(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態に係る半導体装置について添付図面を参照して説明する。
【0015】
(第1の実施の形態)
まず、第1の実施の形態に係る半導体装置の構成について説明する。
図1は、第1の実施の形態に係る半導体装置及びその使用例の構成を示すブロック図である。半導体装置3は、一つ、もしくは複数の半導体チップで構成されたIPD(インテリジェント・パワー・デバイス)である。この使用例(電装システム1)では、半導体装置3は、端子T2にマイクロコンピュータ2、高電位側端子T1に電源4、及び低電位側端子T0に負荷5をそれぞれ接続されている。そして、半導体装置3は、マイクロコンピュータ2の制御に基づいて、電源4から負荷5への電力の供給を制御する。ここで、電装システム1が自動車電装システムの場合、電源4は自動車のバッテリーに例示され、負荷5は自動車のランプやモータに例示される。半導体装置3は、負荷5のハイサイドに接続されている。このような電装システム1は、後述される半導体装置3の構成及び動作により、負荷の状態に依らず、低損失でデバイスを保護することができる。
【0016】
以下、半導体装置3について詳細に説明する。半導体装置3は、電力制御回路11と過熱検知回路12とを具備している。電力制御回路11は、マイクロコンピュータ2の制御に基づいて、電源4から負荷5への電力の供給を制御する。また、電力制御回路11は、負荷5の状態に基づいて、電源4から負荷5への電流を遮断する機能(電流遮断機能)や、電源4から負荷5への電流を制限する機能(電流制限機能)を備えている。負荷5の状態としては、完全に負荷が短絡した完全負荷短絡状態や、負荷が完全には短絡してはいないが、負荷の抵抗値が正常な範囲よりも小さく、過電流が流れる不完全負荷短絡状態などに例示される。この図の例では、電力制御回路11は、高電位側端子T1に接続された電源4から低電位側端子T0に接続された負荷5への電流をそのまま流す(通常動作)、遮断する(異常動作:完全負荷短絡状態)、又は制限する(異常動作:不完全負荷短絡状態)。電力制御回路11の詳細については後述される。
【0017】
過熱検知回路12は、電力制御回路11の出力トランジスタMout(後述)内に配置された温度センサ(図示されず)により出力トランジスタMoutの温度を監視する。そして、過熱検知回路12は、出力トランジスタMoutが所定の温度以上であることを検知して、過熱保護信号EHSを電力制御回路11に出力する。電力制御回路11は、過熱保護信号EHSに応答して、出力トランジスタMoutをオフに制御する(異常動作:出力トランジスタ過熱)。過熱検知回路12及び温度センサは、従来知られた回路及びセンサを用いることができる。
【0018】
次に、電力制御回路11について更に説明する。
図2は、第1の実施の形態に係る半導体装置3の電力制御回路11の構成を示す回路図である。電力制御回路11は、出力トランジスタMoutと、第1過電流検出部23と、第2過電流検出部24と、ラッチ回路21と、駆動回路22とを具備している。
【0019】
出力トランジスタMoutは、高電位側端子T1と低電位側端子T0との間に接続されたトランジスタであり、両端子間での電流の流れを制御する。それにより、電源4から負荷5への電力の供給が制御される。出力トランジスタMoutは、MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタに例示され、この図の例では、NMOS(N−channel type MOS)トランジスタを用いている。MOSトランジスタは、DMOS(Diffused MOS)トランジスタやLDMOS(Lateral Diffused MOS)トランジスタ、及び縦型MOS(Vertical MOS)トランジスタに例示される。出力トランジスタMoutは、複数個あっても良い。高電位側端子T1は電源4に接続されているので、第1電源V1(電位V1)と見ることができる。
【0020】
第1過電流検出部23は、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値以上か否かを検出して、その結果を示す第1検出信号S1を出力する。ここで、第1基準値としては、例えば負荷5が完全に短絡した状態(完全な負荷短絡状態)と判断し得る所定のドレイン−ソース電圧VDS=VQ(又はそれに対応する電圧)とすることができる。設計に応じて所望の値を設定できる。このように、本実施の形態では、判断の基準(第1基準値)として、出力トランジスタMoutに流れる出力電流Iout(又はそれに対応する電流)ではなく、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSを用いている。第1基準値(VQ)は、完全負荷短絡状態を検出するための電圧閾値と見ることもできる。
【0021】
なお、この場合、第1過電流検出部23は、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値VQ以上の場合(結果が「真」の場合)、第1検出信号S1として「活性」を示す信号を出力してもよい。そして、ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値VQ未満の場合(結果が「偽」の場合)、第1検出信号S1として「非活性」を示す信号を出力してもよい。あるいは、「活性」と「非活性」とが逆であっても良い。あるいは、第1基準値VQ以上の場合(結果が「真」の場合)、第1検出信号S1を出力し、第1基準値VQ未満の場合(結果が「偽」の場合)、第1検出信号S1を出力しないようにしてもよい。以下、他の信号についても同様である。
【0022】
第2過電流検出部24は、出力トランジスタMoutに流れる出力電流Ioutが第2基準値以上か否かを検出して、その結果を示す第2検出信号S2を出力する。ここで、第2基準値は、負荷5が完全には短絡していないが所定の抵抗値より低抵抗になった状態(不完全負荷短絡状態)と判断するための出力電流Ioutの電流制限の閾値(電流制限閾値Ith)である。このとき、出力電流Ioutが第2基準値のときのドレイン−ソース電圧VDSを仮にVQ2とすると、VQ2<VQである。ただし、VQ2は、通常動作時のドレイン−ソース電圧VDSよりも大きい。
【0023】
この第2基準値は、負荷5が完全負荷短絡状態において出力電流Ioutを遮断するための閾値(過電流遮断閾値)としても用いられる。すなわち、この第2基準値は、電流制限の閾値であると同時に、過電流遮断の閾値でもある。言い換えると、電流制限の閾値と過電流遮断の閾値とは同じ値を用いている。
【0024】
ラッチ回路21は、第1検出信号S1に基づいて、ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値(VQ)以上の場合、第2検出信号S2の値をラッチする。そして、ラッチされた値を過電流検出信号DSとして駆動回路22へ出力する。また、ラッチ回路21は、第1検出信号S1に基づいて、ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値より小さい場合、ラッチ回路21への実質的な入力を遮断して、第2検出信号S2をラッチせずに、そのまま過電流検出信号DSとして駆動回路22へ出力する。言い換えると、第1検出信号S1は、ラッチ回路21のイネーブル(Enable)信号と見ることができる。すなわち、第1検出信号S1が活性の場合(あるいは出力された場合)、ラッチ回路21はイネーブルな状態となる。第1検出信号S1が非活性の場合(あるいは出力されない場合)、ラッチ回路21はイネーブルな状態にならず、入力信号をラッチしない。また、過電流検出信号DSは、出力トランジスタMoutに、過電流が流れるか否かを示す信号と見ることができる。
【0025】
駆動回路22は、ラッチ回路21の過電流検出信号DSに基づいて、過電流検出信号DSが出力された(あるいは活性な)場合、出力トランジスタMoutをオフに制御する。出力トランジスタMoutの過電流を遮断するためである。一方、駆動回路22は、ラッチ回路21の過電流検出信号DSに基づいて、過電流検出信号DSが出力されない(あるいは非活性な)場合、出力トランジスタMoutをオンに制御する。出力トランジスタMoutに過電流が流れていないからであり、負荷5に電流を供給するためである。
【0026】
ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値(VQ)以上の場合、第2検出信号S2の値(活性)はラッチ回路21にラッチされ、過電流検出信号DSとして出力される。そして、その第2検出信号S2の値はラッチ回路21のリセットまで継続的にラッチされる。それにより、駆動回路22は、出力トランジスタMoutを継続的にオフに制御する。その結果、過電流が遮断されるので、デバイス等を過電流から保護することができる(過電流遮断機能)。言い換えると、本実施の形態では、ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値(VQ)以上かつ出力電流Ioutが第2基準値以上であることを検出して、出力トランジスタMoutを遮断ラッチすることができる。
【0027】
