特許第5889909号(P5889909)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5889909ラテックスインク造膜助剤を含む印刷媒体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5889909
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】ラテックスインク造膜助剤を含む印刷媒体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/00 20060101AFI20160308BHJP
   B41M 5/50 20060101ALI20160308BHJP
   B41M 5/52 20060101ALI20160308BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20160308BHJP
   C09D 11/00 20140101ALI20160308BHJP
【FI】
   B41M5/00 B
   B41M5/00 E
   B41J2/01 501
   C09D11/00
【請求項の数】15
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2013-536568(P2013-536568)
(86)(22)【出願日】2010年10月25日
(65)【公表番号】特表2014-501636(P2014-501636A)
(43)【公表日】2014年1月23日
(86)【国際出願番号】US2010053961
(87)【国際公開番号】WO2012057732
(87)【国際公開日】20120503
【審査請求日】2013年6月18日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】511076424
【氏名又は名称】ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー.
【氏名又は名称原語表記】Hewlett‐Packard Development Company, L.P.
(74)【代理人】
【識別番号】100087642
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100121061
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 清春
(72)【発明者】
【氏名】ツォウ,シャオキ
(72)【発明者】
【氏名】フ,シュロン
(72)【発明者】
【氏名】エドモンドソン,デイヴィッド
【審査官】 野村 伸雄
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−126854(JP,A)
【文献】 特開2009−220529(JP,A)
【文献】 特開2007−076033(JP,A)
【文献】 特開2002−307807(JP,A)
【文献】 特開2002−283709(JP,A)
【文献】 特開平05−001254(JP,A)
【文献】 特開平06−227114(JP,A)
【文献】 特開2005−179679(JP,A)
【文献】 特開2007−230059(JP,A)
【文献】 特開2004−115635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/00
B41J 2/01
B41M 5/50
B41M 5/52
C09D 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷媒体上に印刷されたラテックスインクを含む印刷製品であって、前記印刷媒体が、少なくとも一方の表面において、画像受容層により少なくとも部分的にコートされた媒体基材を含み、前記画像受容層が、異なる平均粒径の少なくとも2種の無機顔料、ポリマーバインダ、及び少なくとも1つのラテックスインク造膜助剤を含み、
前記ラテックスインク造膜助剤が、環式アミドを含み、該ラテックスインク造膜助剤の量が、無機顔料100重量部に対して0.01〜5.0重量部である、
印刷製品。
【請求項2】
前記媒体基材が、セルロース紙ベース、ポリマーフィルムベース、又は無機フィルムベースを含む、請求項1に記載の印刷製品。
【請求項3】
前記環式アミドが、β−ラクタム、γ−ラクタム、δ−ラクタム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項1または2に記載の印刷製品。
