特許第5890341号(P5890341)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890341
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20160308BHJP
   H02J 7/02 20160101ALI20160308BHJP
   H02H 7/18 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   H02J7/00 S
   H02J7/02 H
   H02H7/18
【請求項の数】5
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-35821(P2013-35821)
(22)【出願日】2013年2月26日
(65)【公開番号】特開2014-166060(P2014-166060A)
(43)【公開日】2014年9月8日
【審査請求日】2015年3月3日
(73)【特許権者】
【識別番号】501137636
【氏名又は名称】東芝三菱電機産業システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中野 俊秀
【審査官】 松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−236631(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/118484(WO,A1)
【文献】 特開2005−056654(JP,A)
【文献】 特開2007−236115(JP,A)
【文献】 特開2012−090436(JP,A)
【文献】 特開2001−178009(JP,A)
【文献】 特開2004−022317(JP,A)
【文献】 特開2012−228002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 − 7/36
H02H 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流電源からの直流電力を蓄える蓄電モジュールを備え、
前記蓄電モジュールは、
各々が正極および負極を有し、直列に接続された複数のセルと、
前記複数のセルにそれぞれ並列に接続される、複数の第1の過電圧保護回路と
前記複数のセルにそれぞれ並列に接続される、複数の第2の過電圧保護回路とを含み、
前記複数の第1の過電圧保護回路の各々は、
前記複数のセルのうちの対応するセルの前記正極と前記負極との間に電気的に接続され、第1の導通信号に応答して、非導通状態から導通状態へと移行する第1のスイッチと、
前記正極と前記負極との間の電極間電圧を検出して、前記電極間電圧が所定の第1の基準電圧を上回る場合に、前記第1の導通信号を出力する第1の電圧検出部とを有し、
前記複数の第2の過電圧保護回路の各々は、
前記複数のセルのうちの対応するセルの前記正極と前記負極との間に電気的に接続され、第2の導通信号に応答して、非導通状態から導通状態へと移行する第2のスイッチと、
前記正極と前記負極との間の前記電極間電圧を検出して、前記電極間電圧が所定の第2の基準電圧を上回る場合に、前記第2の導通信号を出力する第2の電圧検出部と、
前記第2のスイッチと直列に接続された分流抵抗とを有し、
前記第1の基準電圧は、前記複数のセルの各々の満充電状態における前記電極間電圧よりも高く設定され、
前記第2の基準電圧は、前記満充電状態における前記電極間電圧よりも高く、かつ前記第1の基準電圧よりも低く設定される、蓄電装置。
【請求項2】
前記蓄電モジュールは、前記複数のセルのうちのいずれかの開放故障に備えて、前記複数のセルに直列に接続された予備のセルをさらに含む、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記蓄電モジュールは、前記複数のセルにそれぞれ並列に接続される、複数の分圧抵抗をさらに含む、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記直流電源は、交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータであって、
前記コンバータと、
前記コンバータからの直流電力および前記蓄電モジュールに蓄えられた直流電力を交流電力に変換して、当該交流電力を負荷に供給可能に構成されたインバータとをさらに備える、請求項1〜のいずれか一項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
警告を発する警告部と、
前記警告部を制御する制御部とをさらに備え、
前記制御部は、前記複数の第1の過電圧保護回路の各々から、前記第1の導通信号の出力の有無を示す信号を受けて、前記信号が、前記複数の第1の過電圧保護回路のうちの少なくとも一つにおける前記第1の導通信号の出力を示す場合に、前記警告を発するように前記警告部を制御する、請求項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
