(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記分散体は、少なくとも1種のコロイド形成性ポリマー酸及び少なくとも1種のフッ素化されていないポリマー酸を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の分散体。
前記電子デバイスは、有機発光ダイオード、有機光電子デバイス、有機光起電デバイス、ダイオード及びトランジスタからなる群より選択される少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項6に記載のデバイス。
【発明を実施するための形態】
【0025】
この開示は、水系分散体、その水系分散体の製造方法及び適用方法、並びにその水系分散体から得たフィルムを含むデバイスに関する。この分散体は、少なくとも1種の導電性ポリマー(例えば、ポリアニリン、ポリピロール若しくはポリチオフェン及びこれらの誘導体又はこれらの組合せ)、少なくとも1種の多分岐ポリマー、及び随意の少なくとも1種のコロイド形成性ポリマー酸(例えば、少なくとも部分的にフッ素化したイオン交換ポリマー)を含むことができる。ここで用いる場合、用語「分散体」とは、微細なコロイド粒子の懸濁体を含む液体媒体をいう。この開示に従って、「液体媒体」は、通常、水系の液体、例えば脱イオン水である。ここで用いる場合、用語「水系」とは、大部分が水である液体をいい、そして1つの実施態様では、それは、少なくとも約40wt%の水、及び随意の、本発明の導電性ポリマー分散体及び/又は溶液に所望の特性をもたらすのに用いることができる適切な溶質である。適切な溶質を以下に記載する。適切な溶質の非限定的な例としては、塩、界面活性剤、分散剤、安定化剤、レオロジー調整剤、及び本分野で知られている他の添加剤が挙げられる。
【0026】
ここで用いる場合、用語「多分岐ポリマー」は、少なくとも1種のスルホン酸、ホスホン酸、ボロン酸又はカルボキシ酸を、酸の形態又は中和された形態で含む多分岐ポリマーを意味する。
【0027】
ここで用いる場合、用語「コロイド」とは、液体媒体に懸濁された、約1μm(例えば、約20ナノメートル〜約80ナノメートル、また通常は約30〜約500ナノメートル)までの粒子を有する微細粒子である。ここで用いる場合、用語「コロイド形成性」とは、水系溶液に分散される場合に微細粒子を形成する性質をいい、すなわち「コロイド形成性」ポリマー酸は水溶性ではない。ここで用いる場合、用語「含む」、「含み」、「含有する」、「含有し」、「有する」、「有し」又はこれらの他のあらゆる変形は、非限定的な包含を対象とすることを意図している。例えば、複数の要素を含むプロセス、方法、物品、又は器具は、これらの要素に限定される必要がなく、はっきりと記載されていない他の要素、又はそのようなプロセス、方法、物品、若しくは器具に特有の他の要素を含むことができる。さらに、逆のことを明示的に記載していない限り、「又は(若しくは)」とは、包括的論理和をいい、排他的論理和ではない。例えば、条件A又はBは、次のいずれかで満たされる:Aが真(又は存在している)かつBが偽(又は存在していない)、Aが偽(又は存在していない)かつBが真(又は存在している)、そしてA及びBが共に真(又は存在している)。
【0028】
単数形(原文中での「a」又は「an」)の使用は、本発明の複数の要素及び成分を述べるのにも用いられる。これは、ただ単に利便性のためになされ、本発明の一般的な意味を与える。この記載は、1つ又は少なくとも1つを含むと読まれるべきであり、かつ単数形は、他に意味することが明らかである場合を除いて、複数形も含む。
【0029】
この開示で用いることができる導電性ポリマーは、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチエノチオフェン/ポリスチレンスルホン酸、ポリジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸、ポリアニリン−ポリマー−酸−コロイド、PEDOT、PEDOT−ポリマー−酸−コロイド及びこれらの組合せからなる群より選択される、少なくとも1種の物質を含有することができる。導電性ポリマーは、セレン含有ポリマー、例えばUS2009/0014693及びUS2009/0018348に開示されたポリマーも含むことができ、これらの文献は、参照によりここに完全に組み込まれる。
【0030】
導電性ポリマーは、複素環式の縮合環モノマー単位のポリマー単位を有することができる。この伝導性ポリマーは、ポリアニリン、ポリピロール又はポリチオフェン及びこれらの誘導体又はこれらの組合せとすることができる。
【0031】
この開示の実施態様による分散体に用いることを意図したポリピロールは、次の式Iを有することができる:
【化1】
(式中、nは少なくとも約4;R
1は、各存在箇所でそれぞれ独立して同じとなるように又は異なるように選択され、かつ水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノニル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、アミドスルホナート、ベンジル、カルボキシラート、エーテル、エーテルカルボキシラート、エーテルスルホナート及びウレタンからなる群より選択され;又は両方のR
1基が共に、3員、4員、5員、6員若しくは7員の芳香環若しくは脂環式環を完結するアルキレン鎖又はアルケニレン鎖を形成することができ、この環は、任意に2価の窒素原子、硫黄原子又は酸素原子の1つ以上を有することができ;かつR
2は、各存在箇所でそれぞれ独立して同じとなるように又は異なるように選択され、かつ水素、アルキル、アルケニル、アルカノニル、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、アミドスルホナート、ベンジル、カルボキシラート、エーテル、エーテルカルボキシラート、エーテルスルホナート、スルホナート及びウレタンからなる群より選択される)。
【0032】
1つの実施態様では、R
1は、各存在箇所で同じとなり又は異なり、かつ水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルコール、アミドスルホナート、ベンジル、カルボキシラート、エーテル、エーテルカルボキシラート、エーテルスルホナート、スルホナート、ウレタン、エポキシ、シラン、シロキサン、及びスルホン酸、カルボシ酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、エポキシ、シラン、又はシロキサン部の1以上で置換したアルキルから独立して選択される。
【0033】
1つの実施態様では、R
2は、水素、アルキル、及びスルホン酸、カルボシ酸、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、シアノ、ヒドロキシ、エポキシ、シラン、又はシロキサン部の1以上で置換したアルキルから選択される。
【0034】
1つの実施態様では、ポリピロールは置換されておらず、両方のR
1及びR
2が水素である。
【0035】
1つの実施態様では、両方のR
1基が共に、6員又は7員の脂環式環を形成し、これは、アルキル、ヘテロアルキル、アルコール、アミドスルホナート、ベンジル、カルボキシラート、エーテル、エーテルカルボキシラート、エーテルスルホナート、スルホナート、及びウレタンから選択される基でさらに置換されている。これらの基は、モノマー及び生成ポリマーの溶解度を改良することができる。1つの実施態様では、両方のR
1基が共に、6員又は7員の脂環式環を形成し、これは、アルキル基でさらに置換されている。1つの実施態様では、両方のR
1基が共に、6員又は7員の脂環式環を形成し、これは、少なくとも1つ以上の炭素原子を有するアルキル基でさらに置換されている。
【0036】
1つの実施態様では、両方のR
1基が共に、−O−(CHY)
m−O−を形成し、ここで、mは2又は3であり、かつYは各存在箇所で同じとなり又は異なり、水素、アルキル、アルコール、アミドスルホナート、ベンジル、カルボキシラート、エーテル、エーテルカルボキシラート、エーテルスルホナート、スルホナート及びウレタンから選択される。1つの実施態様では、少なくとも1つのY基が、水素ではない。1つの実施態様では、少なくとも1つのY基は、少なくとも1つの水素を置換したFを有する置換基である。1つの実施態様では、少なくとも1つのY基は、全フッ素化されている。
【0037】
1つの実施態様では、この組成物中で用いられるポリピロールは、正に帯電した伝導性ポリマーを有し、この正電荷は、コロイド性ポリマー酸のアニオンで安定化されている。
【0038】
この開示の実施態様による分散体に含有させるための使用を意図したポリチオフェンは、次の式IIを有することができる:
【化2】
(式中、R
1は、各存在箇所でそれぞれ独立して同じとなるように又は異なるように選択され、かつ水素、アルキル、アルケニル、アルコキシ、アルカノニル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリール、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、アクリル酸、リン酸、ホスホン酸、ハロゲン、ニトロ、シアノ、ヒドロキシ、エポキシ、シラン、シロキサン、アルコール、アミドスルホナート、ベンジル、カルボキシラート、エーテル、エーテルカルボキシラート、エーテルスルホナート及びウレタンからなる群より選択され;又は両方のR
1基が共に、3員、4員、5員、6員若しくは7員の芳香環又は脂環式環を完結するアルキレン鎖又はアルケニレン鎖を形成することができ、この環は、任意に2価の窒素原子、硫黄原子又は酸素原子の1つ以上を有することができ;かつnは少なくとも約4となる)。
【0039】
1つの実施態様では、両方のR
1基が共に、−O−(CHY)
m−O−を形成し、ここで、mは2又は3であり、かつYは各存在箇所で同じとなり又は異なり、水素、アルキル、アルコール、アミドスルホナート、ベンジル、カルボキシラート、エーテル、エーテルカルボキシラート、エーテルスルホナート、及びウレタンから選択される。1つの実施態様では、全てのY基が、水素である。1つの実施態様では、ポリチオフェンが、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)である。1つの実施態様では、少なくとも1つのY基が、水素ではない。1つの実施態様では、少なくとも1つのY基は、少なくとも1つの水素を置換したFを有する置換基である。1つの実施態様では、少なくとも1つのY基は、全フッ素化されている。
【0040】
1つの実施態様では、ポリチオフェンは、ポリ[(スルホン酸−プロピレン−エーテル−メチレン−3,4−ジオキシエチレン)チオフェン]を含む。1つの実施態様では、ポリチオフェンは、ポリ[(プロピル−エーテル−エチレン−3,4−ジオキシエチレン)チオフェン]を含む。
【0041】
この開示の1つの実施態様では、この分散体は、次の式IIIの繰り返し単位を有する、モノマー組成物、オリゴマー組成物及びポリマー組成物を含むことができる。
【化3】
(式中、XはS又はSe、YはS又はSe、Rは置換基であり;nは約2超かつ20未満であり、通常は約4〜約16であり;Rは、P1の環構造に結合することができる任意の置換基となることができ;Rとしては、水素又はその同位体、ヒドロキシル、C
1〜C
20の第一級、第二級、若しくは第三級アルキル基を含むアルキル、アリールアルキル、アルケニル、パーフルオロアルキル、パーフルオロアリール、アリール、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキニル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミド、アルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリール、アリールアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアリールアミノ、アリールチオ、ヘテロアリール、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、カルボキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ、スルホン酸、1種以上のスルホン酸で置換されているアルキル若しくはフェニル(若しくはその誘導体)、リン酸(若しくはその誘導体)、カルボン酸(若しくはその誘導体)、ハロ、アミノ、ニトロ、ヒドロキシル、シアノ又はエポキシ部が挙げられる)
【0042】
特定の実施態様では、Rはアルファ位の反応部位を有することができ;セレン含有環構造の分岐したオリゴマー構造、ポリマー構造若しくはコポリマー構造を形成することができる。特定の実施態様では、Rとして、水素;アルキルアリール;アリールアルキル;アリール;ヘテロアリール;F、Cl、Br、I若しくはCNで、一つ置換されることができ又は多置換されることができ、かつ1つ以上の隣接していないCH
2基が、O原子及び/又はS原子が互いに直接的に結合しないように、独立して、−O−、−S−、−NH−、−NR’−、−SiR’R’’−、−CO−、−COO−、−OCO−、−OCO−O−、−S−CO−、−CO−S−、−CH=CH−又は−C≡C−で置換されることができるC
1〜C
12の第一級、第二級、若しくは第三級アルキル基;フェニル基及び置換フェニル基;シクロへキシル;ナフタレン基;ヒドロキシル;アルキルエーテル;パーフルオロアルキル;パーフルオロアリール;カルボン酸;エステル;スルホン酸基;パーフルオロ;SF
5;又はFを挙げることができる。R’及びR’’は、互いに独立してH、アリール又は1〜12のC原子を有するアリール若しくはアルキルである。このポリマーは、官能末端基又は非官能末端基から独立して選択される末端基を有することができる。この開示による繰り返し構造は、実質的に同一となってホモポリマーを形成することができ、又は共重合に適切なモノマーを選択することによってコポリマー性となることができる。繰り返し単位は、本分野で知られているあらゆる適切な方法で末端とすることができ、かつ官能末端基又は非官能末端基を含むことができる。さらに、式IIIの分散体及び溶液、及び式IIIのポリマー酸ドープ化組成物を有することができる。1つの実施態様では、この組成物は、式IIIのポリマー酸ドープ化組成物の水系分散体を有する。この開示の1つの態様では、チエノチオフェンモノマー、例えばチエノ[3,4−b]チオフェンを、少なくとも1種の部分的にフッ素化したポリマー酸の存在下で化学的に重合させる場合には、導電性ポリチオフェン、例えばポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)を含む水系分散体を調製することができる。
