特許第5889924号(P5889924)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5889924c−METの二量体化を阻害する新規な抗体およびその使用
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5889924
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】c−METの二量体化を阻害する新規な抗体およびその使用
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20160308BHJP
   C07K 16/30 20060101ALI20160308BHJP
   C12N 5/12 20060101ALI20160308BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20160308BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20160308BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20160308BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20160308BHJP
   A01K 67/027 20060101ALI20160308BHJP
   C12P 21/08 20060101ALI20160308BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20160308BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160308BHJP
   G01N 33/50 20060101ALI20160308BHJP
   G01N 33/574 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K16/30
   C12N5/12
   C12N1/15
   C12N1/19
   C12N1/21
   C12N5/10
   A01K67/027
   C12P21/08
   A61K39/395 T
   A61P35/00
   G01N33/50 Z
   G01N33/574 A
【請求項の数】33
【外国語出願】
【全頁数】85
(21)【出願番号】特願2014-617(P2014-617)
(22)【出願日】2014年1月6日
(62)【分割の表示】特願2010-515513(P2010-515513)の分割
【原出願日】2008年7月10日
(65)【公開番号】特開2014-113154(P2014-113154A)
(43)【公開日】2014年6月26日
【審査請求日】2014年2月4日
(31)【優先権主張番号】07301231.2
(32)【優先日】2007年7月12日
(33)【優先権主張国】EP
(31)【優先権主張番号】60/929,789
(32)【優先日】2007年7月12日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/020,639
(32)【優先日】2008年1月11日
(33)【優先権主張国】US
【微生物の受託番号】CNCM  CNCM I-3732
(73)【特許権者】
【識別番号】500033483
【氏名又は名称】ピエール、ファーブル、メディカマン
(74)【代理人】
【識別番号】100117787
【弁理士】
【氏名又は名称】勝沼 宏仁
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100107342
【弁理士】
【氏名又は名称】横田 修孝
(74)【代理人】
【識別番号】100137497
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 未知子
(72)【発明者】
【氏名】リリアンヌ、ゲシュ
【審査官】 小金井 悟
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2005/0233960(US,A1)
【文献】 国際公開第2006/015371(WO,A2)
【文献】 米国特許第06207152(US,B1)
【文献】 Cancer Res.,2006年 2月 1日,Vol.66, No.3,p.1721-1729
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 1/00−19/00
PubMed
Google Scholar
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列を含んでなるCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号13、11および14のアミノ酸配列を含んでなるCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖とを含んでなる、単離された抗c−Met抗体またはその機能的二価フラグメントの1つ。
【請求項2】
配列番号19のアミノ酸配列の重鎖と、配列番号22のアミノ酸配列の軽鎖とを含んでなる、請求項1に記載の抗体またはその機能的二価フラグメントの1つ。
【請求項3】
2007年3月14日にCNCM(パスツール研究所、パリ)に番号I−3732として寄託された、請求項1または2に記載の抗体を分泌することができるネズミハイブリドーマ。
【請求項4】
リガンド依存的およびリガンド非依存的双方のc−Metの活性化を阻害することができる、請求項1または2に記載の単離された抗体。
【請求項5】
c−Metと特異的に結合することができる、請求項4に記載の単離された抗体。
【請求項6】
少なくとも1つの腫瘍型の腫瘍細胞増殖の少なくとも50%を阻害することができる、請求項5に記載の単離された抗体。
【請求項7】
c−Metの二量体化を阻害することができる、請求項6に記載の単離された抗体。
【請求項8】
モノクローナル抗体である、請求項1、2および4〜7のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項9】
二価である、請求項1、2および4〜8のいずれか一項に記載の単離された抗体。
【請求項10】
抗体がキメラ抗体であり、マウスとは異種の抗体に由来する軽鎖および重鎖定常領域をさらに含んでなる、請求項1、2および4〜9のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的二価フラグメントの一つ。
【請求項11】
前記異種がヒトである、請求項10に記載のキメラ抗体またはその機能的二価フラグメントの一つ。
【請求項12】
ヒト種抗体に由来する軽鎖定常領域が、κ領域であり、ヒト種抗体に由来する重鎖定常領域が、κ、γ−1、γ−2、およびγ−4領域から選択されるヒト化抗体である、請求項11に記載のキメラ抗体またはその機能的二価フラグメントの1つ。
【請求項13】
次の核酸:
a)請求項1、2および4〜12のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的二価フラグメントの1つをコードする核酸、DNAまたはRNA;
b)
・配列番号27、配列番号28、配列番号29の配列ならびに配列番号36、配列番号34および配列番号37の配列を含んでなる核酸配列
からなる配列群から選択されるDNA配列を含んでなる核酸;
c)
・配列番号42および配列番号45の配列を含んでなる核酸配列
からなる配列群から選択されるDNA配列を含んでなる核酸;
d)b)またはc)で定義された核酸の対応するRNA核酸;ならびに
e)a)、b)およびc)で定義された核酸の相補的核酸
から選択される、単離された核酸。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸を含んでなるベクター。
【請求項15】
請求項14に記載のベクターを含んでなる単離された宿主細胞。
【請求項16】
請求項14に記載のベクターにより形質転換された少なくとも1つの細胞を含んでなる、ヒト以外のトランスジェニック動物。
【請求項17】
請求項1、2および4〜12のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的二価フラグメントの1つを製造するためのプロセスであって、以下の段階:
a)請求項15に記載の細胞の、培地および適当な培養条件での培養;および
b)培養培地または前記培養細胞から出発する、このようにして得られた前記抗体またはそれらの機能的二価フラグメントの1つの回収
を含んでなる、プロセス。
【請求項18】
薬剤としての、請求項1、2および4〜12のいずれか一項に記載の抗体。
【請求項19】
有効成分として、請求項1、2および4〜12のいずれか一項に記載の、または請求項17に記載のプロセスにより得られる、抗体またはその機能的二価フラグメントの1つからなる化合物を含んでなる、組成物。
【請求項20】
同時、個別または逐次使用のための組合せ物として抗腫瘍抗体をさらに含んでなる、請求項19に記載の組成物。
【請求項21】
同時、個別または逐次使用のための組合せ物として細胞傷害性/細胞増殖抑制剤をさらに含んでなる、請求項19または20に記載の組成物。
【請求項22】
前記細胞傷害性/細胞増殖抑制剤が、同時使用のための前記抗体または前記機能的二価フラグメントと化学的にカップリングされる、請求項21に記載の組成物。
【請求項23】
前記細胞傷害性/細胞増殖抑制剤が、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害剤、クロマチン機能阻害剤、抗脈管形成剤、抗エストロゲン作用薬、抗アンドロゲン薬、および免疫調節剤からなる群から選択される、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記細胞傷害性/細胞増殖抑制剤が、有糸分裂阻害剤である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記抗体またはその機能的二価フラグメントの1つの少なくとも1つが、細胞毒素および/または放射性元素とコンジュゲートされる、請求項20に記載の組成物。
【請求項26】
薬剤としての、請求項19〜25のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項27】
請求項1、2および4〜12のいずれか一項に記載される抗体と、薬学的に許容可能な賦形剤とを含んでなる、医薬組成物。
【請求項28】
腫瘍細胞の成長および/または増殖の阻害に用いるための、請求項1、2および4〜12のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的二価フラグメントの1つを含んでなる医薬組成物、あるいは請求項19〜26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項29】
癌の予防または治療に用いるための、請求項1、2および4〜12のいずれか一項に記載の抗体またはその機能的二価フラグメントの1つを含んでなる医薬組成物、あるいは請求項19〜26のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項30】
前記癌が、前立腺癌、骨肉腫、肺癌、乳癌、子宮内膜癌、膠芽腫または結腸癌から選択される癌である、請求項29に記載の医薬組成物または組成物。
【請求項31】
前記癌が、HGF依存性および非依存性のMet活性化関連癌である、請求項29または30に記載の医薬組成物または組成物。
【請求項32】
c−Met受容体の異常な存在が疑われる生体サンプルから始まるc−Met受容体の過剰発現または過少発現により引き起こされる疾病を検出するのを補助する方法であって、該生体サンプルと、請求項1、2および4〜12のいずれか一項に記載される、または請求項3に記載のハイブリドーマにより生産される抗体とを接触させることを含んでなる、方法。
【請求項33】
該抗体が標識される、請求項32に記載のc−Met受容体の過剰発現または過少発現により引き起こされる疾病を検出するのを補助する方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
技術分野
本発明は、ヒトc−Met受容体と特異的に結合することができ、かつ/または該受容体のチロシンキナーゼ活性を特異的に阻害することができる新規な抗体、特に、ネズミ、キメラおよびヒト化起源のモノクローナル抗体、ならびにこれらの抗体をコードするアミノ酸および核酸配列に関する。より詳しくは、本発明による抗体は、c−Metの二量体化を阻害することができる。本発明はまた、該受容体の過剰発現に関連する癌またはいずれかの病状の予防的処置および/または治療的処置のための薬剤としての、ならびにc−Metの過剰発現に関連する疾病の診断のためのプロセスまたはキットにおける、これらの抗体の使用も含む。本発明は最後に、このような抗体を、腫瘍の進行もしくは転移に関与する他の増殖因子に対する他の抗体および/または化学化合物、および/または毒素とコンジュゲートさせた化合物および/または抗癌剤または薬剤と組み合わせて含んでなる物および/または組成物、ならびにある種の癌の予防および/または治療にためのそれらの使用を含んでなる。
【0002】
発明の背景
トラスツズマブ、セツキシマブ、ベバシズマブ、イマチニブおよびゲフィチニブ阻害剤などの受容体チロシンキナーゼ(RTK)標的薬は、選択された癌の処置のためにこのタンパク質種を標的化することの重要性を示している。
【0003】
c−MetはRTKサブファミリーの基本型メンバーであり、これにはまたRONおよびSEAも含まれる。c−Met RTKファミリーは他のRTKファミリーとは構造的に異なり、分散因子(SF)としても知られる肝細胞増殖因子(HGF)に対する、唯一知られている高親和性受容体である[D.P. Bottaro et al, Science 1991, 251: 802-804; L. Naldini et al, Eur. Mol. Biol. Org. J. 1991, 10:2867-2878]。c−MetおよびHGFは種々の組織で広く発現し、それらの発現は通常それぞれ上皮起源および間葉起源の細胞に限定されている[M. F. Di Renzo et al., Oncogene 1991, 6:1997-2003; E. Sonnenberg et al., J. Cell. Biol. 1993, 123:223-235]。それらは双方とも正常な哺乳類の発生に必要であり、細胞の遊走、形態形成分化および三次元管構造の組織化、ならびに成長および脈管形成に特に重要であることが示されている[F. Baldt et al., Nature 1995, 376:768-771; C. Schmidt et al., Nature. 1995:373:699-702; Tsarfaty et al., Science 1994, 263:98-101]。c−MetおよびHGFの制御された調節が哺乳類の発生、組織の維持および修復に重要であることが示されている[Nagayama T, Nagayama M, Kohara S, Kamiguchi H, Shibuya M, Katoh Y, Itoh J, Shinohara Y., Brain Res. 2004, 5;999(2): 155-66; Tahara Y, Ido A, Yamamoto S, Miyata Y, Uto H, Hori T, Hayashi K, Tsubouchi H., J Pharmacol Exp Ther. 2003, 307(1): 146-51]とともに、それらの調節不全が癌の進行に関連づけられている。
【0004】
c−Metの不適切な活性化により引き起こされる異常なシグナル伝達はヒトの癌に最も頻繁に見られる変化の1つであり、腫瘍形成および転移に重要な役割を果たしている[Birchmeier et al., Nat. Rev. Mol. Cell Biol. 2003, 4:915-925; L. Trusolino and Comoglio P. M., Nat Rev. Cancer. 2002, 2(4):289-300]。
【0005】
不適切なc−Metの活性化は、c−Metの過剰発現を含むリガンド依存的および非依存的機構、および/またはパラ分泌または自己分泌の活性化、または機能的突然変異における増分により起こり得る[J.G. Christensen, Burrows J. and Salgia R., Cancer Latters. 2005, 226:1-26]。しかしながら、ATPおよびチロシン含有ペプチド基質に対するキナーゼの結合親和性および結合速度を調節するには、リガンドの存在下または不在下でのc−Met受容体のオリゴマー化が必要である[Hays JL, Watowich SJ, Biochemistry, 2004 Aug 17, 43:10570-8]。活性化されたc−Metは、細胞質ドメインに位置する多重ドッキング部位にシグナル伝達エフェクターを動員し、その結果、Ras−MAPK、PI3K、SrcおよびStat3を含むいくつかの重要なシグナル伝達経路が活性化される[Gao CF, Vande Woude GF, Cell Res. 2005, 15(1):49-51; Furge KA, Zhang YW, Vande Woude GF, Oncogene. 2000, 19(49):5582-9]。これらの経路は腫瘍細胞の増殖、浸潤および脈管形成に、また、アポトーシスの回避に不可欠である[Furge KA, Zhang YW, Vande Woude GF, Oncogene, 2000, 19(49):5582-9; Gu H, Neel BG, Trends Cell Biol. 2003 Mar, 13(3): 122-30; Fan S, Ma YX, Wang JA, Yuan RQ, Meng Q, Cao Y, Laterra JJ, Goldberg ID, Rosen EM, Oncogene. 2000 Apr 27, 19(18):2212-23]。さらに、他のRTKに比べてc−Metシグナル伝達のユニークな一面は、その報告されている、焦点接着複合体(focal adhesion complexes)およびα6β4インテグリン[Trusolino L, Bertotti A, Comoglio PM, Cell. 2001, 107:643-54]、CD44v6[Van der Voort R, Taher TE, Wielenga VJ, Spaargaren M, Prevo R, Smit L, David G, Hartmann G, Gherardi E, Pals ST, J Biol Chem. 1999, 274(10):6499-506]、プレキシンB1またはセマフォリン[Giordano S, Corso S, Conrotto P, Artigiani S, Gilestro G, Barberis D, Tamagnone L, Comoglio PM, Nat Cell Biol. 2002, 4(9):720-4; Conrotto P, Valdembri D, Corso S, Serini G, Tamagnone L, Comoglio PM, Bussolino F, Giordano S, Blood. 2005, 105(11):4321-9; Conrotto P, Corso S, Gamberini S, Comoglio PM, Giordano S, Oncogene. 2004, 23:5131-7]などの非キナーゼ結合相手との相互作用であり、これらがこの受容体による細胞機能の調節の複雑性にさらに加わる。最後に、最近のデータは、c−Metが腫瘍のゲフィチニブまたはエルロチニブ耐性に関与している可能性があることを示し、EGFRとc−Metの双方を標的とする化合物の組合せが極めて重要となり得ることを示唆している[Engelman JA at al., Science, 2007, 316:1039-43]。
【0006】
ここ数年で、癌細胞系統においてc−Metのシグナル伝達を減弱するために多くの異なる戦略が開発されてきた。これらの戦略は、i)c−MetまたはHGF/SFに対する抗体の中和[Cao B, Su Y, Oskarsson M, Zhao P, Kort EJ, Fisher RJ, Wang LM, Vande Woude GF, Proc Natl Acad Sci U S A. 2001, 98(13):7443-8; Martens T, Schmidt NO, Eckerich C, Fillbrandt R, Merchant M, Schwall R, Westphal M, Lamszus K, Clin Cancer Res. 2006, 12(20):6144-52]またはc−Metへのリガンドの結合を防ぐためのHGF/SFアンタゴニストNK4の使用[Kuba K, Matsumoto K, Date K, Shimura H, Tanaka M, Nakamura T, Cancer Res., 2000, 60:6737-43]、ii)キナーゼ活性を遮断するc−Metに対する小ATP結合部位阻害剤[Christensen JG, Schreck R, Burrows J, Kuruganti P, Chan E, Le P, Chen J, Wang X, Ruslim L, Blake R, Lipson KE, Ramphal J, Do S, Cui JJ, Cherrington JM, Mendel DB, Cancer Res. 2003, 63:7345-55]、iii)マルチドッキング部位(multidocking site)への接近を妨げる、操作されたSH2ドメインポリペプチドおよび受容体またはリガンドの発現を低下させるRNAiまたはリボザイムを含む。これらのアプローチのほとんどは、腫瘍阻害をもたらすc−Metの選択的阻害を示し、c−Metが癌における治療的介入に重要となり得ることを示す。
【0007】
c−Metの標的化のために作出された分子のうちいくつかは抗体である。
【0008】
種々のモデルに単独で加えた場合には強力なアゴニストとして、また、Fabフラグメントとして用いる場合にはアンタゴニストとして挙動する、Genentech[WO96/38557]により作出された抗c−Met 5D5抗体が最も包括的に記載されている。one armed 5D5(OA5D5)と記載され、大腸菌(E. coli)において組換えタンパク質として生産される、この抗体の一価操作型も、Genentechによる特許出願[WO2006/015371]の対象である。しかしながら、その特定のスキャフォールドのために抗体として認識され得ないこの分子は、ヒトにおいて免疫原性であり得る突然変異も示す。活性という点で、この非グリコシル化分子はエフェクター機能を欠き、最終的に、OA5D5がc−Metの二量体化を阻害するということを示す明らかなデータは無い。さらに、G55 in vivoモデル、すなわち、c−Metを発現するが、HGF mRNAおよびタンパク質は発現せず、リガンドとは独立に成長する膠芽腫細胞系統において試験した場合、一腕(one armed)抗c−MetはG55腫瘍成長に有意な効果を持たず、このことはOA5D5が主としてHGF結合を遮断することにより働き、HGFとは独立に活性化された腫瘍を標的とすることはできないことを示唆する[Martens T. et al, Clin. Cancer Res., 2006, 12(20):6144-6152]。
【0009】
c−Metを標的とする別の抗体は、Pfizerにより「主としてc−Metアンタゴニスト、場合によってはc−Metアゴニストとして」働く抗体として記載されている[WO2005/016382]。
【0010】
この出願には、c−Met二量体化に対するPfizer抗体の効果を示すデータは記載されていない。
【0011】
本発明の革新的な態様の1つは、内因性のアゴニスト活性を持たず、かつ、c−Metの二量体化を阻害するマウスモノクローナル抗体を作出することである。リガンド依存性腫瘍を標的とすることに加え、このアプローチは、その過剰発現、またはシグナル伝達のためにオリゴマー化になお依存する細胞内ドメインの突然変異のためにリガンド非依存性のc−Metの活性化も損なう。このような抗体の活性のもう1つの態様は、c−Met機能の障害をもたらす、c−Metとその相手との相互作用に対する立体障害であり得る。これらの抗体は、c−Met受容体の特異的遮断に関連する機能に加え、ADCCおよびCDCなどのエフェクター機能を獲得するように、好ましくは、限定されないが、ヒトIgG1としてヒト化および操作される。
【0012】
発明の開示
驚くことに、発明者らは、c−Metと結合することができるだけでなく、c−Metの二量体化を阻害することもできる抗体を初めて作出することができた。先行技術においてc−Metとその相手との二量体化を阻害することができる抗体が興味深いものであり得ることが示唆されることがあったとしても、そうすることができる抗体が開示または明らかに示唆されることは無かった。さらに、抗体特異性に関しては、このような活性な抗体の作出に成功したことは全く明らかでなかった。
【0013】
第1の態様において、本発明の対象は、本発明による抗体の作製および選択のための方法である。
【0014】
より詳しくは、本発明は、リガンド依存的および非依存的双方のc−Metの活性化を阻害することができる抗c−Met抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つの選択のためのプロセスであって、
i)作製された抗体をスクリーニングし、c−Metと特異的に結合することができる抗体を選択する工程;
ii)選択された工程i)の抗体をイン・ビトロで評価し、少なくとも1つの腫瘍型の腫瘍細胞増殖の少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%、70%または80%を阻害することができる抗体を選択する工程;および次いで
iii)選択された工程ii)の抗体を試験し、c−Metの二量体化を阻害することができる抗体を選択する工程
を含んでなるプロセスに関する。
【0015】
以上に説明したように、c−Met二量体化の阻害は本発明の主要な態様であり、抗体それ自体、より大きな患者集団に実際の利益を提供する。リガンド依存性活性化c−Met癌だけでなく、本発明の範囲内である限り、非依存性活性化c−Met癌も、本発明のプロセスにより作製された抗体で処置可能である。
【0016】
抗体の作製は、例えば、骨髄腫細胞と、免疫マウスまたは選択された骨髄腫細胞に適合する他の種由来の脾臓細胞との融合など、当業者に既知の任意の方法によって実現することができる[Kohler & Milstein, 1975, Nature, 256:495-497]。
【0017】
免疫動物としては、ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するトランスジェニックマウスを含んでよく、これは直接ヒト抗体を産生する。もう1つの可能性のある実施形態としては、ライブラリーをスクリーニングするためにファージディスプレー技術を用いることからなる。
【0018】
スクリーニング工程i)は、当業者に知られている方法またはプロセスにより実現することができる。非限定例としては、ELISA、BIAcore、免疫組織化学、FACS分析および機能的スクリーニングが挙げられる。好ましいプロセスは、c−Met組換えタンパク質に対するELISAにより、さらにその後、生産された抗体が腫瘍細胞上の天然受容体も認識し得ることを確認するために少なくとも腫瘍細胞系統に対してFACS分析によりスクリーニングすることからなる。このプロセスは以下の実施例でより詳しく記載する。
【0019】
また、工程ii)も、例えば、3H−チミジンまたは他のいずれかのDNA染色剤、MTT、ATP評価などの使用といった既知の方法またはプロセスによって常套的に実現することができる。本発明において好ましい腫瘍細胞モデルはBxPC3モデルからなる。
