【文献】
Bukreyev A, et al.,The cysteine-rich region and secreted form of the attachment G glycoprotein of respiratory syncytial virus enhance the cytotoxic T-lymphocyte response despite lacking major histocompatibility complex class I-restricted epitopes,Journal of Virology,2006年 6月,Vol.80, No.12,p.5854-5861
【文献】
Fan CF, Mei XG,Co-immunization of BALB/c mice with recombinant immunogens containing G protein fragment and chimeric CTL epitope of respiratory syncytial virus induces enhanced cellular immunity and high level of antibody response,Vaccine,2005年 8月,Vol.23, No.35,p.4453-4461
【文献】
Zeng RH, et al.,Induction of balanced immunity in BALB/c mice by vaccination with a recombinant fusion protein containing a respiratory syncytial virus G protein fragment and a CTL epitope,Vaccine,2006年 2月13日,Vol.24, No.7,p.941-947
【文献】
Murata Y,Respiratory syncytial virus vaccine development,Clinics in Laboratory Medicine,2009年12月,Vol.29, No.4,p.725-739
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記設計されたポリペプチドは、少なくとも15アミノ酸の長さであり、中性pHにおける残基あたりの実効電荷が0.1以上であり、前記RSV由来の第1のポリペプチドエピトープ、前記RSV由来の第2のポリペプチドエピトープ、またはそれらの両方が、前記設計されたポリペプチドの一部分をなす、請求項2に記載の組成物。
前記RSV由来の第1のポリペプチドエピトープは、特異的細胞傷害性応答またはヘルパーT細胞応答を誘発し、前記RSV由来の第2のポリペプチドエピトープは、特異的抗体応答を誘発する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の組成物。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書では、RSV由来のポリペプチドエピトープを含む多層フィルムが開示され、ここで、上記多層フィルムは、受容者に投与されるとその受容者において免疫応答を誘発する能力を有する。一実施態様では、上記多層フィルムはRSV由来の2つのポリペプチドエピトープ(具体的には、細胞傷害性T細胞応答のような特異的T細胞応答を誘発するエピトープ、および特異的抗体応答を誘発するエピトープ)を含む。この実施態様において、特異的T細胞応答を誘発するエピトープと特異的抗体応答を誘発するエピトープとを組み合わせることにより、1つの成分だけを投与した場合と比べて、T細胞応答として測定される免疫効力が予想外に改善することが、本明細書において発明者らによって思いがけなく示された。具体的には、1つ以上の多層フィルムの形態におけるRSV-G(特異的抗体応答)エピトープとRSV-M2(特異的T細胞応答)エピトープとの組合せが、RSV-M2エピトープを単独で含む多層フィルムと比べて、大きく改善されたT細胞応答を誘発する。
【0030】
具体的には、上記多層フィルムは、反対に荷電した高分子電解質の層を交互に含み、ここで、1つの高分子電解質層は、RSV由来の少なくとも1つのポリペプチドエピトープが共有結合した高分子電解質を含む。第1および第2のRSVポリペプチドエピトープを、同一のもしくは異なる高分子電解質に結合させることができ、および/または、同一のもしくは異なる多層フィルム中に存在させることができる。一実施態様では、第1および第2のRSVポリペプチドエピトープは、同一の高分子電解質に共有結合しており、従って同一の多層フィルム中にある。別の実施態様では、第1および第2のRSVポリペプチドエピトープは異なる高分子電解質に共有結合しているが、同一の多層フィルム内で加層されている。さらに別の実施態様では、第1および第2のRSVポリペプチドエピトープは、異なる高分子電解質に共有結合しているが、異なる多層フィルム中で層に加層されていて、これらは後で投与に先立って混合される。
【0031】
一実施態様では、上記多層フィルムは、反対に荷電した高分子電解質の層を交互に含み、ここで、1つの高分子電解質層は、RSV由来の少なくとも1つのポリペプチドエピトープを含む、設計されたポリペプチドである。第1および第2のRSVポリペプチドエピトープは、同一のもしくは異なる設計されたポリペプチド中に存在させることができ、および/または、同一のもしくは異なる多層フィルム中に存在させることができる。一実施態様では、第1および第2のRSVポリペプチドエピトープは、同一の設計されたポリペプチド中に存在し、従って同一の多層フィルム中にある。別の実施態様では、第1および第2のRSVポリペプチドエピトープは、設計された異なるポリペプチド中に存在するが、同一の多層フィルム内で加層されている。さらに別の実施態様では、第1および第2のRSVポリペプチドは、設計された異なるポリペプチド中に存在するが、異なる多層フィルム中で加層されていて、これらは後で投与に先立って混合される。
【0032】
一実施態様では、RSVポリペプチドエピトープは、RSV-Gタンパク質由来である。RSV-G(アタッチメント)タンパク質は、CCおよびCXCケモカインmRNA発現の変化、ならびにTh2サイトカイン応答の変化を含む、多くの異常と関連付けられており、これらの異常は、不適切な免疫効果や疾患の悪化を助長していると見られる。RSV-Gタンパク質の中央部のシステインリッチ保存領域は、アミノ酸位置182〜186においてCX3Cケモカインモチーフを含んでおり、このモチーフはフラクタルカイン(CX3CL1)受容体であるCX3CR1に結合する。RSV-GによるCX3CL1の模倣は、RSV感染を促進し、ウイルスに対する正常な適応免疫応答を妨害することが示されている。RSV-G CX3Cモチーフを包含するペプチドで積極的に免疫することにより、マウスはRSV感染症および肺の炎症から防護される。現在までのところ、これらのRSV-Gペプチドは安全かつ効果的なワクチンには発展していない。
【0033】
別の実施態様では、RSVポリペプチドエピトープは、RSV-FまたはRSV-M2タンパク質由来である。RSV-Gタンパク質に加えて、RSV-F(フュージョン)タンパク質およびRSV-M2(マトリックス)タンパク質も、ワクチンの候補となり得るものである。主要な抗原決定基を1つだけ含む一価RSVワクチンを開発する試みは、感染症および炎症疾患からの防護が不完全であることによって妨げられてきており、多価アプローチの方がよりうまくいくかもしれないことを示唆している。事実、抗体応答およびCD8+ T細胞応答の両方を誘発した多価ワクチンによるマウスの免疫化は、Th2の減少およびTh1/CD8応答の増加をもたらし、これらはウイルス感染からの防護の増強および炎症性肺病変の減少と相関していた。これらの結果は、理想的なRSVワクチンの設計は、2つ以上のウイルスタンパク質に由来するエピトープを含み、抗体とIFNγ分泌性CD8+ T細胞との両方を誘発するということを示唆している。
【0034】
別の実施態様では、多層フィルムは、RSV由来のポリペプチドエピトープを含み、ここで、上記ポリペプチドエピトープはRSV-Gタンパク質由来のもの(特異的抗体応答)である。RSV-G CX3Cエピトープを含むナノ粒子で免疫されたマウスは、生きたRSVによる攻撃から防護されることが、思いがけず発見された。興味深いことに、RSV-M2エピトープは、生きたRSVの攻撃からの防護を提供せず、RSV-G およびRSV-M2ワクチンの組合せも、RSV-G単独の場合と比較して向上した保護を提供しなかった。理論に拘束されるわけではないが、これらの実験で使用された高濃度のナノ粒子が、組合せナノ粒子の潜在的な利益を覆い隠してしまったかもしれないと考えられる。
【0035】
一実施態様では、例えばCaCO
3ナノ粒子、ラテックス粒子、または鉄粒子のような、コア粒子上に多層フィルムが堆積される。直径およそ 5ナノメートル(nm)から50マイクロメートル(μm)の粒子サイズが特に有用である。他の素材でできた粒子も、生体適合性であり、制御可能なサイズ分布を有し、高分子電解質ペプチドと結合するために十分な表面電荷(正または負)を有することを条件として、コアとして使用することができる。例としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリ乳酸グリコール酸共重合体(PLGA)、ポリエチレングリコール(PEG)、キトサン、ヒアルロン酸、ゼラチン、またはそれらの組合せのような素材からできたナノ粒子もしくはマイクロ粒子が含まれる。コア粒子は、ヒトでの使用には不適切だと考えられている材料からできていてもよいが、ただし、これらの材料をフィルム製造後に溶解してその多層フィルムから分離できることが条件である。この鋳型コア物質の例としては、ラテックスのような有機高分子、または、シリカのような無機材料が挙げられる。
【0036】
高分子電解質多層フィルムは、交互に反対の電荷を帯びた高分子電解質の層から構成される、薄いフィルム(例えば厚さ数ナノメートルから数マイクロメートル)である。そのようなフィルムは、適当な基質上に一層一層を積層させることによって形成し得る。静電気的交互積層法(「ELBL」)では、高分子電解質の会合の物理的原理は静電引力である。層が順次加層されるごとにフィルムの表面電荷密度の符号が逆になるので、フィルムの集積が可能となる。ELBLフィルムプロセスの一般性および相対的な単純性は、多くの異なる種類の表面に多くの異なる種類の高分子電解質を堆積させることを可能にする。ポリペプチド多層フィルムは高分子電解質多層フィルムの一態様であり、荷電したポリペプチド(本明細書では、設計されたポリペプチドと呼ぶ)を含む少なくとも1つの層を含む。他の高分子でできたフィルムと比較して、ポリペプチド多層フィルムの鍵となる利点は、その生体適合性である。ELBLフィルムはカプセル化のためにも使用できる。ポリペプチドフィルムとマイクロカプセルの応用例としては、例えば、ナノリアクター、バイオセンサー、人工細胞、および薬物送達ベヒクルが含まれる。
【0037】
「高分子電解質」という用語は、1,000より大きい分子量を有し、分子あたり少なくとも5つの電荷を有する、ポリカチオン性材料およびポリアニオン性材料を包含する。適切なポリカチオン性材料としては、例えば、ポリペプチドおよびポリアミンが挙げられる。ポリアミンとしては例えば、ポリ-L-リシン(PLL)またはポリ-L-オルニチンのようなポリペプチド、ポリビニルアミン、ポリ(アミノスチレン)、ポリ(アミノアクリレート)、ポリ(N-メチルアミノアクリレート)、ポリ(N-エチルアミノアクリレート)、ポリ(N,N-ジメチルアミノアクリレート)、ポリ(N,N-ジエチルアミノアクリレート)、ポリ(アミノメタクリレート)、ポリ(N-メチルアミノメタクリレート)、ポリ(N-エチルアミノメタクリレート)、ポリ(N,N-ジメチルアミノメタクリレート)、ポリ(N,N-ジエチルアミノメタクリレート)、ポリ(エチレンイミン)、ポリ(ジアリルジメチルアンモニウムクロライド)、ポリ(N,N,N-トリメチルアミノアクリレートクロライド)、ポリ(メチルアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロライド)、キトサン、および上記ポリカチオン性材料の1つ以上を含む組合せが挙げられる。適切なポリアニオン性材料としては、例えば、ポリ-L-グルタミン酸(PGA)およびポリ-L-アスパラギン酸のようなポリペプチド、DNAおよびRNAのような核酸、アルジネート、カラギーナン、ファーセレラン、ペクチン、キサンタン、ヒアルロン酸、ヘパリン、ヘパラン硫酸、コンドロイチン硫酸、デルマタン硫酸、デキストラン硫酸、ポリアクリル酸(またはポリメタクリル酸)、酸化セルロース、カルボキシメチルセルロース、酸性ポリサッカライド、およびクロスカルメロース、ペンダントカルボキシル基を含む合成ポリマーおよびコポリマー、ならびに上記ポリアニオン性材料の1つ以上を含む組合せが挙げられる。一実施態様では、RSVエピトープと高分子電解質とは同じ符号の電荷を有する。
【0038】
