(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890287
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】床用戸当り
(51)【国際特許分類】
E05F 5/06 20060101AFI20160308BHJP
E05F 5/02 20060101ALI20160308BHJP
E05F 5/00 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
E05F5/06
E05F5/02 F
E05F5/00 C
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2012-205159(P2012-205159)
(22)【出願日】2012年9月19日
(65)【公開番号】特開2014-58829(P2014-58829A)
(43)【公開日】2014年4月3日
【審査請求日】2014年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】591212420
【氏名又は名称】株式会社山口安製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100071548
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 賢二
(72)【発明者】
【氏名】河村 裕司
【審査官】
家田 政明
(56)【参考文献】
【文献】
特開2004−124472(JP,A)
【文献】
特開2005−098019(JP,A)
【文献】
実開平04−051587(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 1/00−17/00
E05C 1/00−21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート床用アンカーボルト(B)に締結固定される取付脚柱(A)と、
その取付脚柱(A)の胴体(10)へ差し込み套嵌される差込み口腔(S)を有する脚筒(17)と、その脚筒(17)のほぼ上半部から上記取付脚柱(A)の垂直中心線(O−O)と一定距離(X)だけ偏心することとなるように張り出し連続する径大な円形の偏心ヘッドフランジ(18)とを備えた全体形状のゴム受け芯(C)と、
そのゴム受け芯(C)の偏心ヘッドフランジ(18)を一体的に包囲する円形のクッションゴム(R)とから成り、
上記取付脚柱(A)における胴体(10)の外周面と上記ゴム受け芯(C)の脚筒(17)における差込み口腔(S)の内周面には、互いに対応合致する多数の凹凸条(14)(19)がその垂直中心線(O−O)に沿って悉く平行な延在状態に付与されており、
上記ゴム受け芯(C)の脚筒(17)を取付脚柱(A)の胴体(10)へ上方から抜き差し自在に差し込み套嵌する際、そのゴム受け芯(C)が垂直中心線(O−O)の廻りに任意角度だけ回動されて、その垂直中心線(O−O)上からクッションゴム(R)の円周面による回転扉(M)の受け止め位置(P1)(P2)(P3)までの距離(L1)(L2)(L3)が長短調整されると共に、
上記ゴム受け芯(C)の偏心ヘッドフランジ(18)が、上方から取付脚柱(A)の垂直中心線(O−O)に沿い螺合締結されるビス(21)によって、その取付脚柱(A)の胴体(10)へ固定一体化されたことを特徴とする床用戸当り。
【請求項2】
互いに対応合致する多数の凹凸条(14)(19)がスプライン歯やセレーション歯、その他の噛合形状をなすことを特徴とする請求項1記載の床用戸当り。
【請求項3】
取付脚柱(A)の胴体(10)に対する偏心ヘッドフランジ(18)の固定ビス(21)が、上方からセンターカバー(25)によって施蓋化粧されると共に、
そのセンターカバー(25)が上記偏心ヘッドフランジ(18)の垂直偏心線(E−E)に沿い螺合締結されるビス(27)によって、その偏心ヘッドフランジ(18)へ固定一体化されたことを特徴とする請求項1記載の床用戸当り。
【請求項4】
上面の中央部にセンターカバー受け入れ孔(24)を有するクッションゴム(R)が、そのゴム受け芯(C)の偏心ヘッドフランジ(18)へ包囲状態に溶着一体化されていると共に、
