(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記観察受光面が前記光ビームに対する透過性を有する材料で形成され、前記観察手段は前記観察受光面の前記光学像を前記光ビームの入射方向とは反対側から観察する請求項1に記載の描画装置。
前記距離検出手段は、前記光ビームが照射される前記基板表面に、前記光ビームの入射方向とは異なる方向から光を照射する照射部と、該光が前記基板表面で反射してなる反射光学像を受光する受光部とを備え、前記受光部に受光された前記反射光学像の位置に基づいて前記収束光学系と前記基板表面との距離を検出する請求項1または2に記載の描画装置。
基板を水平状態に載置可能なステージと、光源からの光を前記基板表面に略鉛直方向から収束させる収束光学系を有し収束された光ビームにより前記基板表面に描画する描画手段と、前記描画手段からの前記光ビームの照射位置を、前記ステージに載置される前記基板に対して水平方向に相対移動させる移動手段と、前記描画装置が前記ステージに載置される前記基板表面に設けられた基準部を撮像して前記基板と前記光ビームの照射位置との水平方向における相対位置を検出する位置検出手段と、を有する描画装置の焦点調整方法において、
水平方向位置が前記ステージに載置される前記基板上とは異なり、かつ鉛直方向位置が前記ステージに載置される前記基板表面の鉛直方向位置と略等しい位置に観察受光面を設定する基準設定工程と、
前記観察受光面に入射させた前記光ビームの光学像を観察し、該光学像が最も小さくなるように、前記収束光学系の鉛直方向における焦点位置を調整する事前焦点調整工程と、
焦点位置調整後の前記収束光学系と前記観察受光面との鉛直方向距離を基準距離として記憶する記憶工程と、
前記ステージに載置した前記基板の表面に前記光ビームを照射して描画を行うとともに、該光ビームが照射される前記基板表面と前記収束光学系との鉛直方向距離を検出し、その検出結果と前記基準距離とに基づいて、前記収束光学系の焦点位置を前記基板表面に合わせる描画時焦点調整工程と
を備え、
前記位置検出手段の鉛直方向における焦点位置と、前記基準設定工程で設定される前記観察受光面の鉛直方向位置とを一致させることを特徴とする焦点調整方法。
前記描画時焦点調整工程では、前記事前調整工程で設定した前記焦点位置を、前記検出結果と前記基準距離との差に対応した距離だけ変更した位置に、前記収束光学系の焦点位置を調整する請求項6に記載の焦点調整方法。
前記位置検出手段の鉛直方向における焦点位置を前記基準設定工程で設定される前記観察受光面の鉛直方向位置と一致させたときの、前記位置検出手段と前記観察受光面との距離を記憶する請求項6ないし8のいずれかに記載の焦点調整方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の技術では、描画ヘッドの収束光学系の焦点位置が変動しないことが前提となっている。すなわち、描画ヘッドと基板との距離を予め定められた値に維持するような制御が行われる。しかしながら、実際には収束光学系の焦点位置にはばらつきや経時変化があるため、単に描画ヘッドと基板との距離を一定に維持する制御では、必ずしも焦点位置を基板表面に一致させることができるとは限らない。
【0007】
また特許文献2に記載の技術では、経時変化を含んだ実際の収束光学系の焦点位置を把握することが可能であるが、基板への描画時におけるフォーカス制御については特許文献2には記載されていない。このため、描画時の焦点位置を基板表面に一致させることが可能であるか否かについては不明である。また、予め設定された投影面上での観察を行っていることから、例えば基板の厚さが変化した場合に対応するためには、特許文献2に開示されない構成が別途必要であると考えられる。
【0008】
このように、収束光学系の経時変化にも対応しつつ描画時の基板表面に収束光学系の焦点位置を適正に調整するという点において、上記従来技術は改良の余地が残されている。特に、異なる厚さの基板にも対応することのできる焦点調整技術は現時点では確立されているとは言えない。
【0009】
この発明は上記課題に鑑みなされたものであり、基板表面に対して光ビームを照射して描画する描画装置、およびその焦点調整方法において、収束光学系の経時変化に対応することができ、しかも描画時の基板表面に収束光学系の焦点位置を適正に調整することのできる技術を提供することを第1の目的とする。また、異なる厚さの基板に対応して、それぞれの基板表面に収束光学系の焦点位置を適正に調整することのできる技術を提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明にかかる描画装置は、上記第1および第2の目的を達成するため、基板を水平状態に載置可能なステージと、光源からの光を前記基板表面に略鉛直方向から収束させる収束光学系を有し、収束された光ビームにより前記基板表面に描画する描画手段と、前記描画手段からの前記光ビームの照射位置を、前記ステージに載置される前記基板に対して水平方向に相対移動させる移動手段と、前記ステージに載置される前記基板上とは異なる位置で前記光ビームを受光する観察受光面を有し、該観察受光面に入射した光学像を観察する観察手段と、前記観察受光面の鉛直方向位置を変化させる観察高さ変更手段と、前記観察高さ変更手段により鉛直方向位置が前記ステージに載置される前記基板表面の鉛直方向位置と略等しく設定された前記観察受光面に対して前記描画手段からの前記光ビームが照射された状態で、前記観察手段により観察される光学像に基づいて前記収束光学系の鉛直方向における焦点位置を調整する焦点調整手段と、焦点位置が調整された前記収束光学系と前記観察受光面との鉛直方向距離を検出し基準距離として記憶するとともに、前記描画手段による前記基板表面への描画の際に前記収束光学系と前記光ビームが照射される前記基板表面との鉛直方向距離を描画時距離として検出する距離検出手段と