【0020】
c−Met二量体化を阻害するとは、好ましくはc−Metホモ二量体化と理解すべきである。
【0021】
本発明のプロセスの選択の工程iii)の好ましい実施形態では、該工程iii)は、c−Met−RLuc/c−Met−YFPの双方を発現する細胞に対するBRET分析により抗体を評価すること、およびBRETシグナルの少なくとも30%、好ましくは35%、40%、45%、50%、55%、最も好ましくは60%を阻害することができる抗体を選択することからなる。
【0022】
このBRET技術は、タンパク質の二量体化の代表的なものとして知られる技術である[Angers et al, PNAS, 2000, 97:3684-89]。
【0023】
このプロセスの工程iii)で用いられるBRET技術は当業者によく知られており、以下の実施例で詳説する。より詳しくは、BRET(生物発光共鳴エネルギー移動)は、生物発光ドナー(ウミシイタケルシフェラーゼ(Rluc))と蛍光アクセプターであるGFP(緑色蛍光タンパク質)またはYFP(黄色蛍光タンパク質)の突然変異体の間で起こる非放射性エネルギー移動である。本出願には、EYFP(増強黄色蛍光タンパク質)を用いた。移動の有効性は配向およびドナーとアクセプター間の距離に依存する。そして、エネルギー移動はこれら2つの分子が近接している場合にのみ起こり得る(1〜10nm)。この特性はタンパク質−タンパク質相互作用アッセイを作出するために使用される。実際、2つの相手の間の相互作用を研究するためには、一方をウミシイタケルシフェラーゼと、もう一方をGFPの黄色突然変異体と遺伝的に融合させる。融合タンパク質は、必須ではないが一般に、哺乳類細胞で発現させる。その膜透過性基質(セレンテラジン)の存在下で、Rlucは青色の光を発する。GFP突然変異体がRlucから10nmより近ければエネルギー移動が起こり、さらなる黄色シグナルが検出できる。このBRETシグナルは、アクセプターにより発せられた光とドナーにより発せられた光の間の比として測定される。従って、BRETシグナルは、これらの2つの融合タンパク質が近接されるほど、またはコンフォメーション変化がRlucとGFP突然変異体を接近させるほど増強される。
【0024】
BRET分析が好ましい実施形態である場合、当業者に知られているいずれの方法を用いてc−Met二量体化を測定してもよい。限定されるものではないが、以下の技術:FRET(蛍光共鳴エネルギー移動)、HTRF(均一時間分解蛍光)、FLIM(蛍光寿命画像測定)またはSW−FCCS(単一波長蛍光相関分光法)が挙げられる。
【0025】
共免疫沈降、αスクリーン、化学架橋、二重ハイブリッド、アフィニティークロマトグラフィー、ELISAまたはファーウエスタンブロットなどの他の従来技術も使用することができる。
【0026】
第2の態様において、本発明の対象は、前記の方法により得られる単離された抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体である。該抗体またはそのフラグメントまたは誘導体の1つはヒトc−Metと特異的に結合することができ、必要に応じて、好ましくはさらにそのリガンドHGFの本来の接着を阻害することができ、かつ/または該c−Metのチロシンキナーゼ活性を特異的に阻害することができ、該抗体はまたc−Met二量体化を阻害することもできる。より詳しくは、該抗体はリガンド依存性およびリガンド非依存性双方のc−Metの活性化を阻害することができる。
【0027】
「機能的フラグメントおよび誘導体」とは、本明細書の以降で詳細に定義する。
【0028】
ここで、本発明は天然型の抗体に関連するものではなく、すなわち、それらはそれらの天然環境になく、天然源から精製により単離または取得することができた、あるいはまた遺伝子組換えによって、もしくは化学合成によって取得することができたものであり、さらに記載されているように、非天然アミノ酸を含み得るものと理解されるべきである。
【0029】
より詳しくは、本発明の他の態様によれば、抗体(該抗体は配列番号1〜17および56〜61のアミノ酸配列を含んでなるCDRから選択される少なくとも1つの相補性決定領域CDRを含んでなることを特徴とする)、またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つが特許請求される。
【0030】
その配列が最適なアライメントの後に配列番号1〜17および56〜61の配列と少なくとも80%の同一性、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有する少なくとも1つのCDRを有する抗体またはフラグメントもしくは誘導体は等価であり、結果として本発明の一部であるものとして理解されるべきである。
【0031】
CDR領域またはCDRとは、IMGTにより定義される免疫グロブリンの重鎖および軽鎖の超可変領域を示すものとする。
【0032】
IMGT独自ナンバリングは、抗原受容体、鎖型または種が何であれ、可変ドメインを比較するために定義された[Lefranc M. -P., Immunology Today 18, 509 (1997) / Lefranc M.-P., The Immunologist, 7, 132-136 (1999) / Lefranc, M.-P., Pommie, C, Ruiz, M., Giudicelli, V., Foulquier, E., Truong, L., Thouvenin-Contet, V. and Lefranc, Dev. Comp. Immunol, 27, 55-77 (2003)]。このIMGT独自ナンバリングでは、保存されているアミノ酸は常に同じ位置であり、例えば、システイン23(1st−CYS)、トリプトファン41(CONSERVED−TRP)、疎水性アミノ酸89、システイン104(2nd−CYS)、フェニルアラニンまたはトリプトファン118(J−PHEまたはJ−TRP)などである。IMGT独自ナンバリングは、フレームワーク領域(FR1−IMGT:1〜26番、FR2−IMGT:39〜55番、FR3−IMGT:66〜104番およびFR4−IMGT:118〜128番)および相補性決定領域:CDR1−IMGT:27〜38番、CDR2−IMGT:56〜65番およびCDR3−IMGT:105〜117番の標準境界決定を提供する。ギャップは非占有位置に相当するので、CDR−IMGT長(括弧の中に示され、ドットで区切られる、例えば[8.8.13])は極めて重要な情報となる。IMGT独自ナンバリングは、IMGT Colliers de Perles[Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., Immunogenetics, 53, 857-883 (2002) / Kaas, Q. and Lefranc, M.-P., Current Bioinformatics, 2, 21-30 (2007)]と呼ばれる2Dグラフで、また、IMGT/3Dstructure−DB[Kaas, Q., Ruiz, M. and Lefranc, M.-P., T cell receptor and MHC structural data. Nucl. Acids. Res., 32, D208-D210 (2004)]における3D構造で用いられる。
【0033】
3つの重鎖CDRと3つの軽鎖CDRがある。本明細書においてCDRとは、場合によって、抗原または抗原を認識するエピトープに対する抗体の親和性により結合を担う大部分のアミノ酸残基を含む、これらの領域のうち1つ、またはこれらの領域のいくつか、さらには全部を示すために用いられる。
【0034】
本発明の意味において、2つの核酸またはアミノ酸配列間の「同一性のパーセンテージ」とは、最良のアライメント(最適なアライメント)後に得られる、比較する2配列間のヌクレオチドの、または同一のアミノ酸残基のパーセンテージを示すものとし、このパーセンテージは単に統計的なものであり、2つの配列間の違いはランダムに、それらの全長にわたって分布している。2つの核酸またはアミノ酸配列間の配列の比較は、それらを最適な方法でアラインした後にこれらの配列を比較することにより慣行し、この比較はセグメントによるか、または「比較ウィンドウ」により行うことができる。比較のための配列の最適なアライメントは、手作業の他、Smith および Waterman (1981) [Ad. App. Math. 2:482],のローカルホモロジーアルゴリズムの手段によるか、Neddleman および Wunsch (1970) [J. Mol. Biol. 48: 443]のローカルホモロジーアルゴリズムの手段によるか、Pearson および Lipman (1988) [Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85:2444)の類似性検索法の手段によるか、これらのアルゴリズムを用いるコンピューターソフトウエア(the Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Dr., Madison, WIのGAP、BESTFIT、FASTAおよびTFASTAあるいはまたBLAST NまたはBLAST P比較ソフトウエア)の手段によって行うことができる。
【0035】
2つの核酸またはアミノ酸配列間の同一性のパーセンテージは、最適な方法でアラインしたこれら2つの配列を比較することにより決定され、比較される核酸またはアミノ酸配列は、これらの2配列間の最適なアライメントのための参照配列に対して付加または欠失を含み得る。同一性のパーセンテージは、2配列間でヌクレオチドまたはアミノ酸残基が同一である同一の位置の数を、この同一の位置の数を比較ウィンドウの位置の総数で割り、得られた結果に100を掛け、これらの2配列間の同一性パーセンテージを得ることにより算出される。
【0036】
例えば、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/ gorf/bl2.htmlのサイトで入手できるBLASTプログラム「BLAST 2 sequences」(Tatusova et al, "Blast 2 sequences - a new tool for comparing protein and nucleotide sequences", FEMS Microbiol Lett. 174:247-250)を使用することができ、用いるパラメーターはデフォルトで示されているものであり(特に、パラメーター「オープンギャップペナルティー」:5、「エクステンションギャップペナルティー」:2;選択されるマトリックスは、例えば、このプログラムにより提案されているマトリックス「BLOSUM 62」である)、比較する2配列間の同一性パーセンテージはこのプログラムにより直接算出される。
【0037】
参照アミノ酸配列と少なくとも80%、好ましくは85%、90%、95%および98%の同一性を有するアミノ酸配列とは、参照配列に対してある種の改変、特に、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、付加または置換、末端切断または延長が好ましい。1以上の連続的または非連続的アミノ酸の置換の場合、被置換アミノ酸が「等価な」アミノ酸に置き換えられる置換が好ましい。ここで「等価なアミノ酸」とは、基本構造のアミノ酸の1つで置換され得るが、対応する抗体の生物活性を実質的に変更しないいずれのアミノ酸も示すことをねらいとし、このようなものは以降で、特に実施例で定義する。これらの等価なアミノ酸は、それらに代わるアミノ酸との構造的相同性か、または実施可能な異なる抗体間の生物活性の比較試験の結果かのいずれかによって決定することができる。
【0038】
例として、対応する改変抗体の生物活性の著しい改変を生じさせることなく実施可能な置換の可能性が挙げられる。
【0039】
非限定例として、以下の表1は、改変抗体の生物活性が保存される、考えられ得る置換の可能性を示す。もちろん、同じ条件で逆の置換も可能である。
【0040】
【表1】
【0041】
ここで、本発明は、天然型の抗体に関するものではなく、すなわち、それらはそれらの天然環境になく、天然源から精製により単離または取得することができた、あるいはまた遺伝子組換えによって、もしくは化学合成によって取得することができたものであり、さらに記載されているように、非天然アミノ酸を含み得るものと理解されるべきである。
【0042】
第一のアプローチでは、抗体はその重鎖配列により定義される。より詳しくは、本発明の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、配列番号1〜9および56〜58のアミノ酸配列を含んでなるCDRから少なくとも1つのCDRを含んでなる重鎖を含むことを特徴とする。
【0043】
挙げられる配列は以下のものである。
【化1】
【0044】
重鎖のCDRは、前記配列、すなわち、配列番号1〜9および56〜58の中で無作為に選択することができる。
【0045】
好ましい態様によれば、本発明の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3(ここで、
CDR−H1は配列番号1、4、7または56のアミノ酸配列を含んでなり、
CDR−H2は配列番号2、5、8または57のミノ酸配列を含んでなり、
CDR−H3は配列番号3、6、9または58のアミノ酸配列を含んでなる)
から選択される少なくとも1つのCDRを含む重鎖を含んでなる。
【0046】
前記態様の第一の実施形態によれば、本発明の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3(ここで、CDR−H1は配列番号1のアミノ酸配列を含んでなり、CDR−H2は配列番号2のアミノ酸配列を含んでなり、CDR−H3は配列番号3のアミノ酸配列を含んでなる)を含んでなる重鎖を含んでなる。
【0047】
より詳しくは、この第一の実施形態によれば、前記抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、配列番号18のアミノ酸配列を含む配列の重鎖を含んでなる。
【化2】
【0048】
前記態様の第二の実施形態によれば、本発明の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3(ここで、CDR−H1は配列番号4のアミノ酸配列を含んでなり、CDR−H2は配列番号5のアミノ酸配列を含んでなり、CDR−H3は配列番号6のアミノ酸配列を含んでなる)を含んでなる重鎖を含んでなる。
【0049】
前記第二の実施形態の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、好ましくは、配列番号19のアミノ酸配列を含む配列の重鎖を含んでなる。
【化3】
【0050】
前記態様の第三の実施形態によれば、本発明の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3(ここで、CDR−H1は配列番号7のアミノ酸配列を含んでなり、CDR−H2は配列番号8のアミノ酸配列を含んでなり、CDR−H3は配列番号9のアミノ酸配列を含んでなる)を含んでなる重鎖を含んでなる。
【0051】
前記第三の実施形態の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、好ましくは、配列番号20のアミノ酸配列を含む配列の重鎖を含んでなる。
【化4】
【0052】
前記態様の第四の実施形態によれば、本発明の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、CDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3(ここで、CDR−H1は配列番号56のアミノ酸配列を含んでなり、CDR−H2は配列番号57のアミノ酸配列を含んでなり、CDR−H3は配列番号58のアミノ酸配列を含んでなる)を含んでなる重鎖を含んでなる。
【0053】
前記第四の実施形態の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、好ましくは、配列番号62のアミノ酸配列を含む配列の重鎖を含んでなる。
【化5】
【0054】
第二のアプローチでは、抗体は以下にその軽鎖配列により定義される。より詳しくは、本発明の第二の特定の態様によれば、抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、配列番号10〜17および59〜61のアミノ酸配列を含んでなるCDRから選択される少なくとも1つのCDRを含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする。
【0055】
挙げられる配列は以下のものである。
【化6】
【0056】
軽鎖のCDRは、前記配列、すなわち、配列番号10〜17および59〜61の中で無作為に選択することができる。
【0057】
もう1つの好ましい態様によれば、本発明の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3から選択される少なくとも1つのCDR(ここで、
CDR−L1は配列番号10、13、15または59のアミノ酸配列を含んでなり、
CDR−L2は配列番号11、16または60のアミノ酸配列を含んでなり、
CDR−L3は配列番号12、14、17または61のアミノ酸配列を含んでなる)
を含んでなる軽鎖を含んでなる。
【0058】
前記のもう1つの態様の第一の実施形態によれば、本発明の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3(ここで、CDR−L1は配列番号10のアミノ酸配列を含んでなり、CDR−L2は配列番号11のアミノ酸配列を含んでなり、CDR−L3は配列番号12のアミノ酸配列を含んでなる)を含んでなる軽鎖を含んでなる。
【0059】
より詳しくは、この第一の実施形態の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、配列番号21のアミノ酸配列を含んでなる配列の軽鎖を含んでなる。
【化7】
【0060】
前記のもう1つの態様の第二の実施形態によれば、本発明の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3(ここで、CDR−L1は配列番号13のアミノ酸配列を含み、CDR−L2は配列番号11のアミノ酸配列を含み、CDR−L3は配列番号14のアミノ酸配列を含む)を含んでなる軽鎖を含んでなる。
【0061】
前記第二の実施形態の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、好ましくは、配列番号22のアミノ酸配列を含む配列の軽鎖を含んでなる。
【化8】
【0062】
前記のもう1つの態様の第三の実施形態によれば、本発明の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3(ここで、CDR−L1は配列番号15のアミノ酸配列を含み、CDR−L2は配列番号16のアミノ酸配列を含み、CDR−L3配列番号17のアミノ酸配列を含む)を含んでなる軽鎖を含んでなる。
【0063】
前記第三の実施形態の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、好ましくは、配列番号23のアミノ酸配列を含んでなる配列の軽鎖を含んでなる。
【化9】
【0064】
前記のもう1つの態様の第四の実施形態によれば、本発明の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、CDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3(ここで、CDR−L1は配列番号59のアミノ酸配列を含み、CDR−L2は配列番号60のアミノ酸配列を含み、CDR−L3は配列番号61のアミノ酸配列を含む)を含んでなる軽鎖を含んでなる。
【0065】
前記第三の実施形態の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、好ましくは、配列番号63のアミノ酸配列を含む配列の軽鎖を含んでなる。
【化10】
【0066】
第三のアプローチによれば、抗体は以下、その軽鎖配列とその重鎖配列の双方によって定義される。本発明の抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、配列番号18、19、20または62のアミノ酸配列を含んでなる重鎖と、配列番号21、22、23または63のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖を含んでなることを特徴とする。
【0067】
より詳しくは、本発明の、224G11と呼ばれる、好ましい抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、それぞれ配列番号1、2および3のアミノ酸配列を含んでなるCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号10、11および12のアミノ酸配列を含んでなるCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖を含んでなる。
【0068】
もう1つの態様において、抗体224G11は配列番号18のアミノ酸配列を含んでなる重鎖と配列番号21のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖を含んでなる。
【0069】
本発明の、227H1と呼ばれるもう1つの好ましい抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、それぞれ配列番号4、5および6のアミノ酸配列を含んでなるCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号13、11および14のアミノ酸配列を含んでなるCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖を含んでなる。
【0070】
もう1つの態様において、抗体227H1は、配列番号19のアミノ酸配列を含んでなる重鎖と、配列番号22のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖を含んでなる。
【0071】
223C4と呼ばれる、さらにもう1つの好ましい抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、それぞれ配列番号7、8および9のアミノ酸配列を含んでなるCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号15、16および17のアミノ酸配列を含んでなるCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖を含んでなる。
【0072】
もう1つの態様において、抗体223C4は、配列番号20のアミノ酸配列を含んでなる重鎖と、配列番号23のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖を含んでなる。
【0073】
11E1と呼ばれる、さらにもう1つの好ましい抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、それぞれ配列番号56、57および58を含んでなるCDR−H1、CDR−H2およびCDR−H3を含んでなる重鎖と、それぞれ配列番号59、60および61のアミノ酸配列を含んでなるCDR−L1、CDR−L2およびCDR−L3を含んでなる軽鎖を含んでなる。
【0074】
もう1つの態様において、抗体11E1は、配列番号62のアミノ酸配列を含んでなる重鎖と、配列番号63のアミノ酸配列を含んでなる軽鎖を含んでなる。
【0075】
もう1つの態様によれば、本発明は、本発明のモノクローナル抗体を分泌することができるネズミハイブリドーマ、特に、the Collection Nationale de Cultures de Microorganismes (CNCM, National Collection of Microorganism Cultures) (Institut Pasteur, Paris, France)に寄託されたようなネズミ起源のハイブリドーマに関する。
【0076】
本発明のモノクローナル抗体またはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、CNCMに、2007年3月14日にCNCM I−3724(11E1に相当)、I−3731(224G11に相当)、I−3732(227H1に相当)として、また、2007年7月6日にI−3786(223C4に相当)として寄託されたハイブリドーマにより分泌される。これらのハイブリドーマは、免疫マウス脾細胞と骨髄腫細胞系統(Sp20 Ag14)との細胞融合から得られるネズミハイブリドーマからなる。
【0077】
以下の表2は、好ましい抗体に関する要素を再分類したものである。
【0078】
【表2】
【0079】
表2から、抗体227H1と224G11のCDR−L2が類似していることが明らかである。この例は、記載されているCDR配列から無作為に選択された少なくとも1つのCDRを含む抗体を含んでなる本願の特許請求の範囲を明らかに裏付ける。
【0080】
好ましい実施形態によれば、本発明はモノクローナル抗体に関する。
【0081】
「モノクローナル抗体」とは、その通常の意味に従い、実質的に均質な抗体の集団から得られた抗体を表して用いられ、すなわち、この集団に含まれる個々の抗体は、微量で存在し得る自然に起こる潜在的突然変異以外は同じである。言い換えれば、モノクローナル抗体は、細胞の単一のクローン(例えば、ハイブリドーマ細胞、均質な抗体をコードするDNAでトランスフェクトされた真核生物宿主細胞、均質な抗体をコードするDNAで形質転換された原核生物宿主細胞など)の増殖から得られ、一般に、単一のクラスおよびサブクラスの重鎖と単一のタイプの軽鎖を特徴とする均質な抗体からなる。モノクローナル抗体は特異性が高く、単一の抗原に向けられる。さらに、異なる決定基またはエピトープに対する異なる抗体を含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は抗原上の単一の決定基に向けられる。
【0082】
本明細書において、抗体化合物またはそれらの配列と結合したポリペプチド、ポリペプチド配列、アミノ酸配列、ペプチドおよびタンパク質という用語は互換的である。
【0083】
同様の特定の態様によれば、本発明は、抗体がマウスとは異種、特にヒトの抗体に由来する軽鎖および重鎖定常領域をさらに含むこと、好ましい様式では、ヒト抗体に由来する軽鎖および重鎖定常領域がそれぞれκおよびγ−1、γ−2またはγ−4領域であることを特徴とする、本発明によるキメラ抗体またはその機能的フラグメントの1つに関する。
【0084】
本願において、IgG1はエフェクター機能、最も好ましくはADCCおよびCDCを得ていることが好ましい。
【0085】
当業者ならば、エフェクター機能が、例えば、C1q結合;補体依存性細胞傷害活性(CDC);Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介細胞傷害活性(ADCC);食作用;および細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)のダウンレギュレーションを含むことを認識しているであろう。
【0086】
本発明の抗体は、好ましくは、特異的モノクローナル抗体、特に、ネズミ、キメラまたはヒト化起源のものであり、これらは当業者に周知の標準法に従って得ることができる。
【0087】
