体の好ましい一実施形態について、図1を参照しながら、以下に説明する。
【0013】
図1に示すように、本発明の吸収体10は、吸収体10を長手方向Lに3つの部分からなる。具体的には、その中間部に区分された第1吸収部11と、この第1吸収部11の一方側に配された第2吸収部12と、第1吸収部11の他方側に配された第3吸収部13とを有する。したがって、第1吸収部11は第2吸収部12と第3吸収部13との間に配されている。また、吸収体10の外形状は、長方形であってもよいが、より好ましくは、着用者の大腿部のつけね部分にフィットするように、幅方向d(以下、幅方向dとは上記長手方向Lに直交する方向をいう。)に第1吸収部11でくびれた形状に構成される。なお、第1、第2、第3吸収部11,12、13は、単に吸収体10の領域を区分表示しただけであり、それぞれの吸収部で分離しているものではない。また、吸収体10が後述するような吸収性物品に装着されて着用されたときには、第1吸収部11が股間部に配され、例えば、第2吸収部12が腹側に配され、第3吸収部13が背側に配される。または、第2吸収部12が背側に配され、第3吸収部13が腹側に配される。
【0014】
第1吸収部11には複数本の第1凹部21(図面では2本の第1凹部21)が配され、各第1凹部21は平面視した第1吸収部11の側周の内側にあり長手方向Lに配されている。ここで第1吸収部11には複数本の第1凹部21(図面では2本の第1凹部21)が配され、とは、第1吸収部11に第1凹部21のみが配されている場合に加えて、第2凹部22や第3凹部23が一部配されている場合を含むことを意味する。また、長手方向Lに配されているとは、長手方向Lのみに配されている場合に加えて、一部他の方向に配されている場合も含む意味である。また第2、第3吸収部12、13のそれぞれには第2、第3凹部22、23が配され、第2、第3凹部22、23のそれぞれが長手方向Lに対して斜め方向に配されている。ここで、第2、第3吸収部12、13のそれぞれには第2、第3凹部22、23が配され、とは、第2、第3凹部22、23のみが配されている場合に加えて、第1凹部21が一部配されている場合も含む意味である。斜め方向に配され、はそれ以外の方向に一部配されていてもよいことを意味し、斜め方向の具体例としては、図示したように斜め格子状に配されている。したがって、第1凹部21と第2、第3凹部22、23とは、凹部の配置形態が異なっている。
【0015】
上述の斜め方向とは以下のように定義する。吸収体10の長手方向の中心(長手方向長さの1/2の位置)を通る幅方向dと平行な長手方向中心軸CLと、第1凹部21とが交わる部分の中点位置を計測起点として、第1凹部21内を最も長く通る直線を第1線とする。さらに、吸収体10の縁部に最も近い計測対象の第2凹部22の端部を計測起点として、その第2凹部内を最も長く通る直線を第2線とする。そして、第1線と第2線とが交差角度を有する場合の第2線方向を「斜め方向」と規定する。交差角度は、第1吸収部11の縁部に最も近い第1凹部21の第1線と、第1吸収部11に最も近く、第2吸収部12の幅方向縁部に最も近い位置に端部を有する第2凹部22の第2線との交差する角度とする。そして、この交差角度は、10°以上80°以下が好ましく、より好ましくは30°以上70°以下であり、最も好ましくは40°以上60°以下である。交差角度が10°未満であると吸収体10の長手方向に対して腹部や背部の凹部が平行に近い状態に配されることになる。そのため、腹部と吸収体10との間に隙間を生じてしまい、伝い漏れを誘発しやすく、不適切である。この交差角度が80°を超えると、第1吸収部11の凹部に対して、交差角度が大きくなりすぎ、第1吸収部11の凹部を伝った液が第2、第3吸収部12、13に拡散する際に、液が大きく折れ曲がらねばならず、その結果、液拡散性が低下してしまう。また、第3凹部23の第2線は、上述の第2凹部22と同様に規定することができ、この場合の交差角度は、上述の範囲と同等の値をとる。上記交差角度の対象凹部は、適宜選択することができる。
また、図1では上記第1凹部21、および第2、第3凹部22、23は連続した線状に配置されている例を示したが、破線状に配設された場合(断続的に線状に配設された場合も含む。)も、上記同様に第1線、第2線を規定することができる。
【0016】
次に、第1凹部21と第2、第3凹部22、23との接続部における位置関係について、以下に説明する。第2凹部22について説明するが、第3凹部23も第2凹部22と同様である。
