特許第5889940号(P5889940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5889940
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】間接活線作業用工具
(51)【国際特許分類】
   H02G 1/02 20060101AFI20160308BHJP
   B25B 5/16 20060101ALI20160308BHJP
   B25B 5/10 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   H02G1/02
   B25B5/16
   B25B5/10
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-53365(P2014-53365)
(22)【出願日】2014年3月17日
(65)【公開番号】特開2015-177675(P2015-177675A)
(43)【公開日】2015年10月5日
【審査請求日】2015年3月11日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000545
【氏名又は名称】特許業務法人大貫小竹国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森山 裕之
【審査官】 木村 励
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−232579(JP,A)
【文献】 特開2010−68582(JP,A)
【文献】 特開2010−234506(JP,A)
【文献】 実開平4−43320(JP,U)
【文献】 特開2009−5427(JP,A)
【文献】 特開2008−131685(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 1/02
B25B 5/10
B25B 5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先端部にフック部を備えたヘッド本体と、先端に前記フック部と対向する可動体を備えた可動部と、を具備するヘッドが絶縁操作棒の先端に取り付けられ、前記絶縁操作棒の回転により前記可動体を移動させて前記フック部と前記可動体との間の間隔を調節する機構を備えた間接活線作業用工具において、
前記絶縁操作棒を、前記ヘッド本体に固定された先端側棒状体と、この先端側棒状体に対して回転可能に連結され、回動させることにより前記可動部の可動体を前記絶縁操作棒の軸方向に移動させる基端側棒状体とを具備して構成し、
前記基端側棒状体と前記先端側棒状体との境界近傍において一方の棒状体には、外周縁に沿って他方の棒状体側へ突出する歯が形成された円形ギヤ部材が固定され、
前記基端側棒状体と前記先端側棒状体との境界近傍において他方の棒状体には、前記絶縁操作棒の軸方向に移動可能に固定され、前記円形ギヤ部材の歯に係止可能な係止爪が設けられる
ことを特徴とする間接活線作業用工具。
【請求項2】
前記ヘッド本体は、先端部にフック部を備え、このフック部と対向する位置に基端部を備えたものであり、前記可動部は、雄ネジが外周面に形成されたネジ軸体の先端に可動体を備えたものであり、
前記フック部と前記可動体との間の間隔を調節する機構は、前記ネジ軸体の雄ネジと噛み合う雌ネジが内周面に形成された回転部材を前記基端部に回転可能に取付け、前記回転部材の回転により前記可動体を移動させて前記フック部と前記可動体との間の間隔を調節するものであり、
前記絶縁操作棒は、前記ヘッド本体に固定された先端側棒状体と、この先端側棒状体に対して回転可能に連結され、前記回転部材と一体に回転する基端側棒状体とを具備して構成され、
前記基端側棒状体の前記先端側棒状体との境界近傍に、外周縁に沿って前記絶縁操作棒の先端方向へ突出する歯が形成された円形ギヤ部材が固定され、
前記先端側棒状体の前記基端側棒状体との境界近傍に、前記絶縁操作棒の軸方向に移動可能に固定され前記円形ギヤ部材の歯に係止可能な係止爪が設けられていることを特徴とする請求項1記載の間接活線作業用工具。
