(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5889817
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】トリフルオロメチル化剤粉末、その製造方法並びにそれを用いたトリフルオロメチル基含有化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 3/06 20060101AFI20160308BHJP
C07C 67/343 20060101ALI20160308BHJP
C07C 69/76 20060101ALI20160308BHJP
C07D 213/61 20060101ALI20160308BHJP
B01J 27/122 20060101ALN20160308BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20160308BHJP
【FI】
C07F3/06
C07C67/343
C07C69/76 Z
C07D213/61
!B01J27/122 X
!C07B61/00 300
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-32699(P2013-32699)
(22)【出願日】2013年2月22日
(65)【公開番号】特開2014-162732(P2014-162732A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年8月10日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業、先導的物質変換領域(ACT−C)、「エン反応と関連技術の展開、炭素−フッ素結合の活性化による(触媒的)不斉CCFの開発、および炭素−水素結合の活性化による触媒的(不斉)フルオロメチル化反応の開発」、 産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】304021417
【氏名又は名称】国立大学法人東京工業大学
(73)【特許権者】
【識別番号】591180358
【氏名又は名称】東ソ−・エフテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100067541
【弁理士】
【氏名又は名称】岸田 正行
(74)【代理人】
【識別番号】100103506
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 弘晋
(72)【発明者】
【氏名】三上 幸一
(72)【発明者】
【氏名】中村 雄三
(72)【発明者】
【氏名】根岸 千幸
(72)【発明者】
【氏名】相川 光介
【審査官】
山本 昌広
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭63−303935(JP,A)
【文献】
特開2013−241345(JP,A)
【文献】
Journal of Fluorine Chemistry,2010年,Vol.131, No.2,p.212-216
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F 3/00−3/14
C07C 67/00−69/96
C07D 213/00−213/90
B01J 27/00−27/32
C07B 61/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)
(CF3)ZnI・(DMPU)2 (1)
(式中、DMPUはN,N−ジメチルプロピレンウレアを示す)
で表されるトリフルオロメチル化剤粉末。
【請求項2】
N,N−ジメチルホルムアミド溶剤中、N,N−ジメチルプロピレンウレア、亜鉛粉末及びトリフルオロメチルヨージドを反応させた後、ろ過、濃縮することを特徴とする請求項1に記載の式(1)で表されるトリフルオロメチル化剤粉末の製造方法。
【請求項3】
請求項
1に記載
の式(1)で表されるトリフルオロメチル化剤粉末及び下記一般式(2)
【化1】
(式中Aは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜6の直鎖、分岐若しくは環式のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3〜6の直鎖、分岐若しくは環式のアルコシキ基、メトキシカルボニル基またはエトキシカルボニル基を示し、Bは炭素原子または窒素原子を示す)
で表される置換フェニルヨージドを、銅(I)触媒存在下、反応させることを特徴とする下記一般式(3)
【化2】
(式中A及びBは前記に同じ)
で表されるトリフルオロメチル基含有化合物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トリフルオロメチルヨージド、亜鉛及びN,N−ジメチルプロピレンウレア(以下、DMPUと略す)より調製される取り扱いが容易なトリフルオロメチル化剤粉末、その製造方法並びにそれを用いたトリフルオロメチル基含有化合物の製造方法に関する。トリフルオロメチル基含有化合物は医農薬及び電子材料の合成中間体として有用な化合物である。