(1)第1凹部21の端部が直線状の場合で第1凹部21との接続部分の第2凹部22が直線状の場合、第1凹部21の延長線と第2凹部22とのなす角度θは、0°<θ<90°もしくは0°>θ>−90°である。ここで正の角度とは、第1凹部21の延長線よりも外側に第2凹部22との角度が存在する場合をいい、負の角度とは、第1凹部21の延長線よりも内側に第2凹部22との角度が存在する場合をいう。ここで、外側とは、吸収体10の幅方向dの端部側をいい、内側とは吸収体10の幅方向dの中心側をいう。以下、同様である。
(2)第1凹部21の端部が直線状の場合で第1凹部21との接続部分の第2凹部22が曲線状の場合、第1凹部21の延長線と、第1凹部21との接続部における第2凹部22の接線とのなす角度θは、0°≦θ≦90°もしくは0°≧θ≧−90°である。ここで正の角度とは、第1凹部21の延長線よりも外側に第2凹部22の接線との角度が存在する場合をいい、負の角度とは、第1凹部21の延長線よりも内側に第2凹部22の接線との角度が存在する場合をいう。
(3)第1凹部21の端部が曲線状の場合で第1凹部21との接続部分の第2凹部22が直線状の場合、第2凹部22との接続部における第1凹部21の接線と第2凹部22とのなす角度θは、0°≧θ>−180°もしくは0°≦θ<180°である。ここで正の角度とは、第1凹部21の接線よりも外側に第2凹部22との角度が存在する場合をいい、負の角度とは、第1凹部21の延長線よりも内側に第2凹部22との角度が存在する場合をいう。
(4)第1凹部21の端部が曲線状の場合で第1凹部21との接続部分の第2凹部22が曲線状の場合、第2凹部22との接続部における第1凹部21の接線と、第1凹部21との接続部における第2凹部22の接線とのなす角度θは、0°≦θ<180°もしくは0°≧θ>−180°である。ここで正の角度とは、第1凹部21の接線よりも外側に第2凹部22の接線との角度が存在する場合をいい、負の角度とは、第1凹部21の接線よりも内側に第2凹部22の接線との角度が存在する場合をいう。
上記いずれの場合も、第1〜第3凹部21〜23は幅を有するので、それぞれの幅の中心位置を通る線をそれぞれの凹部を代表する線とする。例えば、第1凹部21の延長線という場合、第1凹部21の幅方向の中心を通る線を延長した線を意味する。第1凹部21の接線という場合、第1凹部21の幅方向の中心を通る線の接線を意味する。第2、第3凹部22、23についても同様である。また、例えば第1凹部21と第2凹部22との接続部という場合には、第1凹部21の幅方向の中心を通る線と第2凹部22の幅方向の中心を通る線との接続点(例えば、交点もしくは接点等)を意味する。
なお、上記(1)〜(4)において、第2凹部22が第1凹部21との接続部よりも離れた位置で分岐していても、上記角度関係は成り立つ。
また、上記各関係は、第1凹部21、第2凹部22、第3凹部23のうち、いずれか一つ以上が破線状に分布している場合もしくは断続的に分布している場合も上記同様なる位置関係を有する。この場合は、上記角度を規定する線はそれらの外挿線とする。
【0017】
なお、第1凹部21は、その一部が第2、第3吸収部12、13の一部に配される場合があってもよい。例えば、第1、第2吸収部11、12との境界をA線とすると、第2凹部22の一部が第1吸収部11の一部に配されることになる。また第1、第2吸収部11、12との境界をB線とすると、第1凹部21の一部が第2吸収部12の一部に配されることになる。また、第3吸収部13についても同様である。例えば、第1、第3吸収部11、13との境界をC線とすると、第3凹部23の一部が第1吸収部11の一部に配されることになる。また第1、第3吸収部13との境界をD線とすると、第1凹部21の一部が第3吸収部13の一部に配されることになる。このように、第1吸収部11と第2、第3吸収部12、13との境界の設定位置によって、各吸収部に対する凹部の配置関係が変わってくる。なお、図1では、一例として、各吸収部の境界がA線とC線の場合を示した。
【0018】
さらに、第1、第2凹部21、22同士および第1、第3凹部21、23同士は連続した凹部に構成されている。
【0019】
また、第1ないし第3凹部21ないし23(以下、第1〜第3凹部21〜23と記す。)の断面形状は問わないが、矩形もしくは逆台形を有している。なお、吸収体10が不織布のような繊維等の集合体で構成されていることから、各凹部の断面形状の輪郭は確定されたものではなく、おおよその形状である。
【0020】
また上記各凹部のより好ましい配設例を図2によって説明する。図2に示すように、第2、第3凹部22、23は長手方向に対して斜め方向に配され、かつ第2凹部22は平面視した第2吸収部12の内側にあり、第3凹部23は平面視した第3吸収部13の内側にあることがより好ましい。また上記第1凹部21は上述したように配される。したがって、吸収体10の外縁部は、突出液吸収貯蔵部15によって囲まれる。その結果、おむつと人体との隙間からの伝い漏れや、勢いよく排泄した際の漏れを防ぐことができる。吸収体10の外縁と、第2凹部22、第3凹部23のそれぞれの吸収体10の外縁端辺との最小距離dmは、適宜決定されるが、例えば5mm〜50mmであり、好ましくは5mm〜40mmであり、さらに好ましくは5mm〜30mmである。