、前記ステージに載置される前記基板表面に設けられた基準部を撮像して前記基板と前記光ビームの照射位置との水平方向における相対位置を検出する位置検出手段とを備え、
前記位置検出手段の鉛直方向における焦点位置が、前記基準距離が検出された時の前記観察受光面の鉛直方向位置に一致し、前記焦点調整手段は、前記描画手段による前記基板表面への描画の際、前記描画時距離と前記基準距離とに基づいて前記収束光学系の鉛直方向における焦点位置を調整することを特徴としている。
【0011】
また、この発明にかかる焦点調整方法は、上記第1および第2の目的を達成するため、基板を水平状態に載置可能なステージと、光源からの光を前記基板表面に略鉛直方向から収束させる収束光学系を有し収束された光ビームにより前記基板表面に描画する描画手段と、前記描画手段からの前記光ビームの照射位置を、前記ステージに載置される前記基板に対して水平方向に相対移動させる移動手段と
、前記描画装置が前記ステージに載置される前記基板表面に設けられた基準部を撮像して前記基板と前記光ビームの照射位置との水平方向における相対位置を検出する位置検出手段と、を有する描画装置の焦点調整方法において、水平方向位置が前記ステージに載置される前記基板上とは異なり、かつ鉛直方向位置が前記ステージに載置される前記基板表面の鉛直方向位置と略等しい位置に観察受光面を設定する基準設定工程と、前記観察受光面に入射させた前記光ビームの光学像を観察し、該光学像が最も小さくなるように、前記収束光学系の鉛直方向における焦点位置を調整する事前焦点調整工程と、焦点位置調整後の前記収束光学系と前記観察受光面との鉛直方向距離を基準距離として記憶する記憶工程と、前記ステージに載置した前記基板の表面に前記光ビームを照射して描画を行うとともに、該光ビームが照射される前記基板表面と前記収束光学系との鉛直方向距離を検出し、その検出結果と前記基準距離とに基づいて、前記収束光学系の焦点位置を前記基板表面に合わせる描画時焦点調整工程とを備え
、前記位置検出手段の鉛直方向における焦点位置と、前記基準設定工程で設定される前記観察受光面の鉛直方向位置とを一致させることを特徴としている。なお、ここで「光学像が最も小さくなる」とは、光ビームが最も絞られて像のコントラストが最大となる状態のことである。
【0012】
このように構成された発明では、特許文献2に記載の技術と同様に、観察受光面に結ぶ光ビームの光学像を観察して収束光学系の焦点位置が調整される。それに加えて、観察受光面の鉛直方向位置が変更可能となっており、ステージ上の基板表面と略同一の鉛直方向位置に設定されるととともに、収束光学系の焦点位置が観察受光面上に調整されたときの収束光学系と観察受光面との鉛直方向距離が基準距離として記憶される。そして、描画手段による基板表面への描画の際には、その時の収束光学系と基板表面との距離(描画時距離)と基準距離とに基づいて収束光学系の焦点位置が調整される。これにより、上記第1および第2の目的が達成される。
【0013】
より具体的には次の通りである。まず、描画時の収束光学系と基板表面との距離を検出して収束光学系の焦点位置を調整するという技術は特許文献1にも記載されている。しかしながら特許文献1に記載の技術では、本発明の基準距離に対応する目標焦点位置に、収束光学系の実際の焦点位置を反映させる手段がなかった。これに対して本発明では、観察受光面における観察により実際の収束光学系における焦点位置を調整し、そのときの収束光学系と観察受光面との距離を基準距離として設定している。そのため、この基準距離を基にして描画時の焦点位置の調整を行うことで、焦点位置を基板表面に一致させることが可能である。また、距離検出手段および収束光学系の特性に経時変化があっても、上記のような動作を行うことでその時点の特性に応じた基準距離が設定されて焦点調整が行われるため、装置の経時変化にも対応することができる。これにより、第1の目的が達成される。
【0014】
また、このような基準距離の設定を、鉛直方向において基板表面と略同一の位置に設けられた観察
受光面を用いて行い、しかも観察
受光面の鉛直方向位置が可変であるため、基板の厚さが変わって基板表面の鉛直方向位置が変化した場合でも、その位置に合わせて的確に焦点位置を設定することができる。これにより、第2の目的が達成される。
さらに、ステージに載置される基板表面に設けられた基準部を撮像して基板と光ビームの照射位置との水平方向における相対位置を検出する位置検出手段を備え、位置検出手段の鉛直方向における焦点位置が、基準距離が検出された時の観察受光面の鉛直方向位置に一致するように構成されることで、基板と光ビームの照射位置との水平方向における位置合わせ、すなわちアライメント調整が可能である。そして、位置検出手段の焦点位置を基準距離が検出された時の観察受光面の鉛直方向位置に合わせることにより、位置検出手段、焦点調整手段および距離検出手段が全て観察受光面を介して統一された基準に基づいて動作することとなるので、これらが連携して行う描画動作をより高精度に制御することができる。
【0015】
上記発明にかかる描画装置では、例えば、観察受光面が光ビームに対する透過性を有する材料で形成され、観察手段は観察受光面の光学像を光ビームの入射方向とは反対側から観察するように構成されてもよい。このようにすると、光ビームの光軸上で光学像を観察することが可能となり、その大きさを精度よく検出することができるので、焦点位置の調整を高精度に行うことが可能である。
【0016】
また、例えば、距離検出手段は、光ビームが照射される基板表面に、光ビームの入射方向とは異なる方向から光を照射する照射部と、該光が基板表面で反射してなる反射光学像を受光する受光部とを備え、受光部に受光された反射光学像の位置に基づいて収束光学系と基板表面との距離を検出するものであってもよい。このようにすると、収束光学系と基板表面との距離が受光部に入射する反射光学像の位置に反映されるため、これを検出することで、収束光学系と基板表面との距離を把握することが可能である。また、同じ構成により観察受光面からの反射光学像を受光することで、収束光学系と観察受光面との距離についても同様に求めることができる。