【背景技術】
【0002】
従来技術として、固体粉末のトリフルオロメチル化剤としては、トリフルオロメチルブロミド、亜鉛及びN,N−ジメチルホルムアミド(以下、DMFと略す)から調製される(CF
3)ZnBr・(DMF)
2が知られている(非特許文献1)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】M.M.Kremlev, et.al., Journal of Fluorine Chemistry, 131, 212-216(2010)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
非特許文献1に記載の(CF
3)ZnBr・(DMF)
2は室温下、安定な粉体として取扱いが可能であるが、銅(I)触媒存在下、トリフルオロメチル化剤として用いた場合、ジフルオロカルベンの発生に伴うペンタフルオロエチル基の導入反応が副反応として発生し、生成物はトリフルオロメチル化物とペンタフルオロエチル化物の混合物となる。
【0005】
また、非特許文献1で使用するトリフルオロメチルブロミドは製造・輸入禁止物質で、工業的に入手することが困難な化合物である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上記課題を解決する方法について鋭意検討した結果、工業的に入手可能なトリフルオロメチルヨージド、亜鉛及びDMPUから調製される(CF
3)ZnI・(DMPU)
nが、室温下安定で、各種トリフルオロメチル化反応に適用可能であり、さらに該粉末を用い芳香族ヨージドとの反応を行ったところ、ペンタフルオロエチル基が導入された化合物が生成し、副生物の生成がほとんどないことを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち本発明は、
[1] 下記、一般式(1)
(CF
3)ZnI・(DMPU)
n (1)
(式中、DMPUはN,N−ジメチルプロピレンウレアを示し、nは1〜4の整数を示す)
で表されるトリフルオロメチル化剤粉末。
[2] 項1の一般式(1)で表されるトリフルオロメチル化剤粉末でnが1〜4の混合物であることを特徴とするトリフルオロメチル化剤粉末。
[3] 項1の一般式(1)で表されるトリフルオロメチル化剤粉末でnが2であることを特徴とするトリフルオロメチル化剤粉末。
[4] N,N−ジメチルホルムアミド溶剤中、N,N−ジメチルプロピレンウレア、亜鉛粉末及びトリフルオロメチルヨージドを反応させた後、ろ過、濃縮することを特徴とする項1乃至項3のいずれか1項に記載の一般式(1)で表されるトリフルオロメチル化剤粉末の製造方法。
[5] 項1乃至項3のいずれか1項に記載の一般式(1)で表されるトリフルオロメチル化剤粉末及び下記一般式(2)
【0008】
【化1】
【0009】
(式中Aは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、メチル基、エチル基、炭素数3〜6の直鎖、分岐若しくは環式のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、炭素数3〜6の直鎖、分岐若しくは環式のアルコシキ基、メトキシカルボニル基またはエトキシカルボニル基を示し、Bは炭素原子または窒素原子を示す)
で表される置換フェニルヨージドを、銅(I)触媒存在下、反応させることを特徴とする下記一般式(3)
【0010】
【化2】
【0011】
(式中A及びBは前記に同じ)
で表されるトリフルオロメチル基含有化合物の製造方法
を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、工業的に利用可能なトリフルオロメチル化剤粉末が提供された。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
本発明の一般式(1)で表される(CF
3)ZnI・(DMPU)
nは、具体的には例えば、トリフルオロメチル亜鉛ヨージド・N,N−ジメチルプロピレンウレア錯体、トリフルオロメチル亜鉛ヨージド・(N,N−ジメチルプロピレンウレア)
2錯体、トリフルオロメチル亜鉛ヨージド・(N,N−ジメチルプロピレンウレア)
3錯体、トリフルオロメチル亜鉛ヨージド・(N,N−ジメチルプロピレンウレア)
4錯体を示し、またこれら各々の混合物も示す。
【0015】
本発明の一般式(1)で表される(CF
3)ZnI・(DMPU)
nは、DMPU及び亜鉛粉末を添加し懸濁させたDMF溶剤にトリフルオロメチルヨージドを供給し、所定時間反応を行った後、残渣をろ別、得られた溶液を濃縮・乾固し、さらに必要に応じて、トリフルオロメチル化剤に不活性な溶剤で洗浄、乾燥することにより製造される。
【0016】
本発明の一般式(1)で表される(CF
3)ZnI・(DMPU)
nの製造において、トリフルオロメチルヨージドは、亜鉛粉末に対して、1.1〜5.0モル量、好ましくは1.5〜4.0モル量使用する。
【0017】