【0021】
本発明の吸収体10は、第1凹部21が長手方向Lに配されることにより、排せつされた尿等の粘性の低い液体(5mPa・sec以下)は、凹部に沿って液が長手方向に導かれる。これは、吸収体の一面から窪んだ形状による効果であり、特に排せつされる液量が多い場合に起こり易い。排せつ面側に窪みが形成されている場合には、窪み部分に液が到達することで凹部が水路としての機能を発現し、非排せつ面側に窪みが形成されている場合には、窪み部分に液が達することで液が凹部により形成された空間に溢れ、凹部の壁面の親水性材料によって、凹部内の液移動が発現する。また、どちらの効果が発現した場合であっても、同じ構造、組成で形成された吸収体の第1凹部21であれば、同等の導液効果を奏する。
上記第1凹部21が長手方向Lに複数を配されることにより、上述した効果をより高く発現できる。さらに、第1凹部21が長手方向Lに配されることにより、着用時に大腿部内側のつけね部分によって股間部に配される第1吸収部11が内側に押圧される。これによって、吸収体10の肌面側が着用者の肌面に沿うように第1吸収部11が第1凹部21で曲げられ幅方向中央で隙間(着用者の肌と吸収体との空間)が形成されやすくなる。このとき、第2、第3吸収部12、13に配されている第1凹部21の一部分(第1凹部21の端部を延長した部分または第1凹部21の端部最近傍の第2凹部22、第3凹部23)は幅方向dの端面側に向かって配されているため、その部分の吸収体10は第1凹部21、および第2凹部22または第3凹部23で曲げられやすくなるので、股間部にある第1吸収部11から第2、第3吸収部12、13の境界部分までで身体との間に多量の尿等の排せつ液がある場合でも液を適切に広げて表面シート上に液がある時間を短くして肌トラブルを抑制する隙間形成がなされ、吸収体の隙間形成不良によるそけい部への圧迫や大腿部の動きの阻害を起こしにくい。
【0022】
また、第2、第3吸収部12、13に配された第2、第3凹部22、23は、長手方向Lに対して斜め方向の凹部を、例えば斜め格子状に配されているので、着用時には、前述の効果により吸収体10の第2、第3吸収部12、13の境界部においては隙間形成が、それ以外の部分では肌面に沿うように着用される。このように第2、第3吸収部12、13において肌面に沿うようにするためには、図3に示すように、格子状に限らず中心軸Cから斜め方向に傾斜した角度の凹部を少なくとも二方向に形成することが好ましく、そのうち一方向は第1凹部21を長手方向に延長した線より中心軸C側とは反対方向でかつ幅方向dの端面側方向に配することが好ましい。この中心軸Cは、吸収体10の長手方向の1/2の位置を通る幅方向(d方向)の1/2の位置を通る長手方向に沿った線である。中心軸Cと平行方向に筋状に各吸収部が肌から浮き上がることを防止する点から、前述の少なくとも二方向に配された第3凹部23が交わる領域で示される交差部26は、それぞれの吸収部において中心軸Cと平行な線PL上に一つだけ存在することがより好ましい。言い換えれば、上記交差部26が中心軸Cと平行な線PL上に二つ以上が存在しない(2つ以上並ぶ)ことがより好ましい。図3では、第3吸収部13を示したが、図示しない第2吸収部12の第2凹部22についても、第3吸収部13の第3凹部23と同様である。ただし、第2吸収部12の第2凹部22の交差部(図示せず)と第3吸収部13の第3凹部23の交差部26とは、中心線Cに平行な同一線上に存在しても差し支えない。なお、上記交差部26は、配設方向の異なる凹部同士が交わる領域であって、この領域で交わる凹部の共通領域とする。よって、この共通領域が中心軸Cに平行な線上に一つだけ存在する。すなわち、共通領域が中心線Cに平行な線上に二つ以上が存在しない。これによって、各吸収部が、肌面にそって各凹部で曲がりやすくなり、肌面から浮き上がることなく密着しやすい状態になる。
【0023】
さらに、第1凹部21は平面視した吸収体10の内側にあり長手方向Lに配されていることから、幅方向中央では隙間形成し、幅方向側方では大腿部内側のつけね部分に沿って体へフィットし、第1吸収部11に供給された液体を第1吸収部11の幅方向dに漏らすことなく、吸収体10の長手方向Lに第1凹部21を通して第2、第3吸収部12、13方向に通液させることができる。したがって、第1凹部21は第1吸収部11において、横漏れを防ぐ役割も有する。このように、横漏れを防ぎつつ液体の拡散性を向上させて、第2、第3吸収部12、13に液体が拡散されるので、吸収体10の広範囲に液体を拡散させることができる。
