特許第5889877号(P5889877)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5889877
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月30日
(54)【発明の名称】高濃度抗体製剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20160317BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20160317BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20160317BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20160317BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20160317BHJP
   A61P 19/00 20060101ALI20160317BHJP
【FI】
   A61K39/395 NZNA
   A61K47/12
   A61K47/26
   A61K9/08
   A61P1/02
   A61P19/00
【請求項の数】16
【全頁数】35
(21)【出願番号】特願2013-510274(P2013-510274)
(86)(22)【出願日】2011年5月11日
(65)【公表番号】特表2013-527176(P2013-527176A)
(43)【公表日】2013年6月27日
(86)【国際出願番号】US2011036062
(87)【国際公開番号】WO2011143307
(87)【国際公開日】20111117
【審査請求日】2014年5月9日
(31)【優先権主張番号】61/334,986
(32)【優先日】2010年5月14日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500049716
【氏名又は名称】アムジエン・インコーポレーテツド
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100118773
【弁理士】
【氏名又は名称】藤田 節
(74)【代理人】
【識別番号】100122389
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 栄一
(74)【代理人】
【識別番号】100111741
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 夏夫
(72)【発明者】
【氏名】オスランド,ティモシー,ディー.
【審査官】 平林 由利子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−532798(JP,A)
【文献】 特表2005−530845(JP,A)
【文献】 特表2009−521482(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/079471(WO,A1)
【文献】 国際公開第2009/141433(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/00−39/44
A61K 9/00− 9/72
A61K 47/00−47/48
A61K 38/00−38/58
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)0mg/mL〜120mg/mLの濃度の抗スクレロスチン免疫グロブリンと、
(b)1mM〜20mMの範囲の濃度の酢酸カルシウムと
を含む、10cP以下の絶対粘度を有する、滅菌液体製剤であって、前記抗スクレロスチン免疫グロブリンは、配列番号86のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号84のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、製剤
【請求項2】
(c)5mM〜15mMの濃度の酢酸ナトリウムをさらに含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
50mOsm/L未満の全オスモル濃度を有する、請求項1〜のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項4】
前記免疫グロブリンは、少なくとも120mg/mLの濃度で存在する、請求項1〜のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
前記製剤の前記絶対粘度は、8cP以下である、請求項1〜のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
前記製剤の前記絶対粘度は、6cP以下である、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
前記製剤は、4%w/v〜6%w/vの範囲の量のポリオールをさらに含む、請求項1〜のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
前記ポリオールは、スクロースである、請求項7に記載の製剤。
【請求項9】
前記製剤は、4.5〜6の範囲のpHを有する、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
前記製剤は、5〜5.5の範囲のpHを有する、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
タンパク質製剤の粘度を低減するための方法であって、1mM〜20mMの濃度の酢酸カルシウムを、抗スクレロスチン免疫グロブリン製剤に添加することを含み、前記製剤は、70mg/mL〜200mg/mLの濃度の免疫グロブリンを含み、前記抗スクレロスチン免疫グロブリンは、配列番号86のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号84のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含み、さらに、前記酢酸カルシウムを含む前記製剤の前記粘度は、前記酢酸カルシウムを含まない抗体製剤の粘度と比較して低減される、方法。
【請求項12】
(a)70mg/mL〜120mg/mLの濃度の、配列番号90のアミノ酸配列からなる重鎖および配列番号88のアミノ酸配列からなる軽鎖を有する免疫グロブリンと、
(b)1mM〜20mMの範囲の濃度の酢酸カルシウムと、
(c)4%w/v〜6%w/vの範囲の量のポリオールと
を含む、10cP以下の絶対粘度を有する、滅菌液体製剤。
【請求項13】
前記ポリオールは、スクロースである、請求項12に記載の製剤。
【請求項14】
)70mg/mL〜120mg/mLの濃度の抗スクレロスチン免疫グロブリンであって、配列番号86のアミノ酸配列からなる重鎖可変領域および配列番号84のアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域を含む、免疫グロブリンと、
(b)1mM〜20mMの範囲の濃度の酢酸カルシウムであって、前記酢酸カルシウムを含まない抗体製剤の粘度と比較して、前記製剤の絶対粘度を少なくとも50%低減する、酢酸カルシウムと、
を含む、滅菌液体製剤。
【請求項15】
整形外科手術、歯科手術、インプラント手術、関節置換術、骨移植術、骨美容整形、もしくは骨修復を治療するための、または患者において骨粗鬆症もしくは骨減少症を治療するための、請求項1〜10および12〜14のいずれか1項に記載の製剤
【請求項16】
前記骨修復は、骨折治癒、癒着不能治癒、遷延治癒、または顔面再建術である、請求項15に記載の製剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高濃度抗体製剤に関する。
関連出願の相互参照
本願は、2010年5月14日出願の米国仮出願第61/334,986号の優先権の利益を主張し、その開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
高濃度液体抗体製剤は、より少量の用量を送達するのに有用である。しかしながら、高濃度タンパク質製剤は、いくつかの問題をもたらす。1つの問題は、微粒子の形成に起因する不安定性である。別の問題は、抗体の高分子性質からの多くの分子間相互作用の結果としての、粘度の増加である。高粘性製剤は、製造、シリンジへの吸引、および注入が困難である。粘性製剤の取り扱いに力を使用することは、過剰な泡をもたらし、活性生物製剤の変性および不活性化をもたらす可能性がある。
【0003】
米国特許第6,875,432号および米国特許出願公開第2006/0182740号、第2007/0172479号、第2008/0160014号は、抗体製剤およびそれを作製する方法を開示する。これらの公開文献のうち、本明細書で言及する抗体を開示するものはない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6,875,432号
【特許文献2】米国特許出願公開第2006/0182740号
【特許文献3】米国特許出願公開第2007/0172479号
【特許文献4】米国特許出願公開第2008/0160014号
【発明の概要】
【0005】
本開示は、低濃度、例えば、5〜10mMの酢酸カルシウムの添加が、高濃度の選択された抗スクレロスチン抗体を含む製剤中の有効粘度を低減したという発見に基づく。対照的に、同濃度の酢酸カルシウムは、他の抗体製剤の粘度を有意に低減しなかった。一態様では、本製剤は、滅菌され、液体または再構成液体形態の場合、(a)少なくとも70mg/mLの濃度の抗スクレロスチン抗体であって、配列番号1〜5(Ab−AおよびAb−1 CDR)、15〜20(Ab−B CDR)、25〜30(Ab−C CDR)、35〜40(Ab−D CDR)、45〜50(Ab−2 CDR)、55〜60(Ab−3およびAb−15 CDR)、73〜78(Ab−4およびAb−5 CDR)、91〜96(Ab−6 CDR)、101〜106(Ab−7 CDR)、111〜116(Ab−8 CDR)、121〜126(Ab−9 CDR)、131〜136(Ab−10 CDR)、141〜146(Ab−11およびAb−16 CDR)、159〜164(Ab−12 CDR)、169〜174(Ab−13およびAb−14 CDR)、187〜192(Ab−17およびAb−18 CDR)、201〜206(Ab−19、Ab−20、およびAb−23 CDR)、225〜229(Ab−21およびAb−22 CDR)、または239〜244(Ab−24 CDR)から成る群より選択される6つのCDRのセットを含む、抗体と、(b)約1mM〜約20mM、または約5mM〜約10mMの範囲の濃度のカルシウム塩とを含み、本製剤は、約10cP以下の絶対粘度を有する。本明細書に記載する絶対粘度は、適合する試料カップの温度が一定の25℃で循環水槽によって調整される、CPE−40スピンドルを用いた、Brookfield LV−DVIIコーンプレート粘度計を使用して測定された。
【0006】
いくつかの実施形態では、カルシウム塩は、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、および塩化カルシウムから成る群より選択される。一実施形態では、カルシウム塩は、酢酸カルシウムである。あるいは、いくつかの実施形態では、カルシウム塩は、カルシウム塩を含まない抗体の同一製剤と比較して、少なくとも10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、またはそれ以上、抗体製剤の粘度を低減する濃度で存在する。
【0007】
関連態様では、本製剤は、滅菌され、液体または再構成液体形態の場合、(a)約70mg/mL〜約200mg/mLの濃度の抗スクレロスチン抗体であって、配列番号1〜5(Ab−AおよびAb−1 CDR)、15〜20(Ab−B CDR)、25〜30(Ab−C CDR)、35〜40(Ab−D CDR)、45〜50(Ab−2 CDR)、55〜60(Ab−3およびAb−15 CDR)、73〜78(Ab−4およびAb−5 CDR)、91〜96(Ab−6 CDR)、101〜106(Ab−7 CDR)、111〜116(Ab−8 CDR)、121〜126(Ab−9 CDR)、131〜136(Ab−10 CDR)、141〜146(Ab−11およびAb−16 CDR)、159〜164(Ab−12 CDR)、169〜174(Ab−13およびAb−14 CDR)、187〜192(Ab−17およびAb−18 CDR)、201〜206(Ab−19、Ab−20、およびAb−23 CDR)、225〜229(Ab−21およびAb−22 CDR)、または239〜244(Ab−24 CDR)から成る群より選択される6つのCDRのセットを含む、抗体と、(b)約5mM〜約15mM、または約5mM〜約10mMの範囲の濃度の酢酸カルシウムとを含み、本製剤は、約10cP以下の絶対粘度を有する。あるいは、いくつかの実施形態では、酢酸カルシウムは、酢酸カルシウムを含まない抗体の同一製剤と比較して、少なくとも10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、またはそれ以上、抗体製剤の粘度を低減する濃度で存在する。
【0008】
また、タンパク質製剤の粘度を低減する方法も提供し、本方法は、抗スクレロスチン免疫グロブリン製剤に、約1mM〜約20mMの濃度の酢酸カルシウムを添加することを含み、本製剤は、約70mg/mL〜約200mg/mLの濃度の免疫グロブリンを含み、酢酸カルシウムを含む製剤の粘度は、酢酸カルシウムを含まない抗体製剤の粘度と比較して低減される。
【0009】
別の態様では、本製剤は、滅菌され、約10cP以下の絶対粘度を有し、(a)少なくとも70mg/mL〜約200mg/mLの濃度のAb−5と、(b)約1mM〜約20mMの範囲の濃度の酢酸カルシウムと、約1%w/v〜約12%w/vの範囲の量の、例えばスクロース等のポリオールとを含む。ある特定の実施形態では、ポリオールは、約4%〜10%の範囲の量である。いくつかの実施形態では、免疫グロブリンは、配列番号86(Ab−5重鎖可変領域)および/または配列番号84(Ab−5軽鎖可変領域)のアミノ酸配列を含む。
【0010】
別の態様では、本製剤は、滅菌され、約10cP以下の絶対粘度を有し、(a)少なくとも70mg/mL〜約200mg/mLの濃度のAb−5と、(b)約1mM〜約20mMの範囲の濃度の酢酸カルシウムと、(c)約4%w/v〜約6%w/vの範囲の量の、例えばスクロース等のポリオールとを含む。
【0011】
前述の態様のうちのいずれにおいても、いくつかの実施形態では、本製剤は、(c)約5mM〜約15mM、または約5mM〜約10mMの濃度の酢酸緩衝液、例えば、酢酸ナトリウムをさらに含む。いくつかの実施形態では、酢酸塩の全濃度は、約10mM〜約50mM、または約20mM〜約40mMである。
【0012】