【0043】
この開示の1つの実施態様による組成物は、ポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)及び分散体を形成する部分的にフッ素化したポリマー酸が分散されている、連続水系相を含むことができる。この開示の1つの実施態様で用いることができるポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)は、次の式(IV)及び(V)を有することができる:
【化4】
(式中、Rは、水素、炭素原子数1〜8を有するアルキル、フェニル、置換フェニル、C
mF
2m+1、F、Cl及びSF
5、かつnは、約2超20未満で、通常約4〜約16である)。
【0044】
この開示の組成物で用いることができるチエノチオフェンは、上述の式(V)を有することもでき、ここでR
1及びR
2は、独立して上述の記載から選択される。1つの実施態様では、ポリチエノチオフェンは、ポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)を含み、ここでRは水素を有する。
【0045】
この開示の他の1つの態様は、伝導性ポリマーが、ポリ(セレノロ[2,3−c]チオフェン)を含む。この開示を用いたポリマーは、電気活性モノマーの重合単位をさらに含むコポリマーを有する。電気活性モノマーは、チオフェン、チエノ[3,4−b]チオフェン、チエノ[3,2−b]チオフェン、置換チオフェン、置換チエノ[3,4−b]チオフェン、置換チエノ[3,2−b]チオフェン、ジチエノ[3,4−b:3’,4’−d]チオフェン、セレノフェン、置換セレノフェン、ピロール、ビチオフェン、置換ピロール、フェニレン、置換フェニレン、ナフタレン、置換ナフタレン、ビフェニル及びターフェニル、置換ターフェニル、フェニレン、ビニレン、置換フェニレンビニレン、フルオレン、置換フルオレンからなる群より選択される、少なくとも1つの種を有することができる。適切なモノマー及びポリマーの例は、2009年1月14日に出願された米国特許出願番号12/353,609、及びこれも2009年1月14日に出願された米国特許出願番号12/353,461に記載されており、これらの開示は共に、本明細書に完全に組み込まれる。電気活性モノマーに加えて、この開示によるコポリマーは、非電気活性モノマーの重合単位を含むことができる。
【0046】
この開示で用いることができるポリアニリン化合物は、次の式(VI)を有するアニリンモノマーから得ることができる:
【化5】
(式中、nは0〜4の整数、mは1〜5の整数、但しn+m=5;かつR
1は、各存在箇所でそれぞれ独立して同じとなるように又は異なるように選択され、アルキル、アルケニル、アルコキシ、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルカノイル、アルキルチオ、アリールオキシ、アルキルチオアルキル、アルキルアリール、アリールアルキル、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、アリールアルキルスルフィニル、アルコキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールチオ、アリールスルフィニル、アルコキシカルボニル、アリールスルホニル、カルボン酸、ハロゲン、シアノ又は1以上のスルホン酸、カルボン酸、ハロ、ニトロ、シアノ若しくはエポキシの部位で置換したアルキルから選択され;又は任意の2つのR
1基は、3員、4員、5員、6員若しくは7員の芳香環若しくは脂環式環を完結するアルキレン鎖又はアルケニレン鎖を共に形成することができ、この環は、任意に2価の窒素原子、硫黄原子又は酸素原子の1つ以上を有することができる)。
【0047】
この重合した材料は、アニリンモノマー単位を有し、各アニリンモノマー単位は、以下の式(VII)又は式(VIII)から選択される式を有することができる:
【化6】
【化7】
(式中、n、m及びR
1は上記に定義したものである)。
【0048】
さらに、ポリアニリンは、2以上のアニリンモノマー単位のホモポリマー又はコポリマーを有することができる。
【0049】
この開示の組成物は、上記のホモポリマー構造に限定されず、ヘテロポリマー構造又はコポリマー構造を有することができる。このコポリマー構造は、交互コポリマー(例えば、A単位及びB単位の交互)、周期コポリマー(例えば、(A−B−A−B−B−A−A−A−A−B−B−B)n)、ランダムコポリマー(例えば、モノマーA及びBのランダムな順序)、統計コポリマー(例えば、統計ルールに従うポリマーの順序)及び/又はブロックコポリマー(例えば、共有結合で結合している2以上のホモポリマーのサブ単位)のあらゆる組合せとなることができる。生成コポリマーが、導電性の特性を維持するならば、このコポリマーを、分岐させ又は結合させることができる。
【0050】
この開示の多分岐ポリマーは、酸の形態又は中和した形態のいずれかのスルホン酸、ホスホン酸、ボロン酸、又はカルボン酸の少なくとも1つを有することができる。
【0051】
本発明で用いられる多分岐ポリマーは、多数の利点を示す。これらには、次のものが含まれる:多数の官能基、低い溶液粘度又は分散体粘度、向上した熱安定性、高いガラス転移温度、優れたフィルム形成特性、低い水吸収性、多くの異なる技術分野に関して確定した調節可能な官能基。
【0052】
この開示は、水系媒体及び一般式(1)で表される官能基を有する多分岐ポリマーを含有する、水系の多分岐ポリマー分散体又は水系の多分岐ポリマー溶液をも対象としている。
【0053】
この開示の多分岐ポリマーは、酸の形態又は中和した形態のいずれかのスルホン酸、ホスホン酸、ボロン酸、又はカルボン酸の少なくとも1つを含み、かつSi又はハロゲン原子を含むことができる。より詳しくは、この開示の多分岐ポリマーは、一般式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)から選択される少なくとも1つの基を含み、ここでR
1は、互いに独立して、直接結合し、又は炭素原子数1〜60を有し、かつ任意的にO、N、S、B、P、Si又はハロゲン原子を含む基から選択される。例えば、分岐した又は分岐していない、アルキル基若しくはシクロアルキル基、又は置換アルキル基若しくは置換シクロアルキル基、又はアリール基若しくはヘテロアリール基である。R
1を、シリコン原子、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、シアノ基で任意的に置換することができる。例えば、R
1をハロゲン原子、例えば塩素原子又はフッ素原子で置換することができる。Xは互いに独立しており、かつ水素、1価もしくは多価のカチオン(例えば、Li
+、Na
+、K
+、Rb
+、Cs
+、TiO
2+、ZrO
2+、Ti
4+、Zr
4+、Ca
2+、Mg
2+の群からの少なくとも1つの基)又はアンモニウムイオンである。
【化8】
【0054】
ここで用いる場合、用語「アルキル」とは、一般式C
sH
2s+1の脂肪族炭化水素鎖の1価基をいう(式中、sは、特定した場合は炭素原子数又はその範囲)。用語「置換アルキル」とは、1以上の水素を炭素ではない原子又は基によって置換したアルキル基をいい、そのような原子又は基の非限定的な例としては、ハロゲン含有基、アミン、アルコール、酸素(例えばケトン基、又はアルデヒド基)及びチオールが挙げられる。
【0055】
ここで用いる場合、用語「シクロアルキル」とは、一般式C
sH
2s−1の環を形成する脂肪族炭化水素鎖の1価基をいう(式中、sは、炭素原子数又は特定した場合はその範囲)。用語「置換シクロアルキル」とは、1以上のヘテロ原子を有するシクロアルキル基をいい、非限定的な例は、環構造中に−O−、−NR’−、及び−S−があり、かつ/又は1つ以上の水素が、炭素ではない原子又は基によって置換したアルキル基をいい、そのような原子又は基の非限定的な例としては、ハロゲン含有基、アミン、アルコール、酸素(例えばケトン基、又はアルデヒド基)及びチオールが挙げられる。R’は、炭素原子数24のアルキル基を示す。
【0056】
ここで用いられる場合、用語「アリール」とは、芳香族炭化水素の1価基をいう。芳香族炭化水素は、共役二重結合を有する炭素に基づく環状化合物であり、4t+2の電子を、その生成環状共役パイ軌道系に有しており、tは少なくとも1の整数である。ここで用いられる場合、アリール基としては、単一の芳香環構造、1以上の結合した芳香環構造、共有結合性の芳香環構造を挙げることができ、これらのいずれか又は全てがヘテロ原子を含むことができる。芳香環構造に含むことができるそのようなヘテロ原子の例としては、O、N及びSが挙げられる。
【0057】
この開示の実行で有用な多分岐ポリマーは、式(1A)〜(1D)で表される、少なくとも1つの官能基“R”を有する、少なくとも1つの多分岐ポリマー部分[HBP−(R)
n]を含む(nは、1以上の整数)。多分岐部分は、多分岐構造を有するあらゆる種類のポリマー部分を含むことができる。多分岐構造の例としては、限定しないが、多分岐ホモポリマー及び多分岐ランダムコポリマー(例えば、Frechetらの米国特許第5,587,441号及び米国特許第5,587,446号(これらは参照により本明細書に組み込まれる)に開示されているポリマー)、多分岐ブロックコポリマー、及び多分岐グラフトコポリマーを挙げることができる。そのような部位“R”は、水中に溶解又は分散させるための比較的大きな親水性をポリマーに与える機能を有し、そして伝導性ポリマーを水に分散させることを促進させると考えられる。
【0058】
様々な既知の重合方法を用いて、多分岐構造の多分岐ポリマーを製造することができる。ある種の実施態様によると、枝分かれモノマーと呼ばれる1種又は複数種の特別なモノマーを、追加の非枝分かれモノマー又はマクロモノマーを用いて又は用いずに、リビング/制御重合することによって、多分岐ポリマーの多分岐部分を得る。ビニルモノマーのリビング連鎖重合プロセスによる多分岐ポリマーの合成においては、AB型モノマーを、米国特許第5,587,441号及び米国特許第5,587,446号に記載されたように用いる。ABビニルモノマーは、重合性の開始剤分子であり、これは第二の反応性基Bを、反応性ビニル基Aに加えて含んでおり、この反応基Bは、外部の要因によって活性化され、活性化重合性開始剤分子AB
*を生成する。活性基A
*及びB
*の両方が、任意の使用可能なA基に付加することができ、かつ不活性に留まる任意のB基が交換プロセスの結果として後に活性化することがあるので、重合プロセス中に全てのAB分子が活性化されてAB
*となる必要はない。ABモノマーが、多分岐マクロ分子に関与するので、われわれはこれを多分岐モノマー又は枝分かれモノマーと呼ぶ。多分岐AB型モノマーに関する詳細は、上記の参照文献に述べられている。可能な重合技術としては、限定されないが、安定ラジカル重合、原子移動ラジカル重合、アニオン重合、カチオン重合、配位重合、官能基移動重合、開環重合及び縮合重合が挙げられる。この開示の実施態様によれば、多分岐部分は、ラジカル重合プロセス、例えば安定ラジカル重合及び原子移動ラジカル重合(ATRP)によって得られる。
【0059】
この開示の1つの実施態様によれば、多分岐部分は、ATRPプロセスに基づいて得られ、これは、例えば米国特許第5,763,548号に開示されており、本明細書に参照により完全に組み込まれる。そのようなATRPプロセスにおいて、1種以上のラジカル重合性モノマーを、ラジカルが移動可能な原子又は基を有する開始剤、遷移金属化合物及びリガンドの存在下で重合して、(コ)ポリマーを形成する。この遷移金属化合物は、M
tn+X’
nの式を有し、かつリガンドは、σ結合に配位することができるN−、O−P−、若しくはS−を含有するあらゆる化合物、又はその遷移金属へのπ結合に配位することができるあらゆる炭素含有化合物となり、ただし、遷移金属と成長ポリマーラジカルとの間に直接結合(すなわち共有結合)が形成されないようにする。そのようなプロセスは、重合プロセスにわたって高度の制御を与え、かつ比較的均一な特性を有する様々なポリマー及びコポリマーの形成を与える。
【0060】
参照により本明細書に完全に組み込まれるFrechetらの米国特許第5,635,571号は、A及びBが官能基で、かつCがオリゴマー性エチレンオキシドのぶら下がり側鎖を有する場合がある部分である、A
nCB型の枝分かれマクロモノマーを開示している。n数のA基とB基との重合、すなわち縮合反応は、オリゴマー性エチレンオキシドのぶら下がり側鎖を有する多分岐ポリマーを生成した。この開示にしたがって、そのような任意の多分岐ポリマー構造を用いることができる。
【0061】
多分岐ブロックコポリマーは、複数の官能化末端基の開始部位を有する多分岐ポリマー部分を含む「マクロ開始剤」、及び共重合されるモノマー又はマクロモノマーの溶液から通常は調製される。
【0062】
多分岐グラフトコポリマーを、少なくとも1種の枝分かれビニルモノマー及び少なくとも1種の非枝分かれビニルマクロモノマーの溶液をラジカル共重合することによって、調製する。
【0063】
この開示によって用いるための連鎖重合を経ることができる、様々な枝分かれ重合性モノマーが、市販されており、又はそのようなモノマーを、従来の反応によって合成することができる。これらの枝分かれモノマーは、一般的に連鎖重合性基、例えばビニル基を有し、かつ熱的に又は重合触媒の存在下で活性化させて、開始種又は枝分かれ種の形成をもたらすることができる別個の反応部位を有する。重合性枝分かれモノマーは、例えば次から選択することができる:スチレン;共役ジエン;アクリレート;アミン、カルボキシル、アルデヒド、アルキル、シアノ及びヒドロキシ置換のアクリル酸及びアクリル酸エステル;アクリルアミド;メタクリルアミド;アクリル酸;メタクリル酸;アクロレイン;ジメタアミノエチルアクリレート;ジメタアミノエチルメタクリレート;マレイン酸;及び無水マレイン酸化合物。ここでこのような化合物は、別個の反応部位を与える置換基も有する。枝分かれモノマーに対する別個の反応部位は、原子移動ラジカル重合及びリビングカチオン重合においてはハロゲン原子(例えば、Cl、Br、又はI、通常はCl又はBr)を有する置換基、安定ラジカル重合においてはTEMPO(2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジニルオキシ、フリーラジカル)及びその誘導体、及び原子移動ラジカル重合及びそれに関するプロセスにおいてはS及びSe含有基、官能基移動重合においては置換ケイ素、リビングアニオン重合においては金属原子、及び金属フリーアニオン重合においてはtert−アルキルアンモニウムによって与えることができる。枝分かれモノマーそれ自身は、繰り返し基(例えば、約5〜100の繰り返し基)を有するオリゴマー単位又はポリマー単位をさらに有し、これはホモポリマー単位、ランダムコポリマー単位、ブロックコポリマー単位又はデンドリマー単位及び枝分かれポリマー単位を含む他の種類のポリマー単位となることができる。