さらにまた、第2、第3吸収部12、13はそれぞれ長手方向Lに対して斜め方向の凹部が配されていることから、例えば、はいはいをするような乳幼児に本発明の吸収体10を着用させた場合には、はいはいをした時に下側となる腹部に着用される第2吸収部12もしくは第3吸収部13に液体が拡散されやすくなる。その際、第2、第3凹部22、23によって第2、第3吸収部12、13の広い範囲に液体を拡散することができ、拡散した液体を第2、第3凹部22、23の側部に配された吸収体10が吸収するので、腹部側からの漏れを防止できる。
またさらに第1、第2凹部21、22同士および第1、第3凹部21、23同士が連続した凹部に構成されていることから、第1吸収部11に供給された液体は、第1凹部21から第2、第3凹部22、23に通液されやすくなる。この点からも液体の拡散性が向上するので、吸収体10の広範囲に液体を拡散することができる。
よって、吸収体10の広範囲に拡散された液体は各凹部の側部に配されている吸収体10によって吸収されるので、吸収体全体としての液体の吸収量を多くできるという効果を奏する。
第2および第3凹部は図示のように各吸収部の周縁の端部まで延設されてもよいがこれに制限されるものではない。例えば、第2凹部22は平面視した第2吸収部12の内側にあり、第3凹部23は平面視した第3吸収部13の内側にあることにより、第2、第3凹部22、23を伝ってきた液体が第2、第3吸収部12、13の縁部によって堰き止められるので、横漏れを防止することができる。
【0024】
また第1吸収部11は第2、第3吸収部12、13より幅が狭くなっている。すなわち、吸収体10は、第1吸収部11において第2、第3吸収部12、13に対して平面視くびれた形状に構成されている。そして、第1吸収部11と第2、第3吸収部12、13の外側周は連続した形状に構成されていることが好ましい。これによって、股間部における大腿部内側のつけね部分へのフィット性と幅方向中央での隙間形成が容易となり、違和感や吸収体10のよれが抑制され、身体の動き(はいはい、歩行等)による第1吸収部11の左右への動き追従後、第2、第3吸収体12、13の幅が広い事によりに元に戻りやすくできる。
また、上述したように各吸収部の一方の面にのみ凹部が配されるのではなく、各吸収部の両方の面の対向する位置に凹部状に窪んだ凹部が配される構成であってもよい。さらに第1凹部21と第2凹部22および第3凹部23とが離間した構成であってもよい。つまり、第1凹部21と第2凹部22が離間され、および第1凹部21と第3凹部23とが離間した構成であってもよい。これらの構成であっても、第1、第2凹部21、22同士および第1、第3凹部21、23同士の通液性が上述の構成よりやや劣るもののそれ以外は上述のような作用効果が得られる。前記第1凹部21と第2凹部22および第3凹部23とが離間した構成においては、多くの液を保持、固定した状態となっても、吸収体の形状が保持され易い点で好ましい。
【0025】
よって、本発明の吸収体10は、柔らかさを保持しつつ、体型にそって各吸収部の形状が変化するため、各吸収部の肌面に対する股間部中央部の隙間形成性や股間部側部の密着性が高められるので、歩行している時や座っている時などでも体型適合性に優れ、快適な着用感を得ることができる。
【0026】
次に、上記吸収体10に配された各凹部の基本形態について詳述する。
まず、凹部近傍の吸収体の断面形態の一例を、図4によって、以下に説明する。
図4に示すように、上述の第1〜第3凹部21〜23は、それぞれの底部に吸収体10の一部を有する。すなわち、吸収体10は、液体を平面方向に拡散する凹部、液を一旦保持し受け渡す受液層部14と、この受液層部14の一面側に該受液層部14に連続して、かつ複数に分立して配された液を最終的に保持する複数の突出液吸収貯蔵部15とを有する。したがって、それぞれの突出液吸収貯蔵部15と隣接する別の突出液吸収貯蔵部15との間に第1〜第3凹部21〜23が配される。図面では代表して第1凹部21が配された一例を示した。なお、括弧内に示した第2、第3凹部22、23についても第1凹部21と同様な断面構成を有する。
【0027】
このような断面構成の吸収体10は、第1〜第3凹部21〜23によって分断されていないので、第1〜第3凹部21〜23内に供給された液体は第1〜第3凹部21〜23底部の受液層部14に浸透し、第1〜第3凹部21〜23側部に配された突出液吸収貯蔵部15の底部の該受液層部14で一担保持される。受液層部14によって保持しきれない液が排せつされた場合には、凹部によって拡散され、長手方向に導かれてそこに配されている受液層部で一旦保持される。保持された液体は、受液層部14から突出液吸収貯蔵部15に吸収され、貯えられる。よって、第1〜第3凹部21〜23が形成されている側を肌当接面側とすることで、肌面から最も離れた位置で液体の大部分を一旦保持することができるので、肌当接面側におけるべとつき感が抑制され、快適な着用感を得ることができる。
