特許第5889941号(P5889941)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5889941液体ストレージ部分を有する電気加熱式喫煙システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5889941
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】液体ストレージ部分を有する電気加熱式喫煙システム
(51)【国際特許分類】
   A24F 47/00 20060101AFI20160308BHJP
   A61M 15/06 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   A24F47/00
   A61M15/06 C
【請求項の数】17
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-55789(P2014-55789)
(22)【出願日】2014年3月19日
(62)【分割の表示】特願2011-506600(P2011-506600)の分割
【原出願日】2009年4月22日
(65)【公開番号】特開2014-158470(P2014-158470A)
(43)【公開日】2014年9月4日
【審査請求日】2014年3月19日
(31)【優先権主張番号】08251579.2
(32)【優先日】2008年4月30日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】596060424
【氏名又は名称】フィリップ・モーリス・プロダクツ・ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100092093
【弁理士】
【氏名又は名称】辻居 幸一
(74)【代理人】
【識別番号】100082005
【弁理士】
【氏名又は名称】熊倉 禎男
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【弁理士】
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【弁理士】
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100167911
【弁理士】
【氏名又は名称】豊島 匠二
(72)【発明者】
【氏名】トーラン ミッシェル
(72)【発明者】
【氏名】フリック ジャン マルク
(72)【発明者】
【氏名】コシャン オリヴィエ イヴ
【審査官】 大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】 特許第3325028(JP,B2)
【文献】 特開平11−089551(JP,A)
【文献】 特開昭62−262981(JP,A)
【文献】 特表2005−537918(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A24F 47/00
A61M 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気加熱式喫煙システムであって、
シェル(101)と、
該シェルと係合するマウスピース(201)と、
を含み、
前記シェルは、電源(103)及び電気回路(105)を含み、
前記マウスピースは、
液体ストレージ部分(203)と、
少なくとも1つの加熱要素(209)と、
前記液体ストレージ部分の中に延びる部分に形成された第1の端部と前記少なくとも1つの加熱要素の加熱要素と少なくとも部分的に接触する部分として形成された第2の端部を有する毛細管芯(207)であって、前記少なくとも1つの加熱要素(209)は、前記毛細管芯(207)に少なくとも部分的に接触している、前記毛細管芯(207)と、
空気出口(211)と、
前記少なくとも1つの加熱要素と前記空気出口の間のエーロゾル形成チャンバ(213)と、
を含み、
前記シェルとマウスピースが係合した時に、前記少なくとも1つの加熱要素(209)は、前記回路(105)を通じて前記電源(103)と電気接続し、
該回路(105)は、該少なくとも1つの加熱要素(209)に電流パルスを供給するように配列され、
空気の流れルートが、少なくとも1つの空気入口(115)から前記エーロゾル形成チャンバ(213)を通って前記空気出口(211)まで形成され、該流れルートは、該加熱要素(209)の周囲に該空気の流れを流す、
