特許第5889862号(P5889862)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5889862-ゴム混練機およびゴム混練機の集塵方法 図000006
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5889862
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】ゴム混練機およびゴム混練機の集塵方法
(51)【国際特許分類】
   B29B 7/24 20060101AFI20160308BHJP
【FI】
   B29B7/24
【請求項の数】5
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-251229(P2013-251229)
(22)【出願日】2013年12月4日
(65)【公開番号】特開2015-107590(P2015-107590A)
(43)【公開日】2015年6月11日
【審査請求日】2015年1月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(72)【発明者】
【氏名】上野 修一
【審査官】 今井 拓也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−118387(JP,A)
【文献】 特開平07−016445(JP,A)
【文献】 特開2013−107025(JP,A)
【文献】 特開2003−170421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 7/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部にロータを収容する混練室を備え、上部に配合剤の投入口が設けられたゴム混練機であって、
前記混練室の外側の前記投入口の下方に送風機、上方に集塵機が設けられており、前記投入口から飛散する原料を、前記送風機の送風口から前記集塵機に向けて送られる風により前記集塵機に送り込んで回収するように構成されており、
前記投入口の幅方向において、前記送風口の中央部から供給される風量に比べて、前記送風口の両端部分から供給される風量が多くなるように、前記送風機を制御する制御機構を備えていることを特徴とするゴム混練機。
【請求項2】
前記送風口の両端部分から供給される風量が、前記送風口の中央部から供給される風量の150〜250%であることを特徴とする請求項に記載のゴム混練機。
【請求項3】
前記投入口に、上辺が外側に開く片開き式のドアが取り付けられており、開けられた前記ドアの前記送風機に対向する側の面が、前記投入口の幅方向に沿って湾曲した曲面に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴム混練機。
【請求項4】
前記曲面の曲率が、6〜10/mであることを特徴とする請求項に記載のゴム混練機。
【請求項5】
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のゴム混練機を用いたゴム混練機の集塵方法であって、
前記投入口から飛散する原料を、前記送風機の送風口から前記集塵機に向けて送られる風により前記集塵機に送り込んで回収することを特徴とするゴム混練機の集塵方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の原料を混練してゴム組成物を製造するゴム混練機および、前記ゴム混練機の集塵方法に関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤ用ゴム材料は、密閉式ゴム混練機を用いて、原料投入口から混練室内に投入されたゴムやその他の配合剤が混練されたゴム組成物を用いて製造されている。
【0003】
このとき、混練室内に投入された原料が混練途中に飛散して、周辺の環境を悪化させると共に、混練されたゴム組成物の物性が狙い通りにならない恐れがある。
【0004】
そこで、従来、このような混練途中の原料の飛散を防止するために、例えば、ゴム混練機周辺を加圧して周辺への飛散を防止することが行われている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−333833号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、原料の飛散は、混練途中だけではなく、原料(特に配合剤)をゴム混練機内に投入する際にも生じており、従来は、この点についてあまり配慮されていなかった。
【0007】
