特許第5889916号(P5889916)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5889916
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】電解酸化物還元システム
(51)【国際特許分類】
   C25C 7/02 20060101AFI20160308BHJP
   C25C 7/06 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   C25C7/02 308Z
   C25C7/06 302
【請求項の数】19
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-546133(P2013-546133)
(86)(22)【出願日】2011年9月29日
(65)【公表番号】特表2014-501333(P2014-501333A)
(43)【公表日】2014年1月20日
(86)【国際出願番号】US2011053878
(87)【国際公開番号】WO2012087401
(87)【国際公開日】20120628
【審査請求日】2014年9月26日
(31)【優先権主張番号】12/978,027
(32)【優先日】2010年12月23日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508177046
【氏名又は名称】ジーイー−ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GE−HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】100137545
【弁理士】
【氏名又は名称】荒川 聡志
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【弁理士】
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】バーガー,ジョン・エフ
(72)【発明者】
【氏名】バーネス,ローレル・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィードメイヤー,スタンリー・ジー
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアムソン,マーク・エイ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリット,ジェイムズ・エル
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭60−194090(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25C 1/00−7/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
同じ配向を有し、かつ同じ面内にあるように配列された複数のアノード棒をそれぞれ含む複数のアノードアセンブリと、
各カソードアセンブリの側面に2つのアノードアセンブリがあるようにして前記複数のアノードアセンブリと交互に配列された、それぞれ平面形状である複数のカソードアセンブリと、
除去すべき前記複数のアノードおよびカソードアセンブリの任意の組み合わせを同時に持ち上げるのを容易にする一方で、前記複数のアノードおよびカソードアセンブリのうち除去すべきでない1つもしくは複数を適所に留めたままにできるように、前記複数のアノードアセンブリ、前記複数のカソードアセンブリ、またはそれらの組み合わせを選択的に係合するように構成されたリフトシステムとを備える、電解酸化物還元システム。
【請求項2】
各アノードアセンブリの前記複数のアノード棒の配列面が、各カソードアセンブリの前記平面形状に平行である、請求項1に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項3】
前記複数のアノードおよびカソードアセンブリが垂直に配向される、請求項1に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項4】
各アノードアセンブリの前記複数のアノード棒間の間隔が、隣接したアノードおよびカソードアセンブリの間の距離よりも大きい、請求項1に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項5】
各カソードアセンブリの幅が、隣接したアノードおよびカソードアセンブリの間の距離よりも大きい、請求項1に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項6】
各アノードアセンブリの前記複数のアノード棒間の間隔が、各カソードアセンブリの幅よりも小さい、請求項1に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項7】
隣接したアノードおよびカソードアセンブリの間の距離が0.25から2.75インチ(0.64から6.99cm)の範囲である、請求項1に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項8】
前記リフトシステムが、前記複数のアノードおよびカソードアセンブリの交互配列方向に沿って延在する2つの平行なリフトビームを含む、請求項1に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項9】
前記複数のアノードおよびカソードアセンブリが前記2つの平行なリフトビーム間に配列される、請求項8に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項10】
前記2つの平行なリフトビームが水平方向で延在する、請求項8に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項11】