一実施態様では、任意でRSVエピトープ含有高分子電解質を含む、上記フィルムの1つ以上の高分子電解質層は、設計されたポリペプチドである。一実施態様では、静電気的交互積層法に適したポリペプチドのための設計原理は、米国特許公開公報第2005/0069950号に記述されているものであり、この公報は、そのポリペプチド多層フィルムの教示について、引用により本明細書に組み入れられる。簡潔に述べると、設計における主たる検討事項はポリペプチドの長さおよび電荷である。静電気はELBLの原理をなすものであるから、設計の最も重要な検討事項である。適切な荷電特性を有していないと、ポリペプチドはpH 4〜10の水溶液に実質的に不溶となり得、ELBLによる多層フィルム製造のためには容易に使用できなくなる。他の設計検討事項としては、ポリペプチドの物理的構造、ポリペプチドから形成されるフィルムの物理的安定性、ならびに、フィルムおよび構成ポリペプチドの生体適合性および生理活性が含まれる。
【0039】
設計されたポリペプチドとは、反対に荷電した表面に安定的に結合するために十分な電荷を有するポリペプチド、すなわち、フィルム形成の原動力が静電気である多層フィルムの一層として、堆積できるポリペプチドを意味する。短期安定(short stable)フィルムとは、いったん形成してPBS中で37℃で24時間インキュベートすると、その構成要素を半分より多く保持するフィルムである。特定の実施態様では、設計されたポリペプチドは少なくとも15アミノ酸の長さであり、pH 7.0においてポリペプチドの残基あたりの実効電荷の大きさが0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、または0.5以上である。pH 7.0において正に荷電した(塩基性である)天然アミノ酸は、アルギニン(Arg)、ヒスチジン(His)、オルニチン(Orn)、およびリシン(Lys)である。pH 7.0において負に荷電した(酸性である)天然アミノ酸残基は、グルタミン酸(Glu)およびアスパラギン酸(Asp)である。反対の電荷のアミノ酸残基の混合物も、全体的な電荷の実効比率が所定の基準に適合する限り利用できる。一実施態様では、設計されたポリペプチドはホモポリマーではない。別の実施態様では、設計されたポリペプチドは分岐していない。
【0040】
一つの設計検討事項は、ポリペプチドELBLフィルムの安定性を調節することである。イオン結合、水素結合、ファンデルワールス相互作用、および疎水性相互作用が、多層フィルムの安定性に貢献する。加えて、同一の層内または隣接する層にあるポリペプチドの、スルフヒドリル含有アミノ酸同士の間に形成されるジスルフィド共有結合も、構造的強度を増加させ得る。スルフヒドリル含有アミノ酸としてはシステインおよびホモシステインが含まれ、これらの残基は、合成の設計されたペプチド中に容易に組み入れることができる。さらに、スルフヒドリル基は、文献に詳しく記述されている方法によって、ポリ-L-リシンまたはポリ-L-グルタミン酸のような高分子電解質ホモポリマーに組み入れることもできる。スルフヒドリル含有アミノ酸は、酸化電位の変化によって、多層ポリペプチドフィルムの層を「ロック」する(共に結合させる)ことおよび「ロック解除」することに使用できる。また、スルフヒドリル含有アミノ酸を、設計されたポリペプチドに組み入れることにより、分子間ジスルフィド結合形成のおかげで、薄フィルム製造において比較的短いペプチドを使用することが可能となる。
【0041】
一実施態様では、設計されたスルフヒドリル含有ポリペプチドは、化学的に合成されたか宿主生物体において生成されたかに関わらず、早まったジスルフィド結合形成を防ぐために還元剤の存在下で、ELBLにより会合される。フィルムが会合した後に、還元剤を除去し、酸化剤を加える。酸化剤の存在下で、スルフヒドリル基間でジスルフィド結合が形成し、チオール基が存在する層内および層間でポリペプチドをまとめて「ロック」する。適切な還元剤としては、ジチオスレイトール(DTT)、2-メルカプトエタノール(BME)、還元型グルタチオン、トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンヒドロクロリド(TCEP)、およびこれらの複数の化学物質の組合せが挙げられる。適切な酸化剤としては、酸化型グルタチオン、tert- ブチルヒドロペルオキシド(t-BHP)、チメロサール、ジアミド、5,5'-ジチオ-ビス-(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)、4,4'-ジチオジピリジン、臭素酸ナトリウム、過酸化水素、テトラチオン酸ナトリウム、ポルフィリンジン(porphyrindin)、オルトヨードソ安息香酸ナトリウム、およびこれらの複数の化学物質の組合せが挙げられる。
【0042】
ジスルフィド結合に代わるものとして、他の共有結合を生成する化学作用も、ELBLフィルムを安定化させるのに使用できる。ポリペプチドで構成されるフィルムでは、アミド結合を生成する化学作用が特に有用である。適切なカップリング試薬の存在下では、酸性アミノ酸(アスパラギン酸、グルタミン酸のように、カルボン酸基を含む側鎖を有するもの)は、アミン基を含む側鎖を有するアミノ酸(例えばリシンおよびオルニチン)と反応しアミド結合を形成する。アミド結合は、生物学的条件下でジスルフィド結合よりも安定であり、交換反応も起こさない。多くの試薬が、アミド結合のためにポリペプチド側鎖を活性化させることに使用され得る。水溶性1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)のようなカルボジイミド試薬は、わずかに酸性であるpHにおいてアスパラギン酸またはグルタミン酸と反応して中間産物を形成し、この中間産物がアミンと非可逆的に反応してアミド結合を生成する。N-ヒドロキシスクシンイミドのような添加剤がしばしば反応に加えられ、アミド形成の速度と効率を促進させる。反応後、遠心分離および吸引によって、ナノ粒子またはマイクロ粒子から可溶性の試薬を除去する。他のカップリング試薬の例としては、ジイソプロピルカルボジイミド、HBTU、HATU、HCTU、TBTU、およびPyBOPが挙げらる。他の添加剤の例としては、スルホ-N-ヒドロキシスクシンイミド、1-ヒドロキシベンゾトリアゾール、および1-ヒドロキシ-7-アザ-ベンゾトリアゾールが挙げられる。アミド架橋の程度は、カップリング試薬の化学量論性、反応時間、または反応温度を調節することにより調節することができ、フーリエ変換赤外分光分析(FT-IR)等の技術によってモニターすることができる。
【0043】
共有結合により架橋されたELBLフィルムは、例えば向上した安定性のような、望ましい特性を有する。安定性の向上により、ナノ粒子、マイクロ粒子、ナノカプセル、またはマイクロカプセルの製造において、よりストリンジェントな条件を使用することが可能となる。ストリンジェントな条件の例としては、高温、低温、極低温、高遠心速度、高塩濃度バッファー、高pHバッファー、低pHバッファー、フィルターろ過、および長期間貯蔵が挙げられる。
【0044】
高分子電解質多層フィルムを製造する方法は、反対に荷電した化学種の複数の層を基質上に堆積させることを含む。一実施態様では、少なくとも1つの層が、設計されたポリペプチドを含む。順次加層される高分子電解質は、反対の実効電荷を有する。一実施態様では、高分子電解質の堆積は、ELBLのための適切な実効電荷を生ずるpHにおいて高分子電解質を含む水溶液に、基質を曝すことを含む。他の実施態様では、高分子電解質の基質への堆積は、反対に荷電したポリペプチドの溶液を順次噴きつけることによって達成される。さらに別の実施態様では、基質への堆積は、反対に荷電した高分子電解質の溶液を同時に噴きつけることによって達成される。
【0045】
多層フィルムを形成するELBL法においては、隣接する層の反対電荷が、会合の原動力を提供する。相対する層の高分子電解質が、同じ実効線電荷密度を有することは重要ではなく、重要なのは、相対する層が反対の電荷を有することだけである。標準的な堆積によるフィルム会合の手順は、ポリイオンがイオン化されるpH(すなわち、pH 4〜10)においてポリイオンの水溶液を形成すること、表面電荷を帯びた基質を提供すること、および、上記荷電した高分子電解質溶液に上記基質を交互に浸漬することを含む。層を交互に加層する間に基質を洗浄してもよい。
【0046】
高分子電解質の堆積にとって適切な高分子電解質濃度は、当業者ならば容易に決定することができる。一つの典型的な濃度は0.1〜10 mg/mLである。ポリ(アクリル酸)やポリ(アリルアミン塩酸塩)のような典型的な非ポリペプチド高分子電解質では、典型的な層の厚さは、溶液のイオン強度に依存して、約3Å〜約5Åである。短い高分子電解質は通常、長い高分子電解質よりも薄い層を形成する。フィルムの厚さについては、高分子電解質フィルムの厚さは湿度に依存し、層の数およびフィルムの組成にも依存する。例えば、50 nm厚のPLL/PGAフィルムは、窒素で乾燥させると1.6 nmに縮小する。一般的に、フィルムの水和状態、および会合に利用される高分子電解質の分子量に依存して、1 nm〜100 nmあるいはそれ以上の厚さのフィルムを形成することができる。
【0047】
加えて、安定な高分子電解質多層フィルムを形成するために必要な層数も、フィルム中の高分子電解質によるであろう。低分子量ポリペプチド層のみを含むフィルムでは、反対に荷電したポリペプチドの二重層を、1つのフィルムが通常4つ以上有する。ポリ(アクリル酸)やポリ(アリルアミン塩酸塩)のような分子量の大きい高分子電解質を含むフィルムでは、反対に荷電した高分子電解質の二重層を1つ含むフィルムが安定であり得る。高分子電解質フィルムは動的であることが研究によって示されている。フィルム中に含まれている高分子電解質は、層間を移動することができ、高分子電解質溶液中に懸濁させると、同じように荷電した可溶性高分子電解質と交換され得る。高分子電解質フィルムはまた、懸濁バッファーの温度、pH、イオン強度、または酸化電位のような環境の変化に応じて、分解あるいは溶解し得る。従ってある種の高分子電解質、特にペプチド高分子電解質は、一時的安定性を示す。ペプチド高分子電解質フィルムの安定性は、制御された条件下で一定の時間にわたってフィルムを適切なバッファーに懸濁した後に、適切なアッセイ(例えばアミノ酸分析、HPLCアッセイ、または蛍光アッセイ)を用いてフィルム中のペプチド量を測定することによって、モニターすることができる。ペプチド高分子電解質フィルムは、ワクチンとしての貯蔵および使用にかかる条件下(例えば、4℃〜37℃というような周囲温度における中性バッファー中)で最も安定である。これらの条件下では、安定なペプチド高分子電解質フィルムは、少なくとも24時間、多くの場合は14日間以上にわたって、その構成ペプチドのほとんどを保持する。
【0048】
一実施態様では、設計されたポリペプチドは、1つ以上のRSVエピトープに共有結合により連結された、1つ以上の表面吸着領域を含み、ここで、上記設計されたポリペプチドと上記1つ以上の表面吸着領域とは電荷の符号が同じであり、換言すれば、それらは両方とも全体として正に荷電しているか、または両方とも全体として負に荷電しているか、である。本明細書でいう表面吸着領域とは、例えばRSV由来のエピトープを含むペプチドが多層フィルムへと堆積できるように十分な電荷を都合よく提供する、設計されたポリペプチドの荷電領域である。一実施態様では、上記1つ以上の表面吸着領域と、上記1つ以上のRSVエピトープとは、正味で同じ極性を有する。別の実施態様では、pH 4〜10における設計されたポリペプチドの可溶性は約0.1 mg/mL以上である。別の実施態様では、pH 4〜10における設計されたポリペプチドの可溶性は約1 mg/mL以上である。可溶性は、水溶液からのポリペプチドの堆積を促進させる上で、実際的な限定事項となる。抗原性ポリペプチドの重合の程度についての実際的な上限は、約1,000残基である。しかしながら、適切な合成法によってもっと長い合成ポリペプチドを実現し得ることも考えられる。
【0049】
一実施態様では、設計されたポリペプチドは、2つの表面吸着領域、すなわちN末端表面吸着領域とC末端表面吸着領域とに隣接した、単一の抗原性RSVエピトープを含む。別の実施態様では、設計されたポリペプチドは、1つの表面吸着領域に隣接した、単一の抗原性RSVエピトープを含み、この表面吸着領域は、RSVエピトープのN末端に連結する。別の実施態様では、設計されたポリペプチドは、1つの表面吸着領域に隣接した単一の抗原性RSVエピトープを含み、この表面吸着領域は、RSVエピトープのC末端に連結する。
【0050】
設計されたポリペプチドのそれぞれの独立領域(例えばRSVエピトープおよび表面吸着領域)は、液相ペプチド合成、固相ペプチド合成、または適切な宿主生物体の遺伝子工学によって、別々に合成することができる。液相ペプチド合成は、今日市場に出回っている認可されたペプチド医薬のほとんどを製造するために使用されている方法である。液相ペプチド合成法と固相ペプチド合成法との組合せを使用して、比較的長いペプチド、さらには、小さなタンパク質さえも合成することができる。ペプチド合成業者は、個別料金制に基づいて難しいペプチドを合成する、専門的技術と経験とを有している。合成は、優良製造規範(GMP)条件下において、臨床試験および商業的な薬剤発売に適した規模で実施される。
【0051】
