【文献】
ゴルフクラブフェース用,高剛性チタン合金「SP-700HM」,JFE技報,日本,JFEホールディングス株式会社,2007年11月,No.18,p.80-81
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
ゴルフクラブの性能を改善するために、クラブの設計者は、より高性能なゴルフクラブを実現するため
に、日々、努力している。ゴルフクラブヘッドの性能を改善するに際しての最近の傾向の1つは、メタルウッドゴルフクラブヘッドの打撃フェースを改良することに焦点をあてることであった。
【0003】
メタルウッドゴルフクラブの打撃フェースは、ゴルフボールに接触することになる唯一の部品であるので、ゴルフクラブヘッドの最も重要な要素の1つである。ゴルフクラブヘッドの性能を最大化させるために、反発係数(COR)を改善するような、または、「スイートゾーン」の寸法を増大させるような、変数を用いた実験を行ってきた。「スイートゾーン」は、ゴルフ業界では一般的に良く知られ、実質的に一様な高初期速度または高CORのゾーンに関する。「スイートゾーン」およびCORのこれらの概念は、米国特許第6,605,007号(Bissonnette等)によりすでに検討されており、その開示内容は参照してここに組み入れる。
【0004】
より大きな「スイートゾーン」を形成する方法の1つは、米国特許第
5,318,300号(
Schmidt等)に図説され、ここでは、打撃フェースの前面壁が可変厚さを有する。より具体的には、米国特許第
5,318,300号は、可変厚さを有するゴルフクラブがどのようにしてクラッキングやバッキングに耐え、効率よく衝撃力をヘッドの頂部壁に伝達するかを検討している。
【0005】
米国特許第7,682,262号(Saracco等)は可変フェース厚さの上述の基本的な考え方を、「曲げ剛性」の考え方で拡張し、ここでは、打撃フェースにおける異なる曲げ剛性を、異なる材料、異なる厚さ、または異なる材料及び異なる厚さの組み合わせによって実現できる。
【0006】
ゴルフクラブヘッドの性能を改善しようとする試みにおける進展にもかかわらず、いずれの参考文献も、材料または厚さを変えることなしに、打撃フェースの性能を調整することができず、これらはいずれも、深刻でない程度の欠点を伴う。打撃フェースの材料を変化させるには、打撃フェース部分に結合プロセスが必要になり、ゴルフボールにより大きな衝撃力を受けたときには潜在的にクラックを生じる。打撃フェースの厚さを変える場合には、クラッキングの問題は除去されるけれども、打撃フェースの所定部分を厚くすることにより、打撃フェース部分に付加的な質量が必要となる。
【0007】
より重要なことに、先行文献のいずれも、打撃フェース部分のために使用される同一の材料のヤング率をゴルフクラブヘッドの性能に関して改善するために変更することが可能である点について認識していない。
【0008】
したがって、上述から、ヤング率を変えることによって、材料の固有の材料特性の利点を使用してゴルフクラブヘッドの打撃フェースの性能を変化させることができるようにする要請があることが理解できる。より具体的には、厚さを調整することと独立に、あるいは、それと組み合わせて打撃フェースのヤング率を変更できる、ゴルフクラブヘッドの打撃フェースがこの分野では望まれている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】この発明に従うゴルフクラブヘッドの斜視図である。
【
図2】この発明に従うゴルフクラブヘッドを、断面線A−A'を表せるように示す正面図である。
【
図3A】従来のフェースインサートの斜視図である。
【
図3B】
図3Aに示す従来のフェースインサートの断面図である。
【
図3C】
図3Bに示す断面領域に渡る従来のフェースインサートのヤング率のプロフィールを示す図である。
【
図3D】
図3Bに示す断面領域に渡る従来のフェースインサートの曲げ剛性のプロフィールを示す図である。
【
図4A】他の従来のフェースインサートの斜視図である。
【
図4B】
図4Aに示す従来のフェースインサートの断面図である。
【
図4C】
図4Bに示す断面領域に渡る従来のフェースインサートのヤング率のプロフィールを示す図である。
【
図4D】
図4Bに示す断面領域に渡る従来のフェースインサートの曲げ剛性のプロフィールを示す図である。
【
図5A】この発明の事例的な実施例に従うフェースインサートを金型とともに示す斜視図である。
【
図5C】
図5Bに示す断面領域に渡る従来のフェースインサートのヤング率のプロフィールを示す図である。
