(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来から、合成樹脂材料で有底筒状に形成されたボトルとして、例えば下記特許文献1に示されるように、口部、肩部、胴部及び底部が一体に形成されてなり、胴部に、その径方向の内側に向けて凹んだパネル部が周方向に間隔をあけて複数形成された構成が知られている。
この構成によれば、例えばボトルに密封された内容物の温度が低下してボトル内が減圧した場合に、パネル部が径方向の内側に向けて優先的に変形することで、ボトル内の減圧を吸収するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来のボトルでは、ボトル内の減圧吸収性能を維持しつつ、ハンドリング性を向上させることに改善の余地があった。
【0005】
そこで、本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、ボトルの減圧吸収性能を維持しつつ、ボトルのハンドリング性を向上させることができるボトルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
本発明に係るボトルは、筒状の胴部に、その径方向の内側に向けて凹むパネル部が周方向に間隔をあけて複数形成されてなるボトルであって、前記胴部は、軸方向の外側から内側に向かうに従い径方向の内側に向けて漸次縮径し、前記パネル部における径方向の内側に位置する底壁部は、軸方向に沿う縦断面形状
および軸方向に直交する横断面視形状がそれぞれ直線状に形成されていることを特徴としている。
【0007】
このような特徴により、胴部が軸方向の外側から内側に向けて漸次縮径しているので、ボトルを把持する際のハンドリング性を向上させることができる。
さらに、ボトル内が減圧する際にパネル部が径方向内側に向けて優先的に変形することで、ボトル内の減圧を吸収できる。しかも、パネル部の底壁部を
直線状に形成したので、胴部と同様に軸方向の外側から内側に向けて漸次縮径させて底壁部を形成した場合に比べて、径方向の内側への底壁部の変形量を確保することができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るボトルによれば、ボトルの減圧吸収性能を維持しつつ、ボトルのハンドリング性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態に係るボトルを説明する。
本実施形態に係るボトル1は、
図1,
図2に示されるように、口部11、肩部12、胴部13及び底部14を備え、これら11〜14が、それぞれの中心軸線を共通軸上に位置させた状態で、この順に連設された概略構成となっている。
【0011】
以下、上述した共通軸をボトル軸Oといい、ボトル軸O方向に沿って口部11側を上側、底部14側を下側といい、また、ボトル軸Oに直交する方向を径方向といい、ボトル軸Oを中心に周回する方向を周方向という。
なお、ボトル1は、射出成形により有底筒状に形成されたプリフォームが、ブロー成形されて形成され、合成樹脂材料で一体に形成されている。また、口部11には、図示されないキャップが装着される。さらに、口部11、肩部12、胴部13及び底部14はそれぞれ、ボトル軸Oに直交する横断面視形状が円形状となっている。
【0012】
肩部12と胴部13との接続部分、及び胴部13と底部14との接続部分には、それぞれ径方向の内側に向けて凹んだ凹溝16が全周に亘って連続して形成されている。
胴部13は筒状に形成され、その外周面がボトル軸O方向における外側(上下両端部)から内側(中央部)にかけて径方向の内側に向けて漸次縮径する湾曲形状をなしている。すなわち、胴部13は、ボトル軸O方向の内側は外側に比べて小径に形成され、全体の外観形状がくびれ形状に形成されている。
【0013】
ここで、胴部13には、径方向の内側に向けて凹む減圧吸収用のパネル部17が周方向に間隔をあけて複数形成されている。そして、胴部13において、周方向で隣り合うパネル部17同士の間に位置する部分は、ボトル軸O方向に沿って延びる柱部19を構成している。すなわち、胴部13には、凹形状のパネル部17と凸形状の柱部19とが周方向に交互に配設されている。
【0014】
パネル部17は、径方向の外側から見てボトル軸O方向を長手方向とする矩形状に形成された底壁部21と、底壁部21を全周に亘って取り囲むように立設された側壁部22と、を有している。
図1〜3に示すように、側壁部22のうち、周方向の両側に位置してボトル軸O方向に延びる一対の縦側壁部22aは、径方向の内側から外側に向かうにつれ周方向の外側(各縦側壁部22aが離間する方向)に向けて傾斜する傾斜面とされている。そして、周方向で隣り合うパネル部17同士の間に位置する柱部19は、ボトル軸Oに直交する横断面視形状が径方向の内側から外側に向けて周方向の大きさが小さくなる台形状に形成されている。
一方で、側壁部22のうち、ボトル軸O方向の両側で周方向に延びる一対の横側壁部22b(
図1参照)は、径方向の内側から外側に向かうにつれボトル軸O方向の外側(各横側壁部22bが離間する方向)に向けて傾斜する傾斜面とされている。
【0015】
底壁部21は、パネル部17における径方向の内側に位置しており、
図2に示すように、ボトル軸Oに沿う縦断面視形状が
直線状に形成されるとともに、
図3に示すように、ボトル軸Oに直交する横断面視形状も
