(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
温度分布の検出対象となる空間に設置された複数のサーモパイルアレイセンサごとに、当該サーモパイルアレイセンサが温度を検出すべき予定検出範囲の位置座標を記憶する記憶部と、
前記各サーモパイルアレイセンサから検出温度を取得する検出温度取得部と、
前記各サーモパイルアレイセンサのうち、互いの予定検出範囲が一部重複する2つのサーモパイルアレイセンサについて、その重複領域内から選択した一方のサーモパイルアレイセンサ側の検査位置ごとに、他方のサーモパイルアレイセンサの予定検出範囲内から選択した他方のサーモパイルアレイセンサ側の各照合位置との間で、それぞれの位置で検出した前記検出温度の時系列変化を照合し、最も高い照合結果が得られた最適照合位置を特定する温度変化照合部と、
前記検査位置ごとに、当該検査位置に関する前記最適照合位置と、当該検査位置を示す位置座標と当該最適照合位置を示す位置座標との位置ズレを示す位置ズレ係数との関係を示す方程式を生成し、これら方程式を連立させて最小二乗法で解くことにより、これら位置ズレ係数を推定する係数推定部と、
前記位置ズレ係数に基づいて、前記他方のサーモパイルアレイセンサの前記予定検出範囲の位置座標を補正することにより、前記他方のサーモパイルアレイセンサの実際の検出範囲を特定する検出範囲特定部と
を備えることを特徴とする温度検出範囲特定装置。
記憶部が、温度分布の検出対象となる空間に設置された複数のサーモパイルアレイセンサごとに、当該サーモパイルアレイセンサが温度を検出すべき予定検出範囲の位置座標を記憶する記憶ステップと、
検出温度取得部が、前記各サーモパイルアレイセンサから検出温度を取得する検出温度取得ステップと、
温度変化照合部が、前記各サーモパイルアレイセンサのうち、互いの予定検出範囲が一部重複する2つのサーモパイルアレイセンサについて、その重複領域内から選択した一方のサーモパイルアレイセンサ側の検査位置ごとに、他方のサーモパイルアレイセンサの予定検出範囲内から選択した他方のサーモパイルアレイセンサ側の各照合位置との間で、それぞれの位置で検出した前記検出温度の時系列変化を照合し、最も高い照合結果が得られた最適照合位置を特定する温度変化照合ステップと、
係数推定部が、前記検査位置ごとに、当該検査位置に関する前記最適照合位置と、当該検査位置を示す位置座標と当該最適照合位置を示す位置座標との位置ズレを示す位置ズレ係数との関係を示す方程式を生成し、これら方程式を連立させて最小二乗法で解くことにより、これら位置ズレ係数を推定する係数推定ステップと、
検出範囲特定部が、前記位置ズレ係数に基づいて、前記他方のサーモパイルアレイセンサの前記予定検出範囲の位置座標を補正することにより、前記他方のサーモパイルアレイセンサの実際の検出範囲を特定する検出範囲特定ステップと
を備えることを特徴とする温度検出範囲特定方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
[発明原理]
まず最初に、本発明の原理について説明する。
複数のサーモパイルアレイセンサを用いて、空間の温度分布を検出する場合、隣り合う2つのサーモパイルアレイセンサの検出範囲のうち、一部重複する重複領域では、これらサーモパイルアレイセンサの両方で平行して温度を検出することになる。例えば、2つのサーモパイルアレイセンサの検出範囲が一部重複している場合、両方のサーモパイルアレイセンサ内の一部の検出素子で、同一位置座標の温度が検出される。
【0013】
本発明は、このような温度分布検出における検出範囲の一部重複にかかる特徴に着眼し、重複領域内に位置する各検出素子で検出された検出温度を、両サーモパイルアレイセンサ間で比較することにより、両サーモパイルアレイセンサの検出範囲の重なり具合を検出し、結果として、一方のサーモパイルアレイセンサを基準とした、他方のサーモパイルアレイセンサの予定検出範囲と実検出範囲との位置ズレを特定するようにしたものである。
これにより、予定検出範囲と実検出範囲との位置ズレを、検出温度という容易に入手可能なデータから特定することができる。
【0014】
ここで、重複領域について両サーモパイルアレイセンサの検出温度を比較する際、ある時刻における検出温度だけを比較した場合、偶然に検出温度が一致する場合もある。また、サーモパイルアレイセンサ間には、製造プロセスなどの要因により、2〜3℃程度の比較的大きな検出誤差も発生しうる。したがって、ある時刻の検出温度から得た比較結果に基づき位置ズレを特定した場合、得られた位置ズレに大きな誤差が生じる場合がある。
【0015】