あるいは、上記さまざまな独立領域は、液相ペプチド合成、固相ペプチド合成、または適切な宿主生物体の遺伝子工学によって、単一のポリペプチド鎖として一緒に合成することもできる。特定の場合ごとのアプローチの選択は便宜性または経済性の問題である。
【0052】
もし様々なRSVエピトープおよび表面吸着領域を別々に合成するのであれば、例えばイオン交換クロマトグラフィーまたは高速液体クロマトグラフィーによっていったん精製し、ペプチド結合合成によって連結する。すなわち、表面吸着領域のN末端とRSVエピトープのC末端とを共有結合で連結して、設計されたポリペプチドを産生する。あるいは、表面吸着領域のC末端とRSVエピトープのN末端とを共有結合で連結して、設計されたポリペプチドを産生する。個々の断片を固相法により合成し、完全に保護された、または完全に無保護の、または部分的に保護された、セグメントとして得ることができる。上記セグメントは、液相反応または固相反応において、共有結合で連結させることができる。もし1つのポリペプチド断片がN末端残基としてシステインを含み、他方のポリペプチド断片がC末端残基としてチオエステルまたはチオエステル前駆体を含む場合には、これら2つの断片は、一般的にネイティブライゲーションとして(当業者の間では)知られる特異的反応により、溶液中で自発的にカップリングする。ネイティブライゲーションは、完全に脱保護された、または部分的に保護されたペプチド断片を用いて、水溶液中で、希釈された濃度において実行することができるので、設計されたペプチドの合成のためには特に魅力的な選択肢である。
【0053】
一実施態様では、RSVエピトープおよび/または表面吸着領域は、米国特許第7,723,294号に記載されているように、ペプチド結合または非ペプチド結合で連結され、この米国特許は、多層フィルムで使用するためのポリペプチドのセグメントを連結するために非ペプチド結合を使用する教示について、引用により本明細書に組み入れられる。適切な非ペプチド性リンカーとしては、例えば、-NH-(CH
2)
s-C(O)-のようなアルキルリンカーが挙げられ、ここでs=2〜20である。アルキルリンカーは、任意で、例えば低級アルキル(例えばC
1〜C
6)、低級アシル、ハロゲン(例えばCl、Br)、CN、NH
2、フェニル等の非立体障害性の基で置換される。もう1つの典型的な非ペプチド性リンカーは、-NH-(CH
2-CH
2-O)
n,-C(O)-のようなポリエチレングリコールリンカーであり、ここでnは、リンカーの分子量が100〜5000 Daとなり、特に100〜500 Daとなるような数字である。本明細書に記載されるリンカーの多くは、固相ペプチド合成に適した形態で、販売会社から入手できる。
【0054】
一実施態様では、RSV由来の1つ以上のポリペプチドエピトープが、共有結合を介して、1つ以上の高分子電解質(例えばポリペプチドまたはその他の高分子電解質)に共有結合的に連結する。適切な共有結合の例としては、アミド、エステル、エーテル、チオエーテル、およびジスルフィドが挙げられる。当業者は、エピトープペプチド中に見られる様々な官能基を利用して、適切な電解質への結合を作ることができる。例えば、エピトープペプチド中には、C末端において、またはアスパラギン酸もしくはグルタミン酸といったアミノ酸の側鎖において、カルボン酸を見出すことができる。カルボン酸は、ポリ-L-リシンのようなペプチド高分子電解質に見られる一級アミンまたは二級アミンと反応させるために、1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)のような適切なペプチドカップリング試薬で活性化させることができる。結果として生じるアミド結合は、周囲条件下で安定である。逆に、エピトープペプチド中のアミン基と反応させるために、ペプチド高分子電解質中の酸性基をEDCで活性化させることもできる。有用なアミン基は、エピトープペプチドのN末端において、またはリシン残基の側鎖において、見出すことができる。
【0055】
エピトープペプチドは、ジスルフィド結合を介して高分子電解質に連結させることもできる。PGAまたはPLLのような高分子電解質は、その側鎖の一部がスルフヒドリル基を含むように、化学的に修飾することができる。適切な酸化体の存在下では、これらのスルフヒドリルは、エピトープペプチド中に含まれるシステイン残基のスルフヒドリル基と反応する。このシステインは、RSVのような病原体のタンパク質配列由来のの固有のシステインであってもよいし、または、ペプチド合成の際にエピトープに意図的に組み入れられた非固有のシステインであってもよい。適切な酸化体としては、DTNB、2,2’-ジチオピリジン、過酸化水素、シスチン、および酸化型グルタチオンが挙げられる。ジスルフィド結合を介したエピトープペプチドの高分子電解質への連結は、特に有用である。ジスルフィドは、フィルムの製造および貯蔵の通常条件下で安定であるが、細胞中に自然に見出される還元剤により容易に断裂し、このことにより、エピトープペプチドが免疫的プロセシングのために自由に使われるようになる。
【0056】
エピトープペプチドは、チオエーテル結合を介して高分子電解質に連結させることもできる。ハロアセチル基のような、スルフヒドリルと特異的に反応する適切な求電子種を伴った合成エピトープペプチドを合成することができる。例えば、N末端にクロロアセチルを含むエピトープペプチドは、上記述のPGA-SHのようなスルフヒドリル含有高分子電解質に対して、安定な結合を形成する。
【0057】
エピトープペプチドは、二官能性リンカー分子を介して高分子電解質に共有結合により連結させることもできる。二官能性リンカーは通常、エピトープペプチドまたは高分子電解質分子に存在する求核種と反応することができる、2つの求電子性基を含む。ホモ二官能性リンカーおよびヘテロ二官能性リンカーという、2種類のリンカー分子が市販されている。ホモ二官能性リンカーは、非反応性のスペーサーでつなげられた2つのコピーの求電子性基を含む。多くの場合、求電子種は、求核性アミンと反応する、N-ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルまたはスルホ-N-ヒドロキシスクシンイミド(スルホNHS)のような活性エステルである。ホモ二官能性NHSエステルの例としては、スベリン酸ビス(スルホスクシンイミジル)、グルタル酸ジスクシンイミジル、プロピオン酸ジチオビス(スクシンイミジル)、スベリン酸ジスクシンイミジル、酒石酸ジスクシンイミジルが挙げられる。求電子種は、エピトープおよび高分子電解質分子上にある求核性アミンと共にイミドを形成する、アルデヒド基である場合もある。イミド結合は安定性が一時的であるが、水素化ホウ素ナトリウムのような還元剤、または触媒による水素化によって、安定な構造に変換させることができる。最も一般的に使用されるホモ二官能性アルデヒドリンカーは、グルタルアルデヒドである。
【0058】
一般的に使用される他のホモ二官能性リンカーは、求核性チオールと特異的に反応する求電子種を含み、これを使用して、上記のように、システイン含有エピトープペプチドをスルフヒドリル含有高分子電解質と連結させることができる。スルフヒドリル特異的ホモ二官能性リンカーの例としては、1,4-ビスマレイミドブタン、1,4ビスマレイミジル-2,3-ジヒドロキシブタン、ビスマレイミドへキサン、ビス-マレイミドエタン、1,4-ジ-[3´-(2´-ピリジルジチオ)-プロピオンアミド]ブタン、ジチオ-ビスマレイミドエタン、1,6-へキサン-ビス-ビニルスルホンが挙げられる。
【0059】
ヘテロ二官能性のクラスに属する架橋剤のメンバーは、2つの異なる反応基を含み、これらの反応基は、常にではないが多くの場合、求電子種であり、基質分子中の異なる官能基と特異的に反応する。特に有用なのは、スルフヒドリルに特異的な1つの求電子基とアミンに特異的なもう1つの求電子種とを含むリンカーである。これらの試薬の例としては、N-スルホスクシンイミジル[4-ヨードアセチル]アミノ安息香酸、N-スクシンイミジル[4-ヨードアセチル]アミノ安息香酸、スクシンイミジル3-[ブロモアセトアミド]プロピオン酸、N-スクシンイミジルヨード酢酸、スルホスクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボン酸、スクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボン酸、([N-e-マレイミドカプロイルオキシ]スルホスクシンイミドエステル、m-マレイミドベンゾイル-N-ヒドロキシスルホスクシンイミドエステル、N-スクシンイミジル3-(2-ピリジルジチオ)-プロピオン酸、スクシンイミジル6-(3-[2-ピリジルジチオ]-プロピオンアミド)へキサン酸、4-スクシンイミジルオキシカルボニル-メチル-a-[2-ピリジルジチオ]トルエンが挙げられる。
【0060】
エピトープペプチドおよび高分子電解質の両方に通常存在するか、またはそれらの分子のいずれかに容易に導入することができる、広範な官能基により、所望の基質に最も適した連結戦略を選ぶことが可能となる。想定しやすい一例としては、システイン含有エピトープペプチドをPLLに連結させることがある。
【0061】
非ペプチド性リンカーの化学に依存して、ポリペプチドセグメントは多様な方法で連結させることができる。例えば、第一のポリペプチドセグメントのN末端を第二のポリペプチドセグメントのC末端に連結させること、第一のポリペプチドセグメントのN末端を第二のポリペプチドセグメントのN末端に連結させること、第一のポリペプチドセグメントのC末端を第二のポリペプチドセグメントのC末端に連結させること、第一のポリペプチドセグメントのC末端を第二のポリペプチドセグメントのN末端に連結させること、第一のポリペプチドセグメントのC末端もしくはN末端を第二のポリペプチドセグメントのペンダント側鎖に連結させること、または、第二のポリペプチドセグメントのC末端もしくはN末端を第一のポリペプチドセグメントのペンダント側鎖に連結させること、ができる。しかしながら、どの位置に連結されるかに関わらず、第一および第二のセグメントが非ペプチド性リンカーによって共有結合的に連結されることになる。
【0062】
一実施態様では、設計されたポリペプチドは、共有結合された1つ以上の表面吸着領域と1つ以上のRSVエピトープとの特有の組合せである。RSVエピトープは長さについて特に限定はなく、直線状エピトープであっても立体構造性エピトープであってもよい。エピトープが含有するアミノ酸残基の数は、3つほどものから、複雑な立体構造性エピトープでは数百アミノ酸残基のものまで、様々であり得る。
【0063】
一実施態様では、設計されたポリペプチドは、1つのRSVエピトープと1つの表面吸着領域とを含む。別の実施態様では、設計されたポリペプチドは、1つのRSVエピトープと2つの表面吸着領域とを含み、これら2つの表面吸着領域の内の1つはRSVエピトープのN末端に連結し、もう1つはRSVエピトープのC末端に連結する。表面吸着領域の目的は、多層フィルムを形成するために、ポリペプチドを、反対に荷電した表面に吸着できるようにすることである。
【0064】
RSVエピトープの数および/または長さに対する、設計されたポリペプチド中の表面吸着領域の数は、可溶性についての要求に関係する。例えば、もしRSVエピトープが(例えば)3アミノ酸残基という短いアミノ酸配列である場合、設計されたポリペプチドを適切に荷電した表面に吸着させるためには、少なくとも8つのアミノ酸残基を有する表面吸着領域が1つ要求されるだけである。対照的に、もしRSVエピトープが(例えば)120アミノ酸残基を含むタンパク質の可溶性フォールド構造ドメインである場合は、設計されたポリペプチドを水溶性にして吸着に適するようにするために十分な電荷を付与するためには、2つの表面吸着領域が必要となり得る。表面吸着領域は、切れ目なく上記ドメインのN末端に位置するか、切れ目なく上記ドメインのC末端に位置するか、または、分断されてN末端に1つC末端に1つ存在し得る。それに加えて、RSVエピトープが、その本来の配列中に、表面吸着領域として作用し得る荷電セグメント(負に荷電または正に荷電)を含んでいてもよい。
【0065】
ポリペプチドまたは抗原は、1つ以上の個別の抗原決定基を含み得る。抗原決定基とは、複数鎖タンパク質の免疫原性部分を意味することもあり得る。
【0066】
特異的抗体にかかる抗原決定基またはエピトープの位置および組成を決定するための方法および技術は、当該技術分野においてよく知られている。これらの技術は、RSVエピトープとして使用するためのエピトープを同定および/または解析するために使用することができる。一実施態様では、抗原特異的抗体にかかるエピトープのマッピング/解析方法は、その抗原性タンパク質において露出したアミン/カルボキシルの化学修飾を使用したエピトープ「フットプリント法」により決定することができる。そのようなフットプリント法技術の一例は、HXMS(質量分析で検出される水素-重水素交換)の使用であり、そこでは、レセプターおよびリガンドタンパク質アミドプロトンの水素/重水素交換、結合、ならびに逆交換が起こり、タンパク質結合に関与している骨格アミド基は逆交換から保護されるので、重水素化されたままになる。この時点で、ペプチド分解、高速マイクロボア液体クロマトグラフィー分離、および/またはエレクトロスプレーイオン化質量分析により、関連する領域を同定することができる。
【0067】
