(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890343
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】階段植栽ブロック工法
(51)【国際特許分類】
E02D 17/20 20060101AFI20160308BHJP
【FI】
E02D17/20 102E
E02D17/20 103H
【請求項の数】2
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-59312(P2013-59312)
(22)【出願日】2013年3月22日
(65)【公開番号】特開2014-185431(P2014-185431A)
(43)【公開日】2014年10月2日
【審査請求日】2015年8月28日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000251026
【氏名又は名称】林 平八
(72)【発明者】
【氏名】林 平八
【審査官】
苗村 康造
(56)【参考文献】
【文献】
特開平05−033346(JP,A)
【文献】
特開2003−119787(JP,A)
【文献】
特開平10−008479(JP,A)
【文献】
特開平06−088338(JP,A)
【文献】
実開昭55−118054(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 29/02
E02B 3/04〜 3/14
E02D 17/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロックの平面的な形状がH型の片側のフランジが短い、T型に近い形状である異形T型ブロックを1段目の工事として多数設置し、この時フランジの長い方を前面にし、前面を揃えて設置し、2つの異形T型ブロックのフランジとウェブに囲まれた部分に適宜の高さに植栽土を投入し異形T型ブロックの背面に背面土砂を投入し、フランジの中央部より背面土砂側の所定位置に、前面仕切型枠を植栽土上の両側フランジ間に設置し、短いフランジの背面土砂側位置に背面仕切型枠を背面土砂上の両側フランジ間に設置し、この2つの仕切型枠及び両サイドの異形T型ブロックのウェブに囲まれた空間部に耐震連結コンクリートを異形T型ブロックの上端まで打設し、植栽土及び背面土砂の部分に開口部が形成された耐震連結コンクリートの硬化後、前面仕切型枠及び背面仕切型枠を取り外し、異形T型ブロックの背面に、この上端まで背面土砂を埋め戻し転圧し、耐震連結コンクリートの前面と2個の異形T型ブロックのフランジとのウェブに囲まれた部分に植栽桝が形成されるから、この植栽桝に植栽土を入れ植物を植栽し、次に2段目の作業のため、異形T型ブロックの上に2段目の異形T型ブロックを階段状に、背面側に、ずらして設置し、2段目の異形T型ブロックの前面のフランジの底面は1段目の異形T型ブロックの耐震連結コンクリートの前面端部に載せ、背面のフランジは良質で良く転圧された背面土砂の上に載せ、1段目と同様に2つの異形T型ブロックのフランジとウェブに囲まれた部分に植栽土を投入し異形T型ブロックの背面に背面土砂を投入し、以降の作業は1段目と同じであり、3段目以降も2段目と同じであり、所定の段数設置し、植物を生育するための植栽桝の中の植栽土、この下及び耐震連結コンクリートの下の植栽土、異形T型ブロックの背面の2層の背面土砂、の4つが異形T型ブロック1の背面の開口部Kを通して一体に繋がっていて、雨水及び背面の湧水が背面土砂に浸透し土の中の水分の再分布現象により植栽土及び植物に供給され、植物の根は、この水分を求めて生育する、階段植栽ブロック工法
【請求項2】