【請求項3】
前記先端側棒状体と前記基端側棒状体とは、安全限界つばより下方において回転可能に連結されていることを特徴とする請求項1又は2記載の間接活線作業用工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間接活線作業において架空電線等を把持するために用いる間接活線作業用工具に関し、特に、フック部と可動体(ジョー)とで架空電線等を挟持するストレーリンクトングに関する。
【背景技術】
【0002】
高圧配電線における間接活線作業に使用する間接活線作業用工具として、電線を保持したり直線スリーブを把持したりする場合には、所謂ストレーリンクトングが使用される(特許文献1、2等参照)。
【0003】
このストレーリンクトング1は、図5に示されるようなもので、絶縁操作棒2の先端部に把持金具としてのヘッド3を設けて構成されている。
【0004】
絶縁操作棒2は、円筒状(パイプ状)の絶縁性部材により形成され、この絶縁操作棒の中間部には、水切りつば4が嵌合固定され、また、この水切りつば4より下方には、感電事故を防ぐために、把持してよい部分とそれ以外の部分との境界を明確にするための安全限界つば5が嵌合固定されている。
【0005】
ヘッド3は、アルミニウム合金などの硬質金属によって構成され、コの字形状を有するヘッド本体6と、絶縁操作棒2の軸方向に進退可能に移動する可動部7とを備えている。
【0006】
ヘッド本体6は、コの字形状の上部に位置し、電線等に引掛ける鉤爪状のフック部61と、このフック部61の下方に対向配置され、コの字形状の下部に位置する基端部62と、これらフック部61と基端部62のそれぞれの一側端を連結するように設けられた側壁部63と、を有して構成されている。
【0007】
基端部62には、内周面に雌ネジが形成された貫通孔を有する回転円筒体10が軸方向への移動を規制されつつ回転可能に装着されている。
【0008】
可動部7は、回転円筒体10の貫通孔の内周面の雌ネジに噛合する雄ネジが周面に形成された棒状のネジ軸体12と、ヘッド本体6と協働して電線を保持(把持)可能なジョー13とを備えている。ジョー13は、ヘッド本体6の側壁部63と対向する面に凹部を有し、この凹部に側壁部63を嵌まり込ませた状態でネジ軸体12の先端に回転不能に取り付けられている。絶縁操作棒2は、その先端部が前記回転円筒体10の基端部に固定され、また先端部内部には、ネジ軸体12を最も後退させた場合に、回転円筒体10を通過したネジ軸体12の端部を格納可能な空間が形成されている。
【0009】
したがって、絶縁操作棒2を回転させると、それに伴って回転円筒体10が回転し、ジョー13の凹部に側壁部46が嵌入しているので、回転円筒体10と螺合しているネジ軸体12は共回りせず、基端部62に対して軸方向に螺進退することになる。
【0010】
このようなストレーリンクトング1を架空電線50に取り付ける場合には、まず、ヘッド本体6のフック部61と可動部7のジョー13との間を電線50が挿入できる程度まで絶縁操作棒2を回転させて緩める。そして、絶縁操作棒2を持ってヘッド3を電線に近づけ、ヘッド3のフック部61とジョー13との間に電線を挿入し、電線50にフック部61を引っ掛ける。そして、この状態で絶縁操作棒2を電線50の締め付け方向に回転させると、回転円筒体10が絶縁操作棒2の回転に伴って回転する。
【0011】
ヘッド3は絶縁操作棒2の回転方向に共回りしようとするが、ヘッド本体6のフック部61は電線50を捻るように係り止められる。したがって、ヘッド3が電線50によって回り止めされ、また、ジョー13がヘッド本体6の側壁部63により回り止めされているため、ネジ軸体12は前進し(ジョー13がフック部61に向かって前進し)、電線50をフック部61とジョー13との間で締め付けることが可能となる。
【0012】
また、絶縁操作棒2を逆方向に回転させると、回転円筒体10が絶縁操作棒2の回転に伴って同方向に回転し、ヘッド3は電線50により回り止めされ、また、ジョー13はヘッド本体6の側壁部63により回り止めされているため、回転円筒体10と螺合するネジ軸体12が後退し(ジョー13が基端部62に向かって後退し)、フック部61とジョー13との間隔が広げられる。