本発明の一般式(1)で表される(CF
3)ZnI・(DMPU)
nの製造において、使用するDMPUは、亜鉛粉末に対して、1.1〜5.0モル量、好ましくは1.5〜4.0モル量使用する。
【0018】
本発明の一般式(1)で表される(CF
3)ZnI・(DMPU)
nの製造において、使用するN,N−ジメチルホルムアミドは、亜鉛に対して5〜200重量倍量、好ましくは10〜100重量倍量使用する。
【0019】
本発明の一般式(1)で表される(CF
3)ZnI・(DMPU)
nの製造において、反応温度及び時間は−40〜40℃の温度範囲で、1〜100時間の反応時間である。反応温度−20℃以上で反応を行う場合は、使用するトリフルオロメチルヨージドの沸点が−22.5℃のため、加圧系で反応を実施しても良い。
【0020】
本発明の一般式(1)で表される(CF
3)ZnI・(DMPU)
nの製造の後処理としては、例えば、窒素またはアルゴン気流下中で残渣を、ろ別、50℃以下で減圧濃縮・乾固、1〜20重量倍量のエーテルまたはヘキサンで洗浄、乾燥することにより一般式(1)で表される(CF
3)ZnI・(DMPU)
nを、白色〜微黄色の粉末として得る。
【0021】
本発明の一般式(2)で表される置換フェニルヨージドとしては、具体的には例えば、2−フルオロフェニルヨージド、3−フルオロフェニルヨージド、4−フルオロフェニルヨージド、2−クロロフェニルヨージド、3−クロロフェニルヨージド、4−クロロフェニルヨージド、2−ブロモフェニルヨージド、3−ブロモフェニルヨージド、4−ブロモフェニルヨージド、2−メチルフェニルヨージド、3−メチルフェニルヨージド、4−メチルフェニルヨージド、2−エチルフェニルヨージド、3−エチルフェニルヨージド、4−エチルフェニルヨージド、4−n−プロピルフェニルヨージド、4−iso−プロピルフェニルヨージド、4−シクロプロピルフェニルヨージド、4−n−ブチルフェニルヨージド、4−iso−ブチルフェニルヨージド、4−tert−ブチルフェニルヨージド、4−n−ペンチルフェニルヨージド、4−シクロペンチルフェニルヨージド、4−n−ヘキシルフェニルヨージド、4−シクロヘキシルフェニルヨージド、2−メトキシフェニルヨージド、3−メトキシフェニルヨージド、4−メトキシフェニルヨージド、2−エトキシフェニルヨージド、3−エトキシフェニルヨージド、4−エトキシフェニルヨージド、4−n−プロポキシフェニルヨージド、4−iso−プロポキシフェニルヨージド、4−シクロプロポキシフェニルヨージド、4−n−ブトキシフェニルヨージド、4−iso−ブトキシフェニルヨージド、4−tert−ブトキシフェニルヨージド、4−n−ベントキシフェニルヨージド、4−シクロペントキシフェニルヨージド、4−n−ヘキシルオキシフェニルヨージド、4−シクロヘキシルオキシフェニルヨージド、2−ヨード安息香酸メチル、3−ヨード安息香酸メチル、4−ヨード安息香酸メチル、2−ヨード安息香酸エチル、3−ヨード安息香酸エチル、4−ヨード安息香酸エチル、2−ヨードピリジン、5−ブロモ−2−ヨードピリジン等が挙げられる。
【0022】
本発明の一般式(3)で表されるトリフルオロメチル基含有化合物としては、具体的には例えば、2−フルオロベンゾトリフルオライド、3−フルオロベンゾトリフルオライド、4−フルオロベンゾトリフルオライド、2−クロロベンゾトリフルオライド、3−クロロベンゾトリフルオライド、4−クロロベンゾトリフルオライド、2−ブロモベンゾトリフルオライド、3−ブロモベンゾトリフルオライド、4−ブロモベンゾトリフルオライド、2−メチルベンゾトリフルオライド、3−メチルベンゾトリフルオライド、4−メチルベンゾトリフルオライド、2−エチルベンゾトリフルオライド、3−エチルベンゾトリフルオライド、4−エチルベンゾトリフルオライド、4−n−プロピルベンゾトリフルオライド、4−iso−プロピルベンゾトリフルオライド、4−シクロプロピルベンゾトリフルオライド、4−n−ブチルベンゾトリフルオライド、4−iso−ブチルベンゾトリフルオライド、4−tert−ブチルベンゾトリフルオライド、4−n−ペンチルベンゾトリフルオライド、4−シクロペンチルベンゾトリフルオライド、4−n−ヘキシルベンゾトリフルオライド、4−シクロヘキシベンゾトリフルオライド、2−メトキシベンゾトリフルオライド、3−メトキシベンゾトリフルオライド、4−メトキシベンゾトリフルオライド、2−エトキシベンゾトリフルオライド、3−エトキシベンゾトリフルオライド、4−エトキシベンゾトリフルオライド、4−n−プロポキシベンゾトリフルオライド、4−iso−プロポキシベンゾトリフルオライド、4−シクロプロポキシベンゾトリフルオライド、4−n−ブトキシベンゾトリフルオライド、4−iso−ブトキシベンゾトリフルオライド、4−tert−ブトキシベンゾトリフルオライド、4−n−ベントキシベンゾトリフルオライド、4−シクロペントキシベンゾトリフルオライド、4−n−ヘキシルオキシベンゾトリフルオライド、4−シクロヘキシルオキシベンゾトリフルオライド、2−トリフルオロメチル安息香酸メチル、3−トリフルオロメチル安息香酸メチル、4−トリフルオロメチル安息香酸メチル、2−トリフルオロメチル安息香酸エチル、3−トリフルオロメチル安息香酸エチル、4−トリフルオロメチル安息香酸エチル、2−トリフルオロメチルピリジン、5−ブロモ−2−トリフルオロメチルピリジン等が挙げられる。