ブロックの平面的な形状がH型の片側のフランジが短い、T型に近い形状である異形T型ブロックを1段目の工事として多数設置し、この時フランジの長い方を前面にし、前面を揃えて設置し、2つの異形T型ブロックのフランジとウェブに囲まれた部分に適宜の高さに植栽土を投入し異形T型ブロックの背面に背面土砂を投入し、フランジの中央部より背面土砂側の所定位置に、前面仕切型枠を植栽土上の両側フランジ間に設置し、短いフランジの背面土砂側位置に背面仕切型枠を背面土砂上の両側フランジ間に設置し、背面仕切型枠に穴をあけ、アンカーの前面側端部を前面仕切型枠及び背面仕切型枠の間に設置して、前記アンカーの背面側端部を背面土砂内に設置しこの2つの仕切型枠及び両サイドの異形T型ブロックのウェブに囲まれた空間部に耐震連結コンクリートを異形T型ブロックの上端まで打設し、植栽土及び背面土砂の部分に開口部が形成された耐震連結コンクリートの硬化後、前面仕切型枠及び背面仕切型枠を取り外し、異形T型ブロックの背面に、この上端まで背面土砂を埋め戻し転圧し、アンカーの背面側の端部にアンカープレートとナットを取り付けて背面土砂に埋め込み転圧定着し、耐震連結コンクリートの前面と2個の異形T型ブロックのフランジとのウェブに囲まれた部分に植栽桝が形成されるから、この植栽桝に植栽土を入れ植物を植栽し、次に2段目の作業のため、異形T型ブロックの上に2段目の異形T型ブロックを階段状に、背面側に、ずらして設置し、2段目の異形T型ブロックの前面のフランジの底面は1段目の異形T型ブロックの耐震連結コンクリートの前面端部に載せ、背面のフランジは良質で良く転圧された背面土砂の上に載せ、1段目と同様に2つの異形T型ブロックのフランジとウェブに囲まれた部分に植栽土を投入し異形T型ブロックの背面に背面土砂を投入し、以降の作業は1段目と同じであり、3段目以降も2段目と同じであり、所定の段数設置し、植物を生育するための植栽桝の中の植栽土、この下及び耐震連結コンクリートの下の植栽土、異形T型ブロックの背面の2層の背面土砂、の4つが異形T型ブロック1の背面の開口部Kを通して一体に繋がっていて、雨水及び背面の湧水が背面土砂に浸透し土の中の水分の再分布現象により植栽土及び植物に供給され、植物の根は、この水分を求めて生育する、階段植栽ブロック工法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は土木建築のコンクリート壁面を緑化する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリート壁面を緑化する方法としてはツタ等のツル性植物を登攀させる方法、コケ等の植物を生育する方法、階段状にコンクリートブロックを設置し、この平らな部分にサツキ等の灌木類を生育する方法などがある。階段状にコンクリートブロックを設置するものとしては特許文献1のものがある。また箱型擁壁がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006−177038号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】宮崎 毅 他2名著 土壌物理学 株式会社 朝倉書店 2005年5月 p.49
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の特許文献1のもの及び箱型擁壁は、いずれも背面に大量の砕石を投入する為、土圧や地震に対する安全は確保されるものの、背面からの給水は絶たれる。降雨によるもの及び空気中の水分による補給だけでは不十分で、晴天が続くと植物は枯れることが多い。水分こそ、生物の生命線であることは、具体例を挙げるまでもなく、広く知られるところである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記の課題を解決するために本願では背面に砕石を用いない構造とした。しかも土圧や地震に対する安全は確保するものとした。植物の生育を支える植栽土と背面の土砂との関係で、この間に砕石層を挟むことなく、コンクリートブロックの背面の開口部を通して直接繋がり、土の中の水分の再分布現象(非特許文献1参照)により水分が供給され、植物の根もこの、繋がった土壌を通して生育していく。また土圧や地震に対する安全を確保するため、高盛土の場合は、コンクリートブロックにアンカーを取り付け背面の土中に定着した。アンカーと直角方向の地震動にも対処した。その方法は耐震連結コンクリートによる。具体的には実施例に示す。またコンクリートブロックが砕石層の上ではなく、背面土砂の上に設置される為沈下の危険がある。そのため1段目のコンクリートブロックを設置する前に土砂を掘削した後、よく転圧し栗石を入れ更に転圧する。2段目以降は、このブロックの底面を、この前の方は、その下の段のブロックの後方の端部に載せ、後の方は良く転圧した背面土砂の上に置く。背面土砂は良質のものを使用し転圧は20〜30cm毎に行う。