ことを特徴とする電気加熱式喫煙システム。
【請求項2】
前記毛細管芯は、維状又はスポンジ状構造を有することを特徴とする請求項1に記載の電気加熱式喫煙システム。
【請求項3】
前記毛細管芯の第2の端部は、前記毛細管芯の自由端から離れていることを特徴とする請求項2に記載の電気加熱式喫煙システム。
【請求項4】
前記少なくとも1つの加熱要素は、加熱ワイヤ又はフィラメントを有することを特徴とする請求項1、2、又は3に記載の電気加熱式喫煙システム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの加熱要素は、前記毛細管芯の第2の端部を取り囲むワイヤのコイルを有することを特徴とする請求項4に記載の電気加熱式喫煙システム。
【請求項6】
前記繊維状の毛細管芯は、セラミック物質で形成されていることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の電気加熱式喫煙システム。
【請求項7】
前記電気回路(105)は、ユーザが吸煙していることを示す空気流を検出するセンサを含むことを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の電気加熱式喫煙システム。
【請求項8】
前記電流パルスは、1回の吸煙に必要な液体の量に依存する所定の時間間隔を有しており、前記所定の時間間隔は、約0.5と約3秒の間であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の電気加熱式喫煙システム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの空気入口(115)は、前記シェル(101)に存在することを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の電気加熱式喫煙システム。
【請求項10】
前記液体ストレージ部分(203)は、補充不可能であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の電気加熱式喫煙システム。
【請求項11】
前記液体ストレージ部分(203)は、補充可能であることを特徴とする請求項1乃至のいずれかに記載の電気加熱式喫煙システム。
【請求項12】
前記電気回路(105)は、ユーザが吸煙を開始するための手動操作スイッチを備えることを特徴とする請求項1乃至11のいずれかに記載の電気加熱式喫煙システム。
【請求項13】
シェル(101)と係合して電気加熱式喫煙システムを形成するマウスピース(201)であって、
前記シェルは、電源(103)及び電気回路(105)を含み、
前記マウスピースは、
液体ストレージ部分(203)と、
少なくとも1つの加熱要素(209)と、
前記液体ストレージ部分の中に延びる部分に形成された第1の端部と前記少なくとも1つの加熱要素の加熱要素と少なくとも部分的に接触する部分として形成された第2の端部を有する毛細管芯(207)と、
空気出口(211)と、
前記少なくとも1つの加熱要素と前記空気出口の間のエーロゾル形成チャンバ(213)と、
を含み、
前記シェルとマウスピースが係合した時に、前記少なくとも1つの加熱要素(209)は、前記回路(105)を通じて前記電源(103)と電気接続し、
該回路は、該少なくとも1つの加熱要素に電流パルスを供給するように配列され、
空気の流れルートが、少なくとも1つの空気入口(115)から前記エーロゾル形成チャンバを通って前記空気出口(211)まで形成され、該流れルートは、該加熱要素(209)の周囲に該空気の流れを流す、
ことを特徴とするマウスピース。
【請求項14】
前記毛細管芯は、維状又はスポンジ状構造を有することを特徴とする請求項13に記載のマウスピース。
【請求項15】
前記毛細管芯の第2の端部は、前記毛細管芯の自由端から離れていることを特徴とする請求項14に記載のマウスピース。
【請求項16】
前記少なくとも1つの加熱要素は、加熱ワイヤ又はフィラメントを有することを特徴とする請求項13、14、又は15に記載のマウスピース。
【請求項17】
前記少なくとも1つの加熱要素は、前記毛細管芯の第2の端部を取り囲むワイヤのコイルを有することを特徴とする請求項13乃至16のいずれかに記載のマウスピース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エーロゾル形成基体を受け取るための電気加熱式喫煙システムに関する。特に、本発明は、エーロゾル形成基体が液体であるエーロゾル形成基体を受け取るための電気加熱式喫煙システムに関する。