異なる態様では、本製剤は、滅菌され、液体または再構成液体形態の場合、(a)約70mg/mL〜約200mg/mLの濃度の抗スクレロスチン抗体であって、配列番号1〜5(Ab−AおよびAb−1 CDR)、15〜20(Ab−B CDR)、25〜30(Ab−C CDR)、35〜40(Ab−D CDR)、45〜50(Ab−2 CDR)、55〜60(Ab−3およびAb−15 CDR)、73〜78(Ab−4およびAb−5 CDR)、91〜96(Ab−6 CDR)、101〜106(Ab−7 CDR)、111〜116(Ab−8 CDR)、121〜126(Ab−9 CDR)、131〜136(Ab−10 CDR)、141〜146(Ab−11およびAb−16 CDR)、159〜164(Ab−12 CDR)、169〜174(Ab−13およびAb−14 CDR)、187〜192(Ab−17およびAb−18 CDR)、201〜206(Ab−19、Ab−20、およびAb−23 CDR)、225〜229(Ab−21およびAb−22 CDR)、または239〜244(Ab−24 CDR)から成る群より選択される6つのCDRのセットを含む、抗体と、(b)約10mM〜約50mMの酢酸塩、または約20mM〜約40mMの酢酸塩の範囲の濃度の、酢酸塩および/または酢酸緩衝液とを含み、本製剤は、約10cP以下の絶対粘度を有する。いくつかの実施形態では、酢酸塩および/または緩衝液は、酢酸カルシウムおよび/または酢酸ナトリウムを含む。あるいは、いくつかの実施形態では、酢酸塩および/または緩衝液は、酢酸塩および/または緩衝液を含まない抗体の同一製剤と比較して、少なくとも10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、またはそれ以上、抗体製剤の粘度を低減する濃度で存在する。
【0013】
前述の態様のうちのいずれにおいても、いくつかの実施形態では、溶液中のイオンの全濃度(陽イオンおよび陰イオン)は、約20mM〜約70mM、または約30mM〜約60mMである。これらの実施形態のうちのいずれにおいても、全オスモル濃度は、約400mOsm/Lまたは350mOsm/L未満であり、好ましくは、等張に近く、例えば、250〜350mOsm/Lである。いくつかの実施形態では、本製剤は、低張である。例えば、そのような実施形態では、本製剤のオスモル濃度は、約250mOsm/L未満である。他の実施形態では、本製剤は、高張である。したがって、そのような実施形態では、本製剤の全オスモル濃度は、約350mOsm/Lよりも大きい。
【0014】
本明細書に記載する製剤のうちのいずれにおいても、いくつかの実施形態では、本製剤中の抗スクレロスチン抗体は、抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−15、Ab−16、Ab−17、Ab−19、Ab−21、Ab−23、またはAb−24のうちのいずれかの成熟重鎖および/または軽鎖可変領域を含むことができる。したがって、特定の実施形態では、抗体は、配列番号14(Ab−1重鎖可変領域)、および/または配列番号12(Ab−1軽鎖可変領域)、または配列番号68(Ab−15重鎖可変領域)、および/または配列番号66(Ab−15軽鎖可変領域)、または配列番号86(Ab−5重鎖可変領域)、および/または配列番号84(Ab−5軽鎖可変領域)、または配列番号154(Ab−16重鎖可変領域)、および/または配列番号152(Ab−16軽鎖可変領域)、または配列番号182(Ab−14重鎖可変領域)および/または配列番号180(Ab−14軽鎖可変領域)、または配列番号208(Ab−19重鎖可変領域)および/または配列番号207(Ab−19軽鎖可変領域)、または配列番号216(Ab−20重鎖可変領域)および/または配列番号214(Ab−20軽鎖可変領域)、または配列番号220(Ab−23重鎖可変領域)および/または配列番号218(Ab−23軽鎖可変領域)、または配列番号238(Ab−22重鎖可変領域)および/または配列番号236(Ab−22軽鎖可変領域)のアミノ酸配列を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−15、Ab−16、Ab−19、Ab−23、またはAb−24のうちのいずれかの成熟重鎖および/または軽鎖可変領域を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、本明細書に記載する、抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−15、Ab−16、Ab−19、Ab−23、またはAb−24のうちのいずれかの重鎖および/または軽鎖、あるいは重鎖および/または軽鎖可変領域をコードするcDNAを、哺乳動物の宿主細胞中に発現することによって得られる、アミノ酸配列を含む。
【0015】
本明細書に記載する製剤のうちのいずれにおいても、いくつかの実施形態では、抗スクレロスチン抗体は、Ab−4もしくはAb−5、Ab−13もしくはAb−14、またはAb−19、Ab−20、もしくはAb−23のうちのいずれかのCDR、または成熟重鎖および軽鎖可変領域、または成熟重鎖および軽鎖を含む。本明細書に記載する製剤のうちのいずれにおいても、いくつかの実施形態では、抗体は、10−7またはそれ以下のKで、配列番号1のスクレロスチンに結合する(より低い数値は、より高い結合親和性を意味する)。
【0016】
本明細書に記載する製剤のうちのいずれにおいても、いくつかの実施形態では、本製剤中の抗体は、少なくとも120mg/mL、または少なくとも140mg/mLの濃度で存在する。本明細書に記載する製剤のうちのいずれにおいても、いくつかの実施形態では、本製剤の絶対粘度は、約8cP以下、または約6cP以下である。代替の実施形態では、本製剤中の抗体は、約70mg/mL〜約130mg/mLの濃度で存在し、本製剤は、約10cP以下の絶対粘度を有する。
【0017】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する製剤のうちのいずれも、約4%w/v〜約6%の範囲の量の、例えばスクロース等のポリオールをさらに含む。いくつかの実施形態では、本製剤は、約9%のスクロースを含む。いくつかの実施形態では、本明細書に記載する製剤のうちのいずれも、任意で、他の薬学的に許容される賦形剤、例えば、塩、緩衝液、アミノ酸、安定剤、ポリオール、他の等張化剤、界面活性剤、充填剤、抗凍結剤、リオプロテクタント、抗酸化剤、金属イオン、キレート剤、および/または防腐剤を含む。いくつかの実施形態では、本製剤は、0.05重量%未満の界面活性剤を有する。
【0018】
本明細書に記載する製剤のうちのいずれにおいても、いくつかの実施形態では、本製剤は、約4.5〜約6、または約5〜約6、または約5〜約5.5の範囲のpHを有する。いくつかの実施形態では、本製剤は、5.2のpHを有する。
【0019】
また、軟骨形成不全症、鎖骨頭蓋骨形成不全症、内軟骨腫症、線維性骨異形成、ゴーシェ病、低リン酸血症性くる病、マルファン症候群、遺伝性多発性外骨腫、神経線維腫症、骨形成不全症、大理石骨病、骨斑紋症、硬化病変、偽関節、化膿性骨髄炎、歯周病、抗てんかん薬誘発性骨量減少、原発性もしくは二次性副甲状腺機能亢進症、家族性副甲状腺機能亢進症候群、無重力誘発性骨量減少、男性の骨粗鬆症、閉経後骨量減少、変形性関節炎、腎性骨ジストロフィー、骨の浸潤性疾患、口腔の骨量減少、顎骨壊死、若年性パジェット病、メロレオストーシス、代謝性骨疾患、肥満細胞症、鎌状赤血球貧血/病、臓器移植関連骨量減少、腎臓移植関連骨量減少、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、てんかん、若年性関節炎、サラセミア、ムコ多糖症、ファブリー病、ターナー症候群、ダウン症候群、クラインフェルター症候群、ハンセン病、ペルテス病、青年期特発性脊柱側弯症、乳児期発症多系統炎症性疾患、ウィンチェスター症候群、メンケス病、ウィルソン病、虚血性骨疾患(レッグカルペペルテス病もしくは局所性移動性骨粗鬆症等)、貧血状態、ステロイドによって引き起こされる状態、グルココルチコイド誘発性骨量減少、ヘパリン誘発性骨量減少、骨髄障害、壊血病、栄養不良、カルシウム欠乏症、骨粗鬆症、骨減少症、アルコール依存症、慢性肝疾患、閉経後の状態、慢性炎症状態、関節リウマチ、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、炎症性大腸炎、クローン病、希発月経、無月経、妊娠、糖尿病、甲状腺機能亢進症、甲状腺障害、副甲状腺障害、クッシング病、末端肥大症、性腺機能低下症、運動不足もしくは非活動、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、局所性骨粗鬆症、骨軟化症、関節置換術と関連する骨量減少、HIVと関連する骨量減少、成長ホルモンの減少と関連する骨量減少、嚢胞性線維症と関連する骨量減少、化学療法と関連する骨量減少、腫瘍誘発性骨量減少、癌と関連する骨量減少、ホルモン除去による骨量減少、多発性骨髄腫、薬物誘発性骨量減少、神経性無食欲症、疾患関連顔面骨量減少、疾患関連頭部骨量減少、疾患関連顎骨量減少、疾患関連頭蓋骨量減少、老化と関連する骨量減少、老化と関連する顔面骨量減少、老化と関連する頭部骨量減少、老化と関連する顎骨量減少、老化と関連する頭蓋骨量減少、または宇宙旅行と関連する骨量減少が挙げられるがこれらに限定されない、骨密度の低下と関連するいかなる疾患も治療するために、本明細書に記載する製剤を使用する方法を本明細書に記載する。
【0020】
本明細書に記載する製剤は、いくつかの実施形態では、整形外科手術、歯科手術、インプラント手術、関節置換術、骨移植術、骨美容整形、ならびに骨折治癒、癒着不能治癒、遷延治癒、および顔面再建術等の骨修復における結果を改善するのに有用である。1つ以上の製剤が、処置、置換、移植、手術、または修復の前、間、および/または後に投与されてもよい。
【0021】
そのような方法は、治療上有効な量、例えば、骨密度を改善するために有効な量の製剤を投与することを含んでもよく、さらに第二の治療剤を投与することを含みうる。
【0022】
また、本明細書に記載する製剤を含むバイアル、キット、または容器、例えば、充填済みシリンジまたは注入デバイス、および任意で、患者の体重1kg当たり約0.5〜20mg、または0.5〜10mg用量を達成するために必要な、適切な体積または量の製剤を使用するための使用説明書を含むラベルを本明細書に開示する。
【0023】
本明細書中の種々の実施形態が、「含む」という用語を用いて示される一方で、種々の状況下で、関連実施形態はまた、「から成る」または「から本質的になる」という用語を用いて記載され得ることを理解されたい。「a」または「an」という用語は、1つ以上を指すことに留意されたく、例えば、「免疫グロブリン分子(an immunoglobulin molecule)」は、1つ以上の免疫グロブリン分子(one or more immunoglobulin molecules)を表すと理解される。したがって、「a(または「an」)」、「1つ以上(one or more)」、および「少なくとも1つ」という用語は、本明細書中で互換的に使用され得る。
【0024】
また、値の範囲を表す時、表されている数字は、その範囲内で見られる個別の値であり得ることも理解されたい。例えば、「約pH4〜約pH6のpH」は、pH4、4.2、4.6、5.1、5.5等、およびそのような値の間のいかなる値であってもよいが、これらに限定されない。さらに、「約pH4〜約pH6のpH」は、当該製剤のpHが、保存中、2pHの単位をpH4〜pH6の範囲で変化させることを意味すると解釈されるべきではなく、むしろ、1つの値が、溶液のpHに対してその範囲で選択されてもよく、そのpHは、だいたいそのpHで緩衝化された状態を保つ。いくつかの実施形態では、「約」という用語が使用される時、挙げられた数値+または−挙げられた数値の5%、10%、15%、またはそれ以上を意味する。目的とする実際の変動は、文脈から決定することができる。
【0025】
本明細書に記載する範囲のいずれにおいても、その範囲の端点は、その範囲内に含まれる。しかしながら、その表現は、低いおよび/または高い端点が除外される同一の範囲も考慮する。本発明のさらなる特徴および変化形は、図面および詳細な説明を含む本願全体から、当業者には明らかとなり、全てのそのような特徴は、本発明の態様として意図される。同様に、本明細書に記載する本発明の特徴は、特徴の組み合わせが本発明の態様または実施形態として具体的に上記されるかどうかにかかわらず、同様に本発明の態様として意図されるさらなる実施形態に組み替えることができる。また、本発明に不可欠であると本明細書に記載されるような限定のみが、そのようなものと見なされるべきであり、不可欠であると本明細書に記載されていない、限定を含まない本発明の変化形は、本発明の態様として意図される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
粘度を低減するためにカルシウム塩、および/または酢酸塩または緩衝液を含有する、高濃度の抗体を含む製剤と、これらの製剤を使用する方法と、これらの製剤を含む容器またはキットとを本明細書に記載する。
【0027】
I.製剤中の抗体
いくつかの実施形態では、本製剤中の抗スクレロスチン抗体は、少なくとも約70mg/mL、約71mg/mL、約72mg/mL、約73mg/mL、約74mg/mL、約75mg/mL、約76mg/mL、約77mg/mL、約78mg/mL、約79mg/mL、約80mg/mL、約81mg/mL、約82mg/mL、約83mg/mL、約84mg/mL、約85mg/mL、約86mg/mL、約87mg/mL、約88mg/mL、約89mg/mL、約90mg/mL、約91mg/mL、約92mg/mL、約93mg/mL、約94mg/mL、約95mg/mL、約96mg/mL、約97mg/mL、約98mg/mL、約99mg/mL、約100mg/mL、約101mg/mL、約102mg/mL、約103mg/mL、約104mg/mL、約105mg/mL、約106mg/mL、約107mg/mL、約108mg/mL、約109mg/mL、約110mg/mL、約111mg/mL、約112mg/mL、約113mg/mL、約114mg/mL、約115mg/mL、約116mg/mL、約117mg/mL、約118mg/mL、約119mg/mL、約120mg/mL、約121mg/mL、約122mg/mL、約123mg/mL、約124mg/mL、約125mg/mL、約126mg/mL、約127mg/mL、約128mg/mL、約129mg/mL、約130mg/mL、約131mg/mL、約132mg/mL、約132mg/mL、約133mg/mL、約134mg/mL、約135mg/mL、約136mg/mL、約137mg/mL、約138mg/mL、約139mg/mL、約140mg/mL、約141mg/mL、約142mg/mL、約143mg/mL、約144mg/mL、約145mg/mL、約146mg/mL、約147mg/mL、約148mg/mL、約149mg/mL、約150mg/mL、約151mg/mL、約152mg/mL、約153mg/mL、約154mg/mL、約155mg/mL、約156mg/mL、約157mg/mL、約158mg/mL、約159mg/mL、または約160mg/mLの濃度で存在し、最大で、例えば、約300mg/mL、約290mg/mL、約280mg/mL、約270mg/mL、約260mg/mL、約250mg/mL、約240mg/mL、約230mg/mL、約220mg/mL、約210mg/mL、約200mg/mL、約190mg/mL、約180mg/mL、または約170mg/mLにまで及んでもよい。約70mg/mL〜約250mg/mL、約70mg/mL〜約200mg/mL、約70mg/mL〜約160mg/mL、約100mg/mL〜約250mg/mL、約100mg/mL〜約200mg/mL、または約100mg/mL〜約180mg/mLが挙げられるがこれらに限定されない、上記の端点の組み合わせを特徴付けるいかなる範囲も考慮される。