別の実施態様では、適切なエピトープ同定技術は、核磁気共鳴エピトープマッピング(NMR)であり、そこでは通常、遊離の抗原、および、抗原結合ペプチド(例えば抗体)と複合体をなした抗原の、二次元NMRスペクトラムにおけるシグナルの位置が、比較される。抗原は通常、選択的に
15Nでアイソトープ標識され、NMRスペクトラム中で抗原に相当するシグナルだけが現れて抗原結合ペプチドからはシグナルが現れないようにする。抗原結合ペプチドとの相互作用に関与しているアミノ酸から生ずる抗原シグナルは、複合体のスペクトラムでは、遊離の抗原のスペクトラムと比較して、通常は位置がシフトし、それによって、結合に関与するアミノ酸を同定することができる。
【0068】
別の実施態様では、エピトープマッピング/解析は、ペプチドスキャニングによって行われ得る。このアプローチでは、抗原のポリペプチド鎖の全長に渡る一連のオーバーラップペプチドを調製して、それらを免疫原性について個々に試験する。相当するペプチド抗原の抗体力価は、例えば酵素結合免疫吸着アッセイ等の標準的な方法によって決定される。それからこれらの多様なペプチドを免疫原性についてランク付けし、ワクチン開発のためのペプチド設計の選択のための経験論的根拠を提供することができる。
【0069】
別の実施態様では、エピトープのマッピング及び同定との関連において、プロテアーゼ消化技術もまた有用となり得る。例えば、抗原タンパク質に対して約1:50の比率で、トリプシンを使用して、37℃、pH 7〜8で一晩(O/N)消化を行い、その後、ペプチド同定のために質量分析(MS)解析を行うことにより、抗原決定基関連領域/配列をプロテアーゼ消化によって決定することができる。その後、トリプシン消化をしたサンプルと、CD38BPとインキュベートした後に例えばトリプシンによる消化をしたサンプル(それによって結合物のフットプリントが現れる)との比較により、抗原タンパク質によってトリプシン分解から保護されていたペプチドを同定することができる。キモトリプシン、ペプシン等の他の酵素も、追加酵素としてまたは代替酵素として、同様のエピトープ解析方法において使用することができる。さらに、プロテアーゼ消化は、既知の抗体を使用して、既知の抗原タンパク質中における抗原決定基配列である可能性を有する配列の位置を決定するための、迅速な方法を提供することができる。他の実施態様では、エピトープのマッピング及び同定の文脈において、プロテアーゼ消化技術もまた有用となり得る。
【0070】
本明細書ではさらに、免疫原性組成物が開示され、この免疫原性組成物は、高分子電解質の2つ以上の層を含む多層フィルムを含み、ここで、隣接する層は反対に荷電した高分子電解質を含み、1つの層がRSVエピトープを含む。この免疫原性組成物は、任意で、設計されたポリペプチドを含む1つ以上の層をさらに含む。
【0071】
一実施態様では、免疫原性組成物は、複数のRSVエピトープを、同じかまたは異なる高分子電解質(例えば設計されたポリペプチド)上に含む。複数の抗原決定基は、同一のまたは異なる感染因子に由来したものであり得る。一実施態様では、免疫原性組成物は、複数の固有な抗原性高分子電解質を含む。別の実施態様では、この免疫原性組成物は、各高分子電解質中に複数のRSVエピトープを含む、複数の免疫原性高分子電解質を含む。これらの免疫原性組成物の1つの利点は、単一の合成ワクチン粒子中において、複数の抗原決定基、または、一つのリニアな抗原決定基の複数の立体構造を提示することができることである。複数の抗原決定基を有するこのような組成物は、複数のエピトープに対する抗体を生ずる可能性を有しており、その生物の免疫系によって産生される抗体の少なくともいくつかが、例えば病原体を無力化させたり癌細胞上の特定の抗原を標的にしたりするであろうという見込みを増加させる。
【0072】
免疫原性組成物の免疫原性は、多くの方法で増強することができる。一実施態様では、多層フィルムは、任意で、1つ以上の追加の免疫原性生理活性分子を含む。必須ではないが、上記1つ以上の追加の免疫原性生理活性分子は、通常、1つ以上の追加の抗原決定基を含む。適切な追加の免疫原性生理活性分子としては、例えば、薬剤、タンパク質、オリゴヌクレオチド、核酸、脂質、リン脂質、炭水化物、多糖、リポ多糖、低分子量免疫刺激性分子、または上記生理活性分子の1つ以上を含む組合せが挙げられる。他の種類の追加の免疫増強物質としては、機能性膜断片、膜構造、ウイルス、病原体、細胞、細胞の凝集、細胞小器官、または上記生理活性構造の1つ以上を含む組合せが挙げられる。
【0073】
一実施態様では、一実施態様では、多層フィルムは、任意で、1つ以上の追加の生理活性分子を含む。この1つ以上の追加の生理活性分子は、薬剤であり得る。あるいは、上記免疫原性組成物は、コアを囲む中空の殻またはコーティングの形態をとる。このコアは、多様な異なる封入物、例えば1つ以上の追加の生理活性分子(例えば薬剤)を含む。従って、本明細書に記載されているように設計された免疫原性組成物は、例えば免疫応答の誘導および標的化された薬物送達のような、併用療法のために使用することもできる。「結晶」形態にある適切な治療物質のミクロサイズの「コア」が、抗原性ポリペプチドを含む免疫原性組成物によって封入されていてもよく、結果として得られるマイクロカプセルを薬剤送達に使用することができる。上記コアは、ある条件(例えば高pHまたは低温度)下では不溶性で、制御された放出が起こる条件下では可溶性であってもよい。結晶上の表面電荷は、ζ電位測定(液状媒体中のコロイド粒子上における電荷を静電単位で決定するために使用される)によって決定することができる。マイクロカプセルの内容物が、マイクロカプセル内部から周囲環境へ放出される速度は、多くの因子に依存し、それらの因子としては、封入しているシェルの厚さ、シェルにおいて使われている抗原性ポリペプチド、ジスルフィド結合の存在、ペプチドの架橋の程度、温度、イオン強度、および、ペプチドを会合させることに使用される方法が挙げられる。一般的に、カプセルが厚いほど、放出時間は長くなる。
【0074】
一実施態様では、追加の免疫原性生体分子は、宿主生物による所望の免疫原の合成を誘導することができる、または、病原体からの遺伝情報の発現を妨害することができる、核酸配列である。前者の場合では、そのような核酸配列は、例えば、当業者に知られる方法によって適切な発現ベクター中に挿入される。インビボで高効率遺伝子導入を生じさせる上で適切な発現ベクターとしては、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、およびワクシニアウイルスベクターが挙げられる。そのような発現ベクターの作動エレメントとしては、少なくとも1つのプロモーター、少なくとも1つのオペレーター、少なくとも1つのリーダー配列、少なくとも1つの終止コドン、ならびに、ベクター核酸の適切な転写およびその後の翻訳にとって必要であるかまたは好ましい、他のあらゆるDNA配列が挙げられる。特に、そのようなベクターは、宿主生物によって認識される少なくとも1つの複製開始点と共に、少なくとも1つの選択可能マーカー、および、核酸配列の転写を開始させることができる少なくとも1つのプロモーター配列を含むことが企図される。後者の場合では、そのような核酸配列の複数のコピーを送達用に(例えば、静脈内送達用のカプセルの形態のポリペプチド多層フィルムにその核酸を封入することによって)調製する。
【0075】
リコンビナント発現ベクターの構築においては、所望の核酸配列の複数のコピーおよびそれに付随する作動エレメントを各ベクターに挿入し得る、ということにも加えて留意すべきである。そのような実施態様では、宿主生物のベクターあたりの所望タンパク質の産生量が、大きくなる。ベクターに挿入することができる核酸配列のコピー数を制限するのは、結果として得られるベクターが、そのサイズのために、適切な宿主微生物中に導入されてそこで複製され転写される能力を有することだけである。
【0076】
さらなる実施態様では、免疫原性組成物は、抗原性高分子電解質/免疫原性生理活性分子の混合物を含む。これらは同じ抗原に由来していてもよいし、同じ感染体もしくは疾患に由来する異なる抗原であってもよいし、または、異なる感染体もしくは疾患由来であってもよい。この複合体または混合物は、従って、送達システムの抗原性ペプチド/タンパク質成分によって特定されるとおり、多数の抗原、および場合によっては多数の感染体もしくは疾患に対して、免疫応答を起こさせる。
【0077】
一実施態様では、多層フィルム/免疫原性組成物は、病原体に対する応答を免疫系から誘導する。一実施態様では、ワクチン組成物は、薬学的に許容される担体と組み合わされた免疫原性組成物を含む。従って、病原性疾患に対するワクチン接種の方法は、ワクチン接種を必要としている患者に、有効量の免疫原組成物を投与することを含む。
【0078】
薬学的に許容される担体としては、タンパク質、多糖、ポリ乳酸、ポリグルコール酸、アミノ酸重合体、アミノ酸共重合体、不活性ウイルス粒子等、大きくてゆっくり代謝される巨大分子が挙げられるが、それらに限定されない。薬学的に許容される塩を組成物に使用することもでき、そのような塩の例としては、塩酸塩、臭化水素酸塩、リン酸塩、または硫酸塩のような無機塩、および、酢酸塩、プロピオン酸塩、マロン酸塩、または安息香酸塩のような有機酸の塩がある。組成物は、水、食塩水、グリセロール、およびエタノールのような液体を含んでいてもよいし、湿潤剤、乳化剤、またはpH緩衝剤のような物質を含んでいてもよい。リポソームを担体として使用することもできる。
【0079】
脊椎動物において疾患または病原体に対する免疫応答を誘導する方法(例えばワクチン接種)は、RSVエピトープを含む多層フィルムを含む免疫原性組成物を投与することを含む。一実施態様では、RSVエピトープを含む高分子電解質は、多層フィルムの最も外側の層、または溶媒にさらされる層にある。免疫原性組成物は、経口投与、鼻腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、腹腔内投与、舌下投与、皮内投与、肺投与、または経皮投与することができ、ブースター投与を伴っても伴わなくてもよい。一般的に、組成物は、その投与製剤に適合した方法で、かつ、予防上および/または治療上有効であろう量において投与される。投与される免疫原性組成物の正確な量は、実施者の判断に依存し、それぞれの患者に特有の量であり得る。免疫原性組成物の治療上有効な量は、投与スケジュール、投与される抗原の単位投与量、組成物が他の治療剤との組合せで投与されるか否か、ならびに、投与対象の免疫状態および健康状態にとりわけ依存するであろうことは、当業者にとっては明らかであろう。当該技術分野ではよく知られているように、治療上有効な投与量は、患者の特性(年齢、体重、性別、状態、合併症、他の疾患、等)に基づいて、通常の技術を有する医療従事者が決定することができる。また、日常的な研究がさらに行われるに従って、多様な患者における多様な状態の治療のための適切な投与レベルに関する、より具体的な情報が明らかとなるであろうし、通常の技術を有する実施者が、投与対象の治療状況、年齢、および全般的な健康状態を考慮して、適切な投与量を確認することができる。
【0080】
免疫原性組成物は、任意で、アジュバントを含む。アジュバントは、一般的に、非特異的な形で受容者の免疫応答を促進させる物質を含む。アジュバントの選択は、ワクチン接種する対象に依る。好ましくは、薬学的に許容されるアジュバントが使用される。例えば、ヒト用ワクチンでは、完全および不完全フロイントアジュバントを含む、油性または炭化水素性エマルジョンアジュバントは避けるべきである。ヒトに使用するのに適したアジュバントの一例は、ミョウバン(アルミナゲル)である。しかしながら、動物用ワクチンは、ヒトでの使用が不適切なアジュバントを含有し得る。
【0081】
免疫応答は、そのような応答を誘発する能力を有するあらゆるタンパク質またはペプチドの提示によって誘発し得ることが企図される。一実施態様では、抗原は、感染性疾患の特定の病原に対して強い免疫応答を生じさせる、鍵となる一エピトープ、すなわち免疫優性エピトープである。所望する場合には、免疫応答の見込みを上昇させるために、2つ以上の抗原またはエピトープを免疫原性組成物に含ませてもよい。
【0082】
一実施態様では、複数のRSVペプチドまたはタンパク質エピトープが、ELBLフィルムに組み入れられる。複数の個別のエピトープを、1つの設計されたペプチド分子中で合成または発現することができる。1つの設計されたペプチド中に複数のエピトープを配置することには一定の利点があると予測される。例えば、それによってELBLの製造プロセスが単純化され、生産性が高まるはずである。さらに、1つの設計されたペプチド中に複数のエピトープを配置することによって、それら個別のエピトープのモル比率が所望の比率(例えば1:1)に固定される。
【0083】
あるいは、別個の設計されたペプチドにエピトープを組み入れることもできる。それら複数の設計されたペプチドは、1つ以上の加層工程の中でELBLフィルムに組み入れられる。複数別個の設計されたペプチドを使用してフィルムを製造することもまた、一定の利点を提供し得る。それは設計されたペプチドの合成を単純化させてコストを下げるはずである。また、フィルム中の、それぞれの設計されたペプチドの相対的投与量を、変化させ最適化することを可能とする。例えば、理想的なワクチンは、第1のエピトープ5個につき第2のエピトープ1個(比率5:1)を含むべきだ、ということを前臨床または臨床の生物学的データが示していたならば、別個エピトープの設計されたペプチドのアプローチによって、そのようなワクチンの製造が促進されるであろう。
