特許第5890237号(P5890237)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890237
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】遠赤外線加熱機
(51)【国際特許分類】
   F24H 3/04 20060101AFI20160308BHJP
   F24H 3/00 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   F24H3/04 302
   F24H3/00 B
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2012-89833(P2012-89833)
(22)【出願日】2012年4月11日
(65)【公開番号】特開2013-217601(P2013-217601A)
(43)【公開日】2013年10月24日
【審査請求日】2014年10月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000215785
【氏名又は名称】TPR株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】597139675
【氏名又は名称】TPR熱学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000121
【氏名又は名称】アイアット国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】田川 悟
(72)【発明者】
【氏名】下農 豊
【審査官】 吉村 俊厚
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−298194(JP,A)
【文献】 特開2007−170740(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24H 3/00 − 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加熱物から見て遠赤外線放射ユニット、空気排出調節板部材、空気整流板部材、及び送風機又は熱風発生機が順に配置されている遠赤外線加熱機であって、
前記空気整流板部材は前記送風機又は熱風発生機から吐出された空気を、空気整流板部材裏面の空間内で拡散させ
前記空気は、
前記空気整流板部材に形成されている多数の通気孔を通過して前記空気排出調節板部材の裏面の全体に送られ、
前記空気排出調節板部材は空気排出調節板部材に形成されている多数の通気孔の位置や大きさや数によって空気排出調節板部材の通気孔を通過する空気の排出量を調節し、
前記空気排出調節板部材の部位に応じて調節された空気は、前記被加熱物に送風されて前記被加熱物の表面中心部の高い熱を前記被加熱物の周辺部に伝熱して温度差を小さくすることを特徴とする遠赤外線加熱機。
【請求項2】
前記空気排出調節板部材に形成されている通気孔が少なくとも前記遠赤外線放射ユニットの周囲に面する領域に多数配列されていることを特徴とする請求項1記載の遠赤外線加熱機。
【請求項3】
前記遠赤外線放射ユニットは被加熱物側にのみ遠赤外線を放射する遠赤外線放射発熱体を有していることを特徴とする請求項1又は2記載の遠赤外線加熱機。
【請求項4】
前記遠赤外線放射ユニットは略ジグザグ状又は略渦巻き状に延びる帯状の遠赤外線放射発熱体を有し、隣接する前記帯状の遠赤外線放射発熱体の間に空気が通る隙間を有していることを特徴とする請求項1、2又は3記載の遠赤外線加熱機。
【請求項5】
前記空気整流板部材と空気排出調節板部材と遠赤外線放射ユニットを収納した本体ケーシングの被加熱物側の前端開口縁には、前記空気排出調節板部材を通過して本体ケーシングの前面開口から排出される空気が周囲に拡散するのを防止する空気拡散防止板部材が設けられていることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の遠赤外線加熱機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遠赤外線加熱機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠赤外線加熱機から放射される遠赤外線で被加熱物を加熱した場合、遠赤外線加熱機から等距離の部分の温度は均一であるが、奥行き部分との間で温度差を生じる。
【0003】
特許文献1の電熱ファンヒータは、軸流ファンと鏡面反射板とカーボンヒータ等の熱源体とが順次配置し、反射板の裏面より後部に放射されるロス熱源となっている高温のエネルギおよび熱源体により加温された前面部の高温熱エネルギを軸流ファンによって流体として動かし、加温した流体として室内を循環させ、室内を昇温させる構造である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−249370号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の電熱ファンヒータの構造を使用した遠赤外線加熱機で、対向している被加熱物を加熱する場合、送風機が反射板に比べて小さいと、反射板の外周側から送風される風量が少なく、被加熱物の全体の温度差を小さくする観点では充分でない。