前記リフトシステムが、各リフトビームの両端部分の下方で固定された軸体をさらに含む、請求項8に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項12】
前記軸体が各リフトビームの両端部分に垂直に固定される、請求項11に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項13】
前記リフトシステムが、前記2つの平行なリフトビームを垂直方向で駆動するように構成された機械的アクチュエータを含む、請求項8に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項14】
前記リフトシステムが、前記2つの平行なリフトビームの各末端部分の下方に機械的アクチュエータを含む、請求項8に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項15】
前記複数のアノードおよびカソードアセンブリを受け入れるように構成され、長手方向の支持体を備え、かつ溶融塩電解質を保持できるように700℃までの温度に耐えることができる材料で形成される、外部から加熱される容器をさらに備える、請求項1に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項16】
前記外部から加熱される容器が、より効率的な動作およびプロセスアップセットからの回復を可能にするため、区分加熱向けに構成される、請求項15に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項17】
前記外部から加熱される容器からの熱損失を制限するように設計されたモジュール式熱シールドをさらに備える、請求項15に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項18】
前記モジュール式熱シールドが、プロセス動作中の電流、電圧、および排ガス組成を監視するように構成された計装ポートを有する、請求項17に記載の電解酸化物還元システム。
【請求項19】
気密シールを維持するとともに、グローブボックス床の温度を80℃未満に制限するように、前記外部から加熱される容器を前記グローブボックス床に接続する、外部の水冷フランジをさらに備える、請求項15に記載の電解酸化物還元システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化物をその金属形態に還元する電解プロセスを行うように構成されたシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
電気化学的プロセスは、不純な供給物から金属を回収する、かつ/または金属酸化物から金属を抽出するのに使用されることがある。従来のプロセスは、一般的に、電解質中の金属酸化物を溶解し、続いて電解分解または選択的電気輸送を行って、金属酸化物をそれに対応する金属に還元することを伴う。金属酸化物をそれらに対応する金属状態に還元する従来の電気化学的プロセスは、単一ステップまたは複数ステップの手法を用いることがある。
【0003】
複数ステップの手法は、一般的に、金属酸化物が電解質に対して比較的低い溶解度を有するときに使用される。複数ステップの手法は、2つの別個の容器を利用する2ステップのプロセスであることがある。例えば、使用済み核燃料の酸化ウランからウランを抽出するには、溶融LiCl電解質中に溶解させたリチウムを用いて酸化ウランを還元して、第1の容器内でウランと溶融LiCl電解質中に溶解したままのLi2Oとを生成する最初のステップを含む。プロセスは、次に、第2の容器内で電解抽出を行って、溶融LiCl中に溶解しているLi2Oを電解分解してリチウムを再生する後続のステップを伴う。したがって、結果として得られるウランを抽出でき、一方で、再生されたリチウムを含む溶融LiClを、別のバッチの還元ステップに使用するために再利用することができる。
【0004】
しかし、複数ステップの手法は、溶融塩および還元剤を高温で1つの容器から別の容器へと移送することに関する問題など、多数の処理上の複雑性を伴う。さらに、溶融塩中の酸化物の還元は、電解質還元剤システムに応じて熱力学的な制約を受けることがある。特に、この熱力学的な制約は、所与のバッチで還元することができる酸化物の量を制限することになる。その結果、要求生産量を満たすため、溶融電解質および還元剤をより頻繁に移送することが求められることになる。
【0005】
他方では、単一ステップの手法は、一般に、相溶性の溶融電解質中にカソードおよびアノードとともに金属酸化物を浸漬することを伴う。アノードおよびカソードを荷電することによって、溶融電解質による電解化成およびイオン交換を通じて、金属酸化物をそれに対応する金属に還元することができる。しかし、従来の単一ステップの手法は複数ステップの手法ほど複雑ではないことがあるものの、金属の収率は依然として比較的低い。
【発明の概要】
【0006】
本発明の非限定的な一実施形態による電解酸化物還元システムは、複数のアノードアセンブリと、複数のカソードアセンブリと、アノードおよび/またはカソードアセンブリを係合するように構成されたリフトシステムとを含んでもよい。各アノードアセンブリは、同じ配向を有し、かつ同じ面内にあるように配列された複数のアノード棒を含んでもよい。複数のカソードアセンブリは、各カソードアセンブリの側面に2つのアノードアセンブリがあるようにして、複数のアノードアセンブリと交互に配列されてもよい。各カソードアセンブリは平面形状であってもよい。リフトシステムは、除去すべき複数のアノードおよび/またはカソードアセンブリの任意の組み合わせを同時に持ち上げるのを容易にする一方で、複数のアノードおよび/またはカソードアセンブリのうち除去すべきでない1つもしくは複数を適所に留めたままにできるように、複数のアノードおよび/またはカソードアセンブリを選択的に係合するように構成されてもよい。
【0007】