【0028】
次に平面視した場合の凹部の配置形態について、以下に説明する。
平面視した凹部の配置形態の第1例は、第1凹部21の配置形態の一例を示すもので、図5に示すように、第1吸収部11には複数本の第1凹部21が長手方向Lに配される。この第1凹部21は、第1凹部21全体として長手方向Lに配されていて、少なくとも平面視吸収体10の内側に配されていれば、直線状、曲線状または折れ線状等に構成されたものであっても、それらのいくつかを組み合わせたものであってもよい。この第1例は、第1凹部21の配置形態の基本形である。
【0029】
このように第1凹部21が、長手方向Lに配されることから、第1吸収部11に供給された液体は、第1凹部21を通じて第2、第3吸収部12、13への導液性が高められ、拡散しやすくなる。すなわち、液の拡散性が向上する。さらに、第1凹部21によって幅方向端部が持ち上げられて曲げられ、側方が相対的に高くなり密着することで、第1吸収部11に供給された液体の横漏れを防止できる。
【0030】
平面視した凹部の配置形態の第2例は、図6に示すように、第2凹部22のうちの複数本(図示した一例では2本の第2凹部22A、22B)の凹部同士は、上記第1凹部21が配される領域A1内でつながっているものである。同様に、上記第3凹部23のうちの複数本の凹部(図示した例では2本の第3凹部23A、23B)同士は、上記第1凹部21(21A、21B)が配される領域A1内でつながっているものである。
【0031】
このように第2凹部22および第3凹部23のそれぞれのうちの複数本の凹部は、第1凹部21が配される領域A1内でつながっていることから、第1吸収部11に供給された液体は、第1凹部21が配されている領域A1から第2凹部22を通じて第2吸収部12に、また第3凹部23を通じて第3吸収部13に拡散しやすくなる。すなわち、液の拡散性が向上する。また、第1凹部間にある第2凹部22および第3凹部23は、股間部における隙間形成を容易とし、第1凹部から側方にある第2凹部22および第3凹部23は、前述したそけい部への圧迫や大腿部の動きの阻害を起こしにくいように吸収体10の端部が身体に密着しながら凹部で曲がり、動きの追従性とフィット性(吸収体10端部と第2、第3吸収部)を有する。
【0032】
平面視した凹部の配置形態の第3例は、図7に示すように、第1吸収部11に配される第1凹部21の端部が、第2、第3吸収部12、13に延長されて配されている場合、この第1凹部21につながっている第2凹部22は、第2吸収部12で、第2凹部22同士がつながっていてもよい。また、同様に第1凹部21につながっている第3凹部23は、第3吸収部13で第3凹部23同士がつながっていてもよい。そして、第2、第3凹部22、23は、第2、第3吸収部12、13において第1凹部21とつながっている位置から第1吸収部11側に戻るように、長手方向Lに対して斜め方向に配されていてもよい。
【0033】
このように、第2、第3吸収部12、13内で、それぞれに配されている第2凹部22同士および第3凹部23同士がつながっていることから、第1吸収部11に供給された液体は、第1凹部21から第2、第3凹部22、23を通じて、第2、第3吸収部12、13の第1吸収部11側の幅方向端部まで拡散させることができる。なお、この凹部構成の場合、他の凹部構成と組み合わせて用いることがより好ましい。
【0034】
次に平面視した凹部の配置形態の第4例として第2、第3凹部22,23の配置形態を説明する。図8に示すように、第2、第3凹部22、23は、長手方向Lに対して斜め方向に配され、第2凹部22の一端は第2吸収部12の周面S2に達し、第3凹部23の一端は第3吸収部13の周面S3に達する。この第4例は、第2、第3凹部22、23の配置形態の基本形である。第2、第3凹部22、23の長手方向Lに対する傾斜角度は、第2、第3凹部22、23が直線状や曲線状等の様々な形態をとることができるので、その形態によって適宜決定される。
【0035】
このように配された第2、第3凹部22、23によって第2、第3吸収部12、13の全域へ液体が拡散されやすくなる。また、このような凹部の配置形態を有する吸収体10を着用したとき、第2吸収部12が第2凹部22によって、また第3吸収部13が第3凹部23によって、それぞれの吸収部が曲がりやすくなり、第2吸収部12または第3吸収部13がそけい部にフィットしやすくなる。それによって、吸収体10の着用者の動作時における違和感が低減される。なお、一部の第2、第3凹部22、23は、必ずしも第2、第3吸収部12、13の周面S2、周面S3に達していなくともよく、平面視した第2、第3吸収部12、13内にその一端が存在していてもよい。