【背景技術】
【0002】
いくつかの従来技術の文書、例えば、S−A−5,060,671、US−A−5,388,594、US−A−5,505,214、US−A−5,591,368、WO−A−2004/043175、EP−A−0,358,002、及びWO−A−2007/131449は、いくつかの利点を有する電気作動式喫煙システムを開示している。1つの利点は、それらが副流煙を有意に低減する一方、喫煙者が選択的に喫煙を中断及び再開することを可能にすることである。
【0003】
他の従来技術の文書、例えば、EP−A−0,295,122、EP−A−1,618,803、及びEP−A−1,736,065は、エーロゾル形成基体として液体を使用する電気喫煙システムを開示している。液体は、ハウジングに受け取り可能なカートリッジに収容することができる。バッテリのような電源が、吸煙中に液体基体を加熱して喫煙者に供給されるエーロゾルを形成する加熱器に接続されて設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】US−A−5,060,671
【特許文献2】US−A−5,388,594
【特許文献3】US−A−5,505,214
【特許文献4】US−A−5,591,368
【特許文献5】WO−A−2004/043175
【特許文献6】EP−A−0,358,002
【特許文献7】WO−A−2007/131449
【特許文献8】EP−A−0,295,122
【特許文献9】EP−A−1,618,803
【特許文献10】EP−A−1,736,065
【特許文献11】US−A−5,498,855
【特許文献12】WO−A−03/095688
【特許文献13】US−A−5,514,630
【特許文献14】EP−A−1,128,741
【特許文献15】WO−A−2007/066374
【特許文献16】WO−A−2007/078273
【特許文献17】EP−A−0,277,519
【特許文献18】US−A−5,396,911
【特許文献19】EP−A−0,893,071
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述したものを含む従来技術の電気加熱式喫煙システムは、いくつかの利点を確かに有するが、依然として改善の余地がある。従って、改善された電気加熱式喫煙システムを提供することが本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様により、シェルと交換可能なマウスピースとを含む電気加熱式喫煙システムを提供し、シェルは、電源及び電気回路を含み、マウスピースは、液体ストレージ部分と、液体ストレージ部分の中にそこの液体と接触するために延びる第1の端部と第2の端部とを有する毛細管芯と、毛細管芯の第2の端部を加熱するための少なくとも1つの加熱要素と、空気出口と、毛細管芯の第2の端部と空気出口の間のエーロゾル形成チャンバとを含み、シェル及びマウスピースが係合した時に、少なくとも1つの加熱要素は、回路を通じて電源と電気接続し、回路は、ユーザが吸煙を開始した時に少なくとも1つの加熱要素に電流パルスを供給するように配列され、空気の流れルートが、少なくとも1つの空気入口からエーロゾルチャンバを通って空気出口まで形成され、この流れルートは、加熱要素及び毛細管芯の第2の端部の周囲に空気流を流す。
【0007】
少なくとも1つの空気入口は、シェル又はマウスピースに設けることができる。使用時に、液体は、毛細管芯の毛細管作用によって液体ストレージ部分から加熱要素に向けて移送される。加熱要素に作動されると、毛細管芯の第2の端部の液体は、加熱要素によって気化され、過飽和蒸気が形成される。過飽和蒸気は、混合されて、少なくとも1つの空気入口からエーロゾル形成チャンバまで空気流中で運ばれる。エーロゾル形成チャンバにおいて、蒸気は、凝縮してエーロゾルを形成し、これは、空気出口に向けて運ばれてユーザの口の中に入る。
【0008】