【請求項4】
前記ラテックスインクが、前記印刷媒体の前記画像受容層の少なくとも一部上に膜を形成するポリマーラテックスを含む、請求項1から3のいずれか1項に記載の印刷製品。
【請求項5】
前記ポリマーラテックスが、20℃〜100℃のガラス転移温度を有する、請求項4に記載の印刷製品。
【請求項6】
前記画像受容層が、閉鎖型の顔料添加されたコーティング層として構成されている、請求項1から5のいずれか1項に記載の印刷製品。
【請求項7】
前記画像受容層が、多孔質の構造を有する第3の顔料を含む、請求項6に記載の印刷製品。
【請求項8】
少なくとも一方の表面において画像受容層で少なくとも部分的にコートされた媒体基材を含むラテックスインク印刷用の印刷媒体であって、前記画像受容層が、異なる平均粒径の少なくとも2種の無機顔料、ポリマーバインダ、及び少なくとも1つのラテックスインク造膜助剤を含み、
ラテックスインク造膜助剤の量が、無機顔料100重量部に対して0.1〜0.5重量部である、
ラテックスインク印刷用の印刷媒体。
【請求項9】
前記画像受容層が、1.2マイクロメートル〜2.0マイクロメートルの平均粒径の第1の無機顔料、及び0.5マイクロメートル〜0.8マイクロメートルの平均粒径の第2の無機顔料を含む、請求項8に記載のラテックスインク印刷用の印刷媒体。
【請求項10】
前記第1の無機顔料と前記第2の無機顔料との重量比が、前記第1の無機顔料70重量%〜80重量%に対して前記第2の無機顔料30重量%〜20重量%である、請求項9に記載のラテックスインク印刷用の印刷媒体。
【請求項11】
前記媒体基材が、ベースコーティングによって、少なくとも一方の表面で直接的に、少なくとも部分的にコートされており、前記ベースコーティングが、前記画像受容層で少なくとも部分的にコートされている、請求項8から10のいずれか1項に記載のラテックスインク印刷用の印刷媒体。
【請求項12】
前記ラテックスインク造膜助剤が、β−ラクタム、γ−ラクタム、δ−ラクタム、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項8から11のいずれか1項に記載のラテックスインク印刷用の印刷媒体。
【請求項13】
請求項8から12のいずれか1項に記載のラテックスインク印刷用の印刷媒体の前記画像受容層の少なくとも一部上に、ポリマーラテックスを含むラテックスインクを噴射することを含む、画像形成の方法。
【請求項14】
前記画像受容層が、閉鎖型の顔料添加されたコーティング層として構成されている、請求項8から12のいずれか1項に記載のラテックスインク印刷用の印刷媒体。
【請求項15】
前記画像受容層が、多孔質の構造を有する第3の顔料を含む、請求項14に記載のラテックスインク印刷用の印刷媒体。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
背景:
インクジェット印刷は、様々な媒体表面、例えば普通紙、コート紙、プラスチックフィルム、共押出しによる紙−プラスチック複合材、布地、屋内及び屋外用バナー(看板)、標識等上に画像を記録する評判のよい方法となっている。商業用インクジェットインクの大半は水ベースである。その水ベースの性質のために、インクジェットインクシステムは、別の印刷方法と比べると、一般に、水又は高湿度に曝された場合、より劣った画像性能及び耐性を示す傾向がある。
【0002】
ラテックスインクジェット印刷は、インクジェット印刷における新規な技術である。ラテックスインクジェット印刷においては、ラテックス粒子は、バインダとして作用し、顔料着色剤の媒体表面への付着を向上させる。ラテックス粒子の結合力は、その造膜能力に大きく依存する。より大きな造膜能力は、一般に、より強い付着力と相関関係がある。しかし、インクジェット印刷のためのラテックスインクの配合において妥協をしなくてはならない。詳細には、強力な造膜能力を有するラテックスは、ラテックスインクの付着性を増大させることができるが、インクジェット構造の信頼性及び噴射性に悪影響も与え得る。
【発明の概要】
【0003】
詳細な説明:
本発明では、印刷媒体上に噴射された後のラテックスインクの改善された造膜を達成可能であることが見出されていて、これにより、印刷媒体へ改善を加えることによって、インクジェット構造の信頼性及び噴射性とインク顔料のより強力な付着性との両方が得られ、改善された印刷製品(印刷製品)を生成するようになっている。
【0004】