一般に、モノクローナル抗体またはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体、特にネズミ起源のものの作製に関しては、手引き書"Antibodies" (Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor NY, pp. 726, 1988)に記載されている技術またはKohler and Milstein (Nature, 256:495-497, 1975)により記載されているハイブリドーマからの作製技術を参照することができる。
【0088】
本発明によるモノクローナル抗体は、例えば、本発明によるモノクローナル抗体により特異的に認識されるエピトープを含むc−Metまたはそのフラグメントの1つに対して免疫された動物細胞から得ることができる。該c−Metまたはそのフラグメントの1つは、特に、c−MetをコードするcDNA配列に含まれる核酸配列で出発する遺伝子組換えによる、またはc−Metのペプチド配列に含まれるアミノ酸配列から出発するペプチド合成による、通常の研究法に従って作製することができる。
【0089】
本発明によるモノクローナル抗体は、例えば、本発明によるモノクローナル抗体により特異的に認識されるエピトープを含むc−Metまたはそのフラグメントの1つが予め固定化されたアフィニティーカラムで精製することができる。より詳しくは、該モノクローナル抗体は、Aタンパク質および/またはGタンパク質でのクロマトグラフィーにより、その後に残留タンパク質夾雑物ならびにDNAおよびLPSを除去することを目的とするイオン交換クロマトグラフィー(それ自体の後に二量体または他の多量体の存在による潜在的凝集物を除去するためにセファロース(商標)ゲルで排除クロマトグラフィーを行う、または行わない)を行って、または行わずに精製することができる。いっそうより好ましい様式では、これらの技術を全て同時に、または連続的に用いることができる。
【0090】
キメラまたはヒト化抗体もまた本発明による抗体に含まれる。
【0091】
キメラ抗体とは、所定の種の抗体に由来する天然可変(軽鎖および重鎖)領域を、該所定の種とは異種(例えば、マウス、ウマ、ウサギ、イヌ、ウシ、ニワトリなど)の抗体の軽鎖および重鎖定常領域と組み合わせて含む抗体を示すものとする。
【0092】
本発明によるキメラ型の抗体またはそれらのフラグメントは、遺伝子組換えの技術を用いることで作製することができる。例えば、キメラ抗体は、プロモーターと、本発明の非ヒト、特にネズミ、モノクローナル抗体の可変領域をコードする配列と、ヒト抗体の定常領域をコードする配列とを含む組換えDNAをクローニングすることにより作製することができる。このような組換え遺伝子によりコードされている本発明のキメラ抗体は、例えば、マウス−ヒトキメラであり、この抗体の特異性はネズミDNAに由来する可変領域により決定され、そのイソ型はヒトDNAに由来する定常領域により決定される。キメラ抗体の作製方法に関しては、例えば、Verhoeyn et al. (BioEssays, 8:74, 1988)、Morrison et al. (Proc. Natl. Acad. Sci. USA 82:6851-6855, 1984)または米国特許第4,816,567号の文献を参照することができる。
【0093】
ヒト化抗体とは、非ヒト起源の抗体に由来するCDR領域を含み、この抗体分子の他の部分は1つの(またはいくつかの)ヒト抗体に由来する抗体を示すものとする。さらに、骨格(FRと呼ばれる)のセグメントのいくつかの残基は、結合の親和性を保存するよう改変することができる(Jones et al., Nature, 321 :522-525, 1986; Verhoeyen et al., Science, 239:1534-1536, 1988; Riechmann et al., Nature, 332:323-327, 1988)。
【0094】
本発明のヒト化抗体またはそれらのフラグメントは、当業者に既知の技術(例えば、Singer et al., J. Immun. 150:2844-2857, 1992; Mountain et al., Biotechnol. Genet. Eng. Rev., 10:1-142, 1992;またはBebbington et al., Bio/Technology, 10:169-175, 1992)の文献に記載されているものなど)によって作製することができる。
【0095】
例えば、Protein Design Lab (PDL)によりEP0451261、EP0682040、EP09127、EP0566647または米国特許第5,530,101号、同第6,180,370号、同第5,585,089号および同第5,693,761号に記載されている「CDRグラフト」法など、他のヒト化法も知られている。次の特許出願も挙げられる:米国特許第5,639,641号、同第6,054,297号、同第5,886,152号および同第5,877,293号。
【0096】
本発明による抗体の「機能的フラグメント」とは、特に、Fv、scFv(scは、単鎖を表す)、Fab、F(ab’)、Fab’、scFv−Fcフラグメントもしくはダイアボディー、またはポリ(エチレン)グリコール(「ペグ化」)(Fv−PEG、scFv−PEG、Fab−PEG、F(ab’)−PEGまたはFab’−PEGと呼ばれるペグ化フラグメント)(「PEG」は、ポリ(エチレン)グリコールを表す)などのポリ(アルキレン)グリコールの付加などの化学修飾により、またはリポソームへの封入によりその半減期が延長されているいずれかのフラグメントといった抗体フラグメントを示すものとし、該フラグメントは、特にc−Metを認識し、それと結合する能力および必要であれば、c−Metの活性を阻害する能力など、それが由来している抗体の活性を部分的にでも、一般的な様式で発揮し得るという点で、本発明の配列番号1〜17および56〜61の配列の特徴的なCDRを少なくとも1つ有する。
【0097】
好ましくは、該機能的フラグメントは、それらが由来している抗体の軽鎖または重鎖の可変の部分的配列で構成され、またはそれを含み、該部分的配列は、それが由来している抗体と同じ結合特異性と、c−Metに対して、好ましくは、それが由来している抗体の親和性の少なくとも1/100、より好ましくは少なくとも1/10に相当する十分な親和性を保持するに十分なものである。このような機能的フラグメントは、それが由来している抗体の配列の最低5個のアミノ酸、好ましくは、6、7、8、9、10、12、15、25、50および100個の連続するアミノ酸を含む。
【0098】
好ましくは、これらの機能的フラグメントは、Fv、scFv、Fab、F(ab’)、F(ab’)、scFv−Fc型またはダイアボディーのフラグメントであり、一般に、それが由来している抗体と同じ結合特異性を有する。本発明のより好ましい実施形態では、これらのフラグメントはF(ab’)フラグメントなどの二価フラグメントの中から選択される。本発明によれば、本発明の抗体フラグメントは、上記のものなどの抗体から出発して、ペプシンまたはパパインなどの酵素による消化および/または化学的還元によるジスルフィド橋の切断によるなどの方法によって得ることができる。別の様式では、本発明に含まれる抗体フラグメントは、また、当業者に周知の遺伝子組換え技術によって、あるいはまた例えば、Applied Biosystems社により供給されているものなどの自動ペプチド合成装置の手段によるペプチド合成によって得ることができる。
【0099】
「二価フラグメント」とは、2本の腕を含んでなる任意の抗体フラグメント、より詳しくはF(ab’)フラグメントと理解すべきである。
【0100】
より詳しくは、本発明は、本発明の抗体またはそれらの機能的フラグメント、特に、遺伝子組換えまたは化学合成により得られたキメラまたはヒト化抗体を含む。
【0101】
本発明の抗体の「誘導体」とは、タンパク質スキャフォールドと、その結合能を維持するために、元の抗体から選択された少なくとも1つのCDRを含んでなる結合タンパク質を意味する。このような化合物は当業者によく知られており、本明細書の以下でより詳しく記載する。
【0102】
より詳しくは、本発明による抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つは、該誘導体が、元の抗体のパラトピックな(paratopic)認識特性を保存するために少なくとも1つのCDRがグラフトされたスキャフォールドを含む結合タンパク質からなることを特徴とする。
【0103】
本発明に記載される6つのCDR配列のうち1つまたは数個をタンパク質スキャフォールド上に提供することができる。この場合、タンパク質スキャフォールドは、グラフトされたCDRの適切な折りたたみを用いてタンパク質主鎖を再生産し、これによりそれ(またはそれら)がそれらの抗原パラトピック認識特性を維持できるようになる。
【0104】
当業者であれば、元の抗体から選択された少なくとも1つのCDRがグラフト可能なタンパク質スキャフォールドを選択することができる。より詳しくは、選択されるこのようなスキャフォールドが次のようないくつかの特徴を示すべきであることが知られている(Skerra A., J. Mol. Recogn., 13, 2000, 167-187)。
・系統発生的に良好な保存
・周知の三次元分子組織を有する堅牢な構造(例えば、結晶学またはNMR)
・小型
・翻訳後修飾が全く無いか、程度が低いこと
・生産、発現および精製が容易であること
【0105】
このようなタンパク質スキャフォールドとしては、限定されるものではないが、フィブロネクチン、好ましくは、10番目のフィブロネクチンIII型ドメイン(FNfn10)、リポカリン、アンチカリン(Skerra A., J. Biotechnol, 2001, 74(4):257-75)、ブドウ球菌Aタンパク質のドメインBからのZタンパク質誘導体、チオレドキシンAまたは「アンキリンリピート」(Kohl et al., PNAS, 2003, vol. 100, No. 4, 1700-1705)、「アルマジロリピート」、「ロイシンリッチリピート」または「テトラトリコペプチドリピート」などのリピートドメインを有するいずれかのタンパク質からなる群から選択される構造である。
【0106】
また、毒素(例えば、サソリ、昆虫、植物または軟体動物毒素など)または神経一酸化窒素合成酵素(PIN)のタンパク質阻害剤に由来するスキャフォールド誘導体も挙げられる。
【0107】
このようなハイブリッド構築の非限定例として、抗CD4抗体、すなわち、13B8.2抗体のCDR−H1(重鎖)の、PINの露出ループの1つへの挿入が挙げられる。得られた結合タンパク質の結合特性は、元の抗体と依然として類似したままである(Bes et al., BBRC 343, 2006, 334-344)。また、抗リゾチームVHH抗体のCDR−H3(重鎖)の、ネオカルジノスタチンのループへのグラフトも挙げられる(Nicaise et al., 2004)。
【0108】
本発明の場合、保存のために着目されるCDRは、限定されるものではないが、CDR−L2であり、それはこれが同定されている本発明の2つの抗体、すなわち、227H1および224G11で保存されているからである。
【0109】
上述のように、このようなタンパク質スキャフォールドは元の抗体に由来する1〜6のCDRを含むことができる。好ましい実施形態では、限定されるものではないが、当業者ならば重鎖から少なくとも1つのCDRを選択することができる(重鎖は特に抗体特異性に関連することが知られている)。着目するCDRの選択は当業者には既知の方法を用いて明らかになる(BES et al, FEBS letters 508, 2001, 67-74)。
【0110】
1つの証拠として、これらの例は非限定的なものであり、既知または記載されている他のスキャフォールドを本明細書に含めなければならない。
【0111】
新規な態様によれば、本発明は、次の核酸:
a)本発明による抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つをコードする核酸、DNAまたはRNA;
b)
・配列番号24、配列番号25、配列番号26の配列ならびに配列番号33、配列番号34および配列番号35の配列を含んでなる核酸配列;
・配列番号27、配列番号28、配列番号29の配列ならびに配列番号36、配列番号34および配列番号37の配列を含んでなる核酸配列;
・配列番号30、配列番号31、配列番号32の配列ならびに配列番号38、配列番号39および配列番号40の配列を含んでなる核酸配列;
・配列番号64、配列番号65、配列番号66の配列ならびに配列番号67、配列番号68および配列番号69の配列を含んでなる核酸配列
からなる配列群から選択されるDNA配列を含んでなる核酸;
c)
・配列番号41および配列番号44の配列を含んでなる核酸配列;
・配列番号42および配列番号45の配列を含んでなる核酸配列;
・配列番号43および配列番号46の配列を含んでなる核酸配列;
・配列番号70および配列番号71の配列を含んでなる核酸配列
からなる配列群から選択されるDNA配列を含んでなる核酸;
d)b)またはc)で定義された核酸の対応するRNA核酸;
e)a)、b)およびc)で定義された核酸の相補的核酸;ならびに
f)高ストリンジェント条件下で配列番号24〜40および64〜69の配列の少なくとも1つのCDRとハイブリダイズすることができる少なくとも18のヌクレオチドの核酸
から選択されることを特徴とする、単離された核酸に関する。
【0112】
核酸、核酸配列(nucleic or nucleic acid sequence)、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド配列、ヌクレオチド配列とは、本明細書において違いなく用いられ、ヌクレオチドの正確な結合を示すものとし、これらは修飾または非修飾型であり、核酸のフラグメントまたは領域の定義を可能とし、非天然ヌクレオチドを含有または含有せず、二本鎖DNAMの場合と同様に、該DNAの転写産物については一本鎖DNAに相当し得る。
【0113】
ここでまた、本発明はそれらの天然の染色体環境、すなわち自然状態のヌクレオチド配列に関するものではないと理解されなければならない。本発明は単離および/または精製された配列に関するものであり、すなわち、それらは、少なくとも部分的に改変されたそれらの環境から、例えばコピーによって直接的または間接的に選択されたものである。従って、ここでもまた、例えば宿主細胞の手段による遺伝子組換えによって得られた、または化学合成によって得られた、単離された核酸を示すものとする。
【0114】
高ストリンジェンシー条件下でのハイブリダイゼーションとは、2つの相補的DNAフラグメント間のハイブリダイゼーションを維持させるように温度条件およびイオン強度条件が選択されることを意味する。例としては、上記のポリヌクレオチドフラグメントを定義するための高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション工程の条件は以下のものが有利である。
【0115】
DNA−DNAまたはDNA−RNAハイブリダイゼーションは、(1)5×SSC(1×SSCは0.15M NaCl+0.015Mクエン酸ナトリウム溶液に相当する)、50%ホルムアミド、7%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、10×デンハート液、5%デキストラン硫酸および1%サケ精子DNAを含有するリン酸バッファー(20mM、pH7.5)中、42℃で3時間のプレハイブリダイゼーション;(2)プローブサイズに応じた温度(すなわち、プローブサイズ>100ヌクレオチドの場合は42℃)で20時間の本ハイブリダイゼーションの後、2×SSC+2%SDS中、20℃、20分の洗浄2回、0.1×SSC+0.1%SDS中、20℃、20分の洗浄1回、という二段階で行う。最後の洗浄は、プローブサイズ>100ヌクレオチドの場合は60℃で30分間、0.1×SSC+0.1%SDS中で行う。定義されたサイズのポリヌクレオチドに関する上記の高ストリンジェンシーハイブリダイゼーション条件は、当業者ならば、Sambrook et al. (1989, Molecular cloning: a laboratory manual. 2nd Ed. Cold Spring Harbor)の教示に従って、より大きな、または小さなサイズのオリゴヌクレオチドに適合させることができる。
【0116】
本発明はまた、本発明による核酸を含んでなるベクターに関する。
【0117】
本発明は、特に、本発明によるヌクレオチド配列を含むクローニングおよび/または発現ベクターを目的とする。
【0118】
本発明のベクターは好ましくは、所定の宿主細胞でのヌクレオチド配列の発現および/または分泌を可能とする要素を含む。従って、ベクターはプロモーター、翻訳の開始および終結シグナル、ならびに転写調節の適当な領域を含む。ベクターは宿主細胞で安定に維持できなければならず、所望により、翻訳されたタンパク質の分泌を指定する特定のシグナルを有することができる。これらの種々の要素は、当業者により、用いる宿主細胞に対して選択および至適化される。この趣意で、本発明のヌクレオチド配列は選択された宿主の自己複製ベクターまたは選択された宿主の組込型ベクターに挿入することができる。
【0119】
このようなベクターは当業者により現在用いられている方法で作製され、得られたクローンは、リポフェクション、エレクトロポレーション、熱ショックまたは化学的方法などの標準的な方法によって適当な宿主に導入することができる。
【0120】
本発明によるベクターは、例えば、プラスミドまたはウイルス起源のベクターである。それらは、本発明のヌクレオチド配列のクローニングまたは発現のために宿主細胞を形質転換するのに有用である。
【0121】
本発明はまた、本発明によるベクターにより形質転換された、または本発明によるベクターを含む宿主細胞を含む。
【0122】
宿主細胞は原核生物系または真核生物系、例えば、細菌細胞、あるいはまた酵母細胞もしくは動物細胞、特に、哺乳類細胞から選択することができる。また、昆虫細胞または植物細胞を用いることもできる。
【0123】
本発明はまた、本発明に従って形質転換された少なくとも1つの細胞を含む、ヒト以外の動物に関する。
【0124】
別の態様によれば、本発明の対象は、本発明による抗体またはその機能的フラグメントの1つの製造方法であって、
a)本発明による宿主細胞の、培地および適当な培養条件での培養;および
b)培養培地または該培養細胞から出発する、このようにして得られた該抗体またはそれらの機能的フラグメントの1つの回収
を含んでなることを特徴とする方法である。
【0125】
本発明に従って形質転換された細胞は、本発明による組換えポリペプチドの製造方法で使用可能である。本発明によるベクターおよび/またはベクターで形質転換された細胞を用いることを特徴とする、本発明によるポリペプチドの組換え型での製造方法は、それら自体本発明に含まれる。好ましくは、本発明によるベクターにより形質転換された細胞は、該ポリペプチドおよび該組換えペプチドの発現を可能とする条件下で培養され、回収される。
【0126】
既に述べたように、宿主細胞は原核生物系または真核生物系から選択することができる。特に、このような原核生物系または真核生物系で分泌を促進する本発明によるヌクレオチド配列を同定することができる。従って、このような配列を有する本発明によるベクターは、分泌を意図した組換えタンパク質の生産のために有利に使用することができる。実際、これらの目的組換えタンパク質の精製は、それらが宿主細胞の内部よりもむしろ細胞培養の上清中に存在するという事実により促進される。
【0127】
また、化学合成によって本発明によるポリペプチドを製造することもできる。このような製造方法もまた本発明の課題である。当業者ならば、例えば、固相を用いる技術[Steward et al, 1984, Solid phase peptide synthesis, Pierce Chem. Company, Rockford, 111, 2nd ed., (1984)]、または部分的固相を用いる技術、または溶液中でのフラグメントの縮合によるか、もしくは化学合成による技術など、化学合成法を知っている。化学合成によって得られ、対応する非天然アミノ酸を含み得るポリペプチドもまた本発明に含まれる。
【0128】
本発明によるプロセスによって得ることができる抗体またはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体の1つもまた本発明に含まれる。
【0129】
本発明はまた、薬剤としての本発明の抗体に関する。
【0130】
本発明はまた、好ましくは賦形剤および/または薬学上許容されるビヒクルと混合した、本発明による抗体またはその機能的フラグメントの1つからなる化合物を有効成分として含んでなる医薬組成物に関する。
【0131】
本発明のもう1つの補足的実施形態は、同時、個別または逐次使用のための組合せ物として抗腫瘍抗体をさらに含んでなる、上記のような組成物からなる。
【0132】
最も好ましくは、該第二の抗腫瘍抗体は、抗IGF−IR、抗EGFR、抗HER2/neu、抗VEGFR、抗VEGFなどの抗体、または当業者に知られている他の抗腫瘍抗体から選択することができる。上述の抗体の機能的フラグメントもしくは誘導体の、第二の抗体としての使用も本発明の一部であることは明らかである。
【0133】
最も好ましい抗体として、例えば抗体C225(Erbitux)などの抗EGFR抗体が選択される。
【0134】
「同時使用」とは、本発明による組成物の2種類の成分を単一かつ同一の剤形で投与することを意味するものと理解される。
【0135】
「個別使用」とは、本発明による組成物の2種類の成分を異なる剤形で同時に投与することを意味するものと理解される。
【0136】
「逐次使用」とは、本発明による組成物の2種類の成分をそれぞれ異なる剤形で順次投与することを意味するものと理解される。
【0137】
一般的な様式では、本発明による組成物は癌処置の有効性を著しく高める。言い換えれば、本発明による抗c−Met抗体の治療効果は、細胞傷害性薬剤の投与により予期されない方法で増強される。本発明の組成物によりもたらされる、それに次ぐもう1つの主要な利点は、有効成分のより低い有効用量での使用の可能性に関するものであり、これにより、副作用、特に細胞傷害性薬の作用の出現リスクが回避または軽減される。
【0138】
さらに、本発明による組成物により、予期される治療効果がより迅速に得られる。
【0139】
本発明による組成物はまた、同時、個別または逐次使用用の組合せ物として細胞傷害性/細胞増殖抑制性剤をさらに含むことを特徴とし得る。
【0140】
「抗癌治療薬」または「細胞傷害性/細胞増殖抑制剤」とは、対象に投与した際に対象の身体において癌の発達を治療または予防する物質が意図される。このような薬剤の非限定例としては、アルキル化剤、代謝拮抗剤、抗腫瘍抗生物質、有糸分裂阻害剤、クロマチン機能阻害剤、抗脈管形成剤、抗エストロゲン作用薬、抗アンドロゲン薬または免疫調節剤が挙げられる。
【0141】
このような薬剤は、例えば、VIDALの2001版の、癌学および血液学の「細胞傷害性」の欄に付属している化合物に当てられた頁に挙げられており、この文献に参照として引用されているこれらの細胞傷害性化合物が本明細書において好ましい細胞傷害性薬剤として挙げられる。
【0142】
より詳しくは、本発明では次の薬剤が好ましい。
【0143】
「アルキル化剤」とは、細胞内でいずれかの分子、好ましくは核酸(例えばDNA)を架橋またはアルキル化することができるいずれの物質も指す。アルキル化剤の例としては、メクロレタミン、クロラムブコル(chlorambucol)、メルファレン(melphalen)、クロリドレート(chlorydrate)、ピポブロメン(pipobromen)、プレドニムスチン、リン酸二ナトリウム(disodic-phosphate)またはエストラムスチンなどのナイトロジェンマスタード;シクロホスファミド、アルトレタミン、トロフォスファミド、スルホホスファミドまたはイフォスファミドなどのオキサゾホリン(oxazophorins);チオテパ、トリエチレンアミンまたはアルテトラミン(altetramine)などのアジリジンまたはイミン−エチレン;カルムスチン、ストレプトゾシン、フォテムスチン(fotemustin)またはロムスチンなどのニトロソ尿素;ブスルファン、トレオスルファンまたはインプロスルファンなどのスルホン酸アルキル;ダカルバジンなどのトリアゼン;またはシスプラチン、オキサリプラチンおよびカルボプラチンなどの白金錯体が挙げられる。
【0144】
「代謝拮抗剤」とは、ある種の活性、通常はDNA合成を妨げることにより細胞の成長および/または代謝を遮断する物質を指す。代謝拮抗剤の例としては、メトトレキサート、5−フルオロウラシル、フロクスウリジン、5−フルオロデオキシウリジン、カペシタビン、シタラビン、フルダラビン、シトシンアラビノシド、6−メルカプトプリン(6−MP)、6−チオグアニン(6−TG)、クロロデスオキシアデノシン、5−アザシチジン、ゲムシタビン、クラドリビン、デオキシコホルマイシンおよびペントスタチンが挙げられる。
【0145】
「抗腫瘍抗生物質」とは、DNA、RNAおよび/またはタンパク質の合成を回避または阻害し得る化合物を指す。抗腫瘍抗生物質の例としては、ドキソルビシン、ダウノルビシン、イダルビシン、バルルビシン、ミトキサントロン、ダクチノマイシン、ミトラマイシン、プリカマイシン、マイトマイシンC、ブレオマイシンおよびプロカルバジンが挙げられる。
【0146】
「有糸分裂阻害剤」は、細胞周期および有糸分裂の正常な進行を妨げる。一般に、微小管阻害剤またはパクリタキセルおよびドセタキセルなどのタキソイドは有糸分裂を阻害することができる。ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビンデシンおよびビノレルビンなどのビンカアルカロイドも有糸分裂を阻害することができる。
【0147】
「クロマチン機能阻害剤」または「トポイソメラーゼ阻害剤」とは、トポイソメラーゼIまたはトポイソメラーゼIIなどの、クロマチンモデリングタンパク質の正常な機能を阻害する物質を指す。クロマチン機能阻害剤としては、トポイソメラーゼIについては、カンプトテシンおよびその誘導体(トポテカンまたはイリノテカンなど)、トポイソメラーゼIIについては、エトポシド、リン酸エトポシドおよびテニポシドが挙げられる。
【0148】
「抗脈管形成剤」とは、血管の成長を阻害する薬物、化合物、物質または薬剤を指す。抗脈管形成剤の例としては、限定されるものではないが、ラゾキシン、マリマスタット、バチマスタット、プリノマスタット、タノマスタット、イロマスタット、CGS−27023A、ハロフジノン、COL−3、ネオバスタット、BMS−275291、サリドマイド、CDC501、DMXAA、L−651582、スクアラミン、エンドスタチン、SU5416、SU6668、インターフェロン−α、EMD121974、インターロイキン−12、IM862、アンギオスタチンおよびビタキシンが挙げられる。
【0149】
「抗エストロゲン」または「抗エストロゲン作用薬」とは、エストロゲンの作用を低下させる、エストロゲンの作用に拮抗する、またはエストロゲンの作用を阻害するいずれの物質も指す。抗エストロゲン薬の例としては、タモキシフェン、トレミフェン、ラロキシフェン、ドロロキシフェン、ヨードキシフェン、アナストロゾール、レトロゾールおよびエキセメスタンが挙げられる。
【0150】
「抗アンドロゲン」または「抗アンドロゲン作用薬」とは、アンドロゲンの作用を低下させる、アンドロゲンの作用に拮抗する、またはアンドロゲンの作用を阻害するいずれの物質も指す。抗アンドロゲン作用薬の例としては、フルタミド、ニルタミド、ビカルタミド、スピロノラクトン、酢酸シプロテロン、フィナステリドおよびシミチジン(cimitidine)が挙げられる。
【0151】
「免疫調節剤」とは、免疫系を刺激する物質である。
免疫調節剤の例としては、インターフェロン、インターロイキン(アルデスロイキン、OCT−43、デニロイキンジフリトックス(denileukin diflitox)およびインターロイキン−2など)、腫瘍壊死因子(タソネルミンなど)または他の免疫調節剤(レンチナン、シゾフィラン、ロキニメックス、ピドチモド、ペガデマーゼ、チモペンチン、ポリI:Cまたはレバミゾールと5−フルオロウラシルとの組合せなど)が挙げられる。