本発明による電気加熱式喫煙システムは、いくつかの利点を提供する。第1に、交換可能なマウスピースが少なくとも1つの加熱要素、液体ストレージ部分、及び芯を収容するので、潜在的に液体と接触する全ての要素は、マウスピースが交換される時に替えられる。異なるマウスピース、例えば、異なる液体を使用するものの間でシェルにおける二次汚染がないことになる。更に、液体ストレージ部分内の液体は、液体が劣化する危険性が有意に低減されるように、酸素(酸素が一般的に毛細管芯を通じて液体ストレージ部分に進入できないために)及び一部の実施形態では光から保護される。従って、高レベルの衛生を維持することができる。第2に、マウスピース構造は、液体ストレージ部分から漏れる危険性が少ないことを意味し、これは、従来技術の電気加熱式喫煙システムの多くに対しては当て嵌まらない。それによって液体の無駄が防止されるが、マウスピースの分解による無許可ユーザの液体へのアクセスも困難にする。また、マウスピースが適切な間隔で交換される場合、加熱要素が液体で詰まる可能性が殆どない。第3に、ユーザが吸煙を開始した時に回路が電流パルスを供給するので、加熱要素及び毛細管芯の第2の端部の周囲に空気が流され、エーロゾル化が最適化される。最後に、液体と加熱要素の間に延びる毛細管芯を使用すると、マウスピースの構造を比較的簡単にすることができる。好ましくは、システムに1つだけの毛細管機構が存在する。
【0009】
少なくとも1つの加熱要素は、単一の加熱要素を含むことができる。代替的に、少なくとも1つの加熱要素は、1つよりも多くの加熱要素、例えば、2つ、3つ、4つ、5つ、6つ、又はそれよりも多くの加熱要素を含むことができる。1つ又は複数の加熱要素は、毛細管芯の第2の端部において液体を最も有効に揮発させるように適切に配置することができる。
少なくとも1つの加熱要素は、好ましくは電気抵抗性材料を含む。適切な電気抵抗性材料は、以下に限定されるものではないが、ドープされたセラミックのような半導体、電気「伝導性」セラミック(例えば、ケイ化モリブデンなど)、カーボン、グラファイト、金属、金属合金、及びセラミック材料及び金属材料で作られた複合材料を含む。そのような複合材料は、ドープ又は非ドープセラミックで構成することができる。適切なドープセラミックの例は、ドープされたシリコンカーバイドを含む。適切な金属の例は、チタン、ジルコニウム、タンタル、及び白金族からの金属を含む。適切な金属合金の例は、ステンレス鋼、ニッケル−、コバルト−、クロム−、アルミニウム−、チタン−、ジルコニウム−、ハフニウム−、ニオブ−、モリブデン−、タンタル−、タングステン−、錫−、ガリウム−、マンガン−、及び鉄−含有合金、及びニッケル、鉄、コバルト、ステンレス鋼、Timeta1、及び鉄−マンガン−アルミニウムベース合金ベースの超合金を含む。複合材料において、電気抵抗性材料は、任意的に、エネルギ移送の動力学及び必要とされる外部物理化学特性次第で絶縁材料に埋め込むか、又はそれを用いて封入又は被覆するか、又はその逆にすることができる。適切な複合加熱要素の例は、US−A−5,498,855、WO−A−03/095688、及びUS−A−5,514,630に開示されている。
【0010】
少なくとも1つの加熱要素は、あらゆる適切な形態を取ることができる。例えば、少なくとも1つの加熱要素は、US−A−5,388,594、US−A−5,591,368、及びUS−A−5,505,214に説明されているような加熱ブレードの形態を取ることができる。代替的に、少なくとも1つの加熱要素は、EP−A−1,128,741に説明されているような異なる導電性部分を有するケーシング又は基体か、又はWO−A−2007/066374に説明されているような電気抵抗性金属チューブの形態を取ることができる。代替的に、少なくとも1つの加熱要素は、ディスク(端部)加熱器、又はディスク加熱器と加熱ニードル又はロッドとの組合せとすることができる。代替的に、少なくとも1つの加熱要素は、不活物質の2層間で絶縁された金属エッチ箔の形態を取ることができる。その場合、不活物質は、全体がポリイミド又はマイカ箔であるカプトンを含むことができる。代替的に、少なくとも1つの加熱要素は、毛細管芯の第2の端部周囲に巻かれる材料のシートの形態を取ることができる。シートは、あらゆる適切な材料、例えば、鉄−アルミニウムベースの合金、鉄−マンガン−アルミニウムベースの合金、又はTimeta1で作ることができる。シートの形状は、矩形とするか、又は毛細管芯の第2の端部周囲に巻かれた時にコイル状構造を形成するパターン化形状とすることができる。他の代替物は、加熱ワイヤ又はフィラメント、例えば、Ni−Cr、白金、タングステン、又はEP−A−1,736,065に説明されているような合金ワイヤ、又は加熱プレートを含む。
好ましい実施形態では、少なくとも1つの加熱要素は、毛細管芯の第2の端部を取り囲むワイヤのコイルを含む。その実施形態では、好ましくは、ワイヤは、金属ワイヤである。より好ましくは、ワイヤは、金属合金ワイヤである。加熱要素は、毛細管芯の第2の端部を完全に又は部分的に取り囲むことができる。