【
図5D】
図5Bに示す断面領域に渡る従来のフェースインサートの曲げ剛性のプロフィールを示す図である。
【
図6A】この発明の事例的な実施例に従ったフェースインサートに対して利用されるチタン合金の位相図である。
【
図6B】この発明の事例的な実施例に従ったフェースインサートに対して利用されるチタン合金の結晶構造の図である。
【
図7A】この発明の事例的な実施例に従うフェースカップを金型とともに示す斜視図である。
【
図7C】
図7Bに示す断面領域に渡る従来のフェースカップのヤング率のプロフィールを示す図である。
【
図7D】
図7Bに示す断面領域に渡る従来のフェースカップの曲げ剛性のプロフィールを示す図である。
【
図8A】この発明の事例的な実施例に従うフェーインサートを金型とともに示す斜視図である。
【
図8C】
図8Bに示す断面領域に渡る従来のフェースインサートのヤング率のプロフィールを示す図である。
【
図8D】
図8Bに示す断面領域に渡る従来のフェースインサートの曲げ剛性のプロフィールを示す図である。
【
図9A】この発明の事例的な実施例に従うフェーインサートを金型とともに示す斜視図である。
【
図9C】
図9Bに示す断面領域に渡る従来のフェースインサートのヤング率のプロフィールを示す図である。
【
図9D】
図9Bに示す断面領域に渡る従来のフェースインサートの曲げ剛性のプロフィールを示す図である。
【
図10A】この発明の事例的な実施例に従うフェーインサートを金型とともに示す斜視図である。
【
図10C】
図10Bに示す断面領域に渡る従来のフェースインサートのヤング率のプロフィールを示す図である。
【
図10D】
図10Bに示す断面領域に渡る従来のフェースインサートの曲げ剛性のプロフィールを示す図である。
【
図11A】この発明の事例的な実施例に従うフェースカップを金型とともに示す斜視図である。
【
図11C】
図11Bに示す断面領域に渡る従来のフェースカップのヤング率のプロフィールを示す図である。
【
図11D】
図11Bに示す断面領域に渡る従来のフェースカップの曲げ剛性のプロフィールを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明は、この発明を現状で最も良く考えられた態様で実現するものである。この記載は限定的な意図で把握されるのでなく、単に、この発明の全体的な原理を説明する目的でなされ、この発明の範囲は添付の特許請求の範囲の記載により最も良く規定される。
【0016】
以下の説明される種々の発明の特徴は、各々、相互に独立して採用でき、また他の特徴と組みあわされて採用できる。ただし、いずれの1つの発明の特徴も上述した問題のいずれかまたはすべてに対処するものでなくともよく、上述した問題の1つに対処するものであってもよい。さらに上述の問題の1つまたはそれ以上が以下で説明されるいずれの特徴によっても充分に対処されなくとも良い。
【0017】
添付図面の
図1は、この発明に従うゴルフクラブヘッド100の斜視図を示す。ゴルフクラブヘッド100は全般的には本体102の部分および打撃フェース104の部分を有して良く、打撃フェース104はさらにフェースインサート106を有して良い。ゴルフクラブヘッド100のフェースインサート106のヤング率は打撃フェース104の中心108から放射方向に変化して良い。この発明の代替的な実施例において、打撃フェース104はフェースインサート106の代わりにフェースカップ構造を採用してよく、ただし、ヤング率が打撃フェースの中心108から放射方向に変化する点は依然としてそのままである。
【0018】
打撃フェース104のフェースインサート106は、この事例的な実施例で検討されるように、全般的には、βリッチのα+βチタン材料、例えばSP−700から成っている。この発明で予定されるフェースインサート106のヤング率の変化は、加熱処理およびクエンチング処理を通じたαおよびβ相の間のチタンの相変化により実現されるので、βリッチチタン材料が好ましい。好ましい材料であるSP−700に関する多くの情報は「高成型性SP700チタン合金の利点およびその応用」という題名のJFE技術報告(2005年3月)に見いだすことができ、その開示内容は参照してここに組み入れる。ただし、全般的にニアーβチタン合金として説明されるような挙動を潜在的に実現できる多くの他の合金が存在する。αまたはβとしてのチタン合金に術語体系(命名)は、どの相が室温において合金中に優勢に存在するかに基づく。予期されるように、αチタン合金は室温でα相が優勢である。