特許第5890405号(P5890405)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890405
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】粘着シートおよび電子部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09J 7/02 20060101AFI20160308BHJP
   C09J 175/14 20060101ALI20160308BHJP
   C09J 133/14 20060101ALI20160308BHJP
   C09J 175/04 20060101ALI20160308BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20160308BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20160308BHJP
   H01L 21/301 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   C09J7/02 Z
   C09J175/14
   C09J133/14
   C09J175/04
   C09J11/06
   C09J11/08
   H01L21/78 M
   H01L21/78 Q
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-515150(P2013-515150)
(86)(22)【出願日】2012年5月14日
(86)【国際出願番号】JP2012062325
(87)【国際公開番号】WO2012157615
(87)【国際公開日】20121122
【審査請求日】2015年3月30日
(31)【優先権主張番号】特願2011-112268(P2011-112268)
(32)【優先日】2011年5月19日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2011-200854(P2011-200854)
(32)【優先日】2011年9月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003296
【氏名又は名称】デンカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000383
【氏名又は名称】特許業務法人 エビス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 岳史
(72)【発明者】
【氏名】鹿野 和典
【審査官】 牟田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−114394(JP,A)
【文献】 国際公開第2009/078203(WO,A1)
【文献】 特開平10−189672(JP,A)
【文献】 特開2006−111659(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00〜201/10
H01L 21/301
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材に光硬化型粘着剤層を積層してなる粘着シートであって、
前記光硬化型粘着剤層を形成する光硬化型粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体と光重合性化合物と多官能イソシアネート硬化剤と光重合開始剤とシリコーン系グラフト共重合体とを含み、粘着付与樹脂を含まず、
前記基材は、プロピレンと1−ブテンとエチレンとの共重合体であるプロピレン系共重合体により形成されており、
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、エチル(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレートとメトキシエチル(メタ)アクリレートとの共重合体であり、
前記光重合性化合物は、ビニル基を4個以上有するウレタンアクリレートオリゴマーであり、
前記多官能イソシアネート硬化剤は、イソシアネート基を3個以上有するものであり、
前記光重合開始剤は、23℃から500℃まで10℃/分の昇温速度で昇温したときの質量減少率10%となる温度が250℃以上であるものである、
とを特徴とする粘着シート。
【請求項2】
電子部品の検査工程において該電子部品に貼り付けて用いられることを特徴とする請求項に記載の粘着シート。
【請求項3】
電子部品の検査工程において該電子部品に貼り付けて用いられる粘着シートにおける基材に積層される粘着剤層を形成するための粘着剤であって、(メタ)アクリル酸エステル共重合体と光重合性化合物と多官能イソシアネート硬化剤と光重合開始剤とシリコーン系グラフト共重合体とを含み、粘着付与樹脂を含まず、
前記基材は、プロピレンと1−ブテンとエチレンとの共重合体であるプロピレン系共重合体により形成されており、
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、エチル(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレートとメトキシエチル(メタ)アクリレートとの共重合体であり、
前記光重合性化合物は、ビニル基を4個以上有するウレタンアクリレートオリゴマーであり、
前記多官能イソシアネート硬化剤は、イソシアネート基を3個以上有するものであり、
前記光重合開始剤は、23℃から500℃まで10℃/分の昇温速度で昇温したときの質量減少率10%となる温度が250℃以上であるものである、
とを特徴とする粘着剤。
【請求項4】
