(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記火災発生検出手段は、前記撮像手段が撮像した前記動画を画像認識することによって前記消火対象領域に発生した火熱を検出する火熱検出部と、予め設定した除外領域のデータを記憶した除外領域記憶部と、前記火熱検出部が検出した前記火熱が、前記除外領域記憶部に記憶された前記除外領域を越えて生じている場合に前記消火対象領域に火災が発生したと判断する判断部とから成ることを特徴とする請求項1に記載の消火システム。
前記消火装置を複数備え、前記各消火装置の前記噴射口は、前記家屋内に設定された複数の前記消火対象領域に対応して向けられたことを特徴とする請求項1又は2に記載の消火システム。
前記消火装置は複数の前記噴射口を有するとともに、前記複数の噴射口は前記家屋内に設定された複数の前記消火対象領域に対応して向けられており、前記消火装置作動手段は前記複数の噴射口を選択的に開閉する複数の開閉弁を備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の消火システム。
前記携帯端末は、前記各消火対象領域に対応した前記消火指令信号を前記消火装置作動手段に送信し、前記消火装置作動手段は、前記携帯端末から送信された前記消火指令信号に対応する前記消火対象領域に前記消火剤が噴射されるように前記消火装置を作動させることを特徴とする請求項3又は4に記載の消火システム。
前記消火装置作動手段は、前記火災発生検出手段が火災の発生を検出してから所定時間が経過した場合に前記消火対象領域に前記消火剤が噴射されるように前記消火装置を作動させることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の消火システム。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態における消火システム1の構成を示している。
図1中に示す家屋2は消火システム1が適用される対象であり、要介護者10が起居する部屋3Aと、これに隣接するもうひとつの部屋3Bを有している。部屋3Aは壁4A,4B,4C,4Dによって囲まれており、壁4Aが隣の部屋3Bとの仕切りとなっている。
【0011】
部屋3A内には要介護者10が静養するベッド11の他、ファックス付き電話機12、テレビ13、石油ストーブ14、仏壇15などが設置されている。ファックス付き電話機12やテレビ13などの電化製品の電源コードは電源タップ16に接続されている(
図2及び
図3も参照)。石油ストーブ14の燃焼筒14a、仏壇15に供えられたロウソク15a、電源タップ16などは火災の火元となり得る。
【0012】
消火システム1は、部屋3A内の上記火元となり得る箇所が火元となって火災が発生した場合にこれを検出してその初期消火を行うものであり、3つの消火装置20(第1の消火装置20A、第2の消火装置20B及び第3の消火装置20C)、部屋3A内を動画で撮像する撮像手段としての赤外線カメラ21と可視光カメラ22、ホームサーバ23及び画像表示部を備えた携帯端末24(例えばスマートフォン)から構成される。携帯端末24は、ここでは要介護者10の家族や警備会社の職員等の特定の者(特定者と称する)が所持するものに限定される。以下の説明で携帯端末24とは、特定者が所持する携帯端末24を意味するものとする。
【0013】
図4において、3つの消火装置20は同一の構造を有しており、それぞれ消火器31及びその消火器31の操作機構32を備えている。消火器31は消火剤33が加圧封入された本体部31aから噴射管31bが延びてその先端にノズル31cが取り付けられた構成を有し、本体部31aに設けられたレバー31dを押し下げ(或いは引き下げ)操作するとノズル31cの先端の噴射口31eから消火剤33が噴射する構成となっている。各消火装置20はその本体部31aが壁4A又は壁4Cに固定されたブラケット34にバンド35を用いて着脱自在に取り付けられている。
【0014】
各消火装置20が備える消火器31の噴射管31bは形状保持チューブから成っており、噴射口31eを予め設定した消火対象領域に向くようにセットすることができる。本実施形態では、ファックス付き電話機12、テレビ13、電源タップ16を含む領域を第1の消火対象領域R1として設定し、石油ストーブ14を含む領域を第2の消火対象領域R2として設定し、仏壇15を含む領域を第3の消火対象領域R3として設定している。そして、第1の消火装置20Aが備える消火器31の噴射口31eを第1の消火対象領域をR1向けており、第2の消火装置20Bが備える消火器31の噴射口31eは第2の消火対象領域R2を向けており、第3の消火装置20Cが備える消火器31の噴射口31eを第3の消火対象領域R3に向けている。このように消火システム1は消火装置20を複数備えており、各消火装置20の噴射口31eは、部屋3A内(すなわち家屋2内)に設定された複数の消火対象領域(第1の消火対象領域R1、第2の消火対象領域R2及び第3の消火対象領域R3)に対応して向けられたものとなっている。
