(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5889911
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】ターボ機械用可動ブレード
(51)【国際特許分類】
F01D 5/20 20060101AFI20160308BHJP
F01D 11/08 20060101ALI20160308BHJP
F01D 5/28 20060101ALI20160308BHJP
F02C 7/28 20060101ALI20160308BHJP
F01D 5/22 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
F01D5/20
F01D11/08
F01D5/28
F02C7/28 A
F01D5/22
【請求項の数】4
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-539320(P2013-539320)
(86)(22)【出願日】2011年11月21日
(65)【公表番号】特表2014-500432(P2014-500432A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】FR2011052709
(87)【国際公開番号】WO2012069744
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年10月28日
(31)【優先権主張番号】1059573
(32)【優先日】2010年11月22日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】505277691
【氏名又は名称】スネクマ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】特許業務法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コラン,ヤニック
(72)【発明者】
【氏名】ラルデリエ,トマス
(72)【発明者】
【氏名】マテユー,ダビド
(72)【発明者】
【氏名】トラオ,ドウニ
(72)【発明者】
【氏名】レミイ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ゴツドフラン,グザビエ
【審査官】
齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−207294(JP,A)
【文献】
特開平07−253001(JP,A)
【文献】
特開2002−129901(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 5/00−34
F02C 7/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械用の可動ブレードであって、その遠位端(10B)に上部(14)を有するブレードは、
ターボ機械を通るガスの流路の外側表面を画定し、反対位置にある第一および第二側縁(21、22)を有するプラットフォーム(20)と、
前記プラットフォーム(20)から半径方向外向きに延在する上流および下流封止ワイパ(31、32)と
を備え、
第一および第二側縁(21、22)の各々は、上流および下流ワイパ(31、32)の間で実質的にZ字型のプロファイルを有し、このプロファイルは、上流ワイパ(31)に近い第一部分(21A;22A)、中間の第二部分(21B;22B)、および下流ワイパ(32)に近い第三部分(21C;22C)を有し、第一および第三部分(21A、22C;22A、22C)は互いに対して実質的に平行であって、第二部分(21B、22B)は第一および第三部分の間で斜めに延在しており、
ブレード(10)は、
上部(14)が、第一側縁(21)の側に、第一側縁(21)の第二部分(21B)に沿って延在する第一外突起リム(41)を有し、この第一リム(41)は上流および下流ワイパ(31、32)のいずれにも接続されていないこと、および
上部(14)が、第二側縁(22)の側に第二外突起リム(42)を有し、第二リム(42)は、下流ワイパ(32)に接続されて第二側縁(22)の第二および第三部分(22B、22C)に沿って延在する下流部分(44)と上流ワイパ(31)まで下流部分(44)を延在させて第二側縁(22)の第一部分(22A)に対して後退している上流部分(43)とを有すること
を特徴とする、ブレード。
【請求項2】
第一および第二リム(41、42)の各々が、その側面に耐摩耗材料の層(41A、44A)を担持する、請求項1に記載のブレード。
【請求項3】
第二リム(42)の上流部分(43)の高さが下流部分(44)の高さよりも低い、請求項1または請求項2に記載のブレード。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載のブレード(10)を有する、ターボ機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、ターボ機械用の可動ブレードに関する。
