(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890003
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】タービン段を冷却する方法、及び、冷却された当該タービン段を有しているガスタービン
(51)【国際特許分類】
F02C 7/18 20060101AFI20160308BHJP
F01D 9/02 20060101ALI20160308BHJP
F01D 25/12 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
F02C7/18 A
F01D9/02 102
F01D25/12 E
【請求項の数】10
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2014-503049(P2014-503049)
(86)(22)【出願日】2012年3月8日
(65)【公表番号】特表2014-510235(P2014-510235A)
(43)【公表日】2014年4月24日
(86)【国際出願番号】EP2012053971
(87)【国際公開番号】WO2012136437
(87)【国際公開日】20121011
【審査請求日】2014年1月24日
(31)【優先権主張番号】11161499.6
(32)【優先日】2011年4月7日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508008865
【氏名又は名称】シーメンス アクティエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−トマス・ボルムス
(72)【発明者】
【氏名】ボリス・ドブルジンスキ
【審査官】
瀬戸 康平
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−022811(JP,A)
【文献】
特開平07−054669(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00−15/12,23/00−25/36
F02C 1/00− 9/58
F23R 3/00− 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン(1)のタービン段(8)を冷却するための方法であって、
前記タービン段(8)が、複数の案内ブレード(11)を有しており、前記タービン段(8)の前記案内ブレード(11)が、冷却媒体によって冷却されるように動作可能とされ、
前記タービン段(8)が、前記冷却媒体を前記案内ブレード(11)の内部に供給するための冷却媒体供給装置(19〜24)を有しており、
前記案内ブレード(11)が、前記案内ブレード(11)の後縁部(16)及び正圧側側面(18)の領域において、少なくとも1つの冷却媒体出口開口部(25)を有しており、前記冷却媒体が、前記冷却媒体出口開口部(25)を通じて、前記案内ブレード(11)の内部から流出し、主流れに流入するようになっており、
前記冷却媒体供給装置(19〜24)が、少なくとも1つの前記冷却媒体出口開口部(25)を通じて流れる質量流を調整するための質量流調整装置(20)を有している、前記方法において、
前記方法が、
− 前記ガスタービン(1)を部分負荷運転するステップと、
− 前記ガスタービン(1)が全負荷運転している際に少なくとも1つの前記冷却媒体出口開口部(25)を通じて流れる質量流と比較して、少なくとも1つの前記冷却媒体出口開口部(25)を通じて流れる質量流が大きくなるように、前記質量流調整装置(20)を調整するステップと、
を備えており、
前記質量流調整装置が、質量流を調整するための絞り弁(20)を有しており、
前記案内ブレード(11)が、全負荷運転時において、前記絞り弁(20)によって絞られる前記冷却媒体の質量流のために設計されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
前記案内ブレード(11)が、部分負荷運転時において、前記絞り弁(20)によって絞られない前記冷却媒体の質量流のために設計されていることを特徴とする請求項1に記
載の方法。
【請求項3】
前記冷却媒体が、圧縮機出口空気とされ、
前記質量流調整装置(20)が、前記圧縮機出口空気を圧縮機の出口から供給されることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記ガスタービン(1)の部分負荷運転の際に、前記圧縮機出口空気が、前記ガスタービン(1)の燃焼室(3)を迂回するように導かれることを特徴とする請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記案内ブレード(11)が、