【0064】
多分岐ポリマーは、1種以上のエチレン系不飽和重合性モノマーから、既知の重合技術及び反応物を用いて共に反応させて調製されるビニルホモポリマー又はコポリマーとなることができる。より詳しくは、多分岐ポリマーは、置換された又は置換されていないスチレン系モノマーから調製されるホモポリマー又はコポリマーである。置換されたスチレン系モノマーを、ハロゲン原子で、例えば塩素又はフッ素で、通常はフッ素原子で、置換させることができる。あるいは、それらは、1種以上の複素環式モノマーから、既知の重合技術及び反応物を用いて共に反応させて調製される付加ホモポリマー又は付加コポリマー(例えば、ポリエーテル)となることができる。さらに、それらは、既知の重合技術及び反応物を用いて調製される縮合型のポリマー(例えば、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミド又はポリウレアン)となることができる。
【0065】
この開示によって用いることができる枝分かれ重合性モノマーの特定の例としては、限定されないが、次のものを挙げられる:m−ビニルベンジルクロライド、p−ビニルベンジルクロライド、m/p−ビニルベンジルクロライド、トリクロロエチルアクリレート、トリクロロエチルメタクリレート、α−クロロアクリロニトリル、α−クロロアクリレート、α−クロロアクリル酸、α−ブロモ無水マレイン酸、α−クロロ無水マレイン酸、2−(2−クロロプロピオニルオキシ)エチルアクリレート、2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)エチルアクリレート、2−(2−クロロプロピオニルオキシ)エチルメタクリレート、2−(2−ブロモプロピオニルオキシ)エチルメタクリレート。
【0066】
この開示によるポリマーの調製は、2つの工程を伴うことができる。第一の工程は、枝分かれモノマー(若しくは複数種の枝分かれモノマー)、又はマクロモノマーを含む他のモノマー(若しくは複数種のモノマー)及び枝分かれモノマー(若しくは複数種の枝分かれモノマー)を用いる既知のリビング重合法又は制御重合法によって、前段階の多分岐ポリマー又は多分岐コポリマーを製造することである。第二の工程は、式(1A)〜(1D)により示される官能基Rを組み込む化学反応によって、上記前段階の多分岐ポリマー又は多分岐コポリマーを変性することである。あるいは、この開示の多分岐ポリマー又はコポリマーを、式(1A)〜(1D)により示される官能基Rを組み込んでいるモノマーを重合することによって、製造することが出来る。この開示の特定の実施態様によって、前段階の多分岐ポリマーの化学変性は、式(1A)〜(1D)により表される官能基を有する多分岐ポリマーをもたらすことが分かった。多分岐部分は、多分岐構造を有するあらゆる種類のポリマー部分となることができ、その多分岐ポリマーは、主鎖又は鎖末端のいずれかに位置する、この開示に適切となるあらゆる種類の他の官能基を有することができる。
【0067】
この開示によって得られる、式(1A)〜(1D)により表される官能基Rを有する多分岐ポリマーは、それらが、同様の化学的組成を有する非多分岐ポリマーと比べた場合の比較的低い固有粘度及び比較的高い接近性を維持しながら、有用な化学特性を発揮する組成を有するポリマー構造とさせる点で、特に有利である。さらに、多分岐ポリマーは、様々な多分岐ポリマー組成物を商業的に許容可能なプロセスによって合成させることができる点で、デンドリマー型のポリマーに対して有利である。
【0068】
この開示で有用な多分岐ポリマーは、少なくとも200、典型的には少なくとも500、そして通常には少なくとも5000の分子量を有する。分子量の上限は、その高度に分岐している性質に起因して、極めて高い場合がある。しかし、一般的に、その分子量は、10,000,000まで、典型的には1,000,000まで、通常は100,000までとなる。
【0069】
この開示で有用な多分岐ポリマーのそれぞれが、式(1A)〜(1D)によって表される少なくとも1つの官能基Rを有し、例えば2〜100,000個の官能基、典型的には5〜10,000の官能基、通常は10〜1000の官能基、及びある場合には少なくとも20の官能基を有する。
【0070】
この開示の実行で用いることを意図した随意のコロイド形成性ポリマー酸は、水に不溶性であり、適切な水系媒体に分散させたときにコロイドを形成する。このポリマー酸は、約10,000〜約4,000,000の範囲の分子量を有する。1つの実施態様では、ポリマー酸は、約50,000〜約2,000,000の分子量を有する。水に分散させたときにコロイドを形成するあらゆるポリマー酸が、この開示の実行で用いるのに適切となる。1つの実施態様では、コロイド形成性ポリマー酸は、ポリマースルホン酸を含む。他の許容可能なポリマー酸は、ポリマーホスホン酸、ポリマーカルボン酸及びポリマーアクリル酸並びにこれらの混合物及びポリマースルホン酸とこれらとの混合物の少なくとも1種を含む。他の1つの実施態様では、ポリマースルホン酸は、フッ素化された酸を含む。さらに他の1つの実施態様では、コロイド形成性ポリマースルホン酸は、パーフルオロ化合物を含む。また他の1つの実施態様では、コロイド形成性ポリマースルホン酸は、パーフルオロアルキレンスルホン酸を含む。
【0071】
さらに他の1つの実施態様では、この随意のコロイド形成性ポリマー酸は、高度にフッ素化されたスルホン酸ポリマー(FSAポリマー)を含む。「高度にフッ素化された」とは、ポリマー中のハロゲン及び水素原子の合計数の少なくとも約50%がフッ素原子であることを意味し、これは1つの実施態様では少なくとも約75%であり、他の1つの実施態様では、少なくとも約95%である。1つの実施態様では、このポリマーは、少なくとも1つのパーフルオロ化合物を含む。
【0072】
この随意のポリマー酸は、スルホナート官能基を有することができる。用語「スルホナート官能基」とは、スルホン酸基又はスルホン酸塩の官能基のいずれかを指し、1つの実施態様では、これは、少なくとも1種のアルカリ金属塩又はアンモニウム塩を含む。この官能基は、式−SO
3Xによって示され、ここでXは、“対イオン”としても知られるカチオンを含む。Xは、H、Li、Na、K又はN(R
1”)(R
2”)(R
3)(R
4)からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができ、ここでR
1”、R
2”、R
3及びR
4は、同じであるか又は異なっており、1つの実施態様では、H、CH
3又はC
2H
5である。他の1つの実施態様では、XはHを含み、この場合には、このポリマーは、「酸の形態」であるという。Xは、Ca
2+、Al
3+、Fe
2+及びFe
3+のようなイオンによって表されるような、多価のものとなることもできる。M
n+として一般的に表される多価の対イオンの場合、対イオン当たりのスルホナート官能基の数は、価数“n”に等しくなるだろう。
【0073】
1つの実施態様では、随意のFSAポリマーは、主鎖に結合している繰り返しの側鎖を有するポリマー主鎖を含み、その側鎖は、カチオン交換基を有する。ポリマーとしては、ホモポリマー又は2種以上のモノマーのコポリマーが挙げられる。コポリマーは、無官能のモノマー、及びカチオン交換基又はその前駆体、例えば後に加水分解してスルホナート官能基となることができるフッ素化スルホニル基(−SO
2F)、を有する第二のモノマーから通常は形成される。例えば、第一のフッ素化ビニルモノマー、及びフッ素化スルホニル基(−SO
2F)を有する第二のフッ素化ビニルモノマーを含むコポリマーを用いることができる。適切な第一のモノマーの例は、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン、フッ素化ビニル、フッ素化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)及びこれらの組合せの群からの少なくとも1種を含むことができる。
【0074】
他の実施態様では、随意の第二のモノマーの例は、スルホナート官能基又はポリマーに所望の側鎖を与えることができる前駆体基を有する、少なくとも1種のフッ素化ビニルエーテルを含む。さらなるモノマーとしては、エチレンを挙げられる。1つの実施態様では、この開示で用いるためのFSAポリマーは、少なくとも1種の高度にフッ素化したFSAを含み、かつ1つの実施態様では、炭素主鎖及び側鎖は、次の式で示されるようにパーフルオロ化されている:
−(O−CF
2CFR
f)
a−O−CF
2CFR’
fSO
3X
(式中、R
f及びR’
fは、F、Cl又は炭素原子数1〜10を有するパーフルオロアルキル基から独立して選択され;a=0、1又は2であり、かつXは、H、Li、Na、K又はN(R
1”)(R
2”)(R
3)(R
4)の少なくとも1種を含み、ここでR
1”、R
2”、R
3及びR
4は、同じであるか又は異なっており、そして1つの実施態様では、H、CH
3又はC
2H
5である)。
他の1つの実施態様では、XはHを含む。上述のようにXは、多価となることもできる)。
【0075】
他の1つの実施態様では、随意のFSAポリマーとして、例えば、米国特許第3,282,875号、米国特許第4,358,545号及び米国特許第4,940,525号(これらは参照により本明細書に完全に組み込まれる)に開示されるポリマーを含む。有用なFSAポリマーの例は、パーフルオロカーボン主鎖及び次の式で表される側鎖を有する:
−O−CF
2CF(CF
3)−O−CF
2CF
2SO
3X’
(式中、X’は上述して定義したとおりである)。
この種類のFSAポリマーは、米国特許第3,282,875号に開示されており、テトラフルオロエチレン(TFE)及びパーフルオロ化したビニルエーテル、CF
2=CF−O−CF
2CF(CF
3)−O−CF
2CF
2SO
2F、パーフルオロ(3,6−ジオキサ−4−メチル−7−オクテンスルホニルフルオリド)(PDMOF)の共重合、続いてフッ素化スルホニル基を、加水分解し、かつそれらを所望のイオン形態に転化するのに必要なイオン交換をして、スルホナート基に転化させることにより、作製することができる。米国特許第4,358,545号及び米国特許第4,940,525号に開示されている種類のポリマーの例は、側鎖−O−CF
2CF
2SO
3X’を有し、ここでX’は上述して定義したとおりである。このポリマーは、テトラフルオロエチレン(TFE)及びパーフルオロビニルエーテル、CF
2=CF−O−CF
2CF
2SO
2F、パーフルオロ(3−オキサ−4−ペンテンスルホニルフルオリド)(POPF)の共重合、続いて加水分解、そして必要な場合はイオン交換によって作製することができる。
【0076】
他の1つの実施態様では、随意のFSAポリマーは、例えば米国特許出願公開2004/0121210で開示されているポリマーを含む。この文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。有用なFSAポリマーの例は、テトラフルオロエチレン(TFE)及びパーフルオロビニルエーテル、CF
2=CF−O−CF
2CF
2CF
2CF
2SO
2の共重合、続いてフッ素化スルホニル基を、加水分解し、かつそのフッ素化基を所望のイオン形態に転化するのに望ましいイオン交換をして、スルホナート基に転化させることにより、作製することができる。他の1つの実施態様では、FSAポリマーは、例えば米国特許出願公開2005/0037265で開示されているポリマーを含む。この文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。有用なFSAポリマーの例は、CF
2=CFCF
2OCF
2CF
2SO
2F及びテトラフルオロエチレンの共重合、続いてフッ素化スルホニル基を、KOHで加水分解し、そして酸でイオン交換して、そのカリウムイオン塩を酸の形態に転化して、スルホナート基に転化させることにより、作製することができる。
【0077】
他の実施態様では、この開示で用いるための随意のFSAポリマーは、通常約33未満のイオン交換比を有する。「イオン交換比」又は「IXR」は、カチオン交換基に関するポリマー主鎖中の炭素原子の数を意味する。約33未満の範囲内で、IXRは、特定の用途に対して望ましいように変化することができる。1つの実施態様において、IXRは、約3〜約33であり、かつ他の実施態様では約8〜約23である。
【0078】
ポリマーのカチオン交換能力は、当量の点から表現される場合がある。この用途の目的から、当量(EW)は、1当量の水酸化ナトリウムを中和するのに十分な酸の形態であるポリマーの重量と定義される。パーフルオロカーボン主鎖を有し、かつ側鎖が−O−CF
2−CF(CF
3)−O−CF
2−CF
2−SO
3H(又はこれらの塩)を有するスルホナートポリマーの場合では、約8〜約23のIXRに対応する当量の範囲は、約750EW〜約1500EWである。このポリマーに対するIXRは、次の式を用いる当量に関連する場合がある:50IXR+344=EW。米国特許第4,358,545号及び米国特許第4,940,525号(これらは参照により本明細書に完全に組み込まれる)に開示されているスルホナートポリマー、例えば、側鎖に−O−CF
2CF
2SO
3H(又はこれらの塩)を有するポリマーに、同じIXR範囲を用いるが、その当量は、カチオン交換基を有するモノマー単位の比較的低い分子量に起因して、いくぶん低い。約8〜約23のIXR範囲に対して、対応する当量の範囲は、約575EW〜約1325EWである。このポリマーに関するIXRは、次の式を用いる当量に関連する場合がある:50IXR+178=EW。
【0079】
随意のFSAポリマーを、コロイド水系分散体として調製することができる。これらは、他の媒体での分散体の形態となることもでき、その例としては、限定されないが、アルコール、水溶性エーテル(例えばテトラヒドロフラン)、水溶性エーテルの混合物及びこれらの組合せが挙げられる。分散体を作成する場合、ポリマーは、酸の形態で用いることができる。米国特許第4,433,082号、米国特許第6,150,426号及び国際公開WO 03/006537号(これらは参照により本明細書に完全に組み込まれる)は、水系アルコール分散体の作成方法を開示している。分散体を作製した後で、FSA濃度及び分散液組成を、本分野で既知の方法で調整することができる。
【0080】
FSAポリマー等のコロイド形成性ポリマー酸を含む水系分散体は、安定なコロイドが形成される限り、できるだけ小さな粒径を通常には有する。FSAポリマーの水系分散体は、NAFION(商標)分散体として市販されている(E.I.du Pont de Nemours and Company、ウィルミントン、デラウエア州、米国)。適切なFSAポリマーの例は、次の構造を有するコポリマーを含む:
【化9】
このコポリマーは、m=1の場合、テトラフルオロエチレン及びパーフルオロ(4−メチル−3,6−ジオキサ−7−オクテン−1−スルホン酸)を有する。