【0015】
図4において、消火器31の操作機構32は前述のブラケット34に固定して設けられており、遠隔操作によって消火器31のレバー31dを引き下げ操作してその消火器31の噴射口31eから消火剤33を噴射させる。具体的には、操作機構32は、ブラケット34に固定された筐体32aに収納されたモータ32bと、消火器31のレバー31dに一端が取り付けられたワイヤ32cと、無線通信機能を有してモータ32bを駆動する通信駆動部32dを有して成り、通信駆動部32dを通じて遠隔操作によりモータ32bを駆動し、ワイヤ32cを巻き取ることによってレバー31dを引き下げる構成となっている(
図4中に示す矢印A)。モータ32bをシリンダに代えるとともにワイヤ32cをロッドに代え、通信駆動部32dを通じて遠隔操作によりシリンダを駆動し、ロッドを下動させることによってレバー31dを引き下げる構成としてもよい。
【0016】
図1において、ホームサーバ23は部屋3B内(部屋3A内であってもよい)に設置されており、赤外線カメラ21と可視光カメラ22はLAN41(Local Area Network)を介してホームサーバ23に繋がっている。ホームサーバ23はルータ42を通じてインターネット43に繋がっており、更にインターネット43を通じて携帯電話通信網44に繋がっている(
図5も参照)。また、ホームサーバ23には、LAN41を介して各消火装置20の通信駆動部32dが繋がっている(
図5)。このためホームサーバ23から各消火装置20の通信駆動部32dに信号を送ることによって、その消火装置20が備える消火器31のレバー31dを操作することができる。なお、LAN41は有線でも無線でもよく、有線と無線を混在させてもよい。
【0017】
図2において、赤外線カメラ21及び可視光カメラ22は壁4Bに並べて設けられている。赤外線カメラ21は、3つの消火対象領域(第1の消火対象領域R1、第2の消火対象領域R2及び第3の消火対象領域R3)が全て入る視野で部屋3Aの赤外線画像を撮像(動画撮像)する。また、可視光カメラ22は、赤外線カメラ21とほぼ同じ視野で部屋3Aの可視光画像を撮像(動画撮像)する。赤外線カメラ21が撮像する動画と可視光カメラ22が撮像する動画はともにホームサーバ23に送信される。
【0018】
図1において、携帯端末24は、画像表示部と入力部とを兼ね備えたタッチパネル24aと、携帯電話通信網44との間で無線通信するための無線通信部24bを備えている。前述のようにホームサーバ23がインターネット43を介して携帯電話通信網44に繋がっているため、携帯端末24は携帯電話通信網44及びインターネット43を通じてホームサーバ23との間で通信することができる。
【0019】
図5において、ホームサーバ23は火熱検出部23a(火熱検出手段)、除外領域記憶部23b、判断部23c、メールサーバ部23d、ウェブサーバ部23e及び操作指令部23fを備えている。火熱検出部23aは、赤外線カメラ21が動画撮像した部屋3Aの赤外線画像を画像認識し、その赤外線画像の中に、予め定めた所定の温度よりも高い領域(高温領域)を検知した場合にはその高温領域を火熱として検出する。そして、その検出した火熱が予め定めた除外領域(後述)を越えて生じている場合には、その火熱は火災を起こした火熱であると判断する。すなわち本実施形態において、火熱検出部23aは、撮像手段である赤外線カメラ21が撮像した動画を画像認識することによって消火対象領域に発生した火熱を検出するものとなっている。
【0020】
上記除外領域とは、赤外線カメラ21によって撮像された画像を画像認識して得られる高温領域から、火災によって生じた高温領域でないことが分かっている領域を除くために予め指定しておく領域である。ホームサーバ23は、携帯端末24から送信される要求に応じて、可視光カメラ22から送られてくる動画を携帯端末24に送信し、携帯端末24はその動画をタッチパネル24aに表示する(
図6)。特定者等は携帯端末24のタッチパネル24aに表示される可視光カメラ22が撮像する動画を見ながら所定の操作を行って除外領域を指定する。
【0021】
