特許第5890216号(P5890216)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社キトーの特許一覧

<>
  • 特許5890216-負荷感応自動変速装置を内蔵した巻上機 図000002
  • 特許5890216-負荷感応自動変速装置を内蔵した巻上機 図000003
  • 特許5890216-負荷感応自動変速装置を内蔵した巻上機 図000004
  • 特許5890216-負荷感応自動変速装置を内蔵した巻上機 図000005
  • 特許5890216-負荷感応自動変速装置を内蔵した巻上機 図000006
  • 特許5890216-負荷感応自動変速装置を内蔵した巻上機 図000007
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890216
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】負荷感応自動変速装置を内蔵した巻上機
(51)【国際特許分類】
   B66D 3/16 20060101AFI20160308BHJP
   F16H 3/44 20060101ALI20160308BHJP
   F16D 41/07 20060101ALI20160308BHJP
   F16D 7/02 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   B66D3/16 A
   F16H3/44 Z
   F16D41/07 Z
   F16D7/02 C
【請求項の数】3
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-69676(P2012-69676)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-199363(P2013-199363A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年2月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000129367
【氏名又は名称】株式会社キトー
(74)【代理人】
【識別番号】100105223
【弁理士】
【氏名又は名称】岡崎 謙秀
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 孝三
【審査官】 芦原 康裕
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−146391(JP,A)
【文献】 特開2002−340023(JP,A)
【文献】 特開2001−063399(JP,A)
【文献】 特開平09−099755(JP,A)
【文献】 特開2012−056733(JP,A)
【文献】 特開2009−236209(JP,A)
【文献】 特開平07−017691(JP,A)
【文献】 特開平01−181698(JP,A)
【文献】 特開2010−116957(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66D 3/16−3/20
F16H 3/00−3/78
F16D 7/02
F16D 41/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームに軸支され負荷を巻き上げ巻き下げする巻き上げ駆動輪と、巻き上げ駆動輪に作用する負荷によってブレーキ力が作用するメカニカルブレーキと、該メカニカルブレーキから巻き上げ駆動輪にトルクを伝達する駆動軸と、前記メカニカルブレーキを介して巻き上げ駆動輪を巻き上げ巻き下げ方向に回動操作する回動操作手段と、前記回動操作手段からの入力回転を増速する増速装置と、該増速装置を介してメカニカルブレーキに伝達するトルクを所定範囲内に制限する伝達トルク制限装置と、前記駆動輪の内周に環装された入力中空軸と前記メカニカルブレーキの外周に設けられたスプラインに環装された出力中空軸と前記入力中空軸と出力中空軸間で楔作用でトルクを伝達するスプラグからなる2方