【文献】
K. Hayashida, K. Fukuchi, M. Inubushi, K. Fukushima, S. Imakita, K. Kimura,Embolic Distribution Through Patent Foramen Ovale Demonstrated by 99mTc-MAA Brain SPECT After Valsalva Radionuclide Venography,Journal of Nuclear Medicine,米国,Society of Nuclear Medicine and Molecular Imaging,2001年 6月 1日,Vol. 42, No. 6,859-863
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の時間帯及び前記第2の時間帯は、被験者を撮像したフレーム群の各フレームにおける最大のカウント値の時間的変化と、当該フレーム群の各フレームにおける平均のカウント値の時間的変化と、に基づいて設定される
請求項2に記載のROI設定装置。
前記第1の時間帯及び前記第2の時間帯は、前記最大のカウント値の時間的変化において前記最大のカウント値がピークとなる時点と、前記平均のカウント値の時間的変化において前記平均のカウント値が所定の範囲内に連続して含まれる状態となる境界の時点と、の間に設定される
請求項3に記載のROI設定装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は、脳血流推定装置の構成の一例を示すブロック図である。
脳血流推定装置1は、ダイナミック撮像された胸部RIデータ4及びダイナミック撮像(又はスタティック撮像)された脳SPECT撮像データ5を有する記憶部と、ROIを設定するROI設定部3と、IBUR法を実行するIBUR実行部2と、を有する。ROI設定部3は、胸部RIデータ4に基づいて自動的に上行大動脈領域にROIを設定し、IBUR法における入力指数を決定する。IBUR実行部2は、ROI設定部3において設定されたROIを用いて、IBUR法に基づいて脳SPECT撮像データ5を解析し、脳血流を推定する。
【0010】
これにより、従来は手動で行われていたROIの設定を完全に自動化することができる。つまり、脳血流推定装置1は、胸部RIデータ4及び脳SPECT撮像データ5等に基づいて、自動的に脳血流を推定することができる。以下、ROIを自動的に設定するROI設定部3(ROI設定装置10)の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0011】
図2は、IBUR法の解析手順の一例を示すフローチャートである。
図3は、大動脈相近傍の模式図である。以下、
図2及び
図3を参照しながら、IBUR法の概要を説明する。
【0012】
IBUR法の定量解析は、CCF(Cross calibration factor)を算出するまではBUR法と同様である(S11)。その後、左前斜位(Left anterior oblique;LAO)15°〜25°で胸部Dynamic撮影された
99mTc−ECD angiographyの上行大動脈部12にROI設定を行い、大動脈TAC(Time activity curve)を得る。そのTACに対してGamma fittingを行い、AUC(Area under the curve)を算出する(S12〜S14)。
【0013】
次に、Ordered subsets expectation maximization(OS−EM)法で再構成された脳SPECT画像に対してStatistical parametric mapping(SPM)を用いて解剖学的標準化を行い、3−dimensional stereotaxic ROI template(3DSRT)を用いて各脳領域の局所SPECT値、平均SPECT値を算出し、CCF及びAUCからLassen補正を行ったrBUR(Regional brain uptake ratio)を算出する(S15〜S17、S21)。
【0014】
最終的に、H
215O PET(Positron emission tomography)において算出されたrCBF(Regional cerebral blood flow)に基づいた回帰式((rCBF)=3.23(rBUR)+4.66)から直接的にrBURをrCBFに換算する(S22〜S23)。
【0015】
従来、上行大動脈部12へのROI設定は手動で行われていた。しかし、ROI設定を手動で行う場合、操作が煩雑であること、及び再現性が悪いという課題があった。本実施例は、この上行大動脈部12へのROI設定を自動で行う方法について説明する。