【0018】
また例えば、観察受光面に、位置検出手段の焦点位置を調整するための基準パターンが設けられていてもよい。このようにすることで、観察受光面上の基準パターンを用いて位置検出手段の焦点位置を調整するのと同時に上記した焦点調整手段と距離検出手段との共通の基準設定を行うことができるので、描画前の調整動作を効率よく行うことができる。
【0019】
これらの描画装置では、例えば、収束光学系は鉛直方向に移動可能なフォーカシングレンズを備え、焦点調整手段はフォーカシングレンズの鉛直方向位置を制御するようにしてもよい。これにより光源や収束光学系の全体を動かす必要がなく、また位置制御の精度向上を図ることができる。
【0020】
また、この発明にかかる焦点調整方法では、例えば、描画時焦点調整工程では、事前調整工程で設定した焦点位置を、検出結果と基準距離との差に対応した距離だけ変更した位置に、収束光学系の焦点位置を調整するようにしてもよい。こうすることで、描画時の収束光学系と基板表面との距離と基準距離との差をキャンセルするように焦点位置を変更して、光ビームを基板表面に収束させることができる。
【0022】
また例えば、観察受光面に基準パターンを設け、位置検出手段により基準パターンを撮像してその結果に基づき焦点位置の調整を行うようにしてもよい。
【0023】
これらの場合において、例えば、位置検出手段の鉛直方向における焦点位置を基準設定工程で設定される観察受光面の鉛直方向位置と一致させたときの位置検出手段と観察受光面との距離を記憶しておくようにしてもよい。この距離は、収束光学系の焦点調整における基準距離と同様、位置検出手段における焦点調整のための基準となるものである。したがって、これを基準距離とともに記憶しておくことで、収束光学系と位置検出手段との鉛直方向における相対的な位置関係を把握しながら各部の制御を行うことができる。また、例えば描画対象となる基板の厚みに変動があった場合、その変動分を加味した制御を収束光学系と位置検出手段とのそれぞれに対して実行することが可能となる。
【0024】
また、これらの焦点調整方法において、第1の基板に対して描画手段による描画を行った後、第1の基板と異なる第2の基板に対して描画手段による描画を行うとき、例えば、それらの基板が同じ厚さであれば第2の基板に対する基準設定工程、事前焦点調整工程および記憶工程を省略し、第1の基板における基準距離を用いて描画時焦点調整工程を実行する一方、異なる厚さであれば第2の基板に対して基準設定工程、事前焦点調整工程、記憶工程および描画時焦点調整工程を実行するようにしてもよい。
【0025】
複数の基板に対して前後して描画を行う場合、基板の厚さが同じであれば鉛直方向の調整結果を変更する必要がないので、後の基板については焦点位置の調整を省くことで、スループットの向上を図ることが可能である。一方、厚さが異なる場合、改めて上記の動作を行うことにより、その時点の装置の状態が反映された調整が行われるので、装置の経時変化にも対応して、安定して高精度の描画を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、鉛直方向において基板表面と略同一の位置に設けた観察受光面に結ぶ光ビームの光学像に基づき収束光学系の焦点調整を行うとともに、その時の収束光学系と観察受光面との距離を基準距離として記憶しておき、基板表面への描画時には、収束光学系と基板表面との距離と、基準距離とに基づいて収束光学系の焦点位置を調整する。これにより、収束光学系や位置検出手段の特性の経時変化によらず、描画時の収束光学系の焦点位置を安定して基板表面に一致させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、本発明にかかるパターン描画装置の一実施形態を示す正面図である。また、
図2は
図1のパターン描画装置の平面図である。パターン描画装置100は、レジスト等の感光材料の層が形成された基板Wの上面に光を照射して、パターンを描画する装置である。なお、基板Wは、半導体基板、プリント基板、カラーフィルタ用基板、液晶表示装置やプラズマ表示装置に具備されるフラットパネルディスプレイ用ガラス基板、光ディスク用基板などの各種基板のいずれでもよい。図示例では円形の半導体基板の表面に形成された下層パターンに重ねて上層パターンが描画される。
【0029】
パターン描画装置100は、本体フレーム101で構成される骨格の天井面および周囲面にカバーパネル(図示省略)が取り付けられることによって形成される本体内部と、本体フレーム101の外側である本体外部とに、各種の構成要素を配置した構成となっている。
【0030】
パターン描画装置100の本体内部は、処理領域102と受け渡し領域103とに区分されている。これらの領域のうち処理領域102には、主として、ステージ10、ステージ移動機構20、ステージ位置計測部30、光学ユニット40、アライメントユニット60が配置される。一方、受け渡し領域103には、処理領域102に対する基板Wの搬出入を行う搬送ロボットなどの搬送装置70が配置される。
【0031】
また、パターン描画装置100の本体外部には、アライメントユニット60に照明光を供給する照明ユニット61が配置される。また、同本体外部には、パターン描画装置100が備える装置各部と電気的に接続されて、これら各部の動作を制御する制御部90が配置される。
【0032】