【0036】
次に平面視した凹部の配置形態の第5例は、図9に示すように、第1凹部21の両端部が第2、第3吸収部12、13の一部に形成されている場合、第1凹部21の両端部が第2、第3吸収部12、13で第2、第3凹部22、23とつながっている。また第2、第3凹部22、23は、長手方向Lに対して斜め方向に配されていて、第2吸収部12で第2凹部22(22A、22B)同士が交差し、第3吸収部13内で第3凹部23(23A、23B)同士が交差している。したがって、この構成は、前述の第3例と第4例とを組み合わせた構成である。
【0037】
このように第2凹部22および第3凹部23のそれぞれのうちの複数本の凹部は、第1凹部21と第2、第3吸収部12、13内でつながっていて、さらに第2凹部22同士、第3凹部23同士がつながっていることから、第1吸収部11に供給された液体は、第1凹部21から第2凹部22を通じて第2吸収部12に、また第3凹部23を通じて第3吸収部13に拡散しやすくなる。すなわち、液体の拡散性が向上する。
【0038】
平面視した凹部の配置形態の第6例は、図10に示すように、第1凹部21は複数(図面では2本の第1凹部21A、21B)配され、長手方向Lと交差する方向に第1凹部21同士をつなぐ連絡凹部24が配されている。この連絡凹部24は、図示例では2本であるが、その本数は適宜決定されることが好ましい。また、図示例では、連絡凹部24が一方向に同一角度に傾斜した状態に配されているが、傾斜方向、傾斜角度は適宜決定されることが好ましい。例えば、図示したように連絡凹部24Aと連絡凹部24Bの傾斜方向を同一方向とする。もちろん、連絡凹部24Aと連絡凹部24Bを異なる方向に、また異なる角度に配してもよい。また連絡凹部24の長手方法Lに対する傾斜角度は、例えば45度とする。もちろん、45度に限定されることはなく、30度であっても、60度であってもよく、その角度は適宜決定される。また、連絡凹部24の配置位置は、例えば、液体が供給される位置より外側に配してもよい。または、1本の連絡凹部24を液体が供給される位置に配し、その他の連絡凹部24を液体が供給される位置より外側に配してもよい。
【0039】
このように第1凹部21(21A、21B)同士が連絡凹部24によってつながることから、第1凹部21間の通液性が向上し、液体が複数の第1凹部21に流れ込みやすくなる。これにともなって、前述の図4によって説明したように、各第1凹部21の底部から吸収体全域への液の拡散性が向上するので、拡散量の増大、拡散速度の向上が図れる。また、連絡凹部24は、第1凹部と同じように形成されていても良いが、液の拡散性と形状の自由形成の観点から受液層部14と突出液吸収貯蔵部15を圧搾して形成した圧搾凹部でも良い。圧搾凹部では、液の一旦保持性は低下するが、多量排出時の拡散性に加え受液層部14にある一旦保持状態の液の拡散性も有する。
【0040】
平面視した凹部の配置形態の第7例は、図11に示すように、第2凹部22、第3凹部23のそれぞれの底部の吸収体10(受液層部14)の坪量が第1凹部21の底部の吸収体10(受液層部14)の坪量よりも大きい。具体的には、凹部の底部の受液層部14の厚さを変えることによって、言い換えれば、凹部の深さを変えることによって、長手方向の中央部より外側部の坪量が大きくなっている。例えば、坪量を大きくするには受液層部14の厚さを厚く(凹部の深さを浅く)すればよく、坪量を小さくするには受液層部14の厚さを薄く(凹部の深さを深く)すればよい。例えば、第1凹部21の底部の受液層部の坪量を10g/m以上300g/m以下とし、好ましくは30g/m以上200g/m以下とし、より好ましくは40g/m以上150g/m以下とする。また、第2、第3凹部22、23の底部の受液層部の坪量を10g/m以上330g/m以下とし、好ましくは40g/m以上230g/m以下とし、より好ましくは50g/m以上180g/m以下とする。また、第2、第3凹部22、23の底部の受液層部の坪量は、第1凹部21の坪量より10g/m、より好ましくは20g/m、さらに好ましくは30g/m以上高いことが好ましい。一例として、第1凹部21の底部の受液層部の坪量を50g/mとし、第2、第3凹部22、23の底部の受液層部の坪量を100g/mとする。
【0041】
