特許第5890303号(P5890303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890303
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】グラビア塗布装置
(51)【国際特許分類】
   B05C 1/08 20060101AFI20160308BHJP
【FI】
   B05C1/08
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-281749(P2012-281749)
(22)【出願日】2012年12月25日
(65)【公開番号】特開2014-124559(P2014-124559A)
(43)【公開日】2014年7月7日
【審査請求日】2014年10月21日
(73)【特許権者】
【識別番号】000145884
【氏名又は名称】株式会社小林製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100081385
【弁理士】
【氏名又は名称】塩川 修治
(72)【発明者】
【氏名】望月 章仁
(72)【発明者】
【氏名】望月 秀典
【審査官】 八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】 特開平09−168761(JP,A)
【文献】 特開昭48−025505(JP,A)
【文献】 特開2004−305931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05C 1/00−21/00
B05D 1/00− 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の下面に塗布剤を塗布するように回転駆動されるグラビアロールと、グラビアロールの直下に支持部材を介して設置されるマニホールドブロックとを有し、
マニホールドブロックの上部に、グラビアロールの外周の下面に塗布剤を供給する塗布剤溜空間及び該塗布剤溜空間に塗布剤を供給するスリットを挟むグラビアロールの回転方向に沿う両側位置に配置されて、グラビアロールの軸方向でその外周に接触し、該グラビアロールを下方から支える支持部材を有し
両側の支持部材がグラビアロールの外周の下面との間に区画する塗布剤溜空間に塗布剤を満たし、この塗布剤をグラビアロールの外周に充填するように供給するグラビア塗布装置であって、
両側の支持部材のそれぞれが、マニホールドブロックの上部に着脱可能に配置されるグラビア塗布装置。
【請求項2】
前記両側の支持部材がグラビアロールの外周の下面に該グラビアロールの軸方向で連続的に接触して塗布剤溜空間を封止するとともに、
塗布剤溜空間よりもグラビアロールの回転方向に沿う下流側の支持部材が、グラビアロールの外周に供給された塗布剤を掻き取って定量化する請求項1に記載のグラビア塗布装置。
【請求項3】
前記グラビアロールが、直径10〜50mmの鉄鋼の中実丸棒からなり、その外周に凹状彫刻部を備える請求項1又は2に記載のグラビア塗布装置。
【請求項4】
前記支持部材が樹脂材料からなる請求項1〜3のいずれかに記載のグラビア塗布装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂フィルム、紙、金属箔等のシート状基材に塗布剤を塗布するグラビア塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
グラビア塗布装置として、基材の下面に塗布剤を塗布するように回転駆動されるグラビアロールと、グラビアロールの外周の下面に塗布剤を供給する塗布剤溜空間が形成されるマニホールドブロックとを有してなるものがある。マニホールドブロックの塗布剤溜空間で供給されたグラビアロールの外周の塗布剤が、ドクターブレードで掻き取られて定量化された後、該グラビアロールの外周に連続的に摺接する基材の上面が自由状態にある位置におけるその基材の下面に転移されて塗布される。
【0003】
特許文献1に記載のグラビア塗布装置では、グラビアロールの直径を20〜50mmに小径化することにより、基材がグラビアロールとの摺接部の上流側で、該グラビアロールとの間に形成する楔形小空間の楔角度を鈍くし、該小空間に貯留される塗布剤層がグラビアロールの周方向に沿う長さも短くし、該塗布剤層の端部から離れようとする基材の部分との間に作用する剥離力も小さくなり、結果として基材に均一に塗布剤を塗布できるものと考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公平2-7663
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載のグラビア塗布装置では、小径のグラビアロールを両端で支持しているに過ぎない。