【0081】
米国特許出願公開2004/0121210又は米国特許出願公開2005/0037265からのFSAポリマーの水系分散体を、米国特許第6,150,426号に開示されている方法を用いることによって作製することができる。これらの文献の開示は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。
【0082】
他の適切なFSAポリマーは、参照により本明細書に完全に組み込まれる米国特許第5,422,411号に開示されている。対イオン/ポリチオフェンの分散剤として用いることができる、そのような1つの適切なポリマー酸は、次の構造を有することができる:
【化10】
(式中、m、n、p及びqの少なくとも2つがゼロ超の整数であり;A
1、A
2及びA
3は、アルキル、ハロゲン、C
yF
2y+1(ここでyはゼロ超の整数)、O−R”(R”は、アルキル、パーフルオロアルキル及びアリール部からなる群より選択される)CF=CF
2、CN、NO
2及びOHからなる群より選択され;かつX”は、SO
3H、PO
2H
2、PO
3H
2、CH
2PO
3H
2、COOH、OPO
3H
2、OSO
3H、OArSO
3H(Arは、芳香環部)、NR”
3+(R”はアルキル、パーフルオロアルキル及びアリール部からなる群より選択される)及びCH
2NR
3+(R”はアルキル、パーフルオロアルキル及びアリール部からなる群より選択される)からなる群から選択される)。
A
1、A
2、A
3及びX”置換基は、オルト位、メタ位及び/又はパラ位に位置する場合がある。このコポリマーは、2元、3元又は4元のコポリマーとなることもできる。
【0083】
あらゆる適切なフッ素化されていないポリマー酸を用いることができるが、そのような酸の例は、ポリ(スチレンスルホン酸)及びポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)からなる群より選択される少なくとも1つの種を含む。フッ素化されていないポリマー酸の量は、通常、分散体の約0.05wt%〜約1.5wt%の範囲となる。
【0084】
1つの実施態様では、チエノチオフェンモノマー又はチエノ[3,4−b]チオフェンモノマーを、少なくとも1種の多分岐ポリマー及びポリマー酸コロイドを含む水系媒体中で酸化重合させる。通常は、チエノチオフェンモノマー又はチエノ[3,4−b]チオフェンモノマーを、少なくとも1種の重合触媒、少なくとも1種の酸化剤及びポリマー酸コロイド粒子を含む水系分散体に、混合又は添加する。この実施態様では、重合反応が進む準備が整うまで酸化剤及び触媒をモノマーと通常は混合しないという条件で、混合又は添加の順序を変えることができる。重合触媒としては、限定されないが、硫酸(第二)鉄、塩化(第二)鉄、硫酸セリウム等及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。酸化剤としては、限定されないが、硫酸(第二)鉄、塩化(第二)鉄、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種が挙げられる。いくつかの場合には、酸化剤及び触媒は、同じ化合物を含むことができる。酸化重合は、そのコロイド内に含まれているポリマー酸の負帯電した側鎖(例えば、スルホナートアニオン、カルボンキシラートアニオン、アセチレートアニオン、ホスホナートアニオン、これらの組合せ等)によって電荷が平衡となっている、正帯電した伝導性チエノチエオフェンポリマー及び/又はチエノ[3,4−b]チオフェンポリマーを含有する安定な水系分散体をもたらす。任意の適切なプロセス条件をチエノチエオフェンの重合に用いることができるが、分散体を得るのに、分散体を混合するのに、そして分散体を維持するのに十分な条件及び装置と共に、約8〜約95℃(46〜203゜F)の範囲の温度を用いることが有用である。
【0085】
この開示の1つの実施態様は、次の工程を含む、ポリチエノ[3,4−b]チオフェン、少なくとも1種の多分岐ポリマー、及び少なくとも1種のコロイド形成性ポリマー酸を含有する水系分散体の製造方法を含む:(a)少なくとも1種の多分岐ポリマー、少なくとも1種のフッ素化ポリマー酸及び少なくとも1種のフッ素化されていないポリマー酸を含有する水系分散体を与える工程;(b)少なくとも1種の酸化剤を、工程(a)に記載の分散体に添加する工程;(c)少なくとも1種の触媒又は酸化剤を、工程(b)に記載の分散体に添加する工程;(d)チエノ[3,4−b]チオフェンモノマーを、工程(c)に記載の分散体に添加する工程;(e)上記モノマー分散体を重合させる工程;及び(f)上記分散体のpHを、材料の抵抗をより安定にするのに十分に高い値に調整する工程。この方法は、pHを3超の値に調整する工程を含むことができる。他の1つの実施態様では、pHの値を6超又は8超に調整することができる。この方法に対する1つの別の実施態様は、酸化剤を添加する前に、チエノ[3,4−b]チオフェンモノマーを、少なくとも1種の多分岐ポリマー及び少なくとも1種のポリマー酸の水系分散体に添加する工程を含む。他の1つの実施態様は、水及びチエノ[3,4−b]チオフェンを含む水系分散体(例えば、任意の値のチエノ[3,4−b]チオフェンの水中濃度の水系分散体、これは通常は約0.05wt%〜約50wt%の範囲のチエノ[3,4−b]チオフェンである)を形成し、そしてこのチエノ[3,4−b]チオフェン混合物を、酸化剤及び触媒の添加前又は添加後に、そのポリマー酸の水系分散体に添加する工程を含む。さらなる他の1つの実施態様では、チエノチオフェンモノマーを、水と相溶性のある有機溶媒に溶解させ、酸化剤及び/又は触媒の添加前又は添加後に、この溶解したモノマー溶液をポリマー酸の水系分散体に添加する。
【0086】
この開示の組成物は、上記のホモポリマー構造に限定されず、ヘテロポリマー構造又はコポリマー構造を含むことができる。このコポリマー構造は、交互コポリマー(例えば、A単位及びB単位の交互)、周期コポリマー(例えば、(A−B−A−B−B−A−A−A−A−B−B−B)n)、ランダムコポリマー(例えば、モノマーA及びBのランダムな順序)、統計コポリマー(例えば、統計ルールに従うポリマーの順序)及び/又はブロックコポリマー(例えば、共有結合で結合している2以上のホモポリマーのサブ単位)のあらゆる組合せとなることができる。生成コポリマーが、導電性の特性を維持するならば、このコポリマーを、分岐させ又は結合させることができる。このコポリマー構造は、モノマー化合物、オリゴマー化合物又はポリマー化合物から形成することができる。例えば、コポリマー系で用いるのに適切なモノマーとしては、チオフェン、置換チオフェン、置換チエノ[3,4−b]チオフェン、ジチエノ[3,4−b:3’,4’−d]チオフェン、ピロール、ビチオフェン、置換ピロール、フェニレン、置換フェニレン、ナフタレン、置換ナフタレン、ビフェニル及びターフェニル、置換ターフェニル、フェニレン、ビニレン、及び置換フェニレンビニレン等のモノマーを挙げることができる。
【0087】
生成ポリマーが導電性であり、かつフッ素化ポリマー酸及びフッ素化されていないポリマー酸を含むという条件で、チエノチオフェンモノマー又はチエノ[3,4−b]チオフェンモノマーに加えて、他のチオフェンモノマー化合物を、この開示において用いることができる。
【0088】
いくつかの場合には、分散体は、少なくとも1種の金属(例えば、少なくとも1種のイオン)を含むことができる。分散体に添加又は存在することができる金属の例は、特に、Fe
2+、Fe
3+、K
+及びNa
+並びにこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種を含む。酸化剤とモノマーとのモル比は、通常約0.05〜約10であり、通常は約0.5〜約5の範囲である(例えば、本発明の重合工程の間)。望む場合には、分散体をカチオン交換樹脂及びイオン交換樹脂にさらすことによって、金属の量を少なくすることができ、又は金属を除去することができる。
【0089】
チオフェンモノマーの重合を、通常は水と混和性である共分散性キャリア又は共分散性液体(co−dispersing carriers or liquids)の存在下で実行することができる。適切な共分散性液体の例は、エーテル、アルコール、エステル、環状エーテル、ケトン、ニトリル、スルホキシド、アミド、アセトアミド及びこれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種を含む。他の1つの実施態様では、共分散性の液体の量は、約30体積%未満である。他の1つの実施態様では、共分散性の液体の量は、約60体積%未満である。1つの実施態様では、共分散性液体の量は、約5体積%〜約50体積%の間とすることができる。1つの実施態様では、共分散性液体は、少なくとも1種のアルコールを含む。1つの実施態様では、共分散性キャリア又は共分散性液体は、n−プロパノール、イソプロパノール、t−ブタノール、メタノール、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン及びプロピレングリコールn−プロピルエーテルからなる群より選択される少なくとも1種を含む。共分散性液体は、有機酸を含むことができ、例えばp−トルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、カンファースルホン酸、酢酸及びこれらの混合物等からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。あるいは、この酸は、水溶性ポリマー酸、例えばポリ(スチレンスルホン酸)、ポリ(2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸)等、又は上述の第二のコロイド形成性酸を含むことができる。酸の組合せを用いることもできる。
【0090】
いずれかが最後に添加される、酸化剤かチエノチオフェンモノマーかの添加前のプロセスにおける任意の段階で、有機酸を重合混合物に加えることができる。1つの実施態様では、チオフェンモノマー、少なくとも1種の多分岐ポリマー及び随意のコロイド形成性ポリマー酸と、酸化剤との両方を最後に添加する前に、有機酸を添加する。1つの実施態様では、有機酸を、チオフェンモノマーの添加前に添加し、続いてコロイド形成性ポリマー酸を添加し、そして酸化剤を最後に添加する。他の1つの実施態様では、合成したままの水系分散体をイオン交換樹脂で処理した後に、ポリマー共酸(polymeric co−acid)を、水系分散体に加えることができる。いずれもが最後となる酸化剤、触媒又はモノマーの添加前のいずれかの段階で、共分散液体を重合混合物に添加することができる。
【0091】
この開示の他の1つの態様では、上述のあらゆる方法を完了させた後、及び重合の完了の後、合成したままの水系分散体を、安定な水系分散体を製造するのに適切な条件の下で、少なくとも1種のイオン交換樹脂と接触させる。1つの実施態様では、合成したままの水系分散体を、第一のイオン交換樹脂及び第二のイオン交換樹脂と接触させる。他の1つの実施態様では、第一のイオン交換樹脂は、酸性のカチオン交換樹脂、例えば上述したスルホン酸カチオン交換樹脂を含み、かつ第二のイオン交換樹脂は、塩基性のアニオン交換樹脂、例えば第三級アミン又は第四級の交換樹脂を含む。
【0092】
イオン交換は、可逆化学反応を含み、ここでは液体媒体(例えば、水系分散体)中のイオンが、その液体媒体に不溶性の固定された個体粒子に結合している同種に帯電したイオンと交換される。用語「イオン交換樹脂」を、上述したようなイオン交換に適切なあらゆる物質を述べるために本明細書で用いる。この樹脂は、イオン交換基が結合しているポリマー支持体の架橋した性質に起因して不溶性となる。イオン交換樹脂は、酸性のカチオン交換体として分類され、これは交換に使用可能な正帯電した移動可能なイオンを有し、またイオン交換樹脂は、塩基性のアニオン交換体として分類され、その交換可能なイオンは負に帯電している。
【0093】
酸性のカチオン交換樹脂と塩基性のアニオン交換樹脂との両方を、本開示で用いることができる。1つの実施態様では、酸性のカチオン交換樹脂は、有機酸カチオン交換樹脂を含み、例えばスルホン酸カチオン交換樹脂を含む。この開示の実行で用いることを意図したスルホン酸カチオン交換樹脂は、スルホン化スチレン−ジビニルベンゼンコポリマー、スルホン化架橋スチレンポリマー、フェノール−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂、ベンゼン−ホルムアルデヒド−スルホン酸樹脂及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。他の1つの実施態様では、酸性のカチオン交換樹脂は、少なくとも1種の有機酸カチオン交換樹脂、例えばカルボン酸、アクリル又はホスホン酸カチオン交換樹脂及びこれらの混合物を含む。さらに、異なるカチオン交換樹脂の混合物を用いることができる。多くの場合では、塩基性イオン交換樹脂を所望のpHレベルに調整するために用いることができる。いくつかの場合では、塩基性水系溶液を用いて、例えば特に、水酸化ナトリウム、水酸化アンモニウム、テトラ−メチルアンモニウムヒドロキシド、テトラ−エチルアンモニウムヒドロキシド、水酸化カルシウム、水酸化セシウム及びこれらの混合物を用いて、pHをさらに調整することができる。
【0094】
他の1つの実施態様では、塩基性アニオン交換樹脂は、少なくとも1種の第三級アミンアニオン交換樹脂を含む。この開示の実行で用いることを意図した第三級アミンアニオン交換樹脂は、第三級アミノ化スチレンジビニルベンゼンコポリマー、第三級アミノ化架橋スチレンポリマー、第三級アミノ化フェノール−ホルムアルデヒド樹脂、第三級アミノ化ベンゼン−ホルムアルデヒド樹脂及びこれらの混合物からなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。さらなる実施態様では、塩基性アニオン交換樹脂は、少なくとも1種の第四級アミンアニオン性交換樹脂又はこれらの混合物及び他の交換樹脂との混合物を含む。
【0095】
第一のイオン交換樹脂及び第二のイオン交換樹脂は、合成したままの水系分散体と、同時に又は順番に接触させることができる。例えば、1つの実施態様では、両方の樹脂を、導電性ポリマーを含有する合成したままの水系分散体に、同時に添加し、そして少なくとも約1時間、例えば約2時間〜約20時間にわたって分散体との接触を維持するようにする。そして、イオン交換樹脂を、分散体からろ過により除去することができる。この手順を、所定のイオン濃度を達成するために、望むように繰り返すことができる。比較的小さな分散体粒子が通過しながら比較的大きなイオン交換樹脂粒子が除去されるように、フィルターのサイズを選択する。理論又は説明に拘束されるものではないが、イオン交換樹脂は、重合を停止させ、かつ効果的にイオン性不純物及び非イオン性不純物、並びに大部分の未反応モノマーを、合成したままの水系分散体から除去すると考えられる。さらに、塩基性アニオン交換樹脂及び/又は酸性カチオン交換樹脂は、この分散体のpHを上昇させる。一般的に、1ミリ当量の酸化剤当たり約1〜2gのイオン交換樹脂を、酸化剤を除去するために用いる。1つの実施態様において、5〜10gのイオン交換樹脂を、1gのFe