これにより、第1吸収部11の受液層部14に取り込まれた液体は、第2吸収部12および第3吸収部13の受液層部14に引き込まれやすくなる。このため、吸収体10を吸収性物品としてのおむつに適用した場合、第1吸収部11の受液層部14で排せつ液体を取り込み、それを両側の第2吸収部12および第3吸収部13の受液層部14に引き込むことができる。よって、排せつ液体の取り込み量を多くすることができ、その取り込んだ液体を吸収体10全域の突出液吸収貯蔵部15に吸収させることができるので、吸収量を向上させることができる。
【0042】
本発明の吸収体10は、上述の凹部の形態のいくつかを組み合わせて構成されたものである。したがって、本発明の吸収体10は、柔らかさを保持しつつ、歩行している時や座っている時などでも体型適合性に優れるとともに、吸収体全体としての吸収性能を高めることができる。それとともに、上述の各形態の凹部の作用効果も有する。
またさらに、本発明の吸収体10は、断面構成では、受液層部14と突出液吸収貯蔵部15より形成されており、該構成により上述の作用効果を有するが、各々の機能を向上するために、受液層部14は最終的な保持機能が低いことが好ましく、高吸収性ポリマーが突出液吸収貯蔵部15に比べて低密度であるか配されていないことが好ましい。突出液吸収貯蔵部15は、受液層部14に比べて保持機能を高くするため、高吸収性ポリマーが配されていることが好ましく、受液層部14に比べて高密度であることがより好ましい。なお、受液層部14は、全ての部分において同じ密度で形成されている必要はなく、突出液吸収貯蔵部15と重なる位置においては、各凹部よりも高密度であることが液を突出液吸収貯蔵部に移動させる点から好ましく、突出液吸収貯蔵部15においては、突出液吸収貯蔵部15の周辺から突出液吸収貯蔵部15の中央部に向かって密度が徐々に高くなっていることが好ましい。
【0043】
次に本発明に係る吸収性物品の好ましい一実施形態について、上述の吸収体10を使い捨ておむつ(以下、おむつという)50に適用した一実施例について図12を参照しながら、以下に説明する。なお、図12においてはおむつ50の長手方向Lの中央部分の表面シート16を切欠している。
【0044】
図12に示すように、おむつ50は、全体として股下部に相当する長手方向Lの中央部がくびれた形状となっている。表面シート16および裏面シート17はそれぞれ、吸収体10の左右両側縁および前後両端部から外方に延出している。表面シート16は、その幅方向dの寸法が、裏面シート17の幅方向dの寸法より小さくなっている。おむつ50は、展開型のおむつであり、長手方向Lの一方の端部においては、その両側縁部に一対のファスニングテープFTが取り付けられている。また、他方の端部においては、裏面シート17上にランディングテープLTが取り付けられている。
【0045】
おむつ50は、吸収体10の幅方向d側縁部の上方に立ち上がることができる立体ギャザーを備えている。すなわち、おむつ50における長手方向Lの両側のそれぞれには、ギャザー弾性部材56を有する立体ギャザー用のシート材(サイドシート)18が配されて、立体ギャザーが構成されている。また、おむつ50における長手方向Lの両側には、レッグギャザー用の左右一対の一本または複数本(本図面では2本)のレッグ弾性部材58、58が配されて、レッグギャザーが構成されている。レッグギャザー用のレッグ弾性部材58は、吸収体10の長手方向Lの両側縁それぞれの外方に延出するレッグフラップにおいて、伸長状態で略直線状に配されている。この場合、おむつ50における長手方向Lと吸収体10における長手方向Lは同一方向となっている。
【0046】
立体ギャザー用のシート材18は、その一側縁に、ギャザー弾性部材56が一本または複数本(本図面では3本)、伸長状態で固定されている。シート材18は、吸収体10の左右両側縁よりも幅方向dの外方の位置において、おむつ50の長手方向Lに沿って表面シート16に接合されており、その接合部が、立体ギャザーの立ち上がり基端部となっている。シート材18は、立ち上がり基端部からおむつ50の幅方向dの外方に延出し、その延出部において裏面シート17と接合されている。シート材18は、おむつ50の長手方向Lの前後端部において、表面シート16上に接合されている。
【0047】
立体ギャザー用のシート材18としては、液不透過性または撥水性で且つ透湿性のものが好ましく用いられる。シート材18としては、例えば、液不透過性または撥水性の多孔性樹脂フィルム、液不透過性又は撥水性の不織布、もしくは該多孔性樹脂フィルムと該不織布との積層体等が挙げられる。該不織布としては、例えば、サーマルボンド不織布、スパンボンド不織布、SMS不織布、SMMS不織布等が挙げられる。シート材18の坪量は、好ましくは5g/m〜30g/m、さらに好ましくは10g/m〜20g/mである。
【0048】
