特許第5889935号(P5889935)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5889935電力供給系統の過負荷軽減システムおよび停電解消方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5889935
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】電力供給系統の過負荷軽減システムおよび停電解消方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/04 20060101AFI20160308BHJP
   H02J 3/24 20060101ALI20160308BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20160308BHJP
   H02J 3/46 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   H02J3/04
   H02J3/24
   H02J3/38 130
   H02J3/46
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-40357(P2014-40357)
(22)【出願日】2014年3月3日
(65)【公開番号】特開2015-165753(P2015-165753A)
(43)【公開日】2015年9月17日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】小玉 和弘
(72)【発明者】
【氏名】石川 洋一
(72)【発明者】
【氏名】永井 彰
【審査官】 石川 晃
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−117787(JP,A)
【文献】 特開2007−28769(JP,A)
【文献】 特開2003−189472(JP,A)
【文献】 特開2006−60885(JP,A)
【文献】 特開平9−9506(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/04
H02J 3/24
H02J 3/38
H02J 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上位系統の事故により配電線の遮断器が切られた過負荷状態を軽減するための、電力供給系統の過負荷軽減システムであって、
需要家側に設置された自家発電装置からの逆潮流の時間帯や潮流量を含む逆潮流情報を記憶する逆潮流情報記憶手段と、
前記逆潮流情報記憶手段に記憶された逆潮流情報に基づいて、遮断状態の遮断器のなかから、投入することで逆潮流が生じると予測される遮断器を割り出す割出手段と、
を備えることを特徴とする電力供給系統の過負荷軽減システム。
【請求項2】
前記割出手段で割り出された遮断器を自動投入する投入手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の電力供給系統の過負荷軽減システム。
【請求項3】
潮流を計測する潮流計測手段と、
前記遮断器が投入された後に、前記潮流計測手段によって潮流減少または逆潮流が計測された場合に、開状態の開閉器を投入すべきと判定する開閉器判定手段と、
を備えることを特徴とする請求項1または2のいずれか1項に記載の電力供給系統の過負荷軽減システム。
【請求項4】
上位系統の事故により配電線の遮断器が切られた停電状態を解消するための、電力供給系統の停電解消方法であって、
需要家側に設置された自家発電装置からの逆潮流の時間帯や潮流量を含む逆潮流情報を記憶する逆潮流情報記憶ステップと、
前記記憶された逆潮流情報に基づいて、遮断状態の遮断器のなかから、投入することで逆潮流が生じると予測される遮断器を割り出す第1の割出ステップと、
前記第1の割出ステップで割り出された遮断器を投入する第1の遮断器投入ステップと、
前記第1の遮断器投入ステップで遮断器を投入したことによる、過負荷余裕量と停電している配電線潮流予想とを比較し、復旧可能と予測される遮断器を割り出す第2の割出ステップと、
