特許第5890275号(P5890275)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オークマ株式会社の特許一覧

<>
  • 特許5890275-高速同期軸位置制御装置 図000002
  • 特許5890275-高速同期軸位置制御装置 図000003
  • 特許5890275-高速同期軸位置制御装置 図000004
  • 特許5890275-高速同期軸位置制御装置 図000005
  • 特許5890275-高速同期軸位置制御装置 図000006
  • 特許5890275-高速同期軸位置制御装置 図000007
  • 特許5890275-高速同期軸位置制御装置 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890275
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】高速同期軸位置制御装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/18 20060101AFI20160308BHJP
   B23Q 15/00 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   G05B19/18 C
   B23Q15/00 J
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-176046(P2012-176046)
(22)【出願日】2012年8月8日
(65)【公開番号】特開2014-35629(P2014-35629A)
(43)【公開日】2014年2月24日
【審査請求日】2015年4月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 悟司
【審査官】 牧 初
(56)【参考文献】
【文献】 特開平4−323705(JP,A)
【文献】 特開2004−314249(JP,A)
【文献】 特開2010−39995(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/18−19/416
G05B 19/42−19/46
B23Q 15/00−15/28
B23F 1/00−23/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
主軸に把持された加工物の回転角に応じて、刃具を径方向に高速同期動作させる制御軸に搭載される高速同期軸位置制御装置において、
主軸現在回転角の回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値について、指令整形の要否を決定する要否判定部と、
前記要否判定部の決定に従って、回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値を整形演算して、且つ、該演算値の保持を行う整形演算部と、
を備え、
前記要否判定部は、
主軸回転角に対応した前記刃具の径方向位置が任意の角度ピッチごとに設定された指令値テーブルから主軸現在回転角の回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値および前記回転方向に隣接するポイントより更に1ポイント先のテーブル指令値を抽出し、
前記抽出した前記回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値と前記更に1ポイント先のテーブル指令値と前記整形演算部で保持された主軸現在回転角の逆回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値とから未来に発生するテーブル指令加速度を前もって検出し、
前記検出値と予め設定された加速度基準値とを比較して指令整形の要否を決定する、
ことを特徴とする高速同期軸位置制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の高速同期軸位置制御装置において、
前記整形演算部は、
前記回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値と前記更に1ポイント先のテーブル指令値と前記逆回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値とから第一テーブル指令加速度を演算し、
前記回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値と前記逆回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値と前記逆回転方向に隣接するポイントの更に1ポイント過去のテーブル指令値とから第二テーブル指令加速度を演算し、
前記第一テーブル指令加速度および第二テーブル指令加速度が一致する様に、前記回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値を整形演算する、