【0028】
抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−1、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−13、Ab−14、Ab−15、Ab−16、Ab−17、Ab−18、Ab−19、Ab−20、Ab−21、Ab−22、Ab−23、およびAb−24は、米国特許出願公開第2007/0110747号にすでに記載されており、配列表を含むその開示は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0029】
本明細書に記載する抗スクレロスチン抗体は、10−6もしくはそれ以下、または10−7もしくはそれ以下、または10−8もしくはそれ以下、または10−9もしくはそれ以下のKで、配列番号1のスクレロスチンに結合する(より低い数値は、より高い結合親和性を意味する)。親和性は、Biacore技術によるものを含む、当該技術分野で既知のいかなる手段によっても決定することができる。
【0030】
いくつかの例示的な実施形態では、本抗体は、抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−15、Ab−16、Ab−19、Ab−23、またはAb−24のうちのいずれかの重鎖および/または軽鎖を含む。定常領域を含む、抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−15、Ab−16、Ab−17、Ab−19、Ab−23、およびAb−24の成熟完全長軽鎖のアミノ酸配列は、配列番号8、22、32、42、52、62、80、88、98、108、118、128、138、148、166、176、184、70、210 222、および246にそれぞれ記載される。定常領域を含む、抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−15、Ab−16、Ab−19、Ab−23、およびAb−24の成熟完全長重鎖のアミノ酸配列は、配列番号10、24、34、44、54、64、82、90、100、110、120、130、140、150、168、178、186、72、224、および248にそれぞれ記載される。
【0031】
定常領域を含む、抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−15、Ab−16、Ab−19、Ab−23、およびAb−24の完全長軽鎖をコードする、対応するcDNA配列は、配列番号7、21、31、41、51、61、79、87、97、107、117、127、137、147、165、175、183、69、209、221、および245にそれぞれ記載される。抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−15、Ab−16、Ab−19、Ab−23、およびAb−24の定常領域を含む完全長重鎖をコードする、対応するcDNA配列は、配列番号9、23、33、43、53、63、81、89、99、109、119、129、139、149、167、177、185、71、211、223、および247にそれぞれ記載される。
【0032】
他の例示的な実施形態では、本抗体は、抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−15、Ab−16、Ab−17、Ab−19、Ab−21、Ab−23、またはAb−24のうちのいずれかの重鎖および/または軽鎖可変領域を含む。例えば、本抗体は、配列番号14(Ab−1重鎖可変領域)および/または配列番号12(Ab−1軽鎖可変領域)、配列番号68(Ab−15重鎖可変領域)および/または配列番号66(Ab−15軽鎖可変領域)、または配列番号86(Ab−5重鎖可変領域)および/または配列番号84(Ab−5軽鎖可変領域)、または配列番号154(Ab−16重鎖可変領域)および/または配列番号152(Ab−16軽鎖可変領域)、または配列番号182(Ab−14重鎖可変領域)および/または配列番号180(Ab−14軽鎖可変領域)、または配列番号208(Ab−19重鎖可変領域)および/または配列番号207(Ab−19軽鎖可変領域)、または配列番号216(Ab−20重鎖可変領域)および/または配列番号214(Ab−20軽鎖可変領域)、または配列番号220(Ab−23重鎖可変領域)および/または配列番号218(Ab−23軽鎖可変領域)、または配列番号238(Ab−22重鎖可変領域)および/または配列番号236(Ab−22軽鎖可変領域)を含む。
【0033】
いくつかの実施形態では、本抗体は、配列番号1〜5(Ab−AおよびAb−1 CDR)、または15〜20(Ab−B CDR)、または25〜30(Ab−C CDR)、または35〜40(Ab−D CDR)、または45〜50(Ab−2 CDR)、または55〜60(Ab−3およびAb−15 CDR)、または73〜78(Ab−4およびAb−5 CDR)、または91〜96(Ab−6 CDR)、または101〜106(Ab−7 CDR)、または111〜116(Ab−8 CDR)、または121〜126(Ab−9 CDR)、または131〜136(Ab−10 CDR)、または141〜146(Ab−11およびAb−16 CDR)、または159〜164(Ab−12 CDR)、または169〜174(Ab−13およびAb−14 CDR)、または187〜192(Ab−17およびAb−18 CDR)、または201〜206(Ab−19、Ab−20、およびAb−23 CDR)、または225〜229(Ab−21およびAb−22 CDR)、または239〜244(Ab−24 CDR)に記載されるCDRを含む。
【0034】
いくつかの実施形態では、本抗体は、本明細書に記載する、抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−15、Ab−16、Ab−19、Ab−23、またはAb−24のうちのいずれかの重鎖および/または軽鎖、あるいは重鎖および/または軽鎖可変領域をコードするcDNAを、哺乳動物の宿主細胞中に発現することによって得られる、アミノ酸配列を含む。本明細書に記載する製剤のうちのいずれにおいても、いくつかの実施形態では、本抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖から成る、四量体免疫グロブリンである。
【0035】
いくつかの実施形態では、本抗体は、抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−15、Ab−16、Ab−19、Ab−23、またはAb−24のうちのいずれかのCDRを含み、それぞれ、抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−15、Ab−16、Ab−19、Ab−23、またはAb−24の重鎖および/または軽鎖と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む、重鎖および/または軽鎖を含む。いくつかの実施形態では、本抗体は、抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−15、Ab−16、Ab−19、Ab−23、またはAb−24のうちのいずれかのCDRを含み、それぞれ、抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−15、Ab−16、Ab−19、Ab−23、またはAb−24の重鎖および/または軽鎖可変領域と少なくとも75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一のアミノ酸配列を含む、重鎖および/または軽鎖を含む。
【0036】
いくつかの実施形態では、本抗体は:
【0037】
1)抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−1、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−13、Ab−14、Ab−15、Ab−16、Ab−17、Ab−18、Ab−19、Ab−20、Ab−21、Ab−22、Ab−23、またはAb−24のうちのいずれかのCDRH1、CDRH2、CDRH3、CDRL1、CDRL2、および/またはCDRL3のうちのいずれか1つ、2つ、3つ、4つ、5つ、または6つを保持し、任意で、そのようなCDRにおいて、1つまたは2つの変異を含む。
【0038】
2)抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−1、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−13、Ab−14、Ab−15、Ab−16、Ab−17、Ab−18、Ab−19、Ab−20、Ab−21、Ab−22、Ab−23、またはAb−24のうちのいずれかのCDRH1、CDRH2、CDRH3、または重鎖可変領域の全てを保持し、任意で、そのようなCDRにおける、1つまたは2つの変異を含む。
【0039】
3)抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−1、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−13、Ab−14、Ab−15、Ab−16、Ab−17、Ab−18、Ab−19、Ab−20、Ab−21、Ab−22、Ab−23、またはAb−24のうちのいずれかのCDRL1、CDRL2、CDRL3、または軽鎖可変領域の全てを保持し、任意で、そのようなCDRにおける、1つまたは2つの変異を含む。
【0040】
4)例えば、X線結晶学で決定される、抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−1、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−13、Ab−14、Ab−15、Ab−16、Ab−17、Ab−18、Ab−19、Ab−20、Ab−21、Ab−22、Ab−23、もしくはAb−24、または配列番号249のアミノ酸86〜111によって形成されるループ内のアミノ酸と、同一のスクレロスチンのエピトープに結合する。および/または、
【0041】
5)約75%、約80%超、または約81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、もしくは95%超、スクレロスチンに結合するために、抗体Ab−A、Ab−B、Ab−C、Ab−D、Ab−1、Ab−2、Ab−3、Ab−4、Ab−5、Ab−6、Ab−7、Ab−8、Ab−9、Ab−10、Ab−11、Ab−12、Ab−13、Ab−14、Ab−15、Ab−16、Ab−17、Ab−18、Ab−19、Ab−20、Ab−21、Ab−22、Ab−23、またはAb−24と競合する。
【0042】
いくつかの実施形態では、本抗体は、全ての3つの軽鎖CDR、成熟軽鎖可変領域、全ての3つの重鎖CDR、成熟重鎖可変領域、全ての6つのCDR、または成熟軽鎖および成熟重鎖可変領域の両方を含む。いくつかの例示的な実施形態では、1つの抗体からの2つの軽鎖CDRが、異なる抗体からの第3の軽鎖CDRと組み合わされてもよい。あるいは、1つの抗体からのCDRL1を、特に、CDRが高度の相同性を示す場合、異なる抗体からのCDRL2、およびさらに別の抗体からのCDRL3と組み合わせることができる。同様に、1つの抗体からの2つの重鎖CDRが、異なる抗体からの第3の重鎖CDRと組み合わされてもよく、または1つの抗体からのCDRH1を、特に、CDRが高度の相同性を示す場合、異なる抗体からのCDRH2、およびさらに別の抗体からのCDRH3と組み合わせることができる。
【0043】
「抗体」という用語は、無傷抗体またはその結合断片を指す。抗体は、完全抗体分子(完全長重鎖および/または軽鎖を有するポリクローナル、モノクローナル、キメラ、ヒト化、またはヒト型を含む)を含んでもよく、またはその抗原結合断片を含んでもよい。抗体断片は、F(ab’)、Fab、Fab’、Fv、Fc、およびFd断片を含み、単一ドメイン抗体、一本鎖抗体、マキシボディ、ミニボディ、イントラボディ、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、v−NAR、およびビス−scFv(例えば、Hollinger and Hudson,Nature Biotechnology,23(9):1126−1136(2005)を参照されたい)に組み込むことができる。
【0044】
「単離」抗体は、その用語が本明細書で定義されるように、その自然環境の成分から特定および分離された抗体である。その自然環境の汚染成分は、抗体の診断的または治療的使用を妨げる物質であり、酵素、ホルモン、および他のタンパク性または非タンパク性溶質を含み得る。ある特定の実施形態では、本抗体は、(1)抗体の95重量%超、および最も好ましくは、99重量%超まで、(2)N末端もしくは内部アミノ酸配列の少なくとも15残基を得るために十分な程度まで、または(3)クマシーブルー、もしくは好ましくは、銀染色を用いた、還元もしくは非還元条件下でのSDS−PAGEによる均一性まで精製される。単離された天然抗体は、抗体の自然環境の少なくとも1つの成分が存在しないため、組換え細胞内のインサイチュの抗体を含む。しかしながら、通常、単離抗体は、少なくとも1つの精製工程によって調製される。
【0045】
「免疫グロブリン」または「天然抗体」は、四量体糖タンパク質である。天然の免疫グロブリンにおいて、各四量体は、ポリペプチド鎖の2つの相同対から成り、各対は、1つの「軽鎖」(約25kDa)および1つの「重鎖」(約50〜70kDa)を有する。各鎖のアミノ末端部分は、主に抗原認識に関与する、約100〜110、またはそれ以上のアミノ酸の「可変」(「V」)領域を含む。各鎖のカルボキシ末端部分は、主にエフェクタ機能に関与する、定常領域を画定する。免疫グロブリンは、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に応じて、異なるクラスに分けることができる。重鎖は、ミュー(μ)、デルタ(Δ)、ガンマ(γ)、アルファ(α)、およびエプシロン(ε)に分類され、それぞれ、IgM、IgD、IgG、IgA、およびIgEとして、抗体のアイソタイプを定義する。これらのうちのいくつかは、サブクラスまたはアイソタイプ、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2にさらに分けることができる。異なるアイソタイプは、異なるエフェクタ機能を有する。例えば、IgG1およびIgG3アイソタイプは、抗体依存性細胞毒性(ADCC)活性を有する。ヒト軽鎖は、カッパ(κ)およびラムダ(λ)軽鎖に分類される。軽鎖および重鎖内で、可変および定常領域は、約12またはそれ以上のアミノ酸の「J」領域によって連結されており、重鎖はまた、約10またはそれ以上のアミノ酸の「D」領域も含む。一般に、Fundamental Immunology,Ch.7(Paul,W.,ed.,2nd ed.Raven Press,N.Y.(1989))を参照されたい。