そこで、本発明は、原料投入時の原料の飛散を適切に防止して、周辺の環境を清浄な状態に保つことができるゴム混練機および前記ゴム混練機の集塵方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討を行った結果、以下に記載する発明により上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
請求項1に記載の発明は、
下部にロータを収容する混練室を備え、上部に配合剤の投入口が設けられたゴム混練機であって、
前記混練室の外側の前記投入口の下方に送風機、上方に集塵機が設けられており、前記投入口から飛散する原料を、前記送風機の送風口から前記集塵機に向けて送られる風により前記集塵機に送り込んで回収するように構成されており、
前記投入口の幅方向において、前記送風口の中央部から供給される風量に比べて、前記送風口の両端部分から供給される風量が多くなるように、前記送風機を制御する制御機構を備えていることを特徴とするゴム混練機である
【0010】
求項に記載の発明は、
前記送風口の両端部分から供給される風量が、前記送風口の中央部から供給される風量の150〜250%であることを特徴とする請求項に記載のゴム混練機である。
【0011】
請求項に記載の発明は、
前記投入口に、上辺が外側に開く片開き式のドアが取り付けられており、開けられた前記ドアの前記送風機に対向する側の面が、前記投入口の幅方向に沿って湾曲した曲面に形成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のゴム混練機である。
【0012】
請求項に記載の発明は、
前記曲面の曲率が、6〜10/mであることを特徴とする請求項に記載のゴム混練機である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、
請求項1ないし請求項のいずれか1項に記載のゴム混練機を用いたゴム混練機の集塵方法であって、
前記投入口から飛散する原料を、前記送風機の送風口から前記集塵機に向けて送られる風により前記集塵機に送り込んで回収することを特徴とするゴム混練機の集塵方法である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、原料投入時の原料の飛散を適切に防止して、周辺の環境を清浄な状態に保つことができるゴム混練機および前記ゴム混練機の集塵方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施の形態に係るゴム混練機を模式的に示す側面図である。
図2】本発明の実施の形態に係るゴム混練機に設けられた送風機を模式的に示す正面図である。
図3】本発明の実施の形態に係るゴム混練機の投入口に取り付けられたドアの幅方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施の形態に基づき、図面を用いて説明する。
【0017】
図1は本実施の形態に係るゴム混練機を模式的に示す側面図、図2は本実施の形態に係るゴム混練機に設けられた送風機を模式的に示す正面図、図3は本実施の形態に係るゴム混練機の投入口に取り付けられたドアの幅方向断面図である。
【0018】
図1に示すように、ゴム混練機1は、本体2の下部にロータ(図示せず)を収容する混練室3を備えており、本体2の上部に設けられた投入口4から投入されたゴムやその他の配合剤などの原料を、フローティングウェイト(図示せず)で押圧しながらロータを回転させることによりこれらの原料を混練する。混練後のゴム組成物は、フローティングウェイトが上方に引き上げられた後、混練室3より取り出されて、次工程に送られ、タイヤ用ゴム材料の製造に用いられる。
【0019】
投入口4には、上辺が外側に開くことにより開閉自在とされた片開き式のドア5が取り付けられている。
【0020】
そして、混練室3の外側の投入口4の下方に送風機6、上方に集塵機7が設けられており、投入口4を挟んで互いに対向して配置されている。なお、8は送風機6が設置されている床面であり、6aは送風機6の送風口である。
【0021】
本実施の形態に係るゴム混練機は、投入口4から混練室3内に配合剤を投入する際、投入口4を挟んで集塵機7と対向するように配置された送風機6を稼働させて、送風機6の送風口6aから集塵機7に向かって送風する。
【0022】
これにより、送風機6の送風口6aから投入口4の近傍を通って集塵機7に至る気流が形成され、投入口4に投入する際に飛散した原料(例えば、配合剤)が、集塵機7に送り込まれて集塵機7で効率よく回収されるため、ゴム混練機の周辺の環境を清浄な状態に保つことができる。
【0023】