【0011】
少なくとも1つの加熱要素は、伝導の手段によって毛細管芯の第2の端部で液体を加熱することができる。加熱要素は、芯の第2の端部に少なくとも部分的に接触することができる。代替的に、加熱要素からの熱は、熱伝導要素の手段によって液体に伝導させることができる。代替的に、少なくとも1つの加熱要素は、使用中に電気加熱式喫煙システムを通して吸引される入ってくる外気に熱を移送することができ、これは、次に、対流によって液体を加熱する。外気は、システムを通過する前に加熱することができる。代替的に、外気は、WO−A−2007/078273に説明されているように、最初に芯の第2の端部を通して吸引され、次に加熱することができる。
【0012】
好ましくは、電気回路は、ユーザが吸煙していることを示す空気流を検出するセンサを含む。センサは、電気機械デバイスとすることができる。代替的に、センサは、機械デバイス、光学デバイス、光学機械デバイス、及び微小電気機械システム(MEMS)ベースのセンサのいずれかとすることができる。その場合、好ましくは、電気回路は、ユーザが吸煙したことをセンサが感知した時に少なくとも1つの加熱要素に対して電流パルスを供給するように配列される。好ましくは、電流パルスの期間は、気化されることが望ましい液体の量に応じて予め設定される。電気回路は、この目的に対して好ましくはプログラマブルである。
代替的に、電気回路は、ユーザが吸煙を開始するための手動操作スイッチを含むことができる。電流パルスの期間は、好ましくは、気化されることが望ましい液体の量に応じて予め設定される。電気回路は、この目的に対して好ましくはプログラマブルである。
【0013】
好ましくは、少なくとも1つの空気入口は、シェルに存在する。代替的に、少なくとも1つの空気入口は、マウスピースに存在する場合がある。一実施形態では、少なくとも1つの空気入口は、2つの空気入口を含む。代替的に、3つ、4つ、5つ、又はそれよりも多くの空気入口が存在する場合がある。好ましくは、1つよりも多くの空気入口が存在する場合、空気入口は、シェルの周りに又はマウスピースの周りで離間している。好ましい実施形態では、電気回路は、ユーザが吸煙していることを示す空気流を検出するセンサを含み、かつ少なくとも1つの入口は、センサ上流のシェルに存在する。空気入口は、空気の流れルートが、エーロゾル化を最適化するために加熱要素及び毛細管芯の第2の端部の周囲に空気流を流すように適切に位置する。
【0014】
好ましくは、電源は、シェルに収容されたセルを含む。電源は、リチウムイオンバッテリ又はその変形の1つ、例えば、リチウムイオンポリマーバッテリとすることができる。代替的に、電源は、ニッケル金属水素化物バッテリ又はニッケルカドミウムバッテリ又は燃料セルとすることができる。その場合、好ましくは、電気加熱式喫煙システムは、電力セルのエネルギが使い尽くされるまで喫煙者が使用可能である。
代替的に、電源は、外部充電部分によって充電可能な回路を含むことができる。その場合、好ましくは、回路は、充電された時に所定回数の吸煙のための電力を供給し、その回数の後では、回路は、外部充電部分に再接続する必要がある。適切な回路の例は、1つ又はそれよりも多くのコンデンサ又は再充電可能なバッテリである。
【0015】
好ましくは、シェルは、加熱要素が作動された時を示すための吸煙インジケータを更に含む。電気回路が、ユーザが吸煙していることを示す空気流を検出するセンサを含む実施形態では、インジケータは、ユーザが吸煙していることを示す空気流をセンサが感知した時に作動させることができる。電気回路が手動操作スイッチを含む実施形態では、インジケータは、そのスイッチによって作動させることができる。
好ましくは、シェル及びマウスピースは、係合時に解除可能に互いに固定されるように配置される。
【0016】
液体ストレージ部分は、好ましくは補充不可能である。すなわち、液体ストレージ部分の液体が使い尽くされた時に、マウスピース全体が交換される。代替的に、液体ストレージ部分は、補充可能とすることができる。その場合は、マウスピースは、液体ストレージ部分のある一定回数の補充後に取り替えることができる。好ましくは、液体ストレージ部分は、所定回数の吸煙のための液体を保持するように配置される。
【0017】