なお、パターン描画装置100の本体外部で、受け渡し領域103に隣接する位置には、カセットCを載置するためのカセット載置部104が配置される。また、カセット載置部104に対応し、本体内部の受け渡し領域103に配置された搬送装置70は、カセット載置部104に載置されたカセットCに収容された未処理の基板Wを取り出して処理領域102に搬入(ローディング)するとともに、処理領域102から処理済みに基板Wを搬出(アンローディング)してカセットCに収容する。カセット載置部104に対するカセットCの受け渡しは、図示しない外部搬送装置によって行われる。この未処理基板Wのローディング処理および処理済基板Wのアンローディング処理は制御部90からの指示に応じて搬送装置70が動作することで行われる。
【0033】
ステージ10は、平板状の外形を有し、その上面に基板Wを水平姿勢に載置して保持する保持部である。ステージ10の上面には、複数の吸引孔(図示省略)が形成されており、この吸引孔に負圧(吸引圧)を付与することによって、ステージ10上に載置された基板Wをステージ10の上面に固定保持することができるようになっている。そして、ステージ10はステージ移動機構20により移動させられる。
【0034】
ステージ移動機構20は、ステージ10を主走査方向(Y軸方向)、副走査方向(X軸方向)、及び回転方向(Z軸周りの回転方向(θ軸方向))に移動させる機構である。ステージ移動機構20は、ステージ10を回転可能に支持する支持プレート22を支持するベースプレート24と、支持プレート22を副走査方向に移動させる副走査機構23と、ベースプレート24を主走査方向に移動させる主走査機構25とを備える。副走査機構23および主走査機構25は、制御部90からの指示に応じてステージ10を移動させる。
【0035】
副走査機構23は、支持プレート22の下面に取り付けられた図示しない移動子とベースプレート24の上面に敷設された図示しない固定子とにより構成されたリニアモータ23aを有している。また、支持プレート22とベースプレート24との間には、副走査方向に延びる一対のガイド部23bが設けられている。このため、リニアモータ23aを動作させると、ベースプレート24上のガイド部23bに沿って支持プレート22が副走査方向Xに移動する。
【0036】
主走査機構25は、ベースプレート24の下面に取り付けられた移動子とパターン描画装置100の基台106上に敷設された固定子とにより構成されたリニアモ−タ25aを有している。また、ベースプレート24と基台106との間には、主走査方向に延びる一対のガイド部25bが設けられている。このため、リニアモータ25aを動作させると、基台106上のガイド部25bに沿ってベースプレート24が主走査方向Yに移動する。
【0037】
ステージ位置計測部30は、ステージ10の位置を計測する機構である。ステージ位置計測部30は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じてステージ10の位置を計測する。ステージ位置計測部30は、例えばステージ10に向けてレーザ光を照射し、その反射光と出射光との干渉を利用して、ステージ10の位置を計測する機構により構成されているが、その構成動作はこれに限定されるものではない。この実施形態では、ステージ位置計測部30は、レーザ光を出射する出射部31と、ビームスプリッタ32と、ビームベンダ33と、第1干渉計34と、第2干渉計35とを備える。これら出射部31、各干渉計34、35は、制御部90と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じてステージ10の位置を計測する。
【0038】
出射部31から出射されたレーザ光は、まずビームスプリッタ32に入射し、ビームベンダ33に向かう第1分岐光と、第2干渉計35に向かう第2分岐光とに分岐される。第1分岐光は、ビームベンダ33により反射され、第1干渉計34に入射するとともに、第1干渉計34からステージ10の第1の部位に照射される。そして、第1の部位で反射した第1分岐光が、再び第1干渉計34へと入射する。第1干渉計34は、ステージ10の第1の部位に向かう第1分岐光と第1の部位で反射された第1分岐光との干渉に基づいて第1の部位の位置に対応した位置パラメータを計測する。
【0039】
一方、第2分岐光は、第2干渉計35に入射するとともに、第2干渉計35からステージ10の第2の部位(ただし、第2の部位は、第1の部位とは異なる位置である。)に照射される。そして、第2の部位で反射した第2分岐光が、再び第2干渉計35へ入射する。第2干渉計35は、ステージ10の第2の部位に向かう第2分岐光とステージ10の第2の部位で反射された第2分岐光との干渉に基づいて第2の部位の位置に対応した位置パラメータを計測する。
【0040】
制御部90は、第1干渉計34および第2干渉計35の各々から、ステージ10の第1の部位の位置に対応した位置パラメータ及びステージ10の第2の部位の位置に対応した位置パラメータを取得する。そして、取得した各位置パラメータに基づいて、ステージ10の位置を算出する。
【0041】
アライメントユニット60は、基板Wの上面に形成された図示しないアライメントマークを撮像する。アライメントユニット60は、鏡筒、対物レンズ、およびCCDイメージセンサを有するアライメントカメラ601を備える。アライメントカメラ601が備えるCCDイメージセンサは、例えばエリアイメージセンサ(二次元イメージセンサ)により構成される。また、アライメントユニット60は、図示しない昇降機構によって所定の範囲内で昇降可能に支持されている。
【0042】
照明ユニット61は、鏡筒とファイバ601を介して接続され、アライメントユニット60に対して照明用の光を供給する。照明ユニット61から延びるファイバ601によって導かれる光は、アライメントカメラ601の鏡筒を介して基板Wの上面に導かれ、その反射光は、対物レンズを介してCCDイメージセンサで受光される。これによって、基板Wの上面が撮像されて撮像データが取得されることになる。アライメントカメラ601は制御部90の画像処理部と電気的に接続されており、制御部90からの指示に応じて撮像データを取得し、取得した撮像データを制御部90に送信する。
【0043】