2(SO
4)
3・H
2O当たりに用いる。通常、少なくとも1gのイオン交換樹脂を、約1gのコロイド形成性ポリマー酸当たりに用いる。1つの実施態様では、約1gの弱塩基性のアニオン交換樹脂 LEWATIT(商標)MP62 WS(Bayer GmbH)、及び約1gの強酸性の酸カチオン交換樹脂 LEWATIT(商標)MonoPlus S100(Bayer GmbH)を、ポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)及び少なくとも1種のコロイド形成性ポリマー酸の組成物の1g当たりに用いる。
【0096】
この開示の1つの態様では、この分散体は、比較的低い重量パーセントの高伝導性添加剤をさらに含み、望むならば、これをパーコレーション閾値を達成するのに用いることができる。適切な伝導性添加剤の例は、金属粒子及びナノ粒子、ナノワイヤー、カーボンナノチューブ、グラファイトファイバー又はグラファイト粒子、カーボン粒子及びこれらの組合せからなる群より選択される少なくとも1種を含むことができる。
【0097】
1つの実施態様では、ホール注入層のキャスト薄膜又はキャスト層を、通常は高温で(例えば、約250℃(482゜F)まで)アニールする。「アニール」は、目的の用途に望ましい特性を与えるのに必要な条件の下でフィルムを処理することを意味し、例えば残留溶媒又は水分を除去することを意味する。
【0098】
この開示のさらなる態様において、追加の材料を添加することができる。添加することができる追加の水溶性材料又は分散性材料の例としては、限定されないが、ポリマー、染料、コーティング助剤、カーボンナノチューブ、ナノワイヤー、界面活性剤(例えば、フルオロ界面活性剤、例えば構造R
fCH
2CH
2O(CH
2CH
2O)
xH(式中、R
f=F(CF
2CF
2)
y、x=0〜約15、かつy=1〜約7)を有するZONYL(商標)FSOシリーズの非イオン性フルオロ界面活性剤(DuPont、ウィルミントン、デラウェア州、米国)、アセチレンジオール系界面活性剤、例えばDYNOL(商標)及びSURFYNOL(商標)シリーズ(Air Products and Chemicals, Inc.、アレンタウン、ペンシルベニア州、米国))、有機及び無機伝導性インク及びペースト、電荷輸送材料、架橋剤及びこれらの組合せが挙げられる。この材料は単純な分子又はポリマーとなることができる。適切な他の水溶性ポリマー又は分散性ポリマーの例は、少なくとも1種の伝導性ポリマー、例えばポリアニリン、ポリアミン、ポリピロール、ポリアセチレン及びこれらの組合せを含有する。
【0099】
他の1つの実施態様では、この開示は、少なくとも1つの電気活性層(通常、小さな分子又はポリマーを共役させた半導体)を、2つの電気接触層との間に位置させた電子デバイスであって、このデバイスの層の少なくとも1つが、この開示によるホール注入層を含む電子デバイスに関する。この開示の1つの実施態様は、
図1に示すような有機発光ダイオード(OLED)デバイスで例証される。
図1に参照すると、
図1は、アノード層110、ホール注入層(HIL)120、エレクトロルミネセンス層(EL又はEML)130及びカソード層150を含むデバイス100を示す。カソード層150の隣に、随意の電子注入層/輸送層140が存在している。ホール注入層120とカソード層150(又は随意の電子注入層/輸送層140)との間に、エレクトロルミネセンス層130が存在している。あるいは、通常中間層と言われるホール輸送層及び/又は電子遮断層を、ホール注入層120とエレクトロルミネセンス層130との間に挿入することができる。HIL及びEMLとの間にポリマー中間層を用いることの利点の例は、デバイスの寿命とデバイスの効率を向上させることであった。あらゆる理論又は説明に拘束されることを望まないが、ポリマー中間層は、効果的な励起子遮断層として機能することによって、HIL界面での励起子クエンチングを防ぐことができる。そして、再結合領域は、中間層/発光層界面付近に制限される。いくつかの場合には、ポリマー中間層は、EMLの溶媒によって溶解されるので(例えば、それによって中間層のEMLとの混合が発生する場合がある)、ガラス転移温度(Tg)より高い温度で熱アニールすることによって、この層を硬化/架橋することが望ましい場合がある。
【0100】
この開示の他の1つの実施態様では、この分散体は、通常、溶媒/保湿剤として特徴付けられる有機液体を含むことができる添加剤をさらに含む。任意の適切な添加剤を用いることができるが、適切な添加剤の例は、次からなる群より選択される少なくとも1種を含む:
(1)アルコール、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、フルフリルアルコール及びテトラヒドロフルフリルアルコール;
(2)多価アルコール、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,5ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール及びチオグリコール;
(3)多価アルコールから導かれた低級のモノ−アルキルエーテル及びジ−アルキルエーテル;
(4)窒素含有化合物、例えば2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、及び1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;
(5)硫黄含有化合物、例えば2,2’−チオジエタノール、ジメチルスルホキシド及びテトラメチレンスルホン;及び
(6)ケトン、エーテル及びエステル。
【0101】
多価アルコール(例えば、フィルム形成剤の用途で適切なもの)の例は、次の群より選択される少なくとも1種を含むことができる:エチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、2−エチル−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(EHMP)、1,5 ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール及びチオグリコール。多価アルコールから導かれた低級のモノ−アルキルエーテル及びジ−アルキルエーテルの例は、次の群より選択される少なくとも1種を含むことができる:グリコールモノメチル又はモノ−エチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−メチル又はモノ−エチルエーテル、プロピレングリコールモノ−メチル、モノ−エチル及びプロピルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル、モノ−エチル又はモノ−ブチルエーテル(TEGMBE)、ジエチレングリコールジ−メチル又はジ−エチルエーテル、ポリ(エチレングリコール)モノブチルエーテル(PEGMBE)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(DEGMBE)並びにプロピレングリコールメチルエーテルアセテート。そのような化合物の市販の例としては、CARBITOL(商標)及びDOWANOL(商標)製品群におけるDow P−series及びE−seriesのグリコールエーテル(Dow Chemical Company、ミッドランド、ミシガン州、米国)が挙げられる。
【0102】
添加剤(例えば、フィルム形成剤)としての用途に適切なケトン又はケトアルコールの例は、次の群より選択される少なくとも1種を含むことができる:メチルエチルケトン及びジアセトンアルコール。エーテルの例は、テトラヒドロフラン及びジオキサンの少なくとも1つを含み、またエステルの例は、乳酸エチル、エチレンカーボネート及びプロピレンカーボネートの少なくとも1つを含む。
【0103】
この開示に有用なフィルム形成剤は、少なくとも1種の界面活性剤も含むことができる。界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、両性又は非イオン性となることができ、本発明の分散体(例えばインク組成物)の約0.005〜約2%の水準で用いることができる。有用な界面活性剤の例は、米国特許第5,324,349号;米国特許第4,156,616号;及び米国特許第5,279,654号に開示されている界面活性剤及び他の多くの界面活性剤を含むことができ、これらの文献は参照により本明細書に完全に取り込まれる。市販の界面活性剤としては、SURFYNOL(商標)及びDYNOL(商標)(Air Products and Chemicals, Inc.、アレンタウン、ペンシルベニア州、米国);ZONYL(商標)界面活性剤(DuPont);及びFLUORADS(商標)界面活性剤(現在はNOVEC(商標))(3M)が挙げられる。シリコン界面活性剤の例は、BYK界面活性剤(BYK−Chemie)及びSILWET(商標)界面活性剤(Crompton Corp)である。市販のフッ素化界面活性剤は、ZONYLS(商標)界面活性剤(DuPont);及びFLUORADS(商標)(現在はNOVEC(商標))界面活性剤(3M)を含むことができ、これらは単独で又は他の界面活性剤と組み合わせて用いることができる。
【0104】
フィルム形成剤の組合せを用いることもできる。フィルム形成剤を、所望のフィルム形成特性を与えるために選択することができる(特に粘度変性剤、表面張力変性剤)。これは、本開示の分散体を、発光ディスプレイ、固体照明、光起電セル及び薄膜トランジスタを含む広範な用途で、電子デバイス製造業者に採用させることを可能とする。
【0105】
デバイス100は、アノード層110又はカソード層150に隣接することができる支持体又は基材(図示していない)を含むことができる。非常に多くの場合、支持体は、アノード層110に隣接する。支持体は、フレキシブル又は硬質であってよく、また有機又は無機であってよい。一般的に、ガラス又はフレキシブル有機フィルムを、支持体として用いる(例えば、フレキシブル有機フィルムは、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレン−2,6−ジカルボキシレート)及びポリスルホン)。アノード層110は、カソード層150に比べて、ホールの注入がより効率的である電極を有する。このアノードは、金属、混合金属、合金、金属酸化物又は混合酸化物を含有する材料を含むことができる。適切な材料は、次からなる群より選択される少なくとも1種を含む:第二族元素(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、第11族元素、第4、5及び6族元素並びに第8〜10族遷移元素の混合酸化物(IUPAC番号システムを全体を通じて用いる。周期表からの族は、左から右へと1〜18として番号付けされる(CRC Handbook of Chemistry and Physics, 81
st Edition, 2000))。アノード層110が光伝達性であれば、第12、13及び14族の元素の混合酸化物、例えばインジウム−スズ−酸化物を用いることもできる。ここで用いる場合、語句「混合酸化物」とは、第2族の元素、又は第12、13若しくは14族元素から選択される2以上の異なるカチオンを有する酸化物をいう。アノード層110用の材料のいくつかの非限定的な特定の例は、インジウム−スズ−酸化物(ITO)、アルミニウム−スズ−酸化物、ドープ化酸化亜鉛、金、銀、銅及びニッケルからなる群より選択される少なくとも1種を含む。アノードは、伝導性有機材料、例えばポリアニリン、ポリチオフェン又はポリピロールを含むこともできる。
【0106】
アノード層110を、化学気相成長プロセス若しくは物理気相成長プロセス又はスピンキャストプロセスによって形成することができる。化学気相成長を、プラズマ強化化学気相成長(PECVD)又は有機金属化学気相成長(MOCVD)として行うことができる。物理気相成長は、イオンビームスパッタリングを含む、あらゆる形態のスパッタリング及び電子ビーム蒸着及び抵抗蒸着を含むことができる。物理気相成長の特定の形態は、RFマグネトロンスパッタリング及び誘導結合プラズマ物理気相成長(IMP−PVD)を含む。これらの堆積技術は、半導体製造分野で周知である。
【0107】
アノード層110をリソグラフィー操作の間にパターン化することができる。このパターンは、望むように変えることができる。例えば、第一の電気接触層材料を適用する前に、パターン化したマスク又はレジストを、第一の柔軟な複合バリア構造に配置して、この層をパターンに形成することができる。あるいは、この層を、全面層として適用することができ(ブランケット堆積とも呼ばれる)、そして後に、例えばパターン化したレジスト層及びウェット化学エッチング技術又はドライエッチング技術を用いて、この層をパターン化することができる。パターン化するための本分野で周知の他のプロセスを用いることもできる。電子デバイスを配列内に置く場合、アノード層110は、実質的に同じ方向に伸びる、実質的に平行な長さを有するストリップに、通常は形成される。
【0108】
ホール注入層120は、本開示の分散体を用いることによって形成されるフィルムを含む。このホール注入層120は、通常、当業者に周知の様々な技術を用いて基材にキャスト成形される。典型的なキャスト技術としては、例えば特に、溶液キャスト、ドロップキャスト(drop casting)、カーテンキャスト(curtain casting)、スピンコーティング、スクリーン印刷、インクジェット印刷、グラビア印刷、スプレーコーティングが挙げられる。ホール注入層をスピンコーティングによって適用する場合、分散体の粘度及び固形分並びにスピン速度を用いて、生成フィルムの厚みを調整することができる。スピンコーティングによって適用されるフィルムは、通常連続的であり、かつパターンが存在しない。あるいは、ホール注入層を、多数の堆積プロセスを用いてパターン化することができ、例えば米国特許第6,087,196号(これは参照により本明細書に完全に組み込まれる)に記載されているようなインクジェット印刷を用いてパターン化することができる。
【0109】
エレクトロルミネセンス(EL)層130は、通常は共役ポリマーとなることができ、例えばポリ(パラフェニレンビニレン)(PPVと省略される)、ポリフルオレン、スピロポリフルオレン又は他のELポリマー材料となることができる。EL層は、比較的小さな分子の蛍光性染料又はりん光性染料を含むこともでき、例えば8−ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq
3)及びトリス(2−(4−トリル)フェニルピリジン)イリジウム(III)、デンドリマー、上記材料を含む配合物及びこれらの組合せを含むこともできる。EL層は、無機量子ドットを含むことができ、又は無機量子ドットを有する半導体性有機材料の配合体を含むこともできる。選択される特定の材料は、特定の用途、操作中に用いられる電位又は他の因子に依存する場合がある。有機エレクトロルミネセンス材料を有するEL層130を、スピンコーティング、キャスト及び印刷等の任意の従来技術によって、溶液から適用することができる。有機EL材料を、材料の性質に応じて気相成長プロセスにより直接的に適用することができる。他の1つの実施態様では、ELポリマー前駆体を適用し、そして熱又は適切な外部エネルギー源(例えば、可視光放射又はUV放射)によって、ポリマーに転化することができる。
【0110】
随意の層140は、電子注入/電子輸送の両方を促進する機能を有し、かつ層界面でのクエンチング反応を防ぐ閉じ込め層として機能することもできる。すなわち、層140は、電子移動度を高めることができ、かつ層130及び150が直接接触する場合に起こる場合があるクエンチング反応の可能性を低下させることができる。任意の層140に関する材料の例は、金属キレート化オキシノイド化合物(例えば、Alq
3等);フェナントロリン系化合物(例えば、2,9−ジメチル4,7−ジフェニル1,10−フェナントロリン(DDPA)、4,7−ジフェニル1,10−フェナントロリン(DPA)等);アゾール化合物(例えば、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(PBD等)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−t−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(TAZ等));他の類似の化合物;又はこれらのあらゆる1以上の組合せからなる群より選択される少なくとも1種を含む。あるいは、随意の層140は、無機となることができ、かつ特にBaO、CaO、LiF、CsF、NaCl、Li
2O、これらの混合物を含有することができる。
【0111】
カソード層150は、電子又は負電荷キャリアを注入するのに特に効率的な電極を含む。カソード層150は、第一の電気的接触層(この場合には、アノード層110)より低い仕事関数を有する任意の適切な金属又は非金属を有することができる。ここで用いる場合、用語「より低い仕事関数」は、4.4eV以下の仕事関数を有する材料を意味することを意図している。ここで用いる場合、「より高い仕事関数」は、少なくとも4.4eVの仕事関数を有する材料を意味することを意図している。
【0112】
カソード層用の材料を、第1族のアルカリ金属(例えば、Li、Na、K、Rb、Cs)、第2族金属(例えば、Mg、Ca、Ba等)、第12族金属、ランタニド(例えば、Ce、Sm、Eu等)、及びアクチノイド(例えば、Th、U等)から選択することができる。材料、例えばアルミニウム、インジウム、イットリウム及びこれらの組合せも用いることができる。カソード層150用の特定の非限定的な材料の例は、カルシウム、バリウム、リチウム、セリウム、セシウム、ユウロピウム、ルビジウム、イットリウム、マグネシウム、サマリウム及び合金並びにこれらの組合せの少なくとも1種を含む。反応性を有する低い仕事関数の金属、例えば、Ca、Ba又はLiを用いる場合、より不活性な金属、例えば銀又はアルミニウムのオーバーコートを用いて、反応性のある金属を保護し、かつカソードの抵抗を低下させることができる。
【0113】
カソード層150を、化学気相成長プロセス又は物理気相成長プロセスによって通常形成する。一般的に、カソード層は、アノード層110に関して上述したように、パターン化されるであろう。デバイス100が配列内に位置する場合、カソード層150を、実質的に平行なストリップにパターン化することができ、カソード層のストリップの長さは、実質的に同じ方向に延び、かつアノード層のストリップの長さと垂直に延びる。ピクセルと呼ばれる電子的要素を、交差する点で形成する(ここで、配列を平面又は上部から見た場合、アノード層のストリップは、カソード層のストリップと交差する)。上部発光デバイス(top emitting device)に関して、透明導体、例えばITOの比較的厚い層と組み合わされた低仕事関数材料の非常に薄い層、例えばCa及びBaの非常に薄い層を、透明カソードとして用いることができる。上部発光デバイスは、比較的大きな開口比を用いることができるので、アクティブマトリクスディスプレイにおいて有益である。そのようなデバイスの例は、次の文献に記載されており、これは参照により本明細書に完全に組み込まれる:“Integration of Organic LED’s and Amorphous Si TFT’s onto Flexible and Lightweight Metal Foil Substrates”; by C. C. Wu et al; IEEE Electron Device Letters, Vol. 18, No. 12, December 1997。
【0114】
他の実施態様では、追加の層を有機電子デバイス内に存在させることができる。例えば、ホール注入層120とEL層130との間の層(図示されてない)は、正電荷の輸送、これらの層のエネルギー準位の調和、多くの機能の中でも保護層としての機能を促進することができる。同様に、EL層130とカソード層150との間の追加の層(図示されていない)が、負電荷の輸送、これらの層のエネルギー準位の調和、多くの機能の中でも保護層としての機能を促進することができる。本分野で既知の層も含めることができる。加えて、上述のあらゆる層を、2以上の層で作製することができる。あるいは、無機アノード層110、ホール注入層120、EL層130及びカソード層150のいくつか又は全てを、表面処理して、電荷担体の輸送効率を向上させることができる。各構成層の材料の選択を、高いデバイス効率及びより長いデバイス寿命をデバイスに与えるという目的と、製造コスト、製造の複雑性又は可能性のある他の要因とを平衡させることによって決定することができる。
【0115】
異なる層は、任意の適切な厚みを有する場合がある。無機アノード層110は、通常約500nm以下、例えば約10〜200nm;ホール注入層120は、通常300nm以下、例えば約30〜200nm;EL層130は、通常約1000nm以下、例えば約30〜500nm;随意の層140は、通常約100nm、例えば約20〜80nm:カソード層150は、通常約300nm以下であり、例えば約1〜150nmである。アノード層110又はカソード層150は、少なくとも一定の光を透過させる必要があり、そのような層の厚みは、約150nmを超えない場合がある。
【0116】
電子デバイスの用途に応じて、EL層130は、信号によって作動する発光層となることができ(例えば、発光ダイオード中で)、又は放射光に応答し、印加電位を用いて又は印加電位を用いないで信号を発生させる材料の層となることができる(例えば、検知器又は光起電セル)。発光材料を、添加剤を用いて又は用いないで、他の材料のマトリクス中に分散させることができ、そして層単独で形成することができる。EL層130は、一般的に、約30〜500nmの範囲の厚みを有する。
【0117】
この開示の水系分散体を含有する1以上の層を有することによって利益を受ける場合がある他の有機電子デバイスの例は、次のものを含む:(1)電気エネルギーを放射光に変えるデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、又はダイオードレーザー)、(2)電子プロセスによって信号を検知するデバイス(例えば、光検知器(例えば、光伝導セル、フォトレジスタ、光スイッチ、フォトトランジスタ、光電管)IR検知器)、(3)放射光を電気エネルギーに変える装置(例えば、光起電デバイス又は太陽電池)、及び(4)1以上の有機半導体層を有する1以上の電子部品(例えば、トランジスタ又はダイオード)を含む装置。
【0118】
有機発光ダイオード(OLED)は、カソード150層及びアノード層110から、それぞれ電子及びホールを、EL層130に注入し、そしてそのポリマーに負及び正に帯電したポーラロンを形成する。これらのポーラロンは、印加電場の影響下で、反対に荷電したポーラロンを有する励起子を形成しながら移動し、放射再結合を経る。通常約12ボルト未満であり、そして多くの例では約5ボルト以下である、アノードとカソードとの十分な電位差を、デバイスに印加することができる。実際の電位差は、大きな電子部品の中でのデバイスの用途に依存する場合がある。多くの実施態様において、電子デバイスの使用中に、アノード層110を正の電圧にバイアスし、カソード層150を、実質的に接地電位又は0ボルトにする。図示していない電池又は他の電源を、回路の一部として電子デバイスに電気接続する場合がある。
【0119】
2以上の異なる発光材料を用いるフルカラーディスプレイ又はエリアカラーディスプレイの製造は、各発光材料が異なるカソード材料を用いてその性能を最適化する場合に、複雑化する。ディスプレイ機器は、通常には光を放出する複数のピクセルを有する。マルチカラーデバイスでは、少なくとも2つの異なる種類のピクセル(サブピクセルと呼ばれることがある)が、異なる色の光を放射する。サブピクセルを異なる発光材料を用いて構築する。全ての発光体に良好なデバイス性能を与える単一のカソード材料を与えることが望ましい。これは、デバイスの製造の複雑さを最小化する。ホール注入層を、この開示の実施態様による水系分散体から作製する場合、マルチカラーデバイスで、共通のカソードを使えることが分かった。このカソードを上述の任意の材料から作製することができ、これは、バリウムに、これよりも不活性な金属、例えば銀又はアルミニウムでオーバーコートしたものであってよい。
【0120】
伝導性ポリマー、例えばポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)、並びに少なくとも1種のコロイド形成性ポリマー酸、及び少なくとも1種のフッ素化されていないポリマー酸の水系分散体を含む1以上の層から利益を得ることができる他の有機電子デバイスとしては、次のものがある:(1)電気エネルギーを放射光に変えるデバイス(例えば、発光ダイオード、発光ダイオードディスプレイ、又はダイオードレーザー)、(2)電子プロセスによって信号を検知するデバイス(例えば、光検知器(例えば、光伝導セル、フォトレジスタ、光スイッチ、フォトトランジスタ、光電管)IR検知器)、(3)放射光を電気エネルギーに変える装置(例えば、光起電デバイス又は太陽電池)、及び(4)1以上の有機半導体層を有する1以上の電子部品(例えば、トランジスタ又はダイオード)を含む装置。
【0121】
望ましい場合には、ホール注入層を、水系溶液又は水系溶媒から適用される伝導性ポリマーの層でオーバーコートすることができる。伝導性ポリマーは、電荷輸送を促進し、かつコーティング性を向上させる。適切な伝導性ポリマーの例は、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリアセチレン、ポリチエノチオフェン/ポリスチレンスルホン酸、ポリジオキシチオフェン/ポリスチレンスルホン酸、ポリアニリン−ポリマー−酸−コロイド、PEDOT−ポリマー−酸−コロイド及びこれらの組合せから選択される少なくとも1種を含む。
【0122】
さらなる他の1つの実施態様では、この開示は、本発明の分散体から得られる電極を含む薄膜電界効果トランジスタに関する。薄膜電界効果トランジスタ中の電極としての用途では、伝導性ポリマー及び伝導性ポリマーを分散又は溶解するための液体は、その半導体性ポリマー及びその溶媒と適合する(例えば、ポリマー又は半導体性ポリマーの再溶解を防ぐため)。伝導性ポリマーから作製される薄膜電界効果トランジスタは、約10S/cm超の伝導率を有するべきである。しかし、水溶性ポリマー酸を用いて製造された導電性ポリマーは、通常、約10
−3S/cm以下の範囲で伝導率を与える。それゆえ、この開示の1つの実施態様では、この電極は、少なくとも1種のポリチオフェン、少なくとも1種の多分岐ポリマー及び随意のコロイド形成性フッ素化ポリマースルホン酸を、導電性促進剤と共に、例えば特にナノワイヤー、カーボンナノチューブと共に、有することができる。さらなる他の1つの実施態様では、電極は、ポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)、少なくとも1種の多分岐ポリマー及びコロイド形成性パーフルオロエチレンスルホン酸を、導電性促進剤と共に、例えば特にナノワイヤー、カーボンナノチューブと共に、有する。典型的な組成物を、ゲート電極、ドレイン電極、又はソース電極として薄膜電界効果トランジスタで用いることができる。
【0123】
有機薄膜トランジスタ(OTFT)デバイスでは、電極の仕事関数とチャネル材料のエネルギー準位との差に起因して、ソース電極からチャネル材料への電荷注入が制限されることがあり、これが電極とチャネル材料との接触箇所で顕著な電圧降下をもたらす。結果として、見掛けの電荷移動度は低くなり、そしてOTFTデバイスは、低い電流のみを通過させることができる。OLED中のホール注入層としての用途と同様に、本発明の伝導性ポリマーの薄い層を、OTFTデバイスのソース電極又はドレイン電極と、チャネル材料との間に適用して、エネルギー準位の適合を改良することができ、接触電圧降下を低減させることができ、また電荷注入を改良することができる。結果として、より高い電流及びより高い電荷移動度を、OTFTデバイスで達成することができる。
【0124】
この開示によって用いられる多分岐ポリマー部分を、例えば米国特許第5,587,441号及び米国特許第5,587,446号及びPolym. Sci. Part A Polym. Chem. 36, 955 (1998)、Macromolecules, 29, 1079 (1996)、並びにJ. Polym. Sci. Part A Polym. Chem. 43, 4754, (2005)に開示されたようなプロセスによって、製造することができ(多分岐ホモ−及びランダムコポリマー)、これらの文献は、参照により本明細書に完全に組み込まれる。以下は、原子移動ラジカル重合に基づいて製造した異なる3つの多分岐ポリマーのサンプルであり、これらを本開示の次の例で用いた。
【0125】
これから、本発明を、次の非限定的な例を参照して、より詳細に記載する。次の例は、本発明の特定の実施態様を記載し、添付の特許請求の範囲を決して限定しない。
【実施例】
【0126】
本発明及びその利点を、次の特定の例によってさらに示す。
【0127】