本発明は、造膜助剤をラテックスインク配合物中に含ませるのではなく、ラテックスインク造膜助剤を、印刷媒体に塗布される画像受容層の配合物へと添加することを提示する。この手段は、助剤又はコアレッセンス剤を最上コーティング層、例えば、インク又は塗料配合物に直接的に添加すること(米国特許第4,489,188号、第5,236,987号、及び第7,696,262号、並びに欧州特許出願第07020568.7号)とは異なる。本方法は、比較的劣った造膜特性を有するラテックスインクが、ラテックスインクの配合の変化に関連する問題を伴うことなく、所与の温度でより容易に造膜するという結果を達成するものである。
【0005】
印刷媒体を1つ以上のラテックスインク造膜助剤を含む画像受容層でコーティングすることによって、特定のインクジェット適合性のあるラテックスを含むインクジェットインクの印刷媒体への付着を改善することによって、インク水抵抗及び引掻き抵抗が改善された印刷製品(印刷がなされた製品)が得られる。ラテックスインク造膜助剤は、インクラテックス粒子の造膜温度を低下させることができる化合物である。造膜能力と関連するインク中のラテックス粒子の結合力のため、より強力な付着が認められる。よって、妥協してインクの配合を変えることなく、インク水抵抗及び引掻き抵抗の改善が達成され、それにより、インクジェット構造の信頼性及び噴射性と、インク顔料の付着性との両方を同時に達成することができる。
【0006】
濃度、量及び他の数値データは、本明細書においては、範囲の形式(例えば5%〜20%)で示す。このような範囲の形式は、単に簡便さ簡潔さのために使用され、範囲の限界値として明確に記載された数値のみならず、その範囲に包含される全ての個々の数値又は副次的な範囲をも、各数値及び副次的範囲が明記されているかのごとく含むべきと解釈されることを理解されたい。例えば、5%〜20%という範囲は、非限定的に、5%、5.5%、9.7%、10.3%、15%等といった数値、並びに非限定的に、5%〜10%、10%〜15%、8.9%〜18.9%等といった副次的範囲を含むと解釈されるべきである。
【0007】
印刷製品
本発明は、印刷媒体及びラテックスインクを含む印刷製品を提供する。印刷媒体は、少なくとも一方の表面上において少なくとも1つのラテックスインク造膜助剤を含む画像受容層で少なくとも部分的にコーティングされた媒体基材からなり、ラテックスインクが印刷媒体上に印刷されて、ラテックスインクポリマーラテックスが、印刷媒体の画像受容層の少なくとも一部上に膜を形成するようになっている。例えば、インクジェット印刷によってインクの滴が噴射されることによって、印刷媒体上にラテックスインクが塗布される。その後、インクが乾燥される。本明細書で用いられる場合には、ラテックスインクとは、印刷媒体上に塗布される液体のインクと、インクの水分を蒸発させる乾燥プロセス後のインクとの両方を指す。印刷製品を含む様々な要素、並びにそのような印刷製品の製造方法を、本明細書に開示する。
【0008】
印刷媒体
印刷製品は、印刷媒体及びラテックスインクを含む。この印刷媒体の構成によって、インク配合に関する妥協をすることなく、改善されたラテックスインクの付着性が得られる。印刷媒体は、少なくとも一方の表面上において本明細書に開示の画像受容層で少なくとも部分的にコートされた媒体基材からなる。例えば、印刷媒体がプリンター紙のシートである場合には、画像受容層が、紙のシートの片面又は両面を少なくとも部分的にコートし得る。別態様では、印刷媒体がプリンター紙のシートである場合には、画像受容層が、紙のシートの片面又は両面を完全にコートし得る。
【0009】
媒体基材
ラテックスインクは、例えばインクジェット印刷によって、多くの表面に塗布することができ、本発明は、媒体基材を含む表面の種類に限定されない。例えば、媒体基材は、非限定的に、任意の種類のセルロース紙ベース、ポリマーフィルムベース又は無機フィルムベースとすることができる。任意の認められた種類の、セルロース紙ベースを製作するために使用される紙製作用パルプ、ポリマーフィルムを製作するために使用されるポリマー繊維、並びに無機フィルムを、媒体基材を製作するために使用することができる。セルロース紙ベースを製作するための代表例は、任意の適切な木材又は非木材パルプからなる任意の種類のセルロース紙含む。適切なパルプのさらなる代表例は、機械木材パルプ、化学的に粉砕されたパルプ、ケミメカニカルパルプ、及び/又はそれらの混合物を含む。よって、特定の態様では、主たるパルプ組成物を製作するために、漂白された広葉樹ケミカルクラフトパルプを使用することができる。媒体基材は、布地であってもよい。ポリマーフィルムベースを製作するためのポリマー樹脂の代表例は、ポリオレフィン、例えばHDPE、LDPE、LLDPE、PP、及びポリオレフィンコポリマー、例えばポリエステル、並びにポリアミドを含む。媒体基材を、ベースストック(base stock)として特徴付けることができるなら、媒体基材は、例えば、約60〜約300グラム/m(gsm)の坪量を有する。