前記第2の割出ステップで割り出された遮断器を投入する第2の遮断器投入ステップと、
を備えることを特徴とする電力供給系統の停電解消方法。
【請求項5】
前記遮断器が投入された後に、潮流減少または逆潮流が計測された場合に、開状態の開閉器を投入する開閉器投入ステップを備える、
ことを特徴とする請求項4に記載の電力供給系統の停電解消方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力供給系統の過負荷状態を軽減・解消するための、電力供給系統の過負荷軽減システムおよび停電解消方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上位の電力供給系統に事故が発生した場合、変圧器や送電線が過負荷運転限界以上の状態にならないように、制御所において、必要に応じて配電線の負荷側の遮断器を切り、事故復旧後に順次配電線の遮断器を入れる、という操作を行っていた。
【0003】
一方、電力系統側に蓄電装置を設けることで、電力系統の電圧状態を安定化させる、という技術が知られている(例えば、特許文献1参照。)。この技術は、電力系統に複数の蓄電装置を接続し、送電設備の過負荷状況などの系統状態を検出する検出部を設け、所定の制御順位に従って、検出部によって検出された系統状態に基づいて複数の蓄電装置を制御する、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−233353号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来のように、事故復旧後に順次配電線の遮断器を入れる、という操作では、事故が復旧するまで過負荷状態や停電状態が解消されず、過負荷状態が長時間にわたることで過負荷箇所に大きな影響を与えるおそれがある。また、特許文献1の技術では、電力系統に多くの蓄電装置を設ける必要があり、膨大な費用を要する。
【0006】
そこでこの発明は、膨大な費用を要することなく、過負荷状態を早期に軽減することが可能な、電力供給系統の過負荷軽減システムおよび停電解消方法を提供し、停電した配電線を早期解消することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、上位系統の事故により配電線の遮断器が切られた過負荷状態を軽減するための、電力供給系統の過負荷軽減システムであって、需要家側に設置された自家発電装置からの逆潮流の時間帯や潮流量を含む逆潮流情報を記憶する逆潮流情報記憶手段と、前記逆潮流情報記憶手段に記憶された逆潮流情報に基づいて、遮断状態の遮断器のなかから、投入することで逆潮流が生じると予測される遮断器を割り出す割出手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1に記載の過負荷軽減システムにおいて、前記割出手段で割り出された遮断器を自動投入する投入手段を備える、ことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の過負荷軽減システムにおいて、潮流を計測する潮流計測手段と、前記遮断器が投入された後に、前記潮流計測手段によって潮流減少または逆潮流が計測された場合に、開状態の開閉器を投入すべきと判定する開閉器判定手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、上位系統の事故により配電線の遮断器が切られた停電状態を解消するための、電力供給系統の停電解消方法であって、需要家側に設置された自家発電装置からの逆潮流の時間帯や潮流量を含む逆潮流情報を記憶する逆潮流情報記憶ステップと、前記記憶された逆潮流情報に基づいて、遮断状態の遮断器のなかから、投入することで逆潮流が生じると予測される遮断器を割り出す第1の割出ステップと、前記第1の割出ステップで割り出された遮断器を投入する第1の遮断器投入ステップと、前記第1の遮断器投入ステップで遮断器を投入したことによる、過負荷余裕量と停電している配電線潮流予想とを比較し、復旧可能と予測される遮断器を割り出す第2の割出ステップと、前記第2の割出ステップで割り出された遮断器を投入する第2の遮断器投入ステップと、を備えることを特徴とする。
【0011】