非限定的な実施形態の様々な特徴および利点は、詳細な説明を添付図面と併せ読むことによってより明白になることがある。添付図面は、単に例証目的で提供されるものであり、請求項の範囲を限定するものと解釈すべきでない。添付図面は、明示的に指摘されない限り、縮尺通りに描写されているものと見なすべきでない。明瞭にするため、図面の様々な寸法は誇張されていることがある。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の非限定的な一実施形態による電解酸化物還元システムの斜視図である。
図2A】本発明の非限定的な一実施形態による電解酸化物還元システムのアノードアセンブリを示す斜視図である。
図2B】本発明の非限定的な一実施形態による電解酸化物還元システムのアノードアセンブリを示す斜視図である。
図3】本発明の非限定的な一実施形態による電解酸化物還元システムのカソードアセンブリを示す斜視図である。
図4】本発明の非限定的な一実施形態によるリフトシステムが降下位置にある電解酸化物還元システムを示す斜視図である。
図5】本発明の非限定的な一実施形態による電解酸化物還元システムのリフトシステムを示す部分図である。
図6】本発明の非限定的な一実施形態によるリフトシステムが上昇位置にある電解酸化物還元システムを示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ある要素もしくは層が、別の要素もしくは層に対して「〜の上にある」、「〜に接続されている」、「〜連結されている」、または「〜を覆っている」と言及されているとき、直接その別の要素もしくは層の上にある、それに接続されている、それに連結されている、またはそれを覆っているか、あるいは介在する要素または層が存在することがあることを理解されたい。対照的に、ある要素が別の要素もしくは層に対して「直接〜の上にある」、「〜に直接接続されている」、または「〜に直接連結されている」と言及されているとき、介在する要素または層は存在しない。明細書全体を通して同様の数字は同様の要素を指す。本明細書で使用するとき、「および/または」という用語は、関連する列挙した項目の1つまたは複数のあらゆる組み合わせを含む。
【0010】
様々な要素、構成要素、領域、層、および/または区画について説明するのに、第1、第2、第3などの用語が本明細書で使用されることがあるが、これらの要素、構成要素、領域、層、および/または区画はこれらの用語によって限定されるべきでないことを理解されたい。これらの用語は、単に、1つの要素、構成要素、領域、層、または区画を、別の領域、層、または区画と区別するのに使用される。したがって、後述する第1の要素、構成要素、領域、層、または区画は、例示の実施形態の教示から逸脱することなく、第2の要素、構成要素、領域、層、または区画と呼ぶことが可能である。
【0011】
空間的に相対的な用語(例えば、「〜の下方」「〜の下」「下側」、「〜の上」、「上側」など)は、本明細書では、説明を簡単にするため、図面に示されるような別の要素(1つもしくは複数)または特徴(1つもしくは複数)に対する1つの要素または特徴の関係性を説明するのに使用されることがある。空間的に相対的な用語は、図面に示される配向に加えて、使用中または動作中のデバイスの異なる配向を包含しようとするものであることを理解されたい。例えば、図中のデバイスを反転させた場合、他の要素または特徴の「下」もしくは「下方」にあると説明されている要素は、それら他の要素または特徴の「上」に向いていることになる。したがって、「〜の下」という用語は上下両方の配向を包含することがある。デバイスは、別の形で向けられる(90度回転または他の配向)ことがあり、本明細書で使用される空間的に相対的な記述語は適宜解釈される。
【0012】
本明細書で使用される用語は、単に様々な実施形態について説明するためのものであり、例示の実施形態を限定しようとするものではない。本明細書で使用するとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈において別の明示がない限り、複数形も含むものとする。さらに、「含む」、「含んでいる」、「備える」、および/または「備えている」という用語は、本明細書で使用するとき、記載する特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素が存在することを指定するが、1つもしくは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの群が存在すること、あるいは追加されることを除外しないことが理解されるであろう。
【0013】
例示の実施形態は、本明細書では、例示の実施形態の理想的な実施形態(および中間構造)の概略図である断面図を参照して記載される。そのため、例えば製造技術および/または公差の結果として、図面の形状の変形例が予期される。したがって、例示の実施形態は、本明細書に示される領域の形状に限定されるものと解釈すべきではなく、例えば製造の結果として、形状の偏差を含むものである。例えば、長方形として例証される埋込み領域(implanted region)は、一般的に、丸み付けられた、もしくは湾曲した特徴を有し、かつ/またはその縁部において、埋込み領域から非埋込み領域までの二値の変化ではなく埋込み密度の勾配を有する。同様に、埋込みによって形成される埋設領域は、埋設領域と埋込みがそこを通して行われる表面との間の領域において、ある程度の埋込みをもたらすことがある。したがって、図面に示される領域は本質的に概略であり、それらの形状は、デバイスの領域の実際の形状を例証しようとするものではなく、かつ例示の実施形態の範囲を限定しようとするものではない。
【0014】
別段の定義がない限り、本明細書に使用されるすべての用語(技術用語および科学用語を含む)は、例示の実施形態が属する技術の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。さらに、一般に使用される辞書に定義されているものを含む用語は、関連技術の文脈におけるそれらの意味と一致する意味を有するものとして解釈すべきであり、本明細書において明示的に定義されない限り、理想的なまたは過度に形式的な意味合いで解釈されるものではない。