表面シート16としては、この種のおむつにおいて従来用いられている各種のものを用いることができ、尿などの液体を透過させることができるものであれば制限はなく、例えば、合成繊維または天然繊維からなる織布や不織布、多孔性シート等が挙げられる。表面シート16の一例として、芯成分にポリプロピレンやポリエステル、鞘成分にポリエチレンを用いた、芯鞘構造型(サイドバイサイド型含む)複合繊維をカーディングによりウエブ化した後、エアースルー法によって不織布(この後所定箇所に開孔処理を施しても良い)としたものが挙げられる。また、透液性の高さの点(ドライ感)から、低密度ポリエチレン等のポリオレフィンからなる開孔シートも好ましく用いることができる。
裏面シート17としては、この種のおむつにおいて従来用いられている各種のものを用いることができ、液不透過性または撥水性で、かつ透湿性のものが好ましく用いられる。裏面シート17としては、例えば、上述した立体ギャザー形成用のシート材18として使用可能なものを用いることができる。また、裏面シート17の幅を吸収体10の幅と同程度にして該吸収体10の非肌当接面側に配置し、さらに、該裏面シート17の非肌当接面側に、不織布や不織布とフィルムとの積層体等を、おむつの外形を構成するシートとして設けてもよい。
上記非肌当接面は、おむつ装着時に着衣側(装着者の肌側とは反対側)に向けられる面である。また、以下、肌当接面という語句を使用することがあるが、肌当接面は、おむつ装着時に装着者の肌側に向けられる面である。
【0049】
このおむつ50は、通常の展開型のおむつと同様に使用できる。このおむつ50は、吸収体10の作用により、高吸収量と快適な装着感とを両立し、吸収体10の基盤シートとなる受液層部14(前記図4参照。)に伸縮性のシートを用いることにより、複雑に起伏する肌面に合わせて変形し、隙間なく面で当接する人体適合性と、着用者の身体の動きに合わせて変形し、その肌面と面で当接した状態を維持する動作追随性とを持ち合わせている。
【0050】
表面シート16は、液透過性であり肌への当りのソフトな材料からなることが好ましい。例えばコットン等の天然繊維を材料とする不織布や、各種合成繊維に親水化処理を施したものを材料とする不織布を用いることができる。裏面シート17は液不透過性のシート材からなることが好ましい。裏面シート17は必要に応じて水蒸気の透過性のものであってもよい。具体的に十分な水蒸気透過性を得るために、炭酸カルシウム等のフィラーからなる微粉を分散させたポリエチレン等の合成樹脂製のフィルムを延伸し、微細な孔をあけた多孔質フィルムを用いることが好ましい。サイドシートとしては、不織布、フィルムシート、紙等が挙げられる。防漏性の観点からは、サイドシートを液不透過性または難透過性である疎水性不織布、防漏性のフィルムシート等により形成することが好ましい。上記シートは一枚でもよいし、さらに機能性のシート等と組み合わせて2枚以上のものとしてもよい。
【0051】
さらに、表面シート16、吸収体10、裏面シート17およびサイドシートの他にも用途や機能に合わせ適宜部材を組み込んでもよい。なお、上記実施形態の表面シート16、吸収体10および裏面シート17の材料、製法における条件や、製品の寸法諸元は特に限定されず、通常に用いられている各種材料を用いることができる。
【0052】
本発明の吸収性物品50は、吸収体に本発明の吸収体10を装着したものであるから、柔らかさを保持しつつ、歩行している時や座っている時などでも体型適合性に優れ、快適な着用感を得ることができる。
第1凹部は複数形成されていることが、拡散性とフィット性の観点から好ましいが、凹部の幅を2mmないし5mmより大きく、例えば15mmから20mmとすることで複数本の第1凹部と同様の効果を奏することができる。また、第1凹部の間隔を45mmから55mmとし、その間に圧搾凹部を第1凹部と同じ方向に1本以上形成することで、15mmから25mm程度の間隔の第1凹部と同等の効果を奏する形態とすることもできる。
【0053】
本発明の吸収体10は、上記の実施形態に制限されるものではなく、上述のような展開型おむつのほか、パンツ型おむつ、生理用ショーツ、ショーツ型ナプキン、生理用ナプキン、失禁パッド、失禁ライナ等の吸収性物品に含まれる吸収体に用いることができる。また、上記吸収性物品が乳幼児用のものであっても、成人用のものであっても適用することができる。さらに、尿に限らずその他、経血、オリモノ、軟便等に対しても効果的である。
【符号の説明】
【0054】
10 吸収体
11 第1吸収部
12 第2吸収部
13 第3吸収部
21 第1凹部
22 第2凹部
23 第3凹部
L 長手方向
d 幅方向
S2,S3 周面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13