一方、空間の温度は、例えば、会社や工場の稼働スケジュールや日出・日没時間に応じて変化し、この温度変化は、空間内の同一位置座標であれば同一の時系列変化を示す。また、この時系列変化は、サーモパイルアレイセンサ間の検出誤差によって変動するものでもない。
【0016】
本発明は、このような空間内の温度変化にかかる特徴に着眼し、重複領域内で検出された検出温度の時系列変化を、両サーモパイルアレイセンサ間で比較することにより、両サーモパイルアレイセンサの重なり具合を検出し、結果として、一方のサーモパイルアレイセンサを基準とした、他方のサーモパイルアレイセンサの予定検出範囲と実検出範囲との位置ズレを特定するようにしたものである。
これにより、予定検出範囲と実検出範囲との位置ズレを、精度よく特定することができる。
【0017】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[温度検出範囲特定装置]
まず、
図1を参照して、一実施の形態にかかる温度検出範囲特定装置10について説明する。
図1は、温度検出範囲特定装置の構成を示すブロック図である。
【0018】
この温度検出範囲特定装置10は、全体としてサーバ装置、パーソナルコンピュータコントローラ、などの情報処理装置からなり、温度検出の対象となる空間20に設置された複数のサーモパイルアレイセンサASから、通信回線L1を介して取得したそれぞれの検出温度に基づいて、各サーモパイルアレイセンサASの検出範囲の位置ズレを示す位置ズレ係数を推定し、これら位置ズレ係数に基づき実際の検出範囲を特定する機能を有している。
【0019】
図2は、空間におけるサーモパイルアレイセンサの設置例であり、
図2(a)は空間の平面図、
図2(b)は
図2(a)のII−II断面図である。ここでは、矩形状の空間20の天井21に、32個のサーモパイルアレイセンサASが、格子状に等間隔で設置されている。空間20において、幅(長手方向)は15m、奥行(短手方向)は8m、高さは3mである。サーモパイルアレイセンサASは、縦横2m間隔の格子の交点に設置されており、それぞれ天井21から床22に対して垂直な方向に、正方形状の検出範囲Rを有している。
【0020】
図3は、サーモパイルアレイセンサの検出範囲を示す説明図である。この例では、サーモパイルアレイセンサASの設置間隔が2mで、空間20の高さが3mで、検出範囲Rの視野角が60゜である。このため、床22において、検出範囲Rは3.46m四方の正方形となり、隣り合うサーモパイルアレイセンサASとの間で、検出範囲Rが重なる、幅1.46mの重複領域Qが生じる。ここでは、天井21から床22に対して垂直な方向に検出範囲Rを形成した場合を例として説明したが、垂直ではなく斜め方向に形成してもよい。また、天井21にサーモパイルアレイセンサASを設置せず、床22や壁23に設置してもよい。
【0021】
温度検出範囲特定装置10には、主な機能部として、記憶部11、検出温度取得部12、温度変化照合部13、係数推定部14、検出範囲特定部15、画面表示部16、および検出範囲出力部17が設けられている。
【0022】
記憶部11は、ハードディスクや半導体メモリなどの記憶装置からなり、温度分布の検出処理に用いる各種処理情報やプログラムを記憶する機能を有している。
記憶部11で記憶する主な処理情報として、検出温度データ11A、位置データ11B、係数データ11C、および検出範囲データ11Dがある。
【0023】
検出温度データ11Aは、空間20に設置されたサーモパイルアレイセンサASごとに、当該サーモパイルアレイセンサAS内の各検出素子で検出された検出温度である。これら検出温度は、検出温度取得部12による、通信回線L1を介した各サーモパイルアレイセンサASとのデータ通信により取得されて、記憶部11に保存される。
図4は、検出温度データの構成例である。ここでは、各サーモパイルアレイセンサASの検出素子Snijごとに、検出温度tnijが保存されている。なお、サーモパイルアレイセンサASnには、I個×J個の検出素子が格子状に配置されているものとする。
【0024】
位置データ11Bは、空間20内における、各サーモパイルアレイセンサASの予定検出範囲を示す座標データであり、サーモパイルアレイセンサASの設置位置などの設計データに基づき予め設定されて、記憶部11に保存される。
図5は、位置データの構成例である。ここでは、サーモパイルアレイセンサASごとに、当該サーモパイルアレイセンサAS内の検出素子から選択した基準検出素子の位置を示す座標データが、検出範囲Rの位置座標として登録されている。なお、本実施の形態に使用する各種座標データは、例えば空間20の床22のいずれかの隅や中央に予め設定した原点を基準としている。
