特許第5890243号(P5890243)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890243
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】バーナ
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/08 20060101AFI20160308BHJP
   F23D 14/48 20060101ALI20160308BHJP
   F23D 14/62 20060101ALI20160308BHJP
   F23L 1/00 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   F23D14/08 Z
   F23D14/48 A
   F23D14/62
   F23L1/00 G
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2012-104341(P2012-104341)
(22)【出願日】2012年5月1日
(65)【公開番号】特開2013-231561(P2013-231561A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2015年4月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120802
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】田中 駿
(72)【発明者】
【氏名】近藤 秀介
(72)【発明者】
【氏名】岡田 卓也
【審査官】 黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−157526(JP,A)
【文献】 特開2008−185252(JP,A)
【文献】 実開平2−92421(JP,U)
【文献】 特開昭63−150507(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/08 − 14/10
F23D 14/48
F23D 14/62
F23L 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
細長形状のバーナであって、バーナの長手方向をX方向、バーナの幅方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向として、
X方向一端の流入口からX方向他端側にのびる混合管部を有するバーナ本体と、
混合管部のZ方向一方に位置するバーナ本体の面に設けられ、混合管部からの混合気が噴出する炎口がX方向の間隔を存して複数形成された燃焼板部と、
混合管部の流入口に装着され、ガスノズルが隙間を存して挿入される吸引口を有する一次空気ダンパとを備えるものにおいて、
ガスノズルの中心を通るY方向の線を境界線、境界線の前記Z方向一方に位置する吸引口の領域を第1吸引領域、境界線のZ方向他方に位置する吸引口の領域を第2吸引領域として、第2吸引領域の開口面積を第1吸引領域の開口面積より狭くすることを特徴とするバーナ。
【請求項2】
第2吸引領域の開口面積は、第1吸引領域の開口面積の37〜47%であることを特徴とする請求項1に記載のバーナ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温風暖房機等のガス器具に配置するバーナに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のバーナとして、細長形状のものであって、バーナの長手方向をX方向、バーナの幅方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向として、X方向一端の流入口からX方向他端側にのびる混合管部を有するバーナ本体と、混合管部のZ方向一方に位置するバーナ本体の面に設けられ、混合管部からの混合気が噴出する炎口がX方向の間隔を存して複数形成された燃焼板部と、混合管部の流入口に装着され、ガスノズルが隙間を存して挿入される吸引口を有する一次空気ダンパとを備えるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
ところで、上記構成のバーナを使用すると、バーナのサイズによっては、バーナの燃焼量が弱のときに、バーナのX方向一端側で火炎の燃焼状態が局所的に悪くなって、異常音が発生することが判明した。具体的には、バーナのX方向一端側において、炎口からの火炎が、エアーリッチになって長くなるものとガスリッチになって短くなるものとが混在した状態となる。
【0004】