向クラッチを有し、前記2方向クラッチは、前記増速装置を介して前記メカニカルブレーキに伝達する巻き上げ巻き下げ方向の回転が、前記伝達トルク制限装置の作動により前記回動操作手段の回転を下回ったときに、前記回動操作手段からの巻き上げ巻き下げ方向の回転を前記メカニカルブレーキに伝達し、前記増速装置は遊星歯車装置であって、前記回動入力手段に連結された入力環を前記遊星歯車装置のプラネタリキャリアに連結し、前記遊星歯車装置のサンギヤ出力軸を前記磁気クラッチの入力軸に連結し、前記磁気クラッチの出力軸を前記駆動部材の中空軸部に連結し、前記回動操作手段の内周と前記駆動部材の中空軸部外周に前記2方向クラッチを連結したことを特徴とする負荷感応型自動変速装置を内蔵した巻上機。
【請求項2】
前記メカニカルブレーキは、前記駆動軸に回転不能に環装された受圧部材と、前記駆動軸に螺刻された雄ねじに螺合する駆動部材と、前記受圧部材と駆動部材で狭装される制動用爪車を有し、前記2方向クラッチと前記増速装置からの回転を前記駆動部材に形成した中空軸部外周面に伝達することを特徴とする請求項1記載の負荷感応型自動変速装置を内蔵した巻上機。
【請求項3】
前記伝達トルク制限装置は、磁気クラッチであることを特徴とする請求項1記載の負荷感応型自動変速装置を内蔵した巻上機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、負荷感応型自動変速装置に2方向クラッチを内蔵した巻上機に関するもので、詳しくは、低負荷と高負荷で自動的に変速する切り替え動作に伴う騒音、衝撃の少ない巻上機に関する。
【背景技術】
【0002】
負荷感応型自動変速装置を内蔵した巻上機において、回転操作手段の回転を増速回転する高速側入力回転部材と、高負荷を伝達する低速側入力回転部材と、高速側入力回転部材と低速側入力回転部材と選択的に係合する出力回転部材を備え、
低速側入力回転部材は出力回転部材に設けたクラッチ突起と係合する係合部を有し、高負荷回転時に係合部が、出力回転部材に設けた凸部と係合するようにした巻上機は本出願においてすでに提案されている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−116957号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記負荷感応型自動変速装置を内蔵した巻上機は、低負荷高速回転から高負荷低速回転への切り替えを、磁力を用いた切り替え機構によって実現し、負荷に応じて自動的に変速切り替えが可能となり、また、作業者は荷重の状態が変化する度に煩雑な切り替え操作を行う必要がなくなるという作用を奏するが、変速切り替え時に、出力回転部材に設けた凸部が低速回転部材に設けた係合部に係脱するため、この機械的動作により、ガタつきが発生し、特に手動巻き上げ装置においては、変速する度に操作者が手にショックを感じ、巻き上げ作業の障害になるという課題を有していた。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するため、変速時に、ガタつきの発生がなくスムースに自動変速ができる負荷感応型自動変速装置を内蔵した巻上機を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明は、前課題を解決するため、フレームに軸支され負荷を巻き上げ巻き下げする巻き上げ駆動輪と、巻き上げ駆動輪に作用する負荷によってブレーキ力が作用するメカニカルブレーキと、該メカニカルブレーキから巻き上げ駆動輪にトルクを伝達する駆動軸と、前記メカニカルブレーキを介して巻き上げ駆動輪を巻き上げ巻き下げ方向に回動操作する回動操作手段と、前記回動操作手段からの入力回転を増速する増速装置と、該増速装置を介してメカニカルブレーキに伝達するトルクを所定範囲内に制限する伝達トルク制限装置と、前記駆動輪の内周に環装された入力中空軸と前記メカニカルブレーキの外周に設けられたスプラインに環装された出力中空軸と前記入力中空軸と出力中空軸間で楔作用でトルクを伝達するスプラグからなる2方向クラッチを有し、前記2方向クラッチは、前記増速装置を介して前記メカニカルブレーキに伝達する巻き上げ巻き下げ方向の回転が、前記伝達トルク制限装置の作動により前記回動操作手段の回転を下回ったときに、前記回動操作手段からの巻き上げ巻き下げ方向の回転を前記メカニカルブレーキに伝達し、前記増速装置は遊星歯車装置であって、前記回動入力手段に連結された入力環を前記遊星歯車装置のプラネタリキャリアに連結し、前記遊星歯車装置のサンギヤ出力軸を前記磁気クラッチの入力軸に連結し、前記磁気クラッチの出力軸を前記駆動部材の中空軸部に連結し、前記回動操作手段の内周と前記駆動部材の中空軸部外周に前記2方向クラッチを連結したことを特徴とする。