粘着シートを貼り付けた電子部品を60〜150℃で加温する加温工程を含み、
前記粘着シートとして、基材に光硬化型粘着剤層を積層してなる粘着シートを使用し
前記基材プロピレンと1−ブテンとエチレンとの共重合体であるプロピレン系共重合体により形成され、
前記光硬化型粘着剤層を形成する光硬化型粘着剤、(メタ)アクリル酸エステル共重合体と光重合性化合物と多官能イソシアネート硬化剤と光重合開始剤とシリコーン系グラフト共重合体とを含み、粘着付与樹脂を含まず、
前記(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、エチル(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレートとメトキシエチル(メタ)アクリレートとの共重合体であり、
前記光重合性化合物は、ビニル基を4個以上有するウレタンアクリレートオリゴマーであり、
前記多官能イソシアネート硬化剤は、イソシアネート基を3個以上有するものであり、
前記光重合開始剤は、23℃から500℃まで10℃/分の昇温速度で昇温したときの質量減少率10%となる温度が250℃以上であるものである、粘着シートを用いることを特徴とする電子部品の製造方法。
【請求項5】
前記粘着シートを半導体ウエハ又は基板とリングフレームとに貼り付ける貼付工程と、
前記粘着シートが貼り付けられた半導体ウエハ又は基板を、60〜150℃のステージ上に該粘着シートがステージに接するように載せ、吸着固定することにより加温し、該半導体ウエハ又は基板を検査する前記加温工程と、
前記粘着シートが貼り付けられた半導体ウエハ又は基板をダイシングして半導体チップ又は半導体部品にするダイシング工程と、
前記粘着シートの光硬化型粘着剤層に活性光線を照射する光照射工程と、
前記半導体チップ又は半導体部品同士の間隔を広げるため前記粘着シートを引き伸ばすエキスパンド工程と、
前記粘着シートから前記半導体チップ又は半導体部品をピックアップするピックアップ工程とを含む請求項記載の電子部品の製造方法。
【請求項6】
前記粘着シートを半導体ウエハ又は基板とリングフレームとに貼り付ける貼付工程と、
前記粘着シートが貼り付けられた半導体ウエハ又は基板をダイシングして半導体チップ又は半導体部品にするダイシング工程と、
前記粘着シートが貼り付けられた半導体チップ又は半導体部品を、60〜150℃のステージ上に粘着シートがステージに接するように載せ、吸着固定することにより加温し、該半導体チップ又は半導体部品を検査する前記加温工程と、
前記粘着シートの光硬化型粘着剤層に活性光線を照射する光照射工程と、
前記半導体チップ又は半導体部品同士の間隔を広げるため前記粘着シートを引き伸ばすエキスパンド工程と、
前記粘着シートから前記半導体チップ又は半導体部品をピックアップするピックアップ工程とを含む請求項記載の電子部品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘着シートおよび該粘着シートを用いた電子部品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハは、回路を形成した後に粘着シートを貼合してから、素子小片への切断(ダイシング)、洗浄、乾燥、粘着シートの延伸(エキスパンディング)、粘着シートからの素子小片の剥離(ピックアップ)、マウンティングなどの各工程へ配される。これらの工程で使用される粘着シート(ダイシングテープ)には、ダイシング工程から乾燥工程までは切断された素子小片(チップ)に対して充分な粘着力を有しながら、ピックアップ工程時には糊残りのない程度に粘着力が減少していることが望まれる。
【0003】
粘着シートとして、紫外線および/又は電子線などの活性光線に対し透過性を有する基材上に紫外線等により重合硬化反応をする粘着剤層を塗布したものがある。この粘着シートでは、ダイシング工程後に紫外線等を粘着剤層に照射し、粘着剤層を重合硬化させて粘着力を低下させた後、切断されたチップをピックアップする方法がとられる。
【0004】
このような粘着シートとしては、特許文献1および特許文献2には、基材面に例えば活性光線によって三次元網状化しうる、分子内に光重合性不飽和二重結合を有する化合物(多官能性オリゴマー)を含有してなる粘着剤を塗布した粘着シートが開示されている。
【0005】
また、特許文献3には、基材面上に、ベースポリマーと放射線重合性化合物と放射線重合性重合開始剤とからなる粘着剤層を塗布してなる半導体加工用粘着シートが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−196956号公報
【特許文献2】特開昭60−223139号公報
【特許文献3】特開2002−285134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
半導体ウエハの加工工程では、回路が形成された半導体ウエハの性能を試験して良品と不良品を選別する際、半導体ウエハを加温する場合がある。また、半導体ウエハの加温は、ダイシング工程での切削水を除去する際にも行われている。
【0008】
このような半導体ウエハの加温を行う場合、加温によって粘着シートの粘着剤層が軟化してしまい、粘着シートが半導体ウエハに過度に密着してしまうことがある。粘着シートが半導体ウエハに過度に密着すると、紫外線等を照射して粘着剤層を硬化させても粘着剤層の粘着力が十分に低下せず、ピックアップが困難となったり糊残りなどの不良が生じたりする原因となる。
【0009】
そこで、本発明は、加温による粘着剤層の軟化が生じ難い粘着シートを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、粘着剤に含まれる粘着付与樹脂の軟化が加温による粘着剤層の軟化の要因となっていることを見出した。