取付脚柱(A)の垂直中心線(O−O)上からクッションゴム(R)の円周面による回転扉(M)の受け止め位置(P1)(P2)(P3)までの長短距離(L1)(L2)(L3)を表示するガイド指標(30a)(30b)(30c)が刻印されたセンターカバー(25)によって、上記クッションゴム(R)のセンターカバー受け入れ孔(24)が上方から施蓋化粧されたことを特徴とする請求項1記載の床用戸当り。
【請求項5】
円形なセンターカバー(25)の偏心部から下向き一体的に突出するキーピン(28)が、偏心ヘッドフランジ(18)の上面に切り欠かれた対応的なキー溝(29)へ、上方から差し込み嵌合されたことを特徴とする請求項3又は4記載の床用戸当り。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は回転扉の開閉に伴なうレバーハンドルやドアークローザーの破損、壁面の損傷などを予防するため、建物の床面に取り付け固定される戸当りに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ホテルやコンサートホール、学校、病院、階層型の集合住宅(マンション)などの建物では、比較的に重い金属製の回転扉(例えば防火扉)を受け止める戸当りが、コンクリート床用アンカーボルトを介して、その建物の床面に取り付け使用されている通例である。
【0003】
その床用戸当りは、ダイカスト法によってほぼ円柱形に製造された亜鉛合金鋳物の取付脚柱と、その脚柱の頭部へ強制的に嵌め付け一体化された径大なドーナツ状のクッションゴム(キャップ)とを備え、そのクッションゴム(キャップ)の円形外周面が回転扉の受け止め面をなしている。
【0004】
このような戸当りの取付脚柱を床面から突出するアンカーボルトへ締結固定した後に、そのクッションゴム(キャップ)による回転扉の受け止め位置が、回転扉における所定開度との関係上、万一正しく対応合致せず、位置狂いを起していることが判明したとしても、そのアンカーボルトの突出位置を爾後的に変更・調整(矯正)することはできない。
【0005】
又、使用するドアークローザーとの関係上、そのクローザーの所定開度よりも早く回転扉を受け止めたくても、その希望に応じた変更・調整を爾後的に行うことは不可能である。
【0006】
その場合、回転扉に付属のフックと係脱自在に係合し得るリングを備えた床用戸当りについては、その脚柱をアンカーボルトに締結固定した後でも、その係合リングの方向性を変更・調整できるように工夫した発明が、特許文献1に提案されており、公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−124472号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、上記特許文献1に開示されているような係合リングを具備しない床用戸当りにあっては、そのクッションゴム(キャップ)をたとえ回転操作したとしても、これによる回転扉の受け止め位置を、その回転扉における所定の開度と正しく対応合致させるべく、爾後的に変更・調整することができない。
【0009】
その戸当りのクッションゴム(キャップ)と取付脚柱が同芯の円形(平面視の真円形)をなすに過ぎないからであり、その意味で特許文献1に記載の戸当りは係合リングを具備しないそれに適用することができず、汎用性に劣る。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明はこのような課題に鑑みて、円形のクッションゴム(キャップ)と取付脚柱を採用しつつも、その床用戸当りの上記爾後的な変更・調整(矯正)を行えるようにするために、請求項1ではコンクリート床用アンカーボルトに締結固定される取付脚柱と、
【0011】
その取付脚柱の胴体
へ差し込み套嵌される差込み口腔を有する脚筒と、その脚筒のほぼ上半部から上記取付脚柱の垂直中心線と一定距離だけ偏心することとなるように張り出し連続する径大な円形の偏心ヘッドフランジとを備えた全体形状のゴム受け芯と、
【0012】
そのゴム受け芯の偏心ヘッドフランジを一体的に包囲する円形のクッションゴムとから成り、
【0013】
上記取付脚柱における胴体の外周面と上記ゴム受け芯の脚筒における差込み口腔の内周面
には、互いに対応合致する多数の凹凸条
がその垂直中心線に沿って悉く平行
な延在状態に付与されており、