【0010】
鉱物充填材は、媒体基材を製作するために使用されるパルプに組み込むことができる。このような充填材の代表例は、粉砕炭酸カルシウム(重質炭酸カルシウム)、沈降炭酸カルシウム、二酸化チタン、カオリン、焼成クレー、シリケート、及びそれらの混合物を含む。媒体基材中に組み込まれる充填材の量は、具体的には限定されない。特定の態様では、媒体基材は、約5%〜約20重量%で充填材を組み込む。特定の態様では、媒体基材は、約5%〜約15重量%で充填材を組み込む。
【0011】
セルロース紙ベースが使用される場合には、ベースは低多孔性を有するものであってよく、これにより、造膜添加剤が、ベース内に過剰に移動することはない。セルロース紙ベースの多孔性を低減する方法の例は、表面サイズ法、例えば、ウェブが形成され乾燥された後に天然又は合成のポリマー材料を紙ウェブ表面上に塗布することによる方法を含む。セルロース紙ベースの多孔性を低減するための有用なポリマー材料の代表例は、澱粉又は合成ポリマーラテックスを含む。別の例は、ウェットエンドプロセス又は表面サイズプロセス中にポリマー樹脂を繊維マトリックスに塗布する、「樹脂浸潤(resin saturation)」法である。システムと、特に、ウェットエンドプロセスと適合性があるのであれば、使用される樹脂の種類に特定の制限はない。表面サイズプロセスは、カチオン性、アニオン性の両方、又は中性に帯電した樹脂を使用することができるので、浸潤のために有用である。
【0012】
ベースコーティング
印刷媒体は、少なくとも、ラテックスインク造膜助剤を含有する画像受容層でコートされた媒体基材を有する。しかし、媒体基材を画像受容層でコートする前に、「ベースコーティング」を、媒体基材上に直接的に塗布することができる。続いて、画像受容層を、ベースコーティングの少なくとも一部に塗布する。例示的な媒体基材として紙のシートを想定するなら、ベースコーティングは、シートの片面又は両面に塗布することができ、その後、画像受容層を、シートの、ベースコーティングが塗布された片面又は両面に塗布する。ベースコーティングは、少なくとも2つの有用な機能を提供する。1つの機能は、滑らかな表面を生成することである。別の機能は、ベースストックよりも高い表面エネルギーを有する表面を生成することであり(特に、基材が、ポリマー材料で高浸潤された又は共押出しされている場合)、これにより、続いて塗布される最上の画像受容層が、過剰の添加剤、界面活性剤及び潤滑剤を画像受容層中に組み込む必要なしに、ベースストックに固く付着することができるようにする。このような添加剤は、ラテックスインクフィルムを軟化し、耐性を低下させてしまう。例示のベースコーティング配合物は、充填材として任意の種類の無機粒子、例えば、炭酸カルシウム及びクレー、バインダとしてポリマーラテックス、及び界面活性剤、並びに他のプロセス制御剤の混合物を含む。
【0013】
画像受容層
印刷媒体の媒体基材は、少なくとも1つの表面において、画像受容層(画像受容コーティングとも呼ばれる)でコートされる。画像受容層は、顔料、ポリマーバインダ、及びラテックスインクのラテックス粒子の造膜温度を低下させる少なくとも1つのラテックスインク造膜助剤を含む。
【0014】
ポリマーバインダは、無機粒子と画像受容層を含む他の成分との間の付着を提供し、また画像受容層と他の層との間の付着も提供することができるポリマー組成物である。特定の態様では、ポリマーバインダは、水溶性のポリマーであってよい。特定の態様では、ポリマーバインダは、水分散性ポリマーラテックスであってよい。適切なポリマーバインダの代表例は、スチレンブタジエンコポリマー、ポリアクリレート、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸、ポリエステル、ポリビニルアルコール、ポリスチレン、ポリメタクリレート、ポリアクリルエステル、ポリメタクリルエステル、ポリウレタン、これらのコポリマー、並びにこれらの混合物を含む。
【0015】
顔料は、有機又は無機の顔料であってよい。顔料の代表例は、粉砕炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム、二酸化チタン、カオリンクレー、シリケート、プラスチック顔料、アルミナトリハイドレート、及びそれらの混合物を含む。顔料の物理的な形態は、粉体又は水性の予分散されたスラリーであってよい。