この知見に基づき、本発明は、基材に光硬化型粘着剤層を積層してなる粘着シートであって、光硬化型粘着剤層を形成する光硬化型粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体と光重合性化合物と多官能イソシアネート硬化剤と光重合開始剤とシリコーン系グラフト共重合体とを含み、粘着付与樹脂を含まず、基材は、プロピレンと1−ブテンとエチレンとの共重合体であるプロピレン系共重合体により形成されており、(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、エチル(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレートとメトキシエチル(メタ)アクリレートとの共重合体であり、光重合性化合物は、ビニル基を4個以上有するウレタンアクリレートオリゴマーであり、多官能イソシアネート硬化剤は、イソシアネート基を3個以上有するものであり、光重合開始剤は、23℃から500℃まで10℃/分の昇温速度で昇温したときの質量減少率10%となる温度が250℃以上であるものであることを特徴とする粘着シートを提供する。この粘着シートは、粘着剤に粘着付与樹脂を含まないため、加温された場合にも粘着剤層の軟化を生じない。
の粘着シートは、電子部品の検査工程において該電子部品に貼り付けて好適に用いられる。
また、本発明は、電子部品の検査工程において該電子部品に貼り付けて用いられる粘着シートにおける基材に積層される粘着剤層を形成するための粘着剤であって、(メタ)アクリル酸エステル共重合体と光重合性化合物と多官能イソシアネート硬化剤と光重合開始剤とシリコーン系グラフト共重合体とを含み、粘着付与樹脂を含まず、基材は、プロピレンと1−ブテンとエチレンとの共重合体であるプロピレン系共重合体により形成されており、(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、エチル(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレートとメトキシエチル(メタ)アクリレートとの共重合体であり、光重合性化合物は、ビニル基を4個以上有するウレタンアクリレートオリゴマーであり、多官能イソシアネート硬化剤は、イソシアネート基を3個以上有するものであり、光重合開始剤は、23℃から500℃まで10℃/分の昇温速度で昇温したときの質量減少率10%となる温度が250℃以上であるものであることを特徴とする粘着剤も提供する。
【0011】
さらに、本発明は、粘着シートを貼り付けた電子部品を60〜150℃で加温する加温工程を含み、前記粘着シートとして、基材に光硬化型粘着剤層を積層してなる粘着シートを使用し、該基材が、プロピレンと1−ブテンとエチレンとの共重合体であるプロピレン系共重合体により形成され、該光硬化型粘着剤層を形成する光硬化型粘着剤が、(メタ)アクリル酸エステル共重合体と光重合性化合物と多官能イソシアネート硬化剤と光重合開始剤とシリコーン系グラフト共重合体とを含み、粘着付与樹脂を含まず、(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、エチル(メタ)アクリレートとブチル(メタ)アクリレートとメトキシエチル(メタ)アクリレートとの共重合体であり、光重合性化合物は、ビニル基を4個以上有するウレタンアクリレートオリゴマーであり、多官能イソシアネート硬化剤は、イソシアネート基を3個以上有するものであり、光重合開始剤は、23℃から500℃まで10℃/分の昇温速度で昇温したときの質量減少率10%となる温度が250℃以上であるものである粘着シートを用いることを特徴とする電子部品の製造方法をも提供する。
この電子部品の製造方法において、性能試験のための加温工程は、ダイシング工程の前後の少なくとも一方で行われ得る。すなわち、この電子部品の製造方法は、前記粘着シートを半導体ウエハ又は基板とリングフレームとに貼り付ける貼付工程と、粘着シートが貼り付けられた半導体ウエハ又は基板を、60〜150℃のステージ上に粘着シートがステージに接するように載せ、吸着固定することにより加温し、半導体ウエハ又は基板を検査する加温工程と、粘着シートが貼り付けられた半導体ウエハ又は基板をダイシングして半導体チップ又は半導体部品にするダイシング工程と、粘着シートの光硬化型粘着剤層に活性光線を照射する光照射工程と、半導体チップ又は半導体部品同士の間隔を広げるため粘着シートを引き伸ばすエキスパンド工程と、粘着シートから半導体チップ又は半導体部品をピックアップするピックアップ工程とを含むものとすることができる。また、この電子部品の製造方法は、前記粘着シートを半導体ウエハ又は基板とリングフレームとに貼り付ける貼付工程と、粘着シートが貼り付けられた半導体ウエハ又は基板をダイシングして半導体チップ又は半導体部品にするダイシング工程と、粘着シートが貼り付けられた半導体チップ又は半導体部品を、60〜150℃のステージ上に粘着シートがステージに接するように載せ、吸着固定することにより加温し、半導体チップ又は半導体部品を検査する加温工程と、粘着シートの光硬化型粘着剤層に活性光線を照射する光照射工程と、半導体チップ又は半導体部品同士の間隔を広げるため粘着シートを引き伸ばすエキスパンド工程と、粘着シートから半導体チップ又は半導体部品をピックアップするピックアップ工程とを含むものとしてもよい。
【0012】
ここで、「粘着付与樹脂」には、アクリル系接着剤の粘着性を高めるために従来配合されている樹脂であって、例えばロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、クロマン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、キシレン樹脂およびこれらの樹脂の混合物などが包含されるものとする。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、加温による粘着剤層の軟化が生じ難い粘着シートが提供される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。