【0025】
係数データ11Cは、サーモパイルアレイセンサASの予定検出範囲の位置座標を、実検出範囲の位置座標に補正するためのパラメータであり、係数推定部14により計算されて保存される。ここでは、位置ズレ係数として、6種類のパラメータを用いている。補正前の位置座標をx,yとし、位置ズレ係数をc0,c1,c2,c3,c4,c5とした場合、補正後の位置座標x’,y’は、次の式(1)で表させる。
【数1】
【0026】
式(1)において、c2,c5は、平行移動成分を示すパラメータであり、c0,c4は、拡大・縮小成分を示すパラメータであり、c1,c5は、回転成分を示すパラメータである。位置ズレ係数として、これらパラメータを定義することにより、高い精度で検出範囲の位置ズレを特定できる。なお、これらパラメータは、すべて必須であるわけではなく、検出範囲を特定する際に要求される精度に応じて選択すればよい。例えば検出範囲の位置ズレについて、拡大・縮小や回転を考慮しない場合、パラメータとして平行移動成分だけに限定してもよい。
【0027】
検出範囲データ11Dは、各サーモパイルアレイセンサASの実際の検出範囲を示す位置座標を示すデータであり、検出範囲特定部15により、係数データ11Cに基づいて、位置データ11Bで定義された予定検出範囲から計算されて記憶部11に保存される。
図6は、検出範囲データの構成例である。ここでは、サーモパイルアレイセンサASごとに、当該サーモパイルアレイセンサASの四隅に位置する検出素子の位置座標が、実際の検査範囲の座標として保存されている。
【0028】
検出温度取得部12は、通信回線L1を介して各サーモパイルアレイセンサASとデータ通信を行うことにより、これらサーモパイルアレイセンサAS内の検出素子で検出された検出温度を取得する機能と、これら検出温度からなる検出温度データ11Aを記憶部11に保存する機能とを有している。
【0029】
温度変化照合部13は、各サーモパイルアレイセンサASのうち、互いの予定検出範囲が一部重複する2つのサーモパイルアレイセンサについて、その重複領域内から選択した一方のサーモパイルアレイセンサ側の検査位置ごとに、他方のサーモパイルアレイセンサの予定検出範囲内から選択した各照合位置との間で、それぞれの位置で検出した検出温度の時系列変化を照合し、最も高い照合結果が得られた照合位置を最適照合位置として特定する機能を有している。
【0030】
図7は、温度変化の照合を示す説明図である。ここでは、隣り合う2つのサーモパイルアレイセンサASa,ASbと対応する予定検査範囲Ra,Rbが示されており、両者は重複領域Qで一部重複している。検査位置Puは、重複領域Qのうちから選択された、サーモパイルアレイセンサASa側の検出位置であり、ASa内のいずれかの検出素子に対応している。また、照合範囲Wuは、Puを中心として選択された領域であり、予定検査範囲Rbに対して、実検査範囲Rb’の予想される最大ズレ量の範囲を有している。照合位置Pvは、照合範囲Wuから選択された、サーモパイルアレイセンサASb側の検出位置であり、ASb内のいずれかの検出素子に対応している。
【0031】
温度変化照合部13は、1つのPuに対して、照合範囲Wu内からPvを順に選択し、これらPu,Pvで検出された検出温度tu,tvの時系列変化を照合する。
図8は、検出温度の時系列変化を示す説明図である。ここでは、特性Fuは、Puで検出した検出温度の時系列変化である。また、特性F1,F2は、個々のPvで検出した検出温度の時系列変化である。Lは、時系列変化を照合する時間区間である。
【0032】
時間区間L内の時刻lにおいて、Puでの検出温度をtulとし、Pvでの検出温度をtvlとした場合、これら特性Fu,Fvの照合度合scoreは、次の式(2)により計算される。
【数2】
上記式(2)に示すように、2つの検出位置における検出温度を比較する際、ある時刻における検出温度を比較するのではなく、これら検出温度の時系列変化を照合することにより、予定検出範囲と実検出範囲との位置ズレを、精度よく特定することができる。
【0033】
温度変化照合部13は、各Pvについて照合度合scoreを計算し、最大値が得られたPvをPuに対する最適照合位置Pu’として選択する。これにより、サーモパイルアレイセンサASbの予定検出範囲のうち、検査位置Puは最適照合位置Pu’へ位置ズレした可能性が最も高いことが特定されたことになる。
温度変化照合部13は、このようにして、重複領域Q内の各Puについて、最適照合位置Pu’を特定する。
【0034】