【0015】
本発明の非限定的な一実施形態による電解酸化物還元システムは、酸化物をその金属形態へと還元して、それに続く金属の回収を可能にすることを容易にするように構成される。一般に、電解酸化物還元システムは、複数のアノードアセンブリと、複数のアノードアセンブリそれぞれに対するアノードシュラウドと、複数のカソードアセンブリと、複数のアノードおよびカソードアセンブリに対する配電系統とを含む。しかし、電解酸化物還元システムはそれに限定されず、本明細書において具体的に特定されていない場合もある他の構成要素を含んでもよいことを理解されたい。
【0016】
本明細書の開示に加えて、アノードシュラウドは、関連米国出願第12/977791号、HDP参照番号8564−000224/US、GE参照番号24AR246135、2010年12月23日出願、名称「電解酸化物還元システムからの排ガス捕捉および除去のためのアノードシュラウド(ANODE SHROUD FOR OFF-GAS CAPTURE AND REMOVAL FROM ELECTROLYTIC OXIDE REDUCTION SYSTEM)」に記載されているようなものであってもよく、配電系統は、関連米国出願第12/977839号、HDP参照番号8564−000225/US、GE参照番号24AR246136、2010年12月23日出願、名称「アノード‐カソード配電系統およびそれを電気化学的還元に使用する方法(ANODE-CATHODE POWER DISTRIBUTION SYSTEMS AND METHODS OF USING THE SAME FOR ELECTROCHEMICAL REDUCTION)」に記載されているようなものであってもよく、アノードアセンブリは、関連米国出願第12/977916号、HDP参照番号8564−000226/US、GE参照番号24AR246138、2010年12月23日出願、名称「モジュール式アノードアセンブリおよびそれを電気化学的還元に使用する方法(MODULAR ANODE ASSEMBLIES AND METHODS OF USING THE SAME FOR ELECTROCHEMICAL REDUCTION)」に記載されているようなものであってもよく、カソードアセンブリは、関連米国出願第12/978005号、HDP参照番号8564−000227/US、GE参照番号24AR246139、2010年12月23日出願、名称「モジュール式カソードアセンブリおよびそれを電気化学的還元に使用する方法(MODULAR CATHODE ASSEMBLIES AND METHODS OF USING THE SAME FOR ELECTROCHEMICAL REDUCTION)」に記載されているようなものであってもよく、これらそれぞれの全内容を参照により本明細書に組み込む。組み込んだ出願の表を次に提供する。
【0017】
【表1】
電解酸化物還元システムの動作中、複数のアノードおよびカソードアセンブリは溶融塩電解質に浸漬される。溶融塩電解質は、約650℃(±50℃)の温度で維持されてもよいが、例示の実施形態はそれに限定されない。電気化学的プロセスは、酸化物供給材料(例えば、金属酸化物)を含有するカソードアセンブリにおいて還元電位が発生するようにして実施される。還元電位の影響下で、金属酸化物(MO)供給材料からの酸素(O)が酸化物イオンとして溶融塩電解質に溶解し、それによって金属(M)がカソードアセンブリ内に残される。カソード反応は次の通りであってもよい。
【0018】
MO+2e-→M+O2-
アノードアセンブリでは、酸化物イオンは酸素ガスに変換される。アノードアセンブリそれぞれのアノードシュラウドは、プロセス中に電解酸化物還元システムからの酸化物ガスを希釈し、冷却し、除去するのに使用されてもよい。アノード反応は次の通りであってもよい。
【0019】
2-→1/2O2+2e-
非限定的な一実施形態では、金属酸化物は二酸化ウラン(UO2)であってもよく、還元生成物は金属ウランであってもよい。しかし、他のタイプの酸化物も、本発明による電解酸化物還元システムを用いて、それらに対応する金属に還元されてもよいことを理解されたい。同様に、本発明による電解酸化物還元システムに使用される溶融塩電解質は、特にそれに限定されず、還元される酸化物供給材料に応じて変わってもよい。従来技術の装置と比較して、本発明による電解酸化物還元システムは、還元生成物の収率を大幅に高めることを可能にする。
【0020】
図1は、本発明の非限定的な一実施形態による電解酸化物還元システムの斜視図である。図1を参照すると、電解酸化物還元システム100は、溶融塩電解質を保持するように設計された容器102を含む。したがって、容器102は、溶解塩電解質を安全に保持することができるように、約700℃までの温度に耐えることができる材料で形成される。容器102は、外部から加熱され、長手方向の支持体を備えてもよい。容器102はまた、より効率的な動作およびプロセスアップセット(process upsets)からの回復を可能にするため、区分加熱(zone heating)向けに構成されてもよい。電解酸化物還元システム100の動作中、複数のアノードアセンブリ200およびカソードアセンブリ300(例えば、図4)は、容器102内の溶融塩電解質に部分的に浸漬されるように配列される。アノードアセンブリ200およびカソードアセンブリ300については、図2A〜2Bおよび図3と関連してさらに詳細に考察する。
【0021】
電力は、複数のナイフエッジ形接点(knife edge contacts)104を通してアノードアセンブリ200およびカソードアセンブリ300に分配される。ナイフエッジ形接点104は、容器102の上に載置されるグローブボックス床(glovebox floor)106上に対にして配列される。ナイフエッジ形接点104の各対は、容器102の対向する側にあるように配列される。図1に示されるように、ナイフエッジ形接点104は、一対の列と二対の列とを交互にして配列され、末端の列は一対のナイフエッジ形接点104から成る。