【0016】
別の用途では、インク吸収の向上を図るために、インクジェット印刷のための画像受容層が高多孔性を有することが好ましいと云えるが、本発明の画像受容層は、「閉じられた(closed、閉鎖型の)」顔料添加されたコーティング層として構成されていてよい。この構造的性質は、異なる粒径及び粒度分布を有する少なくとも2種の無機顔料の最適な組合せを選択することによって達成することができる。特定の態様では、画像受容層は、異なる粒径を有する少なくとも2種の無機顔料を有する。例えば、一態様では、約1.2マイクロメートル〜約2.0マイクロメートルという比較的大きな平均粒径及び約5m/g〜約10m/gの比表面積を有する粗い顔料(例えば炭酸カルシウム)が、第1の顔料として使用され、約0.5マイクロメートル〜約0.8マイクロメートルの平均粒径を有し、狭い粒度分布を有する別の比較的微細な粒径の炭酸カルシウムが、第1の顔料間の緩い充填空間を埋めるために使用される。
【0017】
本明細書で用いられる場合、粒度分布は、「粒度分布の指標」、つまり式1
I=(D85/D15)1/2(式1)
に基づく粒径比で表される。式中、D85は、マイクロメートルでの平均粒径であって、分布曲線によれば顔料の粒子の85%がその値よりも小さい粒径を有するものであり、D15は、平均粒径であって、顔料の粒子の約15%がその値よりも小さい粒径を有するものである。例えば、粒度分布の指標は、約1〜約10の範囲にあってよい。例えば、粒度分布の指標は、約1〜約4の範囲にあってよい。
【0018】
第1の顔料と第2の顔料との重量比は、第1の顔料約95%〜約60%に対して第2の顔料約5%〜約40%であってよい。例えば、第1の顔料約95重量%に対して第2の顔料約5重量%、第1の顔料約90重量%に対して第2の顔料約10重量%、第1の顔料約80重量%に対して第2の顔料約20重量%、第1の顔料約75重量%に対して第2の顔料約25重量%、又は第1の顔料約70重量%に対して第2の顔料約30重量%、又は第1の顔料約60重量%に対して第2の顔料約40重量%等である。特定の態様では、閉鎖レベルの度合いは、水銀圧入ポロシメトリーにより85%未満の孔体積で特徴付けられる。
【0019】
特定の態様では、画像受容層は第3の顔料を含む。第3の顔料は、多孔質の構造を有するか、又は画像受容層の固化の際に多孔質の構造を形成することができる。任意の有機又は無機の顔料である。多孔質の顔料の微孔性構造は、ラテックスインク造膜助剤のための貯蔵空間を提供し、これにより、ラテックスインク造膜助剤の少なくとも一部が、乾燥の際に画像受容層構造の内側に留まる。画像受容層中に含ませるための顔料代表例は、炭酸カルシウム、ゼオライト、シリカ、タルク、アルミナ、アルミニウムトリハイドレート(ATH)、ケイ酸カルシウム、カオリン、焼成クレー、及びこれらの混合物を含む。
【0020】
ラテックスインク造膜助剤
少なくとも1つのラテックスインク造膜助剤が、印刷媒体の画像受容層の配合物に含まれる。ラテックスインク、しかも、印刷製品を形成するために開示の印刷媒体と組み合わせて使用することが予定されているものは、インクバインダとしてポリマーラテックス含有する。ポリマーラテックスは、ガラス転移温度(Tg)に関連する造膜温度を有する。一般に、ラテックスインクが印刷媒体に噴射された場合、不連続なラテックスポリマー粒子が表面上に載置され、その後、乾燥プロセスが施される。水性溶剤(例えば水)が、乾燥プロセス中にベースに浸透するか又は滴から蒸発すると、インク配合物中に存在する界面活性剤に関連した相互反発力が粒子の密な充填を阻害し、粒子の立方配置がまず形成される。水性溶剤が蒸発し続けると、粒子は約70%以上の実体積で密に充填される。毛管力は、粒子を集合させ続ける。水性溶剤のほとんどがシステムから追い出された時、粒子間反発力は、表面張力の増大により克服され、粒子は融合して不連続な膜となる。この造膜は、粒子変形に対する抵抗として、インク配合物中のラテックスの弾性率及び最低造膜温度(MFFT)に大きく依存する。強い造膜能力を有するラテックスは、インクジェット構造の信頼性及び噴射性に悪い影響を及ぼし得るので、ラテックスインクのラテックスMFFTは、慎重に選択しなければならない。ラテックスインク造膜助剤を印刷媒体画像受容層の配合物中に添加することによって、特定の造膜能力を有する、画像受容層に塗布されたラテックスインクが、所与の温度でより容易に造膜するようになる。
【0021】