無停電電源装置は、蓄電池または電気二重層キャパシタを蓄電部として備える。蓄電池または電気二重層キャパシタのセル当たりの定格電圧は、たとえば2〜4Vである。多数のセルが直列に接続されることにより、蓄電部の充放電電圧が調整される。直列に接続された複数のセルはモジュールとも呼ばれる。必要な容量を確保するために、複数のモジュールが並列に接続されて蓄電部を構成する。
【0003】
製造ばらつき等の要因に起因して、各セルの静電容量は不均一であり得る。理想的なコンデンサにおける充電電流Iと、電圧Vと、静電容量Cとの間の関係は、I=CdV/dtと表される。直列に接続されるすべてのセルには、等しい充電電流Iが流れる。このため、静電容量の小さいセルの電圧は、静電容量の大きいセルの電圧よりも速く増加する。
【0004】
すべてのセルが耐電圧を上回らないように充電する必要がある。しかし、静電容量の大きいセルの電圧を満充電状態まで充電すると、静電容量の小さいセルの電圧が耐電圧を上回る可能性がある。一方で、静電容量の小さいセルの電圧が耐電圧未満になるように充電すると、静電容量の大きいセルを満充電状態まで充電することができない。
【0005】
上記課題を解決するために、分圧抵抗を用いてセルの電圧を調整する構成が提案されている。たとえば特開2001―178009号公報(特許文献1)が開示するキャパシタ蓄電装置は、複数のキャパシタを複数段に直列接続して構成される。このキャパシタ蓄電装置は、各段のキャパシタと並列に接続された分圧抵抗を備える。分圧抵抗の抵抗値の下限値の設定基準は、キャパシタ蓄電装置の初期充電時における分圧抵抗への分流率が10%以下となることである。また、分圧抵抗の抵抗値の上限値の設定基準は、各キャパシタの漏れ抵抗と分圧抵抗との合成抵抗値が10%以下となることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001―178009号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
電圧の印加により、電極または電解液が劣化し得る。あるいは、電解液は時間の経過に伴って蒸発し得る。これらの要因に起因して、セルの内部抵抗が増加する。この現象をセルの高抵抗化という。セルの高抵抗化が進行すると、そのセルは開放故障に至る可能性がある。開放故障とは、セルの電極間が開放状態となる故障である。開放故障は、たとえば断線または電極の接触不良等により生じる可能性もある。
【0008】
たとえば充電状態が長期間継続されると、一部のセルで高抵抗化が進行し得る。定常状態では、モジュールに印加される電圧は、各セルの抵抗値に比例して分圧される。このため、セルの高抵抗化の進行に伴って、そのセルに印加される電圧が徐々に増加する。したがって、セルに印加される電圧がセルの耐圧を超える可能性がある。
【0009】
一般に蓄電部には多数のセルが含まれる。一例として、蓄電部は、並列に接続された5個のモジュールを備える。各モジュールは、直列に接続された、たとえば250個のセルを含む。250個のセルのうちの1個のセルの高抵抗化が進行した場合、そのセルに耐圧を超える電圧が印加される可能性がある。したがって、セルが過電圧破壊されるおそれがある。あるいは、断線等でセルの開放故障が生じた場合も、そのセルが過電圧破壊されるおそれがある。これにより、そのセルを含むモジュールが役に立たなくなる。1個のモジュールが役に立たなくなると、蓄電部の容量が大きく減少する。残りの4個のモジュールだけでは蓄電部への要求性能を満足できなくなってしまう可能性がある。したがって、一部のセルが役に立たなくなった場合でも、蓄電部全体として容量を維持することが求められる。
【0010】
特許文献1に開示されたキャパシタ蓄電装置では、過電圧保護回路が各セルに並列に接続される。過電圧保護回路によって、定常状態において、高抵抗化が生じたセルに印加される電圧が所定の基準電圧以上となることが防がれる。これにより、高抵抗化が生じたセルが過電圧破壊されることを防止できる。
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示されたキャパシタ蓄電装置では、過渡的な状態(たとえば放電時)において、高抵抗化が生じたセルに耐圧を超える電圧が印加される可能性がある。したがって、高抵抗化が生じたセルの過電圧破壊を防止することができない。
【0012】
本発明の目的は、高抵抗化が生じたセルを過電圧破壊から保護するとともに、一部のセルに高抵抗化が生じた場合でも、蓄電部全体として容量を概ね維持可能な蓄電装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明のある局面に従えば、蓄電装置は、蓄電モジュールを備える。蓄電モジュールは、複数のセルと、複数の第1の過電圧保護回路とを含む。複数のセルは、各々が正極および負極を有し、直列に接続される。複数の第1の過電圧保護回路は、複数のセルにそれぞれ並列に接続される。複数の第1の過電圧保護回路の各々は、第1のスイッチと、第1の電圧検出部と有する。第1のスイッチは、複数のセルのうちの対応するセルの正極と負極との間に電気的に接続され、第1の導通信号に応答して、非導通状態から導通状態へと移行する。第1の電圧検出部は、正極と負極との間の電極間電圧を検出して、電極間電圧が所定の第1の基準電圧を上回る場合に、第1の導通信号を出力する。