【0046】
アロタイプは、免疫原性であってもよく、ヒトにおいて特定の対立遺伝子によってコードされる、しばしば定常領域中の抗体配列の変化である。アロタイプは、ヒトIGHC遺伝子のうちの5つ、IGHG1、IGHG2、IGHG3、IGHA2、およびIGHE遺伝子に対して特定されており、それぞれ、G1m、G2m、G3m、A2m、およびEmアロタイプと表される。少なくとも18のGmアロタイプが既知である:nG1m(1)、nG1m(2)、G1m(1、2、3、17)またはG1m(a、x、f、z)、G2m(23)またはG2m(n)、G3m(5、6、10、11、13、14、15、16、21、24、26、27、28)またはG3m(b1、c3、b5、b0、b3、b4、s、t、g1、c5、u、v、g5)。2つのA2mアロタイプ、A2m(1)およびA2m(2)がある。
【0047】
「超可変」領域という用語は、相補性決定領域またはCDRからのアミノ酸残基を指す(すなわち、Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991)によって記載されるような、軽鎖可変ドメイン中の残基24〜34(L1)、50〜56(L2)、および89〜97(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン中の31〜35(H1)、50〜65(H2)、および95〜102(H3))。単一のCDRでさえ、CDRの全てを含有する完全な抗原結合部位よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識し、結合し得る。
【0048】
超可変「ループ」からの残基の代替の定義は、軽鎖可変ドメイン中の26〜32(L1)、50〜52(L2)、および91〜96(L3)、ならびに重鎖可変ドメイン中の26〜32(H1)、53〜55(H2)、および96〜101(H3)として、Chothia et al.,J.Mol.Biol.196:901−917(1987)によって記載される。
【0049】
「骨格」またはFR残基は、超可変領域残基以外の可変領域残基である。
【0050】
「抗体断片」は、無傷免疫グロブリンの一部分、好ましくは、無傷抗体の抗原結合または可変領域を含み、抗体断片から形成される多特異性(二重特異性、三重特異性等)の抗体を含む。免疫グロブリンの断片は、組換えDNA技術によって、または無傷抗体の酵素的もしくは化学的開裂によって生成されてもよい。
【0051】
抗体断片の限定されない実施例としては、Fab、Fab’、F(ab’)、Fv(可変領域)、ドメイン抗体(dAb、VHドメインを含有する)(Ward et al.,Nature 341:544−546,1989)、相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv、単一のポリペプチド鎖上にVHおよびVLドメインを含有する)(Bird et al.,Science 242:423−426,1988、およびHuston et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879−5883,1988、任意で、ポリペプチドリンカーを含む、および任意で、多特異性、Gruber et al.,J.Immunol.152:5368(1994))、一本鎖抗体断片、ダイアボディ(別の鎖の相補的VLおよびVHドメインと対を形成する、単一のポリペプチド鎖上のVHおよびVLドメイン)(欧州特許第EP404,097号、国際公開第WO93/11161号、およびHollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,90:6444−6448(1993))、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ(ペプチドリンカー(ヒンジなし)を介して、またはIgGヒンジを介してCH3に融合されるscFv)(Olafsen,et al.,Protein Eng Des Sel.2004 Apr;17(4):315−23)、線状抗体(タンデムFd断片(VH−CH1−VH−CH1)(Zapata et al.,Protein Eng.,8(10):1057−1062(1995))、キレート組換え抗体(crAb、同一抗原上の2つの隣接エピトープに結合し得る)(Neri et al.,J Mol Biol.246:367−73,1995)、バイボディ(二重特異性Fab−scFv)またはトリボディ(三重特異性Fab−(scFv)(2))(Schoonjans et al.,J Immunol.165:7050−57,2000、Willems et al.,J Chromatogr B Analyt Technol Biomed Life Sci.786:161−76,2003)、イントラボディ(Biocca,et al.,EMBO J.9:101-108,1990、Colby et al.,Proc Natl Acad Sci U S A.101:17616−21,2004)(細胞内に抗体を保持するまたは誘導する細胞シグナル配列も含み得る(Mhashilkar et al,EMBO J 14:1542−51,1995、Wheeler et al.,FASEB J.17:1733−5,2003))、トランスボディ(scFvに融合するタンパク質形質導入ドメイン(PTD)を含有する細胞透過性抗体)(Heng et al.,Med Hypotheses.64:1105−8,2005)、ナノボディ(約15kDaの重鎖可変ドメイン)(Cortez−Retamozo et al.,Cancer Research 64:2853−57,2004)、小モジュール免疫薬剤(SMIP)(国際公開第WO03/041600号、米国特許公開第20030133939号、および米国特許公開第20030118592号)、抗原結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質、ラクダ化抗体(ここで、VHは、ヒンジ、CH1、CH2、およびCH3ドメインを含有する定常領域と再結合する)(Desmyter et al.,J.Biol.Chem.276:26285−90,2001、Ewert et al.,Biochemistry 41:3628−36,2002、米国特許公開第20050136049号および第20050037421号)、VHH含有抗体、重鎖抗体(HCAb、構造H2L2を有する2つの重鎖のホモ二量体)、またその変異体もしくは誘導体、ならびに抗体が所望の生物学的活性を保持する限り、CDR配列等のポリペプチドに結合する特異性抗原を与えるのに十分である、免疫グロブリンの少なくとも一部分を含有するポリペプチドが挙げられる。
【0052】
抗体に関連して使用される「変異体」という用語は、変異体が所望の結合親和性または生物学的活性を保持するという条件で、可変領域および可変領域に相当する部分における少なくとも1つのアミノ酸置換、欠失、または挿入を含有する抗体のポリペプチド配列を指す。さらに、本明細書に記載する抗体は、半減期またはクリアランス、ADCCおよび/またはCDC活性を含む、抗体のエフェクタ機能を修飾するために、定常領域中にアミノ酸修飾を有し得る。そのような修飾は、例えば、癌を治療する際に、薬物動態を強化するか、または抗体の有効性を強化することができる。Shields et al.,J.Biol.Chem.,276(9):6591−6604(2001)を参照されたく、それは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。IgG1の場合、定常領域、特に、ヒンジまたはCH2領域に対する修飾は、ADCCおよび/またはCDC活性を含む、エフェクタ機能を増加または減少させ得る。他の実施形態では、IgG2定常領域を修飾して、抗体−抗原凝集体形成を減少させる。IgG4の場合、定常領域、特に、ヒンジ領域に対する修飾は、半抗体の形成を減少させ得る。
【0053】
本明細書に記載する抗体またはポリペプチドに関連して使用される「修飾」という用語は、1つ以上のアミノ酸変化(置換、挿入、または欠失を含む)、ヘプシジン結合活性を妨げない化学修飾、治療用または診断用薬剤に共役することによる共有結合修飾、標識化(例えば、放射性核種または種々の酵素による)、ペグ化等の共有結合ポリマーの結合(ポリエチレングリコールによる誘導体化)、および非天然アミノ酸の化学合成による挿入または置換を含むが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、本発明の修飾ポリペプチド(抗体を含む)は、本発明の非修飾分子の結合特性を保持するであろう。
【0054】
本発明の抗体またはポリペプチドに関連して使用される「誘導体」という用語は、治療用または診断用薬剤に共役することによる共有結合修飾、標識化(例えば、放射性核種または種々の酵素による)、ペグ化等の共有結合ポリマーの結合(ポリエチレングリコールによる誘導体化)、および非天然アミノ酸の化学合成による挿入または置換によって共有結合的に修飾される抗体またはポリペプチドを指す。いくつかの実施形態では、本発明の誘導体は、本発明の非誘導体化分子の結合特性を保持するであろう。
【0055】
二重特異性または他の多重特異性抗体を作製するための方法は、当該技術分野で既知であり、化学的架橋結合、ロイシンジッパーの使用(Kostelny et al.,J.Immunol.148:1547−1553,1992)、ダイアボディ技術(Hollinger et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−48,1993)、scFv二量体(Gruber et al.,J.Immunol.152:5368,1994)、線状抗体(Zapata et al.,Protein Eng.8:1057−62,1995)、およびキレート組換え抗体(Neri et al.,J Mol Biol.246:367−73,1995)が挙げられる。
【0056】
タンパク質および非タンパク質薬剤は、当該技術分野で既知である方法によって、抗体に共役されてもよい。共役方法としては、直接結合、共有結合リンカーを介した結合、および特異的結合対メンバー(例えば、アビジン−ビオチン)が挙げられる。そのような方法としては、例えば、ドキソルビシンの共役に関して、Greenfield et al.,Cancer Research 50,6600−6607(1990)によって記載されるもの、ならびに白金化合物の共役に関して、Arnon et al.,Adv.Exp.Med.Biol.303,79−90(1991)およびKiseleva et al.,Mol.Biol.(USSR)25,508−514(1991)によって記載されるものが挙げられる。
【0057】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する抗体および抗体断片は、例えば、天然の抗体、またはFabもしくはscFvファージディスプレイライブラリから得られる。「ヒト化抗体」というフレーズは、非ヒト抗体、典型的には、齧歯類モノクローナル抗体に由来する抗体を指し、それは、配列をよりヒトに近い状態にする修飾を含む。あるいは、ヒト化抗体は、キメラ抗体に由来し得る。
【0058】
抗体断片は、Vドメインから成るドメイン抗体(dAb)断片(Ward et al.,Nature 341:544−546,1989)を含み、「線状抗体」は、一対の抗原結合領域を形成する、一対のタンデムFd断片(V−C1−V−C1)を含む。線状抗体は、二重特異性または単一特異性であり得る(Zepata et al.Protein Eng. 8:1057−62(1995))。ペプチドリンカー(ヒンジなし)を介して、またはIgGヒンジを介して、CH3に融合されるscFvから成る「ミニボディ」は、Olafsen,et al.,Protein Eng Des Sel.2004 Apr;17(4):315−23に記載されている。「マキシボディ」は、免疫グロブリンのFc領域に共有結合している二価のscFvを指し、例えば、Fredericks et al,Protein Engineering,Design & Selection,17:95−106(2004)およびPowers et al.,Journal of Immunological Methods,251:123−135(2001)を参照されたい。重鎖抗体、例えば、VHドメイン、またはH(「重鎖抗体」もしくは「HCAbs」と称される)、またはラクダ化VHH(例えば、Reichman,etal.,J Immunol Methods 1999,231:25−38、Desmyter et al.,J.Biol.Chem.276:26285−90,2001、Ewert et al.,Biochemistry 41:3628−36,2002を参照されたい)、ナノボディ(Cortez−Retamozo et al.,Cancer Research 64:2853−57,2004)。イントラボディは、細胞内発現を示し、細胞内タンパク質機能を操作することができる、一本鎖抗体である(Biocca,et al.,EMBO J.9:101-108,1990、Colby et al.,Proc Natl Acad Sci USA.101:17616−21,2004、Mhashilkar et al,EMBO J 14:1542−51,1995、Wheeler et al.(FASEB J.17:1733−5.2003))。トランスボディは、タンパク質形質導入ドメイン(PTD)が一本鎖可変断片(scFv)抗体と融合している、細胞透過性抗体である(Heng et al.,(Med Hypotheses.64:1105−8,2005))。SMIP、または標的タンパク質に特異的な結合ドメイン免疫グロブリン融合タンパク質は、抗体エフェクタ機能を実行するために必要な免疫グロブリンドメインに融合する抗原結合ドメインを含む、一本鎖ポリペプチドである。例えば、国際公開第WO03/041600号、米国特許公開第20030133939号、および米国特許公開第20030118592号を参照されたい。
【0059】
II.カルシウムおよび酢酸塩または緩衝液