【0016】
図4は、ROI設定装置10の機能構成の一例を示すブロック図である。ROI設定装置10は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、メインメモリ及び記憶媒体等を備える計算機であって、コンピュータプログラム等を実行することにより、後述する様々な機能を実現する。
【0017】
ROI設定装置10は、RI(Radioisotope)データに基づいて、所定の部位に自動的にROIを設定する。RIデータは、血管内に注入された造影剤(例えば、
99mTc−ECD)の状態を所定の時間間隔で撮像した1枚以上のフレームから構成されるフレーム群である。フレーム群は同じ必ずしも同じ時間間隔である必要はなく、異なる時間間隔であっても良い。各フレームを構成する画素にはカウント値が対応付けられている。カウント値は、例えば、造影剤濃度と対応関係を有する値である。
【0018】
ROI設定装置10は、例えば、胸部RIデータ101を取得するRIデータ取得手段21と、胸部RIデータ101を標準化する標準化手段22と、カウント値の時間的変化に基づいてフレーム群から動静脈相フレーム群103を抽出する動静脈相フレーム抽出手段23とを有する。さらに、ROI設定装置10は、動静脈相フレーム群103を静脈相フレーム群104と動脈相フレーム群105とに分離し、静脈層フレーム群104から静脈相合成画像106を、動脈層フレーム群105から動脈相合成画像107を生成する画像生成手段24と、静脈相合成画像106及び動脈相合成画像107に基づいて上行大動脈部12を含む候補領域(画像109)を決定する候補領域決定手段25と、上行大動脈部12を含む候補領域(画像109)から上行大動脈部12にROIを設定するROI設定手段26と、を有する。ROI設定装置10は、例えば、以下の手順により、上行大動脈部12にROIを設定する。
【0019】
(ステップ1)RIデータ取得手段21が、施設で撮像された胸部RIデータ101を取得し、ROI設定装置10の記憶媒体に格納する。
(ステップ2)標準化手段22が、胸部RIデータ101のフレーム群を、解析対象となる胸部範囲のフレーム群に標準化(変換)する。
(ステップ3)動静脈相フレーム抽出手段23が、標準化されたフレーム群のTACに基づいて、その標準化されたフレーム群から動静脈相が撮像されているフレーム群(動静脈相フレーム群103)を抽出する。
(ステップ4)画像生成手段24が、動静脈相フレーム群103を、静脈相の撮像されているフレーム群(静脈相フレーム群104)と、動脈相の撮像されているフレーム群(動脈相フレーム群105)とに分離する。そして、画像生成手段24が、静脈相フレーム群104から静脈相合成画像106を、動脈相フレーム群105から動脈相合成画像107を生成する。
(ステップ5)候補領域決定手段25が、動脈相合成画像107から大動脈弓画像108を生成し、静脈相合成画像106と大動脈弓画像108の重複する領域を抽出して上行大動脈部12を含む候補領域合成画像を生成する。
(ステップ6)ROI設定手段26が、上行大動脈部12を含む候補領域合成画像から、上行大動脈部12を特定してROIを設定する。
【0020】
以上の処理により、ROI設定装置10は、自動的に上行大動脈部12にROIを設定することができる。以下、各手段について説明する。
【0021】
(RIデータ取得手段21)
RIデータ取得手段21は、施設で撮像されたオリジナルの胸部RI angiographyデータ(胸部RIデータ101)を取得して、ROI設定装置10の記憶媒体に格納する。胸部RIデータ101には、所定の時間間隔で撮像された複数のフレーム群が含まれている。胸部RIデータ101は、撮像条件などが撮像された施設によって異なり得る。以下にその一例を示す。
【0022】
図5は、各施設で撮像された胸部RIデータ101の1フレームを示す図である。
図4に示す胸部RIデータ101は、500〜740MBqの
99mTc−ECD(造影剤)を右尺側肘静脈に注入すると同時に撮像されたものである。このとき、エネルギーウィンドウは140keV±10%、マトリックスサイズは128×128である。
【0023】
施設Aから収集された胸部RIデータ101について、フレーム数は100フレーム、収集時間は1秒/フレーム、ピクセルサイズは3.56mmである。施設Bから収集された胸部RIデータ101について、フレーム数は90フレーム、収集時間は1秒/フレーム、ピクセルサイズは2.21mmである。施設Cから収集された胸部RIデータ101について、フレーム数は110フレーム、収集時間は1秒/フレーム、ピクセルサイズは4.00mmである。このように、胸部RIデータ101は、施設毎に、ピクセルサイズ、フレーム数、胸部の撮像されている領域、及び拡大率等が異なり得る。