ことを特徴とする高速同期軸位置制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高速同期軸位置制御装置、特に、数値制御機械において、加工物の回転角に応じて、刃具を加工物の径方向に高速同期動作させる制御軸(高速同期軸)に搭載される高速同期軸位置制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図5は、高速同期軸を搭載した数値制御機械の構造の一例を概略で示した図である。加工物は、一端がチャックで把持され、他の一端は心押台で支持されている。このため、加工物は主軸回転に合せて回転することになる。刃具は刃物台に固定され、刃物台は複数のボールネジ(図示しない)を介して、X軸方向(加工物の径方向)及びZ軸方向(主軸回転軸方向)に駆動される。図5では、刃具のX軸方向の動作が高速同期軸になっている。刃具は、主軸回転の角度(主軸回転角)に同期して、X軸方向には前後動作し、Z軸方向には一方向定速で送られることが多い。この様な複合動作により、加工物を、ロープネジ形状やカム形状に加工することができる。
【0003】
加工物は、Z軸方向等間隔の断面(多断面)における一定の角度ピッチを持った、主軸回転角に対応した、X軸方向の位置指令値によって形状定義される。これは、一定の角度ピッチ毎のX軸位置指令値データテーブル(以降、単に指令値テーブルと呼称する)として、CAD装置などの上位制御装置(図示しない)で作成され、予め、高速同期軸位置制御装置に設定されている。一般に、高速同期軸制御では、主軸を一定回転で制御して、例えば、(1回転内の)主軸回転角:0deg通過タイミングで、X軸(高速同期軸)方向とZ軸方向を同時起動させることで、主軸とX軸(高速同期軸)及びZ軸の位置同期を確立させている。
【0004】
ここで、一定速で動作する主軸とZ軸に対して、X軸(以降、高速同期軸の呼称を併用する)は、指令値変化量が急峻なため、位置指令値に対して、一般的な追従制御系を構成しても、高い加工精度が得られない。そこで、(位置指令値−位置検出値)である位置偏差Dc(以降、偏差値の呼称を併用する)を、主軸回転角に応じて全断面分収集し、学習演算操作を加えて補正値Ccの生成を行う学習制御系を付加し、この補正値生成サイクルを繰返しながら、位置偏差Dcの縮小化を達成する繰返し学習制御を採用した高速同期軸位置制御装置が多い。
【0005】
図6は、繰返し学習制御を搭載した高速同期軸位置制御装置100の構成を説明するブロック図である。予め、上位制御装置(図示しない)から、所定の設定角度ピッチで設けられた多断面分の主軸回転角に対応した指令値テーブル50が設定されている。今、主軸回転角θであるとすると、指令値発生部51は、指令値テーブル50から主軸回転角θに隣接する角度のテーブル指令値Pを読み出し、次に、テーブル指令値Pを直線補間して、主軸回転角θに応じた位置指令値Xcを算出する。
【0006】
以下、nは主軸回転角に対応するテーブル番号で、P(n)はn番目のテーブルに設定されたテーブル指令値、Hはテーブルの設定角度ピッチとする。指令値テーブル50から読み出される、主軸回転角θに隣接するテーブル指令値Pは、式(1)を満たすnを用いて、P(n−1)とP(n)となる。
(n−1)H<θ≦nH ・・・・・ (1)
ここで、指令値発生部51で算出される位置指令値Xcは、式(2)で表される。
Xc=P(n−1)+[{θ−(n−1)H}/H]{P(n)−P(n−1)} ・・・・・ (2)
【0007】
次に、高速同期軸位置制御装置100のフィードバック構成は次の様になっている。刃物台駆動部200には、刃具の高速同期軸(X軸)方向の位置を検出するための位置検出器(図示しない)が設置されており、その出力が位置検出値xfである。減算器52は、位置指令値Xcから、位置帰還である位置検出値xfを減算し、位置偏差Dcを出力する。
【0008】
繰返し学習制御部53は、前述の繰返しによる補正値生成サイクルを経て導出した、位置偏差Dcを縮小化させる補正値Ccを、多断面分の主軸回転角に対応させて設定した補正値データテーブルとして有している。位置偏差Dcと、繰返し学習制御部53の補正値データテーブルから、主軸回転角θに応じて読み出された補正値Ccと、は加算器54で加算され、位置偏差増幅器55で位置ループゲインKp倍に増幅され、速度指令値Vcとなる。減算器56は、速度指令値Vcから、刃物台駆動部200を駆動するサーボモータ(図示しない)のモータ速度vmを減算して、速度偏差Veを出力する。
【0009】
速度偏差Veは、速度偏差増幅器57で、通常、比例積分増幅される。式(3)は、この速度ループゲインGvを示している。(尚、比例ゲインGp,積分ゲインGi,ラプラス変換の演算子sである。)
Gv=Gp+(Gi/s) ・・・・・ (3)
速度偏差増幅器57の出力は、刃物台駆動部200の制御入力uとなる。制御入力uは、前述のサーボモータの発生トルクに等しくなる様に、トルク制御される(図示しない)。