比較的低濃度の酢酸カルシウムを、選択された抗体の製剤に添加することによって、製剤の粘度を低減することがわかっている。ここで使用される「粘度」という用語は、「絶対粘度」を指す。時に動的または単純粘度と呼ばれる絶対粘度は、運動学的粘度および流体密度の積である:絶対粘度=運動学的粘度×密度。運動学的粘度の次元は、L/Tであり、Lは長さであり、Tは時間である。一般的に、運動学的粘度は、センチストーク(cSt)で表される。運動学的粘度のSI単位は、mm/sであり、それは、1cStである。絶対粘度は、センチポアズ(cP)の単位で表される。絶対粘度のSI単位は、ミリパスカル−秒(mPa−s)であり、1cP=1mPa-sである。
【0060】
そのような粘度測定は、抗体製剤への粘度低下剤の添加後、時間単位(例えば、1〜23時間)、日単位(例えば、1〜10日間)、週単位(例えば、1〜5週間)、または月単位(例えば、1〜12ヶ月間)、または年単位(例えば、1〜2年間、1〜3年間)で行われてもよい。粘度測定は、保存または投与温度、例えば、2〜8℃または25℃(室温)で行われてもよい。いくつかの実施形態では、保存および/または投与温度での液体または再構成液体製剤の絶対粘度は、15cP以下、または14、13、12、11、10、9、8、7、6、5、もしくは4cP以下である。
【0061】
いくつかの実施形態では、タンパク質製剤の粘度は、カルシウム塩、および/または酢酸塩(および/または緩衝液)の添加の前および後に測定される。粘度を測定する方法は、当該技術分野でよく知られており、例えば、毛細管粘度計またはコーンプレートレオメータの使用が挙げられる。同一の方法が試験および対照製剤を比較するために使用されるという条件で、いかなる方法が使用されてもよい。
【0062】
抗体製剤の粘度は、製剤へのカルシウム塩、および/または酢酸塩(および/または緩衝液)の添加によって低減され得る。抗体製剤の粘度は、カルシウム塩、および/または酢酸塩(および/または緩衝液)を含まない、比較抗体製剤の粘度と比較して、約5%、約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%、約40%、約45%、約50%、約55%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、および約90%、低減され得る。
【0063】
例示的なカルシウム塩としては、酢酸カルシウム、炭酸カルシウム、および塩化カルシウムが挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、カルシウム塩は、少なくとも0.5mM、1mM、2mM、3mM、4mM、5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、または10mMの濃度である。ある特定の実施形態では、カルシウム塩の濃度は、11mM、12mM、13mM、14mM、15mM、16mM、17mM、18mM、19mM、20mM、21mM、22mM、23mM、24mM、または25mM以下である。約0.5mM〜約10mM、約5mM〜約10mM、または約5mM〜約15mMが挙げられるがこれらに限定されない、上記の端点の組み合わせを特徴付けるいかなる範囲も考慮される。いくつかの実施形態では、カルシウム塩は、酢酸塩および/または緩衝液を含まない抗体の同一製剤と比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、またはそれ以上、抗体製剤の粘度を低減するか、あるいは10cP以下、または9、8、7、6、もしくは5cP以下の粘度を達成する、濃度で存在する。ある特定の実施形態では、カルシウム塩は、低濃度で添加され、タンパク質製剤に悪影響を及ぼさないようにする。例えば、20mMまたはそれ以上の塩化カルシウムまたは塩化マグネシウム濃度で、タンパク質は、低い保存温度(2〜8℃)でゲルを形成する可能性がある。したがって、粘度が低減された粘度製剤の目的とする保存温度で低減されるカルシウム塩の濃度が、概して選択される。
【0064】
本明細書に記載する範囲の全てにおいて、記載する陽イオン、陰イオン、または塩の濃度は、投与されることになっている液体または再構成液体製剤中の最終濃度である。本明細書に記載する範囲のいずれにおいても、範囲の端点は、その範囲内に含まれる。しかしながら、その表現は、低いおよび/または高い端点が除外される同一の範囲も考慮する。
【0065】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する製剤は、カルシウム塩に加えて、少なくとも5mM、6mM、7mM、8mM、9mM、10mM、または15mMの濃度の酢酸緩衝液もさらに含む。いくつかの実施形態では、濃度は、10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、または50mM以下である。約5mM〜約15mM、または約5mM〜約10mMが挙げられるがこれらに限定されない、上記の端点の組み合わせを特徴付けるいかなる範囲も考慮される。緩衝液は、好ましくは、pHを約5〜6、または5〜5.5、または4.5〜5.5に維持する濃度で添加される。製剤中のカルシウム塩が酢酸カルシウムである時、いくつかの実施形態では、酢酸塩の全濃度は、約10mM〜約50mM、または約20mM〜約40mMである。
【0066】
いくつかの態様では、本製剤は、少なくとも約10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、または50mMである、酢酸塩の全濃度を有する。いくつかの実施形態では、酢酸塩の濃度は、約30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、または90mM以下である。約10mM〜約50mM、約20mM〜約50mM、約20mM〜約40mM、約30mM〜約50mM、または約30mM〜約75mMが挙げられるがこれらに限定されない、上記の端点の組み合わせを特徴付けるいかなる範囲も考慮される。いくつかの実施形態では、酢酸塩または緩衝液は、酢酸カルシウムおよび/または酢酸ナトリウムを含む。あるいは、いくつかの実施形態では、酢酸塩および/または緩衝液は、酢酸塩および/または緩衝液を含まない抗体の同一製剤と比較して、少なくとも30%、40%、50%、60%、またはそれ以上、抗体製剤の粘度を低減するか、あるいは10cP以下、または9、8、7、6、もしくは5cP以下の粘度を達成する、濃度で存在する。限定されない実施例として、10mMの酢酸カルシウムを含有する溶液は、カルシウム陽イオンの二価性質のため、20mMの酢酸塩陰イオンおよび10mMのカルシウム陽イオンを有し、一方で、10mMの酢酸ナトリウムを含有する溶液は、10mMのナトリウム陽イオンおよび10mMの酢酸塩陰イオンを有する。
【0067】
いくつかの実施形態では、溶液中のイオン(陽イオンおよび陰イオン)の全濃度は、少なくとも10mM、15mM、20mM、25mM、30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、または85mMである。いくつかの実施形態では、イオンの全濃度は、約30mM、35mM、40mM、45mM、50mM、55mM、60mM、65mM、70mM、75mM、80mM、85mM、90mM、95mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mM、または200mM以下である。約30mM〜約60mM、または約30mM〜約70mM、または約30mM〜約80mM、または約40mM〜約150mM、または約50mM〜約150mMが挙げられるがこれらに限定されない、上記の端点の組み合わせを特徴付けるいかなる範囲も考慮される。限定されない実施例として、10mMの酢酸カルシウムの溶液は、30mMの全濃度のイオン(10mMの陽イオンおよび20mMの陰イオン)を有する。
【0068】
本明細書に記載する製剤のうちのいずれにおいても、いくつかの実施形態では、全オスモル濃度は、500mOsm/L、450mOsm/L、400mOsm/L、または350mOsm/L以下であり、好ましくは、等張に近く、例えば、250−350mOsm/Lである。
【0069】
さらに、当該技術分野で既知の、または本明細書に記載する、他の賦形剤を製剤に含むことができる。
【0070】
III.製剤中の賦形剤
タンパク質製剤は、概して、非経口的に投与される。非経口的に投与される場合、それらは、滅菌されていなければならない。滅菌希釈剤は、薬学的に許容され(ヒトへの投与に対して安全かつ非毒性)、凍結乾燥後の製剤再構成等、液体製剤の調製に有用である、液体を含む。例示的な希釈剤としては、滅菌水、注射用静菌水(BWFI)、pH緩衝液(例えば、リン酸緩衝生理食塩水)、滅菌生理食塩水、リンガー溶液、またはデキストロース溶液が挙げられる。希釈剤は、塩の水溶液および/または緩衝液を含むことができる。
【0071】
賦形剤は、それらが薬物製品の安定性、送達、および製造性を与えるか、または強化するため、本製剤中に含まれる、添加剤である。それらが含まれる理由にかかわらず、賦形剤は、薬物製品の不可欠な要素であり、したがって、安全であり、患者の耐容性が良好である必要がある。タンパク質薬物に対して、賦形剤が薬物の有効性および免疫原性の両方に影響をもたらす可能性があるため、賦形剤の選択は、特に重要である。したがって、タンパク質製剤は、好適な安定性、安全性、および市場性を提供する、賦形剤の適切な選択を伴って開発される必要がある。
【0072】
本明細書に記載する賦形剤は、それらの化学型、あるいは製剤中のそれらの機能的役割によって整理される。各賦形剤の種類を考察するとき、安定化方法の簡単な説明が提供される。本明細書に提供する教示および指導を与えられた場合、当業者は、望ましくないレベルに粘度を増加させることなく、賦形剤の量および範囲を容易に変更することができるであろう。賦形剤は、最終溶液の所望のオスモル濃度(すなわち、等張、低張もしくは高張)、pH、所望の安定性、凝集もしくは分解もしくは沈殿への耐性、凍結、凍結乾燥、もしくは高温の条件下での保護、または他の特性を達成するように選択されてもよい。種々の種類の賦形剤が当該技術分野で既知である。例示的な賦形剤としては、塩、アミノ酸、他の等張化剤、界面活性剤、安定剤、充填剤、抗凍結剤、リオプロテクタント、抗酸化剤、金属イオン、キレート剤、および/または防腐剤が挙げられる。
【0073】
さらに、特定の賦形剤が、製剤中で、例えば、パーセント(%)w/vによって報告される場合、当業者は、その賦形剤の同等のモル濃度もまた考慮されることを認識するであろう。
【0074】
A.緩衝液
最適な安定性のpH範囲は、予備処方研究中の早期に特定される必要がある。加速安定性試験および熱量測定スクリーニング等のいくつかの方法が、この試みに有用であることが証明されている(Remmele R.L.Jr.,et al.,Biochemistry,38(16):5241−7(1999))。いったん製剤が仕上げられると、薬物製品は、その保存可能期間全体を通して、所定の仕様内で製造および維持されなければならない。したがって、ほとんどの場合、緩衝剤が製剤中のpHを調整するために採用される。
【0075】
タンパク質製剤中の緩衝液として、有機酸、リン酸塩、およびトリスが通常採用されてきた(表1)。緩衝種の緩衝能は、pKaに等しいpHで最大であり、pHがこの値から増加または減少するにつれて減少する。緩衝能の90%は、そのpKaの1pH単位内に存在する。緩衝能はまた、緩衝液濃度の増加と比例的に増加する。
【0076】
緩衝液を選択する時に、いくつかの要因が考慮される必要がある。何よりもまず、緩衝種およびその濃度は、そのpKaおよび所望の製剤pHに基づき定義される必要がある。緩衝液がタンパク質薬物、他の製剤賦形剤と適合し、いかなる分解反応も触媒しないことを確実にすることも、同様に重要である。近年、クエン酸塩およびコハク酸塩等のポリアニオン系カルボン酸塩緩衝液が、タンパク質の側鎖残基と共有結合付加体を形成することが示されている。考慮されるべき第3の重要な特徴は、緩衝液が誘発し得る刺痛および刺激の感覚である。例えば、クエン酸塩は、注射時に刺痛を引き起こすことが知られている(Laursen T,et al.,Basic Clin Pharmacol Toxicol.,98(2):218−21(2006))。製剤が投与時に血液中に急速に希釈される、静脈内経路によって投与される場合よりも、薬液が比較的長い期間にわたって部位に留まる、皮下および筋肉内経路を介して投与される薬物に対して、刺痛および刺激の可能性はより大きい。直接静脈注射によって投与される製剤に対して、緩衝液(およびいかなる他の製剤成分)の総量は、監視される必要がある。例えば、リン酸カリウム緩衝液の形態で投与されるカリウムイオンが、患者における心臓血管系作用を誘発する可能性があることが報告されている(Hollander−Rodriguez JC,et al.,Am.Fam.Physician.,73(2):283−90(2006))。
表1:一般的に使用される緩衝剤およびそれらのpKa値
【表1】
【0077】
本製剤中に存在する緩衝系は、生理学的に適合するように、かつ所望のpHを維持するように選択される。
【0078】
pH緩衝化合物は、所与のレベルで製剤のpHを維持するために好適な任意の量で存在してもよい。pH緩衝剤、例えば、酢酸塩は、0.1mM〜1000mM(1M)の濃度で存在してもよい。一実施形態では、pH緩衝剤は、少なくとも0.1、0.5、0.7、0.8、0.9、1.0、1.2、1.5、1.7、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、500、700、または900mMである。別の実施形態では、pH緩衝剤の濃度は、1、1.2、1.5、1.7、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、40、50、60、70、80、または90mM〜100mMである。さらに別の実施形態では、pH緩衝剤の濃度は、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、または40mM〜50mMである。さらに別の実施形態では、pH緩衝剤の濃度は、10mMである。
【0079】
本明細書に示される、製剤を緩衝するために使用される他の例示的なpH緩衝剤としては、グリシン、グルタミン酸塩、コハク酸塩、リン酸塩、酢酸塩、およびアスパラギン酸塩が挙げられるがこれらに限定されない。ヒスチジンおよびグルタミン酸等のアミノ酸もまた、緩衝剤として使用することができる。
【0080】
B.安定剤および充填剤
安定剤は、抗凍結剤、リオプロテクタント、およびガラス形成剤としての機能を果たすことができる化合物群を含む。抗凍結剤は、低温での凍結中または凍結状態において、タンパク質を安定化させるように作用する。リオプロテクタントは、凍結乾燥の脱水段階中にタンパク質の天然様配座特性を保つことによって、タンパク質を凍結乾燥固形投薬形態で安定化させる。ガラス状態特性は、温度の関数としてのそれらの緩和特性に応じて、「頑丈」または「脆弱」に分類されてきた。抗凍結剤、リオプロテクタント、およびガラス形成剤が、安定性を与えるために、タンパク質と同じ相のままであることが重要である。糖、ポリマー、およびポリオールは、このカテゴリーに入り、時に全ての3つの役割を果たすことができる。
【0081】