【0007】
また、前記メカニカルブレーキは、前記駆動軸に回転不能に環装された受圧部材と、前記駆動軸に螺刻された雄ねじに螺合する駆動部材と、前記受圧部材と駆動部材で狭装される制動用爪車を有し、前記2方向クラッチと前記増速装置からの回転を前記駆動部材に形成した中空軸部外周面に伝達することを特徴とする。
【0008】
また、前記伝達トルク制限装置は、磁気クラッチであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、前記した通り、増速装置を介してメカニカルブレーキに伝達する巻き上げ巻き下げ方向の回転が伝達トルク制限装置の作動により回動操作手段の回転を下回ったときに、回動操作手段からの巻き上げ巻き下げ方向の回転をメカニカルブレーキに伝達する2方向クラッチを備えたので、負荷の増加によって巻き上げ速度が高速から低速に自動的に切り替えられ、かつ、切り替え時の衝撃がなく滑らかに自動変速を行うことができる。
【0011】
また、2方向クラッチと前記増速装置からの回転をメカニカルブレーキの駆動部材の中空軸部の外周面に伝達するようにしたので、装置を小型化することができる。
【0012】
また、伝達トルク制限装置を磁気クラッチとしたことで、回動操作手段から増速装置を介してメカニカルブレーキに伝達するトルクは、伝達トルク制限装置が作動する前と後で大きな差が生じる(空転トルクが小さい)ので、多少負荷が変動しても作動状態(低速)から非作動状態(高速)に自動復帰しないので、変速切り替え動作が安定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の無負荷高速巻上機の全体構成図。
図2図1の要部拡大図。
図3】(a)は他の形態の伝達トルク制限装置の要部拡大図。(b)は伝達トルク制限装置の拡大説明図。
図4】増速装置、伝達トルク制限装置及び2方向クラッチの配置形態説明図。
図5】増速装置、伝達トルク制限装置及び2方向クラッチの配置形態説明図。
図6】増速装置、伝達トルク制限装置及び2方向クラッチの配置形態説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
〔実施の形態1〕
図1図2を用いて、本発明の無負荷高速巻上機の実施の形態について説明する。
【0015】
図において、1は軸受を備えた本体フレーム、2は本体フレーム1、1間に回転可能に軸支され、図示しないロードチェーンを巻き上げ巻き下げする、巻き上げ駆動輪としてのロードシーブ、2aはロードシーブ2の中空軸に嵌着されたロードギヤ、3はロードシーブ2の挿通孔に回転自在に貫装された駆動軸で、一端にはピニオン3a、他端には雄ねじ3bが設けられている。4は駆動軸3のピニオン3aと噛合し、ロードギヤ2aと噛合する図示しない減速歯車(小)と同軸で連結された減速ギヤ(大)で、駆動軸3の回転を減速してロードシーブ2に伝達している。5は図示しない無端のリンクチェーンが巻きかけられる、回動操作手段としてのハンドホイール、5aはハンドホイール5のボス部、6は駆動軸3に回転不能に環装された受圧部材で、受圧部材6のボス部6aの外周には一対のブレーキ板7a、7aと、ブレーキ板7a、7aに挟装される制動用爪車7bが巻き上げ方向にのみ回転可能に環装されている。
【0016】