【0002】
このようなブレードは、地上または航空用途のいずれのタイプのターボ機械にも取り付けられてよく、具体的にはヘリコプタのターボシャフトエンジンまたは航空機のターボジェットに取り付けられてもよい。
【背景技術】
【0003】
本明細書において、「上流」または「下流」は、ターボ機械を通るガスの通常の流れ方向(上流から下流へ)に対して定義される。
【0004】
ターボ機械のロータの回転軸は、タービンまたはエンジンの軸とも称される。軸方向はエンジンの軸の方向に対応し、半径方向はエンジンの軸に対して直角であって前記軸と交差する方向である。同様に、軸方向平面はエンジンの軸を含む平面であり、半径方向平面はこの軸に直交する平面である。
【0005】
特に指定されない限り、「内側」および「外側」という形容詞は、要素の内側部分が同じ要素の外側部分よりもエンジンの軸に近い半径方向の部分となるように、半径方向に対して使用される。
【0006】
最後に、ブレードのスタッキング軸は、翼の底部(すなわちエンジンの軸に最も近い部分)の重心を通り、エンジンの軸に直交する軸として、定義される。
【0007】
通常、ターボ機械の可動ブレードは、ブレードの近位および遠位端(すなわち内側および外側端)の間でブレードのスタッキング軸に沿って延在する翼を有する。その近位端において、ブレードは、それによってエンジンのロータディスクに固定される根元を有する。その遠位または自由端において、ブレードは、上部と称される横断要素を有する。複数の可動ブレードがロータディスクに固定されたとき、その上部は、エンジンを通るガスの流路の外側を画定し、これによりその位置でのガス漏れを制限するのに役立つ外周リングを形成するように、隣り合って配置される。
【0008】
本明細書は上部を有する可動ブレードに関し、上部は、エンジンを通るガスの流路の外側表面を画定し、反対位置にある第一および第二側縁を有するプラットフォームと、前記プラットフォームから半径方向外向きに延在する上流および下流封止ワイパとを備える。
【0009】
加えて、可動ブレードは、プラットフォームの第一および第二側縁の各々が上流および下流ワイパの間で、上流ワイパに近い第一部分、中間の第二部分、および下流ワイパに近い第三部分を備える実質的にZ字型のプロファイルを有するようになっており、第一および第三部分は互いに対して実質的に平行であって、第二部分は第一および第三部分の間で実質的に斜めに延在している。
【0010】
上記で指定されたタイプのブレードが動作中に受ける振動を減衰するために、ブレードは、そのスタッキング軸の周りにねじり応力がかかった状態でロータディスクに取り付けられている。このため上部は、各ブレードが、主に側縁の前記第二部分に沿って、その隣に当接することによってねじり応力を受けることができるように、設計されている。
【0011】
ブレード間の耐力を改善するために、特に隣り合うブレードの間で可能な限り力が伝達されることを保証するように上部が重なるのを回避するために、上部の側縁の、特に前記第二部分の高さ、すなわち半径方向の寸法を、増加させることが知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
可動ブレードの上部の第一の周知例において、上流および下流ワイパの間に延在するプラットフォームの中央部は厚みの異なる2つの小部分でできている。上流ワイパから側縁の第三部分まで軸方向に、および第一側縁から第二側縁まで円周方向に延在する、厚い第一小部分と、第一小部分に続いて下流ワイパまで軸方向に、および第一側縁から第二側縁まで円周方向に延在する、薄い第二小部分とである。このプラットフォーム構成の主要な欠点は、より厚い第一小部分のため重いことであり、前記小部分は「中実」であり、すなわち中空になっていない。
【0013】
この欠点を緩和するために、上部の第二の周知例において、前記第一小部分は、プラットフォームの外面から突起してプラットフォームの側縁に沿って位置する2つのリムに置き換えられる。プラットフォームの前記第一小部分と同様に、これらのリムも上流ワイパから側縁の第三部分まで延在し、すなわちこれらは下流ワイパにつながっていない。とは言うものの、円周方向において、これらのリムは空洞によって離間している。これは、上部を軽量化するのに役立つ空洞である。
【0014】
とはいえ、このプラットフォームの第二の周知例は完全に欠点がないわけではない。具体的には、1つの欠点は、プラットフォームの重心が翼の上部区画の重心と一致していないことであり、「上部区画」とは上部のすぐ下の翼の区画である。この不一致の結果、ブレード残部に上部によって過剰な応力が掛けられ、これらの過剰応力はブレードの寿命に悪影響を及ぼす。先に記載された周知の上部の第一の例もまたこの欠点を有することを、理解すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本明細書はターボ機械用の可動ブレードを提供し、ブレードはその遠位端にターボ機械を通るガスの通路の外側表面を画定し、反対位置にある第一および第二側縁を有するプラットフォームと、前記プラットフォームから半径方向外向きに延在する上流および下流封止ワイパとを備える上部を有する。