(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1、2に示したアルミニウム合金膜であっても、その膜厚を数百nm以上にしようとする場合、その表面が粗くなって光反射率が低下し、さらに抵抗が高くなり、耐久性が乏しくなるという不都合を有することが免れなかった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、膜厚を数百nm以上に形成しても、高い反射率を有し、かつ低抵抗で、高い耐久性を備えるアルミニウム合金膜を提供することにある。
【0009】
また、本発明の目的は、極めて簡単な構成にも拘わらず、膜厚を数百nm以上に形成しても、高い反射率で、かつ低抵抗、高い耐久性を備えるアルミニウム合金膜の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
このような目的を達成するために、本発明は、アルミニウム合金膜をスパッタリング法で成膜する場合、その成膜の際に適量の窒素を含有させるようにしたものである。
【0011】
このように構成することによって、アルミニウム合金膜をたとえ数百nm以上の膜厚で形成しても、高い光反射率が得られ、また、低抵抗、高耐久性のアルミニウム合金膜を得ることができるようになる。
【0012】
そして、このようなアルミニウム合金膜をスパッタリング装置によって製造する場合に、アルミニウム合金膜形成の際のスパッタガス中に適量のN
2ガスを添加するだけで済むことから、極めて簡単な構成でアルミニウム合金膜を得ることができるようになる。
【0013】
本発明は、以下の構成によって把握される。
(1)本発明のアルミニウム合金膜は、アルミニウム膜中に少なくとも一種の他の金属元素が添加され、膜厚が500〜1000nmの範囲にあるアルミニウム合金膜であって、その膜中に窒素が
0.5〜5.7質量%の範囲で含有されているとともに、平面的に観た場合の結晶粒の平均粒径が100nm以下にあり、表面粗さRmaxが60nm以下であ
り、Hv硬度が、150以上であり、可視域における光反射率は、平均的に86%以上であり、そして、比抵抗は、20μΩ以下であることを特徴とする。
(2)本発明のアルミニウム合金膜は、(1)の構成において、前記金属元素は、Ti、Nd、Mo、Nb、Zr、Hfのうち少なくとも一つが添加されていることを特徴とする。
Ti,Nd,Mo,Nb,Zr,Hfは、アルミの結晶成長を押さえる効果があることが知られており、本発明の添加される金属元素として好適である。更に、耐熱性向上、ヒロック抑制などの効果があり、添加による抵抗値の上昇が比較的少ない。
(3)本発明のアルミニウム合金膜は、(2)の構成において、前記金属元素はTi、Ndのうちの少なくとも一つであり、前記金属元素の膜中の濃度は、1.0〜1.9質量%の範囲であることを特徴とする。(2)に挙げた金属の中でも、Ti,Nbは、上記効果の他に、湿式エッチングが容易であり、電子機器などに利用される電極において良好なパターンを得やすい等の特徴を有している。
【発明の効果】
【0014】
このように構成したアルミニウム合金膜によれば、膜厚を数百nm以上に形成しても、高い反射率を有し、かつ低抵抗で、高い耐久性を備えるものを得ることができる。
【0015】
また、このように構成したアルミニウム合金膜の製造方法によれば、極めて簡単な構成にも拘わらず、膜厚を数百nm以上に形成しても、上述の、高反射率、
低抵抗、高耐久性という特性を備えるアルミニウム合金膜を得ることができるようになる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
(実施形態1)
図1(a)は、本発明のアルミニウム合金膜を形成するためのDCマグネトロンスパッタリング装置(以下、単にスパッタリング装置1と称する)の概略図である。スパッタリング装置1は、まず、真空排気可能なチャンバー2を備えている。チャンバー2の底部には載置台4が設けられ、天井側には、たとえばAl−Ti、あるいはAl−Nd等からなるアルミニウム合金ターゲット(以下、単にターゲット3と称する)が設けられている。
【0018】
また、チャンバー2には、図示しないガス導入系に接続されたガス導入口6と、図示しない真空ポンプに接続された排気口7とが設けられている。
【0019】
このように構成されるスパッタリング装置1を用い、たとえばガラスからなる基板5の上面にアルミニウム合金膜を成膜する場合、前記真空ポンプ(図示せず)によってチャンパー2内を真空(減圧)にした後、その真空状態を維持したまま、表面が露出した基板5をチャンバー2内に搬送し、成膜しようとする面をターゲット3に向け、載置台4の上面に載置する。
【0020】
チャンパー2内に、スパッタガス(Arガス)、さらに窒素ガスN