【0006】
ところが、小径のグラビアロールは、断面2次モーメントが小さく、両端の軸受間で、基材の押付圧力(張力)、更にはドクターブレードの押付圧力の作用下で大きなたわみを生じる。このたわみは、基材幅が広く、グラビアロールの軸方向長が長くなるときにより顕著である。このたわみにより、基材とグラビアロールは幅方向で均一に接触できず、塗布ムラを生じる。また、このたわみにより、グラビアロールの振れ(振動)が大きくなり、高速回転を必要とする操業条件に適用できない。
【0007】
本発明の課題は、グラビア塗布装置において、小径のグラビアロールでのたわみを防止でき、基材の全幅に渡り塗布剤を均一に塗布し、高速回転を必要とする操業条件にも適用可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に係る発明は、基材の下面に塗布剤を塗布するように回転駆動されるグラビアロールと、グラビアロールの直下に支持部材を介して設置されるマニホールドブロックとを有し、マニホールドブロックの上部に、グラビアロールの外周の下面に塗布剤を供給する塗布剤溜空間及び該塗布剤溜空間に塗布剤を供給するスリットを挟むグラビアロールの回転方向に沿う両側位置に配置されて、グラビアロールの軸方向でその外周に接触し、該グラビアロールを下方から支える支持部材を有し、両側の支持部材がグラビアロールの外周の下面との間に区画する塗布剤溜空間に塗布剤を満たし、この塗布剤をグラビアロールの外周に充填するように供給するグラビア塗布装置であって、両側の支持部材のそれぞれが、マニホールドブロックの上部に着脱可能に配置されるようにしたものである。
【0009】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明において更に、前記両側の支持部材がグラビアロールの外周の下面に該グラビアロールの軸方向で連続的に接触して塗布剤溜空間を封止するとともに、塗布剤溜空間よりもグラビアロールの回転方向に沿う下流側の支持部材が、グラビアロールの外周に供給された塗布剤を掻き取って定量化するようにしたものである。
【0010】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2に係る発明において更に、前記グラビアロールが、直径10〜50mmの鉄鋼の中実丸棒からなり、その外周に凹状彫刻部を備えるようにしたものである。
【0011】
請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに係る発明において更に、前記支持部材が樹脂材料からなるようにしたものである。
【発明の効果】
【0013】
(請求項1)
(a)グラビアロールの軸方向でその外周に接触し、該グラビアロールを下方から支える支持部材を設けた。これにより、小径のグラビアロールでも、該グラビアロールを軸方向の全長で連続的に支持し、基材の押付圧力(張力)、更にはドクターブレードの押付圧力の作用下でのたわみを防止できる。従って、基材の幅が広く、グラビアロールの軸方向長が長い場合にも、基材とグラビアロールを幅方向で均一に接触させ、塗布ムラを生じない。また、グラビアロールの振れ(振動)を抑え、高速回転を必要とする操業条件にも適用できる。
【0014】
(b)前記支持部材が、マニホールドブロックの塗布剤溜空間を挟むグラビアロールの回転方向に沿う両側位置に配置され、両側の支持部材がグラビアロールの外周の下面との間に区画する塗布剤溜空間に塗布剤を満たし、この塗布剤をグラビアロールの外周に充填するように供給する。これにより、グラビアロールの外周の直下の塗布剤溜空間に塗布剤を充満して圧力をかけた状態で、塗布剤をグラビアロールの外周の下面に供給できる。グラビアロールが高速回転している場合でも、グラビアロールの外周の凹状彫刻部のセル内に塗布剤を確実に充填するように供給でき、塗布欠陥を低減できる。
【0015】
(請求項
(c)前記両側の支持部材がグラビアロールの外周の下面に該グラビアロールの軸方向で連続的に接触して塗布剤溜空間を封止するとともに、塗布剤溜空間よりもグラビアロールの回転方向に沿う下流側の支持部材が、グラビアロールの外周に供給された塗布剤を掻き取って定量化する。マニホールドブロックの塗布剤溜空間でグラビアロールの外周の下面に供給された塗布剤の余剰分を、ドクターブレードで掻き取って計量する前段階で、両側の支持部材のうちの下流側の支持部材によって掻き取って安定化することにより、ドクターブレードによる計量負荷を軽減できる。
【0016】
(請求項
(d)前記グラビアロールが、直径10〜50mmの鉄鋼の中実丸棒からなり、その外周に凹状彫刻部を備える。グラビアロールの直径を10〜50mmに小径化する場合にも、グラビアロールをカーボンファイバー樹脂等の高価な材料を用いずに、グラビアロールのたわみを防止できる。