アライメントカメラ601から与えられる撮像データに基づき制御部90は、基板Wの基準位置に設けられた基準マークを検出して光学ユニット40と基板Wとの相対位置を位置決めするアライメント処理を行う。そして、光学ユニット40から描画パターンに応じて変調された光ビームを基板Wの所定位置に照射することでパターン描画を行う。
【0044】
本実施形態では、光学ユニット40は、2つの光学ヘッド40a、40bを有している。光学ヘッド40a、40bはともに同一構成を有しており、光照射部から与えられるレーザ光を描画パターンに対応するストリップデータに基づき変調する。ここでは、
図1を参照しつつ光学ヘッド40aに関連する構成について説明するが、光学ヘッド40bについても同様に構成されている。なお、光学ヘッドの設置数はこれに限定されず任意である。
【0045】
光照射部41は、レーザ駆動部411、レーザ発振器412および照明光学系413を有している。この光照射部41では、レーザ駆動部411の作動によりレーザ発振器412からレーザ光が出射され、照明光学系413を介して光学ヘッド40aに導入される。この光学ヘッド40aには、光変調素子が設けられており、ストリップデータに基づきレーザ光を変調する。そして、光学ヘッド40aは変調レーザ光を光学ヘッド40aの直下位置で移動している基板Wに対して落射することでステージ10に保持された基板Wを露光してパターンを描画する。これによって、未処理基板Wに形成されている下層パターンに対して上層パターン(描画パターン)が重ねて描画される。
【0046】
図3は光学ヘッド40aの構成をより詳しく示す図である。なお、もう1つの光学ヘッド40bの構成も同一である。光学ヘッド40aは、回折格子型の空間光変調器を有する光変調ユニット421を備えている。レーザ発振器412からのレーザ光Lは、照明光学系413およびミラー422により、その反射面の法線が光軸に対して傾斜して配置される光変調ユニット421へ導かれる。
【0047】
このとき、レーザ発振器412からの入射光は照明光学系413により強度分布が均一な線状の光(光束断面が線状の光)とされ、空間光変調器421上の変調動作の有効領域に照射される。空間光変調器421では、制御部90からの制御指令に基づいてミラー422からの光が空間変調され、光軸に沿って投影光学系430のレンズへと入射する。
【0048】
投影光学系430のレンズを通過した光はズームレンズへ導かれ、フォーカシングレンズ431を介して所定の倍率にて基板W上へ導かれる。フォーカシングレンズ431はフォーカス駆動機構432に取り付けられており、フォーカス駆動機構432は制御部90のフォーカス制御部901からの制御指令に応じてフォーカシングレンズ431を鉛直軸(Z軸)に沿って昇降させて、フォーカシングレンズ431から出射される光ビームを基板Wの表面Sに収束させる。
【0049】
また、光学ヘッド40aの筺体下部には、オートフォーカス部として、例えばレーザダイオード(LD)を光源とし制御部90のLD駆動部902からの制御信号に応じて基板Wの表面Sに向けて光を照射する照射部441と、該照射光の基板表面Sからの反射光を受光する例えばCMOSセンサや一次元CCDイメージセンサからなるイメージセンサ442とが設けられている。
【0050】
ここで、光学ヘッド40aと基板表面Sとの距離が変動した場合を考える。図において実線矢印で示すように基板表面Sが光学ヘッド40aから遠ざかったとき、あるいは破線矢印で示すように基板表面Sが光学ヘッド40aに接近したとき、基板表面Sからの反射光の光路がそれぞれ実線矢印および破線矢印で示す方向に変化し、イメージセンサ442の各受光位置における受光量も変動する。すなわち、イメージセンサ442における受光量のピーク位置が、それぞれ実線矢印および破線矢印で示すように変化する。オートフォーカス部はこれを利用して光学ヘッド40aと基板表面Sとの距離を検出する。
【0051】
具体的には、制御部90の距離検出部903が、イメージセンサ442から出力される信号を受信し、これを光学ヘッド40aと基板表面Sとの距離に対応する情報としてフォーカス制御に利用する。また、該情報を必要に応じて記憶部904に記憶させる。なお、光学ヘッド40aと基板表面Sとの距離に対応する情報としては、イメージセンサ442の出力信号から該距離を算出した結果であってもよく、またイメージセンサ442における受光量のピーク位置そのものであってもよい。これらは1対1に対応しているからである。
【0052】
光学ヘッド40aと基板表面Sとの距離が変動すると、フォーカシングレンズ431から出射される光ビームの焦点位置が基板表面Sからずれ、描画パターンの分解能が低下する。これを防止するため、フォーカス制御部901がフォーカス駆動機構432を制御してフォーカシングレンズ431を上下させることで、焦点位置のずれを防止する。イメージセンサ442の出力信号を用いたフィードバック制御を行うことで、基板表面Sの鉛直方向の位置変動に追随してフォーカシングレンズ431の焦点位置を上下に移動させ、光ビームを基板表面Sに安定的に収束させることができる。
【0053】
上記のオートフォーカス動作を効果的に機能させるためには、フォーカシングレンズ431の焦点が基板表面Sに合っているときの光学ヘッド40aと基板表面Sとの距離を予め把握しておく必要がある。この距離は短期的にはあまり変化しないが、装置を長期間使用するにつれて経時的な変動を生じる。これを補正するためのキャリブレーションのための構成について、次に説明する。
【0054】
図4はキャリブレーションを行うための構成を示す図である。
図4(a)に示すように、ステージ10の側方には、光学ヘッド40a,40bから出射される光ビームを受光しその光学像を観察するための観察光学系80が設けられている。観察光学系80は、例えば石英ガラスにより平板状に形成された透明のダミー基板801が略水平に設けられている。ダミー基板801の表面(上面801a)には、