【0084】
設計されたペプチドは、設計されたペプチドの荷電した表面吸着領域と、反対に荷電したフィルム表面との間の静電引力によって、ELBLフィルムの表面に吸着する。吸着の効率は、表面吸着領域の組成に大きく依存する。従って、エピトープは異なるが表面吸着領域が似ている設計されたペプチドは、同様の効率で吸着する。2つの別個の設計されたペプチドをそれぞれ1:1のモル比で有するフィルムを製造するためには、ペプチドをそのモル比で混合して、特定の層で同時に堆積させることができる。あるいは、それぞれのペプチドを別々の層に個別に堆積させることができる。吸着されるペプチドのモル比は、それらが加層される際の相対的濃度、またはそれらが組み入れられる加層工程の回数を大きく反映する。
【0085】
ELBLに組み入れられる設計されたペプチドの量は、様々な方法で測定することができる。定量的アミノ酸分析(AAA)は特にこの目的によく適している。設計されたペプチドを含有するフィルムが、濃縮塩酸(6 M)および加熱(典型的には115℃で15時間)による処理によって、構成アミノ酸に分解される。その後、当業者によく知られたクロマトグラフィー技術を使用して、各々のアミノ酸の量が測定される。フィルム中で1種類の設計されたペプチドだけにあるアミノ酸は、そのペプチドのトレーサーとして使用できる。設計されたペプチドが特有のアミノ酸を欠いている場合には、合成の際に、設計されたペプチドに非天然アミノ酸(例えばアミノ酪酸またはホモバリン)を組み入れることができる。これらのトレーサーアミノ酸は、AAA実験の際に容易に同定され、そのフィルム中のペプチドの量を定量化するために使用できる。
【0086】
本明細書で使用される場合、特異的T細胞応答とは、所望のエピトープに対して特異的な応答であり、具体的には、本明細書で開示されるように、RSV-M2エピトープのようなRSVエピトープに対して特異的な応答である。特異的T細胞応答は、細胞傷害性T細胞応答またはヘルパーT細胞応答であり得るが、細胞傷害性T細胞応答であることが好ましい。
【0087】
本明細書で使用される場合、特異的抗体応答とは、所望のエピトープに対して特異的な応答であり、具体的には、本明細書で開示されるように、RSV-GエピトープのようなRSVエピトープに対して特異的な応答である。
【0088】
本明細書で使用される場合、「層」とは、(例えばフィルム形成の鋳型上における)吸着工程後の厚みの増加単位を意味する。「多層」とは、複数の(すなわち2つ以上の)厚みの増加単位を意味する。「高分子電解質多層フィルム」とは、高分子電解質の厚みの増加単位を1つ以上含むフィルムである。堆積後、多層フィルムの層は、はっきり区別された層としては残らないことがあり得る。事実、特に厚みの増加単位の接触面において、種(species)が著しく混じり合うことがあり得る。混じり合い、あるいはその欠如は、ζ電位測定、X線光電子分光法、および飛行時間型二次イオン質量分析のような分析技術によってモニターすることができる。
【0089】
「アミノ酸」とは、ポリペプチドの構築ブロックを意味する。本明細書で使用される場合、「アミノ酸」は、20の通常の天然L-アミノ酸、その他のすべての天然アミノ酸、すべての非天然アミノ酸、およびすべてのアミノ酸模倣物(例えばペプトイド)を含む。
【0090】
「天然アミノ酸」とは、グリシンと20の通常の天然型L-アミノ酸、すなわち、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、セリン、トレオニン、システイン、メチオニン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、アルギニン、リシン、ヒスチジン、フェニルアラニン、オルニチン、チロシン、トリプトファン、およびプロリンを意味する。
【0091】
「非天然アミノ酸」とは、上記20の通常の天然L-アミノ酸以外のアミノ酸を意味する。非天然アミノ酸は、L-またはD-立体化学のいずれかを有し得る。
【0092】
「ペプトイド」、あるいはN-置換グリシンとは、対応するアミノ酸モノマーの類似体を意味し、対応するアミノ酸と同じ側鎖を有するが、その残基のα-炭素にではなくて、アミノ基の窒素原子にその側鎖が結合しているものである。従って、ポリペプトイドのモノマー間の化学結合はペプチド結合ではなく、そのことはタンパク質消化を制限する上で有用となり得る。
【0093】
「アミノ酸配列」および「配列」とは、少なくとも2アミノ酸残基の長さであるポリペプチド鎖の切れ目ない繋がりである。
【0094】
「残基」とは、ポリマーまたはオリゴマー中のアミノ酸を意味する。それはそのポリマーが形成されたところのアミノ酸モノマーの残基である。ポリペプチド合成には脱水反応が関わり、すなわち、ポリペプチド鎖にアミノ酸が付加されると1つの水分子が「失われる」。
【0095】
本明細書で使用される場合、「ペプチド」および「ポリペプチド」はいずれも、隣接するアミノ酸のアルファ-アミノ基とアルファ-カルボキシ基との間のペプチド結合によって互いに連結された一連のアミノ酸を表し、グリコシル化、側鎖酸化、またはリン酸化等の修飾を含んでも含まなくてもよい(ただし、そのような修飾、またはその欠如が、免疫原性を破壊しないことが条件である)。本明細書で使用される場合、「ペプチド」という用語は、ペプチドとポリペプチドまたはタンパク質との両方を表すことが意図される。
【0096】
「設計されたポリペプチド」とは、反対に荷電した表面に安定的に結合するために十分な電荷を有するポリペプチド、すなわち、フィルム形成の原動力が静電気であるところの多層フィルムの一層として堆積できるポリペプチドを意味する。特定の実施態様では、設計されたポリペプチドは、少なくとも15アミノ酸の長さであり、pH 7.0におけるポリペプチドの残基あたりの実効電荷の大きさが0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.4以上、または0.5以上である。一実施態様では、pH 7.0において、ポリペプチド中の残基の総数に対する、同じ極性の荷電残基数から逆の極性の残基数を引いたものの比が、0.5以上である。別の言い方をすると、ポリペプチドの残基あたりの実効電荷の大きさが0.5以上である。ポリペプチドの長さについて絶対的な上限はないが、一般的には、ELBL堆積に適した設計されたポリペプチドの長さの実用的な上限は1,000残基である。設計されたポリペプチドは、RSVエピトープのような、自然界に見られる配列を含んでいてもよいし、本明細書で表面吸着領域とも称される荷電領域(これによって、設計されたポリペプチドをポリペプチド多層フィルムに堆積させることが可能となる)のような、ペプチドに機能性を提供する領域を含んでいてもよい。
【0097】
「一次構造」とは、ポリペプチド鎖中のアミノ酸の切れ目ない直線的配列を意味し、「二次構造」とは、非共有結合性相互作用(通常は水素結合)によって安定化される、ポリペプチド鎖中の多かれ少なかれ決まりきった種類の構造を意味する。二次構造の例としては、α‐へリックス、β‐シート、およびβ‐ターンが挙げられる。
【0098】
「ポリペプチド多層フィルム」とは、上記で定義された1つ以上の設計されたポリペプチドを含むフィルムを意味する。例えば、ポリペプチド多層フィルムは、設計されたポリペプチドを含む第一の層と、その設計されたポリペプチドとは反対の極性の実効電荷を有する高分子電解質を含む第二の層とを含む。例えば、もし第一の層が正の実効電荷を有するならば、第二の層は負の実効電荷を有する。もし第一の層が負の実効電荷を有するならば、第二の層は正の実効電荷を有する。この第二の層は、別の設計されたペプチド、または別の高分子電解質を含む。
【0099】
「基質」とは、水溶液からの高分子電解質の吸着に適した表面を有する、固体材料を意味する。基質の表面は、本質的にいかなる形状を有していてもよく、例えば平面状、球状、棒状等であり得る。基質表面は規則的でも不規則的でもよい。基質は結晶であってもよい。基質は生理活性分子であってもよい。基質は、そのサイズに関しては、ナノスケールからマクロスケールまで多様である。さらに、基質は、任意で、いくつかの小さなサブ粒子を含む。基質は、有機材料、無機材料、生理活性材料、またはこれらの組合せから構成され得る。基質の非限定的な例としては、シリコンウェーハ、荷電コロイド粒子(例えば、CaCO
3またはメラミンホルムアルデヒドのマイクロ粒子)、生物学的細胞(例えば赤血球、肝細胞、細菌細胞、または酵母細胞)、有機ポリマー格子(例えばポリスチレンまたはスチレン共重合体格子)、リポソーム、細胞小器官、およびウイルスが挙げられる。一実施態様では、基質は、人工ペースメーカー、人工内耳、またはステントのような医療機器である。
【0100】
フィルムの形成中または形成後に、基質が分解されるか、もしくはその他の方法で除去される場合は、その基質は(フィルム形成のための)「鋳型」と呼ばれる。鋳型粒子は、適切な溶媒に溶解させたり、熱処理したりすることにより、除去することができる。例えば、部分的に架橋されたメラミンホルムアルデヒド鋳型粒子が使用される場合には、その鋳型は、穏やかな化学的方法によって(例えばDMSO中で)、または、pH値の変化によって、分解させることができる。鋳型粒子が溶解した後、交互に堆積された高分子電解質の層から構成される、中空の多層殻が残る。
【0101】
「カプセル」とは、コアを包囲する中空の殻またはコーティングの形態をとる、高分子電解質フィルムである。コアは、様々に異なる封入物、例えば、タンパク質、薬剤、またはそれらの組合せを含む。直径が約1μmよりも小さいカプセルは、ナノカプセルと呼ばれる。直系が約1μmよりも大きいカプセルは、マイクロカプセルと呼ばれる。
【0102】
「架橋」とは、2つ以上の分子間で 、1つの共有結合、またはいくつかの結合、または多くの結合が形成することを意味する。
【0103】
「生理活性分子」とは、生物学的作用を有する分子、巨大分子、または巨大分子集合体を意味する。特定の生物学的作用は、適切なアッセイで、生理活性分子の単位重量あたりまたは分子あたりで標準化することにより、測定することができる。生理活性分子は、カプセル封入されていてもよいし、後方に保持(retained behind)されていてもよいし、または高分子電解質の内部に封入されていてもよい。生理活性分子の非限定的な例は、薬剤、薬剤の結晶、タンパク質、タンパク質の機能性断片、タンパク質の複合体、リポタンパク質、オリゴペプチド、オリゴヌクレオチド、核酸、リボソーム、活性治療剤、リン脂質、多糖、リポ多糖である。本明細書で使用される場合、「生理活性分子」はさらに、例えば機能性膜断片、膜構造、ウイルス、病原体、細胞、細胞の凝集体、および細胞小器官のような、生物学的活性構造も包含する。カプセル封入することができる、またはポリペプチドフィルムの後方に保持することができるタンパク質の例は、ヘモグロビン、酵素(例えばグルコースオキシダーゼ、ウレアーゼ、リゾチーム等)、細胞外マトリックスタンパク質(例えばフィブロネクチン、ラミニン、ビトロネクチン、およびコラーゲン)、および抗体である。カプセル封入することができるか、または高分子電解質フィルムの後方に保持することができる細胞の例は、移植膵島細胞、真核性細胞、細菌細胞、植物細胞、および酵母細胞である。
【0104】
「生体適合性」とは、経口摂取、局所適用、経皮適用、皮下注射、筋肉内注射、吸入、移植、または静脈内注射した際に、実質的に健康を害する作用を起こさないことを意味する。例えば、生体適合性フィルムには、(例えばヒトの)免疫系に接したときに、実質的な免疫応答を引き起こさないフィルムが含まれる。
【0105】
「免疫応答」とは、身体のどこかにおける、ある物質の存在に対する細胞性または液性免疫系の応答を意味する。免疫応答は、例えば、ある抗原を認識する抗体の血流中数の増加等、多くの形で特徴付けられ得る。抗体はB細胞により分泌されるタンパク質であり、免疫原とは免疫応答を誘発させるものである。人体は、血流中およびその他の場所における抗体数を増加させることにより、感染と闘い、再感染を抑制する。
【0106】
「抗原」とは、感受性の脊椎生物の組織に導入されたときに免疫応答(例えば、特定の抗体分子の産生)を誘発させる、外来物質を意味する。抗原は1つ以上のエピトープを含む。抗原は、純粋な物質、物質の混合物(細胞または細胞断片を含む)であり得る。抗原という用語は、適切な抗原決定基、自己抗原(auto-antigen)、自己抗原(self-antigen)、交差反応性抗原、同種抗原、寛容原、アレルゲン、ハプテン、および免疫原、またはその部分、ならびにその組合せを包含し、これらの用語は互換的に使用される。抗原は一般的に高分子量であり、通常はポリペプチドである。強い免疫応答を誘発させる抗原は、強く免疫原性であるという。相補的な抗体が特異的に結合し得る、抗原上の部位は、エピトープまたは抗原決定基と称される。
【0107】
「抗原性」とは、その組成物に特異的な抗体を生じさせる、または、細胞媒介性免疫応答を生じさせる、組成物の能力を表す。
【0108】