逆に、β合金は室温でβ相が優勢である。そして、α−β合金は双方の相が顕著な量だけ存在する。重要なほとんどのチタン合金では、熱力学の原則にしたがって、室温ではβ相は平衡な相ではなく、それは、実際上、α相である。β相が室温で残っている理由は、βからαへの変換が、急激な冷却、すなわちクエンチングにより阻止されるからである。Mo、V、Cr、Fe、Ni、Co、Mn、Nb、Ta、およびWのような所定の元素は、β相を安定化させる傾向があり、したがって、チタンとそのような元素とを合金化することにより、冷却をゆっくりと行いつつ、それでいてβ相を残すことができる。顕著な量のβ相を含むチタン合金を高温度に加熱したとき、β相は平衡α相に変換する。そして、多くのチタン合金においてβ相は準安定であると考えられる。β相が平衡相になるような程度にチタンを合金化することができ、そのような合金は高温に加熱してもαには変換できない。この範疇に属する合金はこの発明の妥当するものではない。β相の変換および安定性に関する上述の検討は「モリブデン等価量」(Molybdenum Equivalency)と呼ばれるパラメータにより記述でき、これは以下の式(1)にまとめられる。
Mo−Eq=%Mo+0.2・%Ta+0.28・Nb+0.4・%W+0.67・%V+1.25・%Cr+1.25・%Ni+1.7・%Mn+1.7・%Co+2.5・%Fe 式(1)
ここで%は合金中の元素の重量%を示す。
【0019】
すべてのβ相が室温で残っているためには、Mo−Eqが約10より大きくなければならない。Mo−Eqが10に近いけれども10を越えないときには、チタン合金はニアーβと考えられ、ただし、この検討の目的においてニアーβチタン合金の明瞭な定義はなく、約10より大きなMo−Eqはβリッチ合金と考えられる。この発明では、Mo−Eqが4〜9.5の範囲の合金が、上述の低ヤング率を実現するために金型クエンチングを行うのに適していると仮定している。ヤング率は合金元素に左右され、厳密にはMo−Eqに依存しない点に留意されたい。例えば、チタンを9wt%のMoまたは3.6w%のFeで合金化することによりMo−Eqの9値を実現することが可能である。しかしながら、得られたヤング率は双方の合金で同一ではない。
【0020】
中心から放射方向に変化するフェースインサート106のヤング率は、打撃フェースの中心108から外れた各セクションおよびすべてのセクションで異なる必要はない。この発明でそのように呼ばれる、ヤング率の放射方向の変化は、むしろ、異なる位置においてフェースインサート106のヤング率が単に放射方向で異なると代替的に説明されて良い。この実施例で説明されるように、フェースインサート106は、全般的にはSP−700チタンのような単一の合金から成って良いけれども、αおよびβ相の変換を可能にする他の合金も、この発明の範囲および内容から逸脱することなく、採用されてもよい。
【0021】
添付図面の
図2は、この発明に従うゴルフクラブヘッド200の正面図を示し、また、断面線A−A'を示す。
図2は、フェースインサート206を具備する打撃フェース204を示すとともに、中央ゾーン201、中間ゾーン203、および外側ゾーン205も示す。
図2においてここに示される中央ゾーン201、中間ゾーン203、および外側ゾーン205の位置および寸法は、厳密ではなく、スケールにあわせたものではない。この図は、単に、各ゾーン相互の関係を説明するためのものであり、打撃フェースのヤング率の変化に関連して各ゾーンを参照する。
【0022】
ゴルフクラブヘッドの打撃フェース204が中央ゾーン201、中間ゾーン203、および外側ゾーン205へと放射方向にヤング率を変化させる必要があることを理解するために、ゴルフクラブの従来の打撃フェースの進展についてその背景を簡単に検討することは有意義である。添付図面の
図3A、
図3B、
図3C、および
図3Dは、これを行うために、従来のフェースインサート306を、水平断面を横切る、そのヤング率および曲げ剛性(FS)のプロフィールとともに示す。添付図面の
図3Aは、フェースインサート306の全体に渡って一定の厚さを伴う従来のゴルフクラブヘッドに従うフェースインサート306に斜視図を示す。
図3Bは、
図2において断面線A−A'で示すような、打撃フェース204のヒールからトウの方向に水平にフェース中心208を通り抜けるように採用したフェースインサート306の断面図を示す。先の述べたように、従来の実施例においてフェースインサート306の厚さは全般的に、約2.5mmである一定の厚さd1であって良い。ゴルフボールとの衝撃時の反発係数を増大させるために打撃フェースのフェースインサート306は柔軟であることが好ましいので、低ヤング率のフェースで降伏強さが小さく引っ張り強さが大きいフェースを具備することが一般的に望まれる。