【0013】
ところで、絶縁操作棒2のヘッド本体6の基端部62の直下には、円板状の円形ギヤ部材31が固定されている。この円形ギヤ部材31のヘッド3と対峙する面の周縁には、ヘッド側に突出する歯31aが形成されている。また、前記ヘッド本体6の基端部62には、可動部7の後退をロックする係止爪32が設けられている。この係止爪32は、ロック操作つまみ34の操作により絶縁操作棒2の軸方向にスライド可能となっており、ロック操作つまみ34を絶縁操作棒2側にスライド操作して係止爪32を前記円形ギヤ部材31の歯31aに係止させることで、絶縁操作棒2の回転方向を規制する機能を有している。
【0014】
ここで、円形ギヤ部材31の歯31aは、ジョー13を前進させる回転方向で係止爪32と対向する面が緩やかな傾斜面となっており、また、ジョー13を後退させる回転方向で係止爪32と対向する面が円形ギヤ部材の端面に対して略垂直な面となっている。
【0015】
このため、係止爪32が円形ギヤ部材31の歯31aに当接している場合においても、ジョー13を前進させる方向に絶縁操作棒2を回転させようとすると、係止爪32は緩やかな傾斜面を乗り越えることができるため、回転が許容されてジョー13の前進が可能となり、絶縁操作棒2を逆に回転させようとすると、係止爪32は、略鉛直な面に当接して回転が阻止されるので、ジョー13の後退が制限されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】特開2009−232579号公報
【特許文献2】特開2010−68582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、上述の従来のストレーリンクトング1は、作業に合わせてロック機構を活用しているが、係止爪32によるロックをしない状態で使用する場合には、ヘッド3は側壁部寄りに重心があるので、絶縁操作棒2を斜めにして電線にアプローチすると、ヘッド2の開口部が上を向いてしまい、電線50をフック部61とジョー13との間に挿入しにくくなる。
【0018】
このため、ヘッドが回転しないように、ロック機構によりロックをした状態とする必要があるが、電線からヘッドを外す場合や、電線の保持位置を直す際には、ロック状態を解除するために、バインド打ち器などの他の間接活線工具を同時に使用する必要があり、作業労力を要するものであった。
【0019】
また、一旦ロックを解除すると、間接活線工具を用いて再びロック機構をロック状態に戻すか、ロック操作つまみを手元まで引き寄せて手で操作する必要があり、手間がかかるものであった。
【0020】
本発明は係る事情に鑑みてなされたものであり、ヘッドの回転のロック・ロック解除を、他の間接活線工具を用いることなく、架線に引っ掛けた状態で行うことが可能な間接活線作業用工具を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0021】
上記課題を達成するために、本発明に係る間接活線作業用工具(ストレーリンクトング)は、先端部にフック部を備えたヘッド本体と、先端に前記フック部と対向する可動体を備えた可動部と、を具備するヘッドが絶縁操作棒の先端に取り付けられ、前記絶縁操作棒の回転により前記可動体を移動させて前記フック部と前記可動体との間の間隔を調節する機構を備えた構成において、前記絶縁操作棒を、前記ヘッド本体に固定された先端側棒状体と、この先端側棒状体に対して回転可能に連結され、回動させることにより前記可動部の可動体を前記絶縁操作棒の軸方向に移動させる基端側棒状体とを具備して構成し、 前記基端側棒状体と前記先端側棒状体との境界近傍において一方の棒状体には、外周縁に沿って他方の棒状体側へ突出する歯が形成された円形ギヤ部材が固定され、前記基端側棒状体と前記先端側棒状体との境界近傍において他方の棒状体には、前記絶縁操作棒の軸方向に移動可能に固定され前記円形ギヤ部材の歯に係止可能な係止爪が設けられることを特徴としている。
【0022】
したがって、円形ギヤ部材とこの円形ギヤ部材の歯に係止可能な係止爪が絶縁操作棒の上端部ではなく、基端側棒状体と先端側棒状体との境界部分に設けられるので、絶縁操作棒を手で持つ付近に円形ギヤ部材や係止爪を配置することが可能となり、係止爪の操作を絶縁操作棒を手前に引くことなく手元で行うことが可能となる。