冷却媒体入口(23)であって、前記冷却媒体が前記案内ブレード(11)の内部に向かって流れる際に通過する冷却媒体入口(23)と、冷却媒体リザーバ(22)と、を有しており、
前記冷却媒体が、前記質量流調整装置(20)によって、前記冷却媒体リザーバ(22)を介して前記冷却媒体入口(23)に供給されることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記質量流調整装置(20)が、前記ガスタービン(1)の圧縮機プレナム(5)から供給されることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記タービン段が、前記ガスタービンの第1のタービン段(8)とされ、
前記第1のタービン段が、前記ガスタービン(1)の燃焼室(3)の下流側近傍に配置されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
熱力学的効率に関して、前記案内ブレード(11)の下流に配置されているロータブレード(13)に対する流れの衝突角度に関して、前記ガスタービン(1)のタービンの排出ガスの温度に関して、及び/又は、前記ガスタービン(1)の燃焼室(3)内における火炎の安定性に関して、前記ガスタービン(1)の部分負荷運転が最適化されるように、前記質量流が設定されることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
タービン段(8)を有しているガスタービン(1)を運転するための方法であって、
前記タービン段(8)が、複数の案内ブレード(11)を有しており、
前記案内ブレード(11)が、冷却媒体によって冷却され、前記冷却媒体を前記案内ブレード(11)の内部に供給するための冷却媒体供給装置(19〜24)を有しており、
前記案内ブレード(11)が、前記案内ブレード(11)の外面に複数の冷却媒体出口開口部(25)を有しており、前記冷却媒体が、前記冷却媒体出口開口部(25)を介して、前記案内ブレード(11)の内部から流出し、主流れに流入するようになっており、
前記冷却媒体供給装置(19〜24)が、前記冷却媒体出口開口部(25)を通じて流れる質量流を調整するための質量流調整装置(20)を有しており、運転中に、前記冷却媒体の質量流が圧縮機吸入質量流の一部分である、前記方法において、
前記ガスタービン(1)の出力が低下するに従って、前記圧縮機吸入質量流に対する前記冷却媒体の質量流の割合が大きくなることを特徴とする方法。
【請求項10】
前記請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法を実施するための装置を有していることを特徴とするガスタービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、案内ブレードを有しているタービン段を有しているガスタービンであって、案内ブレードが、冷却媒体によって冷却されるように構成されていると共に、冷却媒体を案内ブレードの内部に供給するための冷却媒体供給装置を有している、ガスタービンに関し、さらには、タービン段を冷却するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンは、例えば電気エネルギを発生させるための発電所内において発電機に結合されており、これにより同一の回転速度で部分負荷運転及び全負荷運転の両方を実施することができる。ガスタービンは、圧縮機と燃焼室とタービンとを有しており、周囲空気が、圧縮機によって取り込まれ圧縮され、周囲空気は、燃料を燃焼することによって燃焼室内で加熱される。加熱及び圧縮された空気はタービン内で膨張するので、発電機の動作から得られる仕事量によって、発電機は駆動される。タービンは、従来技術に基づく軸流式の構成であり、案内ブレード列とロータブレード列とが、主流れ方向において前後に且つ交互に配置されている。ガスタービンの可能な限り最大の熱力学的効率を得るためには、ガスタービンが可能な限り最大のタービン入口側の温度を有した状態で動作することが望ましい。タービン入口側の最大許容温度は、特にタービンの案内ブレード列及びロータブレード列のタービンの熱負荷容量によって決定される。
【0003】
例えば燃焼室の出口の近傍に且つ下流に配設された第1の案内ブレード列が冷却された場合に、タービン入口側の最大許容温度を高めることができる。例えば特許文献1は、案内ブレード列の冷却について開示しており、例えば特許文献2は、案内ブレード列の案内ブレードが中空構造であり、例えば圧縮機から排出される冷却空気の流れが案内ブレード列の案内ブレードを横断していることについて開示している。
【0004】