9はメカニカルブレーキの駆動部材で、中空軸部9aと中空軸部内周に雌ネジ9bを有し、雌ネジ9bは駆動軸3の雄ねじ3bに螺合し、駆動部材9を正転(巻き上げ方向に回転)することでブレーキ板7a、7a及び制動用爪車7bを介して受圧部材5を押圧し、駆動部材9の回転を駆動軸3に伝達するように構成され、逆転(巻き下げ方向に回転)することで前記押圧方向とは逆方向にスライドして制動用爪車7bとの係合を解放し逆転を可能にするように構成されている。駆動軸3の雄ねじ3b、受圧部材6、ブレーキ板7a、7a、制動用爪車7b、駆動部材9でメカニカルブレーキ8を構成する。制動用爪車7bは図示しない爪片と係合することで、巻き下げ方向への回転を不能とされている。
【0017】
10はハンドホイール5のボス部5a内周に設けられた2方向クラッチで、11は前記ボス部5aの内周に所定角度回転可能に環装された入力中空軸、12は駆動部材9の中空軸部9aの外周面に設けたスプライン13に嵌合する出力中空軸である。出力中空軸12の外周には小径保持器14、入力中空軸11の内周には大径保持器15が隣接して環装され、小径保持器14、大径保持器15には図示しない複数のポケットが周方向に等間隔に形成され、半径方向に隣接配置された両保持器の半径方向で対抗するポケット内に、入力中空軸11と出力中空軸12間で楔作用によりトルクを伝達するスプラグ16が保持されている。スプラグ16は、起立状態では入力中空軸11と出力中空軸12の間でわずかに間隙を有する形態で、スプラグ16が巻き上げ回転または巻き下げ回転方向に傾倒することで、入力中空軸11と出力中空軸12に接触する形態となっている。入力中空軸11と小径保持器14はピン14aで連結されていて、小径保持器14は入力中空軸11と共にハンドホイールのボス部5aに対して所定角度相対回転可能となるよう構成されている。ハンドホイール5のボス部5aと大径保持器15とはピン15aで連結されていて、大径保持器15はハンドホイール5と共に回転可能となっている。
【0018】
そのため、ハンドホイール5を回転すると、大径保持器15はハンドホイール5と一緒に回転するが、小径保持器14はハンドホイール5と大径保持器15より遅れて回転を始めるので、小径保持器14と大径保持器15の対向は位置されたポケットの位置に周方向でズレが生じ、小径保持器14と大径保持器15の各ポケットで保持されるスプラグ16は、そのズレに応じて周方向で所定方向に傾倒し、2方向クラッチのトルク伝達方向を制御する。大径保持器15とスプラグ16は図示しないバネによって連結されている。入力中空軸11、出力中空軸12、小径保持器14、大径保持器15、ピン14a、15a、スプラグ16で2方向クラッチ10を構成する。
【0019】
ハンドホイール5を巻き上げ方向に回転させると、スプラグ16も巻き上げ方向に傾倒してハンドルホイール5から入力中空軸11、スプラグ16、出力中空軸12を介して、メカニカルブレーキの駆動部材9の中空軸部9a外周に回転トルクを伝達する。
【0020】
しかし、駆動部材9の中空軸部9aが後記する増速装置の作用によってハンドホイール5より速く同方向に回転していると、スプラグ16は中空軸部9aと一緒に回転する出力中空軸12によってトルク伝達不能方向に起こされるので、ハンドホイール5のボス部5aからの回転は駆動部材9の中空軸部9aには伝達されず、駆動部材9はハンドホイールに比して増速装置の作用で高速で回転するのを妨げられず高速回転を継続する。
【0021】
巻き上げ負荷が所定以上の場合に、その負荷に抗してハンドホイール5を回動させると、後記するトルク伝達制限装置が働き(空転)、ハンドホイール5から増速装置を介して駆動部材9の中空軸部9aを高速回転させる動作が空転によって阻止されるので、スプラグ16はハンドホイール5の回転方向にトルク伝達可能となるよう傾倒し、ハンドホイール5の回転は2方向クラッチ10を介して駆動部材9の中空軸部9aに伝達され、ハンドホイール5と同速でメカニカルブレーキ8の駆動部材9を回動し巻き上げ操作が滑らかに継続される。
【0022】
ハンドホイール5の回動操作を停止すると、吊り荷はメカニカルブレーキ8により保持され、トルク伝達制限装置には負荷トルクがかからないのでは初期状態に復帰する。
【0023】
次に、増速装置とトルク伝達制限装置である磁気クラッチ(磁気式トルクリミッタ)について説明する。
【0024】