このため、ロック・ロック解除を行う場合に他の間接活線工具を用いる必要がなく、また、ロック・ロック解除の操作のために作業が中断してしまう不都合もなくなる。
【0023】
上述した間接活線作業用工具の具体的構成例としては、前記ヘッド本体を、先端部にフック部を備え、このフック部と対向する位置に基端部を備えたものとし、前記可動部を、雄ネジが外周面に形成されたネジ軸体の先端に可動体を備えたものとし、前記フック部と前記可動体との間の間隔を調節する機構を、前記ネジ軸体の雄ネジと噛み合う雌ネジが内周面に形成された回転部材を前記基端部に回転可能に取付け、前記回転部材の回転により前記可動体を移動させて前記フック部と前記可動体との間の間隔を調節するとし、前記絶縁操作棒を、前記ヘッド本体に固定された先端側棒状体と、この先端側棒状体に対して回転可能に連結され、前記回転部材と一体に回転する基端側棒状体とを具備して構成し、前記基端側棒状体の前記先端側棒状体との境界近傍に、外周縁に沿って前記絶縁操作棒の先端方向へ突出する歯が形成された円形ギヤ部材を固定し、前記先端側棒状体の前記基端側棒状体との境界近傍に、前記絶縁操作棒の軸方向に移動可能に固定され前記円形ギヤ部材の歯に係止可能な係止爪を設けるようにしてもよい。
【0024】
なお、前記先端側棒状体と前記基端側棒状体とは、共用操作棒を手で握る部分、即ち、安全限界つばより下方において回転可能に連結されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0025】
以上述べたように、本発明に係る間接活線作業用工具によれば、絶縁操作棒を、ヘッド本体に固定された先端側棒状体と、これに回転可能に連結された基端側棒状体とを具備して構成し、基端側棒状体と先端側棒状体との境界近傍において一方の棒状体には、外周縁に沿って他方の棒状体側へ突出する歯が形成された円形ギヤ部材が固定され、前記基端側棒状体と前記先端側棒状体との境界近傍において他方の棒状体には、前記絶縁操作棒の軸方向に移動可能に固定され前記円形ギヤ部材の歯に係止可能な係止爪が設けられているので、ロック・ロック解除を、他の間接活線工具を用いることなく、手元で行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明に係る間接活線作業用工具の構成例を示す外観図である。
図2図2は、図1で示す間接活線作業用工具の断面構造を示す図であり、フック部に電線を保持していない状態を示す。
図3図3は、図1で示す間接活線作業用工具の断面構造を示す図であり、フック部に電線を保持した状態を示す。
図4図4は、本発明に係る間接活線作業用工具を用いて電線を保持する作業工程を示す図であり、(a)は電線を保持する前の状態を示す図、(b)は電線を保持した状態を示す図である。
図5図5は、従来のストレーリンクトングを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明に係る間接活線作業用工具の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0028】
図1乃至図3において、本発明に係る間接活線作業用工具としてのストレーリンクトング1の構成例が示されている。
このストレーリンクトング1は、絶縁操作棒2と、この絶縁操作棒2の先端部に取り付けられた保持金具としてのヘッド3とを有して構成されている。
【0029】
絶縁操作棒2は、中空円筒状の絶縁性部材、例えば、エポキシ樹脂系強化プラスティック、ポリエステル樹脂系強化プラスティック等の変形し難い部材で形成されている。
絶縁操作棒の中間部には、降雨対策用としての水切りつば4が嵌合固定され、また、この水切りつば4より下方には、感電事故を防ぐために、把持してよい部分とそれ以外の部分との境界を明確にするための安全限界つば5が嵌合固定されている。
【0030】
ヘッド3は、アルミニウム合金などの硬質金属によって構成され、コの字形状(C形クランプ状)を有するヘッド本体6と、絶縁操作棒2の軸方向に進退可能に移動する可動部7とを有している。