ラテックスインク造膜助剤の量は、少なくとも造膜量である。造膜量は、印刷媒体の画像受容層から、コートされた印刷媒体表面上に塗布された液体ラテックスインクへの移動が可能である量であり、これにより、ラテックスインクの乾燥の際に連続するフィルムの形成が容易になる。造膜量は、使用されるラテックス、配合物、及び特定の造膜助剤によって様々である。不十分な量であると、ラテックスインク乾燥の際に連続した膜の形成が容易に起こらない。しかし、過剰な添加剤(過充填)は、膜強度を軟化し得る。したがって、ラテックスインク造膜助剤の量が造膜量以上であっても、配合物の過充填や膜強度の軟化をもたらすほどの量ではないことが好ましい。特定の態様では、ラテックスインク造膜助剤の量は、無機充填材100重量部に対して約0.01〜約5.0重量部である。特定の態様では、ラテックスインク造膜助剤の量は、無機充填材100重量部に対して約0.1〜約0.5重量部である。
【0022】
ラテックスインク造膜助剤は、画像受容層配合物中で分散相として使用される水と少なくとも部分的に混和可能である。特定の態様では、ラテックスインク造膜助剤は、画像受容層配合物中で分散相として使用される水と完全に混和可能である。
【0023】
ラテックスインク造膜助剤は、画像受容層の乾燥温度(70℃〜約100℃)で揮発性は低いが、ラテックスインク硬化(約95℃〜約120℃)の際には揮発性はより高い。
【0024】
ラテックスインク造膜助剤として有用な化学物質は、適切な水との適合性及び温度揮発性を有する任意の化学的物質であり、インクラテックス粒子の弾性率を低下させることができ、一時的な可塑化を提供して、ポリマー鎖の運動を促進させ、これによりラテックスインクの造膜を増進するものである。代表例は、クエン酸塩又はセバシン酸塩化合物、エトキシアルコール、グリコールオリゴマー及び低分子量ポリマー、グリコールエーテル、グリセロールアセタール、アニオン性、カチオン性又は非イオン性である12個を超える炭素骨格を有する界面活性剤、及びラクタムのような環式アミド、例えばβ−ラクタム、γ−ラクタム、及びδ−ラクタム、並びにそれらの混合物を含む。特定の態様では、ラテックスインク造膜助剤は、ラクタムのような環式アミド、例えば、β−ラクタム、γ−ラクタム、及びδ−ラクタム、並びにそれらの混合物である。特定の態様では、ラテックスインク造膜助剤は、γ−ラクタムである。γ−ラクタムの代表例は、N−メチル−2−ピロリドン、5−メチル−2−ピロリドン、及び2−ピロリドンを含む。
【0025】
ラテックスインク
ラテックスインク造膜助剤を含有する画像受容層でコートされた印刷媒体に関連して改善された付着性を示す、印刷製品での使用のための適切なインクは、当分野で知られている。このようなインクは、特に非限定的に、着色剤顔料、水性溶剤、水性相溶性共溶剤、界面活性剤、湿潤剤、又は殺生物剤を含むが、少なくとも1つのポリマーラテックスを含有する。本明細書で用いられる場合には、ラテックスは、液体(例えば、水及び/又は他の液体)及び約10,000Mw〜約2,000,000Mwの重量平均分子量を有する約20nm〜約500nmのサイズのポリマー粒子を含む液体懸濁液である。特定の態様では、ラテックスのポリマー粒子は、約100nm〜約300nmのサイズである。特定の態様では、ポリマー粒子は、約40,000Mw〜約100,000Mwの重量平均分子量を有する。
【0026】
一般に、ポリマー粒子は、液体で約0.5重量%〜約15重量%で存在する。ポリマー粒子は、典型的には、ランダム重合され、架橋されていてもよい複数のモノマーを含んでいてよい。架橋されている場合には、架橋された粒子の合わせられた分子量は、約2,000,000Mwを超えてよい。ポリマーラテックスは、造膜又はガラス転移温度を有する。特定の態様では、このガラス転移温度は、約20℃〜約100℃である。
【0027】
ラテックス粒子を形成するために、モノマーの組合せを使用することができる。ラテックス粒子を形成するために使用できる他の有用なモノマーの代表例は、スチレン、C1〜C8アルキルメタクリレート、C1〜C8アルキルアクリレート、エチレングリコールメタクリレート及びジメタクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、及びこれらに類するものを含む。特定の態様では、ラテックス粒子は、スチレン、ヘキシルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、及びメタクリル酸の様々な重量比のエマルジョンモノマー混合物を使用して調製したものを含み、これらは共重合してラテックスを形成する。特定の態様では、スチレン及びヘキシルメタクリレートモノマーが、ラテックス粒子のバルクを提供することができ、エチレングリコールジメタクリレート及びメチルメタクリレートが、より少量で、これらと共重合することができる。そのような態様では、酸基は、メタクリル酸によって提供される。
