(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890131
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】金属調計器板の製造方法
(51)【国際特許分類】
G01D 13/04 20060101AFI20160308BHJP
G01D 13/02 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
G01D13/04 Z
G01D13/02 C
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-199307(P2011-199307)
(22)【出願日】2011年9月13日
(65)【公開番号】特開2013-61218(P2013-61218A)
(43)【公開日】2013年4月4日
【審査請求日】2014年8月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100060690
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 秀雄
(74)【代理人】
【識別番号】100108017
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】桜井 勇
【審査官】
櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】
特開2008−014639(JP,A)
【文献】
特開2007−206427(JP,A)
【文献】
特開2013−047640(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2011/0209637(US,A1)
【文献】
特開2010−198008(JP,A)
【文献】
特開2009−154310(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 13/04
G01D 13/02
B41J 2/325
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のフィルムの一方の面に金属薄膜層を形成する金属薄膜層形成工程、
前記金属薄膜層を第2のフィルムにリボンプリンターにより印刷する印刷工程、
前記金属薄膜層が印刷された前記第2のフィルムの前記金属薄膜層上に、着色層をリボンプリンターにより形成する着色層形成工程、及び、
前記第2のフィルムに印刷された前記金属薄膜層及び前記着色層を透明シートまたは半透明シートに熱転写法により転写する転写工程を
順次有することを特徴とする金属調計器板の製造方法。
【請求項2】
前記転写工程に先立ち、前記透明シートまたは半透明シートの他方の面に光硬化樹脂を用いて線画模様を形成する線画模様形成工程を有することを特徴とする請求項1に記載の金属調計器板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車輌用メータに用いる金属調計器板、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車輌用メータにおいて金属からなる計器板を用いた場合、高級感、精密機器感が付与されて付加価値の高いものとなる。しかしながら、このような金属製の計器板はコスト高、製造工程の煩雑さ、さらに各種加工に当たり湿式処理を行った場合にはその廃液処理の必要性などの問題を引き起こす。また、たとえわずかでもあっては、さらなる軽量化が求められる車輌用途においては、計器板の軽量化も重要な課題であり、このために金属製計器板の重量が問題となることがある。
【0003】
このために、現在は金属調の外観を有する樹脂からなる金属調計器板が用いられるようになってきた。
【0004】
自動車などの車輌用メータの計器板は、例えば
図5(a)に示すような計器板A
1〜A
4の場合、車輌用メータαの計器板A
1〜A
4のように複数組み合わせて用いられることが多い。ここで、例えば計器板A
2の場合、次のように使用される。
【0005】
すなわち、
図5(b)にそのメータ部の断面をモデル的に示すように、計器ケース20内に収納され配線板23に保持された指針駆動部25は指針26を駆動する。そして、計器板A
2は指針26の背面側にあって、LEDなどの照明器具24によって裏面より照明され、計器板A
2の文字はこの照明光が透過することにより運転者に認識される。図中符号22はフード部、21は保護ガラス部をそれぞれ示す。
【0006】