本願発明者は、鋭意研究を重ね、上述した現象の発生理由を解明するに至った。即ち、バーナのX方向他端側では、X方向一端側の流入口に装着する一次空気ダンパの吸引口から距離があるため、燃料ガスと一次空気とが十分に混合されるのに対し、バーナのX方向一端側では燃料ガスと一次空気との混合が不十分になり易く、特にバーナの燃焼量が弱のときは、一次空気の吸引量が少ないため、X方向一端側で燃料ガスと一次空気との混合率にムラが生じ、上述した現象が発生することを見出した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−270952号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、バーナの燃焼量が弱のときであっても、燃料ガスと一次空気とを十分に混合させ、異常音の発生を防止できるようにしたバーナ用の一次空気ダンパを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のバーナは、細長形状のバーナであって、バーナの長手方向をX方向、バーナの幅方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向として、X方向一端の流入口からX方向他端側にのびる混合管部を有するバーナ本体と、混合管部のZ方向一方に位置するバーナ本体の面に設けられ、混合管部からの混合気が噴出する炎口がX方向の間隔を存して複数形成された燃焼板部と、混合管部の流入口に装着され、ガスノズルが隙間を存して挿入される吸引口を有する一次空気ダンパとを備えるものにおいて、ガスノズルの中心を通るY方向の線を境界線、境界線の前記Z方向一方に位置する吸引口の領域を第1吸引領域、境界線のZ方向他方に位置する吸引口の領域を第2吸引領域として、第2吸引領域の開口面積を第1吸引領域の開口面積より狭くすることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、吸引口の開口面積の重心の位置がガスノズルの中心よりもZ方向一方にずれることになり、混合管部のX方向一端側では、ガスノズルの中心よりもZ方向一方が負圧になる。そして、バーナの燃焼量が弱のときで、ガスノズルから噴出する燃料ガスの流速が遅い場合には、混合管部のX方向一端側で、ガスノズルからの燃料ガスがZ方向一方に曲げられ、ガスノズルよりZ方向一方に偏倚した位置により多く吸引される一次空気に衝突して、燃料ガスと一次空気との混合が促進される。従って、バーナの燃焼量が弱のときであっても、バーナのX方向一端側で燃料ガスと一次空気との混合率にムラを生ずることを抑制できる。
【0009】
また、本発明においては、第2吸引領域の開口面積は、第1吸引領域の開口面積の37〜47%であることが好ましい。これによれば、バーナの燃料量に関係なく、燃焼状態が安定し、異常音の発生がないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態のバーナを備える温風暖房機の断面図。
図2】実施形態のバーナの斜視図。
図3図2のIII−III線で切断した断面図。
図4図2のIV−IV線で切断した断面図。
図5】実施形態のバーナの長手方向正面図。
図6】一次空気ダンパの比較例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1を参照して、1は、温風暖房機の機体を示している。この温風暖房機1の機体内には、前面下部の吹出口11と、背面の吸込口12とを連通する通風ケース2が配置されている。通風ケース2内の下部には、温風ファン3が配置され、通風ケース2の上部には、本発明の実施形態のバーナ4を内蔵する燃焼筐5が配置されている。
【0012】
燃焼筐5の上端部には、バーナ4の燃焼ガスを通風ケース2内に排出する排気口51が開設され、燃焼筐5の背面部には、吸込口12からの空気の一部を燃焼筐5内に導入する導入口52が開設されている。そして、温風ファン3の作動により、吸込口12から通風ケース2内に吸い込まれる空気に燃焼筐5の排気口51から排出される燃焼ガスを混合させて温風として吹出口11に送風するようにしている。
【0013】
図2図5を参照して、バーナ4は、細長形状のものであって、バーナ本体41と、燃焼板部42と、一次空気ダンパ43とを備えている。以下において、バーナ4の長手方向をX方向、バーナ4の幅方向をY方向、X方向及びY方向に直交する方向をZ方向として、方向を示す用語を用いるものとする。尚、図2において、後述する二次空気カバー46は、X方向一方側(右側)の部分を省略した状態で図示されている。
【0014】
バーナ本体41は、プレス成形されたY方向両側の2枚の板材41a,41aを両板材41a,41aの接合フランジ部41bにおいて重ね合わせて形成したものであって、両板材41a,41aのZ方向一方の端(上端)に形成した外曲げフランジ41c,41c間に、Z方向一方(上方)に開口する開口部41dを有する。また、バーナ本体41には、X方向一端(右端)の流入口45dからX方向他端(左端)側にのびる混合管部45が一体的に形成されている。混合管部45は、流入口45dに対して縮径する第1通路45aと、第1通路45aからX方向他方(左方)にのびる第2通路45bと、第2通路45bからX方向他方に向けて次第に通路面積が狭くなるようにのびる第3通路45cとを有し、その内部で燃料ガスと一次空気とを混合させて、混合気を生成している。また、混合管部45は、そのZ方向一方(上方)でバーナ本体41の開口部41dと連通し、混合気が開口部41dへと誘導される。
【0015】
燃焼板部42は、バーナ本体41の開口部41dを覆うようにして、混合管部45のZ方向一方(上方)に位置するバーナ本体41の上面に設けられている。また、燃焼板部42は、X方向に所定の間隔を存して複数の炎口42aが2列に形成されており、混合管部45から誘導された混合気を炎口42aから噴出させるようにしている。燃焼板部42のZ方向一方(上方)には、混合気の噴出された空間を囲うように設けられ、Z方向一方(上方)に開口する開口部46aを有する二次空気カバー46が設けられている。バーナ本体41のフランジ41cと燃焼板部42とを重ね合わせた部分には、X方向に所定の間隔を存して複数の通気孔46bが形成されており、通気孔46bから制限された二次空気を、二次空気カバー46内に流入するようにしている。そして、混合気を二次空気カバー46内で一次燃焼させた後、二次空気カバー46の開口部46aで二次燃焼させ、燃焼ガスを排出している。尚、二次空気カバー46は省略してもよい。