液体は、毛細管作用によって毛細管芯を通して液体を搬送させる粘性を含む物理特性を有する。液体は、電気加熱式喫煙システムで使用するのに適する沸点を有し、すなわち、沸点が高すぎる場合には、加熱要素は、液体を毛細管芯の第2の端部で気化させることができないことになるが、沸点が低すぎる場合には、液体は、たとえ加熱要素が作動されなくても気化する場合がある。液体は、好ましくは、加熱時に液体から放出される揮発性タバコ香味化合物を含むタバコ含有材料を含む。代替的に又はそれに加えて、液体は、非タバコ材料を含むことができる。液体は、水分、溶剤、エタノール、植物性抽出物、及び天然又は人工香味料を含むことができる。好ましくは、液体は、更に、エーロゾル形成剤を含む。適切なエーロゾル形成剤の例は、グリセリン及びプロピレングリコールである。潜在的に適切なエーロゾル形成剤の付加的な例は、EP−A−0,277,519及びUS−A−5,396,911に説明されている。
【0018】
液体ストレージ部分は、好ましくは容器である。例えば、容器は、EP−A−0,893,071に説明されたような容器とすることができる。好ましくは、液体ストレージ部分は、電気加熱式喫煙システムに1つだけの毛細管機構(毛細管芯)が存在するように、いずれの多孔性材料も含まない。これは、マウスピースの構造を簡単にかつ全体システムを低保守に維持する。好ましくは、容器は、不透明であり、それによって光による液体の劣化を制限する。
電気加熱式喫煙システムは、少なくとも1つの加熱要素を含む噴霧器を更に含むことができる。この加熱要素に加えて、噴霧器は、1つ又はそれよりも多くの圧電素子のような電気機械要素を含むことができる。追加的に又は代替的に、噴霧器はまた、静電気、電磁気、又は空気圧効果を使用する要素を含むことができる。
【0019】
毛細管芯は、繊維状又はスポンジ状構造を有することができる。例えば、毛細管芯は、喫煙システムの縦方向にほぼ整列した複数の繊維又はより線、又は喫煙システムの縦方向に沿ってロッド形状に形成されたスポンジ状材料を含むことができる。芯の構造は、複数の小さな内腔又はチューブを形成し、それを通して液体を毛細管作用により液体ストレージ部分から加熱要素まで搬送することができる。毛細管芯は、あらゆる適切な材料又は材料の組合せを含むことができる。適切な材料の例は、繊維又は焼結粉末の形態のセラミック又はグラファイトベースの材料である。毛細管芯は、密度、粘性、表面張力、及び蒸気圧のような異なる液体物理特性で使用されるように、あらゆる適切な毛管性及び多孔性を有することができる。
【0020】
シェルは、あらゆる適切な材料又は材料の組合せを含むことができる。適切な材料の例は、金属、合金、プラスチック、又はこれらの材料の1つ又はそれよりも多くを含有する複合材料を含む。好ましくは、この材料は、軽量かつ非脆性である。
マウスピースは、あらゆる適切な材料又は材料の組合せを含むことができる。適切な材料の例は、食品又は薬剤用途に適する熱可塑性材料、例えば、ポリプロピレン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、及びポリエチレンを含む。
好ましくは、電気加熱式喫煙システムは、携帯型である。電気加熱式喫煙システムは、従来のシガー又はシガレットに匹敵するサイズを有することができる。
【0021】
本発明の第2の態様により、電源と電気回路とを有するシェルと係合して電気加熱式喫煙システムを形成するためのマウスピースを提供し、マウスピースは、液体ストレージ部分と、液体ストレージ部分の中にそこの液体と接触するために延びる第1の端部と第2の端部とを有する毛細管芯と、毛細管芯の第2の端部を加熱するための少なくとも1つの加熱要素と、空気出口と、毛細管芯の第2の端部と空気出口の間のエーロゾル形成チャンバとを含み、シェル及びマウスピースが係合した時に、少なくとも1つの加熱要素は、回路を通じて電源と電気接続し、回路は、ユーザが吸煙を開始した時に少なくとも1つの加熱要素に電流パルスを供給するように配列され、空気の流れルートが、少なくとも1つの空気入口からエーロゾルチャンバを通って空気出口まで形成され、流れルートは、空気流を加熱要素及び毛細管芯の第2の端部の周囲に流す。
好ましい実施形態では、少なくとも1つの加熱要素は、毛細管芯の第2の端部を取り囲むワイヤのコイルを有する。その実施形態では、好ましくは、ワイヤは、金属合金ワイヤである。
【0022】
本発明により、本発明の第2の態様のマウスピースと係合するように配置されたシェルも提供する。