図3Cは、この従来例のフェースインサートのヤング率が、フェースインサート306の幅全体に渡って約110GPaで一定であることを示す。最後に、添付図面の
図3Dは、
図3Bにおいて示される断面に渡る、フェースインサート306の曲げ剛性のグラフを示す。曲げ剛性の概念は式(2)で示す以下の式で定義される。
FS=E×t
3 式(2)
ここでE=材料のヤング率
t=材料の厚さ
ゴルフクラブの打撃フェースの曲げ剛性を決定する概念は、本出願人の出願に係る米国特許第6,605,007号(Bissonette等)に開示されており、その内容は参照してここに組み入れる。
【0023】
材料のヤング率の検討から離れる前に、ゴルフクラブヘッドの打撃フェースのような材料のヤング率は一般的には非破壊超音波試験装置を利用して測定して良いことに留意することは意義のあることであり、材料のヤング率はそのポアソン比に関係し、これは縦および剪断波音速の関数である。Okympus Thickness Gauges 38DL Plus、45MG、Single Element Software付き、またはModel 35 DLのような多くの装置をすべて利用できる。
代替的には、Olympus Flaw Detectors、EPOCHシリーズインスツルメントのような速度測定機能付き、さらには、Model 5072PRまたは5077PRのような、Olympus Pulse/Receiversを、すべて、この発明の範囲および内容から逸脱しない範囲で、使用できる。
【0024】
ここで、フェースインサート306のヤング率がほぼ110GPaであり、フェースインサートの厚さが約2.5mmであるとすると、この従来のフェースインサートの曲げ剛性はほぼ1700kN−mmと一定に止まる。
【0025】
フェースインサート306が大きな面積に渡って反発係数を改善する性能を決定するのに有益な1つの要素は、フェースインサート306の曲げ剛性比を計算することであり、ここで曲げ剛性比は以下の式(3)により定義される。
曲げ剛性比=(ピーク曲げ剛性)/(スルー曲げ剛性) 式(3)
ここで、従来の実施例においては、従来のフェースインサート306は全体で曲げ剛性は断面全体に渡り一定に止まるので、曲げ剛性比は1である。
【0026】
添付図面の
図4A〜
図4Dは、
図3に示す従来のフェースインサート306に対して、可変曲げ剛性のフェースインサートを形成することにより、改良を加えることを意図した、異なる従来のフェースインサート406を示す。この従来のフェースインサート406は、フェースインサート406の厚さを変化させるという慣用的な技法を採用して曲げ剛性の変化を実現する。
図4Bにおいて、
図2において断面線A−A'によって示されるような、打撃フェースに水平に横切って採用された、フェースインサート406の断面図は、フェースインサート406の厚さの変化をより充分に示す。ここで、フェースインサート406は、中央ゾーンで厚く、中間および外側ゾーンで薄い。より具体的には、外側ゾーンの厚さは第1の厚さd1であり、ほぼ2.5mmであって良く、他方、中央ゾーンの厚さは第2の厚さd2であり、ほぼ3.5mmであって良い。
図4Cは、この従来のフェースインサート406が、断面全体に渡って、ほぼ110GPaの一体のヤング率を有し、
これが、
図4Dに示す曲げ剛性プロフィールを実現する。
図4Dに示される可変厚さのフェースインサート406の曲げ剛性プロフィールは、外側ゾーンでほぼ1700kN−mmの曲げ剛性を伴い、徐々に、中央ゾーンで約4700kN−mmまで増大し、その後、漸減して他方の外側ゾーンでほぼ1700kN−mmに戻って良い。事例的な実施例においては、フェースインサート406の曲げ剛性の変化は厚さ「t」を変化させて実現され、他方材料のヤング率は一定であることに留意することは有意義である。
【0027】
この従来のフェースインサート406では、フェース厚さを可変させることにより、曲げ剛性比が2.75になり、これは、中央ゾーン401外側ゾーン405に対してほぼ2.75倍だけより柔軟であることを示し、なぜならば、ピーク曲げ剛性およびスルー(through)曲げ剛性が中央ゾーン401および外側ゾーン405でそれぞれ発生するからである。
【0028】
図5A〜