2をガス導入口6から導入する。ここでは、Arガス流量は400〜440ccmとし、窒素ガスはスパッタガス中の濃度が1〜5%の範囲となる量(5〜20sccm)を添加した。チャンバー2の内部がたとえば0.4Paの圧力で安定したところでターゲット3に直流電圧を印加してスパッタする。スパッタの際は、基板5の温度がたとえば100℃になるようにし、その状態で絶縁基板5の表面にアルミニウム合金膜を形成する。基板温度が150度以上になると、温度の上昇に準じて窒素ガスによる効果が薄れて、結晶粒子が大きくなるため好ましくない。
【0021】
そして、アルミニウム合金膜の膜厚が500〜1000nmの範囲の所定の値に達したところで、直流電圧の印加およびスパッタガスの導入を終了させ、基板5をチャンバー2の外部に搬出する。
【0022】
図1(b)は、チャンバー2から取り出された基板5の断面図を示している。該基板5の上面には、膜厚が500〜1000nmの範囲で形成されたアルミニウム合金膜10が形成されている。このアルミニウム合金膜10は、Al−Ti、あるいはAl−Nd等から構成されている。Ti、あるいはNdが含有されたアルミニウム合金膜10は、異常粒の発生を抑え、結晶粒を均一にでき、エッチングを均一に行うことができる効果を奏するようになる。
【0023】
ここで、上述したようなアルミニウム合金膜10の形成において、窒素ガスN
2を全く導入しない場合から窒素ガスN
2を順次多くしながら導入した場合の合計5段階のそれぞれについて形成される各アルミニウム合金膜10の表面の状態を
図2ないし
図6に示す。
【0024】
図2ないし
図6は、それぞれ、アルミニウム合金膜10の表面をAFM(Atomic Force Microscope)によって観察した結果(左側の図)とSEM(Scanning electron microscope:走査型電子顕微鏡)によって観察した結果(右側の図)を示すものである。AFMの走査領域は一辺が5000nmの正方領域とし、SEM倍率は50000倍とした。なお、アルミニウム合金膜10は、その膜厚を約1000nmとして形成したものとなっている。
【0025】
図2は、窒素ガスN
2を全く導入しない状態でアルミニウム合金膜10を形成したもので、左側の図から比較的大きな凸部が散在的に形成されていることが判り、右側の図からアルミニウム粒子が比較的大きく形成されていることが判る。平均的な表面粗さRaが5.527(nm)であり、最大表面粗さRmaxが9.548×10(nm)となっている。ここで、
図2で示すアルミニウム粒子は、その平均粒径が100nmより大きくなっている(
図2の右側の図の右下の100nmのスケール参照)。
【0026】
図3は、窒素ガスN
2を少し導入することによって、スパッタガス中に窒素を5sccm含有させてアルミニウム合金膜10を形成させたものとなっており、左側の図から、
図2の場合と比べて比較的大きな凸部が少し減少していることが判り、右側の図から、
図2の場合と比べてアルミニウム粒子が少し小さくなって形成されていることが判る。平均的な表面粗さRaは、5.102(nm)であり、最大表面粗さRmaxは5.713×10(nm)となっている。ここで、
図3で示すアルミニウム粒子は、その平均粒径が、
図2で示した場合よりも小さくなっており、その平均粒径が100nm以下となっている。
【0027】
図4は、窒素ガスN
2を
図3の場合よりも少し多く導入することによって、スパッタガス中に窒素を10sccm含有させてアルミニウム合金膜10を形成させたものとなっており、左側の図から、
図3の場合と比べて比較的大きな凸部が少し減少していることが判り、右側の図から、
図3の場合と比べてアルミニウム粒子が少し小さくなって形成されていることが判る。平均的な表面粗さRaは、3.145(nm)であり、最大表面粗さRmaxは4.359×10(nm)となっている。ここで、
図4で示すアルミニウム粒子は、その平均粒径が、
図3で示した場合よりも小さくなっており、その平均粒径が100nm以下となっている。
【0028】
図5は、窒素ガスN
2を
図4の場合よりも少し多く導入することによって、スパッタガス中に窒素を15sccm含有させてアルミニウム合金膜10を形成させたものとなっており、左側の図から、
図4の場合と比べて比較的大きな凸部が少し減少していることが判り、右側の図から、
図4の場合と比べてアルミニウム粒子が少し小さくなって形成されていることが判る。平均的な表面粗さRaは、2.582(nm)であり、最大表面粗さRmaxは3.252×10(nm)となっている。ここで、
図5で示すアルミニウム粒子は、その平均粒径が、
図4で示した場合よりも小さくなっており、その平均粒径が100nm以下となっている。
【0029】
図6は、窒素ガスN