【発明の効果】
【0007】
コンクリート壁面を緑化する方法として階段状にコンクリートブロックを設置する場合背面に砕石を用いない構造とし植物の生育を支える植栽土と背面の土砂との関係で、この間に砕石層を挟むことなくコンクリートブロックの中の植栽土と背面の土砂とがコンクリートブロックの背面の開口部を通して直接繋がっていて水分の再分布現象により水分が供給され、また土圧や地震に対する安全を確保するため、コンクリートブロックにアンカーを取り付け背面の土中に定着し安全な構造とした。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の異形T型ブロックを2段設置する場合の説明図であり、(a)は平面図(b)はA−A切断図であり、(c)は平面図の別案である。
【
図2】本発明の異形T型ブロックの説明図であり、(a)は平面的(b)は背面図(c)は正面図(d)は側面図である。
【
図3】本発明の異形T型ブロックの別の案の説明図であり、(a)は平面的(b)は背面図(c)は正面図(d)は側面図である。
【
図4】本発明のT型ブロックの説明図であり、(a)は平面的(b)は背面図(c)は正面図(d)は側面図であり、斜線部Tはチッピング部分である。
【
図5】本発明の異形T型ブロックを1段目に設置した説明図であり、(a)は平面的(b)はA−A切断図である。
【
図6】本発明の異形T型ブロックの1段目を設置し耐震連結コンクリートを打設する時の説明図であり、(a)は平面的(b)はA−A切断図(c)はB−B切断図(d)はC−C切断図である。
【
図7】本発明の植栽桝、植栽土、植物の説明図であり、(a)は平面的(b)はA−A切断図(c)はB−B切断図である。
【
図8】本発明の土の中の水分の再分布現象を示す説明図であり、Uは雨水、Yは湧水、S1及びS2は植栽土、G1及びG2は背面土砂である。
【
図9】本発明の異形T型ブロックの耐震連結コンクリートにアンカーを取り付けて背面に定着した場合の説明図であり(a)は平面図(b)はA−A切断図であり、(c)はアンカープレートの正面図である。
【
図10】本発明のブロックを箱型にした場合の説明図であり(a)は平面図(b)はA−A切断図(c)はB−B切断図(d)はC−C切断図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
1段目のコンクリートブロックを設置する位置を決め、土砂を掘削し、よく転圧し栗石を入れ更に転圧する。このブロックの平面的な形状はH型の片側のフランジが短い、T型に近い形状であり、以後これを異形T型ブロックと称し符号は1とする。図面的には
図2に示す。1段目のコンクリートブロックを多数設置する。この時フランジの長い方を前面にし、前面を揃える。この様子を
図5に示す。またフランジ及びウェブの厚さに変化をつけテーパー状にすることもある。
【0010】
次に2つの異形T型ブロック1のフランジとウェブに囲まれた部分に植栽土S1を投入し異形T型ブロック1の背面に背面土砂G1を投入する。S1及びG1の土の厚さはブロックの高さによるがブロックの高さが25cmの時10cm程度とし、100cmの時は40cm〜60cmとする。
【0011】
次に前面仕切型枠2及び背面仕切型枠3を設置する。この様子を
図6に示す。前記2つの仕切型枠及び両サイドの異形T型ブロック1のフランジとウェブに囲まれた空間部に耐震連結コンクリート4を異形T型ブロック1の上端まで打設する。この耐震連結コンクリート4の打設により開口部Kが形成される。これを