一方、ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値(VQ)未満の場合、ラッチ回路21への入力が禁止され、第2検出信号S2がそのまま過電流検出信号DSとして出力される。それにより、駆動回路22は、第2検出信号S2の値が活性の場合、出力トランジスタMoutをオフに制御し、第2検出信号S2の値が非活性の場合、出力トランジスタMoutをオンに制御する。このとき、負荷5の不完全負荷短絡状態が継続すると、以下の(1)と(2)とが繰り返される。(1)第2検出信号S2の値が活性になると、出力トランジスタMoutがオフに制御され、その結果、出力電流Ioutが減少して、第2検出信号S2の値が非活性になる。(2)第2検出信号S2の値が非活性になると、出力トランジスタMoutがオンに制御され、その結果、出力電流Ioutが増加して、第2検出信号S2の値が活性となる。以上のことから、駆動回路22は、ラッチ回路21の過電流検出信号DS(実質的に第2検出信号S2)に基づいて、出力トランジスタMoutを繰り返しオフ・オンに制御する。その結果、過電流が制限されるので、デバイス等を過電流から保護することができる(電流制限機能)。言い換えると、本実施の形態では、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値未満かつ出力電流Ioutが第2基準値以上であることを検出して、出力電流Ioutを第2基準値で電流制限をかけることができる。
【0028】
次に、第2過電流検出部24の回路構成の一例について説明する。
第2過電流検出部24は、センストランジスタMsと、センス抵抗Rsと、定電流源Irefと、トランジスタM1と、比較器Compとを備えている。センストランジスタMsは、高電位側端子T1(第1電源V1)に対して出力トランジスタMoutと並列に接続され、出力トランジスタMoutのゲートとセンストランジスタMsのゲートとは共通に接続されている。センストランジスタMsは、例えば出力トランジスタMoutと同じ断面構造でサイズ(チャネル幅W)の異なるトランジスタが用いられる。この図の例では、NMOSトランジスタを用いている。センス抵抗Rsは、センストランジスタMsとソース電圧基準(この図の例では低電位側端子T0)との間に接続されている。言い換えると、センストランジスタMsとセンス抵抗Rsとが直列に接続され、直列に接続されたセンストランジスタMsとセンス抵抗Rsが、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース間に接続されている。
【0029】
この場合、センストランジスタMsは、出力トランジスタMoutの状態を反映する。センス抵抗Rsの両端の電圧は、理想的には、出力トランジスタMoutの電流に比例する。すなわち、センストランジスタMsは、出力トランジスタMoutの状態をセンスし、センス抵抗Rsの両端電圧は、出力トランジスタMoutの電流をセンスする。
【0030】
定電流源Iref(定電流Iref)は、高電位側端子T1(第1電源V1)に対してセンストランジスタMs及び出力トランジスタMoutと並列に接続されている。トランジスタM1は、スイッチトランジスタSW1を介して定電流源Irefとソース電圧基準(この図の例では低電位側端子T0)との間に接続され、ゲートをセンストランジスタMsとセンス抵抗Rsとの間のノードNsに接続されている。トランジスタM1及びスイッチトランジスタSW1は、NMOSトランジスタに例示される。言い換えると、定電流源IrefとスイッチトランジスタSW1とトランジスタM1とが直列に接続され、直列に接続された定電流源IrefとスイッチトランジスタSW1とトランジスタM1が、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース間に接続されている。
【0031】
この場合、スイッチトランジスタSW1は、電力制御回路11の動作時/非動作時にオン/オフする。非動作時での無駄な電力消費を防止する。定電流源Irefは、スイッチトランジスタSW1を介したトランジスタM1との接続点であるノードN1に第2基準値を決めるための定電流Irefを供給する。一方、トランジスタM1は、センス抵抗Rsの両端電圧(ノードNsの電圧)をモニタする。センス抵抗Rsの両端電圧が上がると、トランジスタM1のゲート電圧が上がって、トランジスタM1がオンになり、センス抵抗Rsの両端電圧に対応した抵抗値となる。すなわち、トランジスタM1は、ノードNsの電圧に応じて変動する可変抵抗と見なすことができる。ノードNsの電圧が上昇するとトランジスタM1の抵抗値が下がるため、ノードNsの電圧がある一定の電圧になると、ノードN1の電圧が下がる。
【0032】
比較器Compは、一方の入力端子を定電流源IrefとトランジスタM1との間のノードN1に、他方の入力端子を所定の定電圧源Vref(定電圧Vref)に、出力端子をラッチ回路21の入力端子にそれぞれ接続されている。定電圧源Vrefは第2電源V2に接続されている。比較器Compは、ノードN1の電位と、定電圧Vrefとを比較し、比較結果を第2検出信号S2としてラッチ回路21に出力する。
【0033】
トランジスタM1の電流>第2基準値となった時に、比較器Compの出力が反転する。すなわち、比較器Compから第2検出信号S2が出力される(活性となる)。その結果、第2検出信号S2がラッチ回路21へ供給される。具体的には、センストランジスタMsの電流が増大し、トランジスタM1がオンとなった後、更にセンストランジスタMsの電流が増大して、センス抵抗Rsの両端電圧がある一定値を超えた時(トランジスタM1の電流>第2基準値)に、比較器Compの出力が反転する。すなわち、第2検出信号S2が出力される(活性となる)。
【0034】
更に、第2過電流検出部24は、トランジスタM0と、抵抗R1と、ダイオードD1とを備えている。トランジスタM0と抵抗R1とはノードN2を介して直列に接続されている。直列に接続されたトランジスタM0と抵抗R1は出力トランジスタMoutのドレイン−ソース間に接続されている。トランジスタM0(例示:PMOSトランジスタ)は、電力制御回路11の動作時に制御信号CS(例示:Lowレベル)をゲートに供給され、オンとなる。そのとき、ノードN2は、第1電源V1の電位V1(例示:Highレベル)となり、スイッチトランジスタSW1(例示:NMOSトランジスタ)をオンにする。ダイオードD1は、ツェナーダイオードであり、第1電源V1にカソードを、ノードN1にアノードをそれぞれ接続されている。
【0035】
次に、第1過電流検出部23の回路構成の一例について説明する。
第1過電流検出部23は、ダイオードD2と、抵抗R2と、抵抗R3と、トランジスタM4と、トランジスタM0とを備えている。ダイオードD2は、ツェナーダイオードであり、トランジスタM0を介して高電位側端子T1(第1電源V1)にカソードを接続されている。トランジスタM0は、PMOSトランジスタに例示される。抵抗R2は、ダイオードD2のアノードと低電位側端子T0との間に接続されている。抵抗R3は、高電位側端子T1(第1電源V1)に一端を接続されている。トランジスタM4は、抵抗R3の他端と低電位側端子T0との間に接続され、ゲートをダイオードD2と抵抗R2との間のノードN3に接続されている。トランジスタM4は、NMOSトランジスタに例示され、ノードN3の電位によりオン又はオフする。トランジスタM4のドレインがラッチ回路21のイネーブル端子に接続されている。すなわち、トランジスタM4のドレイン電位が第1検出信号S1(イネーブル信号)となる。
【0036】
半導体装置3(IPD)が動作していない時は、制御信号CSとしてHighレベルの信号が出力され、トランジスタM0がオフし、暗電流をカットする。半導体装置3(IPD)が動作している時、制御信号CSとしてLowレベルの信号が出力され、トランジスタM0はオンする。
【0037】
電力制御回路11の動作の初期段階において、まず、トランジスタM0がオンとなる。その時、出力トランジスタMoutにはほとんど出力電流Ioutが流れていない。そのため、負荷5の状態に関わらず、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSは広くなる。そのため、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値(VQ)を超える。その結果、トランジスタM4がオンとなり、そのドレイン電圧がHighレベルからLowレベルに変わる。このドレイン電圧が、活性な第1検出信号S1としてラッチ回路21のイネーブル端子に供給される。
【0038】
その後、負荷5が完全負荷短絡状態であれば、その状態が維持される。一方、負荷5が不完全負荷短絡状態、もしくは正常状態であれば、出力電流の増加とともに、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値(VQ)よりも下がる。その結果、トランジスタM4がオフとなり、そのドレイン電圧がLowレベルからHighレベルに変わる。このドレイン電圧が、非活性な第1検出信号S1としてラッチ回路21のイネーブル端子に供給される。
【0039】
次に、各電源の構成及び関係について説明する。
図3A及び
図3Bは、本実施の形態に係る各電源間の関係を示す回路図である。
図3Aを参照して、第1電源V1は、既述(
図1)のように外部電源である電源4を用いることができる。第3電源V3は、例えば、GND(接地電位)を用いることができる。第2電源V2は、第1電源V1と第3電源V3との間に直列に接続されたツェナーダイオードD3と定電流源Ipとの間の中間電位として実現できる。
図3Bを参照すると、
図3Aの電流源Ipは、GS(ゲート−ソース)ショートのデプレッション型トランジスタを用いることができる。この図の例では、ゲート及びソースを第3電源V3に、ドレインをツェナーダイオードD3のアノードにそれぞれ接続されたNMOSトランジスタM08を用いている。NMOSトランジスタM08の代わりに抵抗を用いても良い。
