【課題を解決するための手段】
【0013】
上述のように、本発明は、風力タービン用の風車ローターブレーキシステムに関する。前記風力タービンは、少なくとも、タワーと、前記タワーにおけるナセルと、前記ナセルにおいて取り付けられた風車ローターとを備え、前記風車ローターは、任意の数の翼好ましくは2枚又は3枚の翼と、前記風車ローターを回転可能に前記ナセルに締結するための例えばローターハブにおけるインターフェイスとを備え、風車ローターとナセルとの間の前記インターフェイスは、内側軸受け部品と外側軸受け部品とを備える少なくとも1つの軸受け装置を備え、少なくとも1つの軸受け部品は、前記ナセルにおいてメインフレーム構造体に強固に接続され、かつ少なくとも1つの別の軸受け部品は、前記風車ローターを回転可能に支持するため及び前記風車ローターの重量及び前記風車ローターにかかる風力荷重からの荷重を伝達するために前記風車ローターに強固に接続され、前記風車ローターは、さらに、前記風車ローターに対する風によって生じた回転トルクを発電機へ伝達するための主軸を備え、前記風車ローターブレーキシステムは、さらにブレーキディスクと1つ以上のブレーキキャリパーとを備える。
【0014】
本発明において新規かつ革新的であるのは、前記ブレーキディスクが風車ローター、例えばローターハブ又は軸受け部品例えば外側軸受け部品に設置されること、及び前記1つ以上のブレーキキャリパーが固定板に設置されることであり、前記固定板は前記メインイフレームに又は軸受け部品例えば内側軸受け部品に設置される。ブレーキシステムすなわちブレーキディスク、固定板及びブレーキキャリパー及びその他の備品は、ローターハブ/風車ローターの非常に近くに設置され、このことは、風力タービンのドライブトレインにおいて弾性及び緩みのために、ブレーキシステムに対して風車ローターが移動する可能性を防止するために非常に重要である。
【0015】
例えば主軸の重量がコスト削減のためにかつ他の部品のコスト及び重量を最小限に抑えられるように最適化されている(すなわち、重量が減少されている)場合、主軸は風車ローターがシステム全体を振動させないようにするのに充分な硬直性を持たない。ブレーキシステムをハブの非常に近くに設置することによって、風車ローターが停止及び/又はロッキングの際に振動する危険が実質上全くなく、従って、磨耗が徹底的に抑えられる。
【0016】
上述の解決策は、風車ローターのハブがナセルのメインフレームと強固に接続されて設置される全てのシステムにおいて有益である。これは、例えば、ハブを単一の軸受けシステムを介してメインフレームに取り付けることによって可能になる。この種の設計は、これまで、いわゆるリング形風車発電機と接続してのみ使用され、この場合には主軸が存在せず、上述の弾性及び緩みの問題が生じない。発電機を風車ローターに対してナセルの反対端に設置することによって、当然、風車ローターから発電機まで又は発電機の前の変速装置まで延びる主軸を持つ必要が生じる。この種の装置を持つことによっていくつかの利点が得られる。まず、タワーの最上部におけるナセルの重量バランスがより魅力のあるものになる。別の重要なことは発電機の接近可能性であり、これは、設置時に非常に重要であり、整備及び/又は修理のために分解する場合にはさらに重要である。発電機がナセルの一端に配置される場合、これに接近するのはどちらかと言うと簡単である。発電機が風車ローターと同じナセルの端部に設置されるリング形風車発電機である場合、発電機を取り外す前に風車ローターを取り外さなければならなくなる。これは、特に大きなコストと余計な作業の原因となる。
【0017】
上述のように、本発明は、単一の軸受けシステムを介してメインフレームに取り付けられたハブを有する風力タービン構造体に使用できる。メガワット(MW)規模になると、力及び反作用が非常に大きくなるので、この解決策は、これまで主にkW規模の比較的小型の風力タービンに使用されてきた。風力タービン用のハブは、通常、鋳鉄から製造されるが、ハブはMWタービンにおいて巨大な力を引き受けなければならないので、作動時に相当激しく変形する。しかし、この荷重に対処することができかつ1つの軸受けシステムと一緒に使用できるハブを設計することが可能である。
【0018】
高い荷重及び変形に対処するために使用できる別の設計は、いわゆるロータービームを伴う。この場合、ハブは少なくとも(しかし、典型的には)2組の軸受けによって支持できる。ロータービームは、ナセルのメインフレームに強固に接続され、典型的にはハブを貫通して突出して、風車ローターの荷重を支え、風車ローターに作用する力も引き受ける。従って、発電システムへの回転力は、主軸を介して伝達でき、主軸は、回転力のみを伝達するよう設計され、風車ローターを支えたり前記風車ローターからの曲げモーメントを引き受けたりするようには設計されない。
【0019】