図6において、除外領域を設定する者(例えば特定者のうちの一人)は、携帯端末24のタッチパネル24aに表示される画像に基づいて、第2の消火対象領域R2内の石油ストーブ14の燃焼筒14aの近傍の領域を除外領域S1として指定し、第3の消火対象領域R3内の仏壇15に供えられたロウソク15aの上下方向の長さ方向領域を含む領域を除外領域S2として指定する。ここで指定された除外領域S1,S2は、除外領域記憶部23bに記憶される。
【0022】
判断部23cは、火熱検出部23aが検出した火熱が、除外領域記憶部23bに記憶された除外領域を越えて生じている場合に消火対象領域に火災が発生したと判断する。このように、ホームサーバ23が備える火熱検出部23a、除外領域記憶部23b及び判断部23cは、撮像手段である赤外線カメラ21が撮像した動画を画像認識し、消火対象領域に火災が発生したことを検出する火災発生検出手段となっている。この火災発生検出手段によれば、部屋3A内に発生した火熱のうち、火災によらないものを火災によるもの判断してしまう誤りを防止して、火災の発生を確実に検出することができる。
【0023】
上記除外領域の指定は、石油ストーブ14の配置を換えた場合などには、改めて設定し直すことになる。除外領域の指定は、赤外線カメラ21が撮像した動画に基づいて行うのであってもよい。また、可視光カメラ22の撮像画像(或いは赤外線カメラ21の撮像画像)を映し出すことができるディスプレイをホームサーバ23に接続し、そのディスプレイに表示される画像に対してマウスの操作により除外領域を指定するようになっていてもよい。
【0024】
ホームサーバ23のメールサーバ部23dは、消火対象領域内に火災が発生したことが上記火災発生検出手段によって検出された場合には、携帯端末24に、部屋3Aに火災が発生した旨を内容とする電子メール(火災発生通知メールと称する)を送信する。
【0025】
図7は、メールサーバ部23dから携帯端末24に送信された火災発生通知メールの一例を示している。
図7に示す例では、携帯端末24のタッチパネル24aに火災発生通知メールの送信日時と部屋3Aに火熱を検出した旨を通知する文面が表示されるほか、URL表示欄24c(Uniform Resource Locator)に、ホームサーバ23のウェブサーバ部23eにアクセスするためのURLが表示される。火災発生通知メールを受け取った特定者がURL表示欄24cをタッチすることで携帯端末24はウェブサーバ部23eにアクセスし、可視光カメラ22によって撮像される部屋3Aの動画の送信を要求する送信要求信号が、携帯端末24からウェブサーバ部23eに送信される。なお、特定者は上記URL表示欄24cをタッチして携帯端末24をウェブサーバ部23eにアクセスさせることで、メールサーバ部23dから送られてきた火災発生通知メールに応答したことになる。携帯端末24から上記送信要求を受けたウェブサーバ部23eは、その送信要求を行った携帯端末24に、可視光カメラ22によって部屋3Aを撮像した動画のデータを、部屋3Aの監視動画として送信する。
【0026】
このように本実施形態において、ホームサーバ23のウェブサーバ部23eは、火災発生検出手段により消火対象領域に火災が発生したことが検出された場合に携帯端末24に動画(監視動画)を送信する送信手段となっている。
【0027】
ウェブサーバ部23eより送信される監視動画のデータを受信した携帯端末24は、その受信した監視動画をタッチパネル24aの中央部領域に表示する。これにより動画の送信要求を行った特定者は、自己が所持する携帯端末24のタッチパネル24aを通じて、現在の部屋3Aの状況をリアルタイムで確認することができる。そして、監視動画の送信を受けた特定者は、携帯端末24のタッチパネル24aに表示される監視動画に基づいて、実際に部屋3Aに火災が発生したのかどうか(誤って火災と判断されたのではないかどうか)を目視により確認することができる。
【0028】
図8は、携帯端末24のタッチパネル24aに表示された部屋3Aの監視動画の一画面を例示したものである。
図8に示す監視動画には、消火の対象となる第1の消火対象領域R1(A領域)、第2の消火対象領域R2(B領域)、第3の消火対象領域R3(C領域)を区切る目安として境界線51が表示されている。
図8に示す画面には3つの火熱52a,52b,52cが映っている。このうち画面の右側の2つの火熱52a,52bはロウソク15aに点された火であって、予め指定した除外領域S2内に生じた火熱である。一方、画面の中央の大きな火熱52cは、予め指定した除外領域S1を越えて生じた火熱であり、石油ストーブ14を火元として火災が発生した状況を示している。
【0029】