本明細書で使用される場合、「エピトープ」および「抗原決定基」という用語は互換的に使用され、抗体に認識される、抗原(例えばタンパク質または設計されたペプチド)の構造または配列を意味する。普通はエピトープはタンパク質の表面上にある。「連続的エピトープ」とは、切れ目なく繋がるいくつかのアミノ酸残基が関与するものであって、折りたたまれたタンパク質中でたまたま接触していたり、たまたま限られた空間の領域にあったりする複数のアミノ酸残基が関与するものではない。「立体構造性エピトープ」は、タンパク質の三次元構造中で接触するようになる、タンパク質の直線的配列の複数の異なる部分からのアミノ酸残基が関与する。抗原と抗体との間で効率的な相互作用が起こるためには、エピトープがすぐに結合に供し得る状態になければならない。従って、エピトープすなわち抗原決定基は、抗原の本来の細胞環境において存在するか、または、変性された時にだけ露出される。自然の状態ではそれは、細胞質性(可溶性)であるか、膜に付随しているか、または分泌性である。エピトープの数、位置、および大きさは、抗体産生プロセスの間にその抗原がどれだけ提示されるかに依存する。
【0109】
本明細書で使用される場合、「ワクチン組成物」とは、投与を受けた哺乳類において免疫応答を誘発させ、その免疫誘発剤または免疫学的に交差反応性である物質による後発的な攻撃から、その免疫された生物体を防護する、組成物である。防護は、ワクチン非接種生物体と比較した場合の症状または感染の減少という点において、完全でも部分的でもあり得る。免疫学的に交差反応性である物質は、例えば、免疫原として使用するためのサブユニットペプチドが由来するタンパク質全体(例えばグルコシルトランスフェラーゼ)であり得る。あるいは、免疫学的に交差反応性である物質は、上記免疫誘発剤により誘発された抗体によってその全体または部分が認識される、異なるタンパク質であり得る。
【0110】
本明細書で使用される場合、「免疫原性組成物」とは、投与を受けた生物体において免疫応答を誘発させる組成物を包含することが意図され、その組成物は、その免疫された哺乳類を、その免疫誘発剤による後発的な攻撃から防護してもよいししなくてもよい。一実施態様では、免疫原性組成物はワクチン組成物である。
【0111】
以下の非限定的な実施例によって、本発明をさらに説明する。
【実施例】
【0112】
実施例1:設計されたポリペプチド(DP)の合成
設計されたポリペプチドは、RSV-G、RSV-F、またはRSV-M2タンパク質の配列中に存在するエピトープに基づいて作製した。全長タンパク質のアミノ酸配列は以下のとおりである(設計されたポリペプチドに組み入れられた選択ペプチドエピトープには下線を付す)。
【0113】
設計されたペプチドは、マイクロ波温度制御を備えたLiberty(登録商標)(CEM社, Matthews, NC)自動合成機を使用して、段階的固相ペプチド合成によって合成した。ペプチドは、標準的なFmocアミノ酸、HBTU/DIEA活性化、および通常のダブルカップリング法を使用して、RinkアミドまたはWang酸ポリスチレン樹脂上に合成された。合成後、樹脂を乾燥させ、TFA/トリイソプロピルシラン/フェノール/3,6-ジオキソ-1,8-オクタンジチオール/水(86:4:4:3:3)で2時間処理することにより、ペプチドを切り離した。未精製ペプチドをエーテルで沈殿させ、遠心分離し、真空下で乾燥させた。ペプチドは、水(0.1%トリフルオロ酢酸)/アセトニトリル勾配を使用したC
18逆相HPLCによって精製した。各々の精製ペプチドのアイデンティティーは、エレクトロスプレー質量分析(ESMS)によって確認した。最終的な収率は、280 nmにおけるUV吸収、および/または、アミノ酸分析によって、計算した。ペプチドを分注し、凍結乾燥し、使用時まで-20℃にてトリフルオロ酢酸塩として貯蔵した。
【0114】
表1は、RSV-G、RSV-F、およびRSV-M2タンパク質から選択されたエピトープを示す。それぞれのエピトープは、Lys
20 (K
20)またはLys-Val-Lys-Alaリピート(KVKA)
4等の、C末端ポリイオン性テールの付加により、設計されたペプチド(DP)に組み入れられた。通常は、UVによる定量化を促進させるために、C末端チロシンを組み入れた。RSV-M2の天然配列は位置96においてシステインを含む。合成エピトープペプチドにおいては、その位置における望ましくないジスルフィド結合を防ぐために、この残基はセリンによって置き換えられた(C96S)。
表1:選択されたRSVエピトープの配列および特徴
【表1】
【0115】
実施例2:RSV-Gタンパク質由来の立体構造性エピトープを含む設計されたポリペプチドの折りたたみと構造の確認
RSVアタッチメントタンパク質(RSV-Gタンパク質)は、4つの保存されたシステイン残基を有し、これらのシステイン残基が、アミノ酸169〜191の中に位置する2つの内部ジスルフィド結合を形成する。この領域を認識する抗体はRSVを無力化することができるので、このセグメントに由来する立体構造限定合成ペプチドは、効果的なワクチン成分であり得る。以前の研究では、タンパク質消化、HPLC、および質量分析の組合せを使用して、Cys173がCys186に結合しており、Cys176がCys182に結合していることが示された。RSV-Gタンパク質の残基169〜191を含むペプチドを、固相ペプチド合成によって合成した。中性pHでこれらのペプチドは容易に酸化し、結果として生じる産物は、ESMSスペクトラムにおいて4つのプロトンが消失していること、および、エルマン(DTNB)アッセイにおける陰性シグナルによって測定されるとおり、2つの内部ジスルフィドを含んでいると見られる。上記酸化反応が起こる容易さ、および、変換の明快さは、自然本来のジスルフィドが形成されていることを強く示唆している。典型的な実験では、還元されたRSV-Gペプチド(例えば、配列番号8、11、13、14、15)を、2.5 mMのグルタチオンおよび2.5 mMのグルタチオールを含むTris pH 7.4中に、1〜5 mg/mLの濃度で溶解する。酸化産物は還元ペプチドと比べて滞留時間が短い方にわずかにシフトすることから、折りたたみ反応はC
18逆相HPLCによってモニターされる。この基準によれば、折りたたみ反応は、室温では2時間後には完了し、4℃では18時間後には完了すると判断される。
【0116】
折りたたまれたACT-2044(RSV-G
164-191K
21Y アミド)(配列番号8)のサンプルを、エレクトロスプレーフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FT-ICR MS)を使用して解析した。MH
6+6荷電状態が強いシグナルを生じ、MH
6+6ピークの拡張したスペクトラムを
図1に示す。質量電荷比(m/z)1015.6008におけるモノアイソトピックピークは、6087.56 amuのモノアイソトピック質量に相当し、これは計算上のモノアイソトピック質量である6088.51 amuに非常に近く、この結果は、ACT-2044中に2つのジスルフィド結合が存在することと完全に整合する。同様に、折りたたまれたACT-2086(RSV-M2
81-98G
164-191 K
20Y アミド(配列番号13))のサンプルをFT-ICR MSによって解析し、そのスペクトラムを
図2に示す。強いピークがMH
6+6 − MH
10+10荷電状態について観察された。MH
9+9モノアイソトピックピークは、7795.344 amuのモノアイソトピック質量に相当する867.1571のm/zを有し、これは計算上のモノアイソトピック質量7795.33 amuに非常に近い。この結果もやはり、2つのジスルフィド結合が存在することと完全に整合する。
【0117】
ACT-2044(RSV-
G164-191K21Y )(配列番号8)のサンプルについてサーモリシン消化を行った。消化物のHPLC解析は、出発ペプチドが完全に消費されたことを示した。この産物のFT-ICRスペクトラムは、複数の産物の複雑な混合物を含んでいたが、主たるイオンはm/z 1106.4において見出された。この種は、分子内ジスルフィド結合されたRSV-G
175-184についてのMH
+1荷電状態に相当する(シクロ-I
CSNN
PT
CWA(配列番号10)、予測MH
+ 質量 = 1106.440、実測値 = 1106.438)。このペプチドは、Cys176とCys182との間の自然本来のジスルフィド結合を示すものである。要約すると、FT-ICR MSデータは、ACT-2044(および、密接に関連したペプチドACT-2042、(配列番号11)、ACT-2086、(配列番号13)、ACT-2087、(配列番号14)、ACT-2088、(配列番号15))が正しい(自然本来の)パターンで2つの内部ジスルフィドを含んでいるという主張を強く裏付けている。
【0118】
実施例3:ELBLナノ粒子の製造のための一般的な手順
CaCO
3ナノ粒子(NPCC-111)は、NanoMaterials Technology社(シンガポール)から入手した。走査型電子顕微鏡(SEM)実験は、粒子は立方体形態を有し、直径約50 nmであることを示した。ポリペプチドであるポリ-l-リシン15 kDa(PLL、カタログ番号P6516)およびポリ-l-グルタミン酸14.5 kDa(PGA、カタログ番号P4636)、ならびに1 M HEPES緩衝液(カタログ番号H-3662)は、Sigma-Aldrich社(米国)から入手した。反対に荷電したポリペプチドを、連続的な吸着工程において、CaCO
3ナノ粒子コア上の多層フィルムへと自己会合させた。手短に述べると、PLL、PGA、または設計されたポリペプチド(DPと表すこともある)を、10 mM HEPES、pH 7.4中に1 mg/ml(重量/体積)となるように溶解させ、0.22μmフィルターを通してフィルター処理した。CaCO
3ナノ粒子コアを、内毒素費含有水で3回洗浄し、16,000 gで1分間、微量遠心機中で遠心分離した。ナノ粒子コアを、第1の層としての1 mg/ml PGA中に、6%(重量/体積)となるように再懸濁させた。中性pHでは、PGAは負の実効電荷を示し、CaCO
3粒子は正の実効電荷であるから、静電的相互作用、および、第1の層の堆積が可能となる。上記混合物に対して室温で10分間、超音波処理をし、10 mM HEPESバッファーで2回洗浄し、48,700 x gで1分間、遠心分離した(TL-100超遠心機、Beckman社)。第2の層を堆積するために、ナノ粒子を、1 mg/mlのPLL(正に荷電)中に、6% (w/v)となるように再懸濁し、第1の層の場合と同じように、室温で10分間、超音波処理をした。表2または表3に示すように、PGA、PLL、またはDPを使用して、後に続く層のそれぞれを同じ方法で堆積させた。典型的には、設計されたペプチドは0.5〜1.0 mg/mLの濃度でコーティングされた。最後の層を堆積させた後、ナノ粒子を、10 mM HEPES、pH 7.4で2回洗浄し、分注したものを遠心で沈殿させて液を吸引し、使用時まで、湿ったペレットとして4℃で貯蔵した。本質的に同じ手順を使用して、そして設計されたペプチドの配列と位置を変えて、いくつかの設計を作製した。すべてのナノ粒子は、ポリペプチドバイオフィルム中に合計8つの層を含む。ナノ粒子の設計を表2に要約する。ナノ粒子上のポリペプチドまたはDPの濃度は、アミノ酸分析により決定した。ナノ粒子のサイズは、HEPES、pH 7.4中の0.06% (w/v)懸濁液の動的光散乱(Malvern Nano S-90)により決定し、測定前に超音波ウォーターバス(Branson 1510、米国)中で20分間超音波処理した。ナノ粒子中のエンドトキシンのレベルは、エンドポイント発色性アッセイであるLimulus Amebocyte Lysateアッセイ(#50-647U, Lonza, Walkersville, MD)によって決定した。調製したナノ粒子は、使用時まで、湿ったペレットとして4℃で貯蔵した。
【0119】
表2:一価ナノ粒子の設計。ACT #は、別個のナノ粒子設計の名称を表す。DP #は、別個の設計されたペプチドを表す。DP配列欄は、それぞれのDPに含ませた特定のRSVエピトープおよびポリイオン性テールを列記している。
【表2】
【0120】
実施例4:ELBLナノ粒子ACT-1077の製造および解析
実施例3に記述した標準的な手順に従った。設計されたペプチドACT-2031(RSV-M2
81-98(KVKA)
4(配列番号12))の1.0 mg/mLの溶液を、2番目のELBLコーティング工程において使用し、設計されたペプチドACT-2044(RSV-G
164-191K
21Y(配列番号8))の1.0 mg/mLの溶液を、8番目のELBL工程に使用した。各々の加層工程の後に、ナノ粒子を洗浄し、6%となるように再懸濁した。表面(ゼータ)電位解析のために、10μLの分量を取り出し、1.0 mLの10 mM HEPESバッファー中に希釈した。
図3は、ELBLプロセスの各工程におけるナノ粒子について測定された表面ゼータ電位を示す。コーティングする前には、CaCO