図4(b)に示すように、基準マスクパターン802が形成されており、後述するようにアライメントユニット60のフォーカス調整に用いられる。
【0055】
ダミー基板801の下方、すなわちダミー基板801を挟んで光学ヘッド40a,40bとは反対側に、例えば二次元CCDイメージセンサからなる撮像部と入射光を収束させる光学系とを有する観察用カメラ803が設けられる。ダミー基板801と観察用カメラ803はそれぞれケース804に取り付けられて一体化されており、観察用カメラ803の光学系の焦点位置は、ダミー基板801の上面801aに合うように調整されている。
【0056】
ケース804は支持プレート22に立設された支持フレーム805によって昇降自在に支持されており、制御部90の観察系制御部920と、適宜の駆動機構を有する観察系昇降機構806によりその鉛直方向位置が制御される。すなわち、観察光学系80のダミー基板801と観察用カメラ803とは一体として、水平方向にはステージ10と一体的に移動する一方、鉛直方向にはステージ10とは独立して昇降移動可能となっている。
【0057】
観察光学系80が光学ヘッド40a(または40b)の直下に位置決めされるとともに、ダミー基板801の上面801aがステージ10に載置される基板Wの上面Sと略同一位置に位置決めされた状態で、観察用カメラ803は光学ヘッド40aからダミー基板上面801aに入射し結像する光学像を撮像する。その出力信号は制御部90の画像処理部910によってデータ処理される。フォーカス制御部901によりフォーカシングレンズ431の鉛直方向位置を変化させながら観察用カメラ803による撮像を行い、光学像が最も小さくなるように(像のコントラストが最大となるように)、フォーカシングレンズ431の鉛直方向位置を設定する。これにより、フォーカシングレンズ431の焦点がダミー基板上面801aに合わせられる。このときの光学ヘッド40aとダミー基板上面801aとの距離を「基準距離」として、距離検出部903は基準距離に対応する情報を記憶部904に記憶させる。
【0058】
以後の描画動作では、光学ヘッド40aと対向する基板表面Sとの間の距離と、上記の基準距離との比較に基づきフォーカシングレンズ431の位置を制御することで、焦点位置を安定して基板表面Sに合わせることができる。また、このキャリブレーション動作を所定のタイミングで定期的に行うことで、投影光学系430の経時変化にも対応して、長期にわたり安定的に焦点位置の調整を行うことができる。
【0059】
図5はアライメントユニットの詳細構成を示す図である。図では、アライメントユニット60との対比のために、光学ヘッド40aのオートフォーカス部を併記している。アライメントユニット60は、基板表面の基準マークを検出して光学ヘッド40aとステージ10または基板Wとの水平方向位置を把握し、また観察光学系80の基準マスクパターン802を検出してアライメントユニット60のフォーカス調整を行うものである。
【0060】
図5に示すように、アライメントユニット60は、基板表面Sを撮像するアライメントカメラ601を備えるとともに、オートフォーカス部として、光学ヘッド40aに設けられた照射部441と同等の機能を有する照射部641、および、光学ヘッド40aに設けられた受光部442と同等の機能を有する受光部642を備えている。そして、光学ヘッド40aのオートフォーカス部と同様、制御部90に設けられた距離検出部906が受光部642の出力に基づいてアライメントカメラ601と基板表面Sとの距離を検出し、フォーカス制御部930が、アライメントカメラ601の焦点位置を基板表面Sと一致させるべくアライメントユニット60の鉛直方向位置を制御する。
【0061】
この場合においても、アライメントカメラ601の焦点合わせのための基準となる距離の情報が必要であり、その距離は経時的に変化する可能性がある。そこで、観察光学系80のダミー基板上面801aに基準マスクパターン802を利用する。すなわち、観察光学系80をアライメントユニット60の直下に位置決めし、アライメントカメラ601が撮像した基準マスクパターン802を画像処理部910がデータ処理し、パターンが最も鮮明となる時のアライメントカメラ601とダミー基板上面801aとの距離を検出し基準として記憶しておくことで、アライメントカメラ601のオートフォーカス動作が可能となる。また、上記動作を定期的に行うことで、アライメントカメラ601の特性の経時変化にも対応して、長期的に安定したオートフォーカス動作を行うことができる。
【0062】
ここまで、個々のユニットごとの制御動作の原理について分説した。次に、上記原理に基づく、このパターン描画装置100全体でのキャリブレーション動作について説明する。以下に説明するキャリブレーション処理を実行すると、光学ヘッド40a,40bおよびアライメントユニット60のそれぞれについて焦点位置の調整を行うことができるとともに、光学ヘッド40a,40bとアライメントユニット60との鉛直方向(Z軸方向)における焦点位置が同一の基準に基づいて相対的に調整されることで、パターン描画装置100を最良の状態で動作させることが可能となる。
【0063】
図6はこの装置におけるキャリブレーション動作を示すフローチャートである。また、
図7は
図6の動作における工程の一部を模式的に示す図である。このキャリブレーション動作は、例えば装置の起動直後や定期的なタイミング(例えば1日1回)で、基板Wが装置に搬入される前に実行される動作である。
【0064】
最初に、アライメントカメラ601の初期位置を設定する。具体的には、搬入される予定の基板Wの厚さに応じて、ステージ10上で想定される基板表面Sの鉛直方向位置に焦点位置が合うように、アライメントカメラ601の上下方向位置をセットする(ステップS101)。
図7(a)に示すように、この時点で基板Wは搬入されていないため、その位置決めは概略のものであってよい。
【0065】