係数推定部14は、検査位置ごとに、当該検査位置に関する最適照合位置と、当該検査位置を示す位置座標と当該最適照合位置を示す位置座標との位置ズレを示す位置ズレ係数との関係を示す方程式を生成する機能と、これら方程式を連立させて最小二乗法で解くことにより、これら位置ズレ係数を推定する機能と、得られた位置ズレ係数からなる係数データ11Cを記憶部11へ保存する機能とを有している。
【0035】
前述した
図7において、サーモパイルアレイセンサASaの予定検査範囲Ra内に位置する検査位置Puは、サーモパイルアレイセンサASbの予定検査範囲Rb内に位置する検査位置Pvに相当する。したがって、Puに対する最適照合位置Pu’は、Pvが位置ズレした結果の移動先と見なせる。前述した式(1)には、このような関係が示されており、この式(1)の方程式は、各Puごとに生成できる。
【0036】
式(1)の方程式は、一般的には、行列式で表現される。重複領域Gm(m=1〜Mの整数)における検査位置Puk(k=1〜Kの整数)を示す位置座標をxk,ykとし、Pukに対応する最適照合位置Pvkの位置座標をx’k,y’kとした場合、上記方程式は、次の行列の式(3)および式(4)で表現される。
【数3】
【数4】
【0037】
この式(3)および式(4)において、最適照合位置Pvkの行列をVとし、検査位置Pukの行列をUとし、位置ズレ係数c0〜c6の行列をCとした場合、式(3)および式(4)は、V=UCで表現される。
したがって、最小二乗法によるCの推定結果C’は、一般に、C’=(U
TU)
-1U
TVで求まる。ここで、U
TはUの転置行列である。
【0038】
検出範囲特定部15は、サーモパイルアレイセンサASごとに、記憶部11の係数データ11Cから取得した当該サーモパイルアレイセンサASの位置ズレ係数に基づいて、同じく記憶部11の位置データ11Bから取得した、当該サーモパイルアレイセンサASの予定検出範囲をそれぞれ補正することにより、当該サーモパイルアレイセンサASの実際の検出範囲である実検出範囲を特定する機能と、得られた実検出範囲を検出範囲データ11Dとして記憶部11に保存する機能とを有している。
【0039】
画面表示部16は、LCDなどの画面表示装置からなり、記憶部11の検出範囲データ11Dを読み出して、画面表示する機能を有している。
温度分布出力部17は、通信回線L2を介して、ビル管理システム、さらには照明システムや空調システムなどの上位システム30とデータ通信を行うことにより、記憶部11から読み出した検出範囲データ11Dを上位システム30へ出力する機能とを有している。
【0040】
これら機能部のうち、検出温度取得部12、温度変化照合部13、係数推定部14、検出範囲特定部15、および検出範囲出力部17は、記憶部11のプログラムをCPUが実行してなる演算処理部により実現される。なお、このプログラムは、通信回線を介して接続された外部装置や記録媒体(ともに図示せず)から、予め読み込まれて記憶部11に格納される。
【0041】
[本実施の形態の動作]
次に、
図9を参照して、本実施の形態にかかる温度検出範囲特定装置10の動作について説明する。
図9は、温度検出範囲特定処理を示すフローチャートである。
【0042】
温度検出範囲特定装置10は、定期的に、あるいは外部からの実行指示に応じて、
図9の温度検出範囲特定処理を実行する。ここでは、空間20内にN個のサーモパイルアレイセンサASn(n=1〜Nの整数)が設置されており、これらサーモパイルアレイセンサASnのうち、隣り合うサーモパイルアレイセンサASn間について、M個の重複領域Gm(m=1〜Mの整数)が存在しているものとする。また、重複領域Gm内にはK個の検査位置Puが存在するものとし、照合範囲Wu内にはH個の照合位置Pvが存在するものとする。
【0043】
まず、検出温度取得部12は、空間20内に設置された各サーモパイルアレイセンサASnから、当該サーモパイルアレイセンサASn内の検出素子Sijで個別に検出した検出温度tnijを取得し、検出温度データ11Aとして記憶部11に保存する(ステップ100)。
【0044】
次に、温度変化照合部13は、記憶部11の位置データ11Bに基づき、重複領域Gmを構成する2つのサーモパイルアレイセンサASma,ASmbを選択し(ステップ101)、この重複領域GmからASma側の検査位置Puを選択するとともに(ステップ102)、Puに対応するASmb側の照合範囲Wuを選択する(ステップ103)。
【0045】
続いて、温度変化照合部13は、Puと照合範囲Wu内の各照合位置Pvについて、記憶部11の検出温度データ11Aから読み出した、時間区間Lの時系列変化Fu,Fvを照合し(ステップ104)、最大スコアが得られた照合位置Pvを、Puの最適照合位置Pu’として特定する(ステップ105)。