【0014】
上記ゴム受け芯の脚筒を取付脚柱の胴体へ上方から抜き差し自在に差し込み套嵌する際、そのゴム受け芯
が垂直中心線の廻りに任意角度だけ回動さ
れて、その垂直中心線上からクッションゴムの円周面による回転扉の受け止め位置までの距離
が長短調整
されると共に、
【0015】
上記ゴム受け芯の偏心ヘッドフランジ
が、上方から取付脚柱の垂直中心線に沿い螺合締結されるビスによって、その取付脚柱の胴体へ固定一体化
されたことを特徴とする。
【0016】
又、請求項2では互いに対応合致する多数の凹凸条
がスプライン歯やセレーション歯、その他の噛合形状
をなすことを特徴とする。
【0017】
請求項3では取付脚柱の胴体に対する偏心ヘッドフランジの固定ビス
が、上方からセンターカバーによって施蓋化粧
されると共に、
【0018】
そのセンターカバー
が上記偏心ヘッドフランジの垂直偏心線に沿い螺合締結されるビスによって、その偏心ヘッドフランジへ固定一体化
されたことを特徴とする。
【0019】
請求項4では上面の中央部にセンターカバー受け入れ孔
を有するクッションゴム
が、そのゴム受け芯の偏心ヘッドフランジへ包囲状態に溶着一体化
されていると共に、
【0020】
取付脚柱の垂直中心線上からクッションゴムの円周面による回転扉の受け止め位置までの長短距離を表示するガイド指標が刻印されたセンターカバーによって、上記クッションゴムのセンターカバー受け入れ孔
が上方から施蓋化粧
されたことを特徴とする。
【0021】
更に、請求項5では円形なセンターカバーの偏心部から
下向き一体的に突出するキーピンが、偏心ヘッドフランジの上面に切り欠かれた対応的なキー溝へ、上方から差し込み嵌合
されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1の構成によれば、戸当りの取付脚柱を床面から突出するアンカーボルトへ締結固定した後でも、その取付脚柱の胴体へゴム受け芯の脚筒を上方から抜き差し自在に差し込み套嵌する際に、そのゴム受け芯を取付脚柱の垂直中心線廻りに任意の角度だけ回動させることができ、そうすればクッションゴムにより包囲されているゴム受け芯の径大な円形偏心ヘッドフランジは、上記取付脚柱の垂直中心線から一定距離だけ偏心しているため、その垂直中心線上からクッションゴムの円周面による回転扉の受け止め位置までの距離を、長く又は短く変更・調整(矯正)することができることとなり、その回転扉の開閉に伴なうレバーハンドルやドアークローザーの破損、壁面の損傷などを確実に防止し得る効果がある。
【0023】
その場合、請求項2の構成を採用するならば、その多数の凹凸条がスプライン歯やセレーション歯などの噛合形状をなすため、上記取付脚柱の胴体とゴム受け芯の脚筒とを極めて大きな嵌合表面積のもとで、強く組み立てることができ、ホテルやコンサートホール、学校、病院などの建物における重い金属製の回転扉(例えば防火扉)を受け止める対抗力に優れると共に、その取付脚柱に対してゴム受け芯が空転するおそれも確実に防止し得るのである。
【0024】
請求項3の構成を採用するならば、円形のクッションゴムにより包囲されたゴム受け芯の径大な偏心ヘッドフランジを取付脚柱の胴体へ上方から固定一体化するビスの頭部を、更に上方からセンターカバーによって施蓋化粧することができ、しかもそのセンターカバーが上記偏心ヘッドフランジの垂直偏心線(円形な偏心ヘッドフランジ自身の垂直中心線)に沿い螺合締結される別個のビスによって、その偏心ヘッドフランジへ固定一体化されているため、床面に設置された使用状態の戸当りを上方から目視観察した場合、上記偏心ヘッドフランジが偏心している印象を与えるおそれはなく、違和感のない意匠効果を得られるのである。
【0025】
又、請求項4の構成を採用するならば、クッションゴムがそのゴム受け芯の偏心ヘッドフランジに対して、遊動するおそれを防止できるほか、そのクッションゴムの中央部を上方から施蓋化粧するセンターカバーのガイド指標に基いて、上記取付脚柱の垂直中心線上からクッションゴムの円周面による回転扉の受け止め位置までの長短距離を、容易に変更・調整(矯正)することができ、その現場作業性や利便性もますます向上する。
【0026】
更に、請求項5の構成を採用するならば、そのキーピンとキー溝との差し込み嵌合により、円形なセンターカバーの空転を防止できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明に係る床用戸当りの分解状態を示す正面図である。