【0022】
ナイフエッジ形接点104の一対の列はアノードアセンブリ200を係合するように構成され、二対の列はカソードアセンブリ300を係合するように構成される。より明白に言えば、複数のナイフエッジ形接点104は、アノードアセンブリ200が一対のナイフエッジ形接点104(2つのナイフエッジ形接点104)を介して1つの電源から電力を受け取り、カソードアセンブリ300が二対のナイフエッジ形接点104(4つのナイフエッジ形接点104)を介して電源から電力を受け取るように配列される。カソードアセンブリ300に対する二対のナイフエッジ形接点104に関して、内側の対は低電力の貫通接続に接続されてもよく、外側の対は高電力の貫通接続に接続されてもよい(あるいはその逆であってもよい)。
【0023】
例えば、電解酸化物還元システム100が、11個のアノードアセンブリ200および10個のカソードアセンブリ300を保持するように設計されていると仮定すると(ただし、例示の実施形態はそれに限定されない)、22個のナイフエッジ形接点104(11対)が11個のアノードアセンブリと関連付けられ、40個のナイフエッジ形接点104(20対)が10個のカソードアセンブリ300と関連付けられることになる。上述したように、本明細書の開示に加えて、配電系統は、関連米国出願第12/977839号、HDP参照番号8564−000225/US、GE参照番号24AR246136、2010年12月23日出願、名称「アノード‐カソード配電系統およびそれを電気化学的還元に使用する方法(ANODE-CATHODE POWER DISTRIBUTION SYSTEMS AND METHODS OF USING THE SAME FOR ELECTROCHEMICAL REDUCTION)」に記載されるようなものであってもよく、その全内容を参照により本明細書に組み込む。
【0024】
それに加えて、電解酸化物還元システム100は、容器102からの熱損失を制限するように設計されたモジュール式熱シールドを含んでもよい。モジュール式熱シールドは、プロセス動作中の電流、電圧、および排ガス組成を監視するように構成された計装ポート(instrumentation ports)を有してもよい。さらに、冷却チャネルおよび伸縮継手がグローブボックス床106と容器102との間に配設されてもよい。伸縮継手は、C字形であって、18ゲージの金属薄板から作られてもよい。冷却チャネルは、グローブボックス床106の下方かつ伸縮継手の上で固定されてもよい。その結果、容器102が約700℃の温度に達することがあるという事実にもかかわらず、冷却チャネルが(容器102の頂部に固定された)伸縮継手から熱を除去し、それによってグローブボックス床106を約80℃以下の温度に保つことができる。
【0025】
図2A〜2Bは、本発明の非限定的な一実施形態による電解酸化物還元システムのアノードアセンブリを示す斜視図である。図2A〜2Bを参照すると、アノードアセンブリ200は、アノード母線208に接続された複数のアノード棒202を含む。各アノード棒202の上側および下側部分は異なる材料で形成されてもよい。例えば、アノード棒202の上側部分はニッケル合金で形成されてもよく、アノード棒202の下側部分はプラチナで形成されてもよいが、例示の実施形態はそれに限定されない。アノード棒202の下側部分は、電解酸化物還元システム100の動作中は溶融塩電解質の水準よりも下に位置してもよく、下側部分を別の材料と交換または変更できるように取外し可能であってもよい。
【0026】
アノード母線208は、熱膨張を低減するようにセグメント化されてもよく、アノード母線208の各セグメントは銅で形成されてもよい。アノード母線208のセグメントは、スリップコネクタと接合されてもよい。それに加えて、スリップコネクタは、アノード棒202が溶融塩電解質に落ち込まないことを担保するため、アノード棒202の頂部に付着してもよい。アノードアセンブリ200は、上述の例のいずれによっても限定されるものではない。より正確に言えば、他の適切な構成および材料も使用されてもよいことを理解されたい。
【0027】
アノードアセンブリ200が電解酸化物還元システム100内へと降下されると、アノード母線208の下端部分がそれに対応するナイフエッジ形接点104の対を係合し、アノード棒202が容器102内の溶融塩電解質内へと延在するようになる。4つのアノード棒202が図2A〜2Bに示されているが、例示の実施形態はそれに限定されないことを理解されたい。したがって、十分なアノード電流が電解酸化物還元システム100に供給されるのであれば、アノードアセンブリ200は、4つ未満のアノード棒202あるいは4つ超過のアノード棒202を含んでもよい。
【0028】
電解酸化物還元システム100の動作中、アノードアセンブリ200は約150℃以下の温度に保つことができる。適切な動作温度を維持するため、アノードアセンブリ200は、冷却ガスを供給する冷却ライン204と、冷却ライン204によって供給された冷却ガスおよび還元プロセスによって発生した排ガスを除去する排ガスライン206とを含む。冷却ガスは不活性ガス(例えば、アルゴン)であってもよく、排ガスは酸素を含んでもよいが、例示の実施形態はそれに限定されない。その結果、排ガスの濃度および温度を低下させ、それによってその腐食性を低減することができる。
【0029】
冷却ガスはグローブボックス雰囲気によって供給されてもよい。非限定的な一実施形態では、グローブボックス外部の加圧ガスは使用されない。かかる事例では、ガス供給源はグローブボックス内部のブロワーを使用して加圧することができ、排ガス排気は外部の真空源を有することになる。ガス供給源を操作するためのモータおよび制御部はすべて、アクセスおよび保守管理を簡単にするため、グローブボックスの外に位置してもよい。溶融塩電解質を凝固させずに保つため、供給プロセスは、アノードシュラウド内部の冷却ガスが約610℃を下回らないように構成することができる。
【0030】