ガスタービンが部分負荷運転している場合には、タービン入口側の温度とガスタービンの全体圧力比が、全負荷運転時と比較して小さいので、部分負荷運転時にガスタービンの熱力学的効率が小さくなり、不利である。さらに、ガスタービンの部分負荷運転時には、ガスタービンを通過する主流れの質量流が低減されるので、タービンのロータブレードに対する、特に第1の案内ブレード列の下流に位置するロータブレード列のタービンのロータブレードに対する流れの迎え角が、設計上の流れの迎え角とは異なるので、不利である。これにより、ガスタービンの部分負荷運転時には、流れがタービンのロータブレードに対して不正確に衝突するので、これによりタービンのロータブレードに作用する仕事が低減される。さらに、ガスタービンの部分負荷運転時には、燃焼室への燃料供給が低減され、これによりガスタービン内における火炎温度も低下する。このことは、結果として、燃焼室内の不利な燃焼装置においては、部分負荷運転時におけるガスタービンの運転及び有用性に悪影響を及ぼす。
【0005】
ガスタービンが全負荷運転から部分負荷運転に完全に切り換えられた場合には、タービン段それぞれの圧力比ひいてはガスタービンの全圧力比が低減され、タービン入口側の温度が略一定に維持されている場合には、排出ガスの温度が高められる。これにより、排出ガスの温度が最大許容温度より高い運転状態になる。部分負荷運転時に、このことに対して適切に対応すれば、タービン入口側の温度が低下し、排出ガスの温度が最大許容温度以下に戻る。しかしながら、このことは、ガスタービンの熱力学的効率の低下に関連するので、不利である。
【0006】
定格負荷で必要とされる冷却空気の利用量によって、二次空気の利用量が決定される。部分負荷運転時に温度が低下するので、その結果として、冷却空気の一部を温存することができる。温存された冷却空気は、偏向を操作するために、“ジェットフラップエア(jet flap air)”として案内ブレードの後縁部から排出される。二次空気の利用量を運転状態に従って変更することは、特許文献1には開示されていない。しかしながら、特許文献2には、タービンの案内ブレードの冷却媒体を偏向することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】英国特許第1338354号明細書
【特許文献2】英国特許第938247号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、高い熱力学的効率で安定して部分負荷運転することができるガスタービン、及び、当該ガスタービンのタービン段を冷却するための方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明におけるガスタービンは、タービン段が、複数の案内ブレードを有しており、ガスタービンの案内ブレードが、冷却媒体によって冷却するように機能しており、ガスタービンが、冷却媒体を案内ブレードの内部に供給するための冷却媒体供給装置を有しており、案内ブレードが、案内ブレードの後縁部及び案内ブレードの正圧側側面の領域に少なくとも1つの冷却媒体出口開口部を有しており、冷却媒体が、冷却媒体出口開口部を通じて案内ブレードの内部から流出し、主流れに流入するようになっており、冷却媒体供給装置が、少なくとも1つの冷却媒体出口開口部を通じて流出する質量流が、ガスタービンの全負荷運転時と比較して、ガスタービンの部分負荷運転時に増大するように、少なくとも1つの冷却媒体出口開口部を通じて流れる質量流を調整するための質量流調整装置を有している。ガスタービンのタービン段を冷却するための方法は、ガスタービンを部分負荷運転するステップと、ガスタービンが全負荷運転している際に少なくとも1つの冷却媒体出口開口部を通じて流れる質量流と比較して、少なくとも1つの冷却媒体出口開口部を通じて流れる質量流が大きくなるように、質量流調整装置を制御するステップと、を備えている。
【0010】
冷却媒体によって冷却されるようになっている案内ブレードは、全負荷運転時に対応する適切な量の冷却媒体の質量流を供給することによって、適切な長さの耐用寿命を具備する設計点で動作可能とされるように設計されている。案内ブレードの設計において留意すべきは、冷却媒体の質量流が、案内ブレードに対する冷却媒体の冷却作用によって案内ブレードの過剰な熱負荷を防止するのに十分な大きさを有していることである。案内ブレードの外形は、冷却媒体による冷却作用と当該冷却作用の熱力学的影響とを考慮して、案内ブレードが設計点において所定の設計要件を満たすように選択される。
【0011】
案内ブレードの後縁部の領域に配設された少なくとも1つの冷却媒体出口開口部を通じて、冷却媒体が正圧側側面に流出すると、その結果として、案内ブレードの後縁部の領域に配設された少なくとも1つの冷却媒体出口開口部を通じて、冷却媒体が正圧側側面にほとんど又は全く流出しない場合における案内ブレードの偏向作用と比較して、案内ブレードの偏向作用が増大する。従って、正圧側側面において少なくとも1つの冷却媒体出口開口部から流出する冷却媒体の質量流が、ガスタービンの運転中に質量流調整装置によって大きくされると、その結果として案内ブレードの偏向作用が増大する。