【
図2】
図1の拡大断面図であるが、戸当りの取付脚柱を床用アンカーボルトへ締結固定した状態として示している。
【
図15】ゴム受け芯の偏心ヘッドフランジをクッションゴムにより包囲した状態の平面図である。
【
図18】クッションゴムを抽出して示す平面図である。
【
図20】センターカバーを抽出して示す平面図である。
【
図22】回転扉の受け止め位置が取付脚柱の垂直中心線上から最も長い距離にある調整状態を示す平面図である。
【
図23】回転扉の受け止め位置が取付脚柱の垂直中心線上から最も短かい距離にある調整状態を示す平面図である。
【
図24】回転扉の受け止め位置が取付脚柱の垂直中心線上から中間距離にある調整状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基いて本発明の実施形態を詳述すると、図1、2はその床用戸当りの分解状態を、図3〜6は同じく組立使用状態を各々示しており、(A)は建物の床面(F)に対する取付脚柱であって、亜鉛合金やアルミ合金、スチール、その他の金属材料から、好ましくはダイカスト法によって図7〜10のような一定の高さ(H)(例えば約44mm)と直径(D1)(例えば約24.2mm)を備えた基本的な円柱形に作成(鋳造)されている。その脚柱(A)の下端部は径大な円形や正多角形などのベースフランジ(11)として、胴体(10)からの連続一体に張り出し形成されている。
【0029】
(12)(13)は上記取付脚柱(A)の垂直中心線(O−O)上に各々穿設された後述するゴム受け芯(C)の固定ビス用ネジ孔とアンカーボルト用ネジ孔との上下一対であり、その上側の径小(例えば約6mmの口径)なゴム受け芯固定ビス用ネジ孔(12)と下側の径大(例えば約12mmの口径)なアンカーボルト用ネジ孔(13)とが、その境界部での段付き状態に連通している。但し、その境界部での非連通状態(盲目状態)に仕切り区分されていても、さしつかえない。
【0030】
又、(14)は上記取付脚柱(A)における胴体(10)の外周面へ、その上端部からの一定深さ(Y)(例えば約31mm)だけ付与された多数の凹凸条であって、その脚柱(A)の垂直中心線(O−O)に沿って悉く平行に延在しており、後述するゴム受け芯(C)との嵌合強度を高めると共に、そのゴム受け芯(C)の空転を防止する。
【0031】
この点、図示の実施形態では上記凹凸条(14)を合計11列づつのスプライン歯として刻成することにより、その取付脚柱(A)における胴体(10)の一定深さ(Y)分を言わばスプライン軸に造形しているが、上記機能を果せる凹凸条(14)であるならば、そのスプライン歯に代るセレーション歯やその他の噛合形状を採用しても良い。(θ)は上記凹凸条(14)の刻成による回転単位角度(図例では約33度)を示しており、取付脚柱(A)に対して後述のゴム受け芯(C)を差し込み套嵌する際、その単位角度(θ)づつ回転させ得ることを意味する。
【0032】
更に、(15)は上記取付脚柱(A)のアンカーボルト用ネジ孔(13)をコンクリート床用アンカーボルト(B)のネジ軸(16)へ締結固定する取付作業時に、その脚柱(A)を回動させる工具(図示省略)の挿通孔であって、上記凹凸条(14)が列設されている胴体(10)と、ベースフランジ(11)が張り出している下端部との上下相互間(境界部)に位置しつつ、その上記アンカーボルト用ネジ孔(13)と直交する横断状態に貫通形成されている。
【0033】
このような取付脚柱(A)の工具挿通孔(15)は、その胴体(10)へ上方から差し込み套嵌される後述のゴム受け芯(C)によって、被覆状態に保たれることとなり、戸当りの使用中に開口露呈することはない。
【0034】
先に一言したゴム受け芯(C)は、これも上記取付脚柱(A)と同じ金属材料から、やはり好ましくはダイカスト法によって、図11〜14のような取付脚柱(A)の胴体(10)に対する差込み口腔(S)を有する脚筒(17)と、その脚筒(17)のほぼ上半部から上記取付脚柱(A)の垂直中心線(O−O)と一定距離(X)(例えば約7.7mm)だけ偏心することとなるように張り出し連続する径大な円形の偏心ヘッドフランジ(18)とを備えた全体形状に作成(鋳造)されている。
【0035】