19はハンドホイール5に固設された入力管、20は遊星歯車機構、20aは入力管19に連結されたプラネタリキャリア、20bはプラネタリキャリア20aと対をなすプラネタリキャリア、20cはプラネタリキャリア20a、20bに回転可能に軸支されたプラネタリギヤ、21はプラネタリギヤ20cが内接咬合するリングギヤ、22はサンギヤ、23はサンギヤ22と連結する、増速装置の出力軸であるサンギヤ軸である。プラネタリギヤ20cはサンギヤ22と外接噛合し、前記リングギヤ21と内接噛合し、プラネタリキャリア20aの回転を増速し、サンギヤ軸23を増速回転する。プラネタリキャリア20a、20b、リングギヤ21、サンギヤ22、サンギヤ軸23で遊星歯車機構20を構成し、遊星歯車機構20で増速装置を構成する。
【0025】
24はサンギヤ軸に連結され、ハンドホイール5に対し遊星歯車機構20の増速比で高速回転する低トルク入力手段、24aは低トルク入力手段のボス部である。
【0026】
低トルク入力手段24は軸受け25を介して前記ボス部24a外周にボス部24aに対して回転及び軸方向にスライド可能に軸受されている。
【0027】
26は歯形ヨークで、低トルク入力手段24のボス部24aの外周に備えられ円周上に2列に列設された複数の歯先を有する歯形形状磁性体26a、26aを備える。
【0028】
28は円周上に2列に列設された磁極28a、28aを有する磁極回転体である。磁極28aは歯形形状磁性体26aの歯先の列の外周に対向配置されている。29は前記1対の磁極28a、28a間に設けられたドーナツ円板状の永久磁石で、一方の側面がN極、他方の側面がS極となっている。磁極28a、28aはドーナツ円板状の永久磁石29の側面に固着され、各磁極28a、28aの内周には複数の歯形形状部が列設され、永久磁石29によって歯形形状部の歯先にN極又はS極が励磁されている。
【0029】
前記歯形ヨーク26、磁極回転体28及び永久磁石29で伝達トルク制限装置である磁気クラッチ32(磁気式トルクリミッタ)を構成する。
【0030】
30は出力回転手段、30aは出力回転手段30のボス部である。磁極回転体28、永久磁石29は出力回転手段30に固設され、出力回転手段30は磁気トルク32の出力軸となっている。出力回転手段30のボス部30aの内周にはスプライン31が設けられており、駆動部材9の中空軸部9aの外周に設けたスプライン13とスプライン結合しており、出力回転手段30からメカニカルブレーキ8の駆動部材9に回転トルクを伝達するとともに、出力回転手段30はスプラインを介して駆動軸3の軸方向にスライド可能に支持されている。出力回転手段30のボス部30aの外周にはスライドベアリング25が配置され、低トルク入力手段24のボス部24aをスライド及び回転可能に軸受けしている。
【0031】
次に、磁気クラッチ32の動作について説明する。
【0032】
ハンドホイールからメカニカルブレーキに伝達するトルクが所定範囲内の状態(低負荷)では、低トルク入力手段24に連結した歯型ヨーク26の歯型形状部である歯形形状磁性体26aの歯先と、出力回転手段30に連結した磁極回転体28の磁極28aの歯型形状部14bの歯先が対向した状態にあり、永久磁石29で励磁された磁極28aの歯形形状部14bと歯形形状磁性体26aは、両者の歯型形状部の歯先間のエアギャップを介して磁気回路を形成し強力な磁気吸引力でトルク伝達可能に連結されている。そのため、出力回転手段30はハンドホイール5に比して遊星歯車機構20の増速比で高速回転をメカニカルブレーキ8の駆動部材9の中空軸部9aにスプライン13を介して伝達する。
【0033】
次に、ハンドホイールから入力する負荷トルクが増大し、負荷トルクが歯形ヨーク26と磁極回転体28の磁力による伝達可能トルクを越えると、歯型ヨーク26は空転することで伝達トルクを制限することになる。したがって、ハンドホイールを、制限トルクを超えて回動させても増速された回転はメカニカルブレーキ8の駆動部材9の中空軸部9aには伝達されない。
【0034】
図3(a)(b)に磁気クラッチの他の形態を示す。
【0035】
図1、2の磁気クラッチ32との相違は、歯型ヨーク26、26間にドーナツ円盤状の側部磁性体27を有し、駆動部材9の中空軸部9aのスプライン13によってスライド可能に連結された出力回転部材30が、ハンドホール5のボス部5a方向にスライド可能なように、2方向クラッチ11と出力回転部材間に隙間を有している。
【0036】