請求項5の発明は、請求項4に記載の過負荷軽減方法において、前記遮断器が投入された後に、潮流減少または逆潮流が計測された場合に、開状態の開閉器を投入する開閉器投入ステップを備える、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1、4の発明によれば、自家発電装置からの逆潮流の時間帯や潮流量などに基づいて、遮断状態の遮断器のなかから、投入することで逆潮流が生じると予測される遮断器が割り出される。このため、事故が復旧する前であっても、この遮断器を投入することで自家発電装置からの逆潮流が生じ、過負荷状態を早期に軽減、解消することが可能となる。しかも、自家発電装置からの逆潮流を利用するため、蓄電装置などを設ける必要がなく、膨大な費用を要しない。
【0013】
請求項2の発明によれば、割り出された遮断器が自動投入されるため、確実に逆潮流を生じさせて過負荷状態を早期に軽減することが可能となる。
【0014】
請求項3、5の発明によれば、遮断器の投入後に、潮流の減少や逆潮流が計測、確認された場合には、開状態の開閉器を投入すべきと判定される。このため、この判定に従って開閉器を投入することで、事故が復旧する前であっても、開閉器区間を復旧して過負荷状態を早期に軽減、解消することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】この発明の実施の形態に係る電力供給系統の過負荷軽減システムを示す概略構成図である。
図2図1のシステムの過負荷軽減装置の概略構成ブロック図である。
図3図2の過負荷軽減装置の制御タスクの遮断器処理のフローチャートである。
図4図2の過負荷軽減装置の制御タスクの開閉器処理のフローチャートである。
図5図2の過負荷軽減装置の制御タスクの他の遮断器処理のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0017】
図1は、この発明の実施の形態に係る電力供給系統の過負荷軽減システム(以下、「過負荷軽減システム」という)1を示す概略構成図である。この過負荷軽減システム1は、上位系統の事故により配電線L1〜L3の遮断器CB1〜CB3が切られた過負荷状態(停電状態)を軽減するためのシステムであり、制御所に過負荷軽減装置2が設置されている。また、ループ系の各配電線L1〜L3の潮流をそれぞれ計測する潮流計(潮流計測手段)3と過負荷軽減装置2とが通信自在に接続され、各遮断器CB1〜CB3および各柱上開閉器DM1〜DM3と、過負荷軽減装置2とが通信自在に接続されている。
【0018】
ここで、第1の配電線L1の各開閉器DM1〜DM3による各区間には、需要家側に設置された太陽光発電機(自家発電装置)G1〜G3を有し、このような構成は、他の配電線L2、L3においても同等であるが、以下主として、第1の配電線L1の各開閉器DM1〜DM3について説明する。また、過負荷軽減装置2は、電力供給系統の事故や遮断器の開閉、過負荷状態などを監視、管理する系統管理システムや、気象情報を収集、予測、提供する気象情報システムと通信自在に接続されている。
【0019】
過負荷軽減装置2は、図2に示すように、主として、表示部21と、通信部22と、逆潮流データベース(逆潮流情報記憶手段)23と、遮断器制御部(投入手段)24と、開閉器制御部25と、制御タスク(割出手段、開閉器判定手段)26と、これらを制御などする中央処理部27とを備えている。また、過負荷軽減装置2には、電力供給系統図などが記憶されている。
【0020】
表示部21は、各種情報、データを表示するディスプレイであり、例えば、後述する制御タスク26で割り出された遮断器CB1〜CB3や開閉器DM1〜DM3を表示する。
【0021】
通信部22は、外部と情報、データを送受信するためのインターフェイスであり、潮流計3から潮流データ(潮流方向、潮流量)を受信したり、遮断器制御部24および開閉器制御部25から遮断器CB1〜CB3や開閉器DM1〜DM3に投入指令を送信したりする。さらに、上記の系統管理システムから事故情報や遮断器の開閉情報を受信したり、気象情報システムから気象情報を受信したりするようになっている。ここで、潮流計3は、需要家側への電力潮流(正潮流)および需要家側からの電力潮流(逆潮流)の双方の電力潮流量を計測可能となっている。
【0022】