このような計器板において、特許第4543046号公報では、半透明シート、スモークシートを含む透明シート(以下、これらを含めて「透明シート」と云う)の一方の面に紫外線硬化樹脂により線画模様を形成するとともに他方の面に、部分的に空白としたシルク印刷により、あるいは、全面に金属蒸着を施した後にレーザーによる部分的な剥離処理により、文字・数字を透明に形成する方法が提案されており、この方法により外観に美観を付与できるとしている。
【0007】
そして、この方法により実際に金属調計器板を作製した場合、(1)一方の面に線画模様が形成され、他方の面にミラーインキを用いたシルク印刷により金及び/または銀色の計器面とそこに透過タイプの文字・数字等とが形成されている金属調計器板、(2)一方の面に線画模様が形成され、他方の面に金属蒸着面とそこに透過タイプの文字・数字等とが形成されている金属調計器板、の2種類の金属調計器板が形成される。
【0008】
しかし、これら2種の金属調計器板には、それぞれ次のような問題がある。
【0009】
すなわち、前者ではシルク印刷により、フレーク状になったミラーインクが透明シートに印刷されるために、印刷により形成されたインキ層にミラーインキ成分の凹凸が形成され、その凹凸により平滑度が低下し、結果として、優れた金属感が得られない。
【0010】
一方、後者によれば、蒸着による均一な処理により金属感は満足できるが、金属蒸着、及び、レーザーによる剥離処理が必要であるために製造コストが高く、さらに生産性も低いものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第4543046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、上記した従来の問題点を改善する、すなわち、高い金属感を有しながらも、低コストで製造可能な金属調計器板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の金属調計器板の製造方法は
請求項1に記載の通り、第1のフィルムの一方の面に金属薄膜層を形成する金属薄膜層形成工程、前記金属薄膜層を第2のフィルムにリボンプリンターにより印刷する印刷工程、前記金属薄膜層が印刷された前記第2のフィルムの前記金属薄膜層上に、着色層をリボンプリンターにより形成する着色層形成工程、及び、前記第2のフィルムに印刷された前記金属薄膜層及び前記着色層を透明シートまたは半透明シートに熱転写法により転写する転写工程を順次有することを特徴とする金属調計器板の製造方法である。
【0018】
本発明の金属調計器板の製造方法は
請求項2に記載の通り、
請求項1に記載の金属調計器板の製造方法において、前記転写工程に先立ち、前記透明シートまたは半透明シートの他方の面に光硬化樹脂を用いて線画模様を形成する線画模様形成工程を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
また、本発明の金属調計器板の製造方法によれば、高い金属感を有する金属調計器板を低コストで製造できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】
図1は本発明に係る金属調計器板の一例Aのモデル断面図である。
【
図2】金属調計器板Aの視認される状態を示したモデル図である。
【
図3】
図3(a)は透明シート1の一方の面に線画模様層2が形成された状態を示すモデル断面図である。
図3(b)は金属薄膜層形成工程により第1のフィルム5の一方の面に金属薄膜層3が形成された状態を示すモデル断面図である。
図3(c)はリボンプリンターにより、金属薄膜層3が部分的に文字形成部4’を形成して第2のフィルム6に印刷された状態を示すモデル断面図である。
【
図4】
図4は転写工程を行っている状態を示すモデル断面図である。
【
図5】
図5(a)は自動車用メータαの一例を示すモデル図である。
図5(b)は自動車用メータαの計器板A
2付近のモデル断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の金属調計器板について、図面を用いて説明する。
【0023】
図1に本発明に係る金属調計器板の一例Aのモデル断面図を示す。
【0024】
図中符号1を付して示された透明シートの上面に樹脂、この例では紫外線硬化樹脂により線画模様層2が形成されている。下面側には文字形成部4以外の部分に金属薄膜層3が一方の面に形成されたフィルムから熱転写法により転写されて金属薄膜層が形成されている。
【0025】
このような金属調計器板Aは実際に使用される際には、図中下面側から照明され、上面側から視認されるために、金属薄膜層3が形成された部分が金属感を有し、文字形成部4は照明により明るく見える。