ポリオールは、糖(例えば、マンニトール、スクロース、ソルビトール)、ならびに他の多価アルコール(例えば、グリセロールおよびプロピレングリコール)を含む、賦形剤群を包含する。ポリマーのポリエチレングリコール(PEG)は、このカテゴリーに含まれる。ポリオールは、液体および凍結乾燥非経口タンパク質製剤の両方において、安定化賦形剤および/または等張性剤として一般的に使用される。ポリオールは、物理的および化学的分解経路の両方からタンパク質を保護することができる。
【0082】
例示的なC3−C6ポリオールとしては、プロピレングリコール、グリセリン(グリセロール)、トレオース、トレイトール、エリトロース、エリトリトール、リボース、アラビノース、アラビトール、リキソース、マルチトール、ソルビトール、ソルボース、グルコース、マンノース、マンニトール、レブロース、デキストロース、マルトース、トレハロース、フルクトース、キシリトール、イノシトール、ガラクトース、キシロース、フルクトース、スクロース、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。高次糖としては、デキストラン、プロピレングリコール、またはポリエチレングリコールが挙げられる。フルクトース、マルトース、またはガラクトース等の還元糖は、非還元糖よりも容易に酸化する。糖アルコールのさらなる例は、グルシトール、マルチトール、ラクチトール、またはイソマルツロースである。さらなる例示的なリオプロテクタントとしては、グリセリンおよびゼラチンが挙げられ、糖としては、メリビオース、メレジトース、ラフィノース、マンノトリオース、およびスタキオースが挙げられる。還元糖の例としては、グルコース、マルトース、ラクトース、マルツロース、イソマルツロース、およびラクツロースが挙げられる。非還元糖の例としては、糖アルコールおよび他の直鎖多価アルコールから選択されるポリヒドロキシ化合物の非還元グリコシドが挙げられる。モノグリコシドとしては、ラクトース、マルトース、ラクツロース、およびマルツロース等の二糖類の還元によって得られる化合物が挙げられる。
【0083】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する製剤はまた、製剤に添加される安定剤(または安定剤の組み合わせ)を含む。「安定剤」という用語は、水性および固体状態での化学的分解 (例えば、自己消化、脱アミド化、酸化等)と同様に、凝集または他の物理的分解を防止することができる賦形剤を意味する。医薬組成物中で従来採用される安定剤としては、スクロース;トレハロース;マンノース;マルトース;ラクトース;グルコース;ラフィノース;セロビオース;ゲンチオビオース;イソマルトース;アラビノース;グルコサミン;フルクトース;マンニトール;ソルビトール;グリシン;アルギニンHCL;デキストラン、でんぷん、ヒドロキシエチルでんぷん、シクロデキストリン、N−メチルピロリデン、セルロース、およびヒアルロン酸等を含む、ポリヒドロキシ化合物;塩化ナトリウム(Carpenter et al.,Develop.Biol.Standard 74:225,(1991))が挙げられるがこれらに限定されない。一実施形態では、安定剤は、約0%〜約40%w/vの濃度で取り込まれる。別の実施形態では、安定剤は、少なくとも0.5、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、30、または40%w/vの濃度で取り込まれる。別の実施形態では、安定剤は、約1、2、3、4、5、6、7、8、9%〜約10%w/vの濃度で取り込まれる。さらに別の実施形態では、安定剤は、約2%〜約6%w/vの濃度で取り込まれる。さらに別の実施形態では、安定剤は、約4%w/vの濃度で取り込まれる。さらに別の実施形態では、安定剤は、約6%w/vの濃度で取り込まれる。
【0084】
必要に応じて、本製剤はまた、凍結乾燥「ケーキ」を形成するのに好適な、適量の充填剤およびオスモル濃度調整剤も含む。充填剤は、結晶性(例えば、マンニトール、グリシン)または非晶質(例えば、スクロース、デキストラン等のポリマー、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース)のいずれかであってもよい。他の例示的な充填剤としては、ラクトース、ソルビトール、トレハロース、またはキシリトールが挙げられる。さらなる実施形態では、充填剤は、約0%〜約10%w/vの濃度で取り込まれる。別の実施形態では、充填剤は、少なくとも0.2、0.5、0.7、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5、5.0、5.5、6.0、6.5、7.0、7.5、8.0、8.5、9.0、または9.5%w/vの濃度で取り込まれる。さらなる実施形態では、充填剤は、機械的および医薬的に好適なケーキを生成するように、約1、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、4.5%〜5.0%w/vの濃度で取り込まれる。
【0085】
C.界面活性剤
タンパク質分子は、空気−液体、バイアル−液体、および液体−液体(シリコーン油)の界面において、それらに吸着および変性を起こしやすくさせる表面と相互作用する傾向が強い。この分解経路は、タンパク質濃度に反比例して決まり、表面への吸着を介して、溶性および不溶性タンパク質凝集体の形成または溶液からのタンパク質の損失のいずれかをもたらすことが認められている。容器表面の吸着に加えて、製品の配送および取扱中に起こり得るように、物理的撹拌によって表面誘起分解が悪化する。
【0086】
界面活性剤は、表面誘起分解を防止するために、タンパク質製剤中に一般的に使用される。界面活性剤は、界面位置に対してタンパク質との競合に勝つ能力を有する、両親媒性分子である。界面活性剤分子の疎水性部分は、界面位置(例えば、空気/液体)を占め、一方で、分子の親水性部分は、バルク溶媒に配向した状態のままである。十分な濃度(典型的には、だいたい洗剤の臨界ミセル濃度)で、界面活性剤分子の表面層は、界面における吸着からタンパク質分子を防ぐ働きをする。それによって、表面誘起分解は最小限に抑えられる。もっとも一般的に使用される界面活性剤は、ソルビタンポリエトキシレートの脂肪酸エステル、すなわち、ポリソルベート20およびポリソルベート80 (例えば、Avonex(登録商標)、Neupogen(登録商標)、Neulasta(登録商標))である。2つは、それぞれ、C−12およびC−18と、分子に疎水性を与える脂肪族鎖の長さのみが異なる。したがって、ポリソルベート80は、ポリソルベート20よりも表面活性であり、より低い臨界ミセル濃度を有する。界面活性剤ポロキサマー188もまた、Gonal−F(登録商標)、Norditropin(登録商標)、およびOvidrel(登録商標)等のいくつかの市販されている液体製品中で使用されてきた。
【0087】
洗剤はまた、タンパク質の熱力学的立体配座安定性に影響を及ぼす可能性がある。ここでまた、所与の賦形剤の効果は、タンパク質特異的である。例えば、ポリソルベートは、いくつかのタンパク質の安定性を低減し、他の安定性を増加させることが示されてきた。洗剤のタンパク質不安定化は、部分的または全体的に変性したタンパク質の状態との特異的結合に関与し得る洗剤分子の疎水性尾部の観点から、理論的に説明され得る。これらの種類の相互作用は、立体配座平衡のより膨張したタンパク質の状態への移行を引き起こし得る(すなわち、結合するポリソルベートを補完してタンパク質分子の疎水性部分の露出を増加させる)。あるいは、タンパク質の天然状態がいくつかの疎水性表面を示す場合、天然状態に結合する洗剤は、その立体配座を安定化させ得る。
【0088】
ポリソルベートの別の特徴は、それらが本質的に酸化分解を起こしやすい点である。しばしば、原材料として、それらは、タンパク質残基側鎖、特に、メチオニンの酸化を引き起こすのに十分な量の過酸化物を含有する。安定剤の添加から生じる酸化損傷の可能性は、最低有効濃度の賦形剤が製剤中に使用されるべきであるという点を強調する。界面活性剤に関して、所与のタンパク質に対する有効濃度は、安定化機構によって決まる。界面活性剤の安定化機構が表面変性の防止に関連する場合、有効濃度がだいたい洗剤の臨界ミセル濃度になることが想定されている。反対に、安定化機構が特異的なタンパク質−洗剤相互作用と関連する場合、有効な界面活性剤濃度は、タンパク質濃度および相互作用の化学量論に関連する(Randolph T.W.,et al.,Pharm Biotechnol.,13:159−75(2002))。
【0089】
また、凍結および乾燥中の表面関連凝集現象を防止するために、適量の界面活性剤が添加されてもよい(Chang,B,J.Pharm.Sci.85:1325,(1996))。例示的な界面活性剤としては、天然のアミノ酸に由来する界面活性剤を含む、陰イオン、陽イオン、非イオン、双性イオン、および両性界面活性剤が挙げられる。陰イオン界面活性剤としては、ラウリル硫酸ナトリウム、スルホコハク酸ジオクチルナトリウムおよびスルホン酸ジオクチルナトリウム、ケノデオキシコール酸、N−ラウロイルサルコシンナトリウム塩、ドデシル硫酸リチウム、1−オクタンスルホン酸ナトリウム塩、コール酸ナトリウム水和物、デオキシコール酸ナトリウム、およびグリコデオキシコール酸ナトリウム塩が挙げられるがこれらに限定されない。陽イオン界面活性剤としては、塩化ベンザルコニウムまたは塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム一水和物、および臭化ヘキサデシルトリメチルアンモニウムが挙げられるがこれらに限定されない。双性イオン界面活性剤としては、CHAPS、CHAPSO、SB3−10、およびSB3−12が挙げられるがこれらに限定されない。非イオン界面活性剤としては、ジギトニン、Triton X−100、Triton X−114、TWEEN−20、およびTWEEN−80が挙げられるがこれらに限定されない。別の実施形態では、界面活性剤としては、ラウロマクロゴール400、ステアリン酸ポリオキシル40、ポリオキシエチレン水素化ヒマシ油10、40、50、および60、モノステアリン酸グリセロール、ポリソルベート40、60、65、および80、大豆レシチンおよび他のリン脂質(DOPC、DMPG、DMPC、およびDOPG等)、スクロース脂肪酸エステル、メチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースが挙げられる。
【0090】
本明細書に記載する製剤はさらに、個々に、あるいは異なる割合の混合物として、これらの界面活性剤を含んでもよい。一実施形態では、界面活性剤は、約0%〜約5%w/vの濃度で取り込まれる。別の実施形態では、界面活性剤は、少なくとも0.001、0.002、0.005、0.007、0.01、0.05、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.7、0.8、0.9、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、3.5、4.0、または4.5%w/vの濃度で取り込まれる。別の実施形態では、界面活性剤は、約0.001%〜約0.5%w/vの濃度で取り込まれる。さらに別の実施形態では、界面活性剤は、約0.004、0.005、0.007、0.01、0.05、または0.1%w/v〜約0.2%w/vの濃度で取り込まれる。さらに別の実施形態では、界面活性剤は、約0.01%〜約0.1%w/vの濃度で取り込まれる。
【0091】
いくつかの実施形態では、粘度低下は、比較的ほとんどない、または全くない界面活性剤、例えば、0.1%以下の全界面活性剤、または0.05%以下、または0.01%以下で達成される。
【0092】
D.アミノ酸
アミノ酸は、緩衝液、充填剤、安定剤、および抗酸化剤として、タンパク質製剤において多目的に利用されてきた。ヒスチジンおよびグルタミン酸は、タンパク質製剤を、それぞれ5.5〜6.5および4.0〜5.5のpH範囲で緩衝するために採用される。ヒスチジンのイミダゾール基は、pKa=6.0を有し、グルタミン酸側鎖のカルボキシル基は、4.3のpKaを有し、それらを、それらの個々のpH範囲における緩衝に好適なものにする。グルタミン酸は、いくつかの製剤中に見られる(例えば、Stemgen(登録商標))。ヒスチジンは、市販されているタンパク質製剤中に一般的にみられる(例えば、Xolair(登録商標)、Herceptin(登録商標)、Recombinate(登録商標))。それは、注射時に刺痛を起こすことが既知の緩衝液である、クエン酸塩の良い代替品を提供する。興味深いことに、ヒスチジンはまた、液体および凍結乾燥の提示の両方において、高濃度で使用される場合、安定効果を有することも報告されている(Chen B,et al.,Pharm Res.,20(12):1952−60(2003))。ヒスチジン(最大で60mM)はまた、この抗体の高濃度製剤の粘度を低減することが認められた。しかしながら、同一試験において、著者らは、ステンレス鋼容器中の抗体の凍結融解試験中、ヒスチジン含有製剤における凝集および変色の増加を認めた。著者らは、これが、鋼製容器の腐食から溶出された鉄イオンの効果によるものであると考えた。ヒスチジンに関する別の注意点は、それが、金属イオンの存在下で光酸化を受けるということである(Tomita M,et al.,Biochemistry,8(12):5149−60(1969))。製剤中の抗酸化剤としてのメチオニンの使用は、有望と思われる。それは、多数の酸化的ストレスに対して有効であることが認められている(Lam XM,et al.,J Pharm Sci.,86(11):1250−5(1997))。
【0093】
アミノ酸であるグリシン、プロリン、セリン、およびアラニンは、タンパク質を安定化させる。グリシンもまた、凍結乾燥製剤(例えば、Neumega(登録商標)、Genotropin(登録商標)、Humatrope(登録商標))中で一般的に使用される充填剤である。アルギニンは、凝集を阻害するのに有効な薬剤であることが示されており、液体および凍結乾燥製剤の両方において使用されてきた(例えば、Activase(登録商標)、Avonex(登録商標)、Enbrel(登録商標)液体)。
【0094】
E.抗酸化剤
タンパク質残基の酸化は、多数の異なる原因から生じる。特定の抗酸化剤の添加以外に、酸化的なタンパク質の損傷の防止は、大気酸素、温度、光への曝露、および化学汚染等、製造工程および製品の保存全体にわたった多数の要因の慎重な管理を伴う。最も一般的に使用される医薬用抗酸化剤は、還元剤、酸素/フリーラジカルスカベンジャー、またはキレート剤である。治療用タンパク質製剤中の抗酸化剤は、水溶性でなければならず、製品の保存可能期間を通して活性な状態を保たなければならない。還元剤および酸素/フリーラジカルスカベンジャーは、溶液中の活性酸素種を除去することによって機能する。EDTA等のキレート剤は、フリーラジカル形成を促進する微量金属汚染物を結合することによって効果的になり得る。例えば、金属イオンによって触媒されるシステイン残基の酸化を阻害するために、酸性繊維芽細胞増殖因子の液体製剤中でEDTAが使用された。EDTAは、Kineret(登録商標)およびOntak(登録商標)等の市販の製品中に使用されてきた。
【0095】