【0012】
冷却媒体の質量流の増大は、冷却媒体による必要な冷却作用に関連して必要とされない。冷却媒体の質量流が大きくなることによって、案内ブレードの偏向作用が増大する。従って、案内ブレードの後縁部の領域の正圧側側面において案内ブレードから流出する冷却媒体の質量流が大きくなるように、案内ブレードが運転している際には、案内ブレードが冷却媒体によって十分に冷却された状態で動作される場合であっても、案内ブレードの偏向角が、冷却媒体の質量流を対応して選定することによって調整可能とされる。
【0013】
このことは、案内ブレードの偏向作用が低減される点において不利な、特にガスタービンの部分負荷運転の際に優位である。優位には、このような変更作用の低減は、ガスタービンの全負荷運転と比較してガスタービンの部分負荷運転時に少なくとも1つの冷却媒体出口開口部を通過する質量流量を増やすために利用される少なくとも1つの冷却媒体出口開口部を介して質量流を調整するするための、質量流調整装置によって相殺される。このようにして、優位には、ガスタービンの部分負荷運転時に、案内ブレードの偏向作用が高められるが、案内ブレードは適切な程度に至るまで冷却される。さらに、少なくとも1つの冷却媒体出口開口部を通過する冷却媒体の質量流は、質量流調整装置の対応する動作を介して、案内ブレードとロータブレードとのブレード段の圧力比が大きくなるように調整可能とされる。ブレード段の圧力比が大きくなることによって、排出ガスの温度が一定に保たれた状態で、タービンの入り口温度が高められるので、その結果として、ガスタービンの熱力学的効率及び出力が大きくなる。
【0014】
好ましくは、質量流調整装置が、質量流を調整するための絞り弁を有しており、案内ブレードが、全負荷運転時において、絞り弁によって絞られる冷却媒体の質量流のために設計されている。さらに好ましくは、案内ブレードが、部分負荷運転時において、絞り弁によって絞られない冷却媒体の質量流のために設計されている。好ましくは、冷却媒体は、圧縮機出口側の空気であり、好ましくは、質量流調整装置は、圧縮機出口から圧縮機出口側の空気を供給する。
【0015】
好ましくは、ガスタービンの部分負荷運転時には、圧縮機出口側の空気が燃焼室を迂回するように導かれる。部分負荷運転時には、例えばタービン入口側の温度が低下している際に火炎温度の著しい低下を防止するために、且つ、燃焼が不安定になることを回避するために、圧縮機出口側の空気が燃焼室のガスタービンを迂回するように導かれる。部分負荷運転時に燃焼室を迂回するように導かれる圧縮機出口側の空気が回収されるので、好ましくは、案内ブレードを冷却するための冷却媒体供給装置に利用可能となる。
【0016】
部分負荷運転において、質量流調整装置は、好ましくは絞られることなく動作される。燃焼室を迂回するように導かれた圧縮機出口側の空気は、案内ブレードを冷却するために利用される。一方、ガスタービンが全負荷運転している場合には、質量流調整装置の絞り弁は絞り位置にあるので、冷却媒体の質量流が低減される。好ましくは、冷却媒体の質量流は、ガスタービンの運転中に常に案内ブレードの適切な冷却と適切な変更作用とが実現されるように選定される。
【0017】
好ましくは、案内ブレードが、冷却媒体が案内ブレードの内部に向かって流入する際に通過する冷却媒体入口と、質量流調整装置を介して冷却媒体を冷却媒体入口に供給するための冷却媒体リザーバとを有している。優位には、冷却媒体リザーバが、冷却媒体のための緩衝容器として設けられているので、特に案内ブレードが大量且つ一時的に必要とする冷却媒体を冷却媒体リザーバによって補償することができる。さらに、冷却媒体リザーバ内における流速が低いので、冷却媒体リザーバ内における流量の損失も小さい。
【0018】
好ましくは、質量流調整装置はガスタービンの圧縮機プレナムから供給される。特にガスタービンが全負荷運転している場合に燃焼室を迂回するように導かれる圧縮機出口側の空気の一部が、圧縮機プレナム内に導入される。さらに、圧縮機プレナム内の圧力が圧縮機出口側の圧力に等しくなるので、好ましくは絞りバルブを介して対応して絞られることによって、圧縮機プレナム内において、冷却媒体の圧力は適度に高くなる。
【0019】
好ましくは、冷却される案内ブレードは、ガスタービンの燃焼室の下流に且つ近傍に配置されている、ガスタービンの第1のタービン段の第1の案内ブレードである。さらに、本発明における方法では、好ましくは、熱力学的効率に関して、及び/又は、案内ブレードの下流に配置されたロータブレードに対する流れの衝突角度に関して、及び/又は、ガスタービンのタービンの排出ガスの温度に関して、及び/又は、ガスタービンの燃焼室内における火炎の安定性に関して、ガスタービンの部分負荷運転が最適化されるように、質量流が選定される。
【0020】