図2に、このような計器板Aの視認状態を示す。図中符号10は金属感を有する金属調部(裏面には金属薄膜層3が形成されている)、11は文字部(裏面は金属薄膜層3が形成されていない文字形成部4である)である。さらに、この例では線画模様層2の表面には同心円状に多数の細かい線が立体的に描かれているために、計器板全体に精密機器的な高級感を付与している。
【0026】
このような金属調計器板Aは例えば次のようにして製造することができる。
【0027】
まず、透明シート1として、透明ないし半透明の樹脂からなるシートを用いる。シートを構成する樹脂としてはポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート)などが挙げられる。これらベース樹脂にスモーク剤を配合して透明シート1を形成しても良い。
【0028】
このような透明シートの一方の面に必要に応じ、樹脂により線画模様を形成する。
このような線画模様としては細かい同心円(スピン模様)、ヘアライン模様、放射模様、カーボン縞などが挙げられる。このような線画模様の形成方法は例えば特許文献1等で挙げられている公知の方法を採用できるが、例えば、紫外線硬化樹脂を、彫刻などにより微細な立体模様を形成した面を有する金属型に塗布したのちに、塗布された未硬化樹脂面を上記の透明シートに積層し、次いで、透明シート側から紫外線を照射し、樹脂を硬化させた後に透明シートごと離型させることにより形成することができる。このように一方の面に樹脂により線画模様層2が形成されている透明シート1のモデル断面図を
図3(a)に示した。
【0029】
なお、上記では線画模様層を設けたが、これに代えて透明シートにインクジェット印刷で模様を描いたり、あるいは、透明シートに例えば透明シートに砥石状あるいはやすり状のものにより複数ないし多数の微細な溝を設けてもよい。
【0030】
金属薄膜層が一方の面に形成された第1のフィルム(モデル断面図を
図3(b)に示す。図中符号3は金属薄膜層、符号5は第1のフィルムをそれぞれ示す)は、第1のフィルムの一方の面に対して蒸着、スパッタリング等の真空応用技術によって形成することができる(金属薄膜層形成工程)。なお、これら真空応用技術によってフィルムに金属薄膜層を形成する場合、フィルムをリール状に巻き取り、かつ、別の空のリールに掛け渡した状態で成膜装置内に収納し、装置内を減圧したのち、上記空のリールによってフィルムを巻き取りながらフィルム面に対して連続的に金属薄膜層成膜処理を行うことで、1回の減圧処理で、広い面積の金属薄膜層成膜処理を行うことができるために成膜装置内で透明シートに対して金属薄膜層の成膜処理を直接行う場合に比べ、きわめて低コストとなる。
【0031】
上記で形成する金属薄膜層としては、アルミニウム、チタン、ニッケルなどの金属薄膜層が挙げられる。
【0032】
上記のように第1のフィルムの一方の面に金属薄膜層を形成した後、第2のフィルムにこの金属薄膜層をリボンプリンターで印刷する(印刷工程)。印刷後のモデル断面図を
図3(c)に示す。図中符号6は第2のフィルムを示す。このとき、リボンプリンターとしては例えば特開2010−208209号で開示されている公知の熱転写装置を用いることができる。この印刷工程においては、文字抜き表示となる部分はリボンプリンターを制御して印刷を行わない。このようにすることにより、金属薄膜層を用いながら、レーザー処理が不要となるので、生産性が高く、製造コストが低廉となる。
【0033】
第2のフィルムに印刷された金属薄膜層の上に、さらにリボンプリンターにより着色層を形成する(着色層形成工程)ことができ、このとき、リボンプリンターよる印刷は、スクリーン印刷よりも高い解像度の印刷が可能であるために着色濃度の微妙な制御が可能となるために、グラデーションを付与することができ、より高級感、精密感のある計器板の作製が可能となる。
【0034】
このように必要に応じて着色層が積層された第2のフィルムの金属薄膜層(及び着色層)の透明シート1への転写を熱転写法により行う(転写工程)。転写中の状態をモデル的に
図4に示す(転写用の加熱ヘッドは省略している)。
【0035】
さらに、第1のフィルムの金属薄膜層形成面に、ヘアライン、同心円等の立体模様をあらかじめ形成しておくことにより、その模様を金属薄膜層の視認可能側に位置させることが可能となり、このとき、高いデザイン性を得ることができる。
【0036】
なお、本発明の金属調計器板において、圧空成形法等の公知の方法により立体形状が付与されていても良く、この場合も本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0037】
A 本発明に係る金属調計器板の一例
1 透明シート
2 線画模様層
3 金属薄膜層
4、4’ 文字形成部
5 第1のフィルム
6 第2のフィルム
10 金属調部
11 文字部