図5Dは、金型510を用いるこの発明の事例的な実施例に従うフェースインサート506を示し、金型510は、フェースインサート506を急速に冷却するのを支援して、先に検討した、フェースインサート506の相変移を助長するものである。フェースインサート506の慣用的なクエンチングプロセスは一般的には空気を利用した対流冷却であるけれども、この実施例は、金型510を直接にフェースインサート506に接触させるように配置することにより伝導冷却を採用して、急速クエンチングを実現する。この具体的なチタン材料の相変化は、熱処理後にβ相チタンが残るように働き、これが、材料のヤング率を変化させる。事例的な実施例において、ゴルフクラブヘッドの打撃フェースのフェースインサート506は、全般的には、まずフェースインサートの温度をβトランサス温度より大きくし、その後、フェースインサート506のすべてまたは一部を選択的にクエンチングしてβチタン体心立方結晶構造を残す。この発明の方法によって、チタン材料の相の変化が実現され、材料のヤング率が低減できる。
【0029】
1つの好ましい実施例において、SP−700チタンのフェースインサート506は、全般的には、βトランサス温度より50°C低い温度、約845°Cへと6分の時間間隔だけ、加熱されて良い。加熱フェーズに続いて、金型510が、約5秒より長い、または、より好ましくは、約10秒より長い、最も好ましくは約15秒より長い期間だけ、フェースインサート506に案内される。金型510は、鍛造プロセスの場合と同様にフェースインサート506に圧力を加えることによりフェースインサート506の幾何形状を形成するのを支援するので、この金型510は全般的にはフェースインサート506の全体の幾何形状と鏡面をなす内部幾何形状を具備して良い。この発明の事例的な実施例において、金型510の温度は制御されないけれども、より精度の高い実施例においては、金型510の温度は、所望の温度に維持されて良く、これはこの発明の範囲および内容から逸脱しない。例えば、この発明の代替的な実施例において、フェースインサート506は、約845°Cの、先に検討した温度へと加熱され、つぎに、金型510によりクエンチングされ、金型510の温度は約250°C未満、より好ましくは、約200°C未満、最も好ましくは、約150°C未満の温度に維持され、これはこの発明の範囲および内容から逸脱しない。
【0030】
この発明の当該事例的な実施例に示される金型510は、バルク伝導率が約16W/mKの炭素鋼タイプの材料から製造され、フェースインサート506の熱を金型510へと伝導させることができる。ただし、多くの他の材料、例えば、バルク伝導率が約55W/mKの鉄、バルク伝導率が約112W/mKの亜鉛、バルク伝導率が約167W/mKのアルミニウム、バルク伝導率が約388W/mKの銅、バルク伝導率が約418W/mKの銀さえ、この発明の範囲および内容から逸脱しない。実際、金型510の材料のバルク伝導率は全般的には約10W/mKより大きく、より好ましくは約15W/mKより大きく、最も好ましくは約20W/mKより大きくて良い。
【0031】
図5Bはこの発明のフェースインサート506の断面図を示す。ここに理解されるように、フェースインサートの断面図は、
図5Bに示すように、従来のフェースインサート406と大きく変わらず、厚さは類似であり、d1は約2.5mmであり、d2は約3.5mmである。しかしながら、
図5Cに示されるフェースインサート506のヤング率を厳密に調べると、この発明は従来例と異なることがわかる。より具体的には、
図5Cに示すように、先に検討して熱処理によって、フェースインサート506のヤング率が約110GPaから顕著に減少して約90GPa未満、より好ましくは約85MPa未満、最も好ましくは約80MPa未満である。ヤング率のこのような減少によって、中央ゾーンで約3900kN−mm未満で、外側領域で約1500kN−mm未満の曲げ弾性率、より好ましくは、中央ゾーンで約3650kN−mm未満で、外側領域で約1350kN−mm未満の曲げ弾性率、最も好ましくは、中央ゾーンで約3450kN−mm未満で、外側領域で約1250kN−mm未満の曲げ弾性率が実現され、これが
図5Dに示される。
【0032】
ここで、この発明の当該事例的な実施例において、フェースインサート506の曲げ剛性比は全般的には約2.60より大きく、より好ましくは約2.65より大きく、最も好ましくは約2.70より大きく、これはこの発明の範囲および内容から逸脱しない。ここで、ピーク曲げ剛性は中央ゾーン501で起こり、スルー曲げ剛性は外側ゾーン505で起こることに留意されたい。
【0033】
図6Aおよび
図6Bは、チタン合金内のαおよびβ相の相互作用についてのより明瞭に説明する。