直線状に形成されている。すなわち、胴部13において、上述した柱部19はボトル軸O方向における外側から内側にかけて径方向の内側に向けて漸次縮径するくびれ形状をなしている一方で、パネル部17の底壁部21はボトル軸O方向に沿う平面形状をなしている。
【0016】
このように構成されたボトル1内が減圧すると、パネル部17における底壁部21と側壁部22との接続部分を中心にして、底壁部21が径方向の内側に向かって撓むように変形することになる。すなわち、減圧時にパネル部17の底壁部21を優先的に変形させることで、他の部位(例えば、柱部19や肩部12)での変形を伴うことなく、ボトル1の内圧変化(減圧)を吸収できる。
【0017】
以上、本実施形態によれば、胴部13(柱部19)をボトル軸O方向の外側から内側に向けて縮径するくびれ形状としたので、ボトル1を把持する際のハンドリング性を向上させることができる。
しかも、本実施形態では、パネル部17の底壁部21を平坦面に形成したので、仮に胴部13と同様にボトル軸O方向の外側から内側に向けて縮径させて底壁部21を湾曲させた場合に比べて、減圧吸収時における径方向への底壁部21の変形量を確保できる。
したがって、本実施形態のボトル1によれば、減圧吸収性能を維持しつつ、ボトル1のハンドリング性を向上させることができる。
【0018】
ところで、本実施形態では、上述したように底壁部21を平坦面に形成したが、仮に底壁部21を外周縁から中央部に向かうにつれ径方向の内側から外側に向けて膨出させた場合には、減圧時に底壁部21が径方向の内側に向けて反転変形する。具体的には、底壁部21が外周縁から中央部に向かうにつれ径方向の外側から内側に向けて膨出する。この場合は、パネル部17(底壁部21)自体の減圧吸収性能が比較的高く、底壁部21の変形のみで減圧を吸収できるが、柱部19はほとんど変形しない。しかしながら、反転変形の後、ボトル1内をさらに減圧すると、減圧に伴って底壁部21が径方向の内側にさらに変位しようとすることで、ボトル1全体が異変形する。具体的には、ボトル1がボトル軸O方向に直交する横断面形状で三角形状や楕円形状等に変形してしまう。
【0019】
これに対して、
図4に示す本実施形態のように底壁部21を平坦面に形成した場合には、減圧時に底壁部21が径方向の内側に向けて変位すると、この変位に伴って縦側壁部22aが径方向の外側端部を中心にして柱部19の内側に向けて変位する(
図4中矢印参照)。すなわち、柱部19における周方向の両側に位置する縦側壁部22a同士が、接近するように変位することとなる。これにより、縦側壁部22aの底壁部21からの立ち上がり角度が急峻となり、柱部19の径方向に対する剛性を向上させることができる(
図4中実線参照)。その結果、ボトル1の減圧時や外力が作用したときに、ボトル1の異変形や柱部19の径方向の内側への折れ等の発生を抑制できる。
【0020】
ここで、本願発明者は、上述した本実施形態のボトル(以下、試験ボトルという)、及び比較ボトルのそれぞれについて減圧強度(kPa)と吸収容量(ml)との関係を解析した。なお、比較ボトルとしては、胴部13(柱部19)をボトル軸O方向の外側から内側に向けて縮径するくびれ形状に形成するとともに、パネル部17の底壁部21を胴部13と同様に湾曲面に形成したものを用いた。また、本解析に用いた試験ボトル及び比較ボトルとして、500ml用のものを採用した。
【0021】
まず、両ボトルの何れについても、ボトル内を減圧していくと、減圧強度の増加に伴って減圧吸収容量が除々に増加することが確認できた。これは、上述したようにボトル内の減圧によって、パネル部17の底壁部21が径方向の内側に向けて変形したためと考えられる。
【0022】
その後、さらに減圧強度を増加させると、比較ボトルにおいては、減圧強度の増加に追従できず、減圧途中でパネル部17以外の箇所に局部変形が生じる場合があった。比較ボトルに局部変形が生じた時点での吸収容量、すなわち比較ボトルのパネル部17による最大吸収容量は18.2(ml)であった。
一方、試験ボトルにおいては、減圧強度の増加に対して最大吸収容量が27.3(ml)まで耐えることができた。これは、上述したように試験ボトルは、パネル部17の底壁部21が平坦面に形成されているため、比較ボトルに比べてパネル部17の底壁部21が径方向の外側に位置することになる。そのため、減圧時による底壁部21の径方向の内側への変形量を大きく確保できるためだと考えられる。
【0023】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0024】
例えば、胴部13の曲率半径等は適宜設計変更が可能である。
また、パネル部17及び柱部19の数や配置等は、ボトル1に要求される強度や減圧吸収容量等を考慮して適宜設計変更が可能である。
また、上述した実施形態では、肩部12、胴部13および底部14のそれぞれのボトル軸Oに直交する横断面視形状を円形状としたが、これに限らず例えば、多角形状にする等適宜変更してもよい。
【0025】
また、ボトル1を形成する合成樹脂材料は、例えばポリエチレンテレフタレートや、ポリエチレンナフタレート、非晶性ポリエステル等、またはこれらのブレンド材料等、適宜変更してもよい。
さらに、ボトル1は単層構造体に限らず中間層を有する積層構造体としてもよい。この中間層としては、例えばガスバリア性を有する樹脂材料からなる層、再生材からなる層、若しくは酸素吸収性を有する樹脂材料からなる層等が挙げられる。
【0026】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記変形例を適宜組み合わせてもよい。