本発明の第3の態様により、液体ストレージ部分と、液体ストレージ部分の中にそこの液体と接触するために延びる第1の端部と第2の端部とを有する毛細管芯と、毛細管芯の第2の端部を加熱するための少なくとも1つの加熱要素と、空気出口と、毛細管芯の第2の端部と空気出口の間のエーロゾル形成チャンバとを有するマウスピースと係合して電気加熱式喫煙システムを形成するためのシェルを提供し、シェルは、電源及び電気回路を含み、シェル及びマウスピースが係合した時に、少なくとも1つの加熱要素は、回路を通じて電源と電気接続し、回路は、ユーザが吸煙を開始した時に少なくとも1つの加熱要素に電流パルスを供給するように配列され、空気の流れルートが、少なくとも1つの空気入口からエーロゾルチャンバを通って空気出口まで形成され、この流れルートは、加熱要素及び毛細管芯の第2の端部の周囲に空気流を流す。
【0023】
好ましくは、電気回路は、ユーザが吸煙していることを示す空気流を検出するセンサを含む。
好ましくは、シェルは、更に、少なくとも1つの空気入口を含む。
本発明により、本発明の第3の態様のシェルと係合するように配置されたマウスピースも提供する。
本発明の1つの態様に関連して説明した特徴は、本発明の別の態様にも適用可能である。
添付図面を参照して本発明を単に一例として更に以下に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の実施形態による電気加熱式喫煙システムのシェルを示す図である。
図2】本発明の実施形態による電気加熱式喫煙システムのマウスピースを示す図である。
図3図1のシェルと図2のマウスピースを含む構成された電気加熱式喫煙システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の一実施形態による電気加熱式喫煙システムのシェルを示している。シェル101は、バッテリ103の形態の電源と、回路105の形態の電気回路と、吸煙検出システム107と、吸煙インジケータ109と、電気接続111と、電気接点113と、空気入口115と、固定機構117とを含む。シェル101は、図2のマウスピース201と係合するように設計されている。
図2は、本発明の一実施形態による電気加熱式喫煙システムのマウスピースを示している。マウスピース201は、液体205を収容するカートリッジ203の形態の液体ストレージ部分と、毛細管芯207と、加熱コイル209の形態の加熱要素と、空気出口211と、エーロゾル形成チャンバ213とを含む。毛細管芯207の第1の端部207aは、カートリッジ203内に延び、毛細管芯207の第2の端部207bは、加熱コイル209によって取り囲まれている。マウスピースはまた、毛細管芯207の第2の端部207b及び絶縁リング217を保護するためのキャップ215を含む。マウスピース201は、図1のシェル101と係合するように設計される。
【0026】
図3は、必要に応じてユーザにエーロゾルを供給するように配列された電気加熱式喫煙システム301を形成するために図2のマウスピース201と係合した図1のシェル101を示している。シェル101及びマウスピース201は、固定機構117によって互いに解除可能に固定される。加熱コイル209の端部は、シェル上の電気接点113と接触している。システム301の作動は、次の通りである。
【0027】
液体205は、芯207の第1の端部207aから芯の第2の端部207bまで毛細管作用によってカートリッジ203から移送される。ユーザが空気出口211においてデバイスを吸引すると、空気入口115を通って外気が吸引される。この実施形態では、吸煙検出システム107は、吸煙を感知し、加熱コイル209に作動して吸煙インジケータのスイッチをオンにする。バッテリ103は、芯207の第2の端部207bを加熱するために加熱コイル209にエネルギのパルスを供給する。芯207の第2の端部207b内の液体は、加熱コイル209によって気化して過飽和蒸気を生成する。同時に、気化されている液体は、毛細管作用によって芯の第2の端部207bに向けて移動している更に別の液体によって置換される。(これは、「ポンプ作用」と呼ばれることがある。)生成された過飽和蒸気は、空気入口115からエーロゾル形成チャンバ213に向う空気流と混合され、かつその中で運ばれる。空気入口115とマウスピース211の相対位置のために、空気流は、エーロゾル形成チャンバ213におけるエーロゾルの形成を最適化するように芯の第2の端部207b周囲に向けられる。エーロゾル形成チャンバ213において、蒸気は、凝縮して吸入可能なエーロゾルを形成し、それは、次に、出口211に向かってユーザの口の中に運ばれる。
【0028】