2を
図5の場合よりも少し多く導入することによって、スパッタガス中に窒素を20sccm含有させてアルミニウム合金膜10を形成させたものとなっている。この場合、左側の図から、
図5の場合と比べて比較的大きな凸部が少し増加していることが判り、平均的な表面粗さRaは、3.012(nm)であり、最大表面粗さRmaxは4.016×10(nm)となっている。
図5と比較すると、粒子が細かくなるという本発明の効果は維持しているものの、粒子の大小のバラツキが大きくなって均一性が低下している。本発明の範囲内ではあるが、窒素ガス添加量が若干適正範囲を超えていると考えられる。
【0030】
図2ないし
図6から明らかとなるように、アルミニウム合金膜10の形成において、窒素ガスN
2を導入することによって、アルミニウム粒子の径が小さくなることが明らかとなる。この場合、平面的に観た場合の結晶粒の平均粒径が100nm以下にあり、表面粗さRmaxが60nm以下であることが明らかになる。これにより、アルミニウム合金膜10の表面の光反射率が向上するようになる。
【0031】
ここで、
図1において、基板5の上面には、たとえばAl−Ti、あるいはAl−Nd等からなるアルミニウム合金膜10を形成したものとし、本発明では純アルミニウム膜の形成を対象外とするようにしている。この理由は、純アルミニウム膜の場合であっても、窒素の添加によってアルミニウム粒子の径が小さくなることが確認できるが、その際に、異常に大きくなる粒子の発生を免れないことが判明しているからである。
【0032】
図7、
図8は、
図2ないし
図6に示したと同様に、基板5の上面に、いわゆる純アルミニウム膜を形成し、該アルミニウム膜の表面をAFMおよびSEMによって観察した図である。
図7、
図8において、それぞれ、(a)は、走査領域を一辺が5000nmの正方領域としたAFMの結果であり、(b)は(a)に示す純アルミニウム膜の表面のSEM観察の結果である。
図7は、窒素ガスN
2を全く導入しない状態で純アルミニウム膜を形成した場合、
図8は、窒素ガスN
2をスパッタガス中に10sccm含有させて純アルミニウム膜を形成した場合を示している。
図7に示すように、窒素が含有されていない純アルミニウム膜の場合、平均的な表面粗さRaは、8.985(nm)であり、最大表面粗さRmaxは2.001×10
2(nm)となっており、それらの表面粗さ(特に最大表面粗さ)が大きいことが判明する(
図7(b)参照)。また、
図8に示すように、窒素が含有されている純アルミニウム膜の場合でも、平均的な表面粗さは、6.501(nm)であり、最大表面粗さは1.958×10
2(nm)となっており、それらの表面粗さ(特に最大表面粗さ)が大きいことが判明する(
図8(b)参照)。このことから、アルミニウム粒子を全域的に小さくでき、これにより高い反射率を得るためには、純アルミニウム膜よりもアルミニウム合金膜の方が好適であることが明らかとなる。
【0033】
図9は、上述の窒素が含有されたアルミニウム合金膜10の光の波長(nm)に対する反射率(%)を、窒素が含有されていないアルミニウム合金膜、窒素が含有されていない純アルミニウム膜、および窒素が含有されている純アルミニウム膜とともに示したグラフである。同グラフは、横軸に光の波長(nm)を示し、縦軸に反射率(%)を示している。
【0034】
図9において、図中Aは窒素を含有させていないアルミニウム合金膜の反射特性を示し、図中Bは窒素を5sccm含有させたアルミニウム合金膜の反射特性を示し、図中Cは窒素を10sccm含有させたアルミニウム合金膜の反射特性を示し、図中Dは窒素を15sccm含有させたアルミニウム合金膜の反射特性を示し、図中Eは窒素を20sccm含有させたアルミニウム合金膜の反射特性を示している。また、図中Fは窒素を含有させていない純アルミニウム膜の反射特性を示し、図中Gは窒素を10sccm含有させた純アルミニウム膜の反射特性を示している。
【0035】
この場合、
図9から明らかとなるように、少なくとも、窒素が含有されたアルミニウム合金膜において、可視域(たとえば波長400〜700nm)における光反射率は、最も低いもの(グラフE)でも86%以上であり、窒素添加無しの純アルミニウム膜(グラフF)よりも高い反射率が得られることが判明する。なお、純アルミニウム膜の場合も窒素添加により反射率が向上するが(グラフG)、前述の異常粒子発生の問題があり、実用的ではない。
【0036】
なお、
図10は、
図9に示したグラフを作成するためのデータを示す表であり、(a)において波長400〜526nmの範囲で、(b)において波長528〜668nmの範囲で、(c)において波長670〜700nmの範囲で、それぞれ、前記A、B、C、D、E、F、Gの各部材の反射率を示している。
【0037】