図6Aは、温度および組成物の関数としてαおよびベータ相の関係を示す当該チタンの平衡相ダイアグラムである。
図6Aから理解できるように、α−βチタン合金は一般的に、低温度では、より多くの六方稠密充填(HCP)α相を具備して良い。合金が加熱されていくと、αソルバス温度に到達して、α相がβ相に変移し始める。βトランサス温度で、すべてのα相がβに変移する。
図6Bは、β相BCC構造およびα相HCP構造の間の相違を表す、より厳密な図形表示であり、
結晶構造の視覚的に表示する。
図6Aから理解できるように、α−ソルバスおよびβ−トランサスの間の任意の温度において、合金はαおよびβ相の混合物である。これらの相の相対量は、合金の組成および温度によって決定され、温度が高くなるとβの量が多くなる。実験によれば、α+β相フィールドからのクエンチングの方がβ−トランサスからのクエンチングより良いことがわかった。双方の場合でヤング率は顕著に類似している。したがって、β−トランサス温度より上の温度からクエンチングする利点はない。
【0034】
図7A〜
図7Dはこの発明の代替的な実施例を示し、ここではフェースカップ706がフェースインサート506(
図5Aに示される)に代えて示される。この実施例において、金型710が先に検討したものと類似の態様で使用されてフェースカップ706を冷却し、先に検討したヤング率の変化を実現する。上述と同一の方法を使用して、フェースカップ706は、先に検討したものと同様のヤング率及び曲げ剛性を実現して良い。より具体的には、
図7Bは、フェースカップ706の断面図を示し、フェースカップ706はボール打撃領域で類似の厚さを伴い、d1が約2.5mmで、d2が約3.5mmである。
図7Cにおいて、フェースカップ7066のヤング率が、顕著に減少して約90GPa未満、より好ましくは約85MPa未満、最も好ましくは約80MPa未満であることに留意されたい。ヤング率のこのような減少によって、中央ゾーンで約3900kN−mm未満で、外側領域で約1500kN−mm未満の曲げ剛性、より好ましくは、中央ゾーンで約3650kN−mm未満で、外側領域で約1350kN−mm未満の曲げ剛性、最も好ましくは、中央ゾーンで約3450kN−mm未満で、外側領域で約1250kN−mm未満の曲げ弾剛性が実現され、これが
図5Dに示される。
【0035】
図5に示されるフェースインサート506と同様に、フェースカップ706の曲げ剛性比は全般的には約2.60より大きく、より好ましくは約2.65より大きく、最も好ましくは約2.70より大きく、これはこの発明の範囲および内容から逸脱しない。
【0036】
図8A〜
図8Dはこの発明の代替的な実施例を示し、ここでは、金型810は開口812を具備して良く、フェースインサート806の所望の曲げ剛性を
さらに操作できる。ここで、開口812によって、中央部分801の高曲げ剛性を維持しつつ、中間ゾーン803および外側ゾーン805の曲げ剛性をクエンチングプロセスによりヤング率の減少に基づいて小さくすることができる。この効果を図説するために、
図8B〜
図8Dを以下に参照する。
図8Bは、フェースインサート806が、先の実施例のすべてと顕著に類似
な幾何形状を維持するものの、フェースインサート806のヤング率のプロフィールを細かに見ると、劇的な変化があり、断面に渡ってヤング率が変化することがわかる。より具体的には、中央部分801のヤング率は全般的には約110GPaより大きくて良いけれども、他方、中間および外側ゾーン803および805のヤング率は全般的には約90GPa未満、より好ましくは約85MPa未満、最も好ましくは約80MPa未満であって良い。このようなヤング率のプロフィールによって、中央ゾーンで約4700kN−mmより大きい曲げ剛性が実現され、他方約1500kN−mm未満の曲げ剛性、より好ましくは、より好ましくは、約1350kN−mm未満の曲げ剛性、最も好ましくは、約1250kN−mm未満の曲げ弾剛性が実現される。
【0037】
この事例的な実施例において、ヤング率の最大変化は、約20GPaより大きく、より好ましくは、約25GPaより大きく、最も好ましくは、約30GPaより大きい。さらに、この実施例においては、曲げ剛性はフェースインサート806のヤング率の変化だけでなく、厚さの変化の双方の利点を採用しており、約3.30より大きな、より好ましくは、約3.50より大きな、最も好ましくは、約4.0より大きな曲げ剛性比を達成する。
【0038】
図9A〜