1.粘着シート
(1)光硬化型粘着剤
(1−1)粘着付与樹脂
(1−2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体
(1−3)光重合性化合物
(1−4)多官能イソシアネート硬化剤
(1−5)光重合開始剤
(2)基材
2.電子部品の製造方法
(1)貼付工程
(2)加温工程
(3)ダイシング工程
(4)光(紫外線)照射工程
(5)エキスパンド・ピックアップ工程
【0015】
1.粘着シート
本発明に係る粘着シートは、基材に光硬化型粘着剤層(以下、単に「粘着剤層」とも称する)を積層してなり、粘着剤層に粘着付与樹脂を含まないことを特徴とする。本発明に係る粘着シートは、加温された場合にも粘着付与樹脂の軟化に起因した粘着剤層の軟化を生じないため、半導体ウエハ等に過度に密着することがない。従って、本発明に係る粘着シートでは、紫外線等の照射により粘着剤層の十分な接着力の低下が得られ、ピックアップ不良や糊残りを防止できる。
【0016】
(1)光硬化型粘着剤
本発明に係る粘着シートの粘着剤層を形成する光硬化型粘着剤は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体と光重合性化合物と多官能イソシアネート硬化剤と光重合開始剤とを含み、粘着付与樹脂を含まない。
【0017】
(1−1)粘着付与樹脂
加熱による粘着剤層の軟化の原因となる粘着付与樹脂としては、特に限定されないが、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂、脂肪族石油樹脂、芳香族石油樹脂、水添石油樹脂、クロマン・インデン樹脂、スチレン系樹脂、キシレン樹脂およびこれらの樹脂の混合物が挙げられる。
【0018】
粘着剤には、粘着付与樹脂を含まない限り、剥離付与剤、老化防止剤、充填剤、紫外線吸収剤および光安定剤などの各種添加剤は添加されていてもよい。剥離付与剤には、例えばシリコーン系グラフト重合体を用いることができる。
【0019】
(1−2)(メタ)アクリル酸エステル共重合体
(メタ)アクリル酸エステル共重合体は、(メタ)アクリル酸エステル単量体のみの重合体、又は、(メタ)アクリル酸エステル単量体とビニル化合物単量体との共重合体である。なお、(メタ)アクリレートとはアクリレートおよびメタアクリレートの総称である。(メタ)アクリル酸等の(メタ)を含む化合物等も同様に、名称中に「メタ」を有する化合物と「メタ」を有さない化合物の総称である。
【0020】
(メタ)アクリル酸エステルの単量体としては、例えばブチル(メタ)アクリレート、2−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、ミリスチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボロニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシメチル(メタ)アクリレートおよびエトキシ−n−プロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリル酸エステル単量体に共重合可能なビニル化合物単量体としては、例えば、カルボキシル基、エポキシ基、アミド基、アミノ基、メチロール基、スルホン酸基、スルファミン酸基又は(亜)リン酸エステル基といった官能基群の1種以上を有する官能基含有単量体が挙げられる。
【0022】
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマール酸、アクリルアミドN−グリコール酸およびケイ皮酸がある。
エポキシ基を有する単量体としては、例えば、アリルグリシジルエーテルおよび(メタ)アクリル酸グリシジルエーテルがある。
アミド基を有する単量体としては、例えば、(メタ)アクリルアミドがある。
アミノ基を有する単量体としては、例えば、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートがある。
メチロール基を有する単量体としては、例えば、N−メチロールアクリルアミドがある。
【0023】
(1−3)光重合性化合物
光重合性化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、1,4−ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、シアヌル酸トリエチルアクリレート、市販のオリゴエステルアクリレートなどが用いられる。
【0024】
光重合性化合物として、上記アクリレート系化合物の他に、ウレタンアクリレートオリゴマーを用いることもできる。ウレタンアクリレートオリゴマーは、ポリエステル型又はポリエーテル型などのポリオール化合物と多価イソシアネート化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマに、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られる。
【0025】
多価イソシアネート化合物には、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン4,4−ジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが用いられる。また、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレートには、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、グリシドールジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレートなどが用いられる。