(E−E)はその偏心ヘッドフランジ(18)の垂直偏心線を示しており、上記取付脚柱(A)の垂直中心線(O−O)と平行している。(T)はその偏心ヘッドフランジ(18)の厚みを示しており、例えば約22mmである。(D2)(D3)は上記脚筒(17)の直径と偏心ヘッドフランジ(18)の直径を各々示しており、一例として前者が約30mm、後者が約48.4mmである。
【0036】
(19)は上記取付脚柱(A)における胴体(10)の凹凸条(14)と対応合致する多数の凹凸条であって、上記脚筒(17)における差込み口腔(S)の内周面に一定深さ(Y)だけ付与されており、これらも取付脚柱(A)と同じ垂直中心線(O−O)に沿い悉く平行に延在することによって、そのゴム受け芯(C)の脚筒(17)を上記取付脚柱(A)の胴体(10)へ、上方から抜き差し自在に差し込み套嵌させることができるようになっている。
【0037】
図示実施形態の場合、そのゴム受け芯(C)における脚筒(17)の凹凸条(19)も上記取付脚柱(A)における胴体(10)のそれと同じく、合計11列づつのスプライン歯として刻成されているが、その胴体(10)の凹凸条(14)と噛合できる凹凸条(19)であるならば、やはりスプライン歯に代るセレーション歯やその他の形状を採用しても良い。その噛合することが嵌合表面積の増大を意味し、上記取付脚柱(A)に対するゴム受け芯(C)の組立強度を向上させると共に、そのゴム受け芯(C)を空転しない状態に固定維持する。
【0038】
(20)は上記ゴム受け芯(C)における脚筒(17)の垂直中心線(O−O)上に穿設されたゴム受け芯固定ビス用円錐皿孔であって、その脚筒(17)の上記差込み口腔(S)と連通している。
【0039】
ゴム受け芯(C)の脚筒(17)を上方から取付脚柱(A)の胴体(10)へ、その対応合致する凹凸条(14)(19)に沿って差し込み套嵌した後、その皿孔(20)から取付脚柱(A)の上記ゴム受け芯固定ビス用ネジ孔(12)へ、図2、5のように長い皿ビス(21)を螺合締結することにより、ゴム受け芯(C)を取付脚柱(A)へ固定一体化できるようになっている。
【0040】
又、(22)は上記ゴム受け芯(C)における円形な偏心ヘッドフランジ(18)の垂直偏心線(E−E)上に穿設されたセンターカバー固定ビス用ネジ孔であって、上記ゴム受け芯(C)の固定ビス用皿孔(20)から一定距離(X)だけ偏心した位置に開口している。(23)は同じく円形な偏心ヘッドフランジ(18)の外周面に切り欠かれた凹周溝であり、ここへクッションゴム(R)が喰い付くようになっている。
【0041】
クッションゴム(R)は適度な硬さ(好ましくは65°)を有するニトリルゴム(NBR)やその他のゴム材料から成り、上記ゴム受け芯(C)における上半部の偏心ヘッドフランジ(18)を全体的に被覆した状態にある。
【0042】
そのゴム受け芯(C)の偏心ヘッドフランジ(18)を被覆する方法としては、予じめ図18、19のような断面形状に成形されたクッションゴム(R)を、その弾性変形作用のみか又は接着剤との併用によって、ゴム受け芯(C)の偏心ヘッドフランジ(18)へ包囲状態にかぶせ付け一体化してもさしつかえないが、クッションゴム(R)の成形用金型(図示省略)へ、そのゴム受け芯(C)の偏心ヘッドフランジ(18)をインサートした上、その金型の内部へ溶融状態の材料を流し込み、これを冷却固化することによって、その偏心ヘッドフランジ(18)を図15〜17のように包囲する状態として溶着一体化することが好ましい。何れにしても、そのクッションゴム(R)にはグレーやその他の適当な着色カラーを施すことができる。
【0043】
上記クッションゴム(R)は一定な直径(D4)(例えば約60mm)の円形をなし、その上面の中央部には径小(例えば約29mmの口径)な円形のセンターカバー受け入れ孔(24)が開口形成されている。(25)はそのクッションゴム(R)のセンターカバー受け入れ孔(24)を施蓋化粧する金属材料のセンターカバーであり、その中心部の円錐皿孔(26)から上記ゴム受け芯(C)における偏心ヘッドフランジ(18)のセンターカバー固定ビス用ネジ孔(22)へ螺合締結される短かい皿ビス(27)によって、その偏心ヘッドフランジ(18)へ図2、5のように固定一体化されるようになっている。
【0044】