第一および第二側縁の各々は上流および下流ワイパの間で実質的にZ字型のプロファイルを有し、このプロファイルは、上流ワイパに近い第一部分、中間の第二部分、および下流ワイパに近い第三部分を有し、第一および第三部分は互いに対して実質的に平行であって、第二部分は第一および第三部分の間で実質的に斜めに延在している。上部は、第一側縁の側に、第一側縁の第二部分に沿って延在する第一外突起リムを有し、この第一リムは上流および下流ワイパのいずれにも接続されておらず、そして上部は、第二側縁の側に第二外突起リムを有し、第二リムは、下流ワイパに接続されて第二側縁の第二および第三部分に沿って延在する下流部分と、下流部分を上流ワイパまで延在させて第二側縁の第一部分に対して後退している上流部分(すなわち第二側縁の第一部分に対して、上流部分はプラットフォームの中央に向かってずれている)とを有する。
【0016】
特定の実施形態において、第二リムの上流部分の高さは下流部分の高さよりも低い。
【0017】
このようなブレードの上部には、上記第一周知例の上部と比較して限られた重量を有するという利点がある。
【0018】
加えて、リムの位置決めおよび構成により、翼の上部区画の重心に近い、またはこれと一致した重心を有する上部を提供することが可能となる。これは、ブレード残部に上部によって掛けられる過剰な応力を制限もしくは回避するのに役立つ。
【0019】
最後に、上記周知例の上部と比較すると、第二リムは下流ワイパに接続されているので、下流ワイパが硬直し、これによって隣り合うプラットフォームの間の接触力に、より耐えられるようになる。
【0020】
一実施形態において、ブレードを構成する材料は、ターボ機械の動作条件の下での摩耗に一般的にうまく耐えられず、ブレードの寿命を延長するために、ブレードの傷つきやすい部分は、一般的に耐摩耗材料と称される、摩耗により良く耐えられる何らかの材料を塗布することによって保護される。
【0021】
このため、一実施形態において、第一および第二リムの各々は、その側面に耐摩耗材料の層を担持する。
【0022】
この耐摩耗材料の層は、隣り合うブレードとの擦れから生じる摩耗に対して、ブレードのプラットフォームのリムを保護するのに役立つ。ブレードの側縁の前記第二部分に沿って位置するリムの部分は最も摩擦に曝されるので、ここを優先的に保護することが有利である。このため、一実施形態において、前記耐摩耗材料の層は、少なくとも前記第二部分上に存在する。
【0023】
前記耐摩耗材料の層は様々な方法で作られてよい。これは、隣り合うブレードに当接する表面に、高い硬度を有して金属リムへのろう付けに適した特殊な合金の小さい板、すなわち基層を含んでもよい。別の手法では、保護を必要とする表面に、基層の最上層と同時に(可能であれば、基層の材料の規定の厚みを局所的に研磨した後に)溶融された耐摩耗材料が漸進的に構成される。適切な熱源によって、熱が伝達される。一例として、これは不活性ガスの電気アーク、またはレーザビームであってもよい。この別の手法において、使用される耐摩耗剤はコバルトベース合金であり、同様の合金は「Stellite」の商標名で販売されている。
【0024】
本明細書はまた、先に記載されたブレードを有するターボ機械も提供する。
【0025】
添付図面は図表的であって必ずしも縮尺通りではなく、基本的に本発明の原理を図解しようとするものである。
【0026】
図中、図面毎に、同じ要素(または要素の部分)は同じ参照符号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】上部を有する可動ブレードの例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
上部を備える可動ブレードの実施形態が、添付図面を参照して以下に詳細に記載される。この例は、本発明の特徴および利点を説明する。とはいえ、本発明はこの例に限定されないことが想起されるべきである。
【0029】
図1は、ターボ機械の可動ブレード10の例を示す。このようなブレードは、航空機ターボジェットの低圧段で使用されてもよい。
【0030】
可動ブレード10は、ブレードの近位端10Aと遠位端10B(すなわち内側端と外側端)との間でブレードのスタッキング軸Xに沿って延在する翼16を有する。その近位端10Aにおいて、ブレードは、ターボ機械のロータディスク(不図示)にこれを固定するために使用される、根元12を有する。ディスクはエンジンの軸Aを中心に回転する。その外側端10Bに、ブレード10は上部14を有する。
【0031】
複数の可動ブレード10がロータディスクに固定されるとき、その上部14は、ディスクの回転軸Aを中心とする回転面を画定する回転リングを形成するように、隣り合わせに配置される。リングは、翼16の間を通るガスの流路の外側表面を画定する特定の機能、およびひいてはブレード10の遠位端10Bでのガスのいかなる漏れも制限する機能を、有する。
【0032】