【0046】
ここで、重複領域Gm内の各検査位置Puについて、最適照合位置Pu’の特定処理が終了していないPuがある場合(ステップ106:NO)、ステップ102へ戻って、未選択のPuに対する最適照合位置Pu’の特定処理を繰り返し実行する。
また、すべての検査位置Puについて最適照合位置Pu’の特定処理が終了した場合(ステップ106:YES)、係数推定部14は、重複領域GmのPuごとに、Pu’と位置ズレ係数Cmとの方程式を生成し(ステップ107)、これら方程式を連立させて最小二乗法で解くことにより、これら位置ズレ係数Cmを推定し、係数データ11Cとして記憶部11へ保存する(ステップ108)。
【0047】
この後、各重複領域Gmのうち、位置ズレ係数Cmの推定処理が終了していない重複領域Gmがある場合(ステップ109:NO)、ステップ101へ戻って、未選択のGmに対する位置ズレ係数Cmの推定処理を繰り返し実行する。
【0048】
また、すべての重複領域Gmについて位置ズレ係数Cmの推定処理が終了した場合(ステップ109:YES)、検出範囲特定部15は、サーモパイルアレイセンサASごとに、記憶部11の係数データ11Cから取得した当該サーモパイルアレイセンサASの位置ズレ係数に基づいて、同じく記憶部11の位置データ11Bから取得した、当該サーモパイルアレイセンサASの予定検出範囲をそれぞれ補正することにより、当該サーモパイルアレイセンサASの実際の検出範囲である実検出範囲を特定して、得られた実検出範囲を検出範囲データ11Dとして記憶部11に保存し(ステップ110)、一連の温度検出範囲特定処理を終了する。
【0049】
これにより、この検出範囲データ11Dが記憶部11から読み出されて、画面表示部16に画面表示され、あるいは検出範囲出力部17により上位システム30へ出力されることになる。
【0050】
図10は、検出範囲データの画面表示例である。ここでは、
図2の設置例に応じて、サーモパイルアレイセンサASごとに、予定検出範囲と実検出範囲とが表示されている。例えば、実検出範囲R1’は、対応する予定検出範囲R1からX方向およびY方向に平行移動した位置にずれていることがわかる。また、実検出範囲R2’は、対応する予定検出範囲R2からX方向およびY方向に平行移動するとともにその大きさが拡大していることがわかる。また、実検出範囲R3’は、対応する予定検出範囲R3からX方向およびY方向に移動するとともに反時計まわりに回転していることがわかる。
【0051】
[第1の実施の形態の効果]
このように、本実施の形態は、検出温度取得部12が、各サーモパイルアレイセンサASから検出温度を取得し、温度変化照合部13が、互いの予定検出範囲が一部重複する2つのサーモパイルアレイセンサについて、その重複領域内から選択した検査位置ごとに、各照合位置との間で、それぞれの位置で検出した検出温度の時系列変化を照合して、最適照合位置を特定し、係数推定部14が、検査位置ごとに、最適照合位置と位置ズレ係数との関係を示す方程式を生成し、これら方程式を連立させて最小二乗法で解くことにより、これら位置ズレ係数を推定し、検出範囲特定部15が、これら位置ズレ係数に基づいて、予定検出範囲の位置座標を補正することにより、実際の検出範囲を特定するようにしたものである。
【0052】
これにより、隣り合うサーモパイルアレイセンサについて、検出範囲の一部重複を容易に確認することが可能となる。したがって、照明器具、空調機器、消防設備、電気設備などの機器設備が、サーモパイルアレイセンサの設置予定位置に設置されているため、当該機器設備の近傍にサーモパイルアレイセンサを設置して、当該サーモパイルアレイセンサの検出範囲を傾斜させた場合でも、隣り合うサーモパイルアレイセンサの検出範囲と一部重複しているか否かを極めて容易に確認することができ、結果として、空間20の温度分布を隙間なく検出することが可能となる。
【0053】
また、本実施の形態では、方程式として、検査位置の位置座標をx,yとし、最適照合位置の位置座標をx’,y’とし、位置ズレ係数をc0,c1,c2,c3,c4,c5とした場合、前述の式(1)で表されるようにしたので、予定検出範囲の平行移動だけでなく、拡大・縮小および回転についても、特定することができる。したがって、高い精度で検出範囲の位置ズレを特定できる。
【0054】
[実施の形態の拡張]
以上、実施形態を参照して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をすることができる。また、各実施形態については、矛盾しない範囲で任意に組み合わせて実施することができる。