【0152】
より詳しくは、当業者ならば、"Association Francaise des Enseignants de Chimie Therapeutique"により編集され、"traite de chimie therapeutique, vol. 6, Medicaments antitumoraux et perspectives dans Ie traitement des cancers, edition TEC & DOC, 2003"と題された手引き書を参照することができる。
【0153】
また、化学薬剤または細胞傷害性薬剤としては、例えばゲフィチニブまたはエルロチニブなど、全てのキナーゼ阻害剤を挙げることができる。
【0154】
特に好ましい実施形態では、本発明による組合せ物としての該組成物は、該細胞傷害性薬剤が前記抗体と同時使用のために化学的にカップリングされることを特徴とする。
【0155】
該細胞傷害性薬剤と本発明による抗体とのカップリングを促進させるために、特に、ポリエチレングリコールのようなポリ(アルキレン)グリコール、あるいはまたアミノ酸などのカップリングさせる2つの化合物間にスペーサー分子を導入することができ、あるいは別の実施形態では、本発明による抗体と反応し得る官能基が導入された該細胞傷害性薬剤の活性な誘導体を使用することができる。これらのカップリング技術は当業者によく知られており、本明細書では展開しない。
【0156】
本発明は、別の態様において、少なくとも前記の抗体またはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体の1つのうちの1つが細胞毒素および/または放射性元素とコンジュゲートされていることを特徴とする組成物に関する。
【0157】
好ましくは、該毒素または放射性元素は、c−Metを発現する細胞の少なくとも1つの細胞活性を阻害することができ、より好ましくは、該細胞の成長または増殖を妨げることができる、特に該細胞を完全に不活性化することができる。
【0158】
好ましくは、該毒素はまた、腸内細菌毒素、特に、シュードモナス外毒素Aである。
【0159】
好ましくは、治療に用いる抗体とコンジュゲートされる放射性元素(または放射性同位元素)は、γ線を放射する放射性同位元素、好ましくは、ヨウ素131、イットリウム90、金199、パラジウム100、銅67、ビスマス217およびアンチモン211である。β線およびα線を放射する放射性同位元素も同様に治療に使用することができる。
【0160】
本発明による抗体またはその機能的フラグメントの1つのうち少なくとも1つとコンジュゲートされた毒素または放射性元素とは、該毒素または放射性元素と該少なくとも1つの抗体との結合を、特に、連結分子を用い、または用いずに、これら2つの化合物間の共有結合により可能とするいずれの手段も示すものとする。
【0161】
このコンジュゲートの成分の総てまたは一部の、化学的(共有結合的)、静電気的または非共有結合的様式における結合を可能とする薬剤としては、特に、ベンゾキノン、カルボジイミドおよびより詳しくは、EDC(1−エチル−3−[3−ジメチル−アミノプロピル]−カルボジイミド塩酸塩)、ジマレイミド、ジチオビス−ニトロ安息香酸(DTNB)、N−スクシンイミジルS−アセチルチオ−アセテート(SATA)、紫外線(U.V.)と反応する1以上のフェニルアジド基を有する架橋剤、好ましくは、N−[−4−(アジドサリチルアミノ)ブチル]−3’−(2’−ピリジルジチオ)−プロピオンアミド(APDP)、3−(2−ピリジルジチオ)プロピオン酸N−スクシンイミド−イル(SPDP)、6−ヒドラジノ−ニコチンアミド(HYNIC)が挙げられる。
【0162】
特に放射性元素のためのもう1つのカップリング形態は、二官能性イオンキレート剤の使用からなり得る。
【0163】
これらのキレートのうち、金属、特に放射性金属、および免疫グロブリンを結合するために開発されたEDTA(エチレンジアミン四酢酸)またはDTPA(ジエチレントリアミン五酢酸)に由来するキレートを挙げることができる。よって、DTPAおよびその誘導体は、リガンド−金属錯体の安定性および堅牢性を高めるために炭素鎖上で種々の基により置換することができる(Krejcarek et al. (1977); Brechbiel et al. (1991); Gansow (1991);米国特許第4,831,175号)。
【0164】
例えば、医療および生物学において長い間、それらの遊離形態かまたは金属イオンとの錯体の形態のいずれかで広く使用されてきたジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびその誘導体は、金属イオンと安定なキレートを形成し、癌治療における放射性免疫複合体の開発のための抗体などの治療上または診断上重要なタンパク質とカップリングされるという注目すべき特徴を有する(Meases et al., (1984); Gansow et al. (1990))。
【0165】
また、好ましくは、本発明による該コンジュゲートを形成する少なくとも1つの抗体は、その機能的フラグメント、特に、scFvフラグメントなどのそれらのFc成分の切断されたフラグメントから選択される。
【0166】
すでに述べたように、本発明の好ましい実施形態では、該細胞傷害性/細胞増殖抑制剤または該毒素および/または放射性元素は、同時使用のための組成物の少なくとも1つの要素と化学的にカップリングされる。
【0167】
本発明は、記載されている組成物を薬剤として含んでなる。
【0168】
本発明はさらに、薬剤の製造のための本発明による組成物の使用を含んでなる。
【0169】
別の態様において、本発明は、腫瘍細胞の成長および/または増殖の阻害を意図した薬剤の製造のための、上記のような抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つおよび/または組成物の使用に関する。
【0170】
本発明の別の態様は、癌の予防または治療を意図した薬剤の製造のための、上記のような抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つおよび/または組成物の使用または上述の使用からなる。
【0171】
本発明にはまた、患者における腫瘍細胞の成長および/または増殖を阻害することを意図した方法であって、それを必要とする患者に本発明による抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つ、本発明によるハイブリドーマによって生産された抗体または本発明による組成物を投与することを含んでなる方法を含む。
【0172】
本発明はさらに、必要とする患者における癌の予防または治療のための方法であって、患者に本発明による抗体またはその機能的フラグメントもしくは誘導体の1つ、本発明によるハイブリドーマによって生産された抗体または本発明による組成物を投与することを含んでなる方法を含む。
【0173】
特定の好ましい態様において、該癌は前立腺癌、骨肉腫、肺癌、乳癌、子宮内膜癌、膠芽腫または結腸癌から選択される癌である。
【0174】
以上で説明したように、本発明の利点は、HGF依存性および非依存性のMet活性化関連癌の処置を可能とすることである。
【0175】
本発明は、さらにもう1つの態様において、c−Met受容体の異常な存在が疑われる生体サンプルから出発する、c−Met受容体の過剰発現または過少発現により誘発される疾病のin vitro診断法を包含し、この方法は該生体サンプルを本発明の抗体と接触させる工程を含み、該抗体を必要に応じて標識することができることを特徴とする。
【0176】
好ましくは、該診断法におけるc−Met受容体の異常な存在に関連する疾病は癌である。
【0177】
該抗体またはその機能的フラグメントの1つは、検出可能かつ/または定量可能なシグナルを得るために免疫複合体または標識抗体の形態で存在することができる。
【0178】
本発明による標識された抗体またはそれらの機能的フラグメントとしては、例えば、ペルオキシダーゼ、アルカリ性ホスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコースアミラーゼ、炭酸脱水酵素、アセチルコリンエステラーゼ、リゾチーム、リンゴ酸デヒドロゲナーゼもしくはグルコース6リン酸デヒドロゲナーゼなどの酵素と、またはビオチン、ジゴキシゲニンもしくは5−ブロモデオキシウリジンなどの分子によりコンジュゲートさせることができる免疫複合体と呼ばれる抗体が挙げられる。蛍光標識もまた、本発明による抗体またはそれらの機能的フラグメントとコンジュゲートさせることができ、特に、フルオレセインおよびその誘導体、蛍光色素、ローダミンおよびその誘導体、GFP(GFPとは「緑色蛍光タンパク質」)、ダンシル、ウンベリフェロンなどが含まれる。このようなコンジュゲートでは、本発明による抗体またはそれらの機能的フラグメントは、当業者に既知の方法により製造することができる。それらは酵素または蛍光標識と直接、またはスペーサー基もしくはグルタルアルデヒドのようなポリアルデヒド、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DPTA)などの架橋基の介在により、または治療用コンジュゲートに関して上述したものなどのカップリング剤の存在下でカップリングさせることができる。フルオレセイン型の標識を含有するコンジュゲートはイソチオシアネートとの反応により製造することができる。
【0179】
他のコンジュゲートとしてはまた、ルミノールおよびジオキセタンなどの化学発光標識、ルシフェラーゼおよびルシフェリンなどの生物発光標識、あるいはまたヨウ素123、ヨウ素125、ヨウ素126、ヨウ素133、臭素77、テクネチウム99m、インジウム111、インジウム113m、ガリウム67、ガリウム68、ルテニウム95、ルテニウム97、ルテニウム103、ルテニウム105、水銀107、水銀203、レニウム99m、レニウム101、レニウム105、スカンジウム47、テルル121m、テルル122m、テルル125m、ツリウム165、ツリウム167、ツリウム168、フッ素18、イットリウム199、ヨウ素131などの放射性標識が挙げられる。治療用放射性同位元素を抗体と直接または上述のEDTA、DTPAなどのキレート剤を介してカップリングさせるために存在する当業者に既知の方法は、診断において使用可能な放射性元素に関しても使用可能である。また、クロラミンT法[Hunter W.M. and Greenwood F. C. (1962) Nature 194:495]によるNa[I125]を用いた標識、あるいはまたCrockford et al.(米国特許第4,424,200号)によるテクネチウム99mを用いた標識またはHnatowich(米国特許第4,479,930号)により記載されているDTPAを介した結合を挙げることができる。
【0180】
よって、本発明による抗体またはそれらの機能的フラグメントは、生体サンプルにおけるc−Met受容体の過剰発現または過少発現、好ましくは過剰発現の検出および/または定量のためのプロセスで使用することができ、このプロセスは、
a)生体サンプルを本発明による抗体またはその機能的フラグメントの1つと接触させる工程;および
b)形成され得るc−Met/抗体複合体を示す工程
を含む。
【0181】
特定の実施形態では、本発明による抗体またはそれらの機能的フラグメントは、c−Met依存性癌の予防的処置および/または治療的処置の有効性のモニタリングのために、生体サンプルにおいてc−Met受容体を検出および/または定量するためのプロセスにおいて使用することができる。
【0182】
より一般には、本発明による抗体またはそれらの機能的フラグメントは有利にも、c−Met−受容体の発現が定性的および/または定量的に観察されなければならない状況で使用することができる。
【0183】
好ましくは、生体サンプルはヒト起源の血清、全血、細胞、組織サンプルまたは生検などの体液からなる。
【0184】
このような検出および/または投与を行うために、いずれの手順または慣例の試験を用いてもよい。該試験は競合もしくはサンドイッチ試験、または抗体−抗原型の免疫複合体の形成に依存する当業者に既知のいずれの試験であってもよい。本発明の適用の後、抗体またはその機能的フラグメントの1つ固定化または標識することができる。この固定化は当業者に公知の多くの支持体上で行うことができる。これらの支持体は特に、ガラス、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、デキストラン、ナイロンまたは天然もしくは修飾細胞であり得る。これらの支持体は可溶性であっても不溶性であってもよい。
【0185】
例として、好ましい方法は免疫蛍光またはラジオイムノアッセイ(RIA)技術または等価なものにより、ELISAに従った免疫酵素法をもたらす。
【0186】
よって、本発明はまた、c−Met受容体の過剰発現または過少発現により誘発される疾病の診断法を行うため、または生体サンプルにおけるc−Met受容体の過剰発現または過少発現、好ましくは該受容体の過剰発現の検出および/または定量法を行うために必要なキットまたはセットを含んでなり、該キットまたはセットは以下の要素:
a)本発明による抗体またはその機能的フラグメントの1つ;
b)場合によって、免疫反応に好適な培地を形成するための試薬;
c)場合によって、免疫反応により生じるc−Met/抗体複合体を示し得る試薬
を含んでなることを特徴とする。
【0187】
本発明の対象は、また、c−Met受容体を発現または過剰発現する細胞への生物学的に活性な化合物の特異的標的化を意図した薬剤を製造するための、本発明による抗体または組成物の使用である。
【0188】
ここで、生物学的に活性な化合物とは、細胞の活性、特にそれらの成長、それらの増殖、転写または遺伝子翻訳を調節、特に阻害することができるいずれの化合物も示すものとする。
【0189】
本発明の対象はまた、好ましくは標識された、特に放射性標識された本発明による抗体またはその機能的フラグメントの1つを含んでなるイン・ビボ診断試薬、および医療画像法における、特に、細胞によるc−Met受容体の発現または過剰発現に関連する癌の検出のためのその使用である。
【0190】
本発明はまた、組合せ物としての組成物または薬剤としての本発明による抗c−Met/毒素コンジュゲートまたは放射性元素に関する。
【0191】
好ましくは、組合せ物としての該組成物または本発明による該コンジュゲートは、賦形剤および/または薬学上許容されるビヒクルと混合される。
【0192】
本記載において、薬学上許容されるビヒクルは、二次反応を引き起こさずに医薬組成物に入れられ、例えば有効化合物の投与の助長、体内でのその寿命の延長および/またはその有効性の増強、溶液中でのその溶解度の上昇、あるいはまたその保存性の向上を可能とする化合物または化合物の組合せを示すものとする。これらの薬学上許容されるビヒクルは周知のものであり、当業者によって、選択された有効化合物の性質および投与様式に関して適したものとされる。
【0193】
好ましくは、これらの化合物は全身経路により、特に、静脈経路、筋肉内、皮内、腹腔内または皮下経路により、または経口経路により投与される。より好ましい様式では、該本発明による抗体を含んでなる組成物は、一連の様式で数回投与される。
【0194】
それらの投与様式、用量および最適な剤形は、例えば、患者の年齢または体重、患者の健康状態の重篤度、処置に対する耐用性ならびに示されている副作用など、患者に適した処置の確立を全般的に考慮した基準に従って決定することができる。
【0195】
本発明の他の特徴および利点は、実施例および図面を含む本明細書の続きで明らかとなる。
【実施例】
【0196】
実施例1:c−Metに対する抗体の作製
抗c−Met抗体を作製するため、8週齢のBALB/cマウスを、その原形質膜でc−Metを発現するCHOトランスフェクト細胞系統で皮下的に3〜5回(20×10細胞/用量/マウス)か、あるいは初回免疫ではフロイントの完全アジュバントと、また、追加免疫ではフロイントの不完全アジュバントと混合したc−Met細胞外ドメイン融合タンパク質(10〜15μg/用量/マウス)(R&D Systems、カタログ番号358MT)またはこの組換えタンパク質のフラグメントで2〜3回免役した。マウスにCHO−cMet細胞と組換えタンパク質の双方を施した混合プロトコールも行った。細胞融合の3日前に、組換えタンパク質またはフラグメントでi.p.またはi.v.にてマウスに追加免疫を行った。
【0197】
次に、マウスの脾臓を採取し、SP2/0−Ag14骨髄腫細胞(ATCC)と融合させ、HAT選択を行った。4回の融合を行った。一般に、特にネズミ起源のモノクローナル抗体またはそれらの機能的フラグメントの作製については、特に手引き書"Antibodies" (Harlow and Lane, Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor NY, pp. 726, 1988)に記載されている技術またはKohler and Milstein (Nature, 256:495-497, 1975)に記載されているハイブリドーマ作製技術を参照することができる。
【0198】
生産された抗体が腫瘍細胞上の天然受容体も認識することができることを確認するため、得られたハイブリドーマをまずc−Met組換えタンパク質に対するELISA、その後、A549NSCLC細胞系統、BxPC3膵臓細胞系統およびU87−MG膠芽腫細胞系統に対するFACS分析によりスクリーニングした(代表的なプロフィールを図1に示した)。これらの2つの試験に対する陽性反応体を増幅し、クローニングし、ハイブリドーマセットを回収、精製し、BxPC3モデルにおいてそのin vitro細胞増殖阻害能をスクリーニングした。
【0199】
そのため、50000BxPC3細胞を96ウェルプレートのRPMI培地2mML中にプレーティングした。グルタミン、SVF不含。プレーティング24時間後、100ng/mlのhHGFを加える60分前に、供試抗体を0.0097〜40μg/mlの終濃度で加えた。3日後、細胞を0.5μCiの[H]チミジンで16時間刺激した。トリクロロ酢酸不溶性DNAに組み込まれた[H]チミジンの量を液体シンチレーション計数により定量した。結果は各Mabの内因性アゴニスト効果を真に評価するため、生データとして表した(図2Aおよび2B)。
【0200】
次に、細胞増殖を少なくとも50%阻害する抗体をc−Metトランスフェクト細胞に対するBRET分析により上清で評価した。そのため、C−Met−RlucまたはC−Met−RlucとC−Met−K1100A−YFPを発現するCHO安定細胞系統を作製した。BRET実験の1日または2日前に、細胞を白色96ウェルマイクロプレートのDMEM−F12/FBS5%培養培地中に分注した。まず、細胞を37℃、CO 5%で培養し、細胞をプレートに接着させた。次に、細胞を200μl DMEM/ウェルで一晩飢餓状態にした。実験直前にDMEMを除去し、すぐに細胞をPBSで洗浄した。細胞をPBS中、供試抗体または対照化合物の存在下または不在下、37℃で10分間インキュベートした後、HGFを含む、または含まないセレンテラジンを終容量50μlで添加した。37℃でさらに10分間インキュベートした後、Mithras照度計(Berthold)(1秒/波長/ウェル、繰り返し15回)を用い、485nmおよび530nmで光放射捕捉を開始した。
【0201】
BRET比はこれまでに[Angers et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 2000, 97:3684-3689]、[(530nmでの放射)−(485nmでの放射)×Cf]/(485nmでの放射){ここで、Cfは、同じ実験条件でRluc融合タンパク質単独を発現する細胞に関する(530nmでの放射)/(485nmでの放射)に相当する}として定義されている。この式の簡略化は、これらの2つの相手が存在した場合に得られる530/485nm比を、同じ実験条件下で、アッセイにウミシイタケ(R. reniformis)ルシフェラーゼと融合された相手が存在した場合にのみ得られる530/485nm比で補正したものに相当することを示す。読み取りやすいように、結果はミリBRET単位(mBU)で表し、mBUはBRET比に1000を掛けたものに相当する。
【0202】
この第二のin vitro試験の後、i)増殖の機能的試験において分子全体として内在活性を持たず、ii)BxPC3増殖を有意に阻害し(図2Aおよび2B)、かつiii)c−Met二量体化を阻害する(図3)、4つの抗体が選択された。これらのIgG1κイソ型の3つの抗体を11E1、224G11、223C4および227H1とした。これらの実験では、Genentechにより作製され、ATCCにおいて入手可能な5D5 Mabを内在アゴニスト活性の対照として加えた。
【0203】
図2Aおよび2Bは、11E1、224G11、223C4および227H1が、リガンドの不在下で細胞増殖の用量依存的刺激を誘導した5D5とは対照的にアゴニスト活性を持たなかった。選択された4つの抗体では、細胞増殖の有意な阻害が見られた。5D5は本試験で、HGFにより誘導される細胞増殖に作用を持たなかった。
【0204】
二量体化の遮断に関して評価すると、それぞれ224G11、223C4、11E1および227H1について二量体化の32、55、69および52%阻害に達する有意な効果が見られた。
【0205】
実施例2:抗c−Met抗体によるタンパク質認識
選択された3つの抗体の認識パターンを特徴付けるため、組換えc−Metタンパク質、その単量体フラグメント(組換えc−Met−Fcタンパク質の切断によって得られる)および組換えSEMAドメインを用いて3種類のELISAが設定された。
【0206】
図4に示される結果は、これらの4つの抗体が二量体および単量体双方のタンパク質を認識したことを示した。これらのELISAを行うため、ヒト二量体c−Metタンパク質(R&D sytems、カタログ番号358MT)を4℃で一晩、PBS中0.7μg/mlの濃度でコーティングする。プレート(Costarカタログ番号3690)を37℃にて2時間、0.5%ゼラチン溶液で飽和させた後、ハイブリドーマ上清を37℃で1時間インキュベートする。PBSで1回すすぎ、抗マウスHRP−抗体(Jackson ImmunoResearch、カタログ番号115−035−164)を各ウェルにELISAバッファー(PBS中、0.1%ゼラチン/0.05% Tween 20)で1/5000希釈で加え、これらのプレートを37℃で1時間インキュベートする。PBSで3回洗浄した後、50μlのTMB基質(Uptima)を加えることによりペルオキシダーゼの活性を明らかにした。この反応を室温で5分間行わせる。50μl/ウェルの1M HSO溶液を加えることで反応を停止させ、プレートリーダーにて450nmで読み取る。同様のプロトコールを単量体c−MetおよびSEMAドメインに対しても行ったが、この場合、タンパク質はそれぞれ5および3μg/mlでコーティングした。
【0207】
陽性対照として含めた5D5 Mabは、予測されたように、SEMAタンパク質を認識した。224G11、227H1および223C4はSEMAドメインと結合しなかった。11E1はSEMAと結合することができる。
【0208】
双方ともSEMAドメインを認識する11E1および5D5が重複エピトープをめぐって競合するかどうかを調べるため、BIAcore分析を行った。BIAcoreシステムは、リアルタイムで結合事象をモニタリングすることによる表面プラズモン共鳴現象送受信データに基づくものであった。従って、それはいわゆる「エピトープマッピング」実験で抗体を分類するのに有用である。抗原分子に同時に結合することができない抗体の組は同じ群(同一または隣接する結合部位)に分類される。これに対し、それらの個々の結合部位が両抗体の同時結合を可能とするほど十分離れていれば、これらは2つの異なる群二分類される。このような実験では、抗原は一般にリガンドとして用いられ(センサーチップ上に固定され)、抗体はアナライトとして標識せずに用いられる(液相)。
【0209】
記載されている実験は総て、BIAcore X装置(GE Healthcare Europe GmbH)にて行った。マウス抗Tag−6His Mab(R&D System 参照番号MAB050)により活性化されたCM5センサーチップ(BIAcore)は、アミンカップリングキット(BIAcore)を使用することにより製造業者の説明書に従って作製されたものであった。ランニングバッファー(HBS−EP)および再生バッファー(グリシン、HCl)はBIAcoreから得られる。キメラ分子c−Met−Fc−Tag Hisとして作製された組換え可溶型ヒトHGF受容体はR&D systems(参照番号358−MT−CF)から入手した。これらの次件は25℃にて流速30μl/分で行った。ランニングバッファー中、c−Metの10μg/ml溶液をフローセル2(fc2)に1分注入すると、一般に、270RUの可溶型c−Metが捕捉された。フローセル1(fc1)を、抗体とセンサーチップマトリックスとの非特異的結合を確認するための参照として用いた。
【0210】
供試抗体の連続的注射を行った。抗体を両フローセルに2分間注入した。次に、二次抗体(または同じもの)を同じ条件で注入した。有意な結合が見られなければ、他の抗体の3回目の注入を行った。その後、センサーチップを、再生バッファーを30秒1回注入することにより再生した。この段階で抗体およびc−Met−Fcのいずれかを廃棄した。
【0211】
結果の分析:
抗体「A」の、抗体「B」の結合を遮断する能力を、BIA/C比=(R2A/B/R1B)×100(式中、R2A/Bは、Mab「A」に後に注入した場合のMAb「B」の結合に相当する応答であり、R1Bは、最初に注入した場合のMAb「B」の結合に相当する応答である)により算出する。BIA/Cが20%を下回る場合は、AがBの結合を遮断することができ、従って、AとBは近接した結合部位を有することを意味する。
【0212】
2つのMab、11E1と5D5を用いてエピトープマッピングを行った。
【0213】
【表3】
【0214】
各10μg/ml濃度のMab 5D5(1回目)、5D5(2回目)および11E1(3回目)の2分間の連続的注入により捕捉されたc−Met−Fcの270RU周辺の結合を可視化すると、5D5および11E1が明らかに2つの異なる部位に結合することが示された(図5A)。この所見を抗体の順序を逆にすることで確認した(図5B)。
【0215】
表3は、異なる順序のこれら2つの抗体で得られた算出比をまとめたものである。黒い値(75%超)は、Mab AがMab Bの結合を遮断しないことを意味する。太字/斜体の値(20%未満)は、両抗体(AおよびB)の結合部位が同一または同時に結合ができないほどに十分近接していることを意味する。
【0216】
実施例3:c−Metリン酸化に対するMabの効果
c−Metリン酸化に対する抗c−Met抗体の活性を調べるため、ホスホc−Met ELISAアッセイを設定した。要するに、500000のA549細胞を6ウェルプレートの各ウェルのF12K培地+10%FCS中に播種した。HGF(100ng/ml)添加の16時間前に、細胞を飢餓状態とし、リガンド刺激の15分前に各供試抗体を終濃度30μg/mlで加えた。HGF添加の15分後、冷溶解バッファーを加え、細胞を掻き取り、細胞溶解液を採取し、4℃、13000rpmで10分間遠心分離した。上清をBCAキット(Pierce)で定量し、−20℃で保存した。ELISAアッセイでは、ヤギ抗c−Met抗体(R&D 参照番号AF276)を捕捉抗体として用い(4℃で一晩コーティング)、TBS−BSA5%バッファーを用いた飽和工程(室温で1時間)の後、種々の細胞溶解液からのタンパク質25μgを96ウェルプレートの各ウェルに加えた。室温で90分のインキュベーション時間の後、プレートを4回洗浄し、抗ホスホ−c−Met抗体(ウサギ抗pY1230−1234−1235 c−Met)を加えた。さらに1時間インキュベートし、4回洗浄した後、抗ウサギ−HRP(Biosource)を室温で1時間加え、次に、ルミノール基質を加えた後、Mithras装置で発光を評価した。図6Bに示されている結果は、11E1、224G11、223C4および227H1は、より弱いc−Metリン酸化阻害(42%)を示した5D5 Mabに比べ、それぞれ68、54、80および65%c−Metのリン酸化を阻害することを示した。この試験において、4つの候補抗体で弱い基礎作用(20%未満)が見られた(図6A)。本特許で示されている種々の例に記載されるように、この弱い基礎作用は、他のin vitroおよびin vivo試験で、抗体の活性の結果ではない。対照として用いた5D5は本試験で有意な基礎作用を示した。