3粒子は、約+28 mVの正の表面電位を示した。1層のPGAでコーティングした後には、-18 mVの負の表面電位が測定された。2番目の層におけるACT-2031(配列番号12)によるコーティングは、ゼータ電位を約0 mVまで上昇させたが、これはそのペプチドが吸着されたことを示している。その後、各々の加層工程が、ゼータ電位を負または正にシフトさせたが、これはELBL吸着が成功していることを示している。製造後、吸着された各々の設計されたペプチドの量を、アミノ酸クロマトグラムにおける固有アミノ酸のシグナルから計算した。グリシンはACT-2031に固有であって、ACT-2031の濃度を決定するために使用できる一方、アルギニン、ヒスチジン、およびフェニルアラニンはACT-2044に固有であって、ACT-2044の濃度を決定するために使用できる。4つの別々のバッチについて、1% CaCO
3粒子懸濁液に吸着されたACT-2031およびACT-2044の平均量は、それぞれ21μg/mLおよび53μg/mLであった。
【0121】
実施例5:ELBLナノ粒子ACT-1086の製造
実施例3で記述したELBLコーティング手順を使用して、50 nm CaCO
3ナノ粒子を7層のPGAおよびPLLでコーティングした。10 mM HEPESバッファー中の設計されたペプチドACT-2086(配列番号13;RSV-M2
81-98G
164-191 K
20Yアミド)の0.5 mg/mL溶液を、最終層のコーティングに使用した。吸着された設計されたペプチドの量は、アミノ酸分析で測定した。3つの別々のバッチについて、1% CaCO
3粒子懸濁液に吸着されたACT-2086の平均量は、37μg/mLであった。
【0122】
実施例6:ELBLナノ粒子ACT-1139の製造
実施例3で記述したELBLコーティング手順を使用して、50 nm CaCO
3ナノ粒子を7層のPGAおよびPLLでコーティングした。最終濃度がそれぞれ0.25 mg/mLである、設計されたペプチドACT-2033(配列番号16;RSV M2
81-98 K
20Yアミド)およびACT-2044(配列番号8; RSV-G
161-191 K
21Yアミド)の10 mM HEPES溶液を、最終層のコーティングに使用した。ナノ粒子を洗浄し、遠心で沈殿させ、湿ったペレットとして4℃で貯蔵した。吸着された各々の設計されたペプチドの量は、アミノ酸クロマトグラムにおける固有アミノ酸のシグナルから計算された。グリシンはACT-2033に固有であってACT-2033の濃度を決定するために使用できる一方、アルギニン、ヒスチジン、およびフェニルアラニンはACT-2044に固有であってACT-2044の濃度を決定するために使用できる。この解析から、1%粒子懸濁液は25μg/mLのACT-2033および24μg/mLのACT-2044を含むことが明らかとなった。
【0123】
実施例7:ELBLマイクロ粒子ACT-1145の製造
メソ多孔性の3μm CaCO
3マイクロ粒子は、PlasmaChem GmbH社(ベルリン、カタログ番号PL-CA3)から入手した。粒子を、10 mM HEPES中で6%(重量/体積)となるように懸濁した。CaCO
3ナノ粒子について実施例3で記述したELBLコーティング手順を、以下の変更を加えて使用した。3μm CaCO
3マイクロ粒子は、水性懸濁液中で通常の重力で容易に沈下するので、加層工程中に、超音波処理をするかわりに、懸濁液をローテーター上で10分間穏やかに混合した。また、加層工程および洗浄工程の後にマイクロ粒子をペレットとするために、より遅い遠心速度を使用することができる。従って、マイクロ粒子懸濁液は1500 gで1分間の遠心で沈殿させた。ACT-1145の製造のためには、PGAの1.0 mg/mL溶液を使用して1番目の層をコーティングし、フルオレセインで標識したPLL(PLL-FITC、Sigma社カタログ番号 P3543)の1.0 mg/mLの層を2番目の層に使用した。続く5回の加層工程でPGAおよびPLLを使用して、マイクロ粒子を合計7つのポリペプチド層でコーティングした(これらの粒子は、実施例8に記述するように、アミド架橋実験に使用することができる)。ACT-2086(配列番号13;RSV-M2
81-98G
164-191 K
20Yアミド)の0.5 mg/mL溶液を、最終層のコーティングに使用した。マイクロ粒子を洗浄し、遠心で沈殿させ、湿ったペレットとして4℃で貯蔵した。粒子に吸着されたACT-2086の量は、アミノ酸分析によって計算され、1%粒子懸濁液について43μg/mLであることが見出された。粒子を蛍光顕微鏡で検査したところ、3.0 (+/- 1.5) μmの直径を有する球状であることが見出された。粒子はよく分散された個々の粒子であり、2つまたは3つの粒子の集合体が少数あった。
【0124】
実施例8:ELBLマイクロ粒子ACT-1146の製造
実施例7の手順を使用して、7つのポリペプチド層(PGA/PLL-FITC/PGA/PLL/PGA/PLL/PGA)を有する3μm CaCO
3マイクロ粒子を製造した。38 mg/mL (0.20 M)の1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド (EDC、Sigma社カタログ番号E6383)および11 mg/mL (0.05 M)のN-ヒドロキシスルホスクシンイミド・ナトリウム塩(スルホ-NHS、Sigma社カタログ番号56485)を含む0.2 Mリン酸ナトリウムpH 6.5バッファーの溶液を新たに調製した。7層マイクロ粒子をEDC/スルホ-NHS溶液に懸濁し、3%懸濁液とした。懸濁液を室温で30分間、穏やかに混合し、それから粒子を遠心で沈殿させて10 mM HEPESバッファーで3回洗浄した。ACT-2086(配列番号13;RSV-M2
81-98G
164-191 K
20Yアミド)の0.5 mg/mL溶液を使用して最終層をコーティングした。マイクロ粒子を洗浄し、遠心で沈殿させ、湿ったペレットとして4℃で貯蔵した。粒子に吸着されたACT-2086の量は、アミノ酸分析によって計算され、1%粒子懸濁液について49μg/mLであることが見出された。
【0125】
実施例9:ELBLマイクロカプセルACT-1147の製造
実施例8のCaCO
3マイクロ粒子ACT-1146を、0.5 M EDTAナトリウム、pH 8.0溶液中に6%(重量/体積)となるように懸濁した。粒子を室温で30分間、穏やかに混合し、1500 gで3分間遠心分離し、EDTA溶液を吸引した。結果として得られたマイクロカプセルを、2回、10 mM HEPESバッファーに再懸濁させて1500 gで3分間遠心分離し、過剰な塩を除去した。マイクロカプセルを遠心で沈殿させ、液を吸引し、湿ったペレットとして4℃で貯蔵した。カプセルに吸着されたACT-2086の量はアミノ酸分析によって計算され、1%粒子懸濁液について41μg/mLであることが見出された。カプセルを蛍光顕微鏡で検査したところ、3.0 (+/- 1.5) μmの直径を有する球状であることが見出された。カプセルはよく分散された個々のカプセルであり、2つまたは3つのカプセルの集合体が少数あった。
【0126】
実施例10:RSV-G一価ナノ粒子の免疫原性
BALB/cマウスを、足蹠注射により、ナノ粒子ACT-1042(DP配列番号8;RSV-G
164-191)で3回免疫し、血清を採取してELISAで試験した。血清は、立体構造性RSV-G CX3CエピトープペプチドACT-1042を認識したが(
図4)、システイン残基をキャッピングすることにより直線化した型の同じペプチド(ACT-2054)は認識しなかった(
図5)。この血清はまた、未変性RSV-Gタンパク質も認識し(
図6)、RSV-G ELBLナノ粒子による免疫処置は立体構造依存的抗体応答を誘発させたことが示唆された。ACT-1042によって誘発された抗体応答の生物学的活性は、RSV-G CX3Cケモカイン結合の阻害(
図7)、および、精製RSV-Gへと向かうヒトPBMCの遊走の阻害(
図8)を測定するアッセイによって確認された。従って、立体構造が制限されたRSV-G CX3Cエピトープに基づく、設計されたペプチドを組み入れた、新規のナノ粒子ワクチンの設計は、生物学的に意味のある抗体応答を誘発させることができる。
【0127】
実施例11:RSV-M2一価ナノ粒子の免疫原性
BALB/cマウスは、s.c.(皮下)、i.p.(腹腔内)、i.n.(鼻腔内)、または足蹠を介して、ナノ粒子ACT-1023(RSV-M2
81-98)(DP配列番号12)で免疫した。陽性対照のマウスは、フロイントの完全アジュバント(CFA)中のペプチドACT-2019(RSV-M2
81-95;配列番号7)でs.c.で免疫し、フロイントの不完全アジュバント(IFA)中のACT-2019でブースト接種を行った。未免疫のマウスを陰性対照とした。脾臓におけるT細胞応答は、免疫後14日目に、IL-4およびIFNγELISPOTアッセイで測定した。
図9のデータは、ACT-1023を用いた免疫が弱いIL-4 ELISPOTsを誘発したことを示しているが、これはそのDPに含まれるCD8エピトープから予測される通りである。対照的に、足蹠を介して免疫したマウスでは、一回の免疫後に強力なIFNγ応答が生じた。s.c.群およびi.p.群ではより弱い応答が生じたが、それでも陽性対照のCFA群に匹敵していた。この実験では、鼻腔内送達では免疫原性が見られなかった。ペプチド単独での免疫は、低いレベルのIFNγ応答が生じた。従って、RSV-M2ペプチドの効力は、ELBLナノ粒子中にそれを埋め込むことによって著しく上昇するということを、本発明者らは確証した。
【0128】
実施例12:多価カクテルワクチン中で組み合わされた場合における、RSV-GおよびRSV-M2ナノ粒子の改善された免疫原性
どちらかの一価ナノ粒子ワクチンを用いたマウスの免疫化では、予測された免疫応答が誘発された(
図4〜8および9を参照のこと)。
図4〜8に図示されている抗体応答は、3回の免疫処置を必要とした(第一次免疫処置+2回のブースト接種)一方、
図9に図示されているT細胞応答は単一の(第一次の)免疫処置を要するのみであったことは、興味深い。RSV-GおよびRSV-M2の両方を含む多価ナノ粒子ワクチンは、RSV-G成分の免疫効力を向上させることができるか否かを決定するために、RSV-G(ACT-1042、投与あたり1μg DP)ナノ粒子とRSV-M2(ACT-1023、投与あたり5μg DP)ナノ粒子との混合物を用いて、足蹠または鼻腔内を介した送達によってマウスを免疫化した。第一次免疫処置後およびブースト後の抗体力価をELISAによって測定し、ブースト後のT細胞応答をELISPOTによってモニターした。いずれの構築物の投与を受けたマウスも、測定できるほどの第一次抗体応答を有していなかった(データは示していない)。
図10は、RSV-G特異的IgGを測定する、ブースト後ELISAの結果を示す。ACT-1042のみの投与を受けたマウスでは、足蹠を介した投与の場合にのみ、検出可能な力価がもたらされた。足蹠群においてRSV-M2ナノ粒子を追加すると、CFA中5μgのRSV-Gペプチドによって誘発される場合と同等の抗体力価が生じた。この混合物の鼻腔内投与は、RSV-Gナノ粒子単独をf.p.注射した場合とほぼ同じ力価を誘発したが、RSV-Gナノ粒子単独のi.n.投与は、ブースト後に検出可能な抗体力価を誘発できなかった。これらの結果は、RSV-M2ナノ粒子を含めることが、RSV-G中の抗体エピトープの効力を増加させると見られること、および、ナノ粒子のi.n.投与は免疫応答を誘発することができることを示している。
【0129】
同じマウスのT細胞応答を、ELISPOTによって測定した。
図11は、RSV-M2含有ナノ粒子またはカクテルを用いてf.p.経路で免疫したマウスでは、予測されたとおり、M2エピトープに対するT細胞応答が生じ、そのT細胞応答はほとんど全部がIFNγであったことを示している。RSV-M2ナノ粒子単独(ACT-1023)を鼻腔内投与した場合、T細胞応答を誘発できなかった。対照的に、RSV-M2ナノ粒子およびRSV-Gナノ粒子(混合物)の共投与は、RSV-M2単独の足蹠免疫処置によって誘発されたものに匹敵する、強力なIFNγ応答を誘発した。
【0130】
T細胞応答は、受容動物における細胞傷害性T細胞の活性を測定するインビボCTLアッセイにおいても調べられた。一価群では、PBS(陰性対照)、不完全フロイントアジュバント(IFA)中のペプチドACT-2031(RSV-M2)、またはナノ粒子ACT-1023(RSV-M2)を、足蹠から一回注射して、BALB/cマウスを免疫した。多価群では、PBS、IFA中のペプチドACT-2031(RSV-M2)およびペプチドACT-2044(RSV-G)、または、ACT-1023(RSV-M2)およびACT-1042(RSV-G)を用いて、マウスを免疫した。7日後、同系未免疫脾臓細胞に対して、ペプチドACT-2031をパルス投与して高用量の蛍光トレーサーCFSEで標識することにより、RSV-M2標的細胞を調製し、同系未免疫脾臓細胞を標的ペプチド無しで低用量のCFSEで標識することにより、対照標的細胞を調製した。これら2つのCFSE標識細胞群を1:1の比で混合し、5x10
6細胞を上記免疫マウスにi.v.注射してこれら細胞を受容者の脾臓に戻した。24時間後、免疫マウスを犠牲にしてその脾臓細胞をCFSE蛍光について解析し、上記2つの細胞群の生存をモニターした。