アノードアセンブリ200はさらに、アノードガード210と、リフトベイル(lift bail)212と、計装ガイドチューブ214とを含んでもよい。アノードガード210は、アノード母線208からの保護を提供し、また、カソードアセンブリ300を挿入するための誘導を提供してもよい。アノードガード210は、金属で形成され、アノードアセンブリ200の頂部からの熱損失を可能にするように穿孔されてもよい。リフトベイル212はアノードアセンブリ200の除去に役立つ。計装ガイドチューブ214は、溶融塩電解質および/またはアノードアセンブリ200の下方にあるガス空間に計器を挿入するためのポートを提供する。上述したように、本明細書の開示に加えて、アノードアセンブリは、関連米国出願第12/977916号、HDP参照番号8564−000226/US、GE参照番号24AR246138、2010年12月23日出願、名称「モジュール式アノードアセンブリおよびそれを電気化学的還元に使用する方法(MODULAR ANODE ASSEMBLIES AND METHODS OF USING THE SAME FOR ELECTROCHEMICAL REDUCTION)」に記載されているようなものであってもよく、その全内容を参照により本明細書に組み込む。
【0031】
電解酸化物還元システム100はさらに、アノードアセンブリ200の冷却、ならびに還元プロセスによって発生した排ガスの除去を容易にする、アノードシュラウドを含んでもよい。上述したように、本明細書の開示に加えて、アノードシュラウドは、関連米国出願第12/977791号、HDP参照番号8564−000224/US、GE参照番号24AR246135、2010年12月23日出願、名称「電解酸化物還元システムからの排ガス捕捉および除去のためのアノードシュラウド(ANODE SHROUD FOR OFF-GAS CAPTURE AND REMOVAL FROM ELECTROLYTIC OXIDE REDUCTION SYSTEM)」に記載されているようなものであってもよく、その全内容を参照により本明細書に組み込む。
【0032】
図3は、本発明の非限定的な一実施形態による電解酸化物還元システムのカソードアセンブリを示す斜視図である。図3を参照すると、カソードアセンブリ300は、還元プロセスのための酸化物供給材料を含有するように設計され、上側バスケット302と、下側バスケット306と、上側バスケット302および下側バスケット306内に収容されたカソードプレート304とを含む。組み立てられたとき、カソードプレート304は、上側バスケット302の上端から下側バスケット306の下端まで延在するようになる。カソードプレート304の側縁部は、剛性を持たせるために縁取りされてもよい。剛性を増すため、カソードプレート304の中央を下方に向かって折り返し(reverse bend)も設けられてもよい。下側バスケット306は、4つの高強度リベットを用いて上側バスケット302に固着されてもよい。下側バスケット306または上側バスケット302のどちらかが損傷した場合、リベットをドリルで外し、損傷したバスケットを交換し、リベットで留め直して動作を継続させることができる。
【0033】
カソードバスケット(上側バスケット302および下側バスケット306を含む)は、カソードプレート304から電気的に絶縁される。各カソードアセンブリ300は、2つの電源から電力を受け取るように、二対のナイフエッジ形接点104(4つのナイフエッジ形接点104)を係合するように構成される。例えば、カソードプレート304は一次還元電流を受け取ってもよく、カソードバスケットは、還元プロセスの様々な副生成物を制御するため、二次電流を受け取ってもよい。カソードバスケットは、還元プロセス中に溶融塩電解質が出入りできるように十分に開いた、かつ酸化物供給材料および結果として生じる金属生成物を保持するのに十分に微細である、多孔質金属プレートで形成されてもよい。
【0034】
歪みを低減または防止するため、補強用リブがカソードバスケット内部に設けられてもよい。垂直の補強用リブが下側バスケット306内に設けられた場合、カソードプレート304は、カソードプレート304がカソードバスケットに挿入されたときに補強用リブの周りに隙間ができるように、リブに対応するスロットを有することになる。例えば、下側バスケット306が2つの垂直の補強用リブを備えている場合、カソードプレート304は、その2つの補強用リブの周りに隙間ができるように、2つの対応するスロットを有することになる。それに加えて、酸化物供給材料をロードするときにカソードプレート304がカソードバスケットの中央に留まることを担保するため、カソードプレート304の両面の中間部付近に位置スペーサが設けられてもよい。位置スペーサは、セラミックであって、垂直に配向されてもよい。さらに、カソードアセンブリ300の頂部への放射伝熱および伝導伝熱に対する断熱層を提供するため、カソードプレート304の両面の上側区画に食い違いスペーサ(staggered spacers)が設けられてもよい。食い違いスペーサは、セラミックであって、水平に配向されてもよい。
【0035】
カソードアセンブリ300はまた、リフトタブ310が端部に配設されたリフトブラケット308を含んでもよい。リフトタブ310は、電解酸化物還元システム100のリフトシステム400(例えば、図4〜6)と連動するように設計される。上述したように、本明細書の開示に加えて、カソードアセンブリは、関連米国出願第12/978005号、HDP参照番号8564−000227/US、GE参照番号24AR246139、2010年12月23日出願、名称「モジュール式カソードアセンブリおよびそれを電気化学的還元に使用する方法(MODULAR CATHODE ASSEMBLIES AND METHODS OF USING THE SAME FOR ELECTROCHEMICAL REDUCTION)」に記載されているようなものであってもよく、その全内容を参照により本明細書に組み込む。
【0036】