その場合、センターカバー(25)はその受け入れ孔(24)と対応合致する直径(D5)(例えば約29mm)を有し、偏心ヘッドフランジ(18)へクッションゴム(R)との面一状態に固定されたときには、先の長い皿ビス(21)をそのセンターカバー(25)によって、図4、5のように上方から被覆化粧する結果となる。
【0045】
(28)はその円形なセンターカバー(25)の偏心部から下向き(裏向き)一体的に突出するキーピン(スタッドピン)であり、上記偏心ヘッドフランジ(18)の上面に切り欠かれた対応的なキー溝(29)へ、上方から差し込み嵌合されることによって、そのセンターカバー(25)の空転を防止する。
【0046】
(30a)(30b)(30c)は上記戸当りのクッションゴム(R)による回転扉(M)の受け止め位置(回転扉の開度)を変更・調整する際のガイド指標であって、上記センターカバー(25)の上面へ目視できる状態に彫刻されている。
【0047】
図示の実施形態では、ゴム受け芯(C)におけるクッションゴム(R)の円周面(回転扉の受け止め面)が取付脚柱(A)の垂直中心線(O−O)上から最も長い距離(L1)(例えば約37.5mm)にある偏心位置(P1)と、同じく最も短かい距離(L2)(例えば約22.5mm)にある偏心位置(P2)並びにその中間距離(L3)にある偏心位置(P3)との合計3基準になるガイド指標(30a)(30b)(30c)を図4や図20のように、その大きさが異なることにより上記距離(L1)(L2)(L3)の識別可能な三角マークとして表示しているにとどまるが、例えばセンターカバー(25)の周縁部へ分度器のような細かい目盛を刻印しても良く、更にその刻印や彫刻に代る別個な表示シート(図示省略)を、上記センターカバー(25)の上面へ貼り付けてもさしつかえない。
【0048】
本発明の床用戸当りは上記の構成を備えており、ホテルやコンサートホール、学校、病院などの建物における床面(F)から突出するアンカーボルト(B)へ、その戸当りの取付脚柱(A)を締結固定した後に、そのクッションゴム(R)の円周面による重い金属製回転扉(例えば防火扉)(M)の受け止め位置を変更・調整(矯正)するに当っては、次のとおり操作すれば良い。
【0049】
つまり、上記ゴム受け芯(C)の脚筒(17)を既設状態にある取付脚柱(A)の胴体(10)へ、上方から凹凸条(14)(19)に沿って差し込み套嵌するのであるが、その際にゴム受け芯(C)を取付脚柱(A)における垂直中心線(O−O)の廻りに任意の角度だけ回動させて、その偏心ヘッドフランジ(18)の垂直偏心線(E−E)が取付脚柱(A)の垂直中心線(O−O)から一定距離(X)だけ偏心していることに基き、その垂直中心線(O−O)上からクッションゴム(R)の円周面による回転扉(M)の受け止め位置(P1)(P2)(P3)までの距離(L1)(L2)(L3)を、長く又は短く変更・調整(矯正)するのである。
【0050】
上記ゴム受け芯(C)を任意の角度だけ回動させる際、そのセンターカバー(25)の上面に表示されているガイド指標(30a)(30b)(30c)を目視して、その基準を知ることにより、容易に便利良く調整することができる。その場合、上記凹凸条(14)(19)を歯数の多く刻成するならば、その変更・調整を微細に行える効果がある。
【0051】
この点、図22〜24はその調整状態の合計3例を示している。(α)(β)(γ)はその戸当りでの調整位置に受け止められた回転扉(M)の開度(例えば約84度、約90度、約87度)、(P)は回転扉(M)の回転枢軸(ピボットヒンジ)、(31)は側枠を示している。
【符号の説明】
【0052】
(10)・胴体
(11)・ベースフランジ
(12)(13)(22)・ネジ孔
(14)(19)・凹凸条
(15)・工具挿通孔
(16)・ネジ軸
(17)・脚筒
(18)・偏心ヘッドフランジ
(20)・皿孔
(21)(27)・皿ビス
(23)・凹周溝
(24)・センターカバー受け入れ孔
(25)・
センターカバー
(28)・キーピン
(29)・キー溝
(30a)(30b)(30c)・ガイド指標
(31)・側枠
(A)・取付脚柱
(B)・アンカーボルト
(C)・ゴム受け芯
(F)・床面
(M)・回転扉
(P)・回転枢軸
(R)・クッションゴム
(S)・差込み口腔
(E−E)・垂直偏心線
(O−O)・垂直中心線
(X)・偏心距離
(Y)・深さ
(D1)(D2)(D3)(D4)(D5)・直径
(θ)・回転単位角度
(L1)(L2)(L3)・距離
(P1)(P2)(P3)・受け止め位置