【0026】
光重合性化合物としては、ビニル基を4個以上有するウレタンアクリレートオリゴマーが、紫外線等の照射後の粘着剤の硬化が良好である点で好ましい。
【0027】
光重合性化合物の配合量は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して5質量部以上200質量部以下とすることが好ましい。光重合性化合物の配合量を少なくすると、放射線照射後の粘着シートの剥離性が低下し、半導体チップのピックアップ不良を生じやすくなる。一方、光重合性化合物の配合量を多くすると、ダイシング時の糊の掻き上げによりピックアップ不良が生じ易くなるとともに反応残渣による微小な糊残りが発生し、汚染の原因となる。
【0028】
(1−4)多官能イソシアネート硬化剤
多官能イソシアネート硬化剤には、イソシアネート基を2個以上有するものであり、例えば芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネート、これらの二量体や三量体、アダクト体などが用いられる。
【0029】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば1,3−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−トルイジンジイソシアネート、2,4,6−トリイソシアネートトルエン、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”−トリフェニルメタントリイソシアネート、ω,ω’−ジイソシアネート−1,3−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジメチルベンゼン、ω,ω’−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,4−テトラメチルキシリレンジイソシアネートおよび1,3−テトラメチルキシリレンジイソシアネートがある。
【0030】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えばトリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネートおよび2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートがある。
【0031】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンおよび1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンがある。
【0032】
二量体や三量体、アダクト体としては、例えばジフェニルメタンジイソシアネートの二量体、ヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとのアダクト体、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとのアダクト体がある。
【0033】
上述のポリイソシアネートのうち、イソシアネート基を3個以上有するものが好ましく、特にヘキサメチレンジイソシアネートの三量体、トリメチロールプロパンとトリレンジイソシアネートとのアダクト体、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとのアダクト体が好ましい。
【0034】
多官能イソシアネート硬化剤の配合比は、(メタ)アクリル酸エステル共重合体100質量部に対して0.5質量部以上20質量部以下が好ましく、1.0質量部以上10質量部以下がより好ましい。多官能イソシアネート硬化剤が0.5質量部以上であれば、粘着力が強すぎないので、ピックアップ不良の発生を抑制することができる。多官能イソシアネート硬化剤が20質量部以下であれば、粘着力が低下せず、ダイシング時に半導体チップの保持性が維持される。
【0035】
(1−5)光重合開始剤
光重合開始剤には、ベンゾイン、ベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン類、アントラキノン類、チオキサントン類、ケタール類、ベンゾフェノン類またはキサントン類などが用いられる。
【0036】
ベンゾインとしては、例えばベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインプロピルエーテルなどがある。
アセトフェノン類としては、例えばベンゾインアルキルエーテル類、アセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−アセトフェノン、2,2―ジエトキシ−2−アセトフェノン、1,1−ジクロロアセトフェノンなどがある。
アントラキノン類としては、2−メチルアントラキノン、2−エチルアントラキノン、2−ターシャリブチルアントラキノン、1−クロロアントラキノンなどがある。
チオキサントン類としては、例えば2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントンなどがある。
ケタール類としては、例えばアセトフェノンジメチルケータル、ベンジルジメチルメタール、ベンジルジフエニルサルフアイド、テトラメチルチウラムモノサルフアイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノンなどがある。
【0037】
光重合開始剤は、温度23℃から、10℃/分の昇温速度で500℃まで昇温し、質量減少率が10%となった際の温度が250℃以上であるものが好ましい。後述する加温工程においてウエハ等に貼付けられた粘着シートを60〜150℃で加温する際、光重合開始剤が揮発又は劣化すると、後工程である光照射工程における粘着剤層の硬化が不十分となり、十分な接着力の低下が得られず、続くピックアップ工程におけるピックアップ不良の要因となる。このため、上記のような性状を有し、加温による揮発や劣化が生じ難い光重合開始剤を用いることが好ましい。