図11は、上述のアルミニウム合金膜10の形成に際し、窒素ガスN
2を導入しない場合、窒素ガスN
2を5sccm、10sccm、15sccm、および20sccm導入した場合のそれぞれにおいて、該アルミニウム合金膜10のNHT硬度、NHT硬度から換算したヴィッカース硬度Hv、ヤング率、および圧子最大深さを示した表である。
【0038】
ヴィッカース硬度において、窒素ガスN
2を導入しない場合は96.6であるのに対し、窒素ガスN
2を5sccm、10sccm、15sccm、および20sccmと導入した場合は、順次、155.8、194.7、225.7、229.2となり、窒素ガスN
2の導入量に応じて大きくなっている。このことから、アルミニウム合金膜10は、窒素が含有されることによって、高い硬度を有するようになることが判る。
【0039】
ヤング率は、窒素ガスN
2を導入しない場合は73.9GPaであるのに対し、窒素ガスN
2を5sccm、10sccm、15sccm、および20sccmと導入した場合は、順次、78.0GPa、77.7GPa、95.3GPa、82.5GPaとなり、窒素ガスN
2の導入量に応じて略大きくなっていることが判る。
【0040】
また、圧子最大深さは、窒素ガスN
2を導入しない場合は193.7nmであるのに対し、窒素ガスN
2を5sccm、10sccm、15sccm、および20sccmと導入した場合は、順次、154.1nm、140.7nm、130.4nm、131.2nmと浅くなり、窒素ガスN
2の導入量に応じてアルミニウム合金膜10の硬さが大きくなっていることが判る。
【0041】
したがって、該アルミニウム合金膜10は、窒素が含有されることにより、極めて高い硬度と耐久性を有するようになっていることが判る。
【0042】
なお、
図11に示す表においては、基板5に対するアルミニウム合金膜10の密着試験をヴィッカース圧痕およびスクラッチによって行っていることを示しているが、いずれの場合にも、剥離なしとの結果を得ている。
【0043】
図12は、上述のアルミニウム合金膜10の形成に際し、窒素ガスN
2を5sccm、10sccm、15sccm、および20sccm導入した場合のそれぞれにおいて、アルミニウム合金膜10の膜厚と抵抗値との関係を示した表である。
【0044】
窒素ガスN
2を5sccm導入することにより得られるアルミニウム合金膜10の膜厚を783(nm)、791(nm)、808(nm)とした場合、それぞれの抵抗値は、0.1005Ω、0.0970Ω、0.0944Ωとなった。これにより、アルミニウム合金膜10の平均膜厚は796.05(nm)、平均抵抗値は0.0975Ωとなり、比抵抗は7.758(μΩcm)となる。
【0045】
窒素ガスN
2を10sccm導入することにより得られるアルミニウム合金膜10の膜厚を742(nm)、741(nm)、766(nm)とした場合、それぞれの抵抗値は、0.1366Ω、0.1314Ω、0.1275Ωとなった。これにより、アルミニウム合金膜10の平均膜厚は754.70(nm)、平均抵抗値は0.1321Ωとなり、比抵抗は9.966(μΩcm)となる。
【0046】
窒素ガスN
2を15sccm導入することにより得られるアルミニウム合金膜10の膜厚を766(nm)、788(nm)、790(nm)とした場合、それぞれの抵抗値は、0.1775Ω、0.1675Ω、0.1645Ωとなった。これにより、アルミニウム合金膜10の平均膜厚は778.75(nm)、平均抵抗値は0.1710Ωとなり、比抵抗は13.317(μΩcm)となる。
【0047】
窒素ガスN
2を20sccm導入することにより得られるアルミニウム合金膜10の膜厚を736(nm)、748(nm)、763(nm)とした場合、それぞれの抵抗値は、0.2392Ω、0.2152Ω、0.2225Ωとなった。これにより、アルミニウム合金膜10の平均膜厚は749.90(nm)、平均抵抗値は0.2309Ωとなり、比抵抗は17.311(μΩcm)となる。
【0048】
なお、窒素ガスN
2を導入しない場合、それによって得られるアルミニウム合金膜10の膜厚を659(nm)、665(nm)、674(nm)とした場合、それぞれの抵抗値は、0.0839Ω、0.0839Ω、0.0826Ωとなった。これにより、アルミニウム合金膜10の平均膜厚は6669.00、平均抵抗値は0.0833となり、比抵抗は5.552(μΩcm)となる。
【0049】
この表から明らかなように、該アルミニウム合金膜10は、窒素が含有されても、比抵抗を少なくとも20μΩ以下に抑えることができる。このため、該アルミニウム合金膜10を電子部品の配線層等に充分適用でき、たとえば有機EL(Electro Luminescence)素子の電極として用いることができる効果を奏するようになる。