図4は、本発明の非限定的な一実施形態によるリフトシステムが降下位置にある電解酸化物還元システムを示す斜視図である。図4を参照すると、リフトシステム400は、電解酸化物還元システム100の長さ方向に沿って配列された一対のリフトビーム402を含む。リフトビーム402は平行に配列されてもよい。軸体408および機械的アクチュエータ410は、リフトビーム402の各末端部分と関連付けられる。リフトシステム400に加えて、図4は、動作中の電解酸化物還元システム100内に配列されるような複数のアノードアセンブリ200およびカソードアセンブリ300も示している。
【0037】
上述したように、電解酸化物還元システム100は、複数のアノードアセンブリ200と、複数のカソードアセンブリ300と、リフトシステム400とを含む。各アノードアセンブリ200は、同じ配向を有し、かつ同じ面内にあるように配列された複数のアノード棒202を含む。複数のカソードアセンブリ300は、各カソードアセンブリの側面に2つのアノードアセンブリがあるようにして、複数のアノードアセンブリ200と交互に配列される。各カソードアセンブリ300はまた、平面形状であってもよい。図4は、11個のアノードアセンブリ200および10個のカソードアセンブリ300を有するものとして電解酸化物還元システム100を示しているが、電解酸化物還元システム100のモジュール設計によって、より多数またはより少数のアノードアセンブリ200およびカソードアセンブリ300の使用が可能になるので、例示の実施形態はそれに限定されないことを理解されたい。
【0038】
リフトシステム400は、除去すべき複数のアノードアセンブリ200および/またはカソードアセンブリ300の任意の組み合わせを同時に持ち上げるのを容易にする一方で、複数のアノードアセンブリ200および/またはカソードアセンブリ300のうち除去すべきでない1つもしくは複数を適所に留めたままにできるように、複数のアノードアセンブリ200および/またはカソードアセンブリ300を選択的に係合するように構成される。したがって、リフトシステム400を用いてすべてのカソードアセンブリ300が同時に除去されてもよく、または1つのカソードアセンブリ300のみが除去されてもよい。
【0039】
複数のアノードアセンブリ200およびカソードアセンブリ300は垂直に配向される。各アノードアセンブリ200の複数のアノード棒202の配列面は、各カソードアセンブリ300の平面形状に平行であってもよい。各アノードアセンブリ200の複数のアノード棒202間の間隔は、隣接したアノードアセンブリ200とカソードアセンブリ300との間の距離よりも大きくてもよい。各カソードアセンブリ300の幅は、隣接したアノードアセンブリ200とカソードアセンブリ300との間の距離よりも大きくてもよく、この幅とは、一方のリフトビーム402から他方のリフトビーム402に向かって延在する寸法である。各アノードアセンブリ200の複数のアノード棒202間の間隔は、各カソードアセンブリ300の幅よりも小さくてもよい。非限定的な一実施形態では、隣接したアノードアセンブリ200とカソードアセンブリ300との間の距離は、約0.25〜2.75インチ(約0.64〜6.99cm)の範囲であってもよい。例えば、隣接したアノードアセンブリ200およびカソードアセンブリ300は約1.5インチ(約3.81cm)間隔であってもよい。様々な寸法を上述してきたが、動作中の電解酸化物還元システム100内における電界力線(electric field lines)を最適化することに関して、他の変形例も適切であることを理解されたい。
【0040】
リフトシステム400の2つの平行なリフトビーム402は、複数のアノードアセンブリ200およびカソードアセンブリ300の交互配列方向に沿って延在する。複数のアノードアセンブリ200およびカソードアセンブリ300は、2つの平行なリフトビーム402間に配列される。2つの平行なリフトビーム402は水平方向で延在してもよい。リフトシステム400の軸体408は、各リフトビーム402の両端部分の下方で固定される。例えば、軸体408は、各リフトビーム402の両端部分に垂直に固定されてもよい。リフトシステム400の機械的アクチュエータ410は、軸体408を介して2つの平行なリフトビーム402を垂直方向で駆動するように構成される。機械的アクチュエータ410は、2つの平行なリフトビーム402の各末端部分の下方に設けられる。
【0041】
軸体408は、気密性の滑り軸受を用いてグローブボックス床106を貫通して延在してもよい。気密性の滑り軸受は、2つの軸受スリーブと2つのグランドシール(gland seals)とを含んでもよい。軸受スリーブは高分子量ポリエチレンで形成されてもよい。2つのグランドシール間の空間は、ポートを使用して不活性ガス(例えば、アルゴン)によって1.5〜3水柱インチ(3.7〜7.5hPa)の正圧まで(グローブボックス雰囲気の最大負圧が1.5水柱インチ(3.7hPa)であると仮定して)加圧されてもよい。グランドシールは、グローブボックス雰囲気を犠牲にすることなく交換されるように設計される。外部の水冷フランジは、気密シールを維持するとともに、グローブボックス床106の温度を約80℃未満に制限するように、容器102をグローブボックス床106に接続してもよい。
【0042】
図5は、本発明の非限定的な一実施形態による電解酸化物還元システムのリフトシステムを示す部分図である。図5を参照すると、リフトシステム400は、リフトビーム402それぞれの長手方向に沿って分散させた複数のリフトカップ406を含む。電解酸化物還元システム100が10個のカソードアセンブリ300を有すると仮定すると(ただし、例示の実施形態はそれに限定されない)、各カソードアセンブリ300に対して2つのリフトカップ406を提供するように、各リフトビーム402に10個のリフトカップ406が配設されてもよい。リフトカップ406は、平行なリフトビーム402の内側側面に配設される。リフトカップ406は、端部が外向きに張り出したU字形であってもよい。しかし、リフトカップ406は、図5に示される構造に限定されず、その代わりに、カソードアセンブリ300のリフトピン310を係合するのに適した他の形状および形態(例えば、フック)を含むものとすることを理解されたい。
【0043】