【0014】
好ましくは、第1の基準電圧は、複数のセルの各々の満充電状態における電極間電圧よりも高く設定される。
【0015】
好ましくは、蓄電モジュールは、複数の第2の過電圧保護回路をさらに含む。複数の第2の過電圧保護回路は、複数のセルにそれぞれ並列に接続される。複数の第2の過電圧保護回路の各々は、第2の電圧検出部と、分流抵抗と、第2のスイッチとを有する。第2のスイッチは、複数のセルのうちの対応するセルの正極と負極との間に電気的に接続され、第2の導通信号に応答して、非導通状態から導通状態へと移行する。第2の電圧検出部は、正極と負極との間の電極間電圧を検出して、電極間電圧が所定の第2の基準電圧を上回る場合に、第2の導通信号を出力する。分流抵抗は、第2のスイッチと直列に接続される。第2の基準電圧は、満充電状態における電極間電圧よりも高く、かつ第1の基準電圧よりも低く設定される。
【0016】
好ましくは、蓄電モジュールは、複数のセルのうちのいずれかの開放故障に備えて、複数のセルに直列に接続された予備のセルをさらに含む。
【0017】
好ましくは、蓄電モジュールは、複数の分圧抵抗をさらに含む。複数の分圧抵抗は、複数のセルにそれぞれ並列に接続される。
【0018】
好ましくは、直流電源は、交流電源から供給される交流電力を直流電力に変換するコンバータである。蓄電装置は、コンバータと、インバータとをさらに備える。インバータは、コンバータからの直流電力および蓄電モジュールに蓄えられた直流電力を交流電力に変換して、当該交流電力を負荷に供給可能に構成される。
【0019】
好ましくは、蓄電装置は、警告を発する警告部と、警告部を制御する制御回路とをさらに備える。制御回路は、複数の第1の過電圧保護回路の各々から、第1の導通信号の出力の有無を示す信号を受ける。制御回路は、信号が、複数の第1の過電圧保護回路のうちの少なくとも一つにおける第1の導通信号の出力を示す場合に、警告を発するように警告部を制御する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、高抵抗化が生じたセルを過電圧破壊から保護するとともに、一部のセルに高抵抗化が生じた場合でも、蓄電部全体として容量を概ね維持可能な蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態1に係る蓄電装置を概略的に示す回路ブロック図である。
図2図1に示した蓄電部の構成を概略的に示す回路図である。
図3】従来の蓄電装置が備える第2の過電圧保護回路の構成を概略的に示す回路図である。
図4図1に示した蓄電装置が備える第1の過電圧保護回路の構成を概略的に示す回路図である。
図5図3および図4にそれぞれ示した第1および第2の過電圧保護回路における、セルの高抵抗化に伴う電極間電圧の変化を比較するための図である。
図6図2に示した蓄電部の放電を説明するための図である。
図7図3および図4にそれぞれ示した第1および第2の過電圧保護回路において、蓄電部の放電時の電極間電圧の変化を比較するための図である。
図8】蓄電部の放電後における、分圧回路が並列に接続された各セルでの電圧降下を説明するための図である。
図9図2に示した蓄電部において、セルの個数に冗長性を持たせる構成について説明するための図である。
図10図4に示した第1の過電圧保護回路から制御回路への第1の導通信号の伝達を説明するための図である。
図11】本発明の実施の形態2に係る蓄電装置が備える第1および第2の過電圧保護回路の構成を概略的に示す回路ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付して、その説明を繰り返さない。
【0023】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る無停電電源装置の構成を概略的に示す回路ブロック図である。図1を参照して、無停電電源装置(蓄電装置)100は、たとえば常時インバータ給電方式の無停電電源装置である。無停電電源装置100は、蓄電部3と、コンバータ4と、インバータ5と、絶縁トランス6と、制御回路8と、スイッチ91と,無瞬断切替スイッチ(Static Transfer Switch)92と、警告部9とを備える。なお、本発明に係る「蓄電装置」は、蓄電部を備えるのであれば無停電電源装置に特に限定されない。
【0024】
交流電源71,72の各々は交流電力を供給し、たとえば三相交流電源である。交流電源71,72の各々は単相交流電源であってもよい。無停電電源装置100は交流電源72から交流電力を受けて、その交流電力を負荷11に供給する。また、無停電電源装置100は、コンバータ4またはインバータ5に故障が生じた場合でも給電を継続するために、別系統の交流電源71から交流電力を受けることが可能に構成されている。
【0025】
スイッチ91の一方端子は、交流電源71からの交流電圧を受ける。スイッチ91の他方端子は負荷11に電気的に接続される。無瞬断切替スイッチ92は、スイッチ91に並列に接続される。
【0026】