【0038】
上記温度が250℃以上である光重合開始剤としては、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(BASFジャパン社製、製品名IRGACURE OXE02)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASFジャパン社製、製品名LUCIRIN TPO)、および2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(BASFジャパン社製、製品名IRGACURE127)、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1(BASFジャパン社製、製品名IRGACURE369)、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチル−ベンジル)−1−(4−モルフォリンー4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン(BASFジャパン社製、製品名IRGACURE379)、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド(BASFジャパン社製、製品名IRGACURE819)等が挙げられる。
【0039】
このうち、特に上記温度が270℃以上である、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)(BASFジャパン社製、製品名IRGACURE OXE02)、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド(BASFジャパン社製、製品名LUCIRIN TPO)、および2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン(BASFジャパン社製、製品名IRGACURE127)が好ましい。
【0040】
光重合開始剤の配合量は、(メタ)アクリル酸エステル重合体100質量部に対して0.1質量部以上20質量部以下が好ましい。配合量が少な過ぎると、放射線照射後の粘着シートの剥離性が低下し、半導体チップのピックアップ不良を生じやすくなる。一方、配合量が多過ぎると、光重合開始剤が粘着剤表面へブリードアウトし、汚染の原因となる。
【0041】
光重合開始剤には、必要に応じて従来公知の光重合促進剤を1種または2種以上を組合せて併用してもよい。光重合促進剤には、安息香酸系や第三級アミンなどを用いることができる。第三級アミンとしては、トリエチルアミン、テトラエチルペンタアミン、ジメチルアミノエーテルなどが挙げられる。
【0042】
粘着剤層の厚みは、3μm以上100μmが好ましく、5μm以上20μm以下が特に好ましい。粘着剤層が厚過ぎると粘着力が高くなり過ぎ、ピックアップ性が低下する。また、粘着剤層が薄過ぎると粘着力が低くなり過ぎ、ダイシング時のチップ保持性が低下し、リングフレームとシートとの間で剥離が生じる場合がある。
【0043】
(2)基材
基材の材料としては、例えば、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸−アクリル酸エステルフィルム、エチレン−エチルアクリレート共重合体、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン系共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、および、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体やエチレン−(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体等を金属イオンで架橋したアイオノマ樹脂などが挙げられる。基材は、これら樹脂の混合物又は共重合体であってよく、これら樹脂からなるフィルムやシートの積層体であってもよい。
【0044】
基材の材料には、プロピレン系共重合体を用いることが好ましい。耐熱性と伸長性に優れるプロピレン系共重合体を材料に用いることで、加温されても軟化や溶融を起こすことがなく、収縮を生じず、またエキスパンド・ピックアップ工程で十分に引き伸ばすことが可能な粘着シートが得られる。
【0045】
プロピレン系共重合体としては、例えばプロピレンと他成分とのランダム共重合体、プロピレンと他成分とのブロック共重合体、プロピレンと他成分の交互共重合体がある。他成分としては、エチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン等のα−オレフィン、少なくとも2種以上のα−オレフィンからなる共重合体、スチレン−ジエン共重合体等がある。
【0046】
プロピレン系共重合体の中でも特にプロピレンと1−ブテンとエチレンとの共重合体が好ましい。プロピレンと1−ブテンとエチレンとの共重合体は耐熱性に加えて柔軟性も備えるため、これを用いることによりエキスパンド性の良好な粘着シートが得られる。
【0047】
基材は、上記材料からなる単層あるいは多層のフィルムあるいはシートであってよく、異なる材料からなるフィルム等を積層したものであってもよい。基材の厚さは50〜200μm、好ましくは70〜150μmである。
【0048】
基材には、帯電防止処理を施すことが好ましい。帯電防止処理としては、基材に帯電防止剤を配合する処理、基材表面に帯電防止剤を塗布する処理、コロナ放電による処理がある。
【0049】