各リフトカップ406はソレノイド404を備えるが、例示の実施形態はそれに限定されない。各ソレノイド404は、リフトビーム402の対向する外側側面に取り付けられ、対応するリフトカップ406を駆動する(例えば、回転させる)ように構成される。各リフトカップ406にソレノイド404を設けることによって、各リフトカップ406を独立して駆動することができる。しかし、リフトカップ406(形状および形態が異なっていてもよい)はまた、カソードアセンブリ300のリフトピン310を係合するのに異なるやり方で操作されてもよいことを理解されたい。例えば、回転させる代わりに、リフトカップ406は、伸長/後退してカソードアセンブリ300のリフトピン310を係合/係脱するように構成されてもよい。
【0044】
リフトカップ406は、一対のリフトカップ406が複数のカソードアセンブリ300それぞれと関連付けられるようにして、各リフトビーム402に沿って配列される。「対」とは、一方のリフトビーム402からのリフトカップ406と他方のリフトビーム402からの対応するリフトカップ406とを指す。リフトカップ406は、一対のリフトカップ406が、電解酸化物還元システム100の各カソードアセンブリ300の側端部から突出するリフトタブ310と位置合わせされるように、各リフトビーム402に沿って間隔を空けられる。リフトカップ406は、それに対応するリフトタブ310と垂直に位置合わせされてもよい。リフトカップ406の各対は、回転することができ、かつ対応するカソードアセンブリ300の側端部から突出するリフトタブ310の下に位置付けられるように構成される。別の方法では、リフトカップ406はリフトタブ310の上に位置するように回転されてもよい。
【0045】
図6は、本発明の非限定的な一実施形態によるリフトシステムが上昇位置にある電解酸化物還元システムを示す斜視図である。図6を参照すると、リフトシステム400は、電解酸化物還元システム100の動作または保守管理中に用いられてもよい。例えば、還元プロセス後、金属生成物へのアクセスを可能にするため、カソードアセンブリ300がリフトシステム400を用いて電解酸化物還元システム100から除去されてもよい。上昇位置において、カソードアセンブリ300の一部分は、除去の準備ができるまで熱ブロックとして作用するように、容器102のカバーの下に留まっていてもよい。
【0046】
還元プロセス中、リフトカップ406は、カソードアセンブリ300のリフトタブ310の上で反転されてもよい。1つまたは複数のカソードアセンブリ300が除去されるとき、リフトビーム402は降下され、リフトビーム402上のリフトカップ406は、除去すべきカソードアセンブリ300のリフトタブ310の下に位置付けられるようにソレノイド404によって回転される。次に、機械的アクチュエータ410は軸体408を垂直方向で上向きに駆動し、それによって平行なリフトビーム402が関連するカソードアセンブリ300とともに持ち上げられる。上昇位置にある間、リフトビーム402が完全に降下されるまで、電気的ロックアウトによってリフトカップ406が作動しないようにしてもよい。この特徴によって、上昇位置にある間にカソードアセンブリ300が係脱しないことが担保される。金属生成物を含むカソードアセンブリ300が回収され、酸化物供給材料を含有するカソードアセンブリ300と置き換えられれば、酸化物供給材料を含むカソードアセンブリ300は、リフトシステム400を介して、電解酸化物還元システム100の容器102内の溶融塩電解質中へと降下されてもよい。
【0047】
あるいは、カソードアセンブリ300は、部品の検査、修理、交換を可能にするため、または別の方法で、通常はカソードアセンブリ300で占められている容器102の部分へのアクセスを可能にするため、電解酸化物還元システム100から除去されてもよい。リフトプロセスは上述したようなものであってもよい。関連する保守管理または他の作業が行われれば、カソードアセンブリ300は、リフトシステム400を介して電解酸化物還元システム100の容器102内の溶融塩電解質中へと降下されてもよい。図6は、リフトシステム400が上昇位置にあるときにすべてのカソードアセンブリ300が同時に除去されるものとして示しているが、リフトシステム400は、隣接していてもしていなくてもよいカソードアセンブリ300のうち1個からすべてまでのいずれかを除去できるように構成されることを理解されたい。
【0048】
上述の実施例はカソードアセンブリ300の除去に焦点を当てているが、リフトシステム400は、同様に、アノードアセンブリ200の任意の組み合わせを上昇/降下させるように構成され操作されてもよいことを理解されたい。アノードアセンブリ200および/またはカソードアセンブリ300が上昇位置にあれば、リフトシステム400からのそれらの除去は、グローブボックス内の別の機構(例えば、クレーン)を用いて達成されてもよい。
【0049】
多数の例示の実施形態について本明細書に開示してきたが、他の変形例が可能であってもよいことを理解されたい。かかる変形例は、本開示の趣旨および範囲から逸脱するものと見なされるものではなく、当業者には明白であるような修正はすべて以下の請求項の範囲内に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0050】
100 電解酸化物還元システム
102 容器
104 ナイフエッジ形接点
106 グローブボックス床
200 アノードアセンブリ
202 アノード棒
204 冷却ライン
206 排ガスライン
208 アノード母線
210 アノードガード
212 リフトベイル
214 計装ガイドチューブ
300 カソードアセンブリ
302 上側バスケット
304 カソードプレート
306 下側バスケット
308 リフトブラケット
310 リフトタブ
400 リフトシステム
402 リフトビーム
404 ソレノイド
406 リフトカップ
408 軸体
410 機械的アクチュエータ
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6