図8に示す部屋の監視動画の画面のうち、タッチパネル24aの下部領域には、上記監視動画とともに、消火装置20による消火を行う場合に、その消火の対象となる消火対象領域を選択する選択ボタン53a,53b,53cと、消火装置20による消火を行わない場合に操作する非消火ボタン54が表示される。
図8において、「A」ボタンは第1の消火対象領域R1を選択する選択ボタン53aであり、「B」ボタンは第2の消火対象領域R2を選択する選択ボタン53bであり、「C」ボタンは第3の消火対象領域R3を選択する選択ボタン53cである。監視動画の送信を受けた特定者は、監視動画を目視確認した結果、実際に部屋3Aに火災が発生していると判断した場合には、その火災が発生したと判断した消火対象領域に対応する選択ボタンをタッチする。一方、特定者は、監視動画を目視確認した結果、実際には部屋3Aに火災は発生していないと判断した場合には非消火ボタン54をタッチする。
【0030】
特定者が消火対象領域を選択する選択ボタン53a,53b,53cのいずれかをタッチした場合には、そのタッチしたボタンに対応する消火指令信号が携帯端末24からホームサーバ23に送信される。送信された消火指令信号は操作指令部23fが受信し、消火指令信号を受信した操作指令部23fは、その受信した消火指令信号に対応する消火装置20の通信駆動部32dに操作信号を送信する。各消火装置20は、通信駆動部32dにおいてホームサーバ23より送信された操作信号を受信したときは、モータ32bを作動させてレバー31dを引き下げ、消火器31の噴射口31eから消火剤33を噴射させる。これにより、特定者が第1の消火対象領域R1を選択する選択ボタン53aをタッチした場合には第1の消火装置20Aから第1の消火対象領域R1に向けて消火剤33が噴射される(
図9)。また、特定者が第2の消火対象領域R2を選択する選択ボタン53bをタッチした場合には第2の消火装置20Bから第2の消火対象領域R2に向けて消火剤33が噴射される(
図10)。また、特定者が第3の消火対象領域R3を選択する選択ボタン53cをタッチした場合には第3の消火装置20Cから第3の消火対象領域R3に向けて消火剤33が噴射される(
図11)。
【0031】
一方、特定者が非消火ボタン54をタッチした場合には、携帯端末24からホームサーバ23に非消火指令信号が送信される。送信された非消火指令信号はメールサーバ部23dが受信し、非消火指令信号を受信したメールサーバ部23dは、他の特定者(非消火ボタン54をタッチした特定者以外の特定者)が所持する携帯端末24に、先程の火災発生通報は誤報であった旨のメール(誤報メールと称する)を送信する。
【0032】
このように本実施形態において、ホームサーバ23の操作指令部23fと各消火装置20における消火器31の操作機構32は、ウェブサーバ部23eから送信された動画(監視動画)を受信してタッチパネル24aに表示した携帯端末24から消火指令信号が送信された場合に、消火指令信号に対応する消火対象領域に消火剤33が噴射されるように消火装置20を作動させる消火装置作動手段となっている。
【0033】
次に
図12のフローチャートを参照して、消火システム1におけるホームサーバ23の制御手順を説明する。ここでは、既に除外領域S1,S2の指定は終わっているものとする。ホームサーバ23は火熱検出部23a、除外領域記憶部23b及び判断部23c(火災発生検出手段)によって、部屋3Aに火災が発生した場合にはこれを検出する(ステップST1)。そして、ホームサーバ23は、部屋3Aに火災が発生したことを検出した場合には、メールサーバ部23dから、携帯端末24に、火災発生通知メールを送信する(ステップST2)。ホームサーバ23は、メールサーバ部23dから携帯端末24に火災発生通知メールを送信するときは、併せて所轄の消防署に火災発生の通報を行う(例えば、火災が発生した旨を内容とする通報メールを送信)。
【0034】
ホームサーバ23は、メールサーバ部23dから携帯端末24に火災発生通知メールを送信したら、特定者からの応答を待つ(ステップST3)。そして、特定者からの応答があった場合には、応答のあった特定者が所持する携帯端末24に部屋3Aの監視動画を送信し(ステップST4)、監視動画を送信した先の携帯端末24より送信される信号(消火指令信号又は非消火指令信号)の受信を待つ(ステップST5)。そして、監視動画を送信した先の携帯端末24より信号を受信した場合には、その受信した信号が消火指令信号であるか非消火指令信号であるかの判断を行い(ステップST6)、その結果、受信した信号が非消火指令信号であった場合には、メールサーバ部23dから誤報メールを他の特定者に送信したうえで(ステップST7)、ステップST1に戻る。一方、ステップST6で、受信した信号が消火指令信号であった場合には、その消火指令信号に対応する消火装置20の通信駆動部32dに、操作指令部23fから操作信号を送信する(ステップST8)。これにより、操作指令部23fから操作信号を受けた消火装置20は消火対象領域に消火剤33を噴射し、消火対象領域に発生した火災に対する消火が行われる。