【0050】
図13は、前記アルミニウム合金膜10の形成において、窒素ガスN
2を導入しない場合、窒素ガスN
2を5sccm導入した場合、窒素ガスN
2を10sccm導入した場合、窒素ガスN
2を15sccm導入した場合、窒素ガスN
2を20sccm導入した場合のESCA(Electron Spectroscopy for Chemical Analysis)による成分分析を行った結果を示す表である。
図13において、成分分析の対象は、O、Ti、N、Al、Cとなっている。
【0051】
この表から、窒素ガスN
2を5sccm導入した場合において、窒素Nの濃度はほぼ0.5〜0.9質量%となることが明らかとなり、窒素ガスN
2を20sccm導入した場合において、窒素Nの濃度は2.2〜5.7質量%となることが明らかとなる。即ち、アルミニウム合金膜中の窒素成分量は0.5〜5.7質量%の範囲で本発明の効果が実現されている。
上記窒素の成分範囲の中でも、窒素ガスを20sccm導入した例では他の例よりも反射率の向上効果が小さいことから、膜厚500〜1000nmの範囲内の値で形成したアルミニウム合金膜10は、窒素Nの濃度が0.5〜4.1質量%の範囲内で含有されていることが更に好ましい濃度範囲であり、より高い光反射率を得ることができることが判明する。
【0052】
また、当該表から、アルミニウム合金膜において、アルミニウム以外の他の金属元素としてTiを含有させている場合、該Tiの含有量は1.0〜1.9質量%となっており、この値が適当であることが判明する。
【0053】
このように構成されたアルミニウム合金膜は、1000nm程度の厚い膜とした場合でも、その結晶粒が細かく形成でき、均質な材料となることから、反射膜だけではなく、構成部材としての用途も広がる。その一例として、有機EL素子の陰極電極としての用途がある。有機ELでは、通電された時間内に瞬時に発光する必要があり、大きな電流が素子電極に流れる。さらに電極や配線接続部で高い電流の流れにより発熱し易くなるため酸化が起こり易い。従って高反射率を維持しつつ低抵抗、高耐久性であることが電極材料としての要件となり、本発明のアルミニウム合金膜は、従来のアルミニウム膜に比較して顕著な優位性を有している。また、他の例として、いわゆるモスアイ構造からなる反射防止膜を成形するスタンパ(金型原版)の材料として優れたものとなる。この構造の反射防止膜は、たとえば、表面に散在された多数の突起が形成され屈折率が連続的に変化する高分子フィルムから構成され、スタンパは、その表面に、該高分子フィルムの表面に形成する突起に対応して配列された窪みを有するようにして構成されている。
【0054】
図14(a)、(b)、(c)は、このようなスタンパ11を製造する工程図である。まず、アルミニウム合金膜からなる基材12を用意する。アルミニウム合金膜は、アルミニウム以外の金属としてTi、Ndのうち少なくとも一方が添加されていることが好ましい。また、該基材12の厚さは、500〜1000nmの範囲にあることが好ましい。そして、
図14(a)に示すように、該基材12の表面を陽極酸化し、表面に散在された多数の細孔13を形成する。この場合、陽極酸化の条件および時間を制御することによって、前記細孔13の大きさ、生成密度、細孔13の深さ、配列の規則性などを制御するようにする。次に、このような細孔13を有する基材12をエッチング液によって所定の量だけエッチングすることにより、
図14(b)に示すように、前記細孔13の孔径を拡大させる。そして、再び、基材12を部分的に陽極酸化することにより、細孔13を深さ方向に成長させるとともに、前記基材12をエッチング液に接触させることによって、
図14(c)に示すように、さらに外径を拡大させた細孔13を得ることができる。
このように作成されたスタンパを用い、スタンパ表面の凹凸形状をフィルム表面に転写することにより、モスアイ構造を有する反射防止フィルムとすることができる。
【0055】
(実施形態2)
実施形態1では、アルミニウム合金膜に添加されるアルミニウム以外の他の金属元素としてTiあるいはNdを説明したものである。しかし、これらTiあるいはNdに限定されることはなく、たとえば、Mo、Zr、Hf、Nb等の他の金属元素であってもよい。同様の効果が得られ、導電性もあまり低下しないからである。
【0056】
以上、実施形態を用いて本発明を説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されないことは言うまでもない。上記実施形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。また、その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。