帯電防止剤としては、例えば四級アミン塩単量体などを用いることができる。四級アミン塩単量体としては、例えばジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート四級塩化物、p−ジメチルアミノスチレン四級塩化物、およびp−ジエチルアミノスチレン四級塩化物が挙げられる。このうち、ジメチルアミノエチルメタクリレート四級塩化物が好ましい。
【0050】
2.電子部品の製造方法
本発明に係る電子部品の製造方法は、上述の粘着シートを貼り付けた電子部品を60〜150℃で加温する工程を含む。以下、製造方法の具体的な工程を順に説明する。なお、本発明において「電子部品」は、例えば、半導体ウエハ、基板、半導体チップ、半導体部品等をいう。
【0051】
(1)貼付工程
まず、貼付工程において、粘着シートを半導体ウエハ(又は基板)とリングフレームに貼り付ける。ウエハは、シリコンウエハおよびガリウムナイトライドウエハ、炭化ケイ素ウエハ、サファイアウエハなどの従来汎用のウエハであってよい。
【0052】
(2)加温工程
ウエハ等に形成された回路の試験を行う場合、貼付工程後に、ウエハ等を60〜150℃程度で15分〜5時間程度加温する。具体的には、粘着シートが貼り付けられた半導体ウエハ又は基板を、60〜150℃のステージ上に粘着シートがステージに接するように載せ、吸着固定することにより加温し、半導体ウエハ又は基板を検査する。また、半導体チップ又は半導体部品を得た後に回路の試験を行う場合には、次に説明するダイシング工程後に同様にして加温工程を行う。すなわち、粘着シートが貼り付けられた半導体チップ又は半導体部品を、60〜150℃のステージ上に粘着シートがステージに接するように載せ、吸着固定することにより加温し、半導体チップ又は半導体部品を検査する。さらに、加温工程は、ダイシング工程後に切削水を除去する目的でも行われ、同様に半導体チップ等が60〜150℃程度で15分〜5時間程度加温される。
【0053】
本発明に係る粘着シートは、加温された場合にも粘着付与樹脂の軟化に起因した粘着剤層の軟化を生じないため、半導体ウエハ等に過度に密着することがない。従って、本発明に電子部品の製造方法では、後述する紫外線照射工程およびピックアップ工程において、紫外線等の照射により粘着剤層の十分な接着力の低下が得られ、ピックアップ不良や糊残りを防止できる。
【0054】
(3)ダイシング工程
ダイシング工程では、シリコンウエハ等をダイシングして半導体チップ又は半導体部品にする。ダイシング工程後、切削水を除去する目的で上記の加温工程が行われる場合がある。
【0055】
(4)光照射工程
光照射工程では、基材側から光硬化型粘着剤層に紫外線等の活性光線を照射する。紫外線の光源としては、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプを用いることができる。また、紫外線に替えて電子線を用いてもよく、電子線の光源としてはα線、β線、γ線を用いることができる。
【0056】
光照射により粘着剤層は三次元網状化して硬化し、粘着剤層の粘着力が低下する。この際、上述したように、本発明に係る粘着シートは加温してもウエハ等に過度に密着することがないため、紫外線等の照射により十分な接着力の低下が得られる。
【0057】
(5)エキスパンド・ピックアップ工程
エキスパンド・ピックアップ工程では、半導体チップ又は半導体部品同士の間隔を広げるため粘着シートを引き伸ばし、チップ又は部品をニードルピン等で突き上げる。その後、チップ又は部品を真空コレットまたはエアピンセット等で吸着し、粘着シートの粘着剤層から剥離してピックアップする。この際、本発明に係る粘着シートでは紫外線等の照射により十分な接着力の低下が得られているため、チップ又は部品と粘着剤層との間の剥離が容易となり、良好なピックアップ性が得られ、糊残りなどの不良が生じることもない。
【0058】
ピックアップ工程後は、ピックアップしたチップ又は部品を、ダイアタッチペーストを介してリードフレームに搭載する。搭載後、ダイアタッチペーストを加熱し、チップ又は部品とリードフレームとを加熱接着する。その後、リードフレームに搭載したチップ又は部品を樹脂でモールドする。
【実施例】
【0059】
<実施例1>
「表1」に示す配合に従って光硬化型粘着剤を調製した。光硬化型粘着剤をポリエチレンテレフタレート製のセパレーターフィルム上に塗布し、乾燥後の粘着層の厚みが10μmとなるように塗工した。この粘着層を基材フィルムに積層し、40℃で7日間熟成し、粘着シートを得た。基材フィルム(K−1)には、サンアロマー社製プロピレン系共重合体(品番:X500F)をTダイ押出しにより80μmに成膜したもの用いた。
【0060】
【表1】
【0061】
[基材フィルム]
K−1:サンアロマー社製プロピレン系共重合体(品番:X500F);プロピレンと1−ブテンとエチレンを重合成分として含有、MFR(メルトフローレート)値が7.5g/10分、密度0.89g/cm
K−2:サンアロマー社製プロピレン系共重合体(品番:Q300F);プロピレンとエチレンを重合成分として含有、MFR値0.9g/10分、密度0.89g/cm
K−3:東ソー社製エチレン系共重合体(品番:ウルトラセン537)、酢酸ビニル含有率6%、MFR値8.5g/10分、密度0.93g/cm
K−4:東ソー社製低密度ポリエチレン(品番:ペトロセン170)、MFR値1.0g/10分、密度0.92g/cm
【0062】
[光硬化型粘着剤]
〔(メタ)アクリル酸エステル共重合体〕
A−1:日本ゼオン社製アクリルゴムAR53L;エチルアクリレート54%、ブチルアクリレート19%、メトキシエチルアクリレート24%の共重合体、乳化重合により得られる。
A−2:綜研化学社製SKダイン1496;2−エチルヘキシルアクリレート96%、2−ヒドロキシエチルアクリレート4%の共重合体、溶液重合により得られる。
〔光重合性化合物〕