【0031】
ヘッド本体6は、コの字形状の上部に位置し、電線等に引掛ける鉤爪状のフック部61と、このフック部61の下方に対向配置され、コの字形状の下部に位置する基端部62と、これらフック部61と基端部62のそれぞれの一側端を連結するように設けられた側壁部63と、を備えて構成されている。
【0032】
基端部62には、そのほぼ中央を絶縁操作棒2の軸方向に貫通する通孔8が形成され、この通孔8に、内周面に雌ネジが形成された貫通孔9を有する回転円筒体(回転部材)10が回転可能に挿通されている。
この回転円筒体10は、上下端部に拡径されたフランジ部10a,10bが形成され、このフランジ部10a,10bにより、軸方向への移動が規制されている。
【0033】
可動部7は、回転円筒体10の貫通孔9の内周面の雌ネジに噛み合わさる雄ネジが周面に形成された棒状のネジ軸体12と、このネジ軸体12の上端に該ネジ軸体12に対して相対回転不能に取り付けられ、ヘッド本体6と協働して電線を保持(把持)可能とするジョー(可動体)13とを備えている。
【0034】
このジョー13は、ヘッド本体6の側壁部63と対向する面に凹部13aが形成され、この凹部13aに側壁部63を嵌まり込ませた状態でネジ軸体12の先端に相対回転不能に取り付けられている。前記ネジ軸体12は、このジョー13の下端部から回転円筒体10を挿通し、絶縁操作棒2の先端部に挿入されており、後述する中継ロッド25の先端部に形成された収容空間25aに先端部が収容されている。
【0035】
前記絶縁操作棒2は、ヘッド本体6に固定されてこのヘッド本体6に対して相対回転不能に取付けられた先端側棒状体21と、この先端側棒状体21に対して相対回転可能に取付けられ、前記回転円筒体10と一体に回転する基端側棒状体22とを具備して構成されている。
【0036】
先端側棒状体21は、前記水切りつば4や安全限界つば5が嵌合固定される程度の長さに形成され、安全限界つば5の下方に手で握ることができる領域と後述するロック機構30の係止爪32が取付けられる領域とが確保される長さに形成されている。
【0037】
基端側棒状体22は、前記先端側棒状体21と軸心を一致させて先端側棒状体21の下端部に回転可能に嵌合されているもので、下端には、共用操作棒や足し棒などを着脱可能とするジョイント金具23が取付けられている。また、この例において、基端側棒状体22は、先端側棒状体21の下端開口部から内側に嵌装された嵌合部22aが設けられ、この嵌合部22aから先端側棒状体21の内部を通って回転円筒体10までのびる中継ロッド25が設けられている。
【0038】
この中継ロッド25は、基端側棒状体22と一体をなして回転するように固定され、また、その先端が前記回転円筒体に固着されている。また、中継ロッドの先端部には、前記ネジ軸体12を最も後退させた場合に、回転円筒体10を通過したネジ軸体の下端側を格納可能な収容空間25aが形成されている。
【0039】
したがって、基端側棒状体22を回転させると、これに固定されている中継ロッド25を介して回転円筒体10が回転し、この回転円筒体10に螺合されているネジ軸体12は、先端部に固定されたジョー13がヘッド本体6の側壁部63に係合されて回転が阻止されているため、中継ロッド25と共周りせず、上下動されることになる。
【0040】
ところで、基端側棒状体22の先端側棒状体21との境界部分には、締め付け方向(ジョー13をフック部61に近接させる方向)と逆方向の動き、すなわち可動部7の後退をロックするロック機構30が設けられている。このロック機構30は、円形ギヤ部材31と係止爪32とを有して構成されるもので、基端側棒状体22の先端側棒状体21との境界近傍には、円形ギヤ部材31が嵌合固定されている。この円形ギヤ部材31の上面には、外周縁に沿って絶縁操作棒2の先端方向(先端側棒状体21側)へ突出する歯31aが形成されている。
【0041】
また、先端側棒状体21の基端側棒状体22との境界近傍には、前記絶縁操作棒2の軸方向に移動可能に固定され、円形ギヤ部材31の歯31aに係止可能な係止爪32が設けられている
【0042】