【0016】
一次空気ダンパ43は、円筒部43aと、円筒部43aのX方向他端(左端)の鍔部43b,43bとを有し、円筒部43aを混合管部45の流入口45dの外周面に嵌合することにより、流入口45dに装着されている。また、一次空気ダンパ43は、ガスノズル47が隙間を存して挿入される吸引口43cを有する。ガスノズル47は、混合管部45の流入口45dの中心に位置するように、バーナ本体41の接合フランジ部41bに固定されている略コ字状のノズル取付部材(図示省略)によって、取り付けられている。
【0017】
ここで、ガスノズル47の中心を通るY方向の線を境界線L1、境界線L1のZ方向一方(上方)に位置する吸引口43cの領域を第1吸引領域D1、境界線L1のZ方向他方(下方)に位置する吸引口43cの領域を第2吸引領域D2とする。第1吸引領域D1は、境界線L1と、境界線L1のZ方向一方(上方)の所定径の円弧L2とを輪郭として開口しているのに対し、第2吸引領域D2は、境界線L1と、境界線L1のZ方向他方(下方)に位置するY方向の弦状の線L3と、線L3のY方向両側と境界線L1とを結ぶ小円弧L4,L4とを輪郭として開口している。このようにして、第2吸引領域D2の開口面積を第1吸引領域D1の開口面積より狭くしている。そして、ガスノズル47から噴出される燃料ガス流によるエジェクタ効果によって、吸引口43cから制限された一次空気を流入する。尚、一次空気ダンパ43の鍔部43b,43bは、装着方向を逆転してしまう等の誤組付けを防止するため、左右非対称形状としている。
【0018】
以上の実施形態によれば、吸引口43cの開口面積の重心の位置がガスノズル47の中心よりもZ方向一方(上方)にずれることになり、混合管部45の第1通路45a及び第2通路45bでは、ガスノズル47の中心よりもZ方向一方(上方)が負圧になる。そして、バーナ4の燃焼量が弱のときで、ガスノズル47から噴出する燃料ガスの流速が遅い場合には、混合管部45の第1通路45a及び第2通路45bで、ガスノズル47からの燃料ガスがZ方向一方(上方)に曲げられ、ガスノズル47よりZ方向一方(上方)に偏倚した位置により多く吸引される一次空気に衝突して、燃料ガスと一次空気との混合が促進される。従って、バーナ4の燃焼量が弱のときであっても、バーナ4の混合管部45の第1通路45a及び第2通路45bで燃料ガスと一次空気との混合率にムラを生ずることを抑制できる。尚、バーナ4の燃料量が強のときで、ガスノズル47から噴射する燃料ガスの流速が速い場合には、混合管部45内に流入される燃料ガス量が多い上、これに伴って吸引される一次空気量が増加するため、混合管部45の第1通路45a及び第2通路45bでも一次空気と燃料ガスとが十分に混合され、燃焼状態が悪くなることはない。
【0019】
次に、上記バーナ4を備える50号クラスの温風暖房機1を用いて、本発明の効果を示す次の実験を行った。本実験では、第2吸引領域D2の開口面積は、第1吸引領域D1の開口面積の37〜47%に設定した。これによれば、バーナ4の燃焼量に関係なく、燃焼状態が安定し、異常音の発生がないことが確認された。尚、第2吸引領域D2の開口面積を、第1吸引領域D1の開口面積の37%未満に設定した場合は、強燃焼時に一次空気が不足して燃焼状態が悪化し、また、第2吸引領域D2の開口面積を、第1吸引領域の開口面積の47%より大きく設定した場合は、Z方向一方(上方)のみならず、Z方向他方(下方)の一部も負圧となり、ガスノズル47からの燃料ガスがZ方向一方(上方)に曲がりきらず、混合管部45の第1通路45a及び第2通路45bで、燃料ガスと一次空気との混合が十分に促進されなくなる。
【0020】
これに対して、第1吸引領域D1及び第2吸引領域D2の両開口面積が同等になるように、例えば、第1吸引領域D1は、境界線L1と、境界線L1のZ方向一方(上方)の所定径の円弧とを輪郭として開口し、第2吸引領域D2は、境界線L1と、境界線L1のZ方向他方(下方)の所定径の円弧とを輪郭として開口している場合には、異常音が発生した。また、図6に示す比較例の一次空気ダンパの如く、第1吸引領域D1及び第2吸引領域D2が、Z方向に沿った線L5(図6(a)参照)又はZ方向一方(上方)及び他方(下方)に位置する弦状の線L6(図6(b)参照)を輪郭として開口するようにして、第1吸引領域D1及び第2吸引領域D2の両開口面積が同等になる場合も同様に、異常音が発生した。
【0021】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態のバーナ4では、燃焼板部42を上方に向けた上向き燃焼式バーナであるが、燃焼板部を横方向や下方に向ける横向き燃焼式や下向き燃焼式のバーナにも同様に本発明を適用できる。また、上記実施形態は、温風暖房機1におけるバーナ4に本発明を適用したものであるが、他のガス器具のバーナにも同様に本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0022】
4…バーナ、41…バーナ本体、42…燃焼板部、42a…炎口、43…一次空気ダンパ、43c…吸引口、45…混合管部、45d…流入口、47…ガスノズル、L1…境界線、D1…第1吸引領域、D2…第2吸引領域。

図1
図2
図3
図4
図5
図6