【0035】
以上説明したように、第1実施形態における消火システム1では、家屋2内に火災が発生したことを検出した場合に、特定者の携帯端末24に部屋3Aの監視動画を送信するようになっている。そして、特定者は、携帯端末24の画像表示部(タッチパネル24a)に表示された監視動画に基づいて、部屋3Aに実際に火災が発生しているかどうかを判断し、火災が発生していた場合には携帯端末24から所定の操作を行うことによって、ホームサーバ23を介した遠隔操作によって、消火装置20を作動させることができる。このため、実際には火災が発生していないにも拘らず部屋3Aに消火剤33が噴射されてしまう事態を避けつつ、確実な初期消火を行うことができる。
【0036】
また、第1実施形態における消火システム1では、複数の消火装置20を備えており、各消火装置20の噴射口31eは、家屋2内に設定された複数の消火対象領域に対応して向けられており、消火対象領域ごとに消火剤33を選択的に噴射できるようになっている。このため消火剤33が必要以上に飛散することを抑止でき、部屋3A内の要介護者10や電化製品などに消火剤33が付着することを防止できる。なお、上述の第1実施形態では消火装置20の数は3つであったが、これは一例に過ぎず、部屋3Aの広さや火災の火元となり得る電化製品などの数、配置等によっては3つよりも少なくてもよく(1つ或いは2つ)、或いは4つ以上ともなり得る。
【0037】
また、上述の第1実施形態では、消火器31が備える噴射管31bが形状保持ホースから成っていたが、噴射口31eを消火対象領域の方向に向くようにセットできるのであれば、消火器31の噴射管31bは必ずしも形状保持ホースから成っていなくてもよい。消火器31が市販のものである場合など、噴射管31bが形状保持ホースではない通常のホースである場合には、ノズル31cを固定するための設備を別途設けることで、噴射口31eが所望の方向を向いた状態となるようにノズル31cを固定することができる。
【0038】
また、上述の第1実施形態では、火災発生検出手段が部屋3Aに火災が発生したことを検出した場合には、特定者に火災発生通知メールを送信するようになっていたが(ステップST2)、このような火災発生通知メールの送信を行うことなく、特定者に監視動画を送信するようにしてもよい。これにより、特定者が火災発生通知メールに応答する操作を省くことができ、消火動作の開始までに要する時間を削減することができる。
【0039】
携帯端末24は、画像表示部を備えているのであれば、前述のスマートフォンのほか、タブレットPCや携帯電話等であってもよい。また、携帯端末24とホームサーバ23との間の各種データの送受信は、必ずしもインターネット43と携帯電話通信網44を使用するものでなくてもよく、専用無線によるものであってもよい。また、上述の第1実施形態では、消火システム1の適用対象を要介護者10が起居する部屋3Aとしていたが、その他、子供だけで留守番している部屋や、人のいない部屋等を適用対象とすることができる。
【0040】
(第2実施形態)
次に
図13を参照して、消火システム1の第2実施形態について説明する。第2実施形態では、消火装置の構成以外は全て第1実施形態の場合と同じであるので第1実施形態のものと同一の機能を有する構成部分には第1実施形態において付した符号と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0041】
図13において、消火装置120が備える消火器131の構造のうち第1実施形態の場合と異なるところは、噴射管133が3つの分岐噴射管(第1の分岐噴射管133a、第2の分岐噴射管133b及び第3の分岐噴射管133c)に分岐している点である。そして、第1の分岐噴射管133aの先端部には第1のノズル134aが取り付けられており、第2の分岐噴射管133bの先端部には第2のノズル134bが取り付けられており、第3の分岐噴射管133cの先端には第3のノズル134cが取り付けられている。
【0042】
噴射管133は全体が形状保持チューブから成っている。そして、第1のノズル134aの噴射口135aは第1の消火対象領域R1に向けられており、第2のノズル134bの噴射口135bは第2の消火対象領域R2に向けられており、第3のノズル134cの噴射口135cは第3の消火対象領域R3に向けられている。