伝導性分散体の粘度を、ARES(商標)応力制御レオメーター(TA Instruments、ニューキャッスル、デラウェア州、米国、以前のRheometric Scientific)を用いて測定した。温度は、循環水槽を用いて25℃(77゜F)で制御した。この雰囲気を、水蒸気で飽和させて、試験中の水の蒸発を最小化させた。クエット構造を用いた;内筒(bob)と外筒(cup)の両方は、チタンで作られていた。内筒は32mmの直径で、33.3mmの長さであった;外筒の直径は、34mmであった。約10mlのサンプルを各実験に用いた。サンプルの装填の後で、このサンプルを、装填の履歴の影響を除くために、100s
−1で5分の前せん断で処理した。15分の遅延の後で、粘度を1〜200s
−1の範囲のせん断速度で測定した。
【0128】
例A:多分岐ポリマーの合成
ポリマー1:下記(実施例の末尾に示す)の経路1に示されるような原子移動ラジカル重合(ATRP)による多分岐ポリ(クロロメチルスチレン)
【0129】
クロロメチルスチレン(Aldrich、塩基性の酸化アルミニウムを通過させて精製したもの)(53.5g、0.35mol、1.0eq)、2,2’−ビピリジン(Aldrich)(18.1g、0.12mol、0.33eq)及びクロロベンゼン(Aldrich)(165mL)を、丸底フラスコに添加した。フラスコをゴム隔膜で封をし、この混合物を20分間窒素で脱ガス化した。Cu(I)Cl(Aldrich)(5.2g、0.052mol、0.15eq)及びCu(II)Cl
2(Aldrich)(0.83g、0.0052mol、0.015eq)を、このフラスコに素早く添加し、この反応物をさらに5分脱ガス化した。ブラウンの反応物混合体を、75℃(167゜F)に22時間加熱した。室温で冷却した後、この反応物を、テトラヒドロフランで希釈し、そして中性の酸化アルミの短いパッドに通過させた。このポリマー溶液を、6体積のメタノールに沈殿させて、収率59%でオフホワイトの綿毛状の粉体を与えた。このポリマーの分子量を、基準としてポリスチレンを用いたテトラヒドロフラン中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって測定してところ、Mw48,743、Mn5394であった。
【0130】
ポリマー2:原子移動ラジカル重合(ATRP)による多分岐ポリ(クロロメチルスチレン)
【0131】
重合を72℃(162゜F)20時間で行ったことを除いて、ポリマー1と同じ比率の試薬を用いて、ポリマー2を20gのクロロメチルスチレン中で調製した。このポリマーを、62%の収率で得た。このポリマーの分子量を、基準としてポリスチレンを用いたテトラヒドロフラン中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって測定してところ、Mw15,077、Mn2900であった。
【0132】
ポリマー3:原子移動ラジカル重合(ATRP)による多分岐ポリ(クロロメチルスチレン)
【0133】
試薬の比率が次の通りであることを除いてポリマー1と同じ方法でポリマー3を調製した:クロロメチルスチレン(2.5g、16.4mmol、1.0eq)、2,2’−ビピリジン(1.69g、10.8mmol、0.66eq)、クロロベンゼン(8.5mL)、Cu(I)Cl(0.535g、5.41mmol、0.33eq)及びCu(II)Cl
2(0.086g、0.541mmol、0.033eq)。この重合を、72℃(162゜F)で18時間行った。このポリマーの分子量を、基準としてポリスチレンを用いたテトラヒドロフラン中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって測定してところ、Mw21,300、Mn3400であった。
【0134】
ポリマー4:下記(実施例の末尾に示す)の経路2に示されるような原子移動ラジカル重合(ATRP)による多分岐ポリ(クロロメチルスチレン−ペンタフルオロスチレン)(PCS/PFS)コポリマー
【0135】
試薬の比率が次の通りであることを除いてポリマー1と同じ方法で、ポリマー4を調製した:クロロメチルスチレン(14.8g、0.097mol、1.0eq)、2,2’−ビピリジン(10.00g、0.064mol、0.66eq)、2,3,4,5,6−ペンタフルオロスチレン(Aldrich、塩基性の酸化アルミニウムを通過させて精製したもの)(37.65g,0.19mol、2eq)、フルオロベンゼン(183mL)、Cu(I)Cl(2.88g、0.029mol、0.33eq)及びCu(II)Cl
2(0.46g、0.0029mol、0.033eq)。この重合を、75℃(167゜F)で16時間行った。31.75g(収率60%)でオフホワイトの綿毛状の粉体として精製したポリマーを得た。このポリマーの分子量を、基準としてポリスチレンを用いたテトラヒドロフラン中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって測定してところ、Mw44,577、Mn12,819であった。CD2Cl2中のこのポリ間の1H NMR及び13C NMRは、60mol%のペンタフルオロスチレンを含むコポリマーを示した。
【0136】
ポリマー5:下記(実施例の末尾に示す)の経路3に示されるような原子移動ラジカル重合(ATRP)による、ポリマー2にから開始する多分岐ブロックコポリマーのポリ(クロロメチルスチレン−スチレン)
【0137】
ポリマー2を、ミクロ開始剤として用いて、スチレンを重合した。重合を、ポリマー1と同じ方法で行った。用いた試薬の量を記載する:ポリマー2(1.00g)、スチレン(20.0g、192mmol)、2,2’−ビピリジン(34.4mg、0.27mmol)、Cu(I)Cl(13.4mg、0.136mmol)及びCu(II)Cl
2(1.8mg、0.0136mmol)。重合を、70℃(158゜F)で24時間行った。このコポリマーを、6.5gのオフホワイトの粉体として得た。ここでは、85wt%がスチレンであった。このポリマーの分子量を、基準としてポリスチレンを用いたテトラヒドロフラン中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって測定してところ、Mw194,915、Mn28,313であった。
図2は、基準としてポリスチレンを用いたテトラヒドロフラン中でのサイズ排除クロマトグラフィーによって測定したポリマー2及びポリマー5の分子量を示している。
【0138】
例B:多分岐ポリマーの水系分散体の合成
例Aの多分岐ポリマーを化学反応させて、官能基Rを導入した。
【0139】
ポリマー6:経路4(実施例の末尾に示す)に示すような多分岐ポリ(クロロメチルスチレン)ポリマー1のスルホン化
【0140】
丸底フラスコにポリマー1(12g、Clの0.079mol)及びジメチルアセトアミド(120ml)を添加した。ポリマー1の溶解後、炭酸カリウム(13.1g、0.095mol)及び4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(20.2g、0.087mol)を添加した。この反応物を90℃(194゜F)で5時間加熱した。室温への冷却後、この混合物を過剰量のアセトンに注いだ。沈殿物を濾別し、アセトンで洗浄し、そして空気乾燥した。無機塩を、大量の水を用いた洗浄により除去した。そして、このポリマーを、1/1(体積で)の水/テトラヒドロフラン(THF)に溶解した。THFを、低圧下で除去した。イオン性の不純物を、イオン交換樹脂:AMBERLITE(商標)IR−120のカチオン交換樹脂(Sigma−Aldrich Chemical Co)及びLEWATIT(商標)MP−62のアニオン交換樹脂(Fluka、Sigma−Aldrich Chemical Co)によって除去し、清浄な水系分散体/溶液を得た。
【0141】
スルホン化の程度を、
1H NMR及び
13C NMRにより決定した。分散体/溶液に関して、残留金属イオンを誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)で、残留アニオンをイオンクロマトグラフィ(IC)で、かつ残留溶媒をヘッドスペースガスクロマトグラフィ(GC)で、解析した。
【0142】
ポリマー7:経路5(実施例の末尾に示す)に示されるような多分岐ポリ(クロロメチルスチレン−ペンタフルオロスチレン)(PCS/PFS)コポリマーであるポリマー4の
スルホン化【0143】
ポリマー4(16g)を120mlのジメチルアセトアミド及び100mlのトルエンに溶解した。この溶液に、炭酸カリウム(17.5g、0.126mol)及び4−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム塩(26.9g、0.116mol)を添加した。反応フラスコは、ディーンスタークトラップを備えていた。この反応物を、130℃(266゜F)で24時間加熱した。室温への冷却後、この混合物を過剰のアセトンに注いだ。沈殿物を濾別し、アセトンで洗浄し、そして空気乾燥した。無機塩を、大量の水を用いた洗浄により除去した。そして、このポリマーを、1/1(体積で)の水/テトラヒドロフラン(THF)に溶解した。THFを、低い圧力の下で除去した。イオン性の不純物を、メタノールの存在下で、イオン交換樹脂:AMBERLITE(商標)IR−120のカチオン交換樹脂(Sigma−Aldrich Chemical Co)及びLEWATIT(商標)MP−62のアニオン交換樹脂(Fluka、Sigma−Aldrich Chemical Co)によって除去した。そして、メタノールを減圧下で除去して、清浄な水系分散体/溶液を得た。
【0144】
スルホン化の程度を、
1H NMR及び
13C NMRにより決定した。分散体/溶液に関して、残留金属イオンを誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)で、残留アニオンをイオンクロマトグラフィ(IC)で、かつ残留溶媒をヘッドスペースガスクロマトグラフィ(GC)で、解析した。解決結果を以下に示す。残留カチオン:Al(<1ppm)、Ba(<1ppm)、Ca(<10ppm)、Cr(<1ppm),Fe(<1ppm)、Mg(<1ppm)、Mn(<1ppm)、Ni(<1ppm)、Zn(<1ppm)、Na(3ppm)、K(3ppm);残留アニオン:塩化物(20.1ppm)、硫酸塩(検知せず)、フッ素化物(0.6ppm)、酢酸塩(18.1ppm);及び残留溶媒:メタノール(121ppm),アセトン(559ppm),THF(166ppm)。
【0145】
ポリマー8:経路6(実施例の末尾に示す)に示すような多分岐ブロックコポリマーのポリ(クロロメチルスチレン−スチレン)ポリマー5のスルホン化
【0146】
ポリマー5を、丸底フラスコ中で50mlの脱水ジクロロエタンに溶解した。このポリマー溶液を50℃(122゜F)に加熱した。別個のフラスコで、アセチル硫酸を、脱水ジクロロエタン中で、0℃(32゜F)で、その場で調製した。無水酢酸(0.94g、9.6mmol)を、10mlのジクロロエタンに溶解し、そしてアイスバス中で0℃(32゜F)まで冷却した。この低温溶液に、濃縮硫酸(0.98g、9.6mmol)を添加した。5分攪拌後、この生成低温アセチル硫酸溶液を、強攪拌の下でポリマー溶液に50℃で添加した。この反応物を50℃(122゜F)で5時間加熱した。この間、ゲル状のライトブラウンの沈殿物が形成した。室温への冷却後、溶媒をデカンテーションにより除去し、そして沈殿ポリマーを濾別し、水洗浄し、そして乾燥させた。このポリマーを、1/1(体積で)水/メタノールに溶解した。メタノールを低圧下で除去した。イオン交換樹脂:AMBERLITE(商標)IR−120のカチオン交換樹脂(Sigma−Aldrich Chemical Co)及びLEWATIT(商標)MP−62のアニオン交換樹脂(Fluka、Sigma−Aldrich Chemical Co)によって除去し、清浄な水系分散体/溶液を得た。スルホン化の程度を、
1H NMR及び
13C NMRにより決定した。分散体/溶液に関して、残留金属イオンを誘導結合プラズマ質量分析(ICP−MS)で、残留アニオンをイオンクロマトグラフィ(IC)で、かつ残留溶媒をヘッドスペースガスクロマトグラフィ(GC)で、解析した。
【0147】
例C:この開示の伝導性ポリマー分散体の合成
一般的な手順を用いて、この開示の伝導性ポリマー分散体を合成した。
【0148】
伝導性ポリマー分散体の合成のために、全ての例で3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)又はチエノ[3,4−b]チオフェンを、モノマーとして用いた。丸底フラスコに、必要な量のEDOT、水及びポリマー溶液を添加した。この混合物を5分間攪拌した。別個のボトルに硫酸(第二)鉄及び水を添加した。過硫酸ナトリウムが重合時に存在する場合には、他の1つの別個のボトルに過硫酸ナトリウム及び水を添加した。そして硫酸(第二)鉄の水系溶液を、強攪拌下のEDOT/ポリマー混合物に添加し、続いて当てはまる場合には過硫酸ナトリウムを添加した。重合を、室温で指定された時間で行い、そしてイオン交換樹脂(IEX)を添加することによって停止させた。濾過による樹脂の除去後、必要な場合には黒い分散体を超音波分解し。そして0.45ミクロンのPVDFフィルターを通すことで濾過した。重合の結果を、表1に要約する。
【0149】
【表1】
【0150】
例D:比較の伝導性分散体の合成
比較の伝導性ポリマー分散体C−C1(ポリ(チエノ[3,4−b]チオフェン)(PTT)/NAFION(商標)18:1)
【0151】
1700グラムの脱イオン水を、3Lのジャケット付き反応器に添加した。600グラムの水中の12%のNAFION(商標)(EW1100、DuPont Company、ウィルミントン、デラウエア州、米国)を、この反応器に添加し、オーバーヘッド攪拌器で混合した。このジャケット付きフラスコを調節して、22℃(72゜F)の反応温度で維持した。350グラムの脱イオン水に溶解した17.7グラム(34.2mmol)のFe
2(SO
4)
3*H
2Oと、4グラム(28.6mmol)のチエノ[3,4−b]チオフェン(TT)を、反応器に別個に共に供給した。NAFION(商標)対TTの添加時の重量比は18:1であた。反応物は、20分以内に、ライトグリーンからエメラルドグリーン、ダークブルーへと変化した。重合を、モノマー及び酸化剤の導入後、4時間継続させた。そして、94.0グラムのAMBERLITE(商標)IR−120のカチオン交換樹脂(Sigma−Aldrich Chemical Co)及び94.0グラムのLEWATIT(商標)MP−62のアニオン交換樹脂(Fluka、Sigma−Aldrich Chemical Co)を含有する4LのNALGENE(商標)ボトルに、反応器の内容物を添加することによって、生成分散体を精製した。この分散体を、10μm、5μm、0.65μm及び0.45μmの気孔サイズのフィルターによって、順次的に濾過した。この分散体を、残留金属イオンに関してICP−MSによって解析し、次のイオンを検出した:Al(<1ppm);Ba(<1ppm);Ca(<20ppm);Cr(<1ppm),Fe(37ppm);Mg(<1ppm);Mn(<1ppm);Ni(<1 ppm);Zn(<1ppm);Na(<=6ppm);K(<1ppm)。この最終の分散体は、2.86%の固形分、2.1mPa.sの粘度、2.4のpHを有する。