図12において、ヒストグラム中いちばん左にあるピークは、生存した対照標的細胞を示し、いちばん右にあるピークは、生存したRSV-M2標識標的細胞を示す。予測されたように、非免疫(PBS)マウスでは、双方の細胞群は同程度に生存していた。対照的に、ペプチドACT-2031/IFAで免疫したマウスでは、約18%のRSV-M2標的細胞が殺傷されていた(ACT-2031/IFAヒストグラム中の右ピークのサイズと左ピークのサイズを比較すること)。高用量(75μg)のナノ粒子ACT-1023を用いて免疫したマウスにおいても同様の結果が得られたが、これは、より低用量(10μg)のACT-1023で免疫したマウスでは標識標的細胞の殺傷が見られなかったことと対照をなす。2つのペプチドまたは2つのナノ粒子の組合せで免疫したマウスでは、標識標的細胞の殺傷の程度がより大きいことが観察された。具体的には、ナノ粒子のカクテル(それぞれ10μgのACT-1023 + ACT-1042)で免疫したマウスでは、RSV-M2標識標的細胞の35%が殺傷され、これは、高用量の一価免疫処置(ACT-1023/75μg)により誘発された応答をもしのぐ高率であった。RSV-M2標識標的細胞の特異的殺傷のパーセントを
図13に要約する。これらの結果は、RSV-Gナノ粒子とRSV-M2ナノ粒子とのカクテルを用いて免疫したマウスで検出されたIFNγELISPOT数の増加と合致する(
図10、11を参照のこと)。これらのデータは、RSV-Gナノ粒子とRSV-M2ナノ粒子とを組み合わせてカクテルワクチンとすることにより、両成分の免疫効力の相互的な改善が提供されることを示唆している。RSV-Gに対する抗体応答の改善(
図10)は、RSV-M2により誘発されたT細胞による援助に起因し得るが、カクテルの鼻腔内投与後の、RSV-M2に対するT細胞応答の相互的な改善(
図11)は、予測外のものであった。
【0131】
実施例13:多価ナノ粒子の設計
同じ粒子内に一緒に加層された別個のDPとして、または、RSV-GエピトープとRSV-M2エピトープとの両方を含む融合DPとして、複数のエピトープが同一粒子内に含まれるように、さらなるナノ粒子を設計した。表3は、複数エピトープRSVナノ粒子の構成を記載し、表4は、それぞれにおいて用いられたDP配列を記載する。ナノ粒子ACT-1077から-1079までは、1つまたは複数の層にRSV-M2のT細胞エピトープを含み、8番目の層にRSV-GのB細胞エピトープを含む。ナノ粒子ACT-1086から-1088までは、それぞれ二重エピトープペプチドACT-2086から-2088までを含み、それらのペプチドは8番目の層のみに堆積されている。一緒に加層されるかまたは単一の融合ペプチド中にある、上記のまたはその他のRSVエピトープを使用し、さらなる設計を想定することができる。
【0132】
表3:多価RSVナノ粒子、RSVマイクロ粒子、およびRSVマイクロカプセルの設計の構成。ACT-1077から-1079までは、同一のELBLナノ粒子中の異なる層に堆積された、2つの別個のDPを含む。ACT-1139は、同一のELBLナノ粒子中の8番目の層に堆積された、2つの別個のDPを含む。ACT-1086から-1088までは、抗体およびT細胞標的エピトープの両方を組み入れた、単一の融合ペプチドを含み、このペプチドはELBLナノ粒子の8番目の層に堆積されている。ACT-1145および-1146は、抗体およびT細胞標的エピトープの両方を組み入れた単一の融合ペプチドを含み、このペプチドはELBLマイクロ粒子の8番目の層に堆積されている。ACT-1147は、抗体およびT細胞標的エピトープの両方を組み入れた単一の融合ペプチドを含み、このペプチドはELBLマイクロカプセルの8番目の層に堆積されている。
【表3】
【0133】
表4:表3の多価ELBLナノ粒子の設計において使用されたRSV DP配列。B細胞エピトープは下線で示し、T細胞エピトープは太字で示し、保存されたシステインには影を付け、非天然配列は斜体で示す。
【表4】
【0134】
実施例14:DP-ナノ粒子構築物の用量依存性
同じ投与量の設計されたペプチド(1μg)を、陽性対照(CFA)およびナノ粒子(1042)群の両方において使用した。以前の実験では、CFAには5〜10μgを用い、ナノ粒子には1μgを使用していた。これらの結果は、投与量が同等ならば、ナノ粒子はCFA対照よりも免疫原性が高いことを示している。
【0135】
表5:RSV混合試験のための群
【表5】
データは
図14〜16に示す。
【0136】
実施例15:ポリ-L-グルタミン酸のチオール化(PGA-SH)およびシステイン含有ペプチドの連結
32 mgのミディアム分子量PGAナトリウム塩(Sigma社により市販されている)を、1.0 mLの0.1 Mリン酸ナトリウムpH 7.2バッファーに溶解した。22 mgの1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)および15 mgのスルホ-NHSを加え、溶液を室温で15分間維持した。4.6 mgのシスタミンHCl塩を加え、溶液を90分間反応させた。生成物を、希釈酢酸バッファーでpH 4.5に事前平衡化したDesalt(登録商標)カラム(Pierce社によって市販されている)に通すことにより、精製した。溶出物を凍結し、-80℃で保存した。チオール化の程度はエルマン(DTNB)アッセイにより推定し、全グルタミン酸残基の約24%であると見出された。
【0137】
RSV Gタンパク質からの既知のT細胞エピトープ(RSV G残基186〜198、配列番号24 CKRIPNKKPGKKT)を含む合成ペプチドは、標準的な固相ペプチド合成法により容易に合成することができる。0.5 mLのリン酸バッファーpH 7中の15 mgのPGA-SHは、0.4 mgのDTNB(約1.0 umol)を用いて、室温で30分間処理できる。溶液は黄色くなる。活性化反応は、UV分光法によりモニターすることができ、412 nmにおける吸光度がそれ以上増加しないときに、完了したと判断することができる。それから1.5 mgのシステイン含有エピトープペプチド(約1 umol)を加え、溶液を10分間反応させることができる。生成物は、5000 MWカットオフ透析チューブを使用した透析により部分的に精製でき、ペプチドが装着されたことはアミノ酸分析により確認できる。
【0138】
実施例16:エピトープペプチドのPGA-SHへのチオエーテル結合
RSV Gタンパク質からの既知のT細胞エピトープ(RSV G残基187〜198、配列番号25 KRIPNKKPGKKT)を含む合成ペプチドは、固相ペプチド合成樹脂上で合成することができる。樹脂を切り離す前に、樹脂を無水ブロモ酢酸で処理することにより、N末端にブロモアセチル基を取り付けることができる。樹脂の切り離し、および精製を行った後、1.5 mg(約1 umol)のペプチド(ブロモアセチル-KRIPNKKPGKKT)を、15 mgのPGA-SHのリン酸バッファーpH 7中の溶液に加えることができる。生成物は、5000 MWカットオフ透析チューブを使用した透析により部分的に精製でき、ペプチドが装着されたことはアミノ酸分析により確認できる。
【0139】
実施例17:システイン含有エピトープペプチドのPLLへの架橋
使いやすい濃度(典型的には0.5〜50 mg/mL)およびほぼ中性のpH(典型的にはpH 6〜8)を有する、ミディアムMWのPLLナトリウム塩(Sigma社により市販されている)のストック溶液を、スルホスクシンイミジル4-[N-マレイミドメチル]シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)のような架橋剤と混合する。スルホ-SMCCの量は変え得るが、PLL中のリシン残基の1〜25%を修飾するために十分な量が使用される。典型的な反応時間は0.5〜5時間である。その後、反応溶液をゲルろ過カラムに通すか、または透析を行うことによって、過剰なスルホ-SMCC剤を除去する。修飾されたPLLをその後、ほぼ中性のpH(典型的にはpH 6〜8)において、わずかに過剰量であるシステイン含有エピトープペプチドと反応させる。最終的なPLL-エピトープコンジュゲートを、溶液をゲルろ過カラムに通すか、または透析を行うことによって、精製する。この試薬は、PLLについて同様に使用される方法によって、高分子電解質ELBLフィルムへ組み入れることに適している。
【0140】
実施例18:ナノ粒子で免疫した後のマウスの、RSVによる攻撃からの保護
第28日目において、鼻腔内を通じてマウスをRSVの攻撃にさらし、5日後に犠牲にした。肺を採取してホモジェナイズし、ベロ細胞アッセイ、および、RSV-M遺伝子のqPCR増幅により、ウイルスのタイターを測定した。この結果(
図17)は、RSV-Gを含むいずれの組成物を用いても(第3〜6群)、実質的に完全な保護が得られたことを示している。この試験では、RSV-M2単独では保護が得られず、多価ワクチンがRSV-G単独より良く効くということもなかったが、これは比較的大きい投与量(10μg)を使用したことが理由である可能性がある。
【0141】
実施例19:同じ層または異なる層にRSV-GエピトープおよびRSV-M2エピトープを含む多価ナノ粒子の免疫原性
第0日目に、後ろ足の足蹠にRSVナノ粒子構築物を注射することにより、マウスを免疫した。免疫原としては、ACT-1023(RSV-M2)、ACT-1042(RSV-G)+ ACT-1023(RSV-M2)、ACT-1086(単一層におけるRSV-M2+Gの融合ペプチド)、およびACT-1077(異なる層におけるRSV-Gペプチド+ RSV-M2ペプチド)を含ませた。マウスは、第7日目に、RSV-M2を含みCFSE標識された標的細胞による攻撃にさらした。翌日、CFSE標識標的細胞の生存を検出するために、フローサイトメトリーで脾臓細胞を解析した。結果は(表18および19)、RSV-M2エピトープを含有するいずれのナノ粒子で免疫しても、RSV-M2特異的エフェクター細胞が誘発されたが、一価(RSV-M2)構築物で免疫したマウスよりも多価(RSV-M2+G)構築物で免疫したマウスの方が、応答が強力であったことを示している。
【0142】
別の試験では、第0日目および第21日目において、後ろ足の足蹠にRSVナノ粒子構築物を注射することにより、マウスを免疫した。免疫原としては、ACT-1023(RSV-M2)、ACT-1042(RSV-G)、ACT-1042 + ACT-1023、ACT-1086(単一層中のRSV-M2+G融合ペプチド)、およびACT-1139(同じ層に一緒に含ませたRSV-Gペプチド+ RSV-M2ペプチド)を含ませた。マウスは第28日目に採血し、ELISAによってRSV-G特異的抗体について血清を分析した。結果(
図20、21)は、RSV-Gエピトープを含む組成物はすべて抗体力価を誘発したが、ACT-1139多価ナノ粒子が最も強力であったと見られることを示している。
【0143】
用語「a」および 「an」および「the」および類似の指示物の使用は(以下の特許請求の範囲の文脈では特に)、本明細書で別段の表示がない限り、または文脈において明らかに矛盾しない限り、単数形および複数形の両方を包含するものとして解釈されるべきである。本明細書で使用される、第1、第2、等の用語には、特定の順序を表す意図はなく、単に、複数の(例えば)層を表す便宜のためのものに過ぎない。「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含む(containing)」という用語は、特に断りがない限り、オープンエンドの(すなわち、「〜を含むが、それに限定されない」という意味の)用語として解釈されるべきである。数値範囲の記載は、本明細書で別段の表示がない限り、その範囲内にある別個の値をそれぞれ個別に表記することの単なる略記法として用いることを意図しており、別個の値の各々は、あたかも個別に表記されているかのように、本明細書に組み入れられる。すべての範囲の上下限はその範囲に含まれ、独立して組み合わせることができる。本明細書で記述されるすべての方法は、本明細書で別段の表示がない限り、または文脈において明らかに矛盾しない限り、適当な順序で実施することができる。いずれかの、およびすべての例の使用、または例示的言語(「例えば(such as)」等)の使用は、発明をより明確に説明することを意図するだけであり、特許請求の範囲で規定されていない限り、本発明の範囲に対して限定を与えるものではない。本明細書で使用される文言はいずれも、特許請求の範囲にない何らかの要素が本発明の実施にとって必須であることを示しているものとして解釈するべきではない。
【0144】
本発明を、例示的な実施態様を参照しながら記述してきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更を施すことができ、構成要素を等価物で置き換えられることは、当業者によって理解されるであろう。また、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく、特定の状況や材料を本発明の教示に適合させるために多くの変更を行うことができる。従って、本発明は、この発明を実施するために考えられる最良の形態として開示されている特定の実施態様に限定されず、本発明はむしろ、添付の特許請求の範囲に収まるすべての実施態様を含むことが意図される。本明細書で別段の表示がない限り、または文脈において明らかに矛盾しない限り、上記において記載した要素の可能なすべてのバリエーションのあらゆる組合せが、本発明に包含される。