この実施形態では、回路105及び吸煙検出システム107は、プログラマブルである。回路105及び吸煙検出システム107は、デバイスの作動を管理するのに使用することができる。この実施形態では、吸煙検出システム107がユーザの吸煙を感知した時に、バッテリは、加熱コイル209に所定時間の電流パルスを供給する。電流パルスのための所定時間は、1回の吸煙に必要な液体の量及び液体のその量が気化するのにかかる時間に依存することになる。これは、逆に、液体、加熱コイル、及び毛細管芯の特性に依存することになる。所定の時間は、0.5と3秒の間とすることができる。
【0029】
この実施形態では、マウスピース内のカートリッジ203は、所定回数の吸煙に対して十分な液体を収容するように寸法設定される。その所定回数の吸煙後に、カートリッジは、補充することができるであろうが、好ましくは、マウスピース全体が交換される。所定回数の吸煙は、理想的には200と2000回の間であり、これは、カートリッジ、マウスピース、及びデバイス全体の望ましいサイズと使用される液体の特性とに依存する。カートリッジ203は、あらゆる適切な材料で作ることができる。例には、ガラスとPETのようなプラスチックポリマー、又は薬剤又は食品産業で使用される他のものが含まれる。材料は、漏れ、破損、又は誤用をできる限り防ぐように選択すべきである。
【0030】
図1から3に示す実施形態では、シェルとマウスピースが係合した時に、カートリッジ203は、芯の第2の端部207b及び加熱コイル209の上流に配置される。従って、外気は、空気入口115を通って吸引され、芯の第2の端部207b及び加熱コイル209に到達する前にカートリッジ203の周囲を通過する。しかし、代替的な実施形態では、マウスピースは、シェルとマウスピースが係合した時に、カートリッジが芯の第2の端部及び加熱コイルの下流に配置されるように構成することができる。その実施形態では、外気は、空気入口を通って吸引され、次に、蒸気又はエーロゾルは、空気出口に行く途中でカートリッジの周囲を通過することになる。
【0031】
毛細管芯は、様々な多孔性又は毛管性材料で作ることができ、かつ好ましくは公知の所定の毛管性を有する。例には、繊維又は焼結粉末の形態のセラミック又はグラファイトベースの材料が含まれる。密度、粘性、表面張力、及び蒸気圧のような異なる液体の物理特性に適合させるために異なる空隙率の芯を使用することができる。芯は、加熱コイルに必要な量の液体が送出されるような適切なものでなければならない。
【0032】
マウスピースとシェルは、喫煙者によって使用することができるように適切に寸法設定された電気加熱式喫煙システムを生成するために互いに係合するように寸法及び形状設定される。電源、回路、液体ストレージ部分、芯、加熱要素、及びエーロゾル形成チャンバを含むマウスピースとシェルの構成要素は、システム設計に対して適切に寸法及び形状設定される。システムは、好ましくは、携帯可能であり、かつ従来型のシガー又はシガレットと類似のサイズを有することができる。
【0033】
本発明のシステムは、エーロゾル内の粒子濃度(mg/l又はmg/吸煙容積)、エーロゾル内の平均粒子サイズ、及びエーロゾル内の粒子サイズの分布(範囲)の制御を可能にする。これらは、液体中のエーロゾル形成剤処方、加熱要素におけるエネルギ移送(単位表面積あたりの熱出力)、エーロゾル形成チャンバの設計、及び作動温度のうちの1つを変えることによって制御することができる。エネルギ移送は、加熱要素及び芯に使用される材料、芯の直径、加熱要素がコイルの場合にはコイルの長さ、直径、及びピッチ(螺旋間の距離)を含む加熱要素の設計、及び加熱要素に印加される電力を含むいくつかのファクタに依存することになる。
【0034】
作動温度は、1つ又は複数のエーロゾル形成剤及び香味材料の望ましくない劣化が起こらないことを保証するためにできる限り制御すべきである。これは、例えば、加熱器が適切な金属又は合金で作られた場合には伝導率の変動を使用して加熱器の温度を制御することにより、又は加熱器に送出されるエネルギの量を制御することにより達成することができる。加熱要素における好ましい作動温度は、100から300℃の範囲である。図に示す配置は、この温度範囲内で作動させることができ、かつ10から100msの間の迅速な応答時間(ユーザがシステムを吸煙して空気出口からエーロゾルがユーザの口に入る間の時間、これは、「吸煙までの時間」と呼ばれることがある)を提供することもできる。
【符号の説明】
【0035】
301 電気加熱式喫煙システム
図1
図2
図3