【0217】
実施例4:抗c−Met抗体による放射性標識HGFの置換
抗c−Met抗体がHGFに代わることができるかどうかを調べるため、結合実験を設定した。要するに、Aタンパク質FlashPlate 96ウェルマイクロプレート(Perkin Elmer)をPBS中0.5%ゼラチンで飽和させ(200μl/ウェル、室温で2時間)た後、コーティングタンパク質として組換えc−Met−Fc(R&D Systems)を加えた。各ウェルにPBS中1μg/mlのc−Met−Fc溶液2000μlを加えた。その後、プレートを4℃で一晩インキュベートした。残っているフリーのAタンパク質部位を無関連のhIgG(PBS中0.5μg/ウェル)で室温にて2時間さらに飽和させた。各段階の後にプレートをPBSで洗浄した。
【0218】
競合アッセイでは、固定化されたc−Metに対する200pMの[125I]−HGF(比活性〜2,000Ci/mmol)の結合を、PBS(pH7.4)中、0.1pM〜1μMの範囲の、種々の濃度の抗c−Metモノクローナル抗体11E1、224G11、223C4、227H1またはHGF(R&D Systems)の存在下で測定した。プレートを室温で6時間インキュベートした後、Packard Top Countマイクロプレートシンチレーションカウンターで計数した。非特異的結合は、1μMのHGFの存在下で測定した。c−Metに向けられていないが、大腸菌タンパク質を特異的に認識するモノクローナル抗体9G4をマウスIgG1イソ型対照として用いた。
【0219】
全特異的[125I]−HGF結合のパーセントを、片対数グラフにリガンド濃度の関数としてプロットした。放射性リガンドの結合を50%阻害するのに要する種々の阻害剤の濃度(IC50)を、得られたシグモイド競合曲線からグラフ的に求めた(図7Aおよび7B)。
【0220】
予測されたように、非放射性標識HGFは、固定化されたc−Metに対する[125I]−HGFの結合に完全に置き代わることができ、一方、対照抗体9G4はHGF遮断活性を示さなかった(図7Aおよび7B)。モノクローナル抗c−Met抗体11E1、224G11、223C4および227H1は、固定化c−Metに対する[125I]−HGFの結合を阻害することができ、IC50値はそれぞれ20nM、3nM、2.7nMおよび5.8nMであった。抗体224G11、223C4および227H1に関して求められたIC50値は、非放射性標識HGF(3〜5nMの間で含まれた)に関して求められたIC50値に匹敵するものであったが、抗体11E1はより高いIC50値を示した。
【0221】
実施例5:抗c−Met抗体による浸潤の阻害
浸潤プロセスに対する抗c−Met抗体の阻害効果を評価するため、A549細胞をBD BioCoat(商標)マトリゲル(商標)浸潤チャンバー(孔径8μmのポリカーボネート膜を有する6.5mm径のウェル)の上のチャンバーにプレーティングした。浸潤アッセイを行う24時間前にA459細胞を飢餓状態とした。その後、500000のA549細胞を、各チャンバーの上のウェルの、供試抗体(Mab終濃度10μg/ml)を含む、または含まないマトリゲルコーティング上の走化性バッファー(DMEM培地、0.1%BSA、12mMHepes)にプレーティングした。これらのプレートを37℃、5%COで1時間インキュベートした後、下のチャンバーに400ng/mlのrhHGFを含有する増殖培地または増殖培地単独のいずれかを満たした。これらのチャンバーをさらに48時間、37℃、5%COでインキュベートした。インキュベーションが終わったところで、フィルターの上面に残った細胞を綿棒で穏やかに取り除き、フィルターの下面に移動した細胞を溶解させ、CyQuant GR色素バッファー(Invitrogen)で染色し、蛍光リーダーBerthold Mithras LB940を用いて計数した。総ての条件を3反復で試験した。
【0222】
予測されたように、HGFは、陽性対照として含めた10%FCSで見られたものに匹敵する腫瘍細胞の有意な浸潤を誘導した(図8)。イソ型対照として含めたネズミIgG1 9G4は、IgGを含まずにプレーティングした細胞に比べ、基本浸潤またはHGF誘導浸潤に有意な効果を示さない。11E1、224G11、223C4および227H1を単独で加えた場合にはアゴニスト作用は見られず、3つのMabではHGF誘導浸潤の有意かつ匹敵する阻害が見られた。
【0223】
実施例6:抗c−Met抗体による創傷治癒の阻害
HGFは運動を刺激する。抗HGF抗体が遊走を阻害することができたことを調べるため、NCI−H441細胞を高密度になるまで増殖させ、P200ピペットチップでギャップを作った。次に、細胞を、11E1の存在下または不在下、HGF(100ng/ml)でそのギャップ間で遊走するよう刺激した。また、11E1単独のウェルも評価した。各試験条件を6反復で評価し、3回の独立した実験を行った。一晩インキュベートした後、細胞をAxio Visionカメラ(対物4倍)で観察した。
【0224】
HGFは有意な遊走を誘導し、その結果、一晩でギャップが完全に埋まった(図9)。イソ型対照として用いた9G4無関連IgG1は細胞遊走に効果がない。予測されたように、5D5を単独で加えた場合にはアゴニスト効果が見られたが、ギャップが開いたままの部分では、HGFの存在下でのこの抗体で、有意な細胞遊走阻害が見られる。5D5のFabフラグメントは、単独で加えた場合、アゴニスト効果を持たない。しかしながら、HGFの存在下では、このフラグメントの活性は見られなかった。イソ型対照9G4で見られたように、MAb 11E1は、単独で加えた場合にはアゴニスト効果を持たず、HGFの存在下では完全なアンタゴニストとして振る舞った。
【0225】
実施例7:拡散アッセイ
SK−HEP−1細胞を、24ウェルプレートの、10%FCSを含むDMEMに低密度(1.10細胞/ウェル)で播種し、24時間増殖させた後に、HGF(100ng/ml)と供試抗体(10μg/ml)を同時に加えた。72時間インキュベートした後、コロニーを固定し、メタノール中0.2%のクリスタルバイオレットで染色し、拡散を視覚的に評価した。各試験条件を3反復で評価し、3回の独立した実験を行った。
【0226】
SK−HEP−1細胞へのHGFの添加は、有意な細胞拡散を誘導した(図10Aおよび10B)。イソ型対照として含めた9G4抗体は単独でもHGFの存在下でも効果は無い。予測されたように、5D5抗体は単独では有意なアゴニスト効果を示し、5D5をHGFとともに加えた場合では阻害効果は見られなかった(図10A)。単独で加えた11E1(図10A)にも224G11(図10B)にもアゴニスト効果は見られなかった。HGFの存在下では、これらの抗体の極めて有意な阻害効果が示された(図10Aおよび10B)。
【0227】
実施例8:三次元管形成アッセイ
SK−HEP−1細胞を、24ウェルプレートの、10%FCS/マトリゲル(50/50)を含むDMEMに1.10細胞/ウェルで播種し、30分間インキュベートした後、HGF(100ng/ml)と供試抗体(10μg/ml)を同時に加えた。7日間インキュベートした後、細胞を管形成に関して視覚的に評価した。各試験条件を3反復で評価し、3回の独立した実験を行った。
【0228】
HGFの添加は有意なSK−HEP−1管形成を誘導した(図11)。イソ型対照として含めた抗体9G4は、単独でもHGFの存在下でも効果は無かった。予測されたように、5D5抗体は単独では有意なアゴニスト効果を示し、5D5をHGFとともに加えた場合では阻害効果は見られなかった。単独で加えた11E1、223C4および224G11にはアゴニスト効果は見られず、11E1および223C4の双方で、HGFの存在下では完全な阻害効果が示された。224G11Mabでは、部分的ではあるが有意な阻害が見られた。
【0229】
実施例9:スフェロイドの形成
in vivo状態に近いモデルで抗c−Met抗体のin vitro腫瘍成長阻害能を評価するため、ヒト膠芽腫細胞U−87MG(ATCC # HTB−14)スフェロイドを生じさせた。単層として増殖させた細胞をトリプシン−EDTAで剥離し、10%FBSを添加した完全細胞培養培地(DMEM)に再懸濁させた。丸底96プレートの1ウェルのDMEM−10%FCS中に625個の細胞を接種することによりスフェロイドを誘導した。底に細胞が接着するのを防ぐため、プレートを95%エタノール中ポリHEMAでプレコーティングし、室温で風乾させた。これらのプレートを、加湿インキュベーター内、37℃、5%COの標準細胞培養条件下でインキュベートした。スフェロイド培養3〜7日後に精製モノクローナル抗体(10μg/ml)を加えた。培養4日後に一度、HGF(400ng/ml)を加えた。スフェロイドは少なくとも10日間、培養維持した。その後、axio visionソフトウエアの自動測定モジュールを用いてスフェロイドの面積を測定することにより、スフェロイドの成長をモニタリングした。面積はμmで表した。各条件につき8〜16個のスフェロイドを評価した。
【0230】
図12Aおよび12Bは、10%FCSの存在下、HGFを完全培地に加えた場合には、刺激が見られなかったことを示す。予測されたように、9G4イソ型対照はスフェロイド成長に効果を示さない。11E1および223C4は、HGFの存在下でも不在下でもスフェロイドの成長を有意に低下させた。5D5 Fabフラグメントでは効果は見られなかった。
【0231】
実施例10:U87MG異種移植モデルにおける抗c−Met Mabのin vivo活性
6〜8週齢の無胸腺マウスを無菌フィルタートップケージで飼い、無菌条件で維持し、フランスおよび欧州ガイドラインに従って取り扱った。c−Metを発現し、リガンドHGFを自己分泌する膠芽腫細胞系統U87−MGをin vivo評価のために選択した。マウスに5×10細胞を皮下注射した。そして、細胞移植6日後に腫瘍は測定可能となり(およそ100mm)、匹敵する腫瘍サイズを有する6匹の群に分け、各供試抗体1mg/用量で1週間に2回処置した。これらのマウスを異種移植の成長速度および体重変化の観察のため追跡した。腫瘍体積は式:π(Pi)/6×長さ×幅×高さで計算した。
【0232】
得られた結果を図13にまとめたが、総ての供試抗体がU87−MG細胞のin vivo増殖を有意に阻害することが示された。パネルAにおける中和抗IGF−1R抗体(IgG1)の使用は、見られたこのin vivo阻害が特にHGF−cMet軸の調節に関連することを示す。
【0233】
実施例11:NCI−H441異種移植モデルにおける抗c−Met Mabのin vivo活性
NCI−H441は乳頭状肺腺癌に由来し、高レベルのc−Metを発現し、c−Met RTKの構成的リン酸化を示す。
【0234】
この細胞系統が高レベルのc−Metを発現し、HGFを産生することができるかどうかを調べるため、定量的RT−PCRとFACSまたはELISA(Quantikine HGF; R&D systems)の双方を行った。定量的RT−PCRでは、細胞系統の全HGFまたはcMet転写物発現レベルを、標準的なTaqMan(商標)技術を用いて定量的PCRにより評価した。HGFまたはc−Met転写物レベルをハウスキーピング遺伝子リボゾームタンパク質ラージPO(RPL0)に対してノーマライズし、結果をノーマライズされた発現値として評価した(2−ddCT法)。
【0235】
RPL0のプライマー/プローブセットは、フォワード5’−gaaactctgcattctcgcttcctg−3’(配列番号47);リバース5’−aggactcgtttgtacccgttga−3’(配列番号48);およびプローブ5’−(FAM)−tgcagattggctacccaactgttgca−(TAMRA)−3’(配列番号49)であった。HGFのプライマー/プローブセットは、フォワード5’−aacaatgcctctggttcc−3’(配列番号50);リバース5’−cttgtagctgcgtcctttac−3’(配列番号51);およびプローブ5’−(FAM)−ccttcaatagcatgtcaagtggagtga−(TAMRA)−3’(配列番号52)であった。cMetのプライマー/プローブセットは、フォワード5’−cattaaaggagacctcaccatagctaat−3’(配列番号53);リバース5’−cctgatcgagaaaccacaacct−3’(配列番号54);およびプローブ5’−(FAM)−catgaagcgaccctctgatgtccca−(TAMRA)−3’(配列番号55)であった。温度周期プロトコールは、50℃で2分間の融解、95℃10分、その後、95℃15秒および62℃1分の40サイクルからなった。
【0236】
NCI−H441ではHGFのmRNAは見られず(図14)、NCI−H441上清においては、ELISAによりHGFは検出できない。これらの実験において、HGFに関して自己分泌細胞系統であることが知られている膠芽腫細胞系統U87−MGを陽性対照として含めた。RT−PCR分析は、U87−MGにおいて有意なレベルのHGF mRNAを示し、U87−MG細胞の上清において細胞100万個当たり1.9ngのHGFが検出された。定量的RT−PCRおよびFACS分析(図15Aおよび15B)は双方とも、予測されたように、NCI−H441細胞がc−Metを有意に過剰発現したこと、およびこの発現がU87−MG細胞に関して見られたものよりも劇的に高かったことを示した。この実験では、MCF−7細胞系統を陰性対照として含めた。これらのことを考え合わせると、NCI−H441は、HGFリガンドとは独立に増殖可能な非自己分泌性の構成的に活性化される細胞系統であることが明らかであり、ここでは、リガンド非依存的なc−metの二量体化がその受容体の過剰発現の結果として起こった。非自己分泌性細胞系統のin vivo活性に対する抗c−met抗体の評価から、c−metの二量体化に影響を及ぼすそれらの効力についてのいくつかの洞察を得ることができた。
【0237】
図16は、224G11、11E1および227H1はNCI−H441のin vivo増殖を有意に阻害したことを示し、二量体化を阻害することができるこれらの抗体は、リガンド依存的阻害に加え、c−metのリガンド非依存的阻害も標的化することができることを示唆する。本明細書で上述したように、この特性をもって、224G11、11E1および227H1が5D5一腕(OA−5D5)抗c−Met抗体とは異なることが示されている。
【0238】
実施例12:抗体224G11のCDRグラフトによるヒト化プロセス
I−軽鎖可変ドメインのヒト化
24G11VLのヌクレオチド配列とネズミ生殖細胞系遺伝子との比較
事前工程として、224G11 VLのヌクレオチド配列を、IMGTデータベース(http://imgt.cines.fr)のネズミ生殖細胞系遺伝子配列の部と比較した。
【0239】
それぞれV領域に関して99.31%、J領域に関して94.28%の配列同一性を有するネズミIGKV3−501およびIGKJ401生殖細胞系遺伝子が同定された。得られた同一性を考慮して、ヒト相同性を検索するために224G11VL配列をそのまま用いることにした。
【0240】
これらのアライメントは、V遺伝子に関しては図17Aに、J遺伝子に関しては図17Bに示す。
【0241】
224G11VLのヌクレオチド配列とヒト生殖細胞系遺伝子との比較
CDRグラフトの最良のヒト候補を同定するため、224G11VLとの最良の同一性を示すヒト生殖細胞系遺伝子を検索した。このため、224G11VLのヌクレオチド配列をIMGTデータベースのヒト生殖細胞系遺伝子配列の部とアラインした。選択の至適化に関しては、より良い相同性を検索するためにタンパク質配列間のアライメントを行った。
【0242】
これらの2つの補足的方法により、ネズミ224G11 VL CDRに関して可能性のある2つの受容ヒトV配列が同定された。ヌクレオチドアライメントにより、75.99%の配列同一性を有するヒトIGKV3−1101生殖細胞系遺伝子が得られ、タンパク質アライメントにより、67.30%の配列同一性を有するヒトIGKV4−101生殖細胞系遺伝子が得られる。両場合において、最も近い2つの生殖細胞系遺伝子と分析された配列が異なるCDR1アミノ酸長を示す(224G11 VLでは10アミノ酸;IGKV3−1101では6アミノ酸;IGKV4−101では12アミノ酸)ことは注目に値する。
【0243】
J領域に関しては、最良の相同性スコアがまずヒトで得られ、ヒトIGKJ301は80%の配列同一性を示す。しかし、ヒトIGKJ402生殖細胞系遺伝子とのアライメントで、より多数の連続同一ヌクレオチドおよびより良いアミノ酸一致が見られた(配列同一性77.14%)。よって、IGKJ402生殖細胞系遺伝子をネズミ11E1 VL CDRの受容ヒトJ領域として選択した。
【0244】
アライメントは、V領域に関しては図18Aに、J領域に関しては図18Bに示す。
【0245】
ヒト化型224G11 VL
ネズミ224G11 VL CDRに関する2つの受容ヒトV領域の可能性が得られたので、224G11 VLドメインの2つのヒト化型を記載する。1つは、CDR1長の短いヒトフレームワークに対する最初の試みに相当し(IGKV3−1101)、もう1つはCDR1長の長いものに相当する(IGKV4−101)。
【0246】
a)IGKV3−1101に基づくヒト化型224G11 VL
ヒト化プロセスにおける以下の工程は、選択された生殖細胞系遺伝子配列IGKV3−1101およびIGKJ402およびまたネズミ224G11 VLのCDRをこれらの生殖細胞系遺伝子配列のフレームワークに連結することからなる。
【0247】
図19Aに示されているように、224G11 VL配列における太字の残基は、224G11 VLドメインと選択されたヒトフレームワーク(ヒトFR、すなわち、IGKV3−1101およびIGKJ402)の間で異なることが分かった25のアミノ酸に相当する。
【0248】
VH/VL境界、抗原結合またはCDR構造におけるそれらの既知の関与、ネズミ残基とヒト残基の間のアミノ酸クラスの変化、可変ドメインの3D構造における残基の局在などのいくつかの基準を考慮して、25の異なる残基のうち3つが最終的に変異されているべきであると特定された。これらの3つの最も重要な定義された残基およびそれらのヒト対応物への突然変異は、ネズミM39からヒトL、H40からAおよびR84からGへのものである。これらランク1の残基を図19Aに、224G11 HZ1VL配列に太字の残基として示す(そこでは、それらはネズミのままである)。
【0249】
もちろん、上述の検討残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。
【0250】
分子モデルの助けで、他の突然変異を同定することもできる。もう1つの好ましい実施形態では、次のランク2の残基、すなわち、残基15(L/P)、49(P/A)、67(L/R)、68(E/A)、93(P/S)および99(V/F)が挙げられ、これらにおける突然変異も考えることができる。
【0251】
もちろん、最終的に検討する上述の残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。もう1つの好ましい実施形態では、25の異なるアミノ酸のうち他のランク3の16の残基総てが再考可能である。
【0252】
上述の突然変異は総て、個々にまたは種々の組合せで検討される。
【0253】
図19Aは、明らかに同定された上述の突然変異を有する、完成されたIGKV3−1101に基づくヒト化224G11 VLを表す。提案された各突然変異の下の数字は、その突然変異がなされるランクに相当する。
【0254】
b)IGKV4−101に基づくヒト化型224G11 VL
ヒト化プロセスの以下の工程は、選択された生殖細胞系遺伝子配列IGKV4−101およびIGKJ402およびまたネズミ224G11 VLのCDRをこれらの生殖細胞系遺伝子配列のフレームワークに連結することからなる。
【0255】
図19Bに示されているように、224G11 VL配列における太字の残基は、224G11 VLドメインと選択されたヒトフレームワーク(ヒトFR、すなわち、IGKV4−101およびIGKJ402)の間で異なることが分かった25のアミノ酸に相当する。
【0256】
VH/VL境界、抗原結合またはCDR構造におけるそれらの既知の関与、ネズミ残基とヒト残基の間のアミノ酸クラスの変化、可変ドメインの3D構造における残基の局在などのいくつかの基準を考慮して、22の異なる残基のうち4つが最終的に変異されているべきであると特定された。これらの4つの最も重要な定義された残基およびそれらのヒト対応物への突然変異は、ネズミL4からヒトM、M39からL、H40からA、およびR84からGへのものである。これらランク1の残基を図19Bに、224G11 HZ2VL配列に太字の残基として示す(そこでは、それらはネズミのままである)。
【0257】
もちろん、上述の検討残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。
【0258】
分子モデルの助けで、他の突然変異を同定することもできる。もう1つの好ましい実施形態では、次のランク2の残基、すなわち、残基25(A/S)、66(N/T)、67(L/R)および93(P/S)が挙げられ、これらにおける突然変異も考えることができる。
もちろん、最終的に検討する上述の残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。もう1つの好ましい実施形態では、22の異なるアミノ酸のうち他のランク3の14の残基総てが再考可能である。
【0259】
上述の突然変異は総て、個々にまたは種々の組合せで検討される。
【0260】
図19Bは、明らかに同定された上述の突然変異を有する、完成されたIGKV4−101に基づくヒト化224G11 VLを表す。提案された各突然変異の下の数字は、その突然変異がなされるランクに相当する。
【0261】
II−重鎖可変ドメインのヒト化
224G11 VHヌクレオチド配列とネズミ生殖細胞系遺伝子との比較
事前工程として、224G11 VHのヌクレオチド配列を、IMGTデータベース(http://imgt.cines.fr)のネズミ生殖細胞系遺伝子配列の部と比較した。
【0262】
それぞれV領域に関して92.70%、D領域に関して75.00%、J領域に関して89.36%の配列同一性を有するネズミIGHV1−1801、IGHD2−401およびIGHJ201生殖細胞系遺伝子が同定された。得られた同一性を考慮して、ヒト相同性を検索するために224G11 VH配列をそのまま用いることにした。
【0263】
これらのアライメントは、V遺伝子に関しては図20Aに、D遺伝子に関しては図20Bに、J遺伝子に関しては図20Cに示す。
【0264】
224G11VHのヌクレオチド配列とヒト生殖細胞系遺伝子との比較
CDRグラフトの最良のヒト候補を同定するため、224G11 VHとの最良の同一性を示すヒト生殖細胞系遺伝子を検索した。このため、224G11 VHのヌクレオチド配列をIMGTデータベースのヒト生殖細胞系遺伝子配列の部とアラインした。選択の至適化に関しては、より良い相同性を検索するためにタンパク質配列間のアライメントを行った。
【0265】
これらの2つの補足的方法により、ヌクレオチドレベルで75.00%、タンパク質レベルで64.30%の配列同一性を有するネズミ224G11 VH CDRに関する同じ受容ヒトIGHV1−202V配列が同定された。
【0266】
D領域がVHドメイン内のCDR3領域に厳格に属していることは注目に値する。このヒト化プロセスは「CDRグラフト」アプローチに基づく。この戦略においては、最も近いヒトD遺伝子の分析は有用でない。
【0267】
J領域の相同性検索により、78.72%の配列同一性を有するヒトIGHJ404生殖細胞系遺伝子が同定された。
【0268】
よって、ヒトIGHV1−202 V生殖細胞系遺伝子およびヒトIGHJ401 J生殖細胞系遺伝子が、ネズミ224G11 VH CDRに関する受容ヒト配列として選択された。
【0269】
アライメントは、V遺伝子に関しては図21Aに、J遺伝子に関しては図21Bに示す。
【0270】
ヒト化型224G11 VH
ヒト化プロセスにおける以下の工程は、選択された生殖細胞系遺伝子配列IGHV1−202およびIGHJ401およびまたネズミ224G11 VHのCDRをこれらの生殖細胞系遺伝子配列のフレームワークに連結することからなる。
【0271】
図22に示されているように、224G11 VH配列における太字の残基は、224G11 VHドメインと選択されたヒトフレームワーク(ヒトFR、すなわち、IGHV1−202およびIGHJ401)の間で異なることが分かった30のアミノ酸に相当する。
【0272】
VH/VL境界、抗原結合またはCDR構造におけるそれらの既知の関与、ネズミ残基とヒト残基の間のアミノ酸クラスの変化、可変ドメインの3D構造における残基の局在などのいくつかの基準を考慮して、30の異なる残基のうち4つが最終的に変異されていると特定された。これらの4つの最も重要な定義された残基およびそれらのヒト対応物への突然変異は、ネズミD51からヒトE、G55からW、V80からRおよびK82からTへのものである。これらランク1の残基を図22に、224G11 HZVH配列に太字の残基として示す(そこでは、それらはネズミのままである)。
【0273】
もちろん、上述の検討残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。
【0274】
分子モデルの助けで、他の突然変異を同定することもできる。もう1つの好ましい実施形態では、次のランク2の残基、すなわち、残基25(T/A)、48(E/Q)、49(S/G)、53(I/M)、76(A/V)、78(L/M)および90(D/E)が挙げられ、これらにおける突然変異も考えることができる。
【0275】
もちろん、最終的に検討する上述の残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。もう1つの好ましい実施形態では、30の異なるアミノ酸のうち他のランク3の19の残基総てが再考可能である。
【0276】
上述の突然変異は総て、個々にまたは種々の組合せで検討される。
【0277】
図22は、明らかに同定された上述の突然変異を有する、ヒト化224G11 VHを表す。提案された各突然変異の下の数字は、その突然変異がなされるランクに相当する。
【0278】
実施例13:抗体227H1のCDRグラフトによるヒト化プロセス
I−軽鎖可変ドメインのヒト化
227H1 VLのヌクレオチド配列とネズミ生殖細胞系遺伝子との比較
事前工程として、227H1 VLのヌクレオチド配列を、IMGTデータベース(http://imgt.cines.fr)のネズミ生殖細胞系遺伝子配列の部と比較した。
【0279】
それぞれV領域に関して96.90%、J領域に関して97.29%の配列同一性を有するネズミIGKV3−501およびIGKJ401生殖細胞系遺伝子が同定された。得られた同一性を考慮して、ヒト相同性を検索するために227H1 VL配列をそのまま用いることにした。
【0280】
これらのアライメントは、V遺伝子に関しては図23Aに、J遺伝子に関しては図23Bに示す。
【0281】
227H1 VLのヌクレオチド配列とヒト生殖細胞系遺伝子との比較
CDRグラフトの最良のヒト候補を同定するため、227H1 VLとの最良の同一性を示すヒト生殖細胞系遺伝子を検索した。このため、227H1 VLのヌクレオチド配列をIMGTデータベースのヒト生殖細胞系遺伝子配列の部とアラインした。選択の至適化に関しては、より良い相同性を検索するためにタンパク質配列間のアライメントを行った。
【0282】