本実施の形態の送風機6は、図2に示すように、投入口4の幅方向に沿って延びる送風口6aを有している。このとき、送風機6の送風口6aの中央部Aから供給される風量に比べて、送風口6aの両端部分Bから供給される風量が多くなるように風量を制御する制御機構を備えていることが好ましい。このように、中央部Aと両端部分Bとで供給される風量を変化させることにより、送風機6の送風口6aから集塵機7に至る気流をより適切に形成して、配合剤の周辺への飛散をより効率よく防止することができる。
【0024】
具体的には、両端部分Bから供給される風量は、中央部Aから供給される風量に対して、150〜250%となるように設定することが好ましい。なお、このとき、送風機6の送風口6aにおいて、中央部Aから風を供給する部分と両端部分Bから風を供給する部分の割合は、投入口4の寸法や投入する原料の量などに応じて適宜設定される。
【0025】
そして、図3に示すように、開けられたドア5の送風機6に対向する側の面は、投入口4の幅方向に沿って湾曲した曲面に形成されていることが好ましい。これにより、送風機6の送風口6aから集塵機7に至る気流を更に適切に形成して、さらに効率よく配合剤の周辺への飛散を防止することができる。具体的には、ドア5の送風機6側の面は、曲率6〜10/mの曲面に形成されていることが好ましい。
【実施例】
【0026】
以下、実施例に基づいて、本発明を具体的に説明する。
【0027】
(1)集塵機のみが設けられている従来のゴム混練機の投入口から配合剤を投入してゴム混練を行い、配合剤の集塵量(1時間当たりに吸引された配合剤の重量)と、飛散量(1mの床に落下した配合剤の1時間当たりの回収量)とを測定した(比較例1)。
【0028】
(2)上記した実施の形態のように、投入口を挟んで集塵機に対向するように送風機が設置されたゴム混練機を用い、送風機の送風口の両端部分から供給される風量Bと中央部から供給される風量Aを表1に示すように変化させて、同様にゴム混練を行い、配合剤の集塵量と飛散量とを測定した(実施例1〜実施例6)。なお、実施例1〜6では、投入口のドアの送風機に対向する側の面を曲面に形成していない。
【0029】
(3)実施例1〜6と同じように送風機と集塵機を備えたゴム混練機について、ドアの送風機側の面を曲率10/mの曲面に形成し、送風機の送風口の両端部分から供給される風量Bと中央部から供給される風量Aを表2に示すように変化させて、同様にゴム混練を行い、配合剤の集塵量と飛散量とを測定した(実施例7〜実施例11)。
【0030】
(4)実施例1〜6と同じように送風機と集塵機を備えたゴム混練機について、ドアの送風機側の面を曲率8/mの曲面に形成し、送風機の送風口の両端部分から供給される風量Bと中央部から供給される風量Aを表3に示すように変化させて、同様にゴム混練を行い、配合剤の集塵量と飛散量とを測定した(実施例12〜実施例16)。
【0031】
(5)実施例1〜6と同じように送風機と集塵機を備えたゴム混練機について、ドアの送風機側の面を曲率6/mの曲面に形成し、送風機の送風口の両端部分から供給される風量Bと中央部から供給される風量Aを表4に示すように変化させて、同様にゴム混練を行い、配合剤の集塵量と飛散量とを測定した(実施例17〜実施例21)。
【0032】
測定結果を、それぞれ表1〜表4に示す。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【表3】
【0036】
【表4】
【0037】
表1より、投入口の上方に集塵機、下方に送風機を設け、原料投入時に送風機から送風することにより、原料の集塵量を増加させて、飛散量を低減できることが確認できた。
【0038】
そして、送風機の送風口の中央部から供給される風量Aに比べて両端部分から供給される風量Bが多くなるように送風を行うことにより、より効率よく飛散量を低減できることが確認できた。さらに、実施例4のように、両端部分から供給される風量Bを中央部から供給される風量Aの2倍とした場合、最も効率よく飛散量を低減できることが確認できた。
【0039】
表2より、ドアの送風機側の面を曲面に形成することにより、飛散量の低減効果がより大きくなることが分かった。また、表2〜4より、ドアの送風機に対向する側の面の曲率を8/mに設定した場合に、飛散量の低減効果が最も大きくなることが確認できた。
【0040】
さらに、両端部分から供給される風量Bを中央部から供給される風量Aの2倍にして、ドアの送風機に対向する側の面の曲率を8/mに設定した実施例14が、全ての実施例の中でも最も効率よく飛散量を低減できることが確認できた。
【0041】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ゴム混練機
2 本体
3 混練室
4 投入口
5 ドア
6 送風機
6a 送風口
7 集塵機
8 床面
A (送風口の)中央部
B (送風口の)両端部分
図1
図2
図3