制御回路8は無停電電源装置100を制御する。制御回路8は、たとえばマイクロコンピュータである。コンバータ4は、制御回路8からの制御信号CTRL1に基づいて、交流電源72からの交流電力を直流電力に変換し、その直流電力をインバータ5および蓄電部3に供給する。蓄電部3は、コンバータ4によって生成された直流電力を蓄える。蓄電部3は、たとえばリチウムイオン電池、ニッケル水素電池、もしくは鉛蓄電池などの蓄電池、または電気二重層キャパシタもしくはリチウムイオンキャパシタなどのキャパシタである。インバータ5は、制御回路8からの制御信号CTRL2に基づいて、コンバータ4または蓄電部3からの直流電力を交流電力に変換して、その交流電力を絶縁トランス6に出力する。絶縁トランス6は、インバータ5からの交流電圧を負荷11に伝達する。
【0027】
負荷11は、交流電力を消費する電気機器であれば特に限定されない。負荷11は、たとえばパーソナルコンピュータまたはサーバである。
【0028】
警告部9は、蓄電部3の異常が生じた場合に、制御回路8による制御に基づいて、無停電電源装置100の使用者または管理者に警告を発する。警告を発する方法としては、異常報知灯(図示せず)を点灯させる、警告音を発生させる、または制御回路8の表示画面(図示せず)にメッセージを表示するなどの手法を採用することができる。
【0029】
無停電電源装置100は、インバータ給電モードおよびバイパス給電モードを有する。インバータ給電モードにおいて、コンバータ4は、交流電源72からの交流電力を直流電力に変換して、その直流電力をコンバータ4および蓄電部3に供給する。インバータ5は、コンバータ4または蓄電部3からの直流電力を交流電力に変換して、その交流電力を絶縁トランス6に出力する。スイッチ91,92の各々は非導通状態である。
【0030】
インバータ5またはコンバータ4の故障が生じた場合に、無停電電源装置100は、インバータ給電モードからバイパス給電モードに切り替わる。バイパス給電モードでは、無瞬断切替スイッチ92は、制御回路8による制御に基づいて、非導通状態から導通状態へと移行する。これにより、交流電力を途切れないように負荷11に供給することができる。また、スイッチ91は、制御回路8による制御に基づいて、非導通状態から導通状態へと移行する。無瞬断切替スイッチ92は、スイッチ91が導通状態へと移行した後に、非導通状態へと再び切り替えられる。このように、バイパス給電モードでは、交流電源71からの交流電力が負荷11に直接供給される。一方、コンバータ4およびインバータ5の運転は、制御回路8による制御に基づいて停止される。
【0031】
図2は、図1に示した蓄電部3の構成を概略的に示す回路図である。図2を参照して、蓄電部3は、並列に接続されたn(nは自然数)個のモジュール(蓄電モジュール)21〜2nを備える。モジュール21〜2nの各々は、直列に接続されたm(mは自然数)個のセル1を含む。一例として、m=250、n=5である。各セル1の定格電圧が約2.5Vの場合、各モジュールの定格電圧は約625Vとなる。なお、蓄電部3にはインバータ5(図1参照)も接続されるが、図2では煩雑になるためコンバータ4のみが示されている。
【0032】
以上の構成は、実施の形態1に係る無停電電源装置100に限らず、従来の無停電電源装置でも共通である。従来の無停電電源装置においても、各セルには過電圧保護回路が設けられる。まず従来の蓄電装置が備える過電圧保護回路について説明する。
【0033】
図3は、従来の無停電電源装置が備える分圧回路の構成を概略的に示す回路図である。図3を参照して、セル1は正極T1および負極T2を含む。セル1の正極T1と負極T2との間(電極間)には、分圧抵抗Rと分圧回路20とが並列に接続される。
【0034】
セル1は、コンデンサCと,内部抵抗Raと、漏れ抵抗Rbとを含む等価回路によって表わされる。セル1の電極間に、内部抵抗RaとコンデンサCとが直列に接続される。漏れ抵抗Rbとは、コンデンサCの漏れ電流の大きさに対応する抵抗成分である。漏れ抵抗Rbは、内部抵抗RaとコンデンサCとの直列回路に並列に接続される。
【0035】
コンデンサCに電荷が蓄積されていない初期充電時には、各セル1は、他のセル1との間でのコンデンサCの静電容量の反比(逆数の比)に応じて充電される。言い換えると、静電容量C1のセルの電圧と、静電容量C2のセルの電圧との比は、1/C1:1/C2と表わされる。充電が完了した後の定常状態においても、モジュールには充電電圧が継続して印加される。
【0036】
漏れ抵抗Rbの抵抗値(たとえば1,000Ω)は、内部抵抗Raの抵抗値(たとえば2mΩ)と比べて著しく高い。モジュールの充電状態が長期間継続されると、各セル1の正極T1と負極T2との間の電圧(以下、電極間電圧V2とも称する)は、他のセル1との間での漏れ抵抗Rbの抵抗値の正比に収束する。言い換えると、漏れ抵抗Rb1(図示せず)を有するセルの電極間電圧と、漏れ抵抗Rb2(図示せず)を有する他のセルの電極間電圧とは、Rb1:Rb2で表される比に収束する。
【0037】