【0040】
次に、ラッチ回路21の回路構成の一例について説明する。
図4は、本実施の形態に係るラッチ回路21の具体例を示す回路図である。ラッチ回路21は、ラッチ部41と、AND回路42とを備えている。ラッチ部41は、第1検出信号S1でイネーブルとなり、第2検出信号S2をラッチする。AND回路42は、ラッチ部41の出力(ラッチされた値)と第2検出信号S2との論理積を出力する。
【0041】
ラッチ部41は、トランジスタM01〜M05、抵抗R01〜R02、キャパシタCLとを備えている。トランジスタM01〜M05は、PMOSトランジスタに例示される。トランジスタM01、M05と抵抗R01とは、第1電源V1と第2電源V2との間にこの順で直列に接続されている。トランジスタM01のゲートには、ラッチ回路21の入力信号として第2検出信号S2が供給される。トランジスタM05のゲートには、ラッチ回路21のイネーブル信号として第1検出信号S1が供給される。トランジスタM03は、ソースを第1電源V1にドレインを抵抗R01に接続されている。トランジスタM02と抵抗R02とは、第1電源V1と第2電源V2との間にこの順で直接に接続されている。トランジスタM03のゲートは、トランジスタM02と抵抗R02との接続点であるラッチ用のノードN
Lに接続されている。すなわち、ノードN
Lの電圧V
Lがラッチされた値を示す。トランジスタM02のゲートは、トランジスタM03と抵抗R01との接続点に接続されている。キャパシタCLは、第1電源V1とノードN
Lとの間に接続されている。トランジスタM04は、第1電源V1とノードN
Lとの間に接続され、ゲートにはマイクロコンピュータ2からリセット信号PRSが供給される。
【0042】
マイクロコンピュータ2からの制御信号CS、MCS(例示:オン)により半導体装置3(IPD)が動作を開始するタイミングで、IPD内部で短時間のリセット信号PRS(例示:Lowレベル)が出力され、ラッチ回路21のリセット端子に供給される。それにより、ラッチ回路21がリセットされる。初期状態でのラッチ回路21の誤動作防止のためである。ラッチ回路21の入力(第2検出信号S2)とイネーブル(第1検出信号S1)とは、NOR(排他的論理和)を構成している。両信号のいずれもLowレベルのときのみ、トランジスタM02がオフし、ラッチ用のノードN
Lの電圧V
LがLowレベルになる。その電圧V
Lをゲートで受けているトランジスタM03がそのタイミングでオンし、トランジスタM02のゲートを持ち上げることにより、ノードN
Lの電圧V
LをLowレベルに固定している。また、このようなラッチ状態を解除するときは、マイクロコンピュータ2からの制御信号CS、MCSがオフからオンに切り替わり、リセット信号PRSが再度発生し、トランジスタM04がオンするタイミングになる。
【0043】
AND回路42は、ラッチ用のノードN
Lの電圧V
Lと、ラッチ回路21の入力(第2検出信号S2)とのAND(論理積)を過電流検出信号DSとして駆動回路22へ出力する。すなわち、両信号のどちらかがLowレベルのときに、過電流検出信号DSとしてLowレベルを出力する。一方、両信号のいずれもHighレベルのときに、過電流検出信号DSとしてHighレベルを出力する。
【0044】
従って、ノードN
Lの電圧V
LがLowレベル固定(Lowレベルにラッチ)されると、過電流検出信号DSとしてLowレベルが固定的に出力される。その結果、駆動回路22は、その過電流検出信号DSに基づいて、出力トランジスタMoutのゲートをオフさせる。ここで、Lowレベル(過電流検出信号DS)は、ラッチされている。そのため、出力トランジスタMoutのオフに伴い、センストランジスタMsの電流が減り、センス抵抗Rsの両端電圧が低くなっても、Lowレベル(過電流検出信号DS)を保持する。その結果、過電流検出信号DSに基づいて駆動回路22が出力トランジスタMoutを継続的にオフにする。それにより、出力電流Ioutを遮断することができる。
【0045】
一方、ノードN
Lの電圧V
LがHighレベル(例示:S1がHighレベルのまま)であると、ラッチ回路21の入力(第2検出信号S2)のLowレベル/Highレベルに対応して、過電流検出信号DSとしてLowレベル/Highレベルが出力される。その結果、過電流検出信号DS(=第2検出信号S2)に基づいて、駆動回路22が出力トランジスタMoutのゲートをLowレベル/Highレベルに制御する。そして、ゲート電圧がLowレベル/Highレベルを交互に繰り返すことになり、出力電流Ioutがある一定値を電流制限の閾値として電流制限をかけることができる。
【0046】
次に、第1の実施の形態に係る半導体装置の動作について説明する。第1の実施の形態では、半導体装置3の動作開始時に不完全な負荷短絡状態又は完全な負荷短絡状態になっている場合について説明する。
【0047】
図5は、第1の実施の形態に係る半導体装置の動作を説明するグラフである。縦軸は出力トランジスタMoutの出力電流Ioutを示し、横軸は出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSを示す。曲線E0は、通常動作時の出力トランジスタ特性(I
DS−V
DS曲線)を示している。破線の負荷線P1は、負荷5の抵抗値が小さい完全な負荷短絡状態(異常状態)の負荷線を示している。実線の負荷線P2は、負荷5の抵抗が完全な負荷短絡状態よりはやや大きい不完全な負荷短絡状態(異常状態)の負荷線を示している。Q0で示される領域は、通常使用時の領域である。Q2で示される領域は、負荷5の不完全な負荷短絡状態の領域であり、トランジスタM4がオフである。Q1で示される領域は、負荷5が完全な負荷短絡状態の領域であり、トランジスタM4がオンである。トランジスタM4がオンするのは、ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値(VQ)以上の場合である。負荷線P1、P2は、出力電流Iout=0のとき、ドレイン−ソース電圧VDS=V1である(動作点Dp0)。過電流の閾値Ith=第2基準値を点線(Q2領域)及び破線(Q1領域)でそれぞれ示している。
【0048】
過電流閾値Ithは、ドレイン−ソース電圧VDSに対して一定値になるよう設計されている。トランジスタM4がオンするドレイン−ソース電圧VDSが広い領域Q1では、ラッチ回路21の入力が許可されている。そのため、負荷線P1(破線:完全な負荷短絡状態)の場合、その領域を通り、負荷線P1と過電流閾値Ithとが交わる動作点Dp1においてオフラッチする。すなわち、出力トランジスタMoutをオフにする値がラッチ回路21にラッチされ、その値が出力トランジスタMoutのゲートを制御する信号となり、出力電流Ioutが遮断される。一方、トランジスタM4がオフするドレイン−ソース電圧VDSが狭い領域Q2では、ラッチ回路21の入力が許可されていない。そのため、負荷線P2(実線:不完全な負荷短絡状態)の場合、負荷線P2と過電流閾値Ithとが交わる動作点Dp2近傍において、出力トランジスタMoutのゲートを制御する信号がHighレベルとLowレベルとを繰り返し、出力トランジスタMoutは電流制限される。
【0049】
ただし、電流制限の場合には、電流を制限するのみで電流遮断機能は無い。一般的には出力トランジスタMout内に配置された温度センサー(図示されず)をモニタし、その温度に基づいて過熱検知回路12が駆動回路22を介して出力トランジスタMoutのオン/オフを制御する。例えば、温度が高すぎる場合、出力トランジスタMoutをオフに制御する。
【0050】
図6は、第1の実施の形態に係る半導体装置の動作を説明するタイミングチャートである。ただし、(a)はマイクロコンピュータ2からの入力信号MCSである。(b)はマイクロコンピュータ2の信号に同期したIPD内部の制御信号CSである。(c)はマイクロコンピュータ2からの信号に応じてIPD内部で発生されるリセット信号PRSである。(d)は低電位側端子T0の出力電圧V0である。(e)は出力トランジスタMoutの出力電流Ioutである。(f)はラッチ回路21のイネーブル信号(第1検出信号S1)である。(g)はラッチ回路21の入力信号(第2検出信号S2)である。(h)はラッチ回路21のノードN
Lの電圧V
L(ラッチされた値)である。(i)はラッチ回路21の出力信号(過電流検出信号DS)である。(j)は過熱検知回路12による過熱保護信号EHSである。この図において、時刻t1〜t10(期間A1)は完全な負荷短絡状態について示している。そのとき、電流を遮断している期間が時刻t3〜t4(期間B1)である。時刻t10〜t22(期間A2)は不完全な負荷短絡状態を示している。そのとき、電流を制限している期間が時刻t13〜t14、t17〜t18、t21〜t22(期間B2)である。時刻t30以降(期間A0)は通常の負荷状態を示している。
【0051】
まず、完全な負荷短絡状態の場合(期間A1)での動作について説明する。
時刻t1において、マイクロコンピュータ2から入力信号MCS(Highレベル)が供給され、制御信号CS(Lowレベル)、リセット信号PRS(Lowレベルパルス)のIPD内部信号が発生する。完全な負荷短絡状態では、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSは広くなる。電源4の電圧が、ほぼ全て、出力トランジスタMoutに印加されるためである。そのため、ダイオードD2はブレークダウンして、ノードN3の電位が上がり、トランジスタM4がオンになり、そのドレイン電圧が下がって、イネーブル信号(第1検出信号S1)はLowレベルとなる。すなわち、