これらの2つの補足的方法により、ネズミ227H1 VL CDRに関して可能性のある2つの受容ヒトV配列が同定された。ヌクレオチドアライメントにより、7491%の配列同一性を有するヒトIGKV3−1101生殖細胞系遺伝子が得られ、タンパク質アライメントにより、64.00%の配列同一性を有するヒトIGKV4−101生殖細胞系遺伝子が得られる。両場合において、最も近い2つの生殖細胞系遺伝子と分析された配列が異なるCDR1アミノ酸長を示す(227H1 VLでは10アミノ酸;IGKV3−1101では6アミノ酸;IGKV4−101では12アミノ酸)ことは注目に値する。
【0283】
J領域に関しては、最良の相同性スコアがまずヒトで得られ、ヒトIGKJ301は78.38%の配列同一性を示す。しかし、ヒトIGKJ402生殖細胞系遺伝子とのアライメントで、より多数の連続同一ヌクレオチドおよびより良いアミノ酸一致が見られた(配列同一性75.68%)。よって、IGKJ402生殖細胞系遺伝子をネズミ227H1 VL CDRの受容ヒトJ領域として選択した。
【0284】
アライメントは、V領域に関しては図24Aに、J領域に関しては図24Bに示す。
【0285】
ヒト化型224G11 VL
ネズミ227H1 VL CDRに関する2つの受容ヒトV領域の可能性が得られたので、227H1 VLドメインの2つのヒト化型を記載する。1つは、CDR1長の短いヒトフレームワークに対する最初の試みに相当し(IGKV3−1101)、もう1つはCDR1長の長いものに相当する(IGKV4−101)。
【0286】
a)IGKV3−1101に基づくヒト化型227H1 VL
ヒト化プロセスにおける以下の工程は、選択された生殖細胞系遺伝子配列IGKV3−1101およびIGKJ402およびまたネズミ227H1 VLのCDRをこれらの生殖細胞系遺伝子配列のフレームワークに連結することからなる。
【0287】
図25Aに示されているように、227H1 VL配列における太字の残基は、227H1 VLドメインと選択されたヒトフレームワーク(ヒトFR、すなわち、IGKV3−1101およびIGKJ402)の間で異なることが分かった26のアミノ酸に相当する。
【0288】
VH/VL境界、抗原結合またはCDR構造におけるそれらの既知の関与、ネズミ残基とヒト残基の間のアミノ酸クラスの変化、可変ドメインの3D構造における残基の局在などのいくつかの基準を考慮して、26の異なる残基のうち3つが最終的に変異されていると特定された。これらの3つの最も重要な定義された残基およびそれらのヒト対応物への突然変異は、ネズミI39からヒトL、H40からAおよびR84からGへのものである。これらランク1の残基を図25Aに、227H1 HZ1VL配列に太字の残基として示す(そこでは、それらはネズミのままである)。
【0289】
もちろん、上述の検討残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。
【0290】
分子モデルの助けで、他の突然変異を同定することもできる。もう1つの好ましい実施形態では、次のランク2の残基、すなわち、残基15(L/P)、25(V/A)、49(P/A)、67(L/R)、68(E/A)、93(P/S)および99(S/F)が挙げられ、これらにおける突然変異も考えることができる。
【0291】
もちろん、最終的に検討する上述の残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。もう1つの好ましい実施形態では、25の異なるアミノ酸のうち他のランク3の16の残基総てが再考可能である。
【0292】
上述の突然変異は総て、個々にまたは種々の組合せで検討される。
【0293】
図25Aは、明らかに同定された上述の突然変異を有する、完成されたIGKV3−1101に基づくヒト化227H1 VLを表す。提案された各突然変異の下の数字は、その突然変異がなされるランクに相当する。
【0294】
b)IGKV4−101に基づくヒト化型227H1 VL
ヒト化プロセスの以下の工程は、選択された生殖細胞系遺伝子配列IGKV4−101およびIGKJ402およびまたネズミ227H1 VLのCDRをこれらの生殖細胞系遺伝子配列のフレームワークに連結することからなる。
【0295】
図25Bに示されているように、227H1 VL配列における太字の残基は、227H1 VLドメインと選択されたヒトフレームワーク(ヒトFR、すなわち、IGKV4−101およびIGKJ402)の間で異なることが分かった24のアミノ酸に相当する。
【0296】
VH/VL境界、抗原結合またはCDR構造におけるそれらの既知の関与、ネズミ残基とヒト残基の間のアミノ酸クラスの変化、可変ドメインの3D構造における残基の局在などのいくつかの基準を考慮して、24の異なる残基のうち4つが最終的に変異されていると特定された。これらの4つの最も重要な定義された残基およびそれらのヒト対応物への突然変異は、ネズミL4からヒトM、I39からL、H40からA、およびR84からGへのものである。これらランク1の残基を図25Bに、227H1 HZ2VL配列に太字の残基として示す(そこでは、それらはネズミのままである)。
【0297】
もちろん、上述の検討残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。
【0298】
分子モデルの助けで、他の突然変異を同定することもできる。もう1つの好ましい実施形態では、次のランク2の残基、すなわち、残基25(V/S)、66(N/T)、67(L/R)および93(P/S)が挙げられ、これらにおける突然変異も考えることができる。
【0299】
もちろん、最終的に検討する上述の残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。もう1つの好ましい実施形態では、22の異なるアミノ酸のうち他のランク3の6つの残基総てが再考可能である。
【0300】
上述の突然変異は総て、個々にまたは種々の組合せで検討される。
【0301】
図25Bは、明らかに同定された上述の突然変異を有する、完成されたIGKV4−101に基づくヒト化227H1 VLを表す。提案された各突然変異の下の数字は、その突然変異がなされるランクに相当する。
【0302】
II−重鎖可変ドメインのヒト化
227H1 VHヌクレオチド配列とネズミ生殖細胞系遺伝子との比較
事前工程として、227H1 VHのヌクレオチド配列を、IMGTデータベース(http://imgt.cines.fr)のネズミ生殖細胞系遺伝子配列の部と比較した。
それぞれV領域に関して92.70%、D領域に関して63.63%、J領域に関して91.48%の配列同一性を有するネズミIGHV1−1801、IGHD1−102およびIGHJ201生殖細胞系遺伝子が同定された。得られた同一性を考慮して、ヒト相同性を検索するために227H1 VH配列をそのまま用いることにした。
【0303】
これらのアライメントは、V遺伝子に関しては図26Aに、D遺伝子に関しては図26Bに、J遺伝子に関しては図26Cに示す。
【0304】
227H1 VHのヌクレオチド配列とヒト生殖細胞系遺伝子との比較
CDRグラフトの最良のヒト候補を同定するため、224G11 VHとの最良の同一性を示すヒト生殖細胞系遺伝子を検索した。このため、227H1 VHのヌクレオチド配列をIMGTデータベースのヒト生殖細胞系遺伝子配列の部とアラインした。このように、72.92%の配列同一性を有するネズミ224G11 VH CDRに関する受容ヒトIGHV1−202V配列が同定された。
【0305】
D領域がVHドメイン内のCDR3領域に厳格に属していることは注目に値する。このヒト化プロセスは「CDRグラフト」アプローチに基づく。この戦略においては、最も近いヒトD領域の分析は有用でない。
【0306】
J領域の相同性検索により、78.72%の配列同一性を有するヒトIGHJ401生殖細胞系遺伝子が同定された。
【0307】
よって、ヒトIGHV1−202 V生殖細胞系遺伝子およびヒトIGHJ401 J生殖細胞系遺伝子が、ネズミ227H1 VH CDRに関する受容ヒト配列として選択された。
【0308】
アライメントは、V領域に関しては図27Aに、J領域に関しては図27Bに示す。
選択の至適化のため、当業者ならば、選択の助けとするためにタンパク質配列間のアライメントを行うこともできる。
【0309】
ヒト化型227H1 VH
ヒト化プロセスにおける以下の工程は、選択された生殖細胞系遺伝子配列IGHV1−202およびIGHJ401およびまたネズミ227H1 VHのCDRをこれらの生殖細胞系遺伝子配列のフレームワークに連結することからなる。
【0310】
図28に示されているように、227H1 VH配列における太字の残基は、227H1 VHドメインと選択されたヒトフレームワーク(ヒトFR、すなわち、IGHV1−202およびIGHJ401)の間で異なることが分かった32のアミノ酸に相当する。
【0311】
VH/VL境界、抗原結合またはCDR構造におけるそれらの既知の関与、ネズミ残基とヒト残基の間のアミノ酸クラスの変化、可変ドメインの3D構造における残基の局在などのいくつかの基準を考慮して、32の異なる残基のうち6つが最終的に変異されていると特定された。これらの6つの最も重要な定義された残基およびそれらのヒト対応物への突然変異は、ネズミL39からヒトM、N40からH、L55からW、T66からN、V80からRおよびK82からTへのものである。これらランク1の残基を図28に、227H1 HZVH配列に太字の残基として示す(そこでは、それらはネズミのままである)。
【0312】
もちろん、上述の検討残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。
【0313】
分子モデルの助けで、他の突然変異を同定することもできる。もう1つの好ましい実施形態では、次のランク2の残基、すなわち、48(K/Q)、49(T/G)、53(I/M)、76(A/V)および78(L/M)が挙げられ、これらにおける突然変異も考えることができる。
【0314】
もちろん、最終的に検討する上述の残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。もう1つの好ましい実施形態では、30の異なるアミノ酸のうち他のランク3の21の残基総てが再考可能である。
【0315】
上述の突然変異は総て、個々にまたは種々の組合せで検討される。
【0316】
図28は、明らかに同定された上述の突然変異を有する、ヒト化227H1 VHを表す。提案された各突然変異の下の数字は、その突然変異がなされるランクに相当する。
【0317】
実施例14:抗体223C4のCDRグラフトによるヒト化プロセス
I−軽鎖可変ドメインのヒト化
223C4 VLのヌクレオチド配列とネズミ生殖細胞系遺伝子との比較
事前工程として、223C4 VLのヌクレオチド配列を、IMGTデータベース(http://imgt.cines.fr)のネズミ生殖細胞系遺伝子配列の部と比較した。
【0318】
それぞれV領域に関して99.64%、J領域に関して94.59%の配列同一性を有するネズミIGKV12−4601およびIGKJ201生殖細胞系遺伝子が同定された。得られた同一性を考慮して、ヒト相同性を検索するために223C4 VL配列をそのまま用いることにした。
【0319】
これらのアライメントは、V遺伝子に関しては図29Aに、J遺伝子に関しては図29Bに示す。
【0320】
223C4 VLのヌクレオチド配列とヒト生殖細胞系遺伝子との比較
CDRグラフトの最良のヒト候補を同定するため、223C4 VLとの最良の同一性を示すヒト生殖細胞系遺伝子を検索した。このため、223C4 VLのヌクレオチド配列をIMGTデータベースのヒト生殖細胞系遺伝子配列の部とアラインした。
【0321】
それぞれV領域に関して78.49%、J領域に関して81.08%の配列同一性を有するヒトIGKV1−NL101およびIGKJ201生殖細胞系遺伝子が同定された。よって、V領域に関しては生殖細胞系遺伝子IGKV1−NL101、J領域に関してはIGKJ201を、ネズミ223C4 VL CDRに関する受容ヒト配列として選択した。
【0322】
アライメントは、V領域に関しては図30Aに、J領域に関しては図30Bに示す。
【0323】
選択の至適化のため、当業者ならば、選択の助けとするためにタンパク質配列間のアライメントを行うこともできる。
【0324】
ヒト化型223C4 VL
ヒト化プロセスの以下の工程は、選択された生殖細胞系遺伝子配列IGKV1−NL101およびIGKJ201およびまたネズミ223C4 VLのCDRをこれらの生殖細胞系遺伝子配列のフレームワークに連結することからなる。
【0325】
プロセスのこの段階で、223C4ネズミFvドメインの分子モデルを開発することができ、分子の三次元構造の維持または抗原結合部位および機能におけるそれらの役割のために保存すべきネズミ残基の選択に有用である。より詳しくは、最終的に変異させる9残基が同定された。
【0326】
第一段階では、CDRアンカーまたは構造に関与する残基を検討する。このような残基は残基66(R/N)および残基68(F/V)である。
【0327】
第二段階では、溶媒に曝される残基およびそれ自体免疫原性に関与し得る残基も検討する。これらは残基49(A/S)、51(K/Q)、69(S/D)、86(D/Q)および92(S/N)である。
【0328】
次に、第三の段階では、可変ドメインの構造/折りたたみに関与する残基も変異させることができる。これらの残基は残基46(P/Q)および残基96(P/S)である。
【0329】
もちろん、上述の検討残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。
【0330】
分子モデルの助けで、他の突然変異を同定することもできる。もう1つの好ましい実施形態では、以下の残基、すなわち、9(S/A)、13(A/V)、17(D/E)、18(R/T)、54(L/V)、88(T/S)、90(T/K)、100(A/G)および101(T/S)が挙げられ、これらにおける突然変異も考えることができる。
【0331】
上述の突然変異は総て、個々にまたは種々の組合せで検討される。
【0332】
図31は、明らかに同定された上述の突然変異を有する、ヒト化223C4 VLを表す。提案された各突然変異の下の数字は、その突然変異がなされるランクに相当する。
【0333】
II−重鎖可変ドメインのヒト化
223C4 VHのヌクレオチド配列ネズミ生殖細胞系遺伝子との比較
事前工程として、223C4 VHのヌクレオチド配列を、IMGTデータベース(http://imgt.cines.fr)のネズミ生殖細胞系遺伝子配列の部と比較した。
【0334】
それぞれV領域に関して98.95%、D領域に関して72.72%、J領域に関して98.11%の配列同一性を有するネズミIGHV1−1801、IGHD6−301およびIGHJ401生殖細胞系遺伝子が同定された。得られた同一性を考慮して、ヒト相同性を検索するために223C4 VH配列をそのまま用いることにした。
【0335】
これらのアライメントは、V遺伝子に関しては図32Aに、D遺伝子に関しては図32Bに、J遺伝子に関しては図32Cに示す。
【0336】
223C4 VHのヌクレオチド配列とヒト生殖細胞系遺伝子との比較
CDRグラフトの最良のヒト候補を同定するため、223C4 VHとの最良の同一性を示すヒト生殖細胞系遺伝子を検索した。このため、223C4 VHのヌクレオチド配列をIMGTデータベースのヒト生殖細胞系遺伝子配列の部とアラインした。
【0337】
それぞれV領域に関して76.38%、D領域に関して75.00%、J領域に関して77.41%の配列同一性を有するヒトIGHV1−201、IGHD1−2601およびIGHJ601生殖細胞系遺伝子が同定された。よって、V領域に関しては生殖細胞系遺伝子IGHV1−202、J領域に関してはIGHJ601を、ネズミ223C4 VH CDRに関する受容ヒト配列として選択した。
【0338】
アライメントは、V領域に関しては図33Aに、D領域に関しては図33Bに、J領域に関しては図33Cに示す。
【0339】
選択の至適化のため、当業者ならば、選択の助けとするためにタンパク質配列間のアライメントを行うこともできる。
【0340】
ヒト化型223C4 VH
ヒト化プロセスの以下の工程は、選択された生殖細胞系遺伝子配列IGHV1−202およびIGHJ601およびまたネズミ223C4 VHのCDRをこれらの生殖細胞系遺伝子配列のフレームワークに連結することからなる。
【0341】
プロセスのこの段階で、223C4ネズミFvドメインの分子モデルを開発することができ、分子の三次元構造の維持または抗原結合部位および機能におけるそれらの役割のために保存すべきネズミ残基の選択に有用である。より詳しくは、最終的に変異させる14残基が同定された。
【0342】
第一段階では、CDRアンカーまたは構造に関与する残基を検討する。このような残基は残基40(H/D)、45(A/S)、55(W/D)、66(N/I)および67(Y/F)である。
【0343】
第二段階では、溶媒に曝される残基およびそれ自体免疫原性に関与し得る残基も検討する。これらは残基1(Q/E)、3(Q/L)、5(V/Q)、48(Q/M)および80(R/V)である。
【0344】
次に、第三の段階では、可変ドメインの構造/折りたたみに関与する残基も変異させることができる。これらは残基9(A/P)、13(K/V)、22(S/P)および46(P/H)である。
【0345】
もちろん、上述の検討残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。
【0346】
分子モデルの助けで、他の突然変異を同定することもできる。もう1つの好ましい実施形態では、以下の残基、すなわち、12(V/L)、21(V/I)、43(R/K)、49(G/S)、53(M/I)、68(A/N)、72(Q/K)、75(R/K)、76(V/A)、78(M/L)、82(T/K)、84(I/S)、92(S/R)、93(R/S)、95(R/T)および97(D/E)が挙げられ、これらにおける突然変異も考えることができる。
【0347】
上述の突然変異は総て、個々にまたは種々の組合せで検討される。
【0348】
図34は、明らかに同定された上述の突然変異を有する、ヒト化223C4 VHを表す。提案された各突然変異の下の数字は、その突然変異がなされるランクに相当する。
【0349】
実施例15:確立された異種移植NCI−H441腫瘍モデルに対する、ネズミ224G11 MAb単独または化学療法薬ナベルビン(登録商標)と組み合わせた場合の抗腫瘍活性
化学療法薬アプローチの成功はアポトーシス誘導薬に対する細胞応答および細胞内のアポトーシス誘導経路とアポトーシス阻害経路のバランスに依存する。細胞の生存に対する活性化c−Metの保護効果が報告されている。それは主として、PI3−Kにより媒介されるシグナル伝達の結果としての抗アポトーシスBcl−x1およびBcl−2タンパク質の発現の増加によるものであり、これが次にミトコンドリア依存性アポトーシスを阻害する(カスパーゼ9)。
【0350】
実際、アポトーシスプロセスに対して顕著な調節作用を有するHGF/c−Met系は癌細胞の化学感受性にも影響を及ぼし得ると考えられる。この仮説は、肺癌処置に用いられる市販の化学療法薬ナベルビン(登録商標)で検証されている(as been tested)(Aapro et al, Crit. Rev. Oncol. Hematol. 2001, 40:251-263; Curran et al, Drugs Aging. 2002, 19:695-697)。異種移植NCI−H441 NSCLCモデルを用いたが、これはこの細胞系統がナベルビン(Kraus-Berthier et al., Clin. Cancer Res., 2000; 6:297-304)とc−Met標的療法(Zou H. T. et al., Cancer Res. 2007, 67: 4408-4417)の双方に感受性があることが従前に記載されていたからである。
【0351】
要するに、ATCCからのNCI−H441細胞を通常、RPMI 1640培地、10%FCSおよび1%L−グルタミンで培養した。細胞を移植2日前に分割したところ、それらは指数増殖期であった。1000万個のNCI−H441細胞をPBS中、7週齢のスイスヌードマウスに移植した。移植3日後に腫瘍を測定し、動物を匹敵するサイズの6匹の4群に分けた。マウスに負荷量2mgの224G11/マウスをi.p.処置し、その後、1週間に2回、43日間、1mgの抗体/マウスをi.p.処置した。9G4 MAbをイソ型対照として用いた。
【0352】
ナベルビン(登録商標)は、8mg/kgの用量で、細胞注射後5日目、12日目、19日目にi.p.注射により与えた。224G11とナベルビン(登録商標)の併用療法では、これら2種類の化合物を別個に投与した。この実験では、2種類の化合物をそれらの至適用量で用いた。腫瘍体積は1週間に2回測定し、式:p/6×長さ×幅×高さにより計算した。
【0353】
図35は、224G11が、単剤療法として単独で用いた場合、ナベルビン(登録商標)と同等の効果があることを示す。両治療法を組み合わせる有意な利点は、63日目に6匹中3匹に見られた完全な腫瘍退縮で見られた。
【0354】
実施例16:C−Met阻害剤および脈管形成
種々の腫瘍細胞機能の調節におけるその直接的役割に加え、c−metの活性化も腫瘍脈管形成にも関連付けられている。内皮細胞はc−Metを発現し、HGFは内皮細胞の増殖、浸潤および運動を刺激する(Nakamura Y. et al., Biochem. Biophys. Res., Commun. 1995, 215:483-488; Bussolino F. et al., J. Cell Biol. 1992, 119:629-641)。HGF/c−Metによる血管内皮細胞における増殖、浸潤および運動の調和のとれた調節は、in vitroにおいて3D毛細内皮管の形成をもたらすことが示されている(Rosen E. M. et al., Supplementum to Experientia 1991, 59:76-88)。
【0355】
抗c−Met MAbのHGF誘導脈管形成妨害能を調べるため、i)HUVEC増殖に対するMAbの評価およびii)HUVEC管形成に関するMAbの試験を含む2セットの実験を行った。
【0356】
増殖実験では、予めラミニンをコーティングした96ウェルプレートの各ウェルに7500のHUVECをプレーティングした。細胞を、0.5%FBSとヘパリンを添加したEMB−2アッセイ培地で24時間増殖させた。その後、供試MAb(0.15〜40μg/ml)を加え、1時間後に20ng/mlのHGFを加えた。添加24時間後に、細胞を0.5μCiの[H]チミジンで刺激した。組み込まれた[H]チミジンの量を液体シンチレーション計数により定量した。この実験で、9G4 MAbは、IgG1イソ型対照として用いた無関連抗体である。
【0357】
図36に生データとして表された結果は、予測されたように、HGFがHUVEC細胞増殖の有効なインデューサーであることを示す。HGFの不在下で評価した抗体は、供試用量によらずHUVECに対するアゴニスト増殖活性を示さなかった。11E1および224G11 MAbの双方では、HGFの存在下で、劇的な用量依存的阻害が見られた。
【0358】
HUVEC管形成の評価では、供試抗体とともに30分インキュベートした25000の細胞を、マトリゲルをコーティングした48ウェルプレートにプレーティングした。その後、HGF50ng/mlを加え、プレートを37℃でインキュベートした。その後、培地を採取し、5μMのCMFDAを15分間加えた後に顕微鏡観察を行った。
【0359】
図37に示された結果は、予測されたように、HGFが有意な管形成を誘導することを示す。IgG1イソ型対照として含められた9G4抗体はHGF誘導管形成に対して効果は無かったが、11E1および224G11は双方とも劇的に管形成を阻害する。
【0360】
実施例17:抗体11E1のCDRグラフトによるヒト化プロセス
I−軽鎖可変ドメインのヒト化
11E1 VLのヌクレオチド配列とネズミ生殖細胞系遺伝子との比較
事前工程として、11E1 VLのヌクレオチド配列を、IMGTデータベース(http://imgt.cines.fr)のネズミ生殖細胞系遺伝子配列の部と比較した。
【0361】
それぞれV領域に関して98.58%、J領域に関して97.22%の配列同一性を有するネズミIGKV4−7901およびIGKJ401生殖細胞系遺伝子が同定された。得られた同一性を考慮して、ヒト相同性を検索するために11E1 VL配列をそのまま用いることにした。
【0362】
これらのアライメントは、V遺伝子に関しては図38Aに、J遺伝子に関しては図38Bに示す。
【0363】
11E1 VLのヌクレオチド配列とヒト生殖細胞系遺伝子との比較
CDRグラフトの最良のヒト候補を同定するため、11E1 VLとの最良の同一性を示すヒト生殖細胞系遺伝子を検索した。このため、11E1 VLのヌクレオチド配列をIMGTデータベースのヒト生殖細胞系遺伝子配列の部とアラインした。
【0364】
両生殖細胞系遺伝子について、V領域に関して69.86%の配列同一性を有するヒトIGKV3−7*02およびIGKV3D−701が同定された。IGKV3−702ヒト生殖細胞系遺伝子は、IMGTデータベースにおいて「ORF」として知られ、このことは、この配列がヒトゲノムに見られるものであったが、いくつかの組換えの問題が存在し、非機能的なIGKV3−702由来の天然抗体となった可能性があることを意味する。よって、IGKV3D−701生殖細胞系遺伝子をネズミ11E1 VL CDRに関する受容ヒトV領域として選択した。
【0365】
J領域に関しては、最良の相同性スコアがまずヒトで得られ、ヒトIGKJ301は78.38%の配列同一性を示す。しかし、ヒトIGKJ402生殖細胞系遺伝子とのアライメントで、より多数の連続同一ヌクレオチドおよびより良いアミノ酸一致が見られた(配列同一性75.68%)。よって、IGKJ402生殖細胞系遺伝子をネズミ11E1 VL CDRの受容ヒトJ領域として選択した。
【0366】
アライメントは、V領域に関しては図39Aに、J領域に関しては図39Bに示す。
【0367】
選択の至適化のため、当業者ならば、選択の助けとするためにタンパク質配列間のアライメントを行うこともできる。
【0368】
ヒト化型11E1 VL
ヒト化プロセスにおける以下の工程は、選択された生殖細胞系遺伝子配列IGKV3D−701およびIGKJ402およびまたネズミ11E1 VLのCDRをこれらの生殖細胞系遺伝子配列のフレームワークに連結することからなる。
【0369】
図40に示されているように、11E1 VL配列における太字の残基は、11E1 VLドメインと選択されたヒトフレームワーク(ヒトFR、すなわち、IGKV3D−701およびIGKJ402)の間で異なることが分かった30のアミノ酸に相当する。
【0370】
VH/VL境界、抗原結合またはCDR構造におけるそれらの既知の関与、ネズミ残基とヒト残基の間のアミノ酸クラスの変化、可変ドメインの3D構造における残基の局在などのいくつかの基準を考慮して、30の異なる残基のうち4つが最終的に変異されていると特定された。これらの4つの最も重要な定義された残基およびそれらのヒト対応物への突然変異は、ネズミL4からヒトM、Y40からS、Y87からFおよびT96からPへのものである。これらランク1の残基を図40に、11E1 HZVL配列に太字の残基として示す(そこでは、それらはネズミのままである)。
【0371】
もちろん、上述の検討残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。
【0372】
分子モデルの助けで、他の突然変異を同定することもできる。もう1つの好ましい実施形態では、次のランク2の残基、すなわち、残基24(S/R)、53(W/L)、66(I/T)、67(L/R)、86(S/D)、95(Q/E)、99(A/F)または121(E/D)が挙げられ、これらにおける突然変異も考えることができる。
【0373】
もちろん、最終的に検討する上述の残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。もう1つの好ましい実施形態では、30の異なるアミノ酸のうち他のランク3の18の残基総てが再考可能である。