上部14は、翼16の間を通過するガスの流路の外側を画定し、反対位置にある第一および第二側縁21および22を有するプラットフォームと、プラットフォーム20から半径方向外向きに延在する上流および下流封止ワイパ31および32とを備える。
【0033】
複数の可動ブレード10がロータディスクに固定されるとき、ブレードの上流および下流ワイパは軸Aの回転リングを形成するように縁を突き合わせて配置され、このリングは実質的に半径方向平面内に含まれている。このようなリングは特に、その位置でのガス漏れを制限するために、ブレード10とブレードを包囲するカバーまたはケーシングとの間に存在する隙間を制限する機能を有する。
【0034】
プラットフォーム20は、上流ワイパ31から上流に延在する、「上流張り出し」と称される上流部分24を有する。プラットフォーム20はまた、下流ワイパ32から下流に延在する、「下流張り出し」と称される下流部分28も有する。最後に、プラットフォームは、上流および下流ワイパ31および32の間に延在する中央部26を有する。
【0035】
図3に明らかに見られるように、中央部26において、プラットフォーム20の第一および第二側縁21(22)の各々は、上流ワイパ31に近い第一部分21A(22A)、中間の第二部分21B(22B)、および下流ワイパ32に近い第三部分21C(22C)を備える実質的にZ字型のプロファイルを有しており、縁21(22)の第一および第三部分21A、21C(22A、22C)は互いに対して実質的に平行であって、第二部分21B(22B)は第一および第三部分21A、21C(22A、22C)の間で実質的に斜めに延在している。
【0036】
ブレード10が動作中に受ける振動を減衰するために、ブレード10は、そのスタッキング軸Xの周りにねじり応力がかかった状態で、ロータディスク(不図示)に実装されている。このため上部14のプラットフォーム20は、各ブレード10が、主に側縁21、22の第二部分21B、22Bに沿って、その隣に対して押すことによってねじり応力を受けることができるような形状である。
【0037】
第一側縁21の側では、ブレード10の上部14は、第一側縁21の第二部分21Bに沿って延在する第一外突起リム41を有する。この第一リム41は、上流ワイパ31にも下流ワイパ32にも接続されていない。
【0038】
この例において、第一リム41は基本的に第二部分21Bに沿って延在する。より正確には、これは第一側縁の第三部分21Cに沿って延在せず、部分的にのみ第一部分21Aに沿って延在する。
【0039】
図示される例において、第一リム41は第二部分21Bに沿ってその側面に耐摩耗材料の層41Aを有し、この層は、「Stellite」の商標名で販売され、良好な耐摩耗特性を有するコバルトベース合金でその側面を構成することによって、得られる。
【0040】
その第二側縁22の側では、上部14はやはり、下流ワイパ32に接続された下流部分44を有して第二側縁22の第二および第三部分22Bおよび22Cに沿って延在する、第二突起リム42を有する。第一リム41と同様に、この下流部分44は第二部分22Bに沿ってその側面に耐摩耗材料の層44Aを有し、この層は、良好な耐摩耗特性を有するコバルトベース合金でこの側面を構成することによって得られる。なお、第一リム41とは異なり、下流部分44がワイパ、具体的には下流ワイパ32に接続されることが理解されるべきである。
【0041】
さらに、第二リム42は、上流ワイパ31まで下流部分44を延在させ、第二側縁22の第一部分22Aに対して後退している、上流部分43を有する。言い換えると、上流部分43は第二側縁22の第一部分22Aに沿っておらず、むしろこれは上流部分43がプラットフォームの中央部26の中央により近いという意味において、前記第一部分22Aから後退している。この例において、上流部分43は、最初に第一部分22Aから漸進的に離れて延在するように、まず下流部分44に揃えて延在する。第一部分22Aと比較すると、上流部分43はこうしてプラットフォームの中央部26の中央に向かって漸進的にずれることによって始まる。その後、上流部分43は湾曲して、第一部分22Aから明確に後退した(すなわちずれた)ままで、第一部分22Aに少し近づく。
【0042】
図示される例において、上流部分43は、下流部分44に揃えて、すなわち第二部分22Bの方向に延在することによって始まり、次に上流ワイパ31と実質的に直角につながるように湾曲する。上流部分43はこうして、第一リム41の方を向いている凸状側面を画定する。
【0043】
図2明らかに見られるように、上流部分43は下流部分よりも高さが低く、そのためこれらの部分43と44との間には一種の段がある。
【0044】
図示される例において、第一および第二リム41および42は実質的に同じ幅であり、第二リム42の上流および下流部分43および44も同様に、実質的に同じ幅である。加えて、第一リム41と第二リム42の下流部分44は、実質的に同じ高さである。
【0045】
図示されるように、第一リム41、第二リム42、上流ワイパ31、および下流ワイパ32は、その間に空洞を画定し、これは「バスタブ」とも称されるが、プラットフォーム20の中央部26の外側表面によって形成された実質的に平坦な底部を備えている。