【0024】
(標準化手段22)
標準化手段22は、胸部RIデータ101のフレーム群を、解析対象となる胸部範囲のフレーム群に変換する。つまり、標準化手段22は、胸部の撮像されている領域、フレーム数及びピクセルサイズ等を標準化する。なぜなら、胸部RIデータ101は上述の通り、施設毎に異なり得るため、そのままだと施設毎の胸部RIデータ101の違いが後の処理に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0025】
図6は、標準化手段22の処理を説明するためのイメージ図である。以下、
図5を参照しながら、標準化手段22が胸部RIデータ101のフレーム群を胸部範囲のフレーム群に変換する手順を述べる。
【0026】
(ステップ1)標準化手段22は、胸部RIデータ101のDICOMヘッダからピクセルサイズを読み込む。そして、標準化手段22は、胸部RIデータ101の各フレームを、例えば線形補間法によってピクセルサイズが2.21mmとなるように拡大又は縮小する(
図6(A))。つまり、各フレームのサイズを標準化する。
【0027】
(ステップ2)標準化手段22は、その拡大又は縮小した胸部RIデータ101の後半30フレームを抽出する。そして、標準化手段22は、この抽出した後半30フレームの各画素のカウント値を加算した一枚の画像を生成する。そして、標準化手段22は、その一枚の画像に係る全カウント値の中で最大のカウント値を特定する。そして、標準化手段22は、その最大のカウント値の40%を閾値として、その一枚の画像から、例えばP−tile法による二値化処理によって、胸部領域を抽出する。
【0028】
(ステップ3)標準化手段22は、その抽出した胸部領域の重心を求める。そして、標準化手段22は、その重心を中心にしてマトリックスサイズ128×128の領域を切り抜くことによって。解析対象となる胸部範囲を決定する(
図6(B))。
【0029】
以上の処理により、各施設によって異なっていた胸部RIデータ101が、解析対象となる胸部範囲を含む標準化されたフレーム群に変換される。以降の処理は、この標準化されたフレーム群に対して行われる。
【0030】
(動静脈相フレーム抽出手段23)
動静脈相フレーム抽出手段23は、標準化されたフレーム群から動静脈相の撮像されているフレーム群を抽出する。フレーム群には、血管に注入された造影剤が時間の経過と共に被験者の体内を移動する様子が撮像されている。
【0031】
図7は、1秒間隔で撮像されたフレームを0〜30秒間分表示したものである。
図6に係るフレーム群200は、
99mTc−ECD(以下、単に「造影剤」という場合もある)が以下のように移動していることを示す。つまり、右尺側肘静脈より注入された造影剤は、鎖骨下静脈を通過し、下行大静脈を経て、右心房、右心室に流入する。その後、肺動脈を経て、肺循環した後、肺静脈から左心房、左心室に流入し、心拍動によって上行大動脈に噴出する。
【0032】
つまり、フレーム群200の内、動静脈相の撮像されているフレーム群は一部である。動静脈相フレーム抽出手段23は、動静脈相の撮像されているフレーム群を抽出する。以下、
図7〜
図9を参照しながら、動静脈相フレーム抽出手段23の処理について説明する。
【0033】
図8は、各フレームに係る最大カウント値のTACの一例を示すグラフである。
図8のグラフ301において、横軸はフレーム番号を示し、縦軸はフレームにおける最大カウント値を示す。つまり、グラフ301のTACは、時間経過に伴う最大カウント値の変化を示す。
【0034】
グラフ301のTACの最初のピーク時点91のフレームには、鎖骨下静脈部から下行大静脈部までが撮像される(画像201参照)。そして、この最初のピーク以降の数フレームには、静脈相(鎖骨下静脈、下行大静脈、右心房、右心室、肺動脈及び左右肺動脈分岐部)が撮像される。なぜなら、注入された造影剤は、血管内に流入後、次第に希釈されるため、最初のピーク時点91以降のフレームの最大カウント値は、急激に低下するからである。
【0035】
図9は、各フレームの平均カウント値のTACの一例を示すグラフである。
図9のグラフ302において、横軸はフレーム番号を示し、縦軸はフレームにおける平均カウント値を示す。ここで、平均カウント値とは、フレームを構成する各画素のカウント値を平均したカウント値のことをいう。
【0036】
図10は、各フレームの平均カウント値のTACの一次微分曲線の一例を示すグラフである。
図10のグラフ303において、横軸はフレーム番号を示し、縦軸はフレームにおける平均カウント値の一次微分値を示す。
【0037】