図5の領域Q1中の負荷線P1上にいる。
時刻t2において、リセット信号PRSが非活性(Highレベル)となり、それ以降において、イネーブル信号(第1検出信号S1)はLowレベルのまま、出力トランジスタMoutの出力電流Ioutが増えていく。一方、ドレイン−ソース電圧VDSは緩やかに減少して行く。すなわち、
図5の領域Q1中の負荷線P1上を上方へ移動して行く。
時刻t3において、出力トランジスタMoutの出力電流Ioutが一定値(
図5の過電流閾値Ith、動作点Dp1)に達する。すなわち、比較器Compは、定電流源IrefとトランジスタM1との間のノードN1の電位がVref未満になったことを検出する。ラッチ回路21の入力信号(第2検出信号S2)がLowレベルになり、それに対応して出力信号(過電流検出信号DS)もLowレベルになる。その際、少し遅れて、ラッチ回路21のノードN
Lの電位V
LもLowレベルになり、このLowレベルは保持される。出力信号(過電流検出信号DS)がLowレベルになることにより、駆動回路22にオフ信号(Lowレベル)が入力されるため、出力トランジスタMoutはオフする。その結果、出力トランジスタMoutの出力電流Ioutが急激に減少して行く。それにより、ラッチ回路21の入力信号(第2検出信号S2)がHighレベルに戻る。しかし、上述の通り、ラッチ回路21のノードN
Lの電位V
LがLowレベルで保持されているため、ラッチ回路21の出力信号(過電流検出信号DS)もLowレベルに保持される。この状態は、マイクロコンピュータ2により再度リセットさせるまで(すなわち時刻t4を超えてt10まで)保持される。
【0052】
続いて、不完全な負荷短絡状態の場合(期間A2)での動作について説明する。
時刻t10において、マイクロコンピュータ2から入力信号MCS(Highレベル)が供給され、制御信号CS(Lowレベル)、リセット信号PRS(Lowレベルパルス)のIPD内部信号が発生する。不完全な負荷短絡状態では、完全な負荷短絡状態と比較すると、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSはある程度狭くなる。ただし、初期的には、まだ出力電流Ioutが流れていないので、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSは十分高く、ダイオードD2はブレークダウンして、ノードN3の電位が上がり、トランジスタM4のドレイン電圧が下がって、イネーブル信号(第1検出信号S1)はLowレベルとなる。すなわち、
図5の領域Q1中の負荷線P2上にいる。
時刻t11において、リセット信号PRSが非活性(Highレベル)となり、それ以降において、イネーブル信号(第1検出信号S1)はLowレベルのまま、出力トランジスタMoutの出力電流Ioutが増えていく。一方、ドレイン−ソース電圧VDSは急激に減少して行く。すなわち、
図5の領域Q1中の負荷線P2上を左上方へ移動して行く。
時刻t12において、ドレイン−ソース電圧VDSがVQになると、トランジスタM4のドレイン電圧が上がって、イネーブル信号(第1検出信号S1)はHighレベルとなる。すなわち、
図5の負荷線P2上の領域Q2に入る。
時刻t13〜t14において、出力トランジスタMoutの出力電流Ioutが一定値(
図5の過電流閾値Ith、動作点Dp2)に達する。すなわち、比較器Compは、ノードN1の電位がVref未満になったことを検出する。ラッチ回路21の入力信号(第2検出信号S2)がLowレベルになる。ここで、完全な負荷短絡状態の場合と異なり、イネーブル信号(第1検出信号S1)がHighレベルのため、ラッチ回路21への入力が禁止されている。そのため、ラッチ回路21のノードN
Lの電位V
Lは、初期状態のHighレベルのまま反転しない。従って、ラッチ回路21は、Lowレベルの入力信号(第2検出信号S2)をそのまま出力信号(過電流検出信号DS)として出力する。出力信号(過電流検出信号DS)がLowレベルになることにより、駆動回路22にオフ信号(Lowレベル)が入力されるため、出力トランジスタMoutはオフしようとする。出力トランジスタMoutの出力電流Ioutが減少して、一定値(
図5の過電流閾値Ith)未満になる。すなわち、比較器Compは、ノードN1の電位がVref以上になったことを検出する。ラッチ回路21の入力信号(第2検出信号S2)がHighレベルに戻る。そのため、ラッチ回路21は、Highレベルの入力信号(第2検出信号S2)をそのまま出力信号(過電流検出信号DS)として出力する。出力信号(過電流検出信号DS)がHighレベルになることにより、駆動回路22にオン信号(Highレベル)が入力されるため、出力トランジスタMoutはオンしようとする。このような動作を繰り返すことにより、出力トランジスタMoutの出力電流Ioutは、一定値(
図5の過電流閾値Ith)付近で制限される。
【0053】
このようなオン・オフ制御を繰り返し行う期間では、出力トランジスタMout内に配置された温度センサ(図示されず)により出力トランジスタMoutの温度をモニタしている過熱検知回路12が、出力トランジスタMoutの温度がある一定値に達した場合(例示:時刻t14)に、過熱保護信号EHSを駆動回路22へ出力して、出力トランジスタMoutをオフに制御する。過熱保護信号EHSによる駆動回路22を介した出力トランジスタMoutの制御は、過電流検出信号DSによる駆動回路22を介した出力トランジスタMoutの制御とは独立している。
以下、時刻t15〜t18、t19〜t22は、上記t11〜t14と同様である。なお、
図6において、入力信号(第2検出信号S2)と出力信号(過電流検出信号DS)の波形は、図を見易くするため、まばらに描画されているが、実際には多くの回数のオン・オフ制御を密に行っている。
【0054】
続いて、正常な負荷状態の場合(期間A0)での動作について説明する。
正常な負荷状態では、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSは非常に狭くなる(その分、出力端子の電圧V0は相対的に大きくなる)。そのため、イネーブル信号(第1検出信号S1)がHighレベルになる。出力トランジスタMoutの出力電流Ioutは、負荷が正常であれば一定値(
図5の過電流閾値Ith)まで到達しないため、電流制限は働かない。また、発熱も小さいため、過熱検知回路12も動作しない。
【0055】
以上のようにして、第1の実施の形態に係る半導体装置は動作する。
【0056】
ここで、定電流源Ierfの回路構成の一例について説明する。
図7A及び
図7Bは、本実施の形態に係る定電流源Ierfに関する説明図である。
図7Aは、出力トランジスタMoutにおける負荷線の電源電圧依存性の例を示している。縦軸は出力電流Ioutを示し、横軸はドレイン−ソース電圧VDSを示す。半導体装置3を実際に使用する場合には、電源電圧の変動が起こり得る。それに伴い、負荷が定抵抗であることを考慮すると、オームの法則に則り電源電圧に比例し電流が増加又は減少する。その結果、電源電圧に対する負荷線は、電源電圧に応じて
図7Aに示すように平行移動する。例えば、電源電圧がVDDの負荷線がPx1の場合、電源電圧がVDD/2になると負荷線は平行移動してPx2のようになる。
【0057】
例えば、
図2中の定電流源Irefが電源電圧(例示:第1電源V1)に対して定電流であるとすれば、過電流閾値Ithは、
図7Aに示される電源電圧による負荷線の変動を考慮して、高く設定する必要が出てくる。そうなると、過電流閾値が大きくなり、電力損失が大きくなってしまう。そのため、定電流源Irefに電源電圧依存を持たせる。
図7Bは、そのような定電流源Irefの例を示している。定電流源Irefは、電源電圧(第1電源V1)に接続されたカレントミラー回路である。PMOSトランジスタM06とPMOSトランジスタM07において、両ソースが電源電圧(第1電源V1)に接続されている。また、ゲートが互いに接続され、かつPMOSトランジスタM06のドレインに接続されている。PMOSトランジスタM06のドレインは、更に抵抗R03を介して基準電源Vxに接続されている。基準電源Vxは例えばGND電位である。このような構成にすることにより、電源電圧(第1電源V1)に比例した定電流Irefを出力することができる。定電流源Irefに電源電圧依存を持たせることにより、より適切な過電流に対する保護を実現できる。定電流Irefが大きくなると、過電流閾値が高くなるため、
図7Aの負荷線の電源電圧依存性を考慮した過電流閾値を実現することができる。
【0058】
以上のように、本実施の形態では、特許文献1の技術とは異なり、タイマーによる切り替えではなく、ドレイン−ソース電圧VDSにより、電流制限か、過電流遮断かを切り替えている。そのため、過電流閾値Ithを低く設定することができ、完全な負荷短絡状態での電力損失を小さくできる。また、電流制限機能はタイマーでの切り替えではないため、過電流閾値Ithに達しない直前の過負荷状態でも、直ちに一定の電流値に制限することが可能で、過剰な電力損失が発生することを防ぐことができる。
【0059】
(第2の実施の形態)
次に、第2の実施の形態に係る半導体装置の構成について説明する。本実施の形態は、不完全な負荷短絡状態と完全な負荷短絡状態とで過電流閾値の設定値が異なっているという点で、第1の実施の形態と相違している。以下では、主にその相違点について説明する。
【0060】
本実施の形態に係る電力制御回路11aについて説明する。