周知のごとく、ガスタービンの負荷が低下すると、圧縮機の質量流の絶対値と二次質量流の絶対値とも小さくなる。それにも関わらず、部分負荷運転時においてより多くの冷却空気を利用するために、ガスタービンの負荷が低下すると、―圧縮機入口側の質量流に対する―冷却媒体の質量流の割合が高められるようになっている。これにより、部分負荷運転時における冷却媒体の利用量が、全負荷運転時と比較して大きくなる。
【0021】
本発明について、添付図面に基づいて以下に詳述する。図面は、
本発明におけるガスタービンの一の実施例の、燃焼室及びタービンの領域の縦断面図である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明におけるタービンの部分的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、圧縮機(図示しない)を内蔵しているハウジング2と燃焼室3と複数のタービン段8,9を具備するタービンとを有しているガスタービン1を表わす。圧縮機側出口の下流には、圧縮機プレナム5の内部に流体を流すようになっている偏向ディフューザ(図示しない)が配置されており、圧縮機プレナム5は、キャビティとしてハウジング2内に形成されており、燃焼室3を内蔵している。ガスタービン1の動作中に、圧縮機によって、大気が取り込まれ、圧縮機側出口圧力に至るまで圧縮される。圧縮機出口側の空気が、圧縮機側出口から燃焼室3の燃焼室内空間4に流入し、液体燃料又は気体燃料と混合される。従って、燃焼可能な混合体が燃焼室内部空間4において生成され、燃焼室3内において点火され、燃焼される。等圧燃焼が燃焼室内部空間4内で行われる。これに対応して、混合体が、燃焼室3の燃焼室側出口6において高温で燃焼され、当該混合体は、輸送ダクト7を介してガスタービン1のタービンに導かれる。
【0024】
図1は、タービンの第1のタービン段8及び第2のタービン段9を表わす。第1のタービン段8及び第2のタービン段9はそれぞれ、案内ブレード列10とロータブレード列12とを有している。第1のタービン段8の案内ブレード列10は、全周に亘って等間隔で配置されている複数の同一の案内ブレード11によって形成されている。第1のタービン段8のロータブレード列12は、全周に亘って等間隔で配置されている同一のロータブレード13によって形成されている。案内ブレード11とロータブレード13とは軸流式の構造を有している。案内ブレード11は、案内ブレードキャリア14によって、案内ブレード11のラジアル方向外側端部で保持されている。ロータブレード13はそれぞれ、ロータブレード13のラジアル方向外側端部に、ガスタービン1のロータ15とインターロックした状態で係合するブレード根元部分を備えている。案内ブレード11はそれぞれ、後縁部16と先縁部と負圧側側面(図示しない)と正圧側側面18とを具備する、ブレード翼を有している。案内ブレード11の先縁部の領域において、輸送ダクト7内に導入された高温ガス混合体が第1のタービン段8の内部に流入する。高温ガス混合体は、案内ブレード列10によって偏向され、ロータブレード列12内で膨張するので、仕事が生じる。
【0025】
タービン入口側における高温ガス混合体の温度が高くなるに従って、ガスタービン1の熱力学的効率も高くなる。案内ブレード11の材料に関する熱負荷限界によって、タービン入口側における最大許容温度が決定される。タービン入口側における最大許容温度を高めるためには、ガスタービン1の動作中に案内ブレード11が冷却されることによって、案内ブレード11の熱負荷を下げる必要がある。案内ブレード11の熱負荷を下げるために、案内ブレード11は、中空構造で構成されている一方、冷却媒体の流れが、冷却するために案内ブレード11を横断している。
【0026】
ガスタービン1は、冷却媒体供給装置として、抽気配管19と絞り弁20と供給配管21と冷却空気リザーバ22と冷却空気入口23とチャンバ24とを有している。絞り弁20は、質量流制御装置として構成されている。抽気配管19は、圧縮機プレナム5に流通しており、絞り弁20を介して供給配管21に接続されている。供給配管21は、冷却空気リザーバ22の内部に連通しており、冷却空気リザーバ22は、案内ブレード列10のラジアル方向外側に配置されており、環状のチャンバの形態をしている。チャンバ24は、ラジアル方向において案内ブレード11の外側に直接に、且つ、冷却空気リザーバ22と同心に配置されており、案内ブレード11の内部空間に連通している。案内ブレード11それぞれにおいて、チャンバ24と冷却空気リザーバ22とは、冷却空気入口23を介してラジアル方向において連通している。
【0027】