【0028】
印刷の方法
本発明の印刷媒体は、ラテックスインクを使用したインクジェット印刷の改善された方法を提供する。この画像形成の方法は、ポリマーラテックスを含むラテックスインクを、本発明の印刷媒体の画像受容層の少なくとも一部上に噴射することを含む。
【0029】
より詳細には、画像形成方法は、インク滴を本発明の印刷媒体に熱的に噴射することを含む。インクビヒクル助剤中の1つ以上の濡れ薬剤、湿潤剤、及び/又は添加剤が、滴を拡張できる(滴が広がる)ように表面を濡らした後、液体インク膜がインク滴から生成される。インクビヒクル、ラテックスポリマー粒子、及び顔料粒子の混合物を含む層が形成される。プリンタの印刷ゾーン及び硬化ゾーンにおける放射ヒータ及び強制空気は、インクビヒクルを蒸発させ、その一方、熱は、造膜助剤を、インク層内へ少なくとも部分的に又は完全に強制的に引き込み、これにより、ラテックスポリマー粒子が融合して、顔料をカプセル封入する連続のポリマーフィルムとなることが助成され、耐性のある高品質の印刷画像が形成される。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0030】
以下の開示の態様は、本発明の単なる代表例であって、これらは様々な形式で具現化され得る。よって、以下の例において開示された特定の構造、機能及び手続の詳細は、限定として解釈されるべきではない。
【0031】
この例では、ベース紙は、未使用繊維約78%、再生繊維10%を含有するセルロース繊維、並びに及び炭酸カルシウム充填材12%から製作された。ベース紙ストックは、アクリルラテックス樹脂を使用して表面サイズ処理されていた。ベースコーティングは、測定ロッドを備えたパイロットコータによって、媒体基材に直接的に塗布された。ベースコーティングは、炭酸カルシウム充填材85重量%及びアクリルスチレンコポリマーを含むポリマーラテックスバインダ15%からなっていた。添加剤約2%が、ベースコーティング中に含まれていた。これらの添加剤は、界面活性剤、消泡剤、pH調製剤、殺生物剤、及び他の処理制御化学物質を含んでいた。画像受容層の重量部での配合を、表1に列記する。画像受容層は、ベースコーティングと同じ方法を使用して塗布された。
【0032】
印刷試験を、HP789インクカートリッジとして特定されるHPラテックスを備えているHP Design jet L25500プリンタにおいて行った。プリンタは、加熱ゾーン温度50℃、硬化ゾーン温度110℃、及び空気流れ15%の条件で設定された。
【0033】
インク付着試験は、変更を加えたASTMD2486擦り試験を使用して行った。インク付着の量は、擦り後に除去されたインクの量を視覚的に検査すること、及び試験プローブに移ったインクを定量的に測定することの両方によって判定された。より高いODは、インク付着がより劣ることを示す。インク水耐性は、印刷された試料を水中に含浸させ、2分間ふやかすことによって判定された。結果は、濡れたスポンジで印刷表面を引っ掻き、ストリッパを使用して剪断力引掻きを行った後、インクの流れ(広がり)について視覚的に評価した。他の画像品質、例えば色域又はインクブリードは、標準のHewlett−Packardの手法を利用して測定した。試験結果を表2にまとめる。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
インクの広がりは、次のスコアにより評価された。5−広がるインクは見られなかった、4−極めて僅かなインクの広がりが見られた、3−許容可能なレベルで僅かなインクの広がりがあった、2−許容可能なレベル外のインクの広がりがあった、及び1−著しいインクの広がりがあった。
【0037】
以上、本発明の特定の態様を詳細に説明したが、開示の教示全体に鑑みて、これらの詳細に様々な変形又は代替を発展させ得ることは、当業者に理解されるであろう。したがって、開示の特定の構成は、本発明の範囲に関し例示のみを意味するものであって、限定を意味するものではない。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲の全体の広さ及び任意の及び全てのそれと同等のものとして与えられるべきである。さらに、本明細書に開示の態様は、本明細書に開示及び/又は任意の従属請求項に記載の特徴の任意の及び全ての組合せを含むと理解されるべきである。