【0017】
(請求項
(e)前記支持部材が樹脂材料からなるものとすることにより、グラビアロールと支持部材の接触部の摩擦抵抗を減少させ、グラビアロールの外周の彫刻部の磨耗とキズ発生を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1はグラビア塗布装置の塗布剤供給系統を示す模式図である。
図2図2はグラビア塗布装置を示す側面図である。
図3図3図2のIII-III線に沿う断面図である。
図4図4図2の要部拡大断面図である。
図5図5はグラビアロールのたわみ量を示す線図である。
図6図6はグラビア塗布装置の実験結果を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1図3に示したグラビア塗布装置100は、シート状基材1の下面に塗布剤を塗布するように回転駆動されるグラビアロール10と、グラビアロール10の外周の下面に塗布剤を供給する塗布剤溜空間24が形成されるマニホールドブロック20と、基材1の下面に塗布剤を塗布する前のグラビアロール10の外周から余剰塗布剤を掻き取って定量の塗布剤を計量するドクターブレード30とを有する。基材1は、原反ロールから繰り出され、展張ロール2、2(図1)によって展張されて連続的に走行し、最後に巻取ロールに巻取られる。
【0020】
グラビアロール10は、2個の展張ロール2、2の中間部分の基材1の下方に設置されている。グラビアロール10は、両端を軸受11、11により支持され、一端に接続される駆動モータ12により回転駆動される。グラビアロール10の回転方向Nは、基材1の走行方向Lとそれらの接触部にて逆方向(同一方向でも可)とされる(図4)。
【0021】
グラビアロール10は、好適には直径10〜50mmの丸棒からなり、その外周に微細な凹状彫刻部13(図4)を備える。本実施例では、グラビアロール10を鉄鋼の中実丸棒からなるものとする。
【0022】
マニホールドブロック20は、グラビアロール10の直下に設置されている。機能性樹脂等を水又は有機溶剤で希釈した塗布剤が、塗布剤収容タンク40から送剤ポンプ41によりマニホールドブロック20の導入口21に連続的に送給される。導入口21に送給された塗布剤は、分配室22でマニホールドブロック20の幅方向(グラビアロール10の軸方向に沿う方向)に分配された後、0.3〜1.0mm幅のスリット23から塗布剤溜空間24に到達し、ひいてはこの塗布剤溜空間24の上面を区画して該塗布剤溜空間24に浸漬するグラビアロール10の外周の下面(彫刻部13)に供給される。塗布剤溜空間24の幅方向長は、グラビアロール10の彫刻部13の軸方向長と実質的に同一とされる。グラビアロール13の外周の彫刻部13まわりに随伴して塗布剤溜空間24から漏れ出た塗布剤、及びドクターブレード30で掻き取られた余剰塗布剤は、回収部25で回収されて塗布剤収容タンク40に戻される。マニホールドブロック20は、幅方向の両端部に板状の閉塞部材26が固定され、分配室22等を幅方向に閉鎖している(図3)。
【0023】
ドクターブレード30は、グラビアロール10の回転方向で、グラビアロール10と基材1の接触部に対する上流側に設けられてグラビアロール10の外周に接触され、マニホールドブロック20の塗布剤溜空間24からグラビアロール10の外周に供給された塗布剤の余剰分を掻き取って計量する。ドクターブレード30は、鋼板又は樹脂板からなり、グラビアロール10の外周との接触圧力をエアシリンダ等により調整される。ドクターブレード30は、グラビアロール10の外周と長時間均一に接触維持し、或いはドクターブレード30の偏磨耗を防止するために、グラビアロール10の軸方向に周期的に往復動せしめることもできる。
【0024】
しかるに、グラビア塗布装置100にあっては、グラビアロール10が上から載置される状態で、該グラビアロール10の軸方向で該グラビアロール10の外周に接触し、該グラビアロール10を下方から支える支持部材50が設けられる。支持部材50は小径のグラビアロール10のたわみを防止する。
【0025】
本実施例では、マニホールドブロック20の上部で、塗布剤溜空間24を挟み、グラビアロール10の回転方向に沿う上流側と下流側の両側位置に、概ね台形柱状(又は三角柱状)をなす支持部材50A、50Bを配置して設ける。両側の支持部材50A、50Bの相対するように配置された各斜面が、グラビアロール10の外周の下面との間に、V字状(U字状等の他の形状でも可)の塗布剤溜空間24を区画する。支持部材50A、50Bは使用による磨耗等に対処するため、マニホールドブロック20と別体とされ、マニホールドブロック20の上部に着脱可能に取着される。このとき、支持部材50A、50Bの幅方向長はマニホールドブロック20と同一長され、それらの支持部材50A、50Bの幅方向の両端部にはV字状の塗布剤溜空間24を幅方向にて閉鎖する板状の閉塞部材51が固定される。閉塞部材51はマニホールドブロック20の幅方向の両端部に固定した前述の閉塞部材26の上部に連続するように配置され、グラビアロール10の両端側の小径外周部に摺接する(図3)。