製造ばらつき等の要因に起因して、漏れ抵抗Rbの抵抗値は不均一であり得る。このため、漏れ抵抗Rbの抵抗値のばらつきが電極間電圧V2に与える影響を低減するために、分圧抵抗Rがセル1の電極間に並列に接続される。これにより、長期間経過後の各セル1の電極間電圧V2は、各セル1における漏れ抵抗Rbと分圧抵抗Rとの合成抵抗値(Rb×R/(Rb+R))に比例した電圧となる。言い換えると、いずれも図示しないが、漏れ抵抗Rb10および分圧抵抗R10を有するセルの電極間電圧と、漏れ抵抗Rb20および分圧抵抗R20を有する他のセルの電極間電圧との比は、(Rb10×R10/(Rb10+R10)):(Rb20×R20/(Rb20+R20))に収束する。分圧抵抗Rの抵抗値(たとえば100Ω)は、漏れ抵抗Rbの抵抗値(たとえば1,000Ω)よりも1桁程度小さく設定される。このため、漏れ抵抗Rbと分圧抵抗Rとの合成抵抗値は、分圧抵抗Rの抵抗値でほぼ定まる。分圧抵抗Rの抵抗値のばらつきは、漏れ抵抗Rbの抵抗値のばらつきよりも小さい。したがって、電極間電圧V2における漏れ抵抗Rbの抵抗値のばらつきの影響を低減することができる。
【0038】
分圧回路20は、電圧検出部VD2と、分流抵抗R2と、トランジスタ(第2のスイッチ)Q2とを含む。電圧検出部VD2は、セル1の電極間電圧V2を検出する。電圧検出部VD2は、電極間電圧V2を所定の基準電圧E2と比較して、比較結果を示す信号を出力ノードから出力する。基準電圧E2は、公知の基準電圧生成回路(図示せず)により与えられる。セル1の電極間電圧V2は、セル1の満充電状態において最も高い。セル1の放電が進むにつれて電極間電圧V2は減少する。基準電圧E2は、セル1の満充電状態における電極間電圧V2よりも高く設定される。一例として、セル1の満充電状態における電極間電圧V2が2.5Vである場合、基準電圧E2は2.6Vに設定される。
【0039】
トランジスタQ2は、たとえばNチャネルのMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)である。トランジスタQ2のドレインおよびソースは、セル1の電極間に電気的に接続される。トランジスタQ2のゲートは、電圧検出部VD2の出力ノードに電気的に接続される。分流抵抗R2は、セル1の充放電電流を分流させるために設けられる。分流抵抗R2は、トランジスタQ2のドレインと正極T1との間に電気的に接続される。
【0040】
電圧検出部VD2は、電極間電圧V2が基準電圧E2を上回った場合、導通信号(第2の導通信号:論理ハイ)S2をトランジスタQ2のゲートに出力する。トランジスタQ2は、導通信号S2に応答して、非導通状態から導通状態へと移行する。
【0041】
次に、実施の形態1に係る蓄電装置が備える過電圧保護回路について説明する。図4は、図1に示した無停電電源装置100が備える短絡回路の構成を概略的に示す回路図である。図4を参照して、短絡回路(第1の過電圧保護回路)10は、分流抵抗R2を含まない点において、図3に示した分圧回路20と異なる。また、電圧検出部(第1の電圧検出部)VD1からの導通信号S1は、制御回路8にも出力される。短絡回路10の他の構成は、分圧回路20の構成と同等であるため、詳細な説明を繰り返さない。なお、短絡回路10は、本発明に係る「第1の過電圧保護回路」に相当する。分圧回路20は、本発明に係る「第2の過電圧保護回路」に相当する。
【0042】
電圧検出部VD1は、セル1の電極間電圧V1を検出し、電極間電圧V1を所定の基準電圧E1と比較する。基準電圧E1は基準電圧E2よりも大きく設定される。一例として、セル1の満充電状態における電極間電圧V2が2.5Vであって、基準電圧E2が2.6Vである場合、基準電圧E1は2.8Vに設定される。したがって、基準電圧E1は、モジュール21〜2nを満充電する際に複数のセル1の各々の電極間に印加される電圧の最大値よりも高い。また、基準電圧E2は、モジュール21〜2nを満充電する際に複数のセル1の各々の電極間に印加される電圧の最大値よりも高く、かつ基準電圧E1よりも低い。
【0043】
電圧検出部VD1は、電極間電圧V1が基準電圧E1を上回った場合、導通信号(第1の導通信号:論理ハイ)S1をトランジスタ(第1のスイッチ)Q1のゲートに出力する。トランジスタQ1は、導通信号S1に応答して、非導通状態から導通状態へと移行する。
【0044】
図5は、図3および図4にそれぞれ示した分圧回路20および短絡回路10における、セル1の高抵抗化に伴う電極間電圧V1,V2の変化を比較するための図である。図5(A)は、分圧回路20が並列に接続されたセル1での電極間電圧V2を示す。図5(B)は、短絡回路10が並列に接続されたセル1での電極間電圧V1を示す。
【0045】
まず図5(A)を参照して、分圧回路20が並列に接続されたセル1での電極間電圧V2について説明する。時刻t0は、セル1に電荷が蓄えられていない状態における任意の時刻である。時刻tchにおいて、充電電圧Echの印加による定電圧充電が開始される。
【0046】
時刻tchから時刻t1までの期間、セル1は満充電状態である。この間、セル1には一定の充電電圧Echが継続して印加される。
【0047】
時刻t1において、セル1の内部抵抗Raの増加が始まる。一方で、他の正常なセルの内部抵抗Raは変化しない。充電電圧Echは、各セルの抵抗値(内部抵抗Ra、漏れ抵抗Rb、および分圧抵抗Rの合成抵抗値)に応じて各セルに分圧される。したがって、セル1の電極間電圧V2が増加する。
【0048】