図9Dは、この発明の他の代替的な実施例を示し、ここでは、金型910は、先の実施例と類似の開口912を具備してよいけれども、金型910の境界はフェースインサート906の境界を越えず、ドーナツ形状をしている。この具体的なドーナツ形状の金型は、厚さを可変させることのないフェースインサートに採用してフェースの多くの部分に渡ってボール速度を増大させる効果をシミュレーションすることができる。この実施例を理解するために、
図9Bはフェースインサート906の断面を示し、これは全体に渡って一定の厚さd1を有する。1実施例において、厚さd1は全般的には約2.5mmである。
図9Cは代替的な金型910のフェースインサート906のヤング率に対する効果を示し、これは、金型910がフェースインサート906に接触する部分では約70GPaの小さなヤング率を実現し、他方、伝導性熱転送が起こらなかった部分では約110GPaのヤング率を維持している。最後に、
図9Dに示すように、この代替的な実施例の曲げ剛性は中央ゾーンおよび外側ゾーンの近くでピークとなり、ほぼ1700kN−mmであり、他方、中間ゾーンの曲げ剛性は約1250kN−mm未満である。
【0039】
究極的には、この発明の実施例に従うフェースインサート906の曲げ剛性比は全般的には約1.36であってよい。この実施例において、ピークの曲げ剛性はゴルフクラブの中心で生じ、他方、スルー曲げ剛性は中間ゾーンの近くで生じる。
【0040】
添付図面の
図10A〜
図10Dは、この発明のさらに他の代替的な実施例を示し、ここでは、開口1012を具備するドーナツ形状の金型1010は、可変厚さのフェースインサート1006と組み合わされて使用できる。
図10Bに示されるフェースインサート1006の断面形状から理解できるように、フェースインサート1006のヤング率は、全般的には、金型1010がフェースインサート1006と接触する部分の約70GPaから、伝導性熱転送が起こらない部分の約110GPaへと変化し、これは
図10Cに示す。同様に、
図10Dは、断面に渡るフェースインサート1006の曲げ剛性を示し、これは、ピーク曲げ剛性が約4700kN−mmであり、スルー曲げ剛性が約1200kN−mmであり、曲げ剛性比は約4.0になる。
【0041】
添付図面の
図11A〜
図11Dはこの発明の代替的な実施例を示し、この図において、フェースカップ1106が頂部金型1110および底部金型1120を採用して
代替的なヤング率プロフィールを形成する。この実施例で示すように、頂部金型1110は全体的にリング形状であって良く、フェースカップ1106の周囲のヤング率を調整可能である。さらに、底部金型1120はカップ型の幾何形状を採用し、中心に開口を具備してフェースカップ1106の周囲の近くにクエンチングプロセスを集中させる。得られたフェースカップは、
図11Bの断面図から理解できるように、厚さに関しては先のフェースカップと類似の外観であり、他方、ヤング率のプロフィールは、
図11Cに示すように劇的に異なっている。より具体的には、フェースカップ1106の周囲のヤング率は約70GPa未満であって良く、他方、フェースカップの中央のヤング率は約110GPaより大きいままである。最後に、
図11Dはフェースカップ1106の曲げ剛性を示し、これによれば、フェースカップ1106の極端周囲の曲げ剛性は全般的には約1200kN−mmであり、他方、中間部分の曲げ剛性は全般的には約1800kN−mm未満であり、中央部分の曲げ剛性は約4700kN−mmより大きく、その曲げ剛性比は約4.0である。
【0042】
先の検討は金型クエンチングプロセスをゴルフボールの打撃フェースに適用して組み込むことに関するけれども、同様のプロセスを、ゴルフクラブヘッドの他の部分、例えば、クラウン、ソール、ホーゼル、さらにはスカートにも提供でき、これらはすべてこの発明の範囲および内容から逸脱しない。さらに、先に検討した同様
の金型クエンチングプロセスは、メタルウッドタイプのゴルフクラブに限定され
ず、アイアンタイプのゴルフクラブにも及び、この発明の範囲および内容から逸脱しない。
【0043】
作業例における他の事柄、または、とくに明言しなくとも、すべての数値範囲、量、値、百分率、例えば材料の量、慣性モーメント、重心位置、ロフト、ドラフト角、種々の性能比についてのこれら、および明細書中の他のものは、たとえ、その値、量または範囲に関連して用語「約」が表示されていなくとも、「約」がその前に配置されているように読むことができる。したがって、そうでないと示されていない限り、明細書および特許請求の範囲に表される数のパラメータは近似的であり、これは、この発明により得られることが企図される所望の特性に応じて変化する。最低限でも、もちろん均等論の適用を制約するものではないが、各数のパラメータは記録されている有効数字の数や通常の丸め処理に照らして解釈されるべきである。