B−1:根上工業社製UN−905;イソホロンジイソシアネートの三量体にジペタエリスリトールペンタアクリレートを主成分とするアクリレートを反応させたものであり、ビニル基の数が15個。
B−2:新中村化学社製A−TMPT;トリメチロールプロパントリアクリレート、ビニル基の数が3個。
〔多官能イソシアネート硬化剤〕
C−1:日本ポリウレタン社製コロネートL−45E;2,4−トリレンジイソシアネートのトリメチロールプロパンアダクト体。
C−2:トリメチレンジイソシアネート。
〔光重合開始剤〕
D−1:BASFジャパン社製IRGACURE OXE02;エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−,1−(O−アセチルオキシム)、質量減少率が10%の際の温度320℃。
D−2:BASFジャパン社製LUCIRIN TPO;2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、質量減少率が10%の際の温度270℃。
D−3:BASFジャパン社製IRGACURE127;2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル]−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、質量減少率が10%の際の温度275℃。
D−4:BASFジャパン社製IRGACURE651;ベンジルジメチルケタール、質量減少率が10%の際の温度185℃。
〔シリコーン系グラフト共重合体〕
E−1:綜研化学社製UTMM−LS2;シリコーン分子鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有するシリコーン系オリゴマ系単位、及びメチルメタアクリレート等からなるアクリルビニル単位を重合してなるシリコーン系グラフト共重合体。
〔粘着付与樹脂〕
F−1:ヤスハラケミカル製YSポリスターS145;テルペンフェノール系粘着付与樹脂、軟化点145℃。
【0063】
得られた粘着シートをダミーの回路パターンを形成した直径8インチ、厚さ0.1mmのシリコンウエハとリングフレームに貼り合わせ、ダイシングした。シリコンウエハを、粘着シート貼り付け面と反対側の面が接するようにホットプレート上に設置し、120℃で1時間加温した後、光照射およびエキスパンド・ピックアップの各工程を行った。
【0064】
ダイシング工程の条件は以下の通りとした。
ダイシング装置:DISCO社製DAD341
ダイシングブレード:DISCO社製NBC−ZH205O−27HEEE
ダイシングブレード形状:外径55.56mm、刃幅35μm、内径19.05mm
ダイシングブレード回転数:40,000rpm
ダイシングブレード送り速度:50mm/秒
ダイシングサイズ:10mm角
粘着シートへの切り込み量:15μm
切削水温度:25℃
切削水量:1.0リットル/分
【0065】
光照射工程の条件は以下の通りとした。
紫外線照射:高圧水銀灯で照射量150mJ/cm
【0066】
エキスパンド・ピックアップ工程の条件は以下の通りとした。
ピックアップ装置:キヤノンマシナリー社製CAP−300II
エキスパンド量:8mm
ニードルピン形状:250μmR
ニードルピン数:5本
ニードルピン突き上げ高さ:0.3mm
【0067】
ダイシング工程およびエキスパンド・ピックアップ工程において、以下の評価を行った。
(1)チップ保持性
チップ保持性は、ダイシング工程後において、半導体チップが粘着シートに保持されている半導体チップの残存率に基づき、以下の基準により評価した。
優 :チップ飛びが5%未満
良 :チップ飛びが5%以上10%未満
不可:チップ飛びが10%以上
【0068】
(2)ピックアップ性
ピックアップ性は、ピックアップ工程において、半導体チップがピックアップできた率に基づき、以下の基準により評価した。
優 :チップのピックアップ成功率が95%以上
良 :チップのピックアップ成功率が80%以上95%未満
不可:チップのピックアップ成功率が80%未満
【0069】
評価結果を「表1」に示す。実施例1に係る粘着シートでは、チップ保持性およびピックアップ性がともに優と評価された。
【0070】
<実施例2〜11>
基材フィルムの材料、(メタ)アクリル酸エステル共重合体および光重合性化合物、多官能イソシアネート硬化剤、光重合開始剤、シリコーン系グラフト共重合体の種類あるいは添加有無を「表1」に示すように変更した以外は実施例1と同様にして粘着シートを製造し、評価を行った。結果を「表1」に示す。
【0071】
<実施例12〜20>
実施例1と同様にして得た粘着シートをダミーの回路パターンを形成した直径8インチ、厚さ0.1mmのシリコンウエハとリングフレームに貼り合わせ、ダイシングした。シリコンウエハを、粘着シート貼り付け面と反対側の面が接するようにホットプレート上に設置し、「表1」に示す条件で加温した後、光照射およびエキスパンド・ピックアップの各工程を実施例1と同条件で行った。結果を「表1」に示す。
【0072】
<比較例1>
シリコーン系グラフト共重合体を添加せず、粘着付与樹脂を添加した以外は実施例1と同様にして粘着シートを製造し、評価を行った。結果を「表1」に示す。
【0073】
実施例2〜20では、良好なチップ保持性およびピックアップ性が確認された。一方、比較例1では、ピックアップ性が不良となり、糊残りも顕著であった。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明に係る粘着シートは、加温された場合にも粘着剤層の軟化を生じず、半導体ウエハ等に過度に密着することがないため、紫外線等の照射により粘着剤層の接着力を十分に低下させることができ、良好なピックアップ性が得られる。従って、本発明に係る粘着シートは、半導体ウエハの加工プロセスにおいて、回路が形成された半導体ウエハ等の性能試験あるいはダイシング工程での切削水除去を目的とした加温工程が含まれる場合に好適に用いられ得る。