【0026】
これにより、両側の支持部材50A、50Bがグラビアロール10の外周の下面との間に区画するV字状の塗布剤溜空間24は、外部に対する閉鎖空間とされ、送給ポンプ41が送給してくる塗布剤が充満される。従って、この塗布剤溜空間24の上面を区画して該塗布剤溜空間24に浸漬するグラビアロール10の外周の下面の彫刻部13のセル内に、塗布剤溜空間24内の塗布剤が加圧下で強制的に押し込まれるように充填される。グラビアロール10が高速回転していたり、グラビアロール10の彫刻部13のセル内に空気が入っていても、該彫刻部13のセル内に確実に塗布剤が供給される。
【0027】
また、両側の支持部材50A、50Bは、グラビアロール10の外周の下面に、該グラビアロール10の軸方向で連続的に接触し、外部に対する閉鎖空間とされる塗布剤溜空間24を封止する。更に、塗布剤溜空間24よりもグラビアロール10の回転方向に沿う下流側の支持部材50Bは、グラビアロール10の外周に供給された塗布剤を掻き取って定量化する。
【0028】
また、グラビアロール10と支持部材50(50A、50B)との接触部は、塗布剤溜空間24内の塗布剤が潤滑剤になってそれらの磨耗を低減できる。支持部材50(50A、50B)を樹脂材料からなるものとすることにより、グラビアロール10との摩擦抵抗を減少させることができる。
【0029】
従って、グラビア塗布装置100にあっては、基材1を所定速度で走行させ、マニホールドブロック20の塗布剤溜空間24に塗布剤を充満させるように該塗布剤を送給するとともに、グラビアロール10をマニホールドブロック20の両側の支持部材50A、50Bによって下方から支えて回転駆動させる。これにより、マニホールドブロック20の塗布剤溜空間24の塗布剤中に浸漬されるグラビアロール10の彫刻部13のセル内に塗布剤が充填供給される。グラビアロール10の彫刻部13のセル内に供給された塗布剤は、下流側の支持部材50B、更にはドクターブレード30によって掻き取られて定量化された状態で、基材1の上面が自由状態にある位置におけるその基材1の下面に塗布される。
【0030】
以下、本発明の実験結果について説明する。
(実験結果A)(図5
グラビアロール10を鉄鋼の縦弾性係数205800N/mm2、密度7850kg/m3の中実丸棒で形成し、両端の軸受11、11の間隔を1750mmとし、基材張力として外部荷重を8.34N与えたときの、グラビアロール10の軸方向各位置におけるたわみ量を調査した。
【0031】
図5は、両端の軸受11、11だけで支持されたグラビアロール10について、その直径を20〜50mmとした場合のたわみ量を示す。グラビアロール10が小径化されるに従ってたわみ量が大きくなり、直径20mmのグラビアロール10では最大たわみ量が2.3mmと大きくたわみ、基材1への塗布剤の均一塗布は不可能であった。
【0032】
これに対し、本発明の支持部材50A、50Bを用いてグラビアロール10を軸方向の全長で連続的に支持したとき、グラビアロール10の直径を10〜50mmに小径化してもその軸方向各位置におけるたわみ量がゼロ(図5のグラフの横軸に一致する)であった。
【0033】
(実験結果B)(図6
本発明の支持部材50A、50Bを用いたグラビア塗布装置100において、塗布条件、装置条件を下記の如くに一定にし、グラビアロール10の直径を変化させたときの、基材1に塗布された塗布面の塗布ムラの有無を評価した。
【0034】
(塗布条件)
基材:2軸延伸PETフィルム厚み38μm
塗布剤:トルエン+メチルエチルケトンの混合有機溶媒に、攪拌しながら剥離フィルム用シリコーン樹脂液(信越化学工業製KS-774 中剥離型)を添加し固形分2%の塗布液を調製したもの
塗布速度:60m/min
塗布量:5cc/m2
【0035】
(グラビア塗布装置条件)
グラビアロール10の彫刻部13の形状:斜線型200線、深度30μm、セル容積16cc/m2
グラビア周速比(基材1の走行速度/グラビアロールの回転速度):0.7
転移方式:リバースキスコート(基材1の走行方向に対してグラビアロール10を逆方向回転)
ドクターブレード30:材質SUS420、厚み0.25mm
【0036】