逆潮流データベース23は、需要家側に設置された太陽光発電機G1〜G3等からの、過去の実績である逆潮流の時間帯や潮流量を含む逆潮流情報を記憶するデータベースである。すなわち、太陽光発電機ごとに、配設位置(配電線名、区間名、需要家宅位置等)、各月の1日の各時の逆潮流量、逆潮流時の天候、気温などの気象情報が記憶されている。このように、太陽光発電機ごとの逆潮流情報を記憶しているが、配電線や区間ごとの各月の1日の各時の逆潮流量などを記憶するようにしてもよい。
【0023】
遮断器制御部24は、遮断器CB1〜CB3を遠隔制御する制御部であり、例えば、後述する制御タスク26で割り出された遮断器CB1〜CB3に対して投入指令を送信して、遮断器CB1〜CB3を自動投入する。
【0024】
開閉器制御部25は、開閉器DM1〜DM3を遠隔制御する制御部であり、例えば、後述する制御タスク26で割り出された開閉器DM1〜DM3に対して投入指令を送信して、開閉器DM1〜DM3を自動投入する。
【0025】
制御タスク26は、逆潮流データベース23に記憶された逆潮流情報に基づいて、遮断状態の遮断器CB1〜CB3のなかから、投入することで逆潮流が生じると予測される遮断器CB1〜CB3を割り出すとともに、遮断器CB1〜CB3が投入された後に、潮流計3によって潮流減少または逆潮流が計測された場合に、開状態の開閉器DM1〜DM3を投入すべきと判定するタスク・プログラムである。すなわち、主として、第1に遮断器処理として、太陽光発電機G1〜G3等が発電することで逆潮流が発生した過去の逆潮流情報・実績データに基づいて、太陽光発電機G1〜G3等からの逆潮流が生じると予測される配電線L1〜L3は、正潮流が減少し、しかも、遮断器CB1〜CB3を投入して開通することで過負荷状態が軽減、解消されると予測されるため、このような配電線L1〜L3の遮断器CB1〜CB3を投入するべき遮断器として割り出して制御する。第2に開閉器処理として、遮断器CB1〜CB3が投入された後に、配電線L1〜L3の需要家側への潮流(正潮流)の減少または逆潮流の発生が確認された場合には、上記予測が正しいと確認されたため、開状態であった開閉器DM1〜DM3を投入すべきと判定して制御する。
【0026】
具体的には、図3に示すように、まず、事故箇所が復旧して系統管理システムから事故復旧の事故情報を受信した場合(ステップS1で「Y」の場合)には、遮断器制御部24を介してすべての遮断状態の遮断器CB1〜CB3に投入指令を送信して、全遮断器CB1〜CB3を自動投入する(ステップS2)。
【0027】
一方、事故復旧しない場合(ステップS1で「N」の場合)には、投入することで配電線L1〜L3において逆潮流が生じる(さらに、逆潮流がない場合に比べて正潮流・負荷が減少する)遮断器CB1〜CB3やその時間帯などを予測して案内する(ステップS3)。すなわち、逆潮流データベース23に記憶された逆潮流情報に基づいて、遮断状態の遮断器CB1〜CB3のなかから、投入することで太陽光発電機G1〜G3等が発電して配電線L1〜L3で逆潮流が発生すると予測される、遮断器CB1〜CB3(配電線L1〜L3)と、その時間帯・時刻と、逆潮流量とを演算する。この際、気象情報システムから受信した天候や気温、風速、照度などを含む気象情報を考慮して、太陽光発電(逆潮流)の可否や逆潮流時間帯、逆潮流量を演算する。そして、その結果である投入すべき遮断器CB1〜CB3と時間帯と逆潮流量とを、表示部21に表示する。
【0028】
次に、遮断器制御部24を介して投入すべき遮断器CB1〜CB3に投入指令を送信して、この遮断器CB1〜CB3を自動投入する(ステップS4)。このとき、現在時刻が既に逆潮流時間帯である場合には即座に投入し、現在時刻が逆潮流時間帯に達していない場合には、逆潮流時間帯に達した時点で投入する。また、ステップS3で複数の遮断器CB1〜CB3が割り出された場合には、現在時刻が逆潮流時間帯に含まれ(あるいは近く)、かつ、最も逆潮流量が大きい遮断器CB1〜CB3を投入する。
【0029】
その後、後述する開閉器処理・ルーチンを行い(ステップS5)、続いて、過負荷箇所の連続運転可能までの過負荷に余裕が出たか否かを判断する(ステップS6)。すなわち、遮断器CB1〜CB3を投入したことで、過負荷状態にあった変圧器や送電線の過負荷状態が軽減されたか否かを、電力供給系統の潮流量に基づいて判断する。そして、余裕が出ない場合にはステップS3に戻り、余裕が出た場合にはステップS7に進む。