続いて、ステージ10を移動させて観察光学系80をアライメントユニット60の直下に移動させ(ステップS102)、観察光学系80のダミー基板上面801aをアライメントカメラ601の焦点位置に一致させる(ステップS103)。具体的には、
図7(b)に示すように、ダミー基板上面801aに形成された基準マスクパターン802をアライメントカメラ601で撮像しながら観察系昇降機構806により観察光学系80のケース804を昇降させ、基準マスクパターン802の像が最も鮮明となるときの位置に、ケース804を位置決めする。
【0066】
これにより、ダミー基板上面801aの鉛直方向位置が後に搬入される基板の表面Sの位置と略一致し、かつ、その位置にアライメントカメラ601の焦点が合った状態となる。そこで、この時のアライメントカメラ601とダミー基板上面801aとの距離を基準とするべく、オートフォーカス部(AF部)の受光部642の出力から該距離に関する情報を求めて記憶部904に記憶させておく(ステップS104)。以後、描画時のアライメントカメラ601のフォーカス調整はこの距離を基準にして行われる。その具体的方法は前記した通りである。
【0067】
なお、このキャリブレーション動作におけるダミー基板上面801aの位置設定は概略のものであり、ステージ10に載置される基板表面Sの位置と完全に一致しているとは限らない。しかしながら、上記の動作によってアライメントカメラ601の焦点位置とそれに対応するオートフォーカス部の距離に関する情報とが対応付けられているため、実際にステージ10に載置された基板表面Sの位置がダミー基板上面801aの位置と多少ずれていたとしても、その位置へ焦点を合わせることは可能である。しかしながら、ダミー基板上面801aの位置が描画時の基板表面Sの位置と大きくずれた状態でキャリブレーションを行うと、描画時における基板表面Sがフォーカス調整範囲から外れてしまうおそれがある。この意味において、ダミー基板上面801aの鉛直方向位置を、想定される基板表面Sの位置に合わせてキャリブレーションを行うことが有効である。この点については以下の光学ヘッドのキャリブレーションにおいても同様である。
【0068】
次に、光学ヘッド40a,40bのフォーカス調整を行う。ここでは光学ヘッド40aについての動作を例示するが、光学ヘッド40bについての動作も同一である。まず光学ヘッド40aの直下に観察光学系80を移動位置決めする(ステップS105)。そして、
図7(c)に示すように、投影光学系430のフォーカシングレンズ431を通してダミー基板上面801aに入射するレーザ光の光学像を観察用カメラ803で観察しながらフォーカシングレンズ431の鉛直方向位置を変化させて、その光学像のスポットサイズが最も小さくなるときの位置に、フォーカシングレンズ431の位置を設定する(ステップS106)。
【0069】
これにより、投影光学系430の焦点がダミー基板上面801aに合わせられる。そして、この時の光学ヘッド40aとダミー基板上面801aとの距離を基準距離として、受光部422の出力から該基準距離に関する情報を求めて記憶部904に記憶させる(ステップS107)。以後、描画時の投影光学系430のフォーカス調整はこの基準距離に基づいて行われる。その具体的な方法は先に原理を説明した通りであるが、本実施形態に即してさらに詳しく説明する。
【0070】
図8は描画時のフォーカス調整動作を示すフローチャートである。
図3に示したように、描画時においては光学ヘッド40aは基板表面Sに対向している。この状態で、オートフォーカス部(AF部)の受光部442からの出力に基づき、光学ヘッド40aと基板表面Sとの距離に関する情報を求め(ステップS201)、記憶部904に記憶された基準距離との差を求める(ステップS202)。ここで、両者に差がなければ焦点は基板表面Sに合っているので変更の必要はないが、差がある場合、焦点位置が基板表面Sからずれているため、その差を是正する。具体的には、上記距離の差をなくす方向にフォーカシングレンズ431を移動させるべく、その駆動量(例えば上下方向へのフォーカシングレンズ431の移動距離、それを実現する駆動モータのパルス数など)を算出し(ステップS203)、算出された駆動量の分だけフォーカシングレンズ431を上方または下方に移動させる(ステップS204)。以上の動作を描画が終了するまで継続して行う(ステップS205)。
【0071】
図9は描画時のフォーカス調整動作を模式的に示す図である。
図9(a)に示すように、光学ヘッド40aの適宜の基準位置(この例では下端)と基板表面Sとの距離を符号D1により表す。また、フォーカス調整のためのフォーカシングレンズ431の駆動量(この例では鉛直方向への移動距離)を符号D2により表す。距離D1については、光学ヘッド40aの下端から基板表面Sに向かう方向を正方向とする。駆動量D2については、フォーカシングレンズ431を上方に、つまり基板表面Sから離間する方向を正方向とする。
【0072】
先のキャリブレーション動作の結果、距離D1が基準距離と一致していれば、投影光学系430の焦点は基板表面Sに合っているといえる。したがって、このときの駆動量D2はゼロ、すなわちフォーカシングレンズ431の鉛直方向位置はキャリブレーション動作によって設定された位置に維持される。一方、距離D1が基準距離よりも大きい場合には、駆動量D2を負の値に設定する、つまりフォーカシングレンズ431を下向きに移動させることにより、焦点のずれを解消する。逆に、距離D1が基準距離よりも小さいときには、駆動量D2を正の値に設定してフォーカシングレンズ431を上向きに移動させ、焦点のずれを解消する。距離D1の基準距離からの乖離量が大きいほどフォーカシングレンズ431の駆動量D2も大きくなる。このようにして、投影光学系430の焦点位置は基板表面Sに安定的に維持される。
【0073】