図6の(d)のC−C切断図にKとして示す。このコンクリートの高さは異形T型ブロック1の高さが25cmの時は15程度とし、100cmの時は60cm〜40cmである。なお、このコンクリートを打設する前に底面に上質紙を敷く。
【0012】
次に耐震連結コンクリート4の硬化後、前面仕切型枠2及び背面仕切型枠3を取り外し、異形T型ブロック1の背面に、この上端まで背面土砂G2を埋め戻し転圧する。
【0013】
耐震連結コンクリート4の前面と2個の異形T型ブロック1のフランジとウェブに囲まれた部分に植栽桝5が形成されるから、この植栽桝5に植栽土S2を入れ植物6を植栽する。この様子を
図7に示す。
【0014】
次に2段目の作業をする。異形T型ブロック1の上に2段目の異形T型ブロック1を階段状に、背面側にずらして設置する。この様子を
図1に示す。この平面図の(a)に示すように千鳥にする場合と(c)に示すようにウェブを揃える場合がある。2段目の異形T型ブロック1の底面の前の方は1段目の異形T型ブロック1の後方の端部に載せ、後の方は良く転圧した背面土砂の上に置く。背面土砂は良質のものを使用し転圧は20〜30cm毎に行う。次に1段目と同様に2つの異形T型ブロック1のフランジとウェブに囲まれた部分に植栽土S1を投入し異形T型ブロック1の背面に背面土砂G1を投入する。以降の作業は1段目と同じである。3段目以降も2段目と同じである。所定の段数設置して工事を終了する。
【0015】
課題を解決するための手段に記載した、土の中の水分の再分布現象により水分が供給されること及び植物の根が繋がった土壌を通して生育していく、ことについて確認する。
図8において植物6を生育するための植栽桝5の中の植栽土S2、この下及び耐震連結コンクリート4の下の植栽土S1、異形T型ブロック1の背面の背面土砂G1及び背面土砂G2、の4つが2つの異形T型ブロック1の背面の開口部Kを通して一体に繋がっている。雨水U及び背面の湧水Yが背面土砂G2及び背面土砂G1に浸透し土の中の水分の再分布現象により植栽土S1及び植栽土S2に供給され、植物6の根は、この水分を求めて生育する。
【実施例2】
【0016】
背面の背面土砂が高盛土で土圧が大きい場合を実施例2とする。実施例1の段落11の1行目の背面仕切型枠3を設置した後、耐震連結コンクリート4を打設する前に背面仕切型枠3に穴をあけ、フックの付いた鉄筋又はアンカーボルトとナットよりなるアンカー7を挿入しナットを取り付けた後、耐震連結コンクリート4を打設し、このコンクリートの硬化後、前面仕切型枠2及び背面仕切型枠3を取り外し、異形T型ブロック1の背面に、この上端まで背面土砂G2を埋め戻し転圧するが、この時、アンカー7の背面側の端部にアンカープレート8とナットを取り付けて背面土砂G2に埋め込み転圧し定着する。この様子は
図9に示す。その他は実施例1と同じである。なおこれを請求項2とする。
【実施例3】
【0017】
異形T型ブロック1の形状について短い方のフランジを耐震連結コンクリート4のある部分のみとし、他は無しとする場合もある。この様子は
図3に示す。これは実施例1及び実施例2に適用する。
【実施例4】
【0018】
異形T型ブロック1の形状について短い方のフランジを無しにして、T形にする場合もある。この場合は耐震連結コンクリート4と接する部分をチッピングして合成をよくする。チッピング部分の符号をTとし、これを
図4の側面図の斜線部Tに示す。これは実施例1及び実施例2に適用する。
【実施例5】
【0019】
異形T型ブロック1を2個毎に、一体にして、箱形にしたものを
図10に示す。箱形にした部分は、開口部Kは工場で製作するから現場で打設する耐震連結コンクリート4の数は半減するから作業の効率がよくなる。平面的に曲線への対応は制限される。
【符号の説明】
【0020】
1 異形T型ブロック
2 前面仕切型枠
3 背面仕切型枠
4 耐震連結コンクリート
5 植栽桝
6 植物
7 アンカー
8 アンカープレート
S1 植栽土
S2 植栽土
G1 背面土砂
G2 背面土砂
K 開口部
T チッピング部分
U 雨水
Y 湧水