しかしながら、抗酸化剤それ自体が、タンパク質に対して他の共有結合的または物理的な変化を誘導する可能性がある。多くのそのような事例が、文献に報告されている。還元剤(グルタチオン等)は、分子内ジスルフィド結合の破壊を引き起こす可能性があり、それは、ジスルフィドのシャフリングをもたらし得る。遷移金属イオンの存在下で、アスコルビン酸およびEDTAは、多数のタンパク質およびペプチド中でメチオニン酸化を促進することが示されている(Akers MJ,and Defelippis MR.Peptides and Proteins as Parenteral Solutions.In:Pharmaceutical Formulation Development of Peptides and Proteins.Sven Frokjaer,Lars Hovgaard,editors.Pharmaceutical Science.Taylor and Francis,UK(1999))、Fransson J.R.,J.Pharm.Sci.86(9):4046−1050(1997)、Yin J,et al.,Pharm Res.,21(12):2377−83(2004))。チオ硫酸ナトリウムは、光および温度によって誘発されたrhuMab HER2中のメチオニン酸化のレベルを低減することが報告されている。しかしながら、本研究では、チオ硫酸−タンパク質付加体の形成も報告されている(Lam XM,Yang JY,et al.,J Pharm Sci.86(11):1250−5(1997))。適切な抗酸化剤の選択は、タンパク質の特異的なストレスおよび感受性に従って行われる。
【0096】
F.金属イオン
一般に、遷移金属イオンは、タンパク質中の物理的および化学的分解反応を触媒する可能性があるため、タンパク質製剤中において望ましくない。しかしながら、特定の金属イオンが、タンパク質に対する補因子である場合には製剤中に、配位錯体を形成する場合にはタンパク質の懸濁液製剤(例えば、インスリンの亜鉛懸濁液)中に含まれる。近年、アスパラギン酸のイソアスパラギン酸への異性化を阻害するために、マグネシウムイオン(10〜120mM)の使用が提案されている(国際公開第WO2004/039337号)。
【0097】
金属イオンがタンパク質中に安定性または増加した活性を与える2つの例は、ヒトデオキシリボヌクレアーゼ(rhDNase、Pulmozyme(登録商標))および第VIII因子である。rhDNaseの場合、Ca+2イオン(最大で100mM)は、特異的結合部位を通じて、酵素の安定性を増加させた(Chen B,et al.,J Pharm Sci.,88(4):477−82(1999))。実際、EGTAで溶液からカルシウムイオンを除去することによって、脱アミド化および凝集の増加が引き起こされた。しかしながら、この効果は、Ca+2イオンを用いた場合のみ認められた。他の二価陽イオン(Mg+2、Mn+2、およびZn+2)は、rhDNaseを不安定化させることが認められた。同様の効果が第VIII因子において認められた。Ca+2およびSr+2イオンがタンパク質を安定化させた一方で、Mg+2、Mn+2およびZn+2、Cu+2、ならびにFe+2等のイオンは、酵素を不安定化させた(Fatouros,A.,et al.,Int.J.Pharm.,155,121-131(1997)。第VIII因子を用いた別個の試験において、Al+3イオンの存在下で、凝集速度の有意な増加が認められた(Derrick TS,et al.,J.Pharm.Sci.,93(10):2549−57(2004))。著者らは、緩衝塩等の他の賦形剤が、しばしば、Al+3イオンで汚染されていることを指摘しており、製剤化された製品中で、適切な品質の賦形剤を使用する必要性を説明している。
【0098】
G.防腐剤
同一容器から2回以上の抽出を伴う複数回使用の非経口製剤を開発する場合、防腐剤が必要である。それらの主な機能は、微生物増殖を阻害し、薬物製品の保存可能期間または使用期間を通じて、製品の無菌性を確実にすることである。一般に使用されている防腐剤としては、フェノール、ベンジルアルコール、メタクレゾール、メチルパラベンまたはプロピルパラベン等のアルキルパラベン、塩化ベンザルコニウム、および塩化ベンゼトニウムが挙げられる。抗菌防腐活性を有する化合物の他の例としては、オクタデシルジメチルベンジル塩化アンモニウム、塩化ヘキサメトニウムが挙げられる。他の種類の防腐剤としては、ブチルアルコール、フェノール、ベンジルアルコール等の芳香族アルコール、アテコール、レソルシノール、シクロヘキサノール、3−ペンタノールが挙げられる。防腐剤は、長い使用歴を有するが、防腐剤を含むタンパク質製剤の開発は、困難なであり得る。防腐剤は、ほとんどの場合、タンパク質に対して不安定化効果(凝集)を有し、これは、複数回投与タンパク質製剤における防腐剤の使用を限定する主要な原因となっている(Roy S,et al.,J Pharm Sci.,94(2):382−96(2005))。
【0099】
複数回使用のペン型注射器の提示は、保存製剤を含む。例えば、保存されたhGHの製剤は、現在市場で入手可能である。Norditropin(登録商標)(液体、Novo Nordisk)、Nutropin AQ(登録商標)(液体、Genentech)、およびGenotropin(凍結乾燥−デュアルチャンバカートリッジ、Pharmacia & Upjohn)は、フェノールを含有し、一方で、Somatrope(登録商標)(Eli Lilly)は、m−クレゾールを伴って製剤化される。
【0100】
いくつかの態様が、保存投薬形態の製剤開発中に考慮される必要がある。薬物製品中の有効防腐剤濃度は、最適化されなければならない。これは、タンパク質安定性を低下させずに、抗菌有効性を与える濃度範囲を有する投薬形態中の所与の防腐剤を試験する必要がある。例えば、示差走査熱量測定法(DSC)を用いて、インターロイキン−1受容体(I型)に対する液体製剤の開発において、3つの防腐剤を成功裏にスクリーニングした。市販の製品で一般的に使用される濃度で、安定性に対する防腐剤の影響に基づき、防腐剤を順位付けした(Remmele RL Jr.,et al.,Pharm Res.,15(2):200−8(1998))。
【0101】
いくつかの防腐剤は、注射部位反応を引き起こす可能性があり、それは、防腐剤を選択する場合に検討する必要がある別の要因である。Norditropin中の防腐剤および緩衝液の評価に焦点を当てた臨床試験において、m−クレゾールを含有する製剤と比較して、フェノールおよびベンジルアルコールを含有する製剤中では、疼痛知覚がより低いことが認められた(Kappelgaard A.M.,Horm Res.62 Suppl 3:98−103(2004))。興味深いことに、一般的に使用される防腐剤のうち、ベンジルアルコールは、麻酔作用がある(Minogue SC,and Sun DA.,Anesth Analg.,100(3):683−6(2005))。
【0102】
IV.キット
さらなる態様として、対象への投与のためのそれらの使用を容易にする方法でパッケージ化される、本明細書に記載する1つ以上の製剤を含む、キットを本明細書に記載する。一実施形態では、そのようなキットは、密閉ボトル、管、使い捨てもしくは複数回使用バイアル、充填済みシリンジ、または充填済み注入デバイス等の容器にパッケージ化される、本明細書に記載する製剤(例えば、そこに記載される抗体のいずれかを含む組成物)を含み、任意で、その方法の実施における化合物または組成物の使用を説明するラベルが、容器に貼付されるか、またはパッケージに含まれる。一態様では、化合物または組成物は、単位投薬形態でパッケージ化される。キットはさらに、特定の投与経路に従って、組成物を投与するのに好適なデバイスを含んでもよい。好ましくは、キットは、本明細書に記載する抗体、または本明細書に記載する製剤の使用を説明するラベルを含む。
【0103】
V.投与量
本明細書に記載する状態を治療するための方法に関与する投薬計画は、薬物の作用を修正する種々の要因、例えば、患者の年齢、状態、体重、性別、および食習慣、任意の感染症の重症度、投与時間、ならびに他の臨床的因子を考慮して、主治医によって決定される。種々の態様では、毎日の処方は、体重1キログラム当たり0.1〜50mgの抗体の調製物の範囲である(化学修飾なしで、タンパク質のみの質量を計算する)。いくつかの実施形態では、投与量は、約0.5mg/kg〜20mg/kg、または約0.5〜10mg/kgである。
【0104】
本製剤は、概して、非経口的に、例えば、静脈内に、皮下に、筋肉内に、エアロゾルを介して(肺内もしくは吸入投与)、または長時間放出用のデポーを介して投与される。いくつかの実施形態では、本製剤は、初回にボーラス、続いて、持続注入によって静脈内投与され、薬物製品の治療的循環レベルを維持する。他の実施形態では、本製剤は、1回用量として投与される。当業者は、良好な医療行為および個々の患者の臨床状態によって決定されるように、有効投与量および投与計画を容易に最適化するであろう。投薬頻度は、薬剤の薬物動態パラメータおよび投与経路によって決まる。最適な薬学的製剤は、投与経路および所望の投与量に応じて、当業者によって決定される。例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences,18th Ed.(1990,Mack Publishing Co.,Easton,PA 18042)pages1435−1712を参照されたく、その開示は、参照により本明細書に組み込まれる。そのような製剤は、投与される薬剤の物理的状態、安定性、生体内放出速度、および生体内クリアランス速度に影響を与える可能性がある。投与経路に応じて、好適な用量は、体重、体表面積、または器官の大きさに従って計算されてもよい。上記の製剤のそれぞれを伴う、治療のための適切な投与量を決定するために必要な計算のさらなる精緻化は、特に、本明細書に開示する投与量情報およびアッセイ、ならびに上記のヒト臨床試験で認められる薬物動態データを考慮して、必要以上の実験をすることなく、当業者によって日常的に行われる。適切な投与量は、適切な用量反応データと併せて、血中濃度投与量を決定するための確立されたアッセイの使用によって確認され得る。最終投薬計画は、薬物の作用を修正する種々の要因、例えば、薬物の特異的活性、患者の損傷および反応性の重症度、患者の年齢、状態、体重、性別、および食習慣、任意の感染症の重症度、投与時間、ならびに他の臨床的因子を考慮して、主治医によって決定される。研究を実施するにつれて、種々の疾病および状態に対する適切な投与量レベルおよび治療期間に関して、さらなる情報が明らかになるであろう。
【0105】
VI.製剤の治療的使用
本明細書に記載する製剤は、異常な骨芽細胞または破骨細胞活性と関連する骨関連障害等の骨関連障害を治療または予防するのに有用である。いくつかの実施形態では、軟骨形成不全症、鎖骨頭蓋骨形成不全症、内軟骨腫症、線維性骨異形成、ゴーシェ病、低リン酸血症性くる病、マルファン症候群、遺伝性多発性外骨腫、神経線維腫症、骨形成不全症、大理石骨病、骨斑紋症、硬化病変、偽関節、化膿性骨髄炎、歯周病、抗てんかん薬誘発性骨量減少、原発性もしくは二次性副甲状腺機能亢進症、家族性副甲状腺機能亢進症候群、無重力誘発性骨量減少、男性の骨粗鬆症、閉経後骨量減少、変形性関節炎、腎性骨ジストロフィー、骨の浸潤性疾患、口腔の骨量減少、顎骨壊死、若年性パジェット病、メロレオストーシス、代謝性骨疾患、肥満細胞症、鎌状赤血球貧血/病、臓器移植関連骨量減少、腎臓移植関連骨量減少、全身性エリテマトーデス、強直性脊椎炎、てんかん、若年性関節炎、サラセミア、ムコ多糖症、ファブリー病、ターナー症候群、ダウン症候群、クラインフェルター症候群、ハンセン病、ペルテス病、青年期特発性脊柱側弯症、乳児期発症多系統炎症性疾患、ウィンチェスター症候群、メンケス病、ウィルソン病、虚血性骨疾患(レッグカルペペルテス病および局所性移動性骨粗鬆症等)、貧血状態、ステロイドによって引き起こされる状態、グルココルチコイド誘発性骨量減少、ヘパリン誘発性骨量減少、骨髄障害、壊血病、栄養不良、カルシウム欠乏症、骨粗鬆症、骨減少症、アルコール依存症、慢性肝疾患、閉経後の状態、慢性炎症状態、関節リウマチ、炎症性腸疾患、潰瘍性大腸炎、炎症性大腸炎、クローン病、希発月経、無月経、妊娠、糖尿病、甲状腺機能亢進症、甲状腺障害、副甲状腺障害、クッシング病、末端肥大症、性腺機能低下症、運動不足もしくは非活動、反射性交感神経性ジストロフィー症候群、局所性骨粗鬆症、骨軟化症、関節置換術と関連する骨量減少、HIVと関連する骨量減少、成長ホルモンの減少と関連する骨量減少、嚢胞性線維症と関連する骨量減少、化学療法と関連する骨量減少、腫瘍誘発性骨量減少、癌と関連する骨量減少、ホルモン除去による骨量減少、多発性骨髄腫、薬物誘発性骨量減少、神経性無食欲症、疾患関連顔面骨量減少、疾患関連頭部骨量減少、疾患関連顎骨量減少、疾患関連頭蓋骨量減少、老化と関連する骨量減少、老化と関連する顔面骨量減少、老化と関連する頭部骨量減少、老化と関連する顎骨量減少、老化と関連する頭蓋骨量減少、または宇宙旅行と関連する骨量減少から成る群より選択される、骨関連障害を患う対象に製剤が投与される。
【0106】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載する製剤は、整形外科手術、歯科手術、インプラント手術、関節置換術、骨移植術、骨美容整形、ならびに骨折治癒、癒着不能治癒、遷延治癒、および顔面再建術等の骨修復における結果を改善するのに有用である。1つ以上の組成物が、処置、置換、移植、手術、または修復の前、間、および/または後に投与されてもよい。
【0107】
本製剤は、有益な生物学的反応を達成するために、障害の対象を治癒する、または骨関連障害の発現から完全に保護する必要はない。本製剤は、骨関連障害またはその症状から全体的または部分的に保護する目的で、予防的に使用され得る。本製剤はまた、骨関連障害もしくはその症状を全体的または部分的に改善するために、または骨関連障害もしくはその症状のさらなる進行から全体的または部分的に保護するために、治療的に使用され得る。実際に、本発明の材料および方法は、骨ミネラル濃度を増加させ、増加した骨ミネラル濃度を長い期間にわたって維持するのに特に有用である。
【0108】
例えば、約1ヶ月〜約12ヶ月(例えば、約2ヶ月、約3ヶ月、約4ヶ月、約5ヶ月、約6ヶ月、約7ヶ月、約8ヶ月、約9ヶ月、約10ヶ月、または約11ヶ月)の治療期間にわたって、本明細書に記載する製剤の1回以上の投与が実施されてもよい。いくつかの実施形態では、骨ミネラル濃度を維持するために、対象は、本製剤の1つ以上の用量を投与される。ここで使用される「骨ミネラル濃度を維持する」という用語は、本製剤の初回投与によって生じる骨ミネラル濃度の増加が、約6ヶ月、約9ヶ月、約1年、約18ヶ月、約2年、または患者の一生にわたって、約1%〜約5%を超えて減少しないことを意味する。患者は、骨密度を増加させ、骨密度を維持するために、別の治療期を必要とし得ることが理解されるであろう。
【0109】