以上のように、この実施形態では、ダミー基板801と観察用カメラ803とを有する観察光学系80において、ダミー基板801および観察用カメラ803を一体的に鉛直方向に移動可能とする。そして、キャリブレーション動作では、ダミー基板801の上面801aをステージ10に載置される基板Wの表面Sの想定位置に位置決めした状態で、光学ヘッド40aからの光ビームをダミー基板上面801aに入射させ、これを観察用カメラ803で観察して光学像が最も小さくなるように、フォーカシングレンズ431の鉛直方向位置を設定する。またこのときのオートフォーカス部の出力から求めた基準距離に関する情報を記憶しておき、描画時にはこの基準距離と、オートフォーカス部の出力から求めた光学ヘッド40aと基板表面Sとの距離とに基づいて、フォーカス調整を行う。オートフォーカス部および投影光学系430の経時変化により基準距離が変動した場合でも、このようなキャリブレーションを行うことでその時点の基準距離が設定されそれに基づくフォーカス調整が行われるので、装置の経時変化にも対応して長期的に安定な、しかも高精度のフォーカス調整が可能である。
【0074】
また、上記と同じ位置に設定されたダミー基板801の上面801aに形成された基準マスクパターン802を用いてアライメントユニット60のフォーカス調整も行うことで、光学ヘッド40aの焦点位置とアライメントユニット60の焦点位置との鉛直方向の相対的な位置関係が、共通の位置基準であるダミー基板上面801aを介して関連付けられる。このため、本来独立に制御される2つのユニットの連携を図ることが可能である。これにより、パターン描画装置100を最良の状態で動作させることが可能となる。
【0075】
そして、光学ヘッド40aおよびアライメントユニット60の鉛直方向の位置基準となるダミー基板上面801aを、ステージ10に載置される基板Wの表面位置に応じて昇降可能としているので、種々の厚みを有する基板Wに対して、高精度で安定したフォーカス調整を行うことが可能である。
【0076】
すなわち、所定の厚さを有する第1の基板に対応したキャリブレーション動作および描画動作を行った後、次の基板が同じ厚さを有するものであれば、新たにキャリブレーション動作を行うことなく、先の基板についてのキャリブレーション動作の結果を用いて描画動作を行うことができる。新たなキャリブレーション動作は、例えば基板の処理枚数や動作時間等が一定値に達したときなど、所定の間隔で定期的に行えばよい。
【0077】
一方、先の基板とは厚さの異なる第2の基板に対して描画動作を行う場合には、その基板の厚さに対応して新たにキャリブレーションを行い基準距離を再設定することで、第2の基板についても同じように、描画時のフォーカス調整を高精度にしかも安定して行うことが可能となる。
【0078】
以上説明したように、この実施形態では、光学ヘッド40a,40bと、光照射部41とが一体として本発明の「描画手段」として機能している。このうちレーザ発振器412が本発明の「光源」として機能する一方、投影光学系430が本発明の「収束光学系」として機能している。
【0079】
また、この実施形態では、ステージ移動機構20が本発明の「移動手段」として機能している。また、この実施形態では、観察光学系80が本発明の「観察手段」として機能しており、ダミー基板801の上面801aが本発明の「観察光学面」に相当している。そして、基準マスクパターン802が本発明の「基準パターン」に相当している。また、観察系昇降機構806および観察系制御部920が一体として本発明の「観察高さ変更手段」として機能している。
【0080】
また、この実施形態では、フォーカス制御部901およびフォーカス駆動機構432が一体として本発明の「焦点調整手段」として機能している。また、オートフォーカス部を構成する照射部441、受光部442が一体として本発明の「距離検出手段」として機能している。さらに、この実施形態では、アライメントユニット60が本発明の「位置検出手段」として機能している。
【0081】
また、
図6に示すこの実施形態のキャリブレーション動作においては、ステップS103が本発明の「基準設定工程」に相当しており、ステップS106が「事前焦点調整工程」に相当する。また、ステップS107が本発明の「記憶工程」に相当している。また、
図8のステップS201ないしS204が、本発明の「描画時焦点調整工程」に相当している。
【0082】
なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて上述したもの以外に種々の変更を行うことが可能である。例えば、上記実施形態のキャリブレーション動作では、光学ヘッド40a(40b)のキャリブレーションとアライメントユニット60のキャリブレーションとを合わせて行っているが、これに限定されず、描画のための収束光学系について行う焦点調整動作に対してのみ、本発明が適用されてもよい。
【0083】
また、上記実施形態のキャリブレーション動作では、アライメントカメラ601の焦点位置が基板表面Sの想定位置となるようにアライメントユニット60の鉛直方向位置を設定し、それに合わせてダミー基板上面801aの位置を設定することでダミー基板上面801aの概略位置を基板表面Sの位置に設定している。しかしながら、これに限定されるものではなく、例えばまずダミー基板上面801aの位置を設定してから、これに焦点が合うようにアライメントユニット60の位置調整を行うようにしてもよい。
【0084】
また、上記実施形態のアライメントユニット60および光学ヘッド40a,40におけるオートフォーカス部は、基板表面Sに対して光を照射するともにその反射光を受光し、反射像の位置によって距離検出を行うものであるが、距離検出の手段はこれに限定されるものではなく任意の手段を適用可能である。
【0085】
また、上記実施形態のパターン描画装置100は、回折格子を用いた空間変調器421により光ビームを変調してパターン描画を行う装置であるが、光ビームの変調方式はこれに限定されず、任意の変調方式を用いる描画装置に対して、本発明を適用することが可能である。