【0006】
本発明は、被加熱物の全体の温度差を小さくできる遠赤外線加熱機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被加熱物から見て遠赤外線放射ユニット、空気排出調節板部材、空気整流板部材、及び送風機又は熱風発生機が順に配置されている遠赤外線加熱機であって、前記空気整流板部材は前記送風機又は熱風発生機から吐出された空気を、空気整流板部材裏面の空間内で拡散させ、前記空気は、前記空気整流板部材に形成されている多数の通気孔を通過して前記空気排出調節板部材の裏面の全体に送られ、前記空気排出調節板部材は空気排出調節板部材に形成されている多数の通気孔の位置や大きさや数によって空気排出調節板部材の通気孔を通過する空気の排出量を調節し、前記空気排出調節板部材の部位に応じて調節された空気は、前記被加熱物に送風されて前記被加熱物の表面中心部の高い熱を前記被加熱物の周辺部に伝熱して温度差を小さくすることを特徴とする。
【0008】
前記空気排出調節板部材に形成されている通気孔が少なくとも前記遠赤外線放射ユニットの周囲に面する領域に多数配列されていることが好ましい。通気孔は、遠赤外線放射ユニットに面する領域には遠赤外線放射ユニットを冷却してしまうので設けない、あるいは通気孔の大きさを小さくしたり、数を少なくすることが望ましい。
【0009】
前記遠赤外線放射ユニットは被加熱物側にのみ遠赤外線を放射する遠赤外線放射発熱体を有していることが好ましい。なお、全方向に遠赤外線を放出する発熱体を使用する場合は、空気排出調節板部材の材質をステンレス材料(SUS430等)などを使用し、空気排出調節板部材に被加熱物側に遠赤外線を反射する機能を持たせてもよい。
【0010】
前記遠赤外線放射ユニットは略ジグザグ状又は略渦巻き状に延びる帯状の遠赤外線放射発熱体を有し、隣接する帯状発熱体の間に空気が通る隙間を有していることが好ましい。薄い帯状の発熱体は昇温速度、降温速度が速く、使用電力量を抑制できる。
【0011】
前記空気整流板部材と空気排出調節板部材と遠赤外線放射ユニットを収納した本体ケーシングの被加熱物側の前端開口縁には、前記空気排出調節板部材を通過して本体ケーシングの前面開口から排出される空気が周囲に拡散するのを防止する空気拡散防止板部材が設けられていることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の遠赤外線加熱機によれば、遠赤外線放射ユニットから放射される遠赤外線で被加熱物が加熱される。この場合、遠赤外線による加熱では被加熱物の奥行き方向に温度差を発生する。しかし、本発明の遠赤外線加熱機によれば、送風機又は熱風発生機から吐出された空気が空気整流板部材によって空気排出調節板部材の全面に送られ、空気を空気排出調節板部材の略全体特に周辺部からも送風することができる。その結果、空気を被加熱物の全体に隈なく送風できるため、この空気によって被加熱物の前部の熱を後部に伝熱して温度差を小さく均一にすることができる。更に、空気拡散防止板部材を設ければ、通気孔から排出された空気を周囲に拡散させずに被加熱物に送風できるため、被加熱物の温度差をより均一にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の一実施形態を示す遠赤外線加熱機の縦断面図である。
図2】遠赤外線加熱機の正面図である。
図3】整流板部材の正面図である。
図4】遠赤外線放射ユニットの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1に示されているように、遠赤外線加熱機の本体ケーシング1は前面が開口している矩形形状の箱体で、後面の中央に開口されている空気取入口1aにホース接続口2が外側に突出して設けられている。本体ケーシング1は送風機3の吐出口と本体ケーシング1のホース接続口2とに連結されたホース4で送風機3と接続されている。
【0016】
本体ケーシング1内の後部には空気整流板部材5(図3参照)が取り付けられている。空気整流板部材5は本体ケーシング1の空気取入口1aよりも大きく、後述する空気排出調節板部材8よりも少し小さい大きさを有している。空気整流板部材5は多数の通気孔6が全体にわたって形成されている矩形の本体板5aと、本体板5aの四辺から垂直に延び更に直角に外側に延びている取付片5bとから形成され、取付片5bに複数の取付孔7を有している。したがって、空気整流板部材5は取付片5bがねじで本体ケーシング1内の後面に固定されており、多数の通気孔6が形成されている本体板5aが本体ケーシング1の後面と間隔をあけて平行に配置されている。
【0017】
空気整流板部材5の通気孔6は本体ケーシング1の空気取入口1aに面する領域とそれを中心とした上下左右の領域には形成されておらず、その他の領域に均一に形成されている。このように、空気整流板部材5の通気孔6は本体ケーシング1の空気取入口1aに面する領域とそれを中心とした上下左右の領域には形成されていないため、送風機3からの空気が空気整流板部材5の本体板5aの裏面の空間内で拡散し、通気孔6より空気排出調節板部材8の裏面の全体に送風される。なお、通気孔6は空気取入口1aに面する領域以外の領域に均一に形成するようにしてもよい。
【0018】