時刻t2において、セル1の電極間電圧V2が基準電圧E2を上回る。電圧検出部VD2はこれを検出して、導通信号S2をトランジスタQ2のゲートに出力する。トランジスタQ2は、導通信号S2に応答して、非導通状態から導通状態へと移行する。分流抵抗R2とトランジスタQ2のオン抵抗との合成抵抗値は、高抵抗化が生じたセル1の抵抗値よりも小さい。したがって、セル1にそれまで流れていた充電電流は、分流抵抗R2およびトランジスタQ2のドレイン―ソース間に主に流れる。セル1には充電電流がほとんど流れなくなるので、セル1に蓄えられたエネルギーは増加しない。したがって、セル1の電極間電圧V2はほぼ基準電圧E2に維持される。
【0049】
次に図5(B)を参照して、短絡回路10が並列に接続されたセル1の電極間電圧V1について説明する。時刻t1までの電極間電圧V1の変化は、同時刻までの電極間電圧V2の変化と同様であるため、詳細な説明を繰り返さない。基準電圧E1は基準電圧E2よりも高く設定される。そのため、時刻t2からさらに時間が経過した時刻t3まで、セル1の内部抵抗Raの増加に伴う電極間電圧V1の増加が続く。
【0050】
時刻t3において、電極間電圧V1が基準電圧E1を上回る。電圧検出部VD1はこれを検出して、導通信号S1をトランジスタQ1のゲートに出力する。トランジスタQ1は、導通信号S1に応答して、非導通状態から導通状態へと移行する。つまり、セル1の電極間が短絡される。トランジスタQ1のオン抵抗は、漏れ抵抗Rbと分圧抵抗Rとの合成抵抗値よりも著しく小さい。このため、セル1に蓄えられた電荷は、トランジスタQ1のドレイン―ソース間を通って放電される。したがって、セル1の電極間電圧V1は0Vとなる。
【0051】
このように、短絡回路10および分圧回路20は、それぞれセル1の高抵抗化に起因する電極間電圧V1,V2の増加を防止することができる。しかしながら、分圧回路20では、充放電によってセルに過電圧が印加される可能性がある。高抵抗化が生じたセルの電極間電圧V1,V2の放電による変化について説明する。
【0052】
図6は、図2に示した蓄電部3の放電を説明するための図である。図6を参照して、モジュール21,2a,2nの各々は、m個のセルを含む。モジュール2aは、高抵抗化が生じたセル1aを含む。モジュール2aのセル1a以外のセル1は正常である。モジュール21,2nに含まれるセル1は、すべて正常である。放電電流I1,I2は、それぞれモジュール21,2nおよびモジュール2aを流れる放電電流を表す。なお、セル1,1aの各々には分圧抵抗Rと、短絡回路10または分圧回路20とが並列に接続されるが、煩雑になるため図6では示されていない。
【0053】
図7は、図3および図4にそれぞれ示した分圧回路20および短絡回路10において、蓄電部3の放電時の電極間電圧V1,V2の変化を比較するための図である。図7を参照して、図7図5と対比される。
【0054】
図8は、蓄電部3の放電後における、分圧回路20が並列に接続された各セルでの電圧降下を説明するための図である。図8を参照して、横軸は各モジュール内のセルを表す。縦軸は、m番目のセルの電位を基準とした各セルの電位を表す。モジュール21,2n内の各セルの放電後の電位を破線で示す。モジュール2a内の各セルの放電後の電位を実線で示す。
【0055】
まず、図3図7(A)、および図8を参照して、分圧抵抗Rおよび分圧回路20が並列に接続されたセル1aでの電圧変化について説明する。時刻t2までのセル1aの電極間電圧V2の変化は、図5における同時刻までの電極間電圧V2の変化と同様であるため、詳細な説明を繰り返さない。
【0056】
時刻t4において、蓄電部3の放電が開始される。一例として、各セルの定格電圧が約2.5Vであって、直列に接続されたセルの数が250個である場合、放電開始前のモジュール21,2a,2nの各々の電圧は約625Vである。放電により、正常なモジュール21,2nの各々の電圧は、たとえば125V低下する。モジュール21,2nでは、セル1の各々は均等に放電される。したがって、セル1とセルmとの間で各セルの電位は直線的に変化する(図8の破線参照)。つまり、各セルでの電圧降下は、125V/250=0.5Vである。
【0057】
高抵抗化が生じたセル1aを含むモジュール2aにおいて、正常なセル1の抵抗値(たとえば2mΩ)は、分圧抵抗Rの抵抗値(たとえば100Ω)よりも著しく小さい。したがって、放電電流I2はセル1を流れる。
【0058】
一方、高抵抗化が生じたセル1aの抵抗値(たとえば10,000Ω)は大きい。分圧抵抗Rおよび分流抵抗R2の抵抗値は、たとえば100Ωである。トランジスタQ2のオン抵抗の抵抗値(たとえば10mΩ)も小さい。したがって、高抵抗化が生じたセル1aでは、放電電流I2は、分圧抵抗Rと、分流抵抗R2およびトランジスタQ2のドレイン―ソース間とを主に流れる。
【0059】
放電電流I2(たとえば1A)は、正常なモジュール21,2nを流れる放電電流I1(たとえば10A)と比較すると小さい。しかし、分圧抵抗Rおよび分流抵抗R2の抵抗値は、いずれも比較的大きい。その結果として、セル1aの分圧抵抗Rおよび分流抵抗R2での電圧降下ΔV(1A×100Ω=100V)は非常に大きい(図8の実線参照)。このようにモジュール2aの放電時には、セル1とセルmとの間での電圧降下のほとんどが、セル1aの分圧抵抗Rまたは分流抵抗R2での電圧降下ΔVによって実現される。したがって、放電時にセル1aの電極間電圧V2が大幅に増加する。これにより、セル1aが過電圧破壊に至るおそれがある。