図9に示すグラフ302において、平均カウント値は、ピーク時点91を通過後の数秒間は変化せず、その後急激に減少する。その後、平均カウント値は、緩やかに減少する。なぜなら、時間経過に伴って造影剤が血液によって希釈されるからである。そこで、動静脈相フレーム抽出手段23は、平均カウント値が急激な減少から緩やかな現象に変化した境界時点92を特定する。例えば、平均カウント値の時間的変化において平均カウント値が所定の範囲内に連続して含まれる状態となる境界時点92を特定する。つまり、動静脈相フレーム抽出手段23は、
図10のグラフ303から、平均カウント値の微分値がほぼ一定となる(ほとんど変化しない)境界時点92を求める。この時点92を第2時点92とする。
【0038】
図9のグラフ302に、上記で求めた第1時点91及び第2時点92を表示する。ここで、ピーク時点91と境界時点92との間(b)に含まれるフレーム群には、動脈相の撮像されたフレーム群と、静脈相の撮像されたフレーム群とが含まれる(画像202参照)。このフレーム群を、動静脈相フレーム群103という。ここで、静脈相は、鎖骨下静脈、下行大静脈、右心房、右心室、肺動脈、左右肺動脈分岐部を表し、動脈相は、左心房、左心室、大動脈弓を表す。なお、境界時点92以降のフレーム群(c)には、主に体循環の様子が撮像されている(画像203参照)。
【0039】
(画像生成手段24)
画像生成手段24は、上記の動静脈相フレーム群103から、静脈相の撮像されているフレーム群(以下「静脈相フレーム群104」という)と、動脈相の撮像されているフレーム群(以下「動脈相フレーム群105」という)と、を抽出又は分離する。そして、画像生成手段24は、静脈層フレーム群104から静脈相合成画像106を生成し、動脈層フレーム群105から動脈相合成画像107を生成する。
【0040】
まず、動静脈相フレーム群103から静脈相フレーム群104と動脈相フレーム群105を分離する処理について説明する。造影剤の血管内の移動速度は、血流速度及び造影剤の血管への注入速度に依存する。つまり、造影剤の血管内の移動速度は、ケースバイケースで変動する。多くの症例を分析した結果、鎖骨下静脈から肺動脈までが撮像されている静脈相フレーム群104のフレーム数は、最大で6フレームあり、最小で2フレームであった。そこで、画像生成手段24は、動静脈相領域における造影剤の通過時間を算出し、この通過時間に基づいて、動静脈相フレーム群103から、静脈相フレーム群104と動脈相フレーム群105とを分離する時点を決定する。例えば、画像生成手段24は、次のフレーム分離用テーブル400を用いて、静脈相フレーム群104と動脈相フレーム群105とを分離する時点を決定する。ここで、通過時間は、1フレームの秒数(例えば、1フレーム/1秒)と、第1時点91から第2時点92までの間のフレーム数に基づいて算出されても良い。
【0041】
図11は、フレーム分離用テーブル400の一例を示す。フレーム分離用テーブル400は、動静脈相領域における造影剤の通過時間401と、静脈相フレーム群104に割り当てるフレーム数402の対応関係を示す。
【0042】
フレーム分離用テーブル400は、造影剤の通過時間401が25秒以上の場合(例えば、1フレーム/1秒のフレーム数が25枚以上であった場合)、動静脈相フレーム群103の最初のフレームから6フレームを、静脈相フレーム群104に割り当てる(レコード410a参照)。同様に、造影剤の通過時間401が20秒〜24秒の場合、動静脈相フレーム群103の最初のフレームから5フレームを、静脈相フレーム群104に割り当てる(レコード410b参照)。造影剤の通過時間401が11秒〜20秒の場合、動静脈相フレーム群103の最初のフレームから3フレームを、静脈相フレーム群104に割り当てる(レコード410c参照)。造影剤の通過時間401が10秒以下の場合、動脈相フレーム群105の最初のフレームから2フレームを、静脈相フレーム群104に割り当てる(レコード410d参照)。
【0043】
次に、動脈相合成画像107と静脈相合成画像106の生成処理について説明する。画像生成手段24は、静脈相フレーム群104を用いて、静脈相合成画像106を生成する。つまり、画像生成手段24は、静脈相フレーム群104の各フレームの画素のカウント値を加算して一枚の静脈相合成画像106を生成する。画像生成手段24は、静脈相フレーム群104を合成せずに、静脈相フレーム群104の一枚のフレームを用いて、静脈相合成画像106を生成しても良い。
【0044】