【0152】
比較の伝導性ポリマー分散体C−C2(PEDOT/NAFION 18:1)の合成
【0153】
伝導性ポリマー分散体C−C2を、チエノ[3,4−b]チオフェン(TT)の代わりに3,4−エチレンジオキシチオフェン(EDOT)を用いたことを除いて、伝導性分散体C−C1と同様に作製した。最終の分散体は、約3wt%の固形分、添加時のNafion対PEDOT重量比18:1を有した。
【0154】
例E:清浄化したAMBERLITE(商標)IR−120−Na及びAMBERLITE(商標)IR−120−NH
4樹脂の調製。
清浄化したAMBERLITE(商標)IR−120−Na交換樹脂の調製
【0155】
500mlのプラスチックボトルに、202gのイオン交換樹脂、AMBERLITE(商標)IR−120のナトリウム型、及び300mlのエレクトロニクスグレードの水を投入した(AMBERLITE(商標)は、イオン交換樹脂に関して米国のペンシルベニア州フィラデルフィアのRohm & Haas Companyによって米国政府に登録された商標である)。この材料投入物を、攪拌しないで、20〜24℃(68〜75゜F)で、1〜4時間浸して、その後、この樹脂を60メッシュのステンレス鋼スクリーンで収集した。この洗浄工程を、合計で5回、室温で繰り返し、続いてこの混合物を70℃(158゜F)で2時間加熱したことを除いて、同じ量の材料を用いてさらに3回洗浄した。この樹脂を最終的に60メッシュのスクリーンで収集して、清浄化した55.2%の固体を有するIR120−Naを得た。
【0156】
清浄化したAMBERLITE(商標)IR−120−NH
4交換樹脂の調製
【0157】
500mlのプラスチックボトルに、100gのイオン交換樹脂、AMBERLITE(商標)IR−120の水素型、300mlのエレクトロニクスグレードの水及び100mLの高濃度(28〜30%)の水酸化アンモニウムを投入した。この材料投入物を、容器回転器(jar roller)で、20〜24℃(68〜75゜F)で、16時間混合し、その後、この樹脂を60メッシュのステンレス鋼スクリーンで収集した。そして、この樹脂を、攪拌しないで、1〜4時間、300mlのエレクトロニクスグレードの水中に浸すことによって洗浄した。この洗浄工程を、合計で5回、室温で繰り返し、続いて、この混合物を70℃(158゜F)で2時間加熱したことを除いて、同じ量の材料を用いてさらに3回洗浄した。この樹脂を最終的に60メッシュのスクリーンで収集して、清浄化した56.9%の固体を有するIR120−NH
4を得た。
【0158】
フィルムの濡れ性を特性化するために、スピンコーティング法を用いて、伝導性分散体を基材(例えば、Colorado Concept Coatings LLCが供給する1”×1”のITO/ガラス)に堆積させた。50〜100nmの膜厚を達成するために特定のスピン速度を選択した。Kruss Drop Shape Analysis SystemモデルDSA100を用いて、検討しているフィルム上の液体(例えば、水又は有機溶媒)液滴の接触角を得た。この装置は、特定の時間間隔(60秒)にわたって広がる液滴を記録する。液滴形状の解析ソフトは、この60秒の時間間隔にわたって円形フィッティング法を用いて接触角を計算する。フィルムの表面エネルギーを、2成分のファウクス(Flowkes)理論モデルを用いて計算した。ファウクスの理論は、固体と液体との接着エネルギーが、2つの相の分散成分の相互作用と、2つの相の非分散(極性)成分の相互作用とに分離できると想定する。分散成分の表面エネルギーσ
sDを、フィルムと、分散成分(例えば、ジヨードメタン)のみを有する液体との接触角を測定することによって決定した(σ
L=σ
LD =50.8mN/m)。後に、分散成分及び非分散(極性)成分(例えば、水)の両方を有する第二の液体とのフィルムの接触角を試験した(σ
LP =46.4mN/m,σ
LD =26.4mN/m)。σ
SPを次の式によって計算できる:(σ
LD)
1/2(σ
SD)
1/2+(σ
LP)
1/2(σ
sP)
1/2=σ
L(cosθ+1)/2。
【0159】
図1に示すようなOLEDデバイスの構造において、エレクトロルミネセンス(EL)層を、溶液法によって、ホール注入層(HIL)の上部に堆積させることができる。デバイス性能及びフィルム形成を向上させるために、HILフィルム基材上にEL材料の濡れを与えることが望ましい。濡れは、液体及び表面との接触として定義される。液体が高い表面張力(強い内部結合)を有する場合、これは表面に液滴を形成する。しかし、低い表面張力を有する液体は、比較的大きな領域にわたって広がる(表面への結合)。他方で、固体表面が高い表面エネルギー(又は表面張力)を有する場合、液滴は表面に広がる、又は濡れるであろう。固体表面が低い表面エネルギーを有する場合、液滴が形成されるであろう。この現象は、通常、界面エネルギーの最小化の結果である。濡れ性を決定する主な測定は、接触角の測定である。これは、固体表面への液滴表面の角度を測定する。濡れを起こすために、堆積させる液体の表面張力は、接触している表面の表面張力よりも低い必要がある。それゆえ、HILフィルムの固体表面エネルギーを測定するのが有用である。OLEDデバイスで用いられる多くのEL材料が、有機溶媒、例えばキシレン又はトルエンを運搬液体として用いて、これは18〜30mN/mの範囲の液体表面張力を有するので、HILフィルムの固体表面は、良好な濡れを得るために、30mN/m超の表面エネルギーを有することが望ましい。それゆえ、フィルムが30mN/m超の固体表面エネルギーを有する場合、これは「濡れやすいフィルム」として特徴付けられる。同様に、フィルムが30mN/m未満の固体表面エネルギーを有する場合、これは「濡れにくいフィルム」として特徴付けられる。比較の伝道性分散体C−C1は、44.5度のトルエン接触角、並びにσ
sP =22.4mN/m,σ
sD =2.1mN/mのフィルム表面エネルギー及びσ
s =σ
sP+σ
sD =24.5mN/mの全体フィルム表面エネルギーを有していた。同様に、比較の伝導性分散体C−C2は、30mN/m未満の全体フィルム表面エネルギーを有していた。それゆえ、比較の伝導性分散体は、「濡れにくいフィルム」であった。対照的に、この開示の伝導性分散体I−A、I−B、I−C及びI−Dの表面エネルギーは、全て50mN/m超であった。この比較の伝導性分散体のフィルムは、「濡れやすい」フィルムであった。
【0160】
抵抗試験
これら分散体からの伝導性ポリマーキャストフィルムの抵抗を、ガラス基材上のITO櫛型電極を用いて測定した。有効な電極長さは15cmであり、櫛の間隔は20μmであった。分散体を、0.45μmの親水性PVDFフィルターで濾過して、1000rpmのスピン速度で1分間、抵抗測定用のITO櫛型基材上にスピンコーティングした。スピンコーティングの前に、ITO基材を、UVOCZ装置のUV−オゾン処理で清浄化した。そしてスピンコーティングしたフィルムを、窒素充填したグローブボックスに移し、そしてKeithley 2400 SourceMeter及び社内で開発したLabVIEWプログラムを用いるコンピュータと接続した自動スイッチを用いて、抵抗を測定した。そして、このフィルムを、窒素充填したグローブボックス内で、180℃(356゜F)のホットプレート上で、15分間アニールし、そして抵抗を再度測定した。アニール前後の抵抗の比率を、フィルム抵抗の安定性を評価する方法として用いた。この比率が30未満の場合、これを「良好」と示す。この比率が30より大きい場合、これを「粗悪」として示す。表は、この開示の伝導性ポリマー分散体からのフィルム、及び比較の伝導性ポリマー分散体のフィルムの抵抗データを要約した。
【0161】
【表2】
【0162】
上記の表2から分かるように、この開示の多分岐ポリマーを含有している伝導性分散体は、その多分岐ポリマーを含有していない比較の伝導性ポリマー分散体(C−C1及びC−C2)と比較して、向上した抵抗安定性を示した。
【0163】
例H:デバイスの試験
10〜15Ω/□の表面抵抗を有するパターン化したITO基材(Colorado Concept Coatings LLC)を用いて、OLEDデバイスを作製した。ITO基材を、脱イオン水、洗剤、メタノール及びアセトンの組合せによって清浄化した。そして、ITO基材を、SPI Prep IIプラズマエッチング装置でのO
2プラズマを用いて約10分間、清浄化し、そして伝導性ポリマー分散体でコーティングする準備をした。スピンコーティングの前に、全ての伝導性ポリマー分散体を0.45μmの親水性PVDFフィルターで濾過した。清浄化したITO基材を、濾過した伝導性ポリマー分散体でスピンコーティングして、約50〜100nmのフィルム厚みを得た。スピンの長さを、Laurell Model WS−400−N6PPスピン装置で、1〜3分にプログラムした。均一なフィルムを得た。そしてコーティングされたITO基材を、15分間、窒素充填したグローブボックス中のホットプレート上で、180℃(356゜F)でアニールした。アニール後、架橋性ポリフルオレン(Sumitomo Chemical Company)を含む層の約10〜20nm厚みの中間層ポリマーを、トルエン又はキシレン溶液からスピンコーティングした。そしてこのサンプルを、N
2保護下のホットプレート上で、30〜60分間、180〜200℃(356〜392゜F)でベークした。この後、約50〜90nm厚みのポリフルオレンを含む層の青色発光ポリマー(Sumitomo Chemical Company)を、トルエン又はキシレン溶液からスピンコーティングした。そしてこのサンプルを、N
2保護下のホットプレート上で、10分間、130℃でベークした。あるいは緑色OLEDデバイスを作製した。この伝導性ポリマー層のアニールの後で、約80nm厚みのポリフルオレンを含む層のLUMATION(商標)Green 1304 LEP 発光ポリマー(Sumitomo Chemical Company)を、トルエン溶液からスピンコーティングした。そしてこのサンプルを、N
2保護下のホットプレート上で、20分間、130℃(266゜F)でベークした。そしてこのサンプルを、窒素雰囲気グローブボックス内にある真空蒸発器のチャンバーに移した。5nm厚みのBa層を、1〜2×10
−6mBar未満で、約1.5Å/sの速度でマスクを通じて真空堆積させ、そして他の1つの120nm厚みのAg層を、3〜4Å/sの堆積速度でBa層の上部に真空堆積させ、それによりOLEDデバイスを形成した。そして、このデバイスを、ガラスカバー蓋及びUV硬化エポキシでカプセル化した。このデバイスの能動面積は、約6.2mm
2であった。そして、OLEDデバイスを、室温の空気中での試験のために、グローブボックスから移動させた。厚みを、KLA Tencor P−15 Profilerで測定した。電流−電圧特性を、Keithley 2400 SourceMeterで測定した。このデバイスのエレクトロルミネセンス(EL)スペクトルを、Oriel InstaSpec IV CCDカメラを用いて測定した。これは、参照により本明細書に完全に組み込まれる米国特許出願公開第20060076557号の
図3に示されている。EL放射の出力を、Newport 2835−C多機能光学メーター及びキャリブレーションされたSiフォトダイオードを用いて測定した。輝度(Brightness)を、ELの直流順電圧の出力及びこのデバイスのELスペクトルを用いて計算した。ここでは、EL放射のランベルタン分布(Lambertian distribution)を想定し、Photo Research PR650比色計で検証した。OLEDデバイスの寿命を、室温での定電流駆動条件の下で、ELIPSE(商標)OLED Lifetime Tester(Cambridge Display Technology)で測定した。駆動電流を、Siフォトダイオードを用いて測定される初期の輝度を達成するのに必要な電流密度に従って設定した。実施例における実験に関して、3000ニトを、青色PLEDデバイスの初期のデバイス輝度として用いて、5000ニトを、緑色OLEDデバイスの初期のデバイス輝度として用いた。デバイスの寿命を、輝度が初期値の50%に達するのにかかる時間として定義した。複数のデバイスを同じ伝導性ポリマー分散体を用いて作製したので、デバイス歩留まりの基準を設計して、特定の伝導性ポリマー分散体から作製したデバイスの一貫性を評価した。デバイス歩留まりは、実験内で作られた複製したデバイスの合計数内で、妥当なデバイス性能を示したデバイス数の%である。これに関して、用語「妥当なデバイス性能」は、次のように定義される:2Cd/A超の電流効率、10時間超の寿命及び10ボルト未満の駆動電圧。比較の伝導性分散体C−C1のデバイス歩留まりは、このフィルムの表面エネルギーが低く、粗悪な濡れ性のフィルムをもたらしたので、33%のみであった。この開示の伝導性分散体のデバイス歩留まりは、比較的良好な濡れ性のフィルムに起因して、100%に近かった。
【0164】
以下は、上記の実施例で特定した合成方法の経路の例である。
【化11】
経路1.原子移動ラジカル重合(ATRP)によるポリマー1:多分岐ポリ(クロロメチルスチレン)の合成
【0165】
【化12】
経路2.原子移動ラジカル重合(ATRP)によるポリマー4:多分岐ポリ(クロロメチルスチレン−ペンタフルオロスチレン)(PCS/PFS)コポリマーの合成
【0166】
【化13】
経路3.原子移動ラジカル重合(ATRP)によるポリマー5:ポリマー2にから開始する多分岐ブロックコポリマーのポリ(クロロメチルスチレン−スチレン)の合成
【0167】
【化14】
経路4.ポリマー6の合成:多分岐ポリ(クロロメチルスチレン)ポリマー1のスルホン化
【0168】
【化15】
経路5.ポリマー7の合成:多分岐ポリ(クロロメチルスチレン−ペンタフルオロスチレン)(PCS/PFS)コポリマーであるポリマー4の
スルホン化
【0169】
【化16】
経路6.ポリマー8の合成:多分岐ブロックコポリマーのポリ(クロロメチルスチレン−スチレン)ポリマー5のスルホン化
【0170】
本発明を、特定の態様又は実施態様に参照して記載したが、当業者は、特許請求の範囲から離れることなく、様々な変更を行うことができ、均等なものを、これらの要素と置換することができると理解されるであろう。加えて、本質的な範囲から離れることなく、多くの変更を行って、特定の状況又は材料を、本発明の教示に適用することができる。それゆえ、本発明を、ここで開示した特定の態様又は実施態様に限定することを意図しておらず、本発明は、添付の特許請求の範囲内に含まれる態様又は実施態様を包含するであろう。