【0060】
次に、図4および図7(B)を参照して、短絡回路10が並列に接続されたセル1aでの電圧変化について説明する。時刻t3までのセル1の電極間電圧V1の変化は、図5における同時刻までの電極間電圧V1の変化と同様であるため、詳細な説明を繰り返さない。
【0061】
時刻t4において、蓄電部3の放電が開始される。セル1aの電極間は、短絡回路10によって短絡されている。上述のように、トランジスタQ1のオン抵抗の抵抗値(たとえば10mΩ)は、高抵抗化が生じたセル1aの抵抗値(たとえば10,000Ω)および分圧抵抗Rの抵抗値(たとえば100Ω)と比べて著しく小さい。したがって、放電電流I2は、トランジスタQ1のドレイン―ソース間を主に流れる。放電電流I2(たとえば10A)が大きくても、トランジスタQ1での電圧降下は非常に小さい(たとえば10A×10mΩ=0.1V)。したがって、放電時にもセル1aの電極間電圧V1はほとんど変化しない。よって、セル1aが過電圧破壊に至ることを防止できる。
【0062】
蓄電部3の放電による電極間電圧V1,V2の変化について説明した。しかし、蓄電部3の初期充電(電荷が蓄積されていない状態からの充電)の前に、たとえば断線または接触不良等により、セル1aに開放故障が生じる可能性もある。初期充電時には、コンバータ4(図1参照)からの充電電流が、開放故障したセル1aを含むモジュール2aに流入する。充電時と放電時とで電流の向きが異なるものの、抵抗での電圧降下は電流の向きに関わらず生じる。したがって、セル1aの電極間電圧V1,V2の変化は、上述の説明と同様であるため、詳細な説明を繰り返さない。
【0063】
1個のセル1aの電極間が短絡されると、セル1aに印加されるべき電圧が他の正常なセル1の各々に分圧される。しかし、モジュールには多数(たとえば250個)のセルが直列に接続される。このため、正常なセル1の各々の電極間電圧V1への影響は軽微である。一例として、1個のセル1aが短絡されたとき、249個の正常なセル1の各々の電極間電圧V1の増加量は0.4%程度に過ぎない。したがって、正常な249個のセル1は継続して機能する。よって、実施の形態1によれば、セル1aに高抵抗化が生じた場合でも、蓄電部3の容量を概ね維持することができる。これにより、無停電電源装置100についての要求性能を安定的に満足することができる。
【0064】
また、各分流抵抗R2での電力損失がたとえば1Wである場合でも、蓄電部としては1,250Wの電力損失が生じる。実施の形態1によれば、各セルに分流抵抗R2を設ける必要がない。このため、この電力損失に相当する分の消費電力が低減される。さらに、この電力損失に相当する熱を除去するための冷却ファンを設ける必要がない。一般に冷却ファンは騒音を生じるとともに故障し易い。実施の形態1によれば、静音化および信頼性の向上を図ることができる。
【0065】
従来の無停電電源装置では、分圧抵抗Rまたは分流抵抗R2が過電圧破壊される可能性もある。一般に、各モジュールに含まれるすべてのセルの分圧抵抗Rおよび分圧回路20は、同一の基板に設けられる。したがって、一部の分圧抵抗Rまたは分流抵抗R2が破損した場合でも、その修理には基板ごと交換する必要があるため、部材コストが大きい。実施の形態1によれば、分圧抵抗Rの破損が防止されるため、このコストを削減することができる。
【0066】
なお、分圧抵抗Rを設けなくてもよい。この場合、分圧回路20では、セル1aでの充放電電流が主に分流抵抗R2を流れる。これにより、分流抵抗R2で電圧降下ΔVが生じる。一方、短絡回路10では、上述の説明と同様に、充放電電流はトランジスタQ1のドレイン―ソース間を流れる。トランジスタQ1での電圧降下は非常に小さい。つまり、セル1aの電極間電圧V1,V2の変化は、上述の説明と同様であるため、詳細な説明を繰り返さない。
【0067】
各モジュールに含まれるセルの個数に冗長性を持たせることにより、モジュールの信頼性を向上することができる。図9は、図2に示した蓄電部3において、セル1の個数に冗長性を持たせる構成について説明するための図である。図9を参照して、上述の250直列×5並列の構成の例を用いて説明する。図9(A)は、従来の無停電電源装置における蓄電部の構成を示す図である。図9(B)は、実施の形態1に係る無停電電源装置100における蓄電部3の構成を示す図である。
【0068】
図9(A)を参照して、従来の無停電電源装置が備えるセル1,1aの各々には、分圧抵抗Rと分圧回路20とが並列に接続される(図3参照)。しかし、煩雑になるため、図9(A)では示されていない。従来の無停電電源装置では、セル1aが開放故障した場合に、セル1aを含むモジュール(図9(A)ではモジュール21,22)が役に立たなくなる。そのため、1個のセル1の開放故障に備えるために、予備のモジュール26が追加される。つまり、250個のセル1を追加する必要がある。
【0069】