本発明に係わる風車ローターブレーキシステムの1つの実施形態において、ローターブレーキシステムは固定板を備え、前記固定板は、さらに1つ以上の感知手段例えば1つ以上の誘電センサ(inductive sensor)を備え、前記感知手段は、固定板における感知手段に対する風車ローターの位置及び/又は速度すなわちブレーキディスクの位置及び/又は速度を制御するように設置される。
【0020】
固定板従ってブレーキキャリパーは、使用時に換気するため及びブレーキからのダストがナセル内部に蓄積しないようにするために、少なくとも部分的にハブの外部に設置できると有利である。ただし、固定板、キャリパー及びブレーキディスクをナセル内部に設置することも可能である。
【0021】
上述の1つ以上の感知手段例えば1つ以上の誘電センサは、本発明の1つの実施形態において、感知手段に対する風車ローターの位置及び/又は速度すなわちブレーキディスクの位置及び/又は速度を制御するように固定板に又はその近くに設置できる。ブレーキシステムを起動した後、感知手段を起動し、これを使用して、風車ローターが停止しているかどうか測定できる。さらに、感知手段を使用して、ブレーキシステムの固定部品に対するブレーキシステムの回転部品のより明確な位置を測定できる。感知手段を使用して、上述のように風車ローターが静止しているか否かを検出できるが、整備作業を実施するために2枚翼ローターを水平位置にするために例えばもう20°回転させる必要があることも検出できる。風車ローターをもう少し回転させる必要がある場合、風が風車ローターを所望の位置まで回転させるのに丁度充分な程度にブレーキシステムを弱めると良い。感知手段は、ブレーキディスクの規定の位置に設置された磁石を備えることができ、磁石の検出によって、風車ローターの完全制動のための正確な位置を選択できる。前記感知手段の起動及び感知手段を通過する前記磁石の検出を用いて、考え得るどのような目的のためにでも風車ローターの速度を制御することができる。
【0022】
本発明に係わる風車ローターブレーキシステムの別の実施形態において、前記風車ローターブレーキシステムは、ローターディスク又は風車ローターにおいて相補的ロック手段と係合するための1つ以上好ましくは少なくとも2つのロック心棒を備えることができる。風車ローターが規定の位置にあるときにこのロック心棒を起動することによって、風力タービン翼を整備する前に高い安全性が得られる。前記ロック心棒及び前記相補的ロック手段は、風車ローターをロックして任意の所望の方向において翼をhawできるように設置できるが、2枚翼の風車ローターの場合、典型的には垂直位置及び水平位置にロックする。3枚翼の風車ローターの場合、どの翼でもタワーに沿って垂直位置にロックできるが、上述のようにあらゆる位置が可能である。
【0023】
本発明に係わる風車ローターブレーキシステムの具体的実施形態において、前記1つ以上のロック心棒は、先端部に円錐形を持つことができ、前記先端部は、前記相補的ロック手段例えば円筒形又は円錐形孔へ入るように設計される。少なくとも先端部においてロック心棒を円錐形にすることによって、ロック心棒は、相補的ロック手段を有する相手側部品に部分的に係合できる。風車ローターが所望の位置になれるようにブレーキを緩和しながら、ロック心棒を起動し、対応する円筒形又は円錐形孔の一部が心棒と係合できるようになったら直ちに心棒を部分的に係合できる。ロック心棒の一部が係合したら、ブレーキキャリパーをさらに緩和してもよく、風車ローターは、ロック心棒によって簡単に完全にロックされる。この場合、もちろんブレーキキャリパーを起動することによって補助されていても良い。
【0024】
本発明に係わる風車ローターブレーキシステムの1つの実施形態において、前記ロック心棒は、例えば油圧作動心棒である。この種の油圧作動心棒は、強く、頑丈でかつ比較的単純であり、非常に信頼できる。心棒は、前記ロック手段のためのアクチュエータ内の強力ばねによって、係合することもでき、その後油圧を用いてロック心棒を静止位置へ戻すことができる。この種の解決策は、ロック手順が風力タービンの緊急運転停止の1つのステップとして実施される場合(この場合、限られた動力源しか利用できない)、非常に魅力的である。さらに、ロックは、全く動力なしでも維持でき、有利である。
【0025】
本発明に係わる風車ローターブレーキシステムの別の実施形態において、ブレーキディスクは、少なくとも2つ以上のディスク区分を備える区分化ブレーキディスクとすることができる。これによって、より小さいピースにした設置が可能になり、より重要なことは、風車ローターを完全に分解することなく磨耗の修理を行えることである。ブレーキディスクは、ディスク完全体を交換するまで、単純にピースを1つずつ交換できる。
【0026】
本発明に係わる風車ローターブレーキシステムの別の実施形態において、前記1つ以上のブレーキキャリパーは、ボルト又はスクリューを用いて前記固定板に固定され、前記1つ以上のブレーキキャリパーは、前記固定板と前記ブレーキキャリパーとの間に1つ以上のシムを用いて前記ブレーキディスクに個別に整合される。固定板とキャリパーとの間にシムを使用することによって、キャリパーの非常に精密な整合が得られる。