本体ケーシング1内の前部には本体ケーシング1の開口を閉塞するようにして空気排出調節板部材8が取り付けられている。空気排出調節板部材8は矩形の本体板8aと、本体板8aの四辺から垂直に延びる取付片8bとから形成され、取付片8bが本体ケーシング1の内面に固定されている。空気排出調節板部材8の本体板8aの被加熱物側には遠赤外線放射ユニット9が4個、互いに間隔をあけて均等に固定されている。
【0019】
遠赤外線放射ユニット9(図4参照)は四角い枠体10と、帯状の遠赤外線放射発熱体11とから構成されている。遠赤外線放射発熱体11は枠体10の対向する二辺の間を上下に略ジクザク状に延び、隣接する帯状の遠赤外線放射発熱体11との間に隙間12を有し、枠体10に固定されている。
【0020】
遠赤外線放射発熱体11は薄い帯状の通電材料を基板としてその表面にセラミックス材料が溶射被覆されており、図示外の手段によって基板材料が通電されることにより、発熱し、セラミックス材料表面から前方にのみ遠赤外線を放射する。遠赤外線放射ユニット9の許容電圧は一個当たり50Vである。
【0021】
空気排出調節板部材8は空気排出調節板部材8に形成される多数の通気孔の位置や大きさや数によってこれらの通気孔を通過する空気の排出量を空気排出調節板部材8の部位に応じて調節する。通気孔は、空気排出調節板部材8の周辺部に多数配列するのが好ましい。遠赤外線放射ユニット9に面する領域には遠赤外線放射ユニット9を冷却してしまうので設けない、あるいは通気孔の大きさを小さくしたり、数を少なくすることが望ましい。
【0022】
本実施形態では、図2に示されているように、空気排出調節板部材8の本体板8aには多数の通気孔13,14,15が形成されている。通気孔13は4個の遠赤外線放射ユニット9の外側周囲の領域に面する領域に多数配列されている。通気孔14は4個の遠赤外線放射ユニット9のそれぞれの間の領域に面する領域に多数配列されている。通気孔15は4個の遠赤外線放射ユニット9に面する領域に複数配列されており、他の通気孔13,14に比べて数は少ない。
【0023】
例えば、本体ケーシング1の大きさは横幅及び高さは262mmであり、奥行きは70mmである。通気孔13はφ5mmの丸孔で、個数は64個、通気孔14は幅5mm、長さ10mmの長丸孔で、個数は32個、通気孔15はφ5mmの丸孔で、個数は遠赤外線放射ユニット9の1個当たり10個である。
【0024】
本体ケーシング1の前面の開口端縁には空気拡散防止板部材16が取り付けられている。空気拡散防止板部材16は4個の遠赤外線放射ユニット9の外側周囲を取り囲むように本体ケーシング1の開口端縁に取り付けられた矩形の枠体で、前端部は外側の通気孔13から排出される空気が外側周囲に拡散するのを防止するよう内側(通気孔側)に傾斜している。
【0025】
以下、本発明の遠赤外線加熱機の作用を説明する。
【0026】
遠赤外線放射ユニット9の遠赤外線放射発熱体11は図示外の手段によって通電されることにより、発熱し、遠赤外線を被加熱物側に放射し、被加熱物を加熱する。この場合、遠赤外線による加熱では被加熱物の奥行き方向に温度差を発生する。
【0027】
一方、送風機3から吐出された空気はホース4を通って本体ケーシング1の空気取入口1aから本体ケーシング1内に流入する。本体ケーシング1内に流入した空気は空気整流板部材5の裏面の空間内で拡散し、多数の通気孔6を通って空気排出調節板部材8の全面に送られる。空気排出調節板部材8に送られた空気は、空気排出調節板部材8に形成されている多数の通気孔13,14,15を通り、前方に送風される。この際、ほとんどの空気は通気孔13,14から放出される。通気孔15を通った空気は遠赤外線放射ユニット9の遠赤外線放射発熱体11の隙間12を通って放出される。
【0028】
このようにして、送風機3から吐出された空気が空気整流板部材5によって空気排出調節板部材8の全面に送られるので、空気を空気排出調節板部材8の略全体から送風することができる。その結果、空気を被加熱物の全体に隈なく送風できるため、この空気によって被加熱物の前部の熱を後部に伝熱して温度差を小さく均一にすることができる。
【0029】
本実施形態においては、空気排出調節板部材8の周辺部に多数の通気孔13を設けることによって、空気排出調節板部材8の周辺部から送風される風量を確保でき、被加熱物に充分な風量を送風できる。また、多数の通気孔14によって、特に被加熱物の表面が平面の場合、通気孔14から排出された空気は被加熱物の表面中心部の高い熱をその周辺部に伝熱して温度差をより小さく均一にすることができる。
【0030】
また、本実施形態においては、枠体からなる空気拡散防止板部材16が設けられ、先端部が内側(通気孔側)に傾斜しているので、通気孔13から排出された空気を周囲に拡散せずに被加熱物に送風でき、被加熱物の温度差をより小さくできる。
【0031】
なお、被加熱物の温度をより高くするために上記実施形態の送風機は熱風発生機を使用するのが好ましい。
【符号の説明】
【0032】
1・・本体ケーシング、1a・・空気取入口、2・・ホース接続口、3・・送風機、4・・ホース、5・・空気整流板部材、5a・・本体板、5b・・取付片、6・・通気孔、7・・取付孔、8・・空気排出調節板部材、8a・・本体板、8b・・取付片、9・・遠赤外線放射ユニット、10・・枠体、11・・遠赤外線放射発熱体、12・・隙間、13,14,15・・通気孔、16・・空気拡散防止板部材。
図1
図2
図3
図4