【0010】
通常、加工物形状は、CAD装置などを用いて、X軸及びZ軸方向に対して2次元展開され、高精度な指令値テーブルが作成される。ここで、加工物形状がロープネジなどの場合は、一般的に、ネジの切入り部や切上げ部に形状急変部が含まれることが多い。
【0011】
図7は、折れ点状の形状急変部を持つ指令値テーブルを表現した図である。横軸は多断面分の主軸回転角度を、縦軸はX軸(高速同期軸)方向の位置指令値(テーブル指令値)を示している。尚、指令値テーブルには、テーブル設定角度ピッチ毎に指令値が設定されている。図7においては、黒丸で示したP(*)の値が、テーブル設定角度ピッチ毎に設定された指令値を示している。図において、nはテーブルポイント番号で、P(n)はn番目のポイントのテーブルに設定されたテーブル指令値(単位[μm])を表す。
【0012】
今、主軸は角度増加方向(横軸上で右方向)に回転しており、主軸現在回転角が図中のθであるとする。この時、式(1)に基づいて選択されたテーブル指令値P(n−1)とP(n)が読み出され、式(2)で位置指令値Xcが算出される。この後、主軸回転がポイント(n)を通過する時、ポイント(n)が形状急変部になるため、指令速度が急変し、大きな指令加速度が発生する。
【0013】
ここで、テーブル指令速度V(n)とテーブル指令加速度A(n)を式(4)と式(5)で定義しておく。
V(n)={P(n+1)−P(n)}(6N/H) ・・・・・ (4)
A(n)={V(n)−V(n−1)}(6N/H)={P(n+1)−2P(n)+P(n−1)}(6N/H) ・・・・・ (5)
尚、Nは主軸回転速度[min−1]、Hは前述のテーブル設定角度ピッチ[deg/pitch]である。
【0014】
高速同期軸の物理的な加速度限界は、サーボモータの発生トルクや、刃物台や刃具の質量などで制限される。一方で、式(5)に示す様に、高速同期軸での指令加速度は、主軸回転速度の2乗に比例するため、主軸回転速度を上げていくと、容易に大きな指令加速度が発生する事になる。つまり、ロープネジなどを加工する場合は、ネジ部では十分に追従可能な指令加速度となる主軸回転速度でも、切入り部や切上げ部の形状急変部では過大な指令加速度となって、振動が発生する、あるいは、加速限界によって主軸回転速度が制約される事が多い。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
以上説明した様に、従来の高速同期軸位置制御装置では、形状急変部で発生する過大な指令加速度によって、主軸回転速度が制限されて加工効率が上がらない事や、振動が発生して加工面が粗くなる現象があった。本発明が解決しようとする課題は、形状急変部での指令加速度を抑制する事で、主軸回転速度制限の軽減化や振動発生を抑制する高速同期軸位置制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、指令値テーブルを1ポイント分先読みして、形状急変部で発生する過大なテーブル指令加速度を未然に検出し、このテーブル指令加速度を抑制する様に、主軸回転通過前の隣接ポイントのテーブル指令値に対して整形演算を加え、この演算値でテーブル指令値を置換する事により、前記課題を解決するものである。
【0017】
具体的には、本発明の高速同期軸位置制御装置は、主軸に把持された加工物の回転角に応じて、刃具を径方向に高速同期動作させる制御軸に搭載される高速同期軸位置制御装置において、主軸現在回転角の回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値について、指令整形の要否を決定する要否判定部と、前記要否判定部の決定に従って、回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値を整形演算して、且つ、該演算値の保持を行う整形演算部と、を備え、前記要否判定部は、主軸回転角に対応した前記刃具の径方向位置が任意の角度ピッチごとに設定された指令値テーブルから主軸現在回転角の回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値および前記回転方向に隣接するポイントより更に1ポイント先のテーブル指令値を抽出し、前記抽出した前記回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値と前記更に1ポイント先のテーブル指令値と前記整形演算部で保持された主軸現在回転角の逆回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値とから未来に発生するテーブル指令加速度を前もって検出し、前記検出値と予め設定された加速度基準値とを比較して指令整形の要否を決定する、ことを特徴とする。
【0018】