円形ギヤ部材31に設けられた歯31aは、ジョー13を前進させる回転方向(締め付け方向)で係止爪32と対向する面が緩やかな傾斜面となっており、また、ジョー13を後退させる回転方向で係止爪32と対向する面が略垂直な面となっており、したがって、ロック機構30によりロック状態となっている場合(係止爪32が円形ギヤ部材31の歯31aに当接している場合)においても、ジョー13を前進させる方向に絶縁操作棒2を回転させようとすると、係止爪32は緩やかな傾斜面を乗り越えることができるため、回転が許容されてジョー13の前進が可能となり、絶縁操作棒2を逆方向に回転させようとすると、係止爪32は、略鉛直な面に当接して回転が阻止されるので、ジョー13の後退が制限されるようになっている。
【0043】
係止爪32は、先端側棒状体21の基端部に固定された係止爪収容ブロック33に収容され、絶縁操作棒2の長手方向に図示しない爪保持部によって移動可能に保持され、係止爪収容ブロック33の側方へ突出するロック操作つまみ34と一体をなして移動するようになっている。したがって、ロック操作つまみ34を基端側棒状体22側にスライド操作して係止爪32を前記円形ギヤ部材31の歯31aに係止させることで、基端側棒状体22が先端側棒状体21に対して回転しないようにロックする構造となっている。
【0044】
以上の構成において、上述したストレーリンクトング1を用いて電線50を把持する作業を説明すると、先ず、ロック操作つまみ34を上げて係止爪32を円形ギヤ部材31の歯31aから離した状態とし、基端側棒状体22を回転可能な状態とする。そして、この状態で基端側棒状体22を回してジョー13をフック部61から離間させ、フック部61の先端部61aとジョー13との間に電線50を挿入できる程度の空間を形成する。
【0045】
その後、ロック操作つまみ34を下げて係止爪32を円形ギヤ部材31の歯31aに噛合させ、ロック状態を形成する。そして、左手で先端側棒状体21の安全限界つば5と係止爪収容ブロック33との間を握り、また、右手で基端側棒状体22の円形ギヤ部材31より下方の部分を握り、ヘッド3を持ち上げ、電線50にアプローチする(図4(a))、そして、電線50をヘッド本体6の開口部を電線50に近づけ、電線50を開口部からヘッド3の内部に挿入する(図4(b))。
【0046】
この際、ヘッド3は、ロック状態にあるため、ヘッド3が回転してしまう不都合はなく、ヘッド本体6の開口部を意図する方向に向けて電線50をヘッド本体6の開口部から挿入することが可能となる。
【0047】
そして、フック部61とジョー13との間に電線50を挿入したら、先端側棒状体21を左手で保持したまま、基端側棒状体22を右手で締め付け方向に回転させれば、ジョー13がフック部61に向かって前進し、フック部61とジョー13とで電線50が挟持され、電線50へのストレーリンクトング1の取り付けは完了する。
【0048】
また、電線50をフック部61とジョー13とで挟持させている状態からストレーリンクトング1を取り外すには、左手で先端側棒状体の安全限界つば5と係止爪収容ブロック33との間を握り、ロック操作つまみ34を上げて係止爪32を円形ギヤ部31の歯31aから離間させ、ロック状態を解除する。そして、先端側棒状体21を左手で保持したまま、基端側棒状体22を右手で緩める方向に回転させれば、ジョー13がフック部61から離間し、フック部61を電線50から外せば、ストレーリンクトング1の取り外しは完了する。
【0049】
このように、円形ギヤ部材31とその歯31aに係止可能な係止爪32が、基端側棒状体22と先端側棒状体21との境界部分に設けられ、絶縁操作棒2を手で持つ付近で、係止爪32の操作が可能となるので、絶縁操作棒2を手前に引くことなく手元でロック・ロック解除を行うことが可能となる。
このため、ロック・ロック解除を行う場合に他の間接活線工具を用いる必要がなく、また、ロック・ロック解除の操作のために作業が中断してしまう不都合もなくなる。
【符号の説明】
【0050】
1 ストレーリンクトング
2 絶縁操作棒
21 先端側棒状体
22 基端側棒状体
3 ヘッド
5 安全限界つば
6 ヘッド本体
61 フック部
62 基端部
63 側壁部
7 可動部
10 回転円筒体
12 ネジ軸体
13 ジョー
31 円形ギヤ部材
31a 歯
32 係止爪
図1
図2
図3
図4
図5