【0374】
上述の突然変異は総て、個々にまたは種々の組合せで検討される。
【0375】
図40は、明らかに同定された上述の突然変異を有する、完成されたヒト化11E1 VLを表す。提案された各突然変異の下の数字は、その突然変異がなされるランクに相当する。
【0376】
II−重鎖可変ドメインのヒト化
11E1 VHのヌクレオチド配列とネズミ生殖細胞系遺伝子との比較
事前工程として、11E1 VHのヌクレオチド配列を、IMGTデータベース(http://imgt.cines.fr)のネズミ生殖細胞系遺伝子配列の部と比較した。
【0377】
それぞれV領域に関して94.10%、D領域に関して66.67%、J領域に関して100%の配列同一性を有するネズミIGHV1−701、IGHD4−101およびIGHJ301生殖細胞系遺伝子が同定された。得られた同一性を考慮して、ヒト相同性を検索するために11E1 VH配列をそのまま用いることにした。
【0378】
これらのアライメントは、V遺伝子に関しては図41Aに、D遺伝子に関しては図41Bに、J遺伝子に関しては図41Cに示す。
【0379】
11E1 VHのヌクレオチド配列とヒト生殖細胞系遺伝子との比較
CDRグラフトの最良のヒト候補を同定するため、11E1 VHとの最良の同一性を示すヒト生殖細胞系遺伝子を検索した。このため、11E1 VHのヌクレオチド配列をIMGTデータベースのヒト生殖細胞系遺伝子配列の部とアラインした。選択の至適化に関しては、より良い相同性を検索するためにタンパク質配列間のアライメントを行った。
【0380】
これらの2つの補足的方法により、ネズミ11E1 VH CDRに関して可能性のある2つの受容ヒトV配列が同定された。ヌクレオチドアライメントにより、75.69%の配列同一性を有するヒトIGHV1−202生殖細胞系遺伝子が得られ、タンパク質アライメントにより、71.10%の配列同一性を有するヒトIGHV1−4601生殖細胞系遺伝子が得られる。
【0381】
D領域がVHドメイン内のCDR3領域に厳格に属していることは注目に値する。このヒト化プロセスは「CDRグラフト」アプローチに基づく。この戦略においては、最も近いヒトD領域の分析は有用でない。
【0382】
J領域の相同性検索により、80.85%の配列同一性を有するヒトIGHJ403生殖細胞系遺伝子が同定された。
【0383】
よって、全体的な類似性の検索と配列アライメントから、ヒトIGHV1−4601 V生殖細胞系遺伝子およびヒトIGHJ403 J生殖細胞系遺伝子が、ネズミ11E1 VH CDRに関する受容ヒト配列として選択された。
【0384】
アライメントは、V遺伝子に関しては図42Aに、J遺伝子に関しては図42Bに示す。
【0385】
ヒト化型11E1 VH
ヒト化プロセスにおける以下の工程は、選択された生殖細胞系遺伝子配列IGHV1−4601およびIGHJ403およびまたネズミ11E1 VHのCDRをこれらの生殖細胞系遺伝子配列のフレームワークに連結することからなる。
【0386】
図43に示されているように、11E1 VH配列における太字の残基は、11E1 VHドメインと選択されたヒトフレームワーク(ヒトFR、すなわち、IGHV1−4601およびIGHJ403)の間で異なることが分かった26のアミノ酸に相当する。
【0387】
VH/VL境界、抗原結合またはCDR構造におけるそれらの既知の関与、ネズミ残基とヒト残基の間のアミノ酸クラスの変化、可変ドメインの3D構造における残基の局在などのいくつかの基準を考慮して、26の異なる残基のうち5つが最終的に変異されていると特定された。これらの5つの最も重要な定義された残基およびそれらのヒト対応物への突然変異は、ネズミN40からヒトH、Y55からI、D66からS、A80からRおよびK82からTへのものである。これらランク1の残基を図43に、11E1 HZVH配列に太字の残基として示す(そこでは、それらはネズミのままである)。
【0388】
もちろん、上述の検討残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。
【0389】
分子モデルの助けで、他の突然変異を同定することもできる。もう1つの好ましい実施形態では、次のランク2の残基、すなわち、残基53(I/M)、71(L/F)、76(A/V)、78(L/M)および87(A/V)が挙げられ、これらにおける突然変異も考えることができる。
【0390】
もちろん、最終的に検討する上述の残基に限定されるものではなく、好ましい突然変異として考えるべきである。もう1つの好ましい実施形態では、26の異なるアミノ酸のうち他のランク3の16の残基総てが再考可能である。
【0391】
上述の突然変異は総て、個々にまたは種々の組合せで検討される。
【0392】
図43は、明らかに同定された上述の突然変異を有する、完成されたヒト化11E1 VHを表す。提案された各突然変異の下の数字は、その突然変異がなされるランクに相当する。
【0393】
実施例18:c−metリン酸化に対する精製Mabの効果
実施例3において、リン酸化に対する抗c−Met Mabの効果を、評価する各ハイブリドーマからの投与上清を評価した。精製11E1および224G11 Mabを用い、終濃度30μg/ml(200nM)かまたは各抗体のIC50を求めるために0.0015〜30μg/ml(0.01〜200nM)の用量範囲のいずれかで評価する試験を再び行った。用いたプロトコールは実施例3に記載されているものと同じである。
【0394】
独立した3回の実験の結果を図44に示すが、ひと度精製された11E1および224G11は、A549細胞に単独で加えた場合にアゴニスト効果を示さず、HGFの存在下でのアンタゴニスト効果はそれぞれ87%および75%であった。予測されたように、アゴニスト陽性対照として含められた5D5 Mabは、単独で加えた場合に有意な(58%)アゴニスト効果を示し、HGFの存在下では中程度のアンタゴニスト効果(39%)を示したに過ぎなかった。EC50の算出に関しては、11E1および224G11はナノモルのIC50を有していた。
【0395】
実施例19:NCI−H441異種移植モデルにおける224G11およびナベルビン(登録商標)のin vivo組合せ
ATCCからのNCI−H441細胞を通常、RPMI 1640培地、10%FCS、1%L−グルタミンで培養した。細胞を指数増殖期にある移植2日前に分割した。1000万個のNCI−H441細胞を無胸腺ヌードマウスに移植した。移植5日後に腫瘍は測定可能となり、動物を匹敵するサイズの6匹の群に分けた。マウスに負荷量2mgの224G11 Mab/マウスをi.p.処置し、その後、1週間に2回、38日まで、1mgの抗体/マウス、または8mg/kgのナベルビン(登録商標)注射3回(5日目、12日目、19日目)をi.p.処置した。併用処置を施した第三群も含めた。ナベルビン(登録商標)はi.p.注射により与えた。腫瘍体積は1週間に2回測定し、式:π/6×長さ×幅×高さにより計算し、動物の体重をナベルビン(登録商標)処置中、毎日モニタリングした。統計分析は、t検定かマン・ホイットニー検定のいずれかを用い、各測定時において行った。この実験では、最初の注射から41日後の単独療法処置群の平均腫瘍体積は、224G11、ナベルビン(登録商標)およびナベルビン(登録商標)+224G11に関してそれぞれ72%、76%および99.8%減少する。41日目に、併用療法は単独療法処置に比べて腫瘍増殖を有意に改善し(41日目にナベルビン(登録商標)単独に比べてp≦0.041、224G11に比べてp≦0.002)、併用療法では6匹のうち4匹が腫瘍を持っていなかった。結果を図45に示す。
【0396】
これらの結果は処置終了後50日(88日目)に確認したものであり、この時、併用処置受容マウスの66%が依然として腫瘍を持っていなかった。
【0397】
実施例20:NCI−H441異種移植モデルにおける224G11とドキソルビシンのin vivo組合せ
ATCCからのNCI−H441細胞を通常、RPMI 1640培地、10%FCS、1%L−グルタミンで培養した。細胞を指数増殖期にある移植2日前に分割した。1000万個のNCI−H441細胞を無胸腺ヌードマウスに移植した。移植5日後に腫瘍は測定可能となり、動物を匹敵するサイズの6匹の群に分けた。マウスに負荷量2mgの224G11 Mab/マウスをi.p.処置し、その後、1週間に2回、1mgの抗体/マウス、または5mg/kgのドキソルビシン注射4回(5日目、12日目、19日目、26日目)をi.p.処置した。併用処置を施した第三群も含めた。ドキソルビシンはi.v.注射により与えた。腫瘍体積は1週間に2回測定し、式:π/6×長さ×幅×高さにより計算し、動物の体重をドキソルビシン処置中、毎日モニタリングした。統計分析は、t検定かマン・ホイットニー検定のいずれかを用い、各測定時において行った。単独療法および併用療法とも、対照群に比べて有意な抗腫瘍活性を示した(11日目〜39日目 p≦0.002)。結果を図46に示す。
【0398】
併用処置も、11日目〜39日目に単独療法処置に比べて有意な抗腫瘍増殖活性を示し、ドキソルビシンと抗c−Met処置を組み合わせることに利点があることを示唆する。
【0399】
実施例21:NCI−H441異種移植モデルに対する224G11とドセタキセルのin vivo組合せ
ATCCからのNCI−H441細胞を通常、RPMI 1640培地、10%FCS、1%L−グルタミンで培養した。細胞を指数増殖期にある移植2日前に分割した。900万個のNCI−H441細胞を無胸腺ヌードマウスに移植した。移植5日後に腫瘍は測定可能となり、動物を匹敵するサイズの6匹の群に分けた。マウスに負荷量2mgの224G11 Mab/マウスをi.p.処置し、その後、1週間に2回、1mgの抗体/マウスまたは7.5mg/kgのドセタキセル注射4回(5日目、12日目、19日目、26日目)をi.p.処置した。併用処置を施した第三群も含めた。ドセタキセルはi.p.注射により与えた。腫瘍体積は1週間に2回測定し、式:π/6×長さ×幅×高さにより計算し、動物の体重をドセタキセル処置中、毎日モニタリングした。統計分析は、t検定かマン・ホイットニー検定のいずれかを用い、各測定時において行った。単独療法および併用療法とも、対照群に比べて有意な抗腫瘍活性を示した(11日目〜35日目 p≦0.002)。結果を図47に示す。
【0400】
併用処置も、18日目〜35日目に単独療法処置に比べて有意な抗腫瘍増殖活性を示し、ドセタキセルと抗c−Met処置を組み合わせることに利点があることを示唆する。
【0401】
実施例22:U87MG異種移植モデルに対する224G11およびテモゾロマイドのin vivo組合せ
ATCCからのU87−MG細胞を通常、DMEM培地、10%FCS、1%L−グルタミンで培養した。細胞を指数増殖期にある移植2日前に分割した。500万個のU87−MG細胞を無胸腺ヌードマウスに移植した。移植19日後に腫瘍は測定可能となり、動物を匹敵するサイズの6匹の群に分けた。マウスに負荷量2mgの224G11 Mab/マウスをi.p.処置し、その後、1週間に2回、1mgの抗体/マウスまたは5mg/kgのテモゾロマイド注射3回(19日目、26日目、33日目)をi.p.処置した。併用処置を施した第三群も含めた。テモゾロマイドはi.p.注射により与えた。腫瘍体積は1週間に2回測定し、式:π/6×長さ×幅×高さにより計算し、動物の体重をテモゾロマイド処置中、毎日モニタリングした。統計分析は、t検定かマン・ホイットニー検定のいずれかを用い、各測定時において行った。単独療法および併用療法とも、対照群に比べて有意な抗腫瘍活性を示した(22日目〜32日目 p≦0.002)(対照マウスは倫理的な理由で安楽死させた)。結果を図48に示す。
【0402】
併用処置も単独療法処置に比べて有意な抗腫瘍増殖活性を示す(テモゾロマイドでは22日目〜43日目(対照マウスは倫理的な理由で安楽死させた)p≦0.002、224G11では29日目〜53日目(処置の最終日))。これらのデータを考え合わせると、テモゾロマイドと抗c−Met処置を組み合わせることに利点があることを示唆する。
【0403】
実施例23:スフェロイド形成
他のMabに関して実施例9にすでに記載されているように、本発明者らはU87−MGスフェロイドモデルにおいて224G11 Mabのin vitro腫瘍増殖阻害能を評価した。そのため、単層として増殖させたU87−MG細胞をトリプシン−EDTAで剥離し、完全細胞培養培地に再懸濁させた。625個の細胞を丸底96プレートの一ウェルのDMEM−2.5%FCS中に接種することによりスフェロイドを誘導した。底に細胞が接着するのを防ぐため、プレートを95%エタノール中ポリHEMAでプレコーティングし、室温で風乾させた。これらのプレートを、加湿インキュベーター内、37℃、5%COの標準細胞培養条件下でインキュベートした。スフェロイド培養4〜10日後に精製モノクローナル抗体(10μg/ml)を加えた。スフェロイドは17日間、培養維持した。その後、axiovisionソフトウエアの自動測定モジュールを用いてスフェロイドの面積を測定することにより、スフェロイドの成長をモニタリングした。面積はμmで表した。各条件につき8〜16個のスフェロイドを評価した。抗体の添加前、培養10日後および培養17日後のスフェロイドの大きさを測定した。
【0404】
この条件で均質なスフェロイドが得られ、抗体の添加前には統計学的な違いは見られなかった(図49A)。
【0405】
図49B〜49Dに示されるように、イソ型対照9G4は、培養10日後または17日後のスフェロイドの成長に影響を及ぼさなかった。5D5の添加はスフェロイドの大きさに大きな影響を及ぼさなかったが、224G11および11E1のいずれかの添加は腫瘍増殖を著しく阻害した。
【0406】
実施例24:ホスホ−c−Metアッセイにおけるキメラ型およびヒト化型224G11のin vitro活性
機能的アッセイにおいてネズミ型、キメラ型およびヒト化型のin vitro有効性を比較するため、224G11ハイブリドーマから得られる培養上清およびHEK293トランスフェクト細胞を投与し、実施例3に記載のとおりに試験した。図50にまとめられたデータは、図6Bにすでに記載されているように、未精製ネズミ抗体に関して予測された結果を示した。キメラおよびヒト化未精製抗体はいずれも、単独で加えた場合(図50A)またはHGFの存在下でインキュベートした場合(図50B)のいずれかにおいて匹敵する活性を示した。
【0407】
実施例25:Biacore分析による抗c−Met抗体の親和性定数(KD)の決定
精製11E1および224G11抗体の結合親和性は、抗原として、ヒトIgG1 Fcドメイン(R&D Systems)と融合された組換えc−Met細胞外ドメイン(ECD)(MW=129kDa)を用い、BIAcore Xにより検討した。c−Met−Fc融合タンパク質と抗体は双方とも二価の化合物であるので、パパイン切断によりmAb 11E1および224G11のFabフラグメント(MW=50kDa)を作製し、精製し、アビジティーパラメーターとの干渉を避けるためにこのアッセイで用いた。アッセイのため、抗ヒスチジンタグ捕捉抗体をCM5センサーチップにコーティングした。ランニングバッファーはHBS−EPであり、流速は30μl/minとし、試験は25℃で行った。可溶性c−Met(ECD_M1)−Fc−(HHHHHH)抗原をセンサーチップ上に捕捉し(270RU前後)、供試抗体をアナライトとして液相中で用いた。センサーチップを、両フローセル上で、グリシン、HCl pH1.5バッファーを用いて1分30秒再生した。
【0408】
図51はこの分析の原理を示す。得られた動態パラメーターを以下の表4にまとめる。それらは、11E1および224G11抗c−Met抗体が組換えc−Met−Fc融合タンパク質と、約40pMの範囲の匹敵する親和性で結合することを示す。
【0409】
【表4】
【0410】
実施例26:無胸腺ヌードマウスにおけるヒトHGF供給源としてのMRC5細胞を同時移植したMDA−MB−231細胞に対する224G11のin vivo活性
ATCCからのMDA−MB−213およびMRC5細胞を通常、DMEM培地、10%FCS、1%L−グルタミンで培養した。細胞を指数増殖期にある移植2日前に分割した。500万個のMDA−MB−213細胞および500000個のMRC5細胞を無胸腺ヌードマウスに同時移植した。移植12日後に腫瘍は測定可能となり、動物を匹敵するサイズの6匹の群に分けた。マウスに負荷量2mgの224G11 Mab/マウスをi.p.処置し、その後、1週間に2回、1mgの抗体/マウスをi.p.処置した。腫瘍体積は1週間に2回測定し、式:π/6×長さ×幅×高さにより計算した。
【0411】
図52に記載されている結果は、対照群の1つと比べ、224G11で処置したマウスの腫瘍成長中央値における有意な差を示した。
【0412】
実施例27:抗体227H1、11E1および224G11のヒト化に対する補足的要素
一般法
抗cMet抗体のヒト化は、各可変ドメインにおいて分析されたアミノ酸に関して各鎖独立に順次行った。このヒト化プロセスを、最初の試みとして、組換えFc−cMetに対するELISAに基づく結合アッセイで評価し、ヒト化抗体の結合活性を組換えキメラ抗体と比較する。第二の試みにおいて、抗cMetヒト化抗体をプラスチックにコーティングされた組換えHGF上へのFc−cMetの結合に取って代わる能力に関して評価し、この競合アッセイによりネズミ型、キメラ型およびヒト化型の抗cMet抗体の比較が可能となる。
【0413】
図53および54は、227H1、11E1および224G11ネズミモノクローナル抗体の典型的な抗cMet結合を例示している。
【0414】
図53は、検出された精製ネズミ抗体の抗cMet直接結合活性を示す。このアッセイでは、ネズミモノクローナル抗cMet抗体は様々であるが、なお用量依存的な抗cMet結合活性を示す。
【0415】
図54は、精製ネズミ抗体のHGF−cMet結合競合活性を示す。この競合アッセイから、11E1モノクローナル抗体に対して中程度であって、完全なものではないが、信頼できる競合活性を有するこれらの抗cMetモノクローナル抗体間の信頼できる違いが明らかになり、一方、ネズミ224G11および227H1は、高い抗体濃度で最大HGF結合置換100%という類似の競合活性パターンを示す。224G11モノクローナル抗体は最良のIC50値を示す。
【0416】
ネズミ抗体の直接結合活性はそれら固有のHGF結合競合特性を反映していないことは注目に値する。
【0417】
これら2つのアッセイを用いて、ネズミ抗cMet抗体の組換えキメラ型およびヒト化型の特性決定を行った。このため、要するに、ネズミまたはヒト化型の抗cMet可変ドメインをLONZAのpCONplus発現ベクター系にクローニングし、組換えIgGi/κ由来抗体をCHO細胞で発現させた。発現培養上清を濃縮し、PBSに対して十分に透析した後、発現した抗体濃度に関して用量を決定し、そのまま対応する抗cMet結合活性の評価に用いた。組換えキメラ型またはヒト化型をより良く特性決定するため、直接結合アッセイおよびHGF競合アッセイの双方を評価した。
【0418】
実施例27−1:227H1重鎖可変ドメインのヒト化
CDRグラフトの最良のヒト候補を同定するため、227H1 VHネズミ配列と最大の同一性を示すヒト生殖細胞系遺伝子を検索した。このようにして、IMGTデータベースの助けで、ヒトIGHV1−202V生殖細胞系遺伝子およびヒトIGHJ401 J生殖細胞系遺伝子を、ネズミ227H1 VH CDRに関する受容ヒト配列が選択された。
【0419】
図55は、ネズミ227H1 VHドメインと選択されたヒトフレームワークとのアミノ酸アライメントを表す。ヒトFRレーンでは、227H1ネズミVHドメインと異なることが分かったアミノ酸のみを表す。HZ3VH、HZ2VHおよびHZ1VHレーンは、明らかに同定された上述(「変化」レーン)の突然変異を有する227H1 VHドメインの完成されたヒト化型に相当する。提案された各突然変異の下の数字は、その突然変異がなされるランクに相当する。
【0420】
第一の一連の実験では、本発明者らは、227H1キメラ軽鎖と組み合わさって発現される場合の、第一の3つのヒト化型227H1ネズミVHドメインを構築し、その抗cMet結合活性を分析した。抗cMet直接結合アッセイから得られた結果を図56に示す。この実験において、供試キメラまたは部分的ヒト化組換え抗体の結合能に違いは見られなかった。この点で、ネズミ227H1 VHドメインと選択されたヒトフレームワークの間に違いが見られた32のアミノ酸のうち26を分析したところ、キメラ軽鎖と組み合わせた場合、227H1ヒト化VHドメインの抗cMet結合活性には無関連であることが分かった。
【0421】
HZ1VHヒト化型227H1 VHドメインの最後の6つのネズミ残基の部位特異的突然変異誘発分析に関して、本発明者らは原型のHZ4VH「完全IMGTヒト化」を構築し、その抗cMet結合特性を試験した。結果は、直接結合アッセイに関しては図57に、HGF結合競合アッセイに関しては図58に示す。組換えキメラ型とヒト化型双方の227H1は親ネズミ抗体よりも良好な競合活性を示すことは注目に値する。
【0422】
しかしながらやはり、「完全IMGT」ヒト化227H1 VHドメインの抗cMet結合特性に関して得られた実験データを考慮して、図59に示される、結果として得られるアミノ酸配列が選択され、次に、バイオインフォマティック分析を行い、いわゆる227H1−HZ VHヒト化可変ドメインの「ヒト性」レベルを評価した。
【0423】
このため、IMGTツールを用い、ヒトデータベースに対するフレームワーク配列の単純な比較を行った。フレームワーク残基に相当する分析した89のアミノ酸のうち、このプロセスの間に本発明者らが到達したヒト化レベルが与えられれば、89がヒト起源を持つと信頼できることが分かった。CDRに由来する残基だけが異なることが分かるが、もしそうであれば、対応するヒト生殖細胞系遺伝子と違いがあり、明らかに超可変性の位置にある。IMGTナンバリング体系および相同性分析ツールに基づき、本発明者らはまず、ネズミ起源の抗体可変ドメインを完全にヒト化した。
【0424】
実施例27−2:11E1モノクローナル抗体のヒト化
I−11E1重鎖可変ドメインのヒト化
CDRグラフトの最良のヒト候補を同定するため、11E1 VHネズミ配列と最良の同一性を示すヒト生殖細胞系遺伝子を検索した。よって、IMGTデータベースの助けで、ヒトIGHV1−4601 V生殖細胞系遺伝子およびヒトIGHJ403 J生殖細胞系遺伝子をネズミ11E1 VH CDRに関する受容ヒト配列として選択した。
【0425】
図60は、ネズミ11E1 VHドメインと選択されたヒトフレームワークとのアミノ酸アライメントを示す。ヒトFRレーンでは、11E1ネズミVHドメインとは異なることが分かったアミノ酸のみを示す。HZ VH3、HZ VH2およびHZ VH1レーンは、明らかに同定された上述(「変化」レーン)の突然変異を有する、完成されたヒト化型11E1 VHドメインに相当する。提案された各突然変異の下の数字は、その突然変異がなされるランクに相当する。
【0426】
第一の一連の実験では、本発明者らは、11E1キメラ軽鎖と組み合わさって発現される場合の、第一の3つのヒト化型11E1ネズミVHドメインを構築し、その抗cMet結合活性を分析した。抗cMet直接結合アッセイから得られた結果を図61に示す。この実験において、供試11E1由来キメラまたは部分的ヒト化組換え抗体の類似の結合能が見られた。この点で、ネズミ11E1 VHドメインと選択されたヒトフレームワークの間に違いが見られた24のアミノ酸のうち19を分析したところ、キメラ軽鎖と組み合わせた場合、11E1ヒト化VHドメインの抗cMet結合活性には無関連であることが分かった。
【0427】
II−11E1軽鎖可変ドメインのヒト化
CDRグラフトの最良のヒト候補を同定するため、11E1 VLネズミ配列と最良の同一性を示すヒト生殖細胞系遺伝子を検索した。よって、IMGTデータベースの助けで、ヒトIGKV3D−701 V生殖細胞系遺伝子およびヒトIGKJ401 J生殖細胞系遺伝子をネズミ11E1 VL CDRに関する受容ヒト配列として選択した。
【0428】
図62は、ネズミ11E1 VLドメインと選択されたヒトフレームワークとのアミノ酸アライメントを示す。ヒトFRレーンでは、11E1ネズミVLドメインとは異なることが分かったアミノ酸のみを示す。HZ VL3、HZ VL2およびHZ VL1レーンは、明らかに同定された上述(「変化」レーン)の突然変異を有する、完成されたヒト化型11E1 VLドメインに相当する。提案された各突然変異の下の数字は、その突然変異がなされるランクに相当する。
【0429】
第一の一連の実験では、本発明者らは、11E1キメラ重鎖と組み合わさって発現される場合の、第一の3つのヒト化型11E1ネズミVLドメインを構築し、その抗cMet結合活性を分析した。抗cMet直接結合アッセイから得られた結果を図63に示す。この実験において、供試11E1由来キメラまたは部分的ヒト化組換え抗体の類似の結合能が見られた。この点で、ネズミ11E1 VLドメインと選択されたヒトフレームワークの間に違いが見られた30のアミノ酸のうち26を分析したところ、キメラ重鎖と組み合わせた場合、11E1ヒト化VLドメインの抗cMet結合活性には無関連であることが分かった。
【0430】
III−11E1抗体のヒト化
11E1モノクローナル抗体のヒト化のこの段階で、得られる理論的ヒト化抗体配列は、親ネズミVHドメイン由来の5つのCDR外残基と親ネズミVL配列に由来の4つのCDR外残基のみを含む(図60、レーンHZ VH1および図62、レーンHZ VL1参照)。次に、得られた11E1抗体の重鎖および軽鎖ヒト化型を組み合わせたものをすぐに特性決定することにした。結果は、抗cMet直接結合アッセイに関して図64に示す。
【0431】
この実験では、供試11E1由来キメラまたはヒト化組換え抗体に関して類似の結合能が見られた。HGF結合競合特性の分析および残っている9つのネズミ残基の分布の部位特異的突然変異誘発分析を独立に、またはこの選択されたVH1/VL1「プレヒト化」型11E1モノクローナル抗体と組み合わせて行った。
【0432】
実施例27−3:224G11モノクローナル抗体ヒト化
I−224G11重鎖可変ドメインのヒト化
CDRグラフトの最良のヒト候補を同定するため、224G11 VHネズミ配列と最良の同一性を示すヒト生殖細胞系遺伝子を検索した。
【0433】
224G11と227H1 VHドメイン配列との高い配列相同性を考慮して、また、IMGTデータベースツールの使用により確認されたように、同じヒトIGHV 1−202V生殖細胞系遺伝子およびヒトIGHJ401 J生殖細胞系遺伝子がこのようにネズミ224G11 VH CDRに関する受容ヒト配列として選択された。
【0434】
この高い相同性に基づき、227H1 VHドメインのヒト化(実施例27参照)から得られたヒト化情報を移行することにし、次に、本発明者らは、選択されたヒトフレームワークを有するネズミ227H1および224G11VHドメインのアミノ酸アライメントを表す、図65に示されているような「完全IMGT」ヒト化型を設計した。ヒトFRレーンでは、224G11ネズミVHドメインとは異なることが分かったアミノ酸のみを示す。HZVH0レーンは、「完全IMGT」227H1−HZVHドメインに関して得られた「完全IMGT」ヒト化型224G11 VHドメインに相当する。
【0435】
次に、「完全IMGT」ヒト化型224G11ネズミVHドメインを構築し、224G11キメラ軽鎖と組み合わさって発現される場合の、その抗cMet結合活性を分析した。抗cMet直接結合アッセイから得られた結果を図66に示し、図67はHGF結合競合アッセイを示す。「完全IMGT」ヒト化224G11 VHドメインの抗cMet結合特性に関して得られた実験データを考慮し、図65に示される、結果として得られるアミノ酸配列が選択され、次に、バイオインフォマティック分析を行い、いわゆる224G11−HZ VH0ドメインの「ヒト性」レベルを評価した。
【0436】