好適な態様では、前記整形演算部は、前記回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値と前記更に1ポイント先のテーブル指令値と前記逆回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値とから第一テーブル指令加速度を演算し、前記回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値と前記逆回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値と前記逆回転方向に隣接するポイントの更に1ポイント過去のテーブル指令値とから第二テーブル指令加速度を演算し、前記第一テーブル指令加速度および第二テーブル指令加速度が一致する様に、前記回転方向に隣接するポイントのテーブル指令値を整形演算する。
【発明の効果】
【0019】
本発明による高速同期軸位置制御装置では、テーブル指令値を整形する事で、形状急変部で発生する加速度を低減できるため、振動の抑制による加工面品位の向上や、主軸の高速化による加工効率アップを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の実施形態である高速同期軸位置制御装置の構成例を示すブロック図である。
図2】本実施形態における指令整形部の構成例を示す図である。
図3】本実施形態における指令整形動作を説明するためのテーブル指令値の一例を示す図である。
図4】本実施形態における指令整形動作を説明するためのテーブル指令加速度の一例を示す図である。
図5】高速同期軸を搭載した数値制御機械の構造例の概略図である。
図6】従来の高速同期軸位置制御装置の構成例を示すブロック図である。
図7】従来のテーブル指令値の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図を用いて説明する。図1は、本発明の実施形態である高速同期軸位置制御装置を示すブロック図である。以下、これまでに説明した従来例と異なる部分について説明する。指令整形部2は、主軸現在回転角θに対応したテーブル指令値Pを指令値テーブル50から読み出し、後述する指令整形処理を加えたテーブル指令値Pcを指令値発生部51に対して出力する。
【0022】
図2は、指令整形部2の動作を説明するブロック図である。要否判定部3は、指令値テーブル50から、主軸現在回転角θに対して、主軸回転方向に隣接するテーブル指令値P(n)に加えて、主軸回転方向に1ポイント先のテーブル指令値P(n+1)を読みだす。更に、要否判定部3は、整形演算部4に保持された、主軸回転通過済みのテーブル指令値Pc(n−1)を用いて、未来に発生するテーブル指令加速度Aを前もって算出する。そして、要否判定部3は、このテーブル指令加速度Aが、予め設定された加速度基準値Alimより大きい場合は、指令整形処理を必要と、小さい場合は、同指令整形処理を不要と判断する。
【0023】
整形演算部4は、要否判定部3から、テーブル指令値P(n)とP(n+1)及び指令整形処理要否判定が入力される。指令整形が必要と判断された場合は、未来に発生するテーブル指令加速度が低減される様に、主軸回転方向で隣接するテーブル指令値P(n)を整形演算し、演算値をテーブル指令値Pc(n)として、指令値発生部51に出力する。一方で、指令整形が不要と判断された場合は、指令整形処理は実行しないが、この場合も、Pc(n)=P(n)と置いたテーブル指令値Pc(n)を指令値発生部51に出力する。尚、整形演算部4では、過去2ポイント分のテーブル指令値Pc(n−1),Pc(n−2)を保持しており、指令値発生部51にはテーブル指令値Pc(n−1)も出力される。
【0024】
整形演算されたテーブル指令値Pc(n)は、主軸回転角θに隣接する、もう一方のテーブル指令値Pc(n−1)とともに、指令値発生部51に出力される。指令値発生部51では、テーブル指令値Pcを用いて、従来同様に、式(2)の直線補間演算によって、主軸回転角θに応じた位置指令値Xcを算出する。
【0025】
図3は、図7と同一の折れ点状の形状急変部を持つ指令値テーブルに、本発明による指令整形処理を加えた時の動作を説明する図である。前述した様に、要否判定部3は、主軸現在回転角θとすると、指令値テーブル50から、テーブル指令値P(n)及び主軸回転方向に1ポイント先のテーブル指令値P(n+1)を読む。
【0026】
更に、過去に設定したテーブル指令値Pc(n−1)(=P(n−1))を利用して、式(6)でテーブル指令加速度A(n)を求める。
A(n)={P(n+1)−2P(n)+Pc(n−1)}(6N/H) ・・・・・ (6)
既に主軸通過済みのポイント(・・・,n−3,n−2,n−1)では、指令整形部2で整形置換されたテーブル指令値が採用されているため、式(6)では、ポイント(n−1)のテーブル指令値に、整形後のPc(n−1)を用いている。
【0027】
次に、ポイントnの指令整形の要否を、予め設定された加速度基準値Alimに対して、式(7)で判定する。
Alim≦|A(n)|=|P(n+1)−2P(n)+Pc(n−1)|(6N/H) ・・・・・ (7)
尚、加速度基準値Alimは、前述の物理的な加速度限界未満に設定しておく。
【0028】