磁気クラッチ32の歯形ヨーク26と磁極回転体28は、磁気クラッチ32で伝達可能な負荷トルクが作用しているときには、図3(a)に示す通り歯形形状磁性体26a、26aの歯先と磁極28a、28aの歯先が対向する位置で磁気回路を形成しトルクを伝達するが、負荷トルクが伝達可能トルクを上回り歯形ヨークが空転(相対回転)すると、一方の磁極28aの歯先から側部磁性体27の外周に磁気回路が変位する。この磁気回路の変位により、スライド可能に支持されている出力回転体30と共に磁極回転体28は2方向クラッチ11側に磁極28a1の歯先が側部磁性体27の外周に対向するまでスライドし空転を継続する。ハンドホイール5の回動を停止し負荷トルクが無くなると、磁極28a1と側部磁性体27の磁気回路が断たれ歯形形状磁性体26aと磁気回路が復活すると磁極回転体は図3(a)の初期状態に戻る(自動復帰)。
【0037】
図3に示す磁気クラッチの形態では、空転中の磁気クラッチが伝達するトルク(空転トルク)は、軸方向にスライドすることで図1,2に示す磁気クラッチに比して小さく、磁気クラッチとしては最良の形態である。
【0038】
次に、本発明に係る巻上機の動作について説明する。
【0039】
無負荷または低負荷でハンドホイールからメカニカルブレーキに伝達するトルクが所定範囲内の状態では、ハンドホイール5の回転は、遊星歯車機構20で増速され、低トルク入力手段24、歯形ヨーク26、磁極回転体28及び出力回転手段30を介して駆動部材9の中空軸部9aを高速回転させる。
【0040】
この高速回転時には、駆動部材9の中空軸部9aが遊星歯車機構20によってハンドホイール5のボス部5aより速く同方向に回転しているため、2方向クラッチ10のスプラグ16は出力中空軸12によってトルク伝達不能方向に起こされているので、ハンドホイール5のボス部5aからの回転は駆動部材9のボス部9aには伝達されず、駆動部材9は高速回転する。
【0041】
次に、巻き上げ負荷が所定以上になり、前記した通り、磁気クラッチ32により低トルク入力手段24から出力回転手段30に高速回転の動力伝達が遮断されると、2方向クラッチ10のスプラグ16はトルク伝達可能なハンドホイール5の回転方向に傾倒し、ハンドホイール5の回転は2方向クラッチ10を介して駆動部材9の中空軸部9aに伝達され、ハンドホイール5と同速でメカニカルブレーキ8の駆動部材9を回動し、高速巻き上げ状態から低速巻き上げ状態にスムースに変速切り替えされ、巻き上げ操作が継続される。
【0042】
図4図6は遊星歯車機構20、トルク伝達制限装置32、2方向クラッチ10を備えた巻上機の形態を示し、図4図1図3に示した形態であり、図5はハンドホイール5と遊星歯車機構20の間にトルク伝達制限装置32を設けた形態であり、低負荷高速回転から高負荷低速回転への変速切り替え時に、ハンドホイール5と遊星歯車機構20間に設けられたトルク伝達制限装置32がハンドホイール5と遊星歯車機構20間で高速回転の動力伝達を遮断する構成としている。
【0043】
図6は増速装置とトルク伝達制限装置が一体となった磁気式遊星歯車機構で、ハンドホイール5から高負荷が入力されると磁気式遊星歯車機構20aが空転することで、高速の動力伝達を遮断する構成としている。図4図6に示した形態以外にも本発明を実施する他の形態を採用することも可能である。
【0044】
また、トルク伝達制限装置としては、磁気式クラッチを主に例示してきたが、磁気式に限らず、空転トルクが小さく自動復帰するトルクリミッタであれば、本実施の形態で示したものに限定されない。
【0045】
巻上機として、図1に示す手動チェーンブロックに限定されるものではなく、チェーンレバーホイスト、手動ウィンチなどの手動巻上機に適しているが、電動巻上機であっても良い。
【符号の説明】
【0046】
3 駆動軸
5 ハンドホイール(回動手段)
8 メカニカルブレーキ
9 駆動部材
9a 中空軸部
10 2方向クラッチ
12 出力軸
14 小径保持器
15 大径保持器
16 スプラグ
20 遊星歯車機構(増速装置)
24 低トルク入力手段
26 歯形ヨーク
28 磁極回転体
29 磁石
30 出力回転手段
32 磁気クラッチ(トルク伝達制限装置)
図1
図2
図3
図4
図5
図6