ここで適用されたヒト化戦略を考える場合、224G11 HZ VH0配列のヒト性分析に関して実施例27を参照しなければならない。227H1 VHドメインのヒト化に関して記載されているように、本発明者らはIMGTナンバリング体系および相同性分析ツールの信頼性を確認し、また、それらの固有の相同性の制限下で、このヒト化戦略を抗体間で移行できる可能性を示す。
【0437】
II−224G11軽鎖可変ドメインのヒト化
CDRグラフトの最良のヒト候補を同定するため、224G11 VLネズミ配列と最良の同一性を示すヒト生殖細胞系遺伝子を検索した。IMGTデータベース分析ツールの助けで、ネズミ224G11 VL CDRに関する2つの可能性のある受容ヒトV領域が同定された。そして、224G11 VL ドメインに関して2つのヒト化戦略が計画された。1つはCDR1長の短いヒトフレームワークに関する最初の試みに相当し(IGKV3−1101)、もう1つはCDR1長の長いものに相当する(IGKV4−101)。
【0438】
図68は、ネズミ224G11 VLドメインと2つの選択されたヒトフレームワークとのアミノ酸アライメントを示す。短鎖型および長鎖型Hu−FR双方のFRレーンでは、224G11ネズミVLドメインとは異なることが分かったアミノ酸のみを示す。HZ VL3およびHZ VL6レーンは、明らかに同定された上述(「ランク」レーン)の突然変異を有する224G11 VLドメインの基本ヒト化型に相当する。提案された各突然変異の下の数字は、基本「短鎖型」CDR1フレームワークが選択される場合であれ「長鎖型」CDR1フレームワークが選択される場合であれ、その突然変異がなされるランクに相当する。
【0439】
第一の一連の実験では、224G11ネズミVLドメインのこれらの2つの基本ヒト化型を構築し、224G11キメラ重鎖と組み合わさって発現される場合の、その抗cMet結合活性を分析した。抗cMet直接結合アッセイから得られた結果を図69に示す。この実験において、キメラおよびHZ VL6(「長鎖CDR1」)型に関しては類似の抗cMet結合活性が得られたが、HZ VL3「短鎖CDR1」)組換え224G11由来抗体に関しては結合はほとんど検出されなかった。
【0440】
第二の一連の実験では、本発明者らは、224G11キメラ重鎖と組み合わさって発現される場合の、完成されたヒト化型HZ VL6由来224G11 VHドメインを構築し、その抗cMet結合活性を分析した。さらに2つのヒト化型も分析し、HZ VL5型では、第三群(ランク3)の7残基がヒト化され、HZ VL4型では、第一群(ランク1)の4残基だけがネズミのままであった。
【0441】
抗cMet直接結合アッセイから得られた結果を図70に示す。この実験において、供試224G11由来キメラまたは部分的ヒト化組換え抗体の結合能に違いは見られなかった。この点で、ネズミ224G11 VLドメインと選択された「長鎖CDR1」ヒトフレームワークの間に違いが見られた22のアミノ酸のうち18を分析したところ、キメラ重鎖と組み合わせた場合、224G11ヒト化VLドメインの抗cMet結合活性には無関連であることが分かった。
【0442】
次に、このHZ VL4ヒト化型224G11 VLドメインのHGF結合競合アッセイを調べた。図71に示されるように、得られた結果は、ネズミおよび組換えキメラおよびHZ VL4ヒト化224G11由来抗体の類似の競合活性を示す。
【0443】
224G11 VLドメインのヒト化のこの段階で、得られた配列に含まれるネズミ親配列からのCDR外残基は4個だけである。図72に示されるように、§で表示されたこれらの4残基はL4、M39、H40およびR84である。
【0444】
IMGTナンバリング体系および相同性分析ツールに基づき、本発明者らは、CDR長に関して構造的な違いを示すヒトフレームワークはヒト化プロセスになお好適であり得ることを示した。次に、得られた重鎖および軽鎖ヒト化型224G11抗体を特性決定することにした。次に、VH0ヒト化型重鎖と組み合わさって発現される場合の、残っている4つのネズミ残基の分布の部位特異的突然変異誘発分析を行った。
【0445】
III−224G11抗体のヒト化
第一の一連の実験では、本発明者らは、完全ヒト化型224G11抗体を構築し、その抗cMet結合活性を分析した。この組換え型はそれぞれVH0およびVL4ヒト化VHおよびVLドメインを包含する。抗cMet直接結合アッセイから得られた結果を図73に示す。この実験において、完全ヒト224G11抗cMet結合活性は「単鎖」ヒト化およびキメラ組換え224G11型のものと類似していることが分かった。
【0446】
次に、HGF結合競合アッセイにおいて224G11 VLドメインの完全ヒト化型を調べた。得られた結果は、図74に示されるように、親ネズミおよび組換えキメラおよび完全ヒト化224G11由来抗体の類似の競合活性を示す。
【0447】
224G11抗体ヒト化のこの段階で、得られた配列に含まれるネズミ親軽鎖可変ドメイン配列からのCDR外残基は4個だけである。本発明者らは、次に、VH0ヒト化重鎖と組み合わさって発現される場合の、VL4ヒト化VLドメインの部位特異的突然変異誘発単一変異体を分析した。直接結合アッセイに関して図75に例示されるように、本発明者らは、調べた4つから可能性のある関連残基を同定した(M39とH40)。
【0448】
HZ VH0ヒト化224G11VHドメインと組み合わさって発現される場合の、HZ VL4ヒト化224G11VLドメインの多重突然変異体を分析することにした。直接結合アッセイに関して図76に、また、HGF結合競合アッセイに関して図77に示されるように、VL4ドメインの複数のアミノ酸突然変異体を分析し、最良のヒト化組合せを特定した。単一突然変異体分析に基づけば、最良の抗cMet活性を示し得る二重および三重突然変異体に着目された。VH0/VL4−2x突然変異体は、二重突然変異L4M/R84Gを有するHZ VL4 224G11ヒト化VLドメインとともに発現されたHZ VH0 224G11ヒト化VHドメインに相当する。VH0/VL4−3x突然変異体は、三重突然変異L4M/M39L/R84Gを有するHZ VL4 224G11ヒト化VLドメインとともに発現されたHZ VH0 224G11ヒト化VHドメインに相当する。
【0449】
完全ヒト化224G11抗体の抗cMet結合特性に関して得られた実験データを校了し、次に、重鎖および軽鎖双方の可変ドメイン配列のバイオインフォマティック分析を行い、VH0/VL4−2xおよびVH0/VL4−3xの最良のヒト化型の「ヒト性」レベルを評価した。VH0 224G11 VHドメインの「完全IMGT」ヒト化は予め示されていた。VL4−2xおよび−3x224G11ヒト化VLドメイン型のヒト性レベルを考慮すれば、それらはネズミ残基M39および/またはH40のみを含む。これら2つの可能性のある重要な残基はCDR1の末端に位置し、M39はN末端CDRアンカーである。本発明者らが224G11 VLドメインのヒト化の際に直面したCDR長の問題を考慮し、また、それらの位置をVL CDR1のKabat定義の一部と考えれば、完全ヒト化224G11抗体のヒト性レベルは、保存されたネズミ残基が最小限であるため免疫原性の著しい低減を示すはずである。
【図面の簡単な説明】
【0450】
図1】選択された抗c−Met抗体のFACSプロフィールの例。
図2】c−Metを標的とする抗体によるBXPC3増殖のイン・ビトロ阻害。
図3】c−Met二量体化の阻害。
図4】抗c−Met抗体によるタンパク質認識。
図5】BIAcore分析による11E1および5D5の「エピトープマッピング」。
図6】c−Metリン酸化に対するMAbの効果。
図7】抗c−Met抗体による放射性標識HGFの置換。
図8】抗c−Met抗体による浸潤の阻害[この図では、SVFはウシ胎児血清(FCS)を意味する]。
図9】創傷治癒に対する抗c−Met抗体の効果。
図10】拡散アッセイ。
図11】三次元管形成アッセイ。
図12】スフェロイド形成に対する抗体の効果。
図13】U87MG異種移植モデルにおける抗c−Met Mabのイン・ビボ活性。
図14】腫瘍細胞系統セットによるHGF発現。
図15】NCI−H441細胞系統の特性決定;図15Aは定量的RT−PCR分析に相当し、図15BはFACS分析に相当する。
図16】NCI−H441異種移植モデルに対する抗c−Met抗体のイン・ビボ活性。
図17A】ネズミIGKV3−501生殖細胞系遺伝子に対する224G11 VLのアライメント。
図17B】ネズミIGKJ401生殖細胞系遺伝子に対する224G11 VLのアライメント。
図18A】ヒトIGKV3−1101およびIGKV4−101生殖細胞系遺伝子に対する224G11 VLのアライメント。
図18B】ヒトIGKJ402生殖細胞系遺伝子に対する224G11 VLのアライメント。
図19A】突然変異を有する、IGKV3−1101に基づくヒト化型224G11 VL。
図19B】突然変異を有する、IGKV4−101に基づくヒト化型224G11 VL。
図20A】ネズミIGHV1−1801生殖細胞系遺伝子に対する224G11 VHのアライメント。
図20B】ネズミIGHD2−401生殖細胞系遺伝子に対する224G11 VHのアライメント。
図20C】ネズミIGHJ201生殖細胞系遺伝子に対する224G11 VHのアライメント。
図21A】ヒトIGHV1−202生殖細胞系遺伝子に対する224G11 VHのアライメント。
図21B】ヒトIGHJ401生殖細胞系遺伝子に対する224G11 VHのアライメント。
図22】突然変異を有するヒト化224G11 VH。
図23A】ネズミIGKV3−501生殖細胞系遺伝子に対する227H1 VLのアライメント。
図23B】ネズミIGKJ401生殖細胞系遺伝子に対する227H1 VLのアライメント。
図24A】ヒトIGKV3−1101およびIGKV4−101生殖細胞系遺伝子に対する227H1 VLのアライメント。
図24B】ヒトIGKJ402生殖細胞系遺伝子に対する227H1 VLのアライメント。
図25A】突然変異を有する、IGKV3−1101に基づくヒト化型227H1 VL。
図25B】突然変異を有する、IGKV4−101に基づくヒト化型227H1 VL。
図26A】ネズミIGHV1−1801生殖細胞系遺伝子に対する227H1 VHのアライメント。
図26B】ネズミIGHD1−102生殖細胞系遺伝子に対する227H1 VHのアライメント。
図26C】ネズミIGHJ201生殖細胞系遺伝子に対する227H1 VHのアライメント。
図27A】ヒトIGHV1−202生殖細胞系遺伝子に対する227H1 VHのアライメント。
図27B】; ヒトIGHJ401生殖細胞系遺伝子に対する227H1 VHのアライメント。
図28】突然変異を有するヒト化227H1 VH。
図29A】ネズミIGKV12−4601生殖細胞系遺伝子に対する223C4 VLのアライメント。
図29B】ネズミIGKJ201生殖細胞系遺伝子に対する223C4 VLのアライメント。
図30A】ヒトIGKV1−NL101生殖細胞系遺伝子に対する223C4 VLのアライメント。
図30B】ヒトIGKJ201生殖細胞系遺伝子に対する223C4 VLのアライメント。
図31】突然変異を有するヒト化223C4 VL。
図32A】ネズミIGHV1−1801生殖細胞系遺伝子に対する223C4 VHのアライメント。
図32B】ネズミIGHD6−301生殖細胞系遺伝子に対する223C4 VHのアライメント。
図32C】ネズミIGHJ401生殖細胞系遺伝子に対する223C4 VHのアライメント。
図33A】ヒトIGHV1−202生殖細胞系遺伝子に対する223C4 VHのアライメント。
図33B】ヒトIGHD1−2601生殖細胞系遺伝子に対する223C4 VHのアライメント。
図33C】ヒトIGHJ601生殖細胞系遺伝子に対する223C4 VHのアライメント。
図34】突然変異を有するヒト化223C4 VH。
図35】確立された異種移植NCI−H441腫瘍モデルに対する、ネズミ224G11 Mab単独またはナベルビン(登録商標)と組み合わせた場合の抗腫瘍活性。
図36】HUVECの増殖に対する抗c−Met Mabの評価。
図37】HUVECの管形成に対する抗c−Met Mabの評価。
図38A】ネズミIGKV4−7901生殖細胞系遺伝子に対する11E1 VLのアライメント。
図38B】ネズミIGKJ401生殖細胞系遺伝子に対する11E1 VLのアライメント。
図39A】ヒトIGKV3D−701生殖細胞系遺伝子に対する11E1 VLのアライメント。
図39B】ヒトIGKJ402生殖細胞系遺伝子に対する11E1 VLのアライメント。
図40】記載の突然変異を有するヒト化型11E1 VL。
図41A】ネズミIGHV1−701生殖細胞系遺伝子に対する11E1 VHのアライメント。
図41B】ネズミIGHD4−101生殖細胞系遺伝子に対する11E1 VHのアライメント。
図41C】ネズミIGHJ301生殖細胞系遺伝子に対する11E1 VHのアライメント。
図42A】ヒトIGHV1−202およびIGHV1−4601生殖細胞系遺伝子に対する11E1 VHのアライメント。
図42B】ヒトIGHJ403生殖細胞系遺伝子に対する11E1 VHのアライメント。
図43】突然変異を有するヒト化11E1 VH。
図44】A549細胞に対するc−Metリン酸化アッセイ。HGFの不在下または存在下における、30μg/ml(図44A)かまたはEC50値を求めるための0.0015〜30μg/mlの用量範囲(図44B)での11E1および224G11精製Mabの評価。
図45】NSCLC NCI−H441異種移植モデルにおける224G11 Mabとナベルビン(登録商標)のイン・ビボ組合せ。
図46】NSCLC NCI−H441異種移植モデルにおける224G11 Mabとドキソルビシンのイン・ビボ組合せ。
図47】NSCLC NCI−H441異種移植モデルにおける224G11 Mabとドセタキセルのイン・ビボ組合せ。
図48】NSCLC NCI−H441異種移植モデルにおける224G11 Mabとテモゾロマイドのイン・ビボ組合せ。
図49】U87−MGスフェロイド成長に対する抗c−Met Mabの効果。
図50】ホスホ−c−Metアッセイにおけるキメラおよびヒト化型の224G11のイン・ビトロ活性。
図51】Biacore分析の設定。
図52】無胸腺ヌードマウスにおけるヒトHGF供給源としてのMRC5細胞と同時移植したMDA−MB−231細胞に対する224G11のイン・ビボ活性。
図53】ELISAに基づくFc−cMetに対する結合実験。抗Fc−c−Met結合活性は、精製ネズミモノクローナル抗体11E1、224G11および227H1の検出に抗ネズミFcコンジュゲートを用い、ELISAに基づくアッセイで測定した。プラスチックにコーティングされた組換えFc−cMet上への用量依存的結合活性を450nmで測定した。
図54】HGF−cMet競合アッセイ。このELISAに基づくアッセイでは、精製ネズミモノクローナル抗体11E1、224G11および227H1の存在下、プラスチックにコーティングされたHGFに対する組換えFc−cMETの残留結合を抗ネズミFcコンジュゲートで検出し、450nmで測定した。
図55】227H1由来組換えVHドメインのアミノ酸配列アライメント。227H1 VHアミノ酸配列を選択されたヒト受容フレームワーク配列とアラインし、ネズミ227H1 VH配列と異なることが分かったアミノ酸のみを示した。227H1 HZ1、HZ2およびHZ3 VH配列は、完成されたヒト化型227H1ネズミVHドメインに相当し、残っているネズミ残基を太字で示す。HZ3では、10残基()がそれらのヒト対応部分に自動的に変化していた。HZ2では、第三群(3)の7残基が検討された。HZ1VHでは、第二群(2)の9残基がそれらのヒト対応部分に変異しており、第一群(1)の6残基のみがネズミのままであった。
図56】組換え227H1抗体のFc−cMetに対するELISAに基づく結合アッセイ。抗Fc−cMet結合活性は、キメラおよびヒト化227H1由来組換え抗体を検出するために抗ヒトFcコンジュゲートを用いたELISAに基づくアッセイで測定した。プラスチックにコーティングされた組換えFc−cMetに対するヒト化VHドメイン由来227H1抗体の用量依存的結合活性を450nmで測定した後、親/参照キメラ抗体のそれと比較した。
図57】組換え227H1由来抗体のFc−cMetに対するELISAに基づく結合アッセイ。抗Fc−cMet結合活性は、キメラおよびヒト化227H1由来組換え抗体を検出するために抗ヒトFcコンジュゲートを用いたELISAに基づくアッセイで測定した。プラスチックにコーティングされた組換えFc−cMetに対するヒト化HZ4VH由来227H1抗体の用量依存性的結合活性を450nmで測定した後、親/参照キメラ抗体のそれと比較した。
図58】227H1ネズミおよび組換え抗体のHGF−cMet競合アッセイ。このELISAに基づくアッセイでは、種々の形態の227H1抗体の存在下、プラスチックにコーティングされたHGFに対する組換えFc−cMetの残留結合を、ビオチン化された無関連の抗cMet抗体で検出した。精製ネズミ227H1モノクローナル抗体、キメラおよびHZ4VH由来ヒト化227H1由来組換え抗体を試験し、450nmで測定した場合のそれらのHGF−cMet結合との競合能を比較した。
図59】227H1−HZ VHヒト化可変ドメイン配列。は、それらのヒト対応物へと事実上変化したアミノ酸に相当し、!は、HZ3からHZ1への遂行の際にヒト化されたアミノ酸に相当し、§は、最終的な227H1−HZ VH配列においてヒト化されていたアミノ酸に相当する。
図60】11E1由来組換えVHドメインのアミノ酸配列アライメント。11E1 VHアミノ酸配列を選択されたヒト受容フレームワーク配列とアラインし、ネズミ11E1 VH配列と異なることが分かったアミノ酸のみを示した。11E1 HZ VH1、VH2およびVH3配列は、完成されたヒト化型11E1ネズミVHドメインに相当し、残っているネズミ残基を太字で示す。HZ VH3では、7残基()がそれらのヒト対応物に自動的に変化していた。HZ VH2では、第三群(3)の7残基が検討された。HZ VH1では、第二群(2)の5残基がそれらのヒト対応部分に変異しており、第一群(1)の5残基のみがネズミのままであった。
図61】組換え11E1抗体のFc−cMetに対するELISAに基づく結合アッセイ。抗Fc−cMet結合活性は、キメラおよびヒト化11E1由来組換え抗体を検出するために抗ヒトFcコンジュゲートを用いたELISAに基づくアッセイで測定した。プラスチックにコーティングされた組換えFc−cMetに対するヒト化VHドメイン由来11E1抗体の用量依存的結合活性を450nmで測定した後、親/参照キメラ抗体のそれと比較した。
図62】11E1由来組換えVLドメインのアミノ酸配列アライメント。11E1 VLアミノ酸配列を選択されたヒト受容フレームワーク配列とアラインし、ネズミ11E1 VL配列と異なることが分かったアミノ酸のみを示した。11E1 HZ VL1、VL2およびVL3配列は、完成されたヒト化型11E1ネズミVLドメインに相当し、残っているネズミ残基を太字で示す。HZ VL3では、10残基()がそれらのヒト対応物に自動的に変化していた。HZ VL2では、第三群(3)の8残基が検討された。HZ VL1では、第二群(2)の8残基がそれらのヒト対応部分に変異しており、第一群(1)の4残基のみがネズミのままであった。
図63】組換え11E1抗体のFc−cMetに対するELISAに基づく結合アッセイ。抗Fc−cMet結合活性は、キメラおよびヒト化11E1由来組換え抗体を検出するために抗ヒトFcコンジュゲートを用いたELISAに基づくアッセイで測定した。プラスチックにコーティングされた組換えFc−cMetに対するヒト化VLドメイン由来11E1抗体の用量依存的結合活性を450nmで測定した後、親/参照キメラ抗体のそれと比較した。
図64】組換え11E1抗体のFc−cMetに対するELISAに基づく結合アッセイ。抗Fc−cMet結合活性は、キメラおよびヒト化11E1由来組換え抗体を検出するために抗ヒトFcコンジュゲートを用いたELISAに基づくアッセイで測定した。プラスチックにコーティングされた組換えFc−cMetに対する一重または二重ヒト化ドメイン由来11E1抗体の用量依存的結合活性を450nmで測定した後、親/参照キメラ抗体のそれと比較した。
図65】224G11 VHドメイン配列のアミノ酸配列アライメント。224G11 VHアミノ酸配列を227H1 VH配列とともに(下線は非相同残基)、また、選択されたヒト受容フレームワーク配列とアラインし、ネズミ224G11 VH配列と異なることが分かったアミノ酸のみを示した。224G11 HZ VH0配列は、「227H1に基づく/全IMGT」ヒト化型224G11ネズミVHドメインに相当する。この配列では、IMGT−CDRの外側にネズミのままの残基は無い。
図66】組換え224G11抗体のFc−cMetに対するELISAに基づく結合アッセイ。抗Fc−cMet結合活性は、キメラおよびHZVH0由来ヒト化224G11由来組換え抗体を検出するために抗ヒトFcコンジュゲートを用いたELISAに基づくアッセイで測定した。プラスチックにコーティングされた組換えFc−cMetに対するHZVH0「全IMGT」ヒト化VHドメイン由来224G11抗体の用量依存的結合活性を450nmで測定した後、親/参照キメラ抗体のそれと比較した。
図67】224G11ネズミおよび組換え抗体のHGF−cMet競合アッセイ。このELISAに基づくアッセイでは、種々の形態の224G11抗体の存在下、プラスチックにコーティングされたHGFに対する組換えFc−cMetの残留結合を、ビオチン化された無関連の抗cMet抗体で検出した。精製ネズミ224G11モノクローナル抗体、キメラおよびHZ4VH0由来ヒト化224G11由来組換え抗体を試験し、450nmで測定した場合のそれらのHGF−cMet結合との競合能を比較した。
図68】224G11 VLドメイン配列のアミノ酸配列アライメント。224G11 VLアミノ酸配列を2つの選択されたヒト受容フレームワーク配列とアラインし、ネズミ224G11 VL配列と異なることが分かったアミノ酸のみを示した。224G11 HZ VL3配列は「短鎖CDR1」ヒト化型224G11ネズミVHドメインに相当し、一方、HZ VL6は「長鎖CDR1」型に相当し、残っているネズミ残基を太字で示す。双方の基本ヒト化型に関して、残っているネズミ残基をさらなるヒト化プロセスのためにランク付けし、は基本型においてヒト化されたアミノ酸に相当に、3、2および1は完成されたヒト化型の設計のための残基群に相当する。
図69】組換え224G11抗体のFc−cMetに対するELISAに基づく結合アッセイ。抗Fc−cMet結合活性は、キメラおよびヒト化22G11由来組換え抗体を検出するために抗ヒトFcコンジュゲートを用いたELISAに基づくアッセイで測定した。プラスチックにコーティングされた組換えFc−cMetに対するヒト化VL3およびVL6ドメイン由来224G11抗体の用量依存的結合活性を450nmで測定した後、親/参照キメラ抗体のそれと比較した。
図70】組換え224G11抗体のFc−cMetに対するELISAに基づく結合アッセイ。抗Fc−cMet結合活性は、キメラおよびヒト化224G11由来組換え抗体を検出するために抗ヒトFcコンジュゲートを用いたELISAに基づくアッセイで測定した。プラスチックにコーティングされた組換えFc−cMetに対するヒト化ドメイン由来224G11抗体の用量依存的結合活性を450nmで測定した後、親/参照キメラ抗体のそれと比較した。
図71】224G11ネズミおよび組換え抗体のHGF−cMet競合アッセイ。このELISAに基づくアッセイでは、種々の形態の224G11抗体の存在下、プラスチックにコーティングされたHGFに対する組換えFc−cMetの残留結合を、ビオチン化された無関連の抗cMet抗体で検出した。精製ネズミ224G11モノクローナル抗体、キメラおよびHZ VH4由来ヒト化224G11由来組換え抗体を試験し、450nmで測定した場合のそれらのHGF−cMet結合との競合能を比較した。
図72】VL4ヒト化224G11 VLドメイン配列のアミノ酸配列。は、基本HZ VL6型においてそれらのヒト対応物へと事実上変化したアミノ酸に相当し、!は、HZ VL6からHZ VL4への遂行の際にヒト化されたアミノ酸に相当し、§は、224G11−HZ VL4配列においてネズミのままであるアミノ酸に相当する。
図73】組換え224G11抗体のFc−cMetに対するELISAに基づく結合アッセイ。抗Fc−cMet結合活性は、キメラおよびヒト化22G11由来組換え抗体を検出するために抗ヒトFcコンジュゲートを用いたELISAに基づくアッセイで測定した。プラスチックにコーティングされた組換えFc−cMetに対する一重または二重ヒト化ドメイン由来224G11抗体の用量依存的結合活性を450nmで測定した後、親/参照キメラ抗体のそれと比較した。
図74】224G11ネズミおよび組換え抗体のHGF−cMet競合アッセイ。このELISAに基づくアッセイでは、種々の形態の224G11抗体の存在下、プラスチックにコーティングされたHGFに対する組換えFc−cMetの残留結合を、ビオチン化された無関連の抗cMet抗体で検出した。精製ネズミ224G11モノクローナル抗体、キメラおよび完全ヒト化224G11由来組換え抗体を試験し、450nmで測定した場合のそれらのHGF−cMet結合との競合能を比較した。
図75】組換え224G11抗体のFc−cMetに対するELISAに基づく結合アッセイ。抗Fc−cMet結合活性は、キメラおよびヒト化22G11由来組換え抗体を検出するために抗ヒトFcコンジュゲートを用いたELISAに基づくアッセイで測定した。プラスチックにコーティングされた組換えFc−cMetに対する、VL4由来完全ヒト化224G11抗体の単一突然変異体の用量依存的結合活性を450nmで測定した後、親/参照キメラ抗体のそれと比較した。
図76】組換え224G11抗体のFc−cMetに対するELISAに基づく結合アッセイ。抗Fc−cMet結合活性は、キメラおよびヒト化22G11由来組換え抗体を検出するために抗ヒトFcコンジュゲートを用いたELISAに基づくアッセイで測定した。プラスチックにコーティングされた組換えFc−cMetに対する、VL4由来完全ヒト化224G11抗体の単一および多重突然変異体の用量依存的結合活性を450nmで測定した後、親/参照キメラ抗体のそれと比較した。
図77】224G11ネズミおよび組換え抗体のHGF−cMet競合アッセイ。このELISAに基づくアッセイでは、種々の形態の224G11抗体の存在下、プラスチックにコーティングされたHGFに対する組換えFc−cMetの残留結合を、ビオチン化された無関連の抗cMet抗体で検出した。精製ネズミ224G11モノクローナル抗体、キメラおよびVL4由来完全ヒト化224G11組換え抗体の単一または多重突然変異体を試験し、450nmで測定した場合のそれらのHGF−cMet結合との競合能を比較した。
図1
図2A
図2B
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図12
図13
図14
図15b
図16
図17A
図17B
図18A
図18B
図19A
図19B
図20A
図20B
図20C
図21A
図21B
図22
図23A
図23B
図24A
図24B
図25A
図25B
図26A
図26B
図26C
図27A
図27B
図28
図29A
図29B
図30A
図30B
図31
図32A
図32B
図32C
図33A
図33B
図33C
図34
図35
図36
図38A
図38B
図39A
図39B
図40
図41A
図41B
図41C
図42A
図42B
図43
図44
図45
図46
図47
図48
図50
図51
図52
図53
図54
図55
図56
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図59
図60
図61
図62
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図64
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図10
図11
図15a
図37
図49
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]