さらに、特定の対象に対して選択された治療計画に応じて、本製剤の複数回用量を投与すること、または用量の投与の間隔をあけることが有利であり得る。本製剤は、1年またはそれ以下の期間にわたって、定期的に投与することができる(例えば、9ヶ月以下、6ヶ月以下、または3ヶ月以下)。この点に関して、本製剤は、約7日、または2週間、または3週間、または1か月、または5週間、または6週間、または7週間、または2ヶ月、または9週間、または10週間、または11週間、または3ヶ月、または13週間、または14週間、または15週間、または4ヶ月、または17週間、または18週間、または19週間、または5ヶ月、または21週間、または22週間、または23週間、または6ヶ月、または12ヶ月に1回、ヒトに投与することができる。
【0110】
VII.併用治療
同一の病原体または生化学的経路を標的とする2つ以上の薬剤を組み合わせることによる病状の治療は、時に、治療上関連のある用量の各薬剤の単独の使用と比較して、より大きい有効性および副作用の減少をもたらす。場合によっては、薬物併用の有効性は、相加的であるが(併用の有効性は、各薬物の単独の効果の合計にほぼ等しい)、他の場合では、効果は、相乗的である(併用の有効性は、単独で与えられる各薬物の効果の合計よりも大きい)。ここで使用される「併用治療」という用語は、2つの化合物を同時に、例えば、並行して、または化合物のうちの1つが最初に投与され、続いて第2の薬剤が投与される方法で、例えば連続して、送達することができることを意味する。所望の結果は、1つ以上の症状の主観的な緩和、または投与量の受容者における客観的に識別できる改善のいずれかであり得る。
【0111】
いくつかの実施形態では、骨ミネラル濃度の減少の治療のための標準治療剤とともに、本製剤が投与される。ここで使用される「標準治療」という用語は、ある種類の疾患と診断されたある特定の種類の患者に対して、概して、臨床医によって認められる治療を指す。いくつかの実施形態では、標準治療剤は、再吸収阻害薬、骨形成剤、エストロゲン受容体拮抗薬(ラロキシフェン、バゼドキシフェン、およびラソフォキシフェンが挙げられるがこれらに限定されない)、ならびに破骨細胞に対して刺激作用を有する薬物から成る群より選択される。いくつかの実施形態では、再吸収阻害薬としては、ビスホスホネート(アレンドロネート、リセドロネート、イバンドロネート、およびゾレドロネートが挙げられるがこれらに限定されない)、エストロゲンまたはエストロゲン類似体、選択的エストロゲン受容体モジュレータ(SERM)およびカルシウム源、チボロン、カルシトニン、カルシトリオール、ならびにホルモン補充療法が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、骨形成剤としては、副甲状腺ホルモン(PTH)またはそのペプチド断片、PTH関連タンパク質(PTHrp)、骨形成タンパク質、オステオゲニン、NaF、PGEアゴニスト、スタチン、およびRANKリガンド(RANKL)が挙げられるがこれらに限定されない。いくつかの実施形態では、破骨細胞に対して刺激作用を有する薬物としては、ビタミンD、またはビタミンD誘導体もしくはその模倣体が挙げられるがこれらに限定されない。
【0112】
いくつかの実施形態では、本製剤は、本明細書に記載する標準治療剤の治療が禁忌である場合、対象に投与される。
(実施例)
実施例1−酢酸カルシウムによる、スクレロスチン抗体製剤の有効粘度の低減
10mLの選択された抗スクレロスチン抗体(75.7mg/mL)を、2リットルの10mM Na(OAc)および9%スクロースに対して、4℃で2時間透析した。選択された抗スクレロスチン抗体(75.7mg/mL)を約160mg/mLまで濃縮し、水で、約140mg/mLおよび120mg/mLまで希釈した。希釈試料の吸光度を、それぞれ、120、142、および157mg/mLに決定した。
【0113】
10μLの1.0M Ca(OAc)を、1mLの120mg/mL、140mg/mL、および160mg/mLの試料に添加した。試料の絶対粘度、pH、およびオスモル濃度を決定した(表2を参照されたい)。適合する試料カップの温度が一定の25℃で循環水槽によって調整される、CPE−40スピンドルを用いた、Brookfield LV−DVIIコーンプレート粘度計を使用して、試料(500μL)の絶対粘度を測定した。
【0114】
【表2】
【0115】
結果は、選択された抗体の液体組成物に添加した10mMのCa(OAc)は、粘度を約半分低減した。抗体Ab−4、Ab−5、Ab−13、Ab−14、Ab−19、Ab−20、およびAb−23のそれぞれに対して、この実験を実施する。
実施例2−製剤調節
10mLの選択された抗スクレロスチン抗体(75.7mg/mL)を、2リットルの10mM Na(OAc)、6%スクロースまたは4%スクロースに対して、4℃で2時間透析した。次いで、Amiconを用いて、各スクロース製剤を約140mg/mLまで濃縮し、次いで、標的濃度まで、水で希釈し戻した(すなわち、120mg/mL、140mg/mL、および160mg/mL)。希釈試料の吸光度値を、それぞれ、124mg/mL(4%スクロース)、119.5mg/mL(6%スクロース)、137.5mg/mL(4%スクロース)、および142mg/mL(6%スクロース)に決定した。
【0116】
10μLの1.0M Ca(OAc)を1mLの試料に添加した。試料の粘度、オスモル濃度、およびpHを決定した(表3を参照されたい)。
【表3】
【0117】
アッセイを以下のように反復した。10mLの選択された抗スクレロスチン抗体(75.7mg/mL)を、2リットルの10mM Na(OAc)、6%スクロースまたは4%スクロースに対して、4℃で2時間透析した。次いで、Amiconフィルタを用いて、各スクロース製剤を約140mg/mLまで濃縮し、次いで、標的濃度まで、水で希釈し戻した(すなわち、70mg/mL、100mg/mL、および120mg/mL)。希釈試料の吸光度値を、それぞれ、71mg/mL(4%スクロース)、68.2mg/mL(6%スクロース)、99.4mg/mL(4%スクロース)、100.5(6%スクロース)、122mg/mL(4%スクロース)、および113mg/mL(6%スクロース)に決定した。
【0118】
試料の粘度、オスモル濃度、およびpHを決定した。表4を参照されたい。
【表4】
【0119】
Ca(OAc)緩衝液のpHを5.2まで低下させることで、全ての最終製剤pHを、5.25〜5.307に保った。4%スクロース製剤は、等張範囲(250〜350mOsm/kg)未満であったが、6%スクロース製剤は、等張範囲の中央値に近かった。
【0120】
粘度の低減における10mM Ca(OAc)を含む6%スクロースの効果をさらに評価するために、最大で160mg/mLの抗スクレロスチン抗体のさらなる濃度で、上記のアッセイを反復した。
【0121】
以下の濃度で、試料を上記の通り調製した:120mg/mL、140mg/mL、および160mg/mL。10μLの1.0M Ca(OAc)、pH5.2を試料のそれぞれに添加した。試料の粘度、オスモル濃度、およびpHを決定した。表5を参照されたい。
【0122】
【表5】
【0123】
抗体Ab−4、Ab−5、Ab−13、Ab−14、Ab−19、Ab−20、およびAb−23のそれぞれに対して、上記の実験を実施する。
実施例3−他の高タンパク質濃度製剤中の酢酸カルシウムの効果
以下の実施例は、酢酸カルシウムが、スクレロスチン抗体以外に、高濃度のタンパク質を含有する製剤の粘度を低減するかどうかを判定した。
【0124】
非スクレロスチン抗体#1〜#5を、それぞれ、131.6mg/mL、94mg/mL、113.2mg/mL、50mg/mL、および106.3の濃度を有するように決定した。ここで使用される「非スクレロスチン抗体」という用語は、本明細書に記載するスクレロスチン抗体以外の抗体を意味する。
【0125】
10μLの1.0M Ca(OAc)を、上記の1mLの5つの試料に添加した。試料の粘度、pH、およびオスモル濃度を決定した(表6を参照されたい)。
【0126】
【表6】
【0127】
酢酸カルシウムは、試料のいずれの粘度も有意に低減しなかった。
実施例4−高濃度抗スクレロスチン抗体製剤の粘度に対する非カルシウム塩の効果
非カルシウム塩が抗スクレロスチン抗体製剤の粘度を低減することが可能であるかどうかを判断するために、以下の実験を実施した。
【0128】
選択された抗スクレロスチン抗体(上記の実施例1〜2と同一)を、約130mg/mLまで濃縮した。10μLの1.0M(NHSOまたは1.0M MgSOのいずれかを、1mLの抗体試料に添加した。対照の粘度を、30cPと決定した。MgSOは、試料の粘度を有意に低減すると判断された(MgSO+試料=16cP)。(NHSOは、試料の粘度を有意に低減しなかった。
実施例5−高濃度抗スクレロスチン抗体製剤の粘度に対する他のカルシウム塩の効果
酢酸カルシウム以外のカルシウム塩が抗スクレロスチン抗体製剤の粘度を低減することが可能であるかどうかを判断するために、以下の実験を実施した。
【0129】
選択された抗スクレロスチン抗体(上記の実施例1〜2と同一)を、約125mg/mLまで濃縮した。10μLの25mM CaClまたは25mM MgClのいずれかを、1mLの抗体試料に添加した。対照の粘度を、18.5cPと決定した。CaClおよびMgClは、試料の粘度を有意に低減すると判断された(CaCl+試料=9cPおよびMgCl+試料=8)。
実施例6−別の抗スクレロスチン抗体に対する酢酸カルシウムの効果
酢酸カルシウムが、上記の実施例1〜2とは異なる抗スクレロスチン抗体を含む、抗スクレロスチン抗体製剤の粘度を低減することが可能であるかどうかを判断するために、以下の実験を実施した。
【0130】
選択された抗スクレロスチン抗体を、約131mg/mLまで濃縮した。10μLの1.0M Ca(OAc)を、1mLの抗体試料に添加した。対照の粘度を、17.3cPと決定した。Ca(OAc)は、試料の粘度をわずかに低減すると判断された(15.3cP)。
【0131】
本発明の現在好ましい実施形態を考慮することによって、本発明の実施における多くの修正および変更が当業者に想到されることが予想される。したがって、本発明の範囲に対して設けられる唯一の制限は、添付の特許請求の範囲に記載されるものである。
【0132】
本明細書で言及される、および/または出願データシートに列挙される、米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、海外特許、海外特許出願、および非特許刊行物の全ては、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0133】
本発明の特定の実施形態が例示目的で本明細書に記載されてきたが、上記から、本発明の精神および範囲から逸脱することなく、種々の修正が行われてもよいことが理解されるであろう。
本発明はまた以下に関する。
[1]
(a)少なくとも70mg/mLの濃度の抗スクレロスチン免疫グロブリンと、(b)約1mM〜約20mMの範囲の濃度の酢酸カルシウムとを含む、約10cP以下の絶対粘度を有する、滅菌液体製剤。
[2]
前記免疫グロブリンは、配列番号14および/もしくは配列番号12、または配列番号86および/もしくは配列番号84、または配列番号68および/もしくは配列番号66、または配列番号154および/もしくは配列番号152、または配列番号182および/もしくは配列番号180、または配列番号208および/もしくは配列番号207、または配列番号216および/もしくは配列番号214、または配列番号238および/もしくは配列番号236のアミノ酸配列を含む、[1]に記載の製剤。
[3]
(c)約5mM〜約15mMの濃度の酢酸緩衝液、例えば、酢酸ナトリウムをさらに含む、[1]に記載の製剤。
[4]
(a)約70mg/mL〜約200mg/mLの濃度の抗スクレロスチン免疫グロブリンと、(b)約10mM〜約50mMの酢酸塩の範囲の濃度の酢酸塩および/または酢酸緩衝液とを含む、約10cP以下の絶対粘度を有する、滅菌液体製剤であって、前記免疫グロブリンは、配列番号14および/もしくは配列番号12、または配列番号86および/もしくは配列番号84、または配列番号68および/もしくは配列番号66、または配列番号154および/もしくは配列番号152、または配列番号182および/もしくは配列番号180、または配列番号208および/もしくは配列番号207、または配列番号216および/もしくは配列番号214、または配列番号238および/もしくは配列番号236のアミノ酸配列を含む、滅菌液体製剤。
[5]
約350mOsm/L未満の全オスモル濃度を有する、[1]〜[4]のいずれかに記載の製剤。
[6]
前記免疫グロブリンは、少なくとも120mg/mL、または任意で、140mg/mLの濃度で存在する、[1]〜[5]のいずれかに記載の製剤。
[7]
前記製剤の前記絶対粘度は、約8cP以下、または任意で、約6cP以下である、[1]〜[6]のいずれかに記載の製剤。
[8]
前記製剤は、約4%w/v〜約6%w/vの範囲の量の、スクロースなどのポリオールをさらに含む、[1]〜[7]のいずれかに記載の製剤。
[9]
前記製剤は、約4.5〜約6、または任意で、約5〜約5.5の範囲のpHを有する、[1]〜[8]のいずれかに記載の製剤。
[10]
タンパク質製剤の粘度を低減するための方法であって、約1mM〜約20mMの濃度の酢酸カルシウムを、抗スクレロスチン免疫グロブリン製剤に添加することを含み、前記製剤は、約70mg/mL〜約200mg/mLの濃度の免疫グロブリンを含み、前記酢酸カルシウムを含む前記製剤の前記粘度は、前記酢酸カルシウムを含まない抗体製剤の粘度と比較して低減される、方法。
[11]
前記免疫グロブリンは、配列番号86および/または配列番号84のアミノ酸配列を含む、[10]に記載の方法。
[12]
(a)少なくとも70mg/mL〜約200mg/mLの濃度のAb−5と、(b)約1mM〜約20mMの範囲の濃度の酢酸カルシウムと、(c)約4%w/v〜約6%w/vの範囲の量の、例えばスクロース等のポリオールとを含む、約10cP以下の絶対粘度を有する、滅菌液体製剤。
[13]
滅菌液体製剤であって、
(a)少なくとも70mg/mL〜約200mg/mLの濃度の抗スクレロスチン免疫グロブリンであって、配列番号14および/もしくは配列番号12、または配列番号86および/もしくは配列番号84、または配列番号68および/もしくは配列番号66、または配列番号154および/もしくは配列番号152、または配列番号182および/もしくは配列番号180、または配列番号208および/もしくは配列番号207、または配列番号216および/もしくは配列番号214、または配列番号220および/もしくは配列番号218、または配列番号238および/もしくは配列番号236のアミノ酸配列を含む、免疫グロブリンと、
(b)約1mM〜約20mMの範囲の濃度の酢酸カルシウムであって、前記酢酸カルシウムを含まない抗体製剤の粘度と比較して、前記製剤の絶対粘度を少なくとも10%低減する、酢酸カルシウムと、
を含む、滅菌液体製剤。
[14]
整形外科手術、歯科手術、インプラント手術、関節置換術、骨移植術、骨美容整形、ならびに骨折治癒、癒着不能治癒、遷延治癒、および顔面再建術などの骨修復を受ける患者を治療するための、[1]〜[9]、[12]および[13]のいずれかに記載の治療上有効な量の製剤を使用する方法。
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]