一方、図9(B)を参照して、実施の形態1に係る無停電電源装置100が備えるセル1,1aの各々には、分圧抵抗Rと短絡回路10とが並列に接続される(図4参照)。しかし、煩雑になるため、図9(B)では示されていない。実施の形態1に係る無停電電源装置100では、各モジュールは252個のセル1を含む。つまり、モジュール21〜25の各々に2個の予備のセル1bが追加される。同一のモジュール内で2個のセルが開放故障しても、そのモジュールは正常な250個のセルを含む。このため、そのモジュールは正常に機能する。数個のセルがさらに開放故障して、正常なセルの個数が250個を下回っても、そのモジュールは正常に機能し得る。
【0070】
このように、実施の形態1によれば、従来の無停電電源装置での冗長性の持たせ方と比較して、より長期間にわたって蓄電部3の信頼性を確保することが可能になる。また、実施の形態1によれば、5個のモジュール21〜25の各々に2個のセル1を追加するだけでよい。つまり、従来の無停電電源装置では250個のセル1を追加する必要があるのに対し、実施の形態1に係る無停電電源装置によれば予備のセル1の個数は10個でよい。
【0071】
また、従来の無停電電源装置では1個の予備のモジュール26を追加しても、2個のモジュール21,22の各々に含まれるセル1aに異常が生じた場合には、結果的に1個のモジュールが不足する。このため、必要な容量を確保できない。実施の形態1に係る無停電電源装置によれば、2個以上のモジュールの各々に含まれるセルに異常が生じた場合でもバックアップが可能である。このように、実施の形態1に係る無停電電源装置100は、部材コストの低減および信頼性の向上の観点からも有利である。
【0072】
図10は、図4に示した短絡回路10から制御回路8への導通信号S1の伝達を説明するための図である。図10を参照して、複数のセル1の各々がトランジスタQ1への導通指令を示す導通信号S1を発生させる。したがって、セル1の個数と同数(たとえば1,250個)の導通信号S1が発生する。しかし、制御回路8の入力端子(図示せず)の数には制限がある。そのため、複数の短絡回路10と制御回路8との間に、OR回路81〜8nおよびOR回路80が電気的に接続される。
【0073】
モジュール21〜2nの各々には、m個のセルが含まれる。OR回路81〜8nは、それぞれモジュール21〜2nからのm個の入力信号を受ける。OR回路81〜8nの各々は、m個の入力信号のうちの少なくとも1つが導通信号S1(論理ハイ)である場合に、OR回路80に論理ハイの信号を出力する。OR回路80は、OR回路81〜8nからn個の信号を受ける。OR回路80は、n個の入力信号のうちの少なくとも1つが論理ハイである場合に、制御回路8に論理ハイの信号を出力する。これにより、合計(m×n)個の電圧検出部VD1のうちの少なくとも1つが導通信号S1を出力した場合に、制御回路8はそれを検出することができる。
【0074】
また、制御回路8は、蓄電部3の異常を検出した場合、その旨を示す警告を発するように警告部9を制御する。無停電電源装置100の使用者または管理者は、この警告を受けることにより、無停電電源装置100の製造業者または保守管理業者に点検を依頼することができる。なお、上述のOR回路の構成は一例であって、OR回路の個数および段数は適宜設定される。
【0075】
[実施の形態2]
短絡回路10と分圧回路20とを併用することもできる。図11は、本発明の実施の形態2に係る無停電電源装置が備える過電圧保護回路の構成を概略的に示す回路ブロック図である。図11を参照して、セル1の電極間に分圧回路20と短絡回路10とが並列に接続される。基準電圧E1は基準電圧E2よりも高く設定される。
【0076】
実施の形態2によれば、高抵抗化によりセル1の電極間電圧が徐々に増加して基準電圧E2を上回った場合、分圧回路20によってセル1の電極間電圧が基準電圧E2に維持される。つまり、電極間電圧が基準電圧E2よりも大きくならないため、各セル1の電極間電圧のばらつきの拡大を抑制できる。電極間電圧のばらつきは、セル1の静電容量のばらつきが大きい場合、またはセル1の劣化のばらつきが大きい場合に拡大し易い。したがって、実施の形態2に係る無停電電源装置は、これらの場合に有効である。
【0077】
また、高抵抗化の進行または断線等の異常の発生により、セル1aの電極間電圧が基準電圧E1を上回った場合には、短絡回路10によってセル1aの電極間が短絡される。これにより、セル1aを過電圧破壊から保護することができる。
【0078】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した説明ではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0079】
1,1a,1b セル、2a,21,22,2n モジュール、3 蓄電部、4 コンバータ、5 インバータ、6 絶縁トランス、71,72 交流電源、8 制御回路、80,81〜8n OR回路、9 警告部、10 短絡回路、11 負荷、20 分圧回路、100 無停電電源装置、C,C1,C2 コンデンサ、E1,E2 基準電圧、Q1,Q2 トランジスタ、R 分圧抵抗、R2 分流抵抗、Ra 内部抵抗、Rb 漏れ抵抗、T1 正極、T2 負極、VD1,VD2 電圧検出部。
図1
図2
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図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11