図6の塗布面評価において、○は優、△は良、×は不可を示す。図6によれば、本発明において、グラビアロール10の直径を10〜50mmとするとき、良好な塗布面を得ることができる。グラビアロール10の直径を100mmとする場合には、基材1がグラビアロール10との間に形成する楔形小空間の長さが長くなる等の悪影響により、塗布面評価は悪い。
【0037】
尚、上述の塗布条件や装置条件が異なる実験においても、同様の結果が得られることを認めた。
【0038】
本実施例によれば、以下の作用効果を奏する。
(a)グラビアロール10の軸方向でその外周に接触し、該グラビアロール10を下方から支える支持部材50(50A、50B)を設けた。これにより、小径のグラビアロール10でも、該グラビアロール10を軸方向の全長で連続的に支持し、基材1の押付圧力(張力)、更にはドクターブレード30の押付圧力の作用下でのたわみを防止できる。従って、基材1の幅が広く、グラビアロール10の軸方向長が長い場合にも、基材1とグラビアロール10を幅方向で均一に接触させ、塗布ムラを生じない。また、グラビアロール10の振れ(振動)を抑え、高速回転を必要とする操業条件にも適用できる。
【0039】
(b)前記支持部材50(50A、50B)が、マニホールドブロック20の塗布剤溜空間24を挟むグラビアロール10の回転方向に沿う両側位置に配置され、両側の支持部材50(50A、50B)がグラビアロール10の外周の下面との間に区画する塗布剤溜空間24に塗布剤を満たし、この塗布剤をグラビアロール10の外周に充填するように供給する。これにより、グラビアロール10の外周の直下の塗布剤溜空間24に塗布剤を充満して圧力をかけた状態で、塗布剤をグラビアロール10の外周の下面に供給できる。グラビアロール10が高速回転している場合でも、グラビアロール10の外周の凹状彫刻部13のセル内に塗布剤を確実に充填するように供給でき、塗布欠陥を低減できる。
【0040】
(c)前記両側の支持部材50(50A、50B)がグラビアロール10の外周の下面に該グラビアロール10の軸方向で連続的に接触して塗布剤溜空間24を封止するとともに、塗布剤溜空間24よりもグラビアロール10の回転方向に沿う下流側の支持部材50Bが、グラビアロール10の外周に供給された塗布剤を掻き取って定量化する。マニホールドブロック20の塗布剤溜空間24でグラビアロール10の外周の下面に供給された塗布剤の余剰分を、ドクターブレード30で掻き取って計量する前段階で、両側の支持部材50(50A、50B)のうちの下流側の支持部材50Bによって掻き取って安定化することにより、ドクターブレード30による計量負荷を軽減できる。
【0041】
(d)前記グラビアロール10が、直径10〜50mmの鉄鋼の中実丸棒からなり、その外周に凹状彫刻部13を備える。グラビアロール10の直径を10〜50mmに小径化する場合にも、グラビアロール10をカーボンファイバー樹脂等の高価な材料を用いずに、グラビアロール10のたわみを防止できる。
【0042】
(e)前記支持部材50(50A、50B)が樹脂材料からなるものとすることにより、グラビアロール10と支持部材50(50A、50B)の接触部の摩擦抵抗を減少させ、グラビアロール10の外周の彫刻部13の磨耗とキズ発生を防止できる。
【0043】
以上、本発明の実施例を図面により詳述したが、本発明の具体的な構成はこの実施例に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。例えば、グラビアロールの材質、支持部材の材質、形状はいかなるものでも良い。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、基材の下面に塗布剤を塗布するように回転駆動されるグラビアロールと、グラビアロールの直下に支持部材を介して設置されるマニホールドブロックとを有し、マニホールドブロックの上部に、グラビアロールの外周の下面に塗布剤を供給する塗布剤溜空間及び該塗布剤溜空間に塗布剤を供給するスリットを挟むグラビアロールの回転方向に沿う両側位置に配置されて、グラビアロールの軸方向でその外周に接触し、該グラビアロールを下方から支える支持部材を有し、両側の支持部材がグラビアロールの外周の下面との間に区画する塗布剤溜空間に塗布剤を満たし、この塗布剤をグラビアロールの外周に充填するように供給するグラビア塗布装置であって、両側の支持部材のそれぞれが、マニホールドブロックの上部に着脱可能に配置されるようにした。これにより、グラビア塗布装置において、小径のグラビアロールでのたわみを防止でき、基材の全幅に渡り塗布剤を均一に塗布し、高速回転を必要とする操業条件にも適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 基材
10 グラビアロール
13 凹状彫刻部
20 マニホールドブロック
23 スリット
24 塗布剤溜空間
50、50A、50B 支持部材
図1
図2
図3
図4
図5
図6