【0027】
本発明に係わる風車ローターブレーキシステムのさらに別の実施形態において、前記1つ以上のロック心棒は、ボルト又はスクリューを用いて前記固定板に固定でき、1つ以上のロック心棒は、前記固定板と前記ロック手段との間に1つ以上のシムを用いて前記相補的ロック手段例えば円筒形又は円錐形孔に個別に整列される。ロック心棒と相補的ロック手段(孔)との間の完璧な整列及び完璧な嵌合は、ロックシステムの緩みを最小限に抑えるため又は完全にこれを防止するために重要である。これは、当然、ロック心棒の係合時においてもブレーキディスクに作用するようにブレーキキャリパーを起動することによって支援される。
【0028】
本発明は、さらに、上述のような風車ローターブレーキシステムを用いて風力タービン用の風車ローターブレーキシステムを作動する方法を含む。前記風力タービンは、少なくとも、タワーと、前記タワーにおけるナセルと、前記ナセルにおいて取り付けられた風車ローターとを備え、前記風車ローターは、任意の数の翼好ましくは2枚又は3枚の翼と、前記風車ローターを回転可能に前記ナセルに締結するための例えばローターハブにおけるインターフェイスと備え、前記風車ローターと前記ナセルとの間の前記インターフェイスは、内側軸受け部品と外側軸受け部品とを備える少なくとも1つの軸受け装置を備え、少なくとも1つの軸受け部品は前記ナセルにおいてメインフレーム構造体に強固に接続され、かつ少なくとも1つの別の軸受け部品は、前記風車ローターを回転可能に支持するため及び前記風車ローターの重量及び風車ローターにかかる風力荷重からの荷重を伝達するために前記風車ローターに強固に接続され、前記風車ローターは、さらに前記風車ローターにおいて風によって生じた回転トルクを発電機へ伝達するための主軸を備え、前記風車ローターブレーキシステムは、さらに、ブレーキディスクと1つ以上のブレーキキャリパーとを備える。
【0029】
新規のかつ革新的方法は、少なくとも
−風車ローター及び/又はブレーキディスクの位置及び/又は速度を測定するために感知手段を起動するステップと、
−ブレーキキャリパーを第1制動ステップへ起動するステップと、
−風車ローター及び/又はブレーキディスクの位置及び速度を検出するステップと、
−前記ブレーキキャリパーを第2制動ステップへ起動するステップと、
−前記ロック心棒又は心棒を起動して、相補的ロック手段例えば円筒形又は円錐形孔へ挿入するステップと、
を含む。
【0030】
ブレーキシステムを作動する上述のステップについては、上述部においてすでに間接的に説明した。ブレーキキャリパーを起動する上記の第1制動ステップは、主に、風車ローターが前記ブレーキシステムを用いて停止される制動作動の第1部分において使用される。非常に大型で強力なブレーキシステムを持たないためには、例えば風力タービン翼を例えば翼をピッチングすることによってかつ/又はナセルを無能力位置まで回転させることによって翼が無能力になる位置まで作動することが可能である。この場合、ブレーキシステムは、全負荷状態を引き受けるように設計する必要がない。第1制動ステップは、上述のように、ブレーキを起動して、風車ローターを静止状態にするステップを含むことができる。感知手段が回転を検出する限り、第1制動ステップは進行する。風車ローターの静止又は非常に緩慢な回転速度を検出した後、第2制動ステップが適用されるとよい。この第2制動ステップは次のように構成することができる。すなわち、ブレーキを弱めて、風車ローターが好ましくは非常にゆっくりと回転して、ロック心棒を起動して相補的ロック手段と丁度係合できる位置まで回転させ、ロック手段の作動によって風車ローターを完全ロック位置に固定できるようにする。第2制動ステップは、ロック心棒又は心棒が係合から解除されるまで維持できる。
【0031】
本発明に係わる風車ローターブレーキシステムを作動する方法の最後の実施形態において、方法は、さらに、
−前記ロック心棒又は心棒を起動して、相補的ロック手段例えば円筒形又は円錐形孔の中へ少なくとも特定の長さ挿入した後、前記ブレーキキャリパーを解除するステップと、
−前記ロック心棒又は心棒を起動して、前記相補的ロック手段例えば円筒形又は円錐形孔の中へさらに挿入するステップと、
を含むことができる。
【0032】
前記ステップは、ロック心棒に対する風車ローターの最終的な位置決めを得るための方法を含む。1つ以上のロック心棒の少なくとも先端部が挿入された後ブレーキを解除又は緩和することによって、心棒は、風車ローターの回転を助けて、ロック心棒を相補的ロック手段の中へ完全に挿入させる。この最終ステップ後、ブレーキを再び起動することもしないことも可能である。
【0033】
本発明の1つの実施形態について、添付図面を参照して例としてのみ説明する。