図8は、第2の実施の形態に係る半導体装置3の電力制御回路11aの構成を示す回路図である。電力制御回路11aは、出力トランジスタMoutと、第1過電流検出部23と、第2過電流検出部24aと、ラッチ回路21と、駆動回路22とを具備している。
【0061】
第1の実施の形態では一つの第2基準値(Ith)を用いているが、本実施の形態では高電圧側第2基準値Ith1及び低電圧側第2基準値Ith2の二つの第2基準値を用いる。高電圧側第2基準値Ith1は、ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値VQより大きい場合での第2基準値である。低電圧側第2基準値Ith2は、ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値VQより小さい場合での第2基準値である。ただし、低電圧側第2基準値Ith2は、高電圧側第2基準値Ith1よりも大きい。
【0062】
ここで、低電圧側第2基準値Ith2は、負荷5が不完全な負荷短絡状態と判断するための出力電流Ioutの電流制限の閾値である。このとき、出力電流Ioutが低電圧側第2基準値Ith2のときのドレイン−ソース電圧VDSを仮にVQ2とすると、VQ2<VQである。ただし、VQ2は、通常動作時のドレイン−ソース電圧VDSよりも大きい。また、高電圧側第2基準値Ith1は、負荷5が完全な負荷短絡状態と判断するための出力電流Ioutの遮断のための閾値である。上述のように、高電圧側第2基準値Ith1は、低電圧側第2基準値Ith2よりも小さく設定される。それにより、完全な負荷短絡時の電力損失を低く抑えることができる。詳細は後述される。なお、負荷5が完全な負荷短絡状態と判断するのは、第1の実施の形態と同様に第1基準値(VQ)である。
【0063】
第2過電流検出部24aは、不完全な負荷短絡状態の場合(ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値VQより小さい場合)、出力トランジスタMoutに流れる出力電流Ioutが低電圧側第2基準値Ith2以上か否かを検出して、その結果を示す第2検出信号S2を出力する。一方、第2過電流検出部24aは、完全な負荷短絡状態の場合(ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値VQより大きい場合)、出力トランジスタMoutに流れる出力電流Ioutが高電圧側第2基準値Ith1以上か否かを検出して、その結果を示す第2検出信号S2を出力する。
【0064】
このように、本実施の形態では、電流制限の閾値(Ith2)と過電流遮断の閾値(Ith1)とは異なる値を用いる(Ith2>Ith1)。すなわち、電流遮断を行う場合には、比較的低い電流で早期に遮断することで、損失を低く抑えることができる。また、電流制限を行う場合には、比較的高い電流で電流制限することで、電流が流れ易い負荷に対応して不必要に電流制限がかかることを防止することができる。
【0065】
第2過電流検出部24aは、センストランジスタMsと、トランジスタM2と、センス抵抗Rsと、第1定電流源Iref1と、スイッチトランジスタM5と、第2定電流源Iref2と、トランジスタM1と、比較器Compとを備えている。センストランジスタMsは、高電位側端子T1に対して出力トランジスタMoutと並列に接続され、出力トランジスタMoutとゲートを共通に接続されている。トランジスタM2は、センストランジスタMsと直列に接続され、ゲートをセンストランジスタMsとの接続箇所に接続されている。センストランジスタMsと出力トランジスタMoutは同一構造のMOSトランジスタに例示される。トランジスタM2は、この図の例では、NMOSトランジスタを用いている。センス抵抗Rsは、トランジスタM2と低電位側端子T0との間に接続されている。言い換えると、センストランジスタMsとトランジスタM2とセンス抵抗Rsとが直列に接続され、直列に接続されたセンストランジスタMsとトランジスタM2とセンス抵抗Rsが、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース間に接続されている。
【0066】
この場合、センストランジスタMsは、出力トランジスタMoutの状態を反映する。センス抵抗Rsの両端の電圧は、理想的には、出力トランジスタMoutの電流に比例する。すなわち、センストランジスタMsは、出力トランジスタMoutの状態をセンスし、センス抵抗Rsの両端電圧は、出力トランジスタMoutの電流をセンスする。トランジスタM2については後述される。
【0067】
第1定電流源Iref1は、高電位側端子T1に対してセンストランジスタMsと並列に接続されている。スイッチトランジスタM5は、高電位側端子T1に対してセンストランジスタMsと並列に接続され、ゲートを第1過電流検出部23のトランジスタM4のドレインにインバータを介して接続されている。スイッチトランジスタM5は、第1検出信号S1(トランジスタM4のドレインの電位)が非活性の時にオンされる。すなわち、第1検出信号S1反転した信号でオンされる。スイッチトランジスタM5は、PMOSトランジスタに例示される。第2定電流源Iref2は、スイッチトランジスタM5に直列に接続されている。言い換えると、第1定電流源Iref1とスイッチトランジスタM5及び第2定電流源Iref2とは高電位側端子T1とノードN1との間に並列に接続されている。
【0068】
トランジスタM1は、スイッチトランジスタSW1を介してノードN1第1定電流源Iref1及び第2定電流源Iref2とソース電圧(この図の例では低電位側端子T0)との間に接続されている。更に、トランジスタM1は、ゲートをセンストランジスタMsとトランジスタM2との間及びトランジスタM2のゲートに接続されている。トランジスタM1、トランジスタM2及びスイッチトランジスタSW1は、NMOSトランジスタに例示される。言い換えると、第1定電流源Iref1/スイッチトランジスタM5及び第2定電流源Iref2とスイッチトランジスタSW1とトランジスタM1とが直列に接続されている。そして、直列に接続された第1定電流源Iref1/スイッチトランジスタM5及び第2定電流源Iref2とスイッチトランジスタSW1とトランジスタM1が、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース間に接続されている。ここで、第1の実施の形態の場合に対してトランジスタM2を追加しているのは、トランジスタM1の閾値電圧のバラツキを相殺するためで、同一構造のトランジスタを用いる。閾値電圧のバラツキが低い場合、トランジスタM2を省略しても良い。
【0069】
第1定電流源Iref1は、スイッチトランジスタSW1を介したトランジスタM1との接続点であるノードN1に定電流Iref1を供給する。更に、不完全な負荷短絡状態の場合(ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値VQより小さい場合)、スイッチトランジスタM5はオンである。そのため、第2定電流源Iref2はノードN1に定電流Iref2を供給する。一方、トランジスタM1は、センス抵抗Rsの両端電圧をモニタする。センス抵抗Rsの両端電圧が上がると、トランジスタM1のゲート電圧が上がって、トランジスタM1がオンになり、センス抵抗Rsの両端電圧に対応した抵抗値となる。すなわち、トランジスタM1は、センス抵抗Rsの両端電圧に応じて変動する可変抵抗と見なすことができる。その結果、センス抵抗Rsの両端電圧がある一定値に到達すると、ノードN1の電位が下がる。この場合、低電圧側第2基準値Ith2としての過電流閾値(電流制限閾値)は、Iref1とIref2との和に基づいて決まる。
【0070】
また、完全な負荷短絡状態の場合(ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値VQより大きい場合)、スイッチトランジスタM5はオフである。そのため、第1定電流源Iref1はノードN1に定電流Iref1を供給するが、第2定電流源Iref2はノードN1に定電流Iref2を供給しない。一方、センス抵抗Rsの両端電圧が上がると、トランジスタM1のゲート電圧が上がって、トランジスタM1がオンになり、センス抵抗Rsの両端電圧に対応した抵抗値となる。すなわち、トランジスタM1は、センス抵抗Rsの両端電圧に応じて変動する可変抵抗と見なすことができる。その結果、センス抵抗Rsの両端電圧がある一定値に到達すると、ノードN1の電位が下がる。この場合、高電圧側第2基準値Ith1としての過電流閾値(過電流遮断閾値)は、Iref1に基づいて決まる。
【0071】
以上のように、本実施の形態では、電流制限の閾値(Ith2)と過電流遮断の閾値(Ith1)とは異なる値を用いる(Ith2>Ith1)。
【0072】
次に、第2の実施の形態に係る半導体装置の動作について説明する。第2の実施の形態では、半導体装置3の動作開始時に不完全な短絡状態又は完全な短絡状態になっている場合について説明する。
図10は、第2の実施の形態に係る半導体装置の動作を説明するグラフである。グラフの説明については、
図5の場合と同様である。ただし、過電流閾値Ithのうち、電流制限の閾値Ith2を点線(Q2領域)で示し、過電流遮断の閾値Ith1を破線(Q1領域)で示している。
【0073】