【0043】
上記3つの分岐噴射管(第1の分岐噴射管133a、第2の分岐噴射管133b及び第3の分岐噴射管133c)のそれぞれには電磁駆動式の開閉弁が介装されている。すなわち、第1の分岐噴射管133aには第1の開閉弁136aが介装されており、第2の分岐噴射管133bには第2の開閉弁136bが介装されており、第3の分岐噴射管133cには第3の開閉弁136cが介装されている。操作機構132は第1実施の形態の場合と同様であるが、通信駆動部32dはホームサーバ23から与えられる操作信号を受けたとき、モータ32bを作動させて消火器131のレバー31dを引き下げると同時に、消火対象領域に対応する開閉弁(第1の開閉弁136a、第2の開閉弁136b又は第3の開閉弁136c)を開放させる。
【0044】
前述の
図8において示した部屋3Aの監視動画の画面において、選択ボタン53a,53b,53cのいずれかをタッチした場合には、ホームサーバ23の操作指令部23fは、消火器131のレバー31dを引き下げる操作信号を消火装置120の通信駆動部32dに送信するとともに、タッチされたボタンに対応する開閉弁(第1の開閉弁136a、第2の開閉弁136b又は第3の開閉弁136c)の開放信号を消火装置120の通信駆動部32dに送信する。これにより、特定者が第1の消火対象領域R1を選択する選択ボタン53aをタッチした場合には第1のノズル134aの噴射口135aから第1の消火対象領域R1に向けて消火剤33が噴射され、第2の消火対象領域R2を選択する選択ボタン53bをタッチした場合には第2のノズル134bの噴射口135bから第2の消火対象領域R2に向けて消火剤33が噴射され、第3の消火対象領域R3を選択する選択ボタン53cがタッチされた場合には第3のノズル134cの噴射口135cから第3の消火対象領域R3に向けて消火剤33が噴射される。
【0045】
このように第2実施形態における消火システム1では、消火装置120は複数の噴射口(第1のノズル134aの噴射口135a、第2のノズル134bの噴射口135b及び第2のノズル134cの噴射口135c)を有するとともに、これら複数の噴射口は家屋2内に設定された複数の消火対象領域(第1の消火対象領域R1、第2の消火対象領域R2及び第3の消火対象領域R3)に対応して向けられており、消火装置作動手段(ホームサーバ23の操作指令部23f及び消火装置120が備える操作機構132)は複数の噴射口を選択的に開閉する複数の開閉弁(第1の開閉弁136a、第2の開閉弁136b又は第3の開閉弁136c)を備えたものとなっている。第2実施形態では、第1実施形態のように複数の消火装置(第1の消火装置20A、第2の消火装置20B及び第3の消火装置20C)を用いて複数の消火対象領域の消火を図るのではなく、1つの消火装置120を用いて複数の消火対象領域の消火を図るようになっている。このため使用する消火装置の数が削減され、消火装置を設置する作業も削減されるので、消火システム1を安価に構成することができる。
【0046】
また、前述の第1実施形態及び第2実施形態において、消火装置作動手段は、ステップST3で、火災発生検出手段が火災の発生を検出してから所定時間(例えば1分)が経過した(特定者から応答がなかった)場合には、火災の発生が検出された消火対象領域に消火剤33が噴射されるように消火装置20を作動させるようになっていてもよい。これにより、特定者が火災発生通知メールを見なかった場合や、火災発生通知メールに対する応答が遅れた場合であっても、初期消火を確実に行うことが可能となる。また、本発明の消火システム1は部屋3A内に限らず、家屋2内のどこに対しても適用することができる。
【課題】実際には火災が発生していないにも拘らず部屋に消火剤が噴射されてしまう事態を避けつつ、確実な初期消火を行うことができる消火システムを提供することを目的とする。
【解決手段】消火装置20は、消火剤を噴射する噴射口が消火対象領域に向くように設置される。赤外線カメラ21及び可視光カメラ22は消火対象領域を動画で撮像し、火災発生検出手段(ホームサーバ23の火熱検出部、除外領域記憶部及び判断部)は、撮像された動画を画像認識し、消火対象領域に火災が発生したことを検出する。ホームサーバ23のウェブサーバ部は、火災発生検出手段により消火対象領域に火災が発生したことが検出された場合に携帯端末24に動画を送信し、動画を受信してタッチパネル24aに表示した携帯端末24が消火指令信号を送信すると、ホームサーバ23の操作指令部は操作信号を出力し、消火装置20が作動する。