また、画像生成手段24は、動静脈相フレーム群103の内、静脈相フレーム群104に割り当てなかった残りのフレーム群を動脈相フレーム群105に割り当てる。そして、画像生成手段24は、動脈相フレーム群105の各フレームの画素のカウント値を加算して一枚の動脈相合成画像107を生成する。以上の処理により、静脈相合成画像106と動脈相合成画像107が生成される。画像生成手段24は、動脈相フレーム群105を合成せずに、動脈相フレーム群105の一枚のフレームを用いて、動脈層合成画像107を生成しても良い。
【0045】
(候補領域決定手段25)
候補領域決定手段25は、静脈相合成画像106と動脈相合成画像107を用いて、ROIを設定する候補となる領域(候補領域)を決定する。候補領域決定手段25は、上行大動脈部12を含む候補領域を決定する。なぜなら、本実施例では、上行大動脈部12にROIを設定したいからである。候補領域決定手段25は、例えば以下の手順によって候補領域を決定する。
【0046】
(ステップ1)候補領域決定手段25は、動脈相合成画像107から、大動脈弓のみ描写された領域を抽出して大動脈弓画像108を生成する。
(ステップ2)候補領域決定手段25は、静脈相合成画像106と大動脈弓画像108の重複する領域を抽出して、上行大動脈部12を含む候補領域合成画像を生成する。なぜなら、上行大動脈部12は、下行大静脈、肺動脈及び右肺動脈分岐部と重なっているからである。以下、上記のステップ1及びステップ2についてさらに説明する。
【0047】
(ステップ1:大動脈弓画像108の作成)
図12は、大動脈弓画像108の作成手順の一例を説明する図である。
動脈相合成画像107(A)の中には、静脈滞留が原因で鎖骨下静脈が描出されているものも存在する。
【0048】
そこで、候補領域決定手段25は、鎖骨下静脈を取り除くため、動脈相合成画像107(A)の最大カウント値の85%の値を閾値として、例えばP−tile法によって二値化処理を行い、大動脈弓及び鎖骨下静脈の領域を含み得る画像(B)を生成する。そして、候補領域決定手段25は、画像(B)に描写されている複数の領域の中で最も面積の大きい領域を大動脈弓の領域とし、その大動脈弓の領域のみが描写された大動脈弓画像108(C)を生成する。
【0049】
(ステップ2:上行大動脈を含む候補画像の作成)
図13は、上行大動脈部12を含む候補領域合成画像の作成手順の一例を説明する図である。
胸部RIデータ101において、上行大動脈部12は、下行大静脈、肺動脈及び右肺動脈分岐部と重なっていた。よって、静脈相合成画像106(A)と大動脈弓画像108(C)の重なる領域には、上行大動脈部12が含まれると考えられる。
【0050】
そこで、候補領域決定手段25は、静脈相合成画像106(A)の最大カウント値の80%を閾値として、例えばP−tile法で二値化処理を行い、二値化した静脈相合成画像(D)を抽出する。そして、候補領域決定手段25は、その二値化した静脈相合成画像(D)と大動脈弓画像108(C)との両方が重なる領域を抽出する。そして、候補領域決定手段25は、その抽出した両方が重なる領域の各画素に、動脈相合成画像107における同じ位置の画素のカウント値を入力し、上行大動脈部12を含む候補領域合成画像(F)を生成する。
【0051】
(ROI設定手段26)
ROI設定手段26は、候補領域決定手段25によって生成された上行大動脈部12を含む候補領域合成画像(E)を用いて、上行大動脈部12の領域にROIを設定する。
【0052】
図14は、ROIを設定した候補領域合成画像を示す図である。上行大動脈部12を含む候補領域合成画像204には、上行大動脈部12だけでなく肺野や大動脈弓の下行移行部も含まれている。
99mTc−ECDが肺への集積がほとんどないということに加え、大動脈弓部分岐部での血流欠損を考慮すると、候補領域合成画像においては、上行大動脈部12のカウント値が最も高くなる。そこで、ROI設定手段26は、例えば、上行大動脈部12を含む候補領域合成画像204から、実際の大動脈の大きさを超えない半径4ピクセル(8.76mm)の領域に含まれるカウント値の合計が最も高くなる領域210を特定し、その領域201にROIに設定する。以上の処理により、ROI設定手段26は、上行大動脈部12の領域210にROIを設定することができる。
【0053】
以上の処理により、IBUR法は完全に自動化となり、操作時間及び再現性の問題も解決され、より簡便で確実な脳血流定量法となる。したがって、上記の方法を臨床適用することによって、非侵襲的脳血流定量法が拡大され、医療に貢献できる。
【0054】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【0055】
上述ではSPECT撮像データに対して本発明を適用した実施形態について説明したが、例えば、所定の器官を対象としたPET画像データ又はCT画像データに対しても本発明は適用可能である。