過電流閾値(高電圧側第2基準値Ith1、低電圧側第2基準値Ith2)は、一定値になるよう設計されている。トランジスタM4がオンするドレイン−ソース電圧VDSが広い領域Q1では、ラッチ回路21の入力が許可されている。そのため、負荷線P1(破線:抵抗値が小さい完全な負荷短絡状態)の場合、その領域を通り、負荷線P1と過電流遮断の閾値Ith1とが交わる動作点Dp1においてオフラッチする。一方、トランジスタM4がオフするドレイン−ソース電圧VDSが狭い領域Q2では、ラッチ回路21の入力が許可されていない。そのため、負荷線P2(実線:抵抗がやや大きい不完全な負荷短絡状態)の場合、負荷線P2と電流制限の閾値Ith2とが交わる動作点Dp2近傍において、出力トランジスタのゲート制御信号がHighレベルとLowレベルとを繰り返し、出力トランジスタMoutは電流制限される。
【0074】
次に、
図6のタイミングチャートを参照して、第3の実施の形態に係る半導体装置の動作を説明する。本実施の形態の場合、
図6のうち、(d)の低電位側端子T0の出力電圧V0及び(e)の出力電流Ioutにおいて、グラフの絶対値の大きさが期間B1と期間B2とで異なる(期間B2の方が大きくなる)点で、第1の実施の形態と相違する。
【0075】
まず、完全な負荷短絡状態の場合(期間A1)での動作について説明する。
時刻t1において、マイクロコンピュータ2から入力信号MCS(Highレベル)が供給され、制御信号CS(Lowレベル)、リセット信号PRS(Lowレベルパルス)のIPD内部信号が発生する。完全な負荷短絡状態では、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSは広くなる。電源4の電圧が、ほぼ全て、出力トランジスタMoutに印加されるためである。そのため、ダイオードD2はブレークダウンして、ノードN3の電位が上がり、トランジスタM4がオンになり、そのドレイン電圧が下がって、イネーブル信号(第1検出信号S1)はLowレベルとなる。すなわち、
図10の領域Q1中の負荷線P1上にいる。
時刻t2において、リセット信号PRSが非活性(Highレベル)となり、それ以降において、イネーブル信号(第1検出信号S1)はLowレベルのまま、出力トランジスタMoutの出力電流Ioutが増えていく。一方、ドレイン−ソース電圧VDSは緩やかに減少して行く。すなわち、
図10の領域Q1中の負荷線P1上を上方へ移動して行く。
時刻t3において、出力トランジスタMoutの出力電流Ioutが一定値(
図10の高電圧側第2基準値Ith1、動作点Dp1)に達する。すなわち、比較器Compは、第1定電流源Iref1とトランジスタM1との間のノードN1の電位がVrefに達したことを検出する。ラッチ回路21の入力信号(第2検出信号S2)がLowレベルになり、それに対応して出力信号(過電流検出信号DS)もLowレベルになる。その際、少し遅れて、ラッチ回路21のノードN
Lの電位V
LもLowレベルになり、このLowレベルは保持される。出力信号(過電流検出信号DS)がLowレベルになることにより、駆動回路22にオフ信号(Lowレベル)が入力されるため、出力トランジスタMoutはオフする。その結果、出力トランジスタMoutの出力電流Ioutが急激に減少して行く。それにより、ラッチ回路21の入力信号(第2検出信号S2)がHighレベルに戻る。しかし、上述の通り、ラッチ回路21のノードN
Lの電位V
LがLowレベルで保持されているため、ラッチ回路21の出力信号(過電流検出信号DS)もLowレベルに保持される。この状態は、マイクロコンピュータ2により再度リセットさせるまで(すなわち時刻t4を超えてt10まで)保持される。
【0076】
続いて、不完全な負荷短絡状態の場合(期間A2)での動作について説明する。
時刻t10において、マイクロコンピュータ2から入力信号MCS(Highレベル)が供給され、制御信号CS(Lowレベル)、リセット信号PRS(Lowレベルパルス)のIPD内部信号が発生する。不完全な負荷短絡状態では、完全な負荷短絡状態と比較すると、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSはある程度狭くなる。ただし、初期的には、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSは十分高いため、ダイオードD2はブレークダウンして、ノードN3の電位が上がり、トランジスタM4のドレイン電圧が下がって、イネーブル信号(第1検出信号S1)はLowレベルとなる。すなわち、
図10の領域Q1中の負荷線P2上にいる。
時刻t11において、リセット信号PRSが非活性(Highレベル)となり、それ以降において、イネーブル信号(第1検出信号S1)はLowレベルのまま、出力トランジスタMoutの出力電流Ioutが増えていく。一方、ドレイン−ソース電圧VDSは急激に減少して行く。すなわち、
図10の領域Q1中の負荷線P2上を左上方へ移動して行く。
時刻t12において、ドレイン−ソース電圧VDSがVQになると、トランジスタM4のドレイン電圧が上がって、イネーブル信号(第1検出信号S1)はHighレベルとなる。すなわち、
図10の負荷線P2上の領域Q2に入る。
時刻t13〜t14において、出力トランジスタMoutの出力電流Ioutが一定値(
図10の電流制限閾値Ith2、動作点Dp2)に達する。すなわち、比較器Compは、第1定電流源Iref1及び第2定電流源Iref2とトランジスタM1との間のノードN1の電位がVref未満になったことを検出する。ラッチ回路21の入力信号(第2検出信号S2)がLowレベルになる。ここで、完全な負荷短絡状態の場合と異なり、イネーブル信号(第1検出信号S1)がHighレベルのため、ラッチ回路21への入力が禁止されている。そのため、ラッチ回路21のノードN
Lの電位V
Lは、初期状態のHighレベルのまま反転しない。従って、ラッチ回路21は、Lowレベルの入力信号(第2検出信号S2)をそのまま出力信号(過電流検出信号DS)として出力する。出力信号(過電流検出信号DS)がLowレベルになることにより、駆動回路22にオフ信号(Lowレベル)が入力されるため、出力トランジスタMoutはオフしようとする。出力トランジスタMoutの出力電流Ioutが減少して、一定値(
図10の電流制限閾値Ith2)未満になる。すなわち、比較器Compは、ノードN1の電位がVref以上になったことを検出する。ラッチ回路21の入力信号(第2検出信号S2)がHighレベルに戻る。そのため、ラッチ回路21は、Highレベルの入力信号(第2検出信号S2)をそのまま出力信号(過電流検出信号DS)として出力する。出力信号(過電流検出信号DS)がHighレベルになることにより、駆動回路22にオン信号(Highレベル)が入力されるため、出力トランジスタMoutはオンしようとする。このような動作を繰り返すことにより、出力トランジスタMoutの出力電流Ioutは、一定値(
図10の電流制限閾値Ith2)付近で制限される。
以下、過熱検知回路12の動作は、第1の実施の形態と同様である。また、時刻t15〜t18、t19〜t22は、上記t1〜t14と同様である。なお、正常な負荷状態の場合(期間A0)での動作についても第1の実施の形態と同様である。
【0077】
以上のようにして、第2の実施の形態に係る半導体装置は動作する。
【0078】
本実施の形態では、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
更に、第1の実施の形態では、電流制限の閾値と過電流遮断の閾値とを同じ値に設定する必要がある。そのため、負荷の駆動容量を考慮すると、その閾値を高めに設定する必要が出てくる。その結果、過電流閾値も高くなってしまう傾向がある。しかし、第2の実施の形態では、第1定電流源Iref1と第2定電流源Iref2との電流比率を調整することにより、電流制限の閾値と過電流遮断の閾値を各々独立して設定することができる。すなわち、電流制限の閾値を過電流遮断の閾値に対して相対的に高くしたり、その逆にしたりすることができる。
【0079】
本実施の形態において、電流制限の閾値と過電流遮断の閾値を各々独立して設定する方法は、
図8の例に限定されるものではなく、他の回路構成で実現しても良い。以下、第2の実施の形態に係る電力制御回路の変形例の構成について説明する。
【0080】
図9は、第2の実施の形態に係る半導体装置3の電力制御回路11bの構成を示す回路図である。電力制御回路11bは出力トランジスタMoutと、第1過電流検出部23と、第2過電流検出部24bと、ラッチ回路21と、駆動回路22とを具備している。本変形例では、高電圧側第2基準値Ith1と低電圧側第2基準値Ith2の二つの基準値を生成する方法(回路)が、
図8の場合と相違している。以下では、
図8との相違点について主に説明する。
【0081】
第2過電流検出部24bは、不完全な負荷短絡状態の場合(ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値VQより小さい場合)、出力トランジスタMoutに流れる出力電流Ioutが低電圧側第2基準値Ith2以上か否かを検出して、その結果を示す第2検出信号S2を出力する。一方、第2過電流検出部24bは、完全な負荷短絡状態の場合(ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値VQより大きい場合)、出力トランジスタMoutに流れる出力電流Ioutが高電圧側第2基準値Ith1以上か否かを検出して、その結果を示す第2検出信号S2を出力する。このように、本実施の形態では、電流制限の閾値(Ith2)と過電流遮断の閾値(Ith1)とは異なる値を用いる。
【0082】