【0023】
本発明の一般式(3)で表されるトリフルオロメチル基含有化合物の製造方法としては、反応に不活性な溶剤中、一般式(1)で表されるトリフルオロメチル化剤粉末、一般式(2)で表される置換フェニルヨージド、塩化銅(I)を仕込み、所定の温度、時間、反応を行う。
【0024】
本発明の一般式(3)で表されるトリフルオロメチル基含有化合物の製造で、一般式(1)で表されるトリフルオロメチル化剤粉末の使用量としては、使用する一般式(2)で表される置換フェニルヨージドに対して、1.0〜3.0モル量使用する。
【0025】
本発明の一般式(3)で表されるトリフルオロメチル基含有化合物の製造で使用可能な溶剤は、反応に不活性なものでれば特に規定はないが、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、N−メチルピロリドン、N,N´−ジメチルプロピレンウレア等の非プロトン性極性溶剤が好ましく、反応に使用する一般式(2)で表される置換フェニルヨージドに対して、1〜50重量倍量使用する。
【0026】
本発明の一般式(3)で表されるトリフルオロメチル基含有化合物の製造で使用する銅(I)触媒としては、具体的には例えば、塩化銅(I)、臭化銅(I)、ヨウ化銅(I)、トリフロオロメタンスルホニル銅(I)が挙げられ、反応に使用する一般式(2)で表される置換フェニルヨージドに対して、0.1〜30モル%使用する。
【0027】
本発明の一般式(3)で表されるトリフルオロメチル基含有化合物の製造の反応温度及び時間は、通常、30〜80℃の温度範囲で、12〜48時間の反応時間である。
【0028】
本発明の一般式(3)で表されるトリフルオロメチル基含有化合物の製造後の後処理としては、衆知の方法で実施可能で、例えば、5%塩酸を添加、エーテルで抽出、硫酸ナトリウムで乾燥、ろ過、濃縮することにより、粗製の一般式(3)で表されるトリフルオロメチルベンゼン誘導体を得、さらに必要に応じて、蒸留精製、シリカゲルカラムクロマトグラフィーでの精製等を行っても良い。
【実施例】
【0029】
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例1
トリフルオロメチル亜鉛ヨージド・(ジメチルプロピレンウレア)n錯体の調製
攪拌子を備えた20mlの丸底2口フラスコに、アルゴン気流下、亜鉛粉末(Aldrich社製未活性化品、654mg、10mmol)、DMPU(2.4ml、20mmol)及びDMF(7ml)を仕込み、−20℃とした。次いでこれにトリフルオロメチルヨージド(約8.0g)をバブリグ供給した後室温に戻し、同温度で24時間反応を行った。反応終了後、アルゴン気流下、未反応の亜鉛粉末をろ別の後、減圧下濃縮し、粗製物を淡黄色の固体として得た。得られた粗製物は、アルゴン気流下、トルエンで3回洗浄することにより白色固体のトリフルオロメチル亜鉛ヨージド・(DMPU)
2錯体[(CF
3)ZnI・(DMPU)
2]を得た。
19F−NMR(282MHz,DMF−d
7)δ−42.9(s)、−44.6(s)(ベンゾトリフルオリド内部標準:−63.24)。なお、(CF
3)ZnI・(DMPU)
2はDMF−d
7溶剤中で、下記平衡状態となり、2本のピークとして検出された。
【0030】
【化3】
【0031】
また、microTOF(MS−ESI)測定において、(CF
3)ZnI・(DMPU)
2と帰属される517.2088(M
+,m/e)のピークを得た(計算値517.6490)。
【0032】
熱安定性は、DSC測定において、100〜155℃(Top:137℃)に発熱ピークが認め
られ、100℃以下では安定であった。
【0033】
実施例2
2−トリフルオロメチル安息香酸エチルの製造
攪拌子、セプタムキャップを備えた試験管に実施例1で調製したトリフルオロメチル亜鉛ヨージド・(DMPU)
2錯体(160mg、0.2mmol)及びヨウ化銅(I)(1.9mg、0.01mmol)を仕込み、アルゴン置換を3回実施した。次いで、2−ヨード安息香酸エチル(16.6μl、0.1mmol)のDMPU(0.2ml)溶液を加え、セプタムキャップをスクリューチャップに替え密封した後、50℃で24時間反応を行った。反応終了後、反応液を
19F−NMR(ベンゾトリフルオライド内部標準)で定量したところ、収率80%で2−トリフルオロメチル安息香酸エチルが生成していた。
【0034】
実施例3
4−ブロモ−2−トリフルオロメチルピリジンの製造
実施例2の2−ヨード安息香酸に替えて、4−ブロモ−2−ヨードピリジン(28.4mg、0.1mmol)に替えた以外、実施例2と同じ操作を行い、4−ブロモ−2−トリフルオロメチルピリジンを収率75%で得た。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明により、室温下において安定で取り扱いが容易なトリフルオロメチル化剤粉末が提案でき、工業的にそれを用いた各種トリフルオロメチル基含有化合物の製造が可能となった。