整形演算部4は、式(7)が成立し、指令整形が必要と判断された場合は、更に過去に整形置換したPc(n−2)も利用して、次式(8)で整形動作を行う。
Pc(n)=Pc(n−1)+{P(n+1)−Pc(n−2)}/3 ・・・・・ (8)
これは、P(n)をPc(n)に指令整形する事で、指令整形後のテーブル指令加速度Ac(n)が、Ac(n)=Ac(n−1)を満たす様にした演算式である。
【0029】
式(8)の指令整形演算により、指令整形後のテーブル指令加速度Ac(n)は、式(9)で表せる。
Ac(n)={P(n+1)−2Pc(n)+Pc(n−1)}(6N/H)={(1/3)P(n+1)−Pc(n−1)+(2/3)Pc(n−2)}(6N/H) ・・・・・ (9)
【0030】
ここで、図3の折れ点状の形状急変部を持つ指令値テーブルに対する、本発明の指令整形動作について考える。図4は、図3の指令値テーブルに対して、式(6)で算出されるテーブル指令加速度A(n)を示している。ポイント(n−3)からポイント(n)まで、テーブル指令値Pは単一減少で、テーブル指令速度は一定になる。このため、A(n−3),A(n−2),A(n−1)=0になり、指令整形処理は実行されず、P(n−3)=Pc(n−3),P(n−2)=Pc(n−2),P(n−1)=Pc(n−1)である。
【0031】
以降、主軸が回転して、ポイント(n−1)を通過すると、先読みのテーブル指令値P(n+1)が急変するため、式(6)で、過大なテーブル指令加速度A(n)が算出される。このA(n)は、加速度基準値Alimを超過しているから、式(8)の指令整形処理が動作して、テーブル指令値P(n)はPc(n)に指令整形される。
【0032】
特に折れ点状の形状急変部を持つ図4の場合では、A(n−1)=0だから、式(6)より、Pc(n−2)=2Pc(n−1)−P(n)と表現できる。これを式(9)に代入すると、式(9)は、
Ac(n)=[(1/3)P(n+1)−Pc(n−1)+(2/3){2Pc(n−1)−P(n)}](6N/H)
=(1/3){P(n+1)−2P(n)+Pc(n−1)}(6N/H) ・・・・・ (10)
となる。
【0033】
式(10)は、テーブル指令値P(n)を、Pc(n)に指令整形する事により、テーブル指令加速度Ac(n)は、指令整形前のテーブル指令加速度A(n)に対して、1/3に低減できる事を示している。尚、指令整形演算は、Ac(n)=Ac(n−1)を満たす様に、Pc(n)が整形されるが、これは、図3において偏角φ(n−1)=φ(n)=Φ/3になる事に相当している。ここで、偏角Φは、元の折れ点部の持つテーブル指令加速度に相当している。
【0034】
更に、主軸が回転して、ポイント(n)を通過すると、先読みのテーブル指令値P(n+2)を用いて、式(6)に対して1ポイント進めた演算を行うことで、テーブル指令加速度A(n+1)が算出される。テーブル指令加速度A(n+1)は、図3において偏角φ(n+1)に相当する。ここで、
Φ=φ(n−1)+φ(n)+φ(n+1) ・・・・・ (11)
である事から、φ(n)=φ(n+1)=Φ/3となり、Ac(n+1)=Ac(n)が満たされているため、式(8)の整形動作を加えても、P(n+1)=Pc(n+1),A(n+1)=Ac(n+1)の結果となる。
【0035】
更に、主軸が回転して、ポイント(n+1)を通過する時は、テーブル指令加速度A(n+2)=0となって、Alim>|A(n+2)|だから、指令整形は不要と判断される。図3は折れ点状の形状急変部を想定しているから、以降も指令整形は不要となり、P(n+2)=Pc(n+2),P(n+3)=Pc(n+3)となる。
【0036】
つまり、本発明による指令整形では、折れ点状の形状急変部に対しては、折れ点1ポイントのみのテーブル指令値を整形するだけで、テーブル指令加速度は1/3に低減でき、指令整形ポイントが連続しないため、元の形状に対して継続的な指令誤差が発生しない。また、指令整形を加えないと、折れ点のテーブル指令加速度は、物理的な加速度限界を超えているから、折れ点部以降の応答は、必ずオーバーシュートして、指令位置を通過できず、結果的に、振動を誘発して、粗い加工面となる事が多いのに対して、指令整形を加えると、テーブル指令加速度が抑制でき、振動発生を防止できる。
【0037】
以上説明した様に、本発明による高速同期軸位置制御装置では、指令値テーブルを1ポイント分先読みして、形状急変部で発生する過大なテーブル指令加速度を未然に検出し、主軸回転通過前の隣接ポイントのテーブル指令値を整形する事で、形状急変部で発生する加速度を低減できるため、振動の抑制による加工面品位の向上や、主軸の高速化による加工効率のアップを実現できる。
【符号の説明】
【0038】
1,100 高速同期軸位置制御装置、2 指令整形部、3 要否判定部、4 整形演算部、50 指令値テーブル、51 指令値発生部、52 減算器、53 繰返し学習制御部、54 加算器、55 位置偏差増幅器、56 減算器、57 速度偏差増幅器、200 刃物台駆動部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7