第2過電流検出部24bは、センストランジスタMsと、トランジスタM2と、センス抵抗Rsと、定電流源Irefと、トランジスタM1と、スイッチトランジスタSW2とトランジスタM3と、比較器Compとを備えている。センストランジスタMsは、高電位側端子T1に対して出力トランジスタMoutと並列に接続され、出力トランジスタMoutとゲートを共通に接続されている。トランジスタM2は、センストランジスタMsと直列に接続され、ゲートをセンストランジスタMsとの接続箇所に接続されている。センストランジスタMsと、出力トランジスタMoutは同一構造のMOSトランジスタに例示される。トランジスタM2は、この図の例では、NMOSトランジスタを用いている。センス抵抗Rsは、トランジスタM2と低電位側端子T0との間に接続されている。言い換えると、センストランジスタMsとトランジスタM2とセンス抵抗Rsとが直列に接続され、直列に接続されたセンストランジスタMsとトランジスタM2とセンス抵抗Rsが、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース間に接続されている。
【0083】
定電流源Irefは、高電位側端子T1に対してセンストランジスタMsと並列に接続されている。トランジスタM1は、スイッチトランジスタSW1を介してノードN1(定電流源Iref)とソース電圧(この図の例では低電位側端子T0)との間に接続されている。更に、トランジスタM1は、ゲートをセンストランジスタMsとトランジスタM2との間及びトランジスタM2のゲートに接続されている。スイッチトランジスタSW1は、半導体装置3の動作時にオンになる。トランジスタM3は、スイッチトランジスタSW2を介してノードN1(定電流源Iref)とソース電圧(この図の例では低電位側端子T0)との間に接続されている。更に、トランジスタM3は、ゲートをセンストランジスタMsとトランジスタM2との間及びトランジスタM2のゲートに接続されている。スイッチトランジスタSW2のゲートは、ノードN3に接続され、トランジスタM4がオンするのと同じ領域(ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値VQより大きい場合)でオンされる。トランジスタM1、トランジスタM3、スイッチトランジスタSW1及びスイッチトランジスタSW2は、NMOSトランジスタに例示される。言い換えると、定電流源IrefとスイッチトランジスタSW1及びトランジスタM1/スイッチトランジスタSW2及びトランジスタM3とが直列に接続されている。そして、直列に接続された定電流源IrefとスイッチトランジスタSW1及びトランジスタM1/スイッチトランジスタSW2及びトランジスタM3とが、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース間に接続されている。トランジスタM1、トランジスタM2、トランジスタM3は同一構造のMOSトランジスタを使用すると精度が向上する。
【0084】
定電流源Irefは、スイッチトランジスタSW1を介したトランジスタM1及びスイッチトランジスタSW2を介したトランジスタM3との接続点であるノードN1に定電流Irefを供給する。しかし、不完全な負荷短絡状態の場合(ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値VQより小さい場合)、スイッチトランジスタSW2はオフである。そのため、トランジスタM3に電流は流れない。一方、スイッチトランジスタSW1はオンである。そのため、トランジスタM1は、センス抵抗Rsの両端電圧に対応した抵抗値となる。その結果、高電位側端子T1の電圧V1とノードN1の電位差と定電流Irefから求まる抵抗値と、トランジスタM1の抵抗値との差がノードN1の電位として現れる。以上から、低電圧側第2基準値Ith2としての過電流閾値(電流制限閾値)が決まる。
【0085】
また、定電流源Irefは、ノードN1に定電流Irefを供給する。更に、完全な負荷短絡状態の場合(ドレイン−ソース電圧VDSが第1基準値VQより大きい場合)、スイッチトランジスタSW2はオンである。そのため、センス抵抗Rsの両端電圧に対応した抵抗値となっているトランジスタM3に電流が流れる。加えて、スイッチトランジスタSW1はオンである。そのため、トランジスタM1も同じくセンス抵抗Rsの両端電圧に対応した抵抗値となっている。その結果、トランジスタM1とトランジスタM3の並列抵抗値と、高電位側端子T1の電位V1とノードN1の電位差と定電流Irefから求まる抵抗値との差がノードN1の電位として現れる。この場合、高電圧側第2基準値Ith1としての過電流閾値(過電流遮断閾値)は、トランジスタM1、M3が同じ場合、Ith2/2になる。
【0086】
以上のように、本実施の形態では、電流制限の閾値(Ith2)と過電流遮断の閾値(Ith1=Ith2/2)とは異なる値を用いる(Ith2>Ith1)。
【0087】
この場合、
図9においても、
図8の場合と同様の効果を得ることができる。
【0088】
本実施の形態の半導体装置3(
図8や
図9)の機能は、ランプ負荷のような突入電流がある負荷用途で有益である。以下では、本実施の形態をランプ負荷に適用する場合の実施例について説明する。
【0089】
(実施例)
本実施例は、第2の実施の形態の半導体装置3をランプ(照明機器)に適用した場合の実施例である。すなわち、
図1において、負荷5がランプ(照明機器)の場合である。ランプは、自動車や鉄道に用いられるハロゲンランプに例示される。
【0090】
まず、比較例として、第1の実施の形態をランプ負荷に適用する場合の例について説明する。
図11は、第1の実施の形態に係る半導体装置の一例の動作を説明するグラフである。縦軸、横軸、曲線E0、Q0、Q2、Q1、VQ、Ithについては、
図5の場合と同様である。負荷線PLは、ランプの特性を示す負荷線である。
【0091】
図に示すように、ランプの負荷線PLは、初期状態(冷えている状態)では、突入電流が流れるため、低抵抗状態にある。その抵抗値は、不完全な負荷短絡状態(
図5の負荷線P2)と同程度となる。電流が増加して行くと、ドレイン−ソース電圧VDSが低下して行く。すなわち、動作点は、負荷線PL上を左上方へ移動して行く。この場合、第1の実施の形態の半導体装置3のような構成を用いると、負荷線PLは電流制限(閾値Ith)にかかってしまう。その結果、動作点は、負荷線PLのうちの破線部分の値を取ることはできなくなる。すなわち、突入電流は電流制限の閾値Ithで頭打ちになってしまう。この場合のデメリットは、ランプの点灯が遅くなることと、出力トランジスタMoutの特性E0の線形領域(領域Q0の動作点DpL)に達するまでの時間が長くなり、デバイスの電力損失が大きくなること、などが挙げられる。更に、電流制限(閾値Ith)にかかった範囲では、過電流検出信号DSをHighレベルとLowレベルとで繰り返すことにより電流制限を働かせている。そのため、出力トランジスタMoutのゲート電圧は過電流検出信号DSの変動に応じて揺動するため、ノイズ発生の原因となる可能性も考え得る。
【0092】
次に、実施例として、第2の実施の形態をランプ負荷に適用する場合の例について説明する。
図12は、第2の実施の形態に係る半導体装置の実施例の動作を説明するグラフである。縦軸、横軸、曲線E0、Q0、Q2、Q1、VQ、PLについては、
図11の場合と同様である。Ith2は電流制限の閾値(低電圧側第2基準値)を示し、Ith1は過電流遮断の閾値(高電圧側第2基準値)を示す。
【0093】
既述のように、ランプの負荷線PLは、初期状態では低抵抗状態にある。その抵抗値は、不完全な負荷短絡状態(
図5の負荷線P2)と同程度となる。電流が増加して行くと、ドレイン−ソース電圧VDSが低下して行く。すなわち、動作点は、負荷線PL上を左上方へ移動して行く。この場合、第2の実施の形態の半導体装置3のような構成を用いると、負荷線PLは、領域Q2の範囲において過電流遮断の閾値Ith1の値を超える。しかし、その領域Q2では、過電流遮断の閾値Ith1は動作に無関係である。そして、動作に関係する電流制限の閾値Ith2は過電流遮断の閾値Ith1より大きく、かつ負荷線PLにかからないように設定されている。そのため、動作点は、両閾値に影響されることはなく、負荷線PL上をそのまま移動し、出力トランジスタMoutの特性E0の線形領域(領域Q0の動作点DpL)に達することができる。
【0094】
以上のように、電流制限の閾値を過電流遮断の閾値に対して相対的に高く設定することで、
図12に示すようなランプ負荷(負荷線PL)においてもランプの点灯の遅延や、デバイスの電力損失の増大や、ノイズ発生のおそれなどを排除することができる。
【0095】
この
図12の実施例の場合、
図10に示すような、領域Q2での不完全な負荷短絡状態での電流制限をかけられなくなってしまう。しかし、負荷線PLが
図12のように一直線に伸びるのは理想的な状況(配線インダクタンス0の場合)である。実際には、ワイヤハーネスのインダクタンスに影響された負荷線PLRとなる。
図13は、第2の実施の形態に係る半導体装置の実施例の実際的な動作を説明するグラフである。縦軸、横軸、曲線E0、Q0、Q2、Q1、VQ、PL、Ith1、Ith2については、
図11の場合と同様である。負荷線PLRは、配線インダクタンスを考慮した実際的な負荷線PLRを示す。
【0096】
この場合、負荷短絡状態(異常負荷)の負荷線は、理想的には破線で示す負荷線P4(直線)となる。この負荷線P4は、動作点Dp4で過電流遮断の閾値Ith1にかかる特性である。しかし、配線インダクタンスの影響で、負荷短絡状態(異常負荷)の負荷線は、実際には実線で示す負荷線P3(回り込む曲線)となる。ここで、電流制限がなければ、負荷線は、理想的な負荷線P4に近づくように上方へ進み、出力トランジスタMoutの特性E0と交差するので、その交差する部分が動作点となるはずである。しかし、電流制限があるため、電流は電流制限の閾値Ith2で頭打ちとなり、動作点は、右方向に移動しながら理想的な負荷線P4(動作点Dp3)に近づく。過電流遮断閾値(高電圧側第2基準値Ith1)<電流制限閾値(低電圧側第2基準値Ith2)のため、トランジスタM4がオンする領域(領域Q1)に入ると、イネーブル信号(第1検出信号S1)が活性化し、ラッチ回路21が動作して、出力トランジスタMoutは遮断される。