【0030】
ステップS7では、すべての配電線L1〜L3の遮断器CB1〜CB3が投入されたか否かを判断し、投入された場合には、制御タスク26を終了し、投入されていない場合には、他配電線の停電状態が復旧できるか否かを判断する(ステップS8)。すなわち、遮断器CB1〜CB3の投入後に、停電状態にあった他の配電線L1〜L3の停電状態が復旧できるか否かを、逆潮流データベース23で記憶された他配電線の逆潮流データ動向と過負荷余裕量との比較により、逆潮流となる前の他配電線または、予め設定された優先順位に従って、優先度が高い遮断状態の配電線L1〜L3の遮断器CB1〜CB3を選出して表示部21に表示する(ステップS9)。
【0031】
続いて、この遮断器CB1〜CB3に遮断器制御部24を介して投入指令を送信して、この遮断器CB1〜CB3を自動投入し(ステップS10)、ステップS7に戻る。一方、ステップS8において過負荷余裕量で他配電線の復旧ができないと判断した場合には、ステップS3に戻るものである。ここで、ステップS4、S10による自動投入の前に、諸条件に基づいて自動投入の要否を判定してもよい。
【0032】
次に、開閉器処理・ルーチンについて説明するが、ステップS4で第1の配電線L1の遮断器CB1が投入された場合を例にして説明する。まず、図4に示すように、第1の開閉器DM1において所定の電圧確認時間の経過を待つ(ステップS21)。すなわち、第1の遮断器CB1が投入されたことで第1の開閉器DM1まで電気が到達するが、この到達を確認するために所定時間電圧を検出する。
【0033】
続いて、ステップS3で予測した時間帯・時刻で第1の配電線L1において、逆潮流の発生があることを確認する(ステップS22)。すなわち、予測どおりに第1の太陽光発電機G1で太陽光発電が行われて逆潮流が生じることを、潮流計3の計測結果に基づいて確認する(確認できるまで待つ。)。その後、開閉器制御部25を介して第1の開閉器DM1に対して投入指令を送信して、第1の開閉器DM1を自動投入する(ステップS23)。そして、すべての開閉器DM1〜DM3が投入された場合(ステップS24で「Y」の場合)には処理を終了し、投入されない場合(ステップS24で「N」の場合)には、ステップS21に戻って次の開閉器DM2〜DM3に対して同様の処理を繰り返すものである。
【0034】
ここで、ステップS22においては、ステップS3で予測した時間帯で第1の配電線L1において、逆潮流の発生または需要家側への潮流の減少があることを確認する。すなわち、例えば、予測どおりに第2の太陽光発電機G2で太陽光発電が行われると、第1の開閉器DM1が投入されているので、さらなる逆潮流が生じたり、需要家側への潮流(正潮流)の減少が生じたりするため、このことを潮流計3の計測結果に基づいて確認する。また、太陽光発電機が設置されていない区間においては、ステップS22を行わずに、あるいは、次の区間で太陽光発電機による逆潮流が予測される場合に、ステップS23に進む。
【0035】
次に、このような構成の過負荷軽減システム1の作用および過負荷軽減システム1による電力供給系統の過負荷軽減および停電解消方法(以下、「過負荷軽減方法」という)について説明する。ここで、事前に逆潮流情報記憶ステップとして、上記のように、逆潮流情報が逆潮流データベース23に記憶、蓄積されているものとする。
【0036】
まず、上位・上流の電力供給系統に事故が発生すると、変圧器や送電線が過負荷運転限界以上の状態にならないように、連続運転が可能な過負荷状態まで、所定の配電線L1〜L3の遮断器CB1〜CB3が切られて過負荷状態となる。次に、制御タスク26が起動され、まず、第1の割出ステップとして、逆潮流データベース23に記憶された逆潮流情報に基づいて、遮断状態の遮断器CB1〜CB3のなかから、投入することで逆潮流が生じると予測される遮断器CB1〜CB3やその時間帯等が割り出され、割り出された遮断器CB1〜CB3等が表示部21に表示される(上記ステップS3)。
【0037】