圧縮機出口側の空気は、偏向ディフューザを介して、圧縮機出口から圧縮機プレナム5の内部に流れる。圧縮機出口側の空気は、冷却媒体(冷却空気)として、圧縮機プレナム5内に供給される。冷却空気は、抽気配管19を介して、圧縮機プレナム5から抽気される。絞り弁20の絞り位置に依存して、対応する冷却空気の質量流が抽気配管19及び供給配管21内に発生する。冷却空気は供給配管21から冷却空気リザーバ22に流入し、冷却空気リザーバ22が利用可能な状態となる。特に冷却空気入口23を介して冷却空気リザーバ22から流出した冷却空気の質量流と、供給配管21を介して冷却空気リザーバ22内に流入した冷却空気の質量流と、絞り弁20の絞り位置とによって、冷却空気リザーバ22内における冷却空気の圧力が決定される。冷却空気は、冷却空気入口23を介して、冷却空気リザーバ22からチャンバ24に流入し、さらに、チャンバ24から案内ブレード11の内部空間に流入する。案内ブレード11はそれぞれ、後縁部16及び正圧側側面18の領域において、略ラジアル方向に配置されている冷却空気出口開口部25の列を有している。冷却空気は、冷却空気出口開口部25を介して案内ブレード11の内部から流出し、主流れに合流する。
【0028】
抽気配管19、供給配管21、及び冷却空気入口23の断面の大きさ及び形状は、ガスタービン1が全負荷運転している際に、絞り弁20の絞り位置に対応して案内ブレード11を適切に冷却可能な量を有する冷却空気の質量流が案内ブレード11に供給されるように設定されている。当該実施例では、ロータブレード13の先縁部17が設計上の迎え角に対応する適切な流入角で衝突冷却されるように、案内ブレード11における流出角が設定されている。案内ブレード11の設計においては、案内ブレード11に対する冷却空気の冷却作用によって案内ブレード11が過剰な熱負荷を受けないように、冷却空気の質量流が十分に大きくすることに留意すべきである。それにも関わらず、ロータブレード13には、流れが最適な状態で衝突する。
【0029】
案内ブレード11の後縁部16の領域において、正圧側側面の冷却空気が冷却空気出口開口部25を通じて流出するので、その結果として、案内ブレード11の偏向作用が高められる。従って、ガスタービン11が部分負荷運転している際に、全負荷運転時に絞られていた絞り弁20を開くことによって、冷却空気出口開口部25を通じて流れる冷却空気の質量流が増大する。この結果として、案内ブレード11の偏向作用が高められる。
【0030】
このような冷却空気の質量流の増大は、冷却空気による必要な冷却効果に関連して必要とはされない。冷却空気の質量流が増大することによって、案内ブレード11の偏向作用がさらに高められる。これにより、絞り弁20の作用によって冷却空気の質量流を対応して選択すると、案内ブレード11の偏向角が調整される。
【0031】
案内ブレード11の偏向作用が低減される点において不利とされる、ガスタービン1の部分負荷運転の際には、絞り弁20を開くことによって、極端な場合には絞り弁20を完全に開くことによって、冷却空気出口開口部25を通じて流れる質量流が増大する。その結果として、ガスタービン1の部分負荷運転では、優位には、案内ブレード11の偏向作用が高められるので、案内ブレード13の先縁部17には流れが最適な状態で衝突し、案内ブレード11が適切に冷却される。
【0032】
圧縮機プレナム5で利用可能とされる圧縮機出口側の空気の量は、ガスタービン1の部分負荷運転において、ガスタービン1の全負荷運転より大きい。なぜならば、部分負荷運転では、ガスタービン1の入口側の温度が低下した場合に、燃焼室内の火炎温度が著しく低下することを防止するために、且つ、燃焼が不安定になることを回避するために、圧縮機出口側の空気が燃焼室3を迂回するように導かれるからである。優位には、圧縮機出口側の過剰な空気を案内ブレード11に供給するために利用可能とされる。ガスタービン1の極端な部分負荷運転では、絞り弁20は開いた状態に設定されているので、冷却空気の最大質量流が案内ブレード11に供給される。逆に、ガスタービン1が全負荷運転する場合には、絞り弁20が絞り位置になるので、冷却空気の質量流が低減される。ガスタービン1の運転中において案内ブレード11の冷却と偏向作用が常に適切であるように、冷却空気の質量流の低減が選定される。
【0033】
冷却空気リザーバ22は、冷却空気のための緩衝容器として機能するので、冷却空気リザーバ22は、ガスタービン1の運転中に大量の冷却空気の移行を補償することができる。さらに、冷却空気リザーバの容積の大きさは、冷却空気リザーバ内の流速が低くなるように選定される。
【符号の説明】
【0034】
1 ガスタービン
2 ハウジング
3 燃焼室
4 燃焼室内部空間
5 圧縮機プレナム
6 燃焼室側出口
7 輸送ダクト
8 第1のタービン段
9 第2のタービン段
10 案内ブレード列
11 案内ブレード
12 ロータブレード列
13 ロータブレード
14 案内ブレードキャリア
15 ロータ
16 後縁部
17 先縁部
18 正圧側側面
19 抽気配管
20 絞り弁
21 供給配管
22 冷却空気リザーバ
23 冷却空気入口
24 チャンバ
25 冷却空気出口開口部