【0097】
なお、完全な負荷短絡状態では、配線インダクタンスが非常に小さいため、負荷線の回りこみは非常に小さく、ダイレクトに過電流遮断閾値(高電圧側第2基準値Ith1)にかかる(動作点Dp4)。また、通常動作時の動作点は、実際的な負荷線PLRにおける領域Q0の動作点DpLである。
【0098】
(第3の実施の形態)
次に、第3の実施の形態に係る半導体装置について説明する。本実施の形態は、半導体装置3がオン状態(動作状態)において新たに異常負荷状態が発生する点で、半導体装置3が既に異常負荷状態であるときに新たにオン状態にする第1の実施の形態と相違している。以下では、主にその相違点について説明する。
【0099】
本実施の形態に係る電力制御回路11の構成については、第1の実施の形態と同様である。
【0100】
図14は、第3の実施の形態に係る半導体装置の動作を説明するグラフである。縦軸、横軸、曲線E0、領域Q0、Q2、Q1、電圧VQ、電流閾値Ith、負荷線P1、P2については、
図5の場合と同様である。グラフ中の太線及び矢印で動作点の移動を示している。
【0101】
第1過電流検出部23及び第2過電流検出部24は、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース間において構成されている。そのため、第1過電流検出部23及び第2過電流検出部24の回路が動作できる出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSに限界がある。例えば、
図14において、半導体装置3がオン状態(動作状態)の場合、動作点は、曲線E0の線形領域にある。すなわち、領域Q0にあり、電圧範囲は0Vより大きくVNO以下の範囲である。その状態において、負荷線P1で示す負荷抵抗で、完全な負荷短絡状態になった場合、即時に電流制限の機能が働くことはない。ドレイン−ソース電圧VDSの増加に伴い、その領域Q0の動作点は、出力トランジスタMoutの曲線E0の線形領域に沿って右上方へ移動する。そして、動作点が、電流制限の機能が働くドレイン−ソース電圧VDS=VCLに到達すると、出力トランジスタMoutのゲート電荷が放電され始めるので、動作点はその電圧で電流制限の閾値Ithに近づく。すなわち、出力電流Ioutが電流制限の閾値Ithに制限される。その後、ドレイン−ソース電圧VDSの更なる増加に伴い、過電流遮断が働くドレイン−ソース電圧VDS=VQまで広がると出力トランジスタMoutは遮断し、ラッチ回路21が動作する。その結果、出力電流Ioutはゼロになる。
【0102】
ただし、ドレイン−ソース電圧VDS=VCL以降に働く電流制限の機能は、出力トランジスタMoutのオンとオフとを繰り返し切り替えることにより、ゲート電圧を一定に保つ制御を行なっている。そのため、急激にゲート電荷を放電すると、ゲート電圧の変動量が大きくなり、出力電圧V0がノコギリ波になってしまう等の懸念がある。従って、過電流遮断の閾値に達した際の放電電流は、それ程大きく設計できない。一般的に、出力トランジスタMoutのゲート電圧はオン抵抗が十分得られる電圧で制御される。そのため、放電電流が小さいと、
図14のようなグラフにはならず、現実的には
図15のようなグラフになる。
【0103】
図15は、第3の実施の形態に係る半導体装置の動作を説明する他のグラフである。縦軸、横軸、曲線E0、領域Q0、Q2、Q1、電圧VQ、VNO、VCL、電流閾値Ith、負荷線P1については、
図14の場合と同様である。グラフ中の太線及び矢印で動作点の移動を示している。既述のように、電流制限の機能が働くドレイン−ソース電圧VDS=VCLに達してから出力トランジスタMoutのゲート放電が働く。しかし、出力トランジスタMoutのゲート電圧が十分昇圧されているため、放電電流が小さいと、この図に示されるように、すぐには電流制限の機能が働かず、しばらく曲線E0に沿って動作点は移動する。その後、時間の経過と共に、動作点は、電流制限の閾値Ithに近づく。
図14の場合と比較すると、その際の電力損失(I−V曲線の面積の差)はかなり大きくなる。そのため、途中で過熱検知回路12が働くなど、過電流遮断の機能が働くドレイン−ソース電圧VDS=VQに到達する前に、電流が遮断されることもあり得る。過熱検知回路12が働く前に、過電流遮断の機能が働くドレイン−ソース電圧VDS=VQに到達したとしても、そのドレイン−ソース電圧VDSでの電流は高くなり、電流遮断時の電力損失が大きくなってしまう。そこで、
図16に示すような急速遮断の機能を設ける。
【0104】
図16は、第3の実施の形態に係る半導体装置の動作を説明する更に他のグラフである。縦軸、横軸、曲線E0、領域Q0、Q2、Q1、電圧VQ、VNO、VCL、電流閾値Ith、負荷線P1については、
図14の場合と同様である。グラフ中の太線及び矢印で動作点の移動を示している。急速遮断の機能は、異常負荷(負荷短絡状態)が発生して、ドレイン−ソース電圧VDSが増加し始めて、急速遮断閾値VRBLに達すると、出力トランジスタMoutのゲート電荷を急速に放電するという機能である。それにより、出力トランジスタMoutを急速にオフすることができる。急速遮断閾値VRBLは、出力電流Ioutを急速に遮断するときの、ドレイン−ソース電圧VDSの閾値である。急速遮断閾値VRBLは、VNOより大きくVCLより小さい範囲で設定される。VNOに近いほど、電力損失が少なくなり好ましい。
【0105】
この図の例では、ドレイン−ソース電圧VDSが増加し始めて、ドレイン−ソース電圧VDSが急速遮断閾値VRBL(例示:30A相当)に達した際に、ゲート電荷を急速に放電することで、出力トランジスタMoutのV
DS−I
DS特性を悪くして、負荷短絡時電流を抑制する。そして、ドレイン−ソース電圧VDSが更に増加して、急速遮断の機能が停止すると(VDS≒VCL付近)、電流制限の閾値Ithに近づこうとする。そして、ドレイン−ソース電圧VDSが更に増加して、過電流遮断の閾値にかかりラッチがかかる。この場合、電流値は
図15と比べかなり抑制できるため、出力トランジスタMoutをオフする際の電力損失が低減される。なお、急速放電機能を働かせ続けると、出力トランジスタMoutが完全にオフしてしまうため、この図の例では、ある閾値まで出力電圧V0(=Vsource)が下がったことを検出して、急速遮断の機能を切るようにしている。
【0106】
図17は、第3の実施の形態に係る半導体装置の急速遮断制御回路の構成の一例を示すブロック図である。急速遮断制御回路13は、急速遮断の機能を実現する構成の一例であり、出力トランジスタMoutのゲートとソースとの間に接続されている。急速遮断制御回路13は、閾値検出部(インバータ)32と、ラッチ回路(RSフリップフロップ)33と、インバータ34、36と、NAND回路35と、急速遮断回路31とを備えている。
【0107】
出力トランジスタMoutのソース電圧Vsource(=V0:
図1)が急速遮断のための所定の閾値以下(Lowレベル)になったことを閾値検出部32で検出し、ラッチ回路33でその状態を保持する。誤動作を防止するため、インバータ32はヒステリシスを持っているため、ソース電圧Vsource(=V0)の急速遮断のための所定の閾値(ドレイン−ソース電圧VDSの急速遮断閾値VRBL)より若干高い値で反転する。NAND回路35において、インバータ34を介した一方の入力がHighレベルに固定される。その後、異常負荷などにより、出力トランジスタMoutのドレイン−ソース電圧VDSが増加して、上記所定の閾値以下(Lowレベル)になると、NAND回路35の両入力ともHighレベルとなり、急速遮断回路31が動作する。急速遮断回路31は、特開2009−171551号公報(US2009160498(A1)や特開2011−139404号公報(US2011163794(A1))などで報告されている回路を使用することにより、実現可能である。もちろんその他の構成でも実現可能である。
【0108】
このように、本実施の形態のように、半導体装置3がオン状態(動作状態)において新たに異常負荷状態が発生する場合であっても、第1の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0109】
なお、上記各実施の形態は、
図1に示すように、半導体装置3が負荷5のハイサイドに接続されている場合について説明している。しかし、各実施の形態はその例に限定されるものではなく、半導体装置3が負荷5のロウサイドに接続されていても良い。その例を示しているのが
図18である。
図18は、実施の形態に係る半導体装置及びその使用例の他の構成を示すブロック図である。この使用例(電装システム1)では、
図1の場合と比較して、半導体装置3は、負荷5のロウサイドに接続されている。すなわち、半導体装置3は、端子T2にマイクロコンピュータ2、高電位側端子T1に負荷5及び(負荷5を介して)電源4、及び低電位側端子T0に接地をそれぞれ接続されている。この場合であっても、各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0110】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。