【0044】
この発明の広範な範囲を示す数的範囲およびパラメータは近似的であるけれども、具体例において示された数値は可能な限り正確に記録した。任意の数値は、それでも、それぞれのテスト計測に見いだされる標準偏差に必然的に起因する誤差を含む。さらに、種々のスコープの数値範囲が示される場合には、例示された値を含めた値の任意の組み合わせが利用できると理解されたい。
【0045】
もちろん、先のものはこの発明の事例の実施例に関するものであり、特許請求の範囲に記載されたこの発明の趣旨および範囲から逸脱しない範囲で修正を行うことができることに留意されたい。
なお、以下に、ここで説明した技術的特徴を列挙する。
[技術的特徴1]
打撃フェース部分と、
上記打撃フェース部分の後方に結合された後方部分とを有し、
上記打撃フェース部分は、モリブデン等価量が4.0および9.75の間のα−βチタンから製造され、
上記打撃フェース部分の少なくとも一部のヤング率が約90GPa未満であることを特徴とするゴルフクラブヘッド。
[技術的特徴2]
上記打撃フェースの上記ヤング率は約85GPa未満である技術的特徴1記載のゴルフクラブヘッド。
[技術的特徴3]
上記打撃フェースの上記ヤング率は約80GPa未満である技術的特徴2記載のゴルフクラブヘッド。
[技術的特徴4]
上記α−βチタン合金のモリブデン等価量が約9.5未満である技術的特徴1記載のゴルフクラブヘッド。
[技術的特徴5]
上記打撃フェース部分は、少なくとも1つの断面領域に渡って可変ヤング率を具備する技術的特徴1記載のゴルフクラブヘッド。
[技術的特徴6]
上記打撃フェース部分は、ヤング率の最大変化が約20GPaより大きな打撃フェースを具備する技術的特徴5記載のゴルフクラブヘッド。
[技術的特徴7]
上記打撃フェース部分は、ヤング率の最大変化が約25GPaより大きな打撃フェースを具備する技術的特徴6記載のゴルフクラブヘッド。
[技術的特徴8]
上記打撃フェース部分は、ヤング率の最大変化が約30GPaより大きな打撃フェースを具備する技術的特徴7記載のゴルフクラブヘッド。
[技術的特徴9]
上記打撃フェース部分の曲げ剛性比が約2.6より大きく、
上記曲げ剛性比は、上記打撃フェース部分のピーク曲げ剛性を上記打撃フェース部分のスルー曲げ剛性で割ったものとして定義される技術的特徴5記載のゴルフクラブヘッド。
[技術的特徴10]
上記打撃フェース部分の曲げ剛性比は約2.65より大きい技術的特徴9記載のサインゴルフクラブヘッド。
[技術的特徴11]
上記打撃フェース部分の曲げ剛性比は約4.0より大きい技術的特徴10記載のサインゴルフクラブヘッド。
[技術的特徴12]
ゴルフクラブヘッドを製造する方法において、
α−βチタン合金から製造された打撃フェース部分を、上記打撃フェース部分を製造するのに使用された材料のβ−トランサス温度より25°〜100°C低い温度まで加熱するステップと、
約15秒より長い時間だけ、金型を上記打撃フェース部分に接触させたままにして上記金型を用いた伝導により上記打撃フェース部分をクエンチングするステップとを有し、
上記方法は、体心稠密β構造の1つの相を少なくとも有する打撃フェース部分を形成し、
上記打撃フェース部分の少なくとも一部のヤング率が約90GPa未満であることを特徴とするゴルフクラブヘッド製造方法。
[技術的特徴13]
上記打撃フェースの上記ヤング率は約85GPa未満である技術的特徴12記載のゴルフクラブヘッド製造方法。
[技術的特徴14]
上記打撃フェースの上記ヤング率は約80GPa未満である技術的特徴13記載のゴルフクラブヘッド製造方法。
[技術的特徴15]
上記金型は上記打撃フェース部分の後方部分全体と完全に係合する技術的特徴12記載のゴルフクラブヘッド製造方法。
[技術的特徴16]
上記金型は上記打撃フェース部分の後方部分全体と部分的に係合する技術的特徴12記載のゴルフクラブヘッド製造方法。
[技術的特徴17]
上記金型は約250°C未満の温度に維持される技術的特徴12記載のゴルフクラブヘッド製造方法。
[技術的特徴18]
上記金型のバルク伝導率は約15W/mKより大きい技術的特徴12記載のゴルフクラブヘッド製造方法。
[技術的特徴19]
上記金型のバルク伝導率は約15W/mKより大きい技術的特徴18記載のゴルフクラブヘッド製造方法。
[技術的特徴20]
上記金型のバルク伝導率は約20W/mKより大きい技術的特徴19記載のゴルフクラブヘッド製造方法。