次に、逆潮流時刻になると、第1の遮断器投入ステップとして、割り出された遮断器CB1〜CB3が自動投入される(上記ステップS4)。続いて、開閉器投入ステップとして開閉器処理が行われ、上記のように、遮断器CB1〜CB3が投入された後に、正潮流の減少または逆潮流の発生が確認されるごとに、開状態の開閉器DM1〜DM3が上位側(上流側)から順次投入され過負荷が軽減される(上記ステップS5)。一方、第2の割出ステップとして、遮断器CB1〜CB3が投入されたことで、停電状態にあった他の(非投入の)配電線L1〜L3で停電が復旧可能と判断された配電線L1〜L3の遮断器CB1〜CB3が選出され(上記ステップS8、9)、第2の遮断器投入ステップとして、この遮断器CB1〜CB3が自動投入される(上記ステップS10)。このような処理が、事故箇所が復旧するまで、あるいは、すべての遮断器CB1〜CB3および開閉器DM1〜DM3が投入されるまで繰り返されるものである。
【0038】
以上のように、本過負荷軽減システム1および本過負荷軽減方法によれば、過去に実績がある太陽光発電機G1〜G3等からの逆潮流の時間帯や潮流量などに基づいて、遮断状態の遮断器CB1〜CB3のなかから、投入することで逆潮流が生じると予測される遮断器CB1〜CB3が割り出される。このため、上位系事故が復旧する前であっても、この遮断器CB1〜CB3を投入することで、この配電線L1〜L3の停電が解消されるとともに、太陽光発電機G1〜G3からの逆潮流が生じ、過負荷状態を早期に軽減、解消することが可能となる。すなわち、逆潮流があるということは、太陽光発電機G1〜G3等による発電電力が需要家で消費され、その余剰が逆潮流となっているケースが多いため、投入した配電線L1〜L3自体の正潮流・負荷が減少して過負荷状態が軽減されるとともに、この配電線L1〜L3からの逆潮流によって、他の(非投入の)配電線L1〜L3の停電状態を解消することが可能となる。このように、停電状態の早期解消や過負荷状態の早期軽減などが可能となる。
【0039】
しかも、割り出された遮断器CB1〜CB3が自動投入されるため、確実に逆潮流を生じさせて過負荷状態を早期に軽減することが可能となる。さらには、遮断器CB1〜CB3の投入後に、正潮流の減少や逆潮流の発生が確認された場合には、開状態の開閉器DM1〜DM3を投入すべきと判定されて、開閉器DM1〜DM3が順次自動投入される。このため、事故が復旧する前であっても、正潮流の減少等を確認して、各開閉器区間(開閉器と開閉器の間の区間)を順次復旧させて、過負荷状態(停電状態)を早期に軽減、解消することが可能となる。
【0040】
一方、既に設置されている需要家の太陽光発電機G1〜G3等からの逆潮流を利用するため、蓄電装置などを設ける必要がなく、膨大な費用を要しない。
【0041】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態では、潮流計3によって正潮流および逆潮流を計測しているが、各需要家側に設置された計量器で正潮流および逆潮流を計測して、その計測結果を過負荷軽減装置2に送信するようにしてもよい。また、遮断器CB1〜CB3および開閉器DM1〜DM3を自動投入しないで、表示部21を見て作業員が投入するようにしてもよい。さらに、自家発電装置が太陽光発電機G1〜G3等の場合について説明したが、風力発電などであってもよい。
【0042】
また、制御タスク26による処理内容は、上記のような処理に限るものではなく、例えば、次のような処理であってもよい。すなわち、図5に示すように、まず、上記のステップS3と同様に、遮断器CB1〜CB3を投入することで逆潮流が生じる配電線L1〜L3や、その時間帯、逆潮流量などを予測、割り出して案内する(ステップS31)。続いて、予測した時間帯において(ステップS32で「Y」の場合に)予測した遮断器CB1〜CB3を自動投入する(ステップS33)。次に、上記の開閉器処理・ルーチンを行い(ステップS34)、すべての配電線L1〜L3の遮断器CB1〜CB3が投入されるまで(ステップS35またはステップS1で「Y」になるまで)、ステップS31に戻って同様の処理を繰り返すものである。
【符号の説明】
【0043】
1 過負荷軽減システム
2 過負荷軽減装置
21 表示部
22 通信部
23 逆潮流データベース(逆潮流情報記憶手段)
24 遮断器制御部(投入手段)
25 開閉器制御部
26 制御タスク(割出手段、開閉器判定手段)
3 潮流計(潮流計測手段)
L 配電線
CB 遮断器
DM 開閉器
G 太陽光発電機(自家発電装置)
図1
図2
図3
図4
図5