特許第5890410号(P5890410)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5890410リチウム金属酸素化合物中の磁性および/または酸化不純物を削減する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5890410
(24)【登録日】2016年2月26日
(45)【発行日】2016年3月22日
(54)【発明の名称】リチウム金属酸素化合物中の磁性および/または酸化不純物を削減する方法
(51)【国際特許分類】
   C01G 23/00 20060101AFI20160308BHJP
   H01M 4/485 20100101ALI20160308BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20160308BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20160308BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20160308BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20160308BHJP
【FI】
   C01G23/00 B
   H01M4/485
   H01M4/58
   H01M4/505
   H01M4/525
   H01M4/36 C
【請求項の数】12
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-521040(P2013-521040)
(86)(22)【出願日】2011年7月4日
(65)【公表番号】特表2013-534203(P2013-534203A)
(43)【公表日】2013年9月2日
(86)【国際出願番号】EP2011061250
(87)【国際公開番号】WO2012013454
(87)【国際公開日】20120202
【審査請求日】2013年4月4日
(31)【優先権主張番号】102010032207.5
(32)【優先日】2010年7月26日
(33)【優先権主張国】DE
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】512200572
【氏名又は名称】ジュート−ヒェミー アイピー ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コムパニー コマンデットゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【弁理士】
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ホルツアプフェル,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】フォグラー,クリスチャン
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−135849(JP,A)
【文献】 特開2004−327309(JP,A)
【文献】 特開2005−015282(JP,A)
【文献】 特表2005−504693(JP,A)
【文献】 特開2000−281433(JP,A)
【文献】 特開2006−156234(JP,A)
【文献】 特開2006−012433(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01G 1/00 − 23/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドーピングされたあるいはドーピングされていない粒子形態のリチウム金属酸素化合物中の磁性および/または酸化不純物を削減する方法であり、
a)不純物を含んだ量mのリチウム金属酸素化合物を準備し、
b)前記量mのリチウム金属酸素化合物のうちの5ないし15%の割合を投入し、
c)浄化されたリチウム金属酸素化合物を継続的に取り出しおよび回収しながら量mの3%ないし0.01%の残留分になるまでリチウム金属酸素化合物を粉砕および分級し、
d)浄化されたリチウム金属酸素化合物を取り出し、
e)残留物を廃棄し、
f)量mの全てが転化されるまで工程b)から工程e)を繰り返す、
工程を含んでなる方法。
【請求項2】
リチウム金属酸素化合物の粒子は少なくとも部分的に炭素を含んだ被覆を有することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
リチウム金属酸素化合物がB,Al,Mg,Ca,Sr,P,Si,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Zr,Zn,Sn,Nb,Mo,Ru,Wまたはそれらの混合物によってドーピングされて存在することを特徴とする請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
リチウム金属酸素化合物がLixを含んだ分子式を有し、その際0<xかつ0<yで、LiMO,Li,Li12,Li,Li,Li,Li,LiMO,Li,Li,LiMO,LiM′0.5M″0.5から選択されるか、またはリチウム金属酸素化合物がLi1+xを含んだ分子式を有し、その際0<xかつ0<yで、Li1+x2−x,Li1+x,LiMO,Li1+xM′2−xM″(POから選択されるか、またはリチウム金属酸素化合物がLi1―xを含んだ分子式を有し、その際0<xかつ0<yで、Li1−xM′M″2−y,Li1−xM′1.5M″0.5あるいはLi1−xM′M″1−yから選択され、ここでMはB,Al,Na,Mg,Ca,Sr,P,Si,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sn,Ga,In,Y,Zr,Nb,Mo,Ru,またはWの一群から選択され、M′はB,Al,Na,Mg,Ca,Sr,P,Si,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sn,Ga,In,Y,Zr,Nb,Mo,Ru,またはWの一群から選択され、M″はB,Al,Na,Mg,Ca,Sr,P,Si,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sn,Ga,In,Y,Zr,Nb,Mo,Ru,またはWの一群から選択される、請求項3記載のリチウム金属酸素化合物。
【請求項5】
リチウム金属酸素化合物の投入は量mの5ないし15%を投入した後中断する請求項1ないし4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
残留物が量mの3%ないし0.01%を下回る前に粉砕工程および分級工程を中断する請求項5記載の方法。
【請求項7】
量mの3%ないし0.01%の残留物を除去および廃棄する請求項6記載の方法。
【請求項8】
リチウム金属酸素化合物の粉砕と分級を唯一の装置内で実施する請求項7記載の方法。
【請求項9】
リチウム金属酸素化合物の粉砕と分級を別々の装置内でそれぞれ実施する請求項7記載の方法。
【請求項10】
工程a)ないしe)の方法がさらに追加的な粉砕工程を含む請求項1ないし9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
追加的な粉砕工程が粉砕および/または分級装置から分離された追加的な装置内で実施される請求項10記載の方法。
【請求項12】
粉砕および/または分級ならびに追加的な粉砕工程が唯一の装置内で実施される請求項11記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、純粋なリチウム金属酸素化合物を得るために粒子形態のリチウム金属酸素化合物中の磁性および/または酸化不純物を削減する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
再充電可能なリチウムイオン電池(再充電蓄電池)の基本原理は電気化学的に活性なイオンの帯電および放電プロセスであり、それによって電源電圧が生成されるとともに充電バランスはリチウムイオンの転換によって達成される。充電プロセスにおいてリチウムイオンがカソードからアノードに移動する。放電プロセスにおいてはその現象が逆転し、リチウムイオンはカソードに帰還する。
【0003】
再充電可能なリチウムイオン電池内においてアノード材料としてしばしばグラファイトが使用されている。しかしながらそれが電解液界面上の不活性化中間層(SEI=ソリッドエレクトロライトインタフェース)の形成につながり、そのSEIが熱的に不安定なものとなる。この不活性化中間層のためリチウムイオン電池の内部抵抗も上昇し、それによって充電時間の増加が発生し、出力密度の低下を伴う。その問題点を回避するために別のアノード材料を提供することが試みられている。
【0004】
通常リチウムイオン電池内には大抵可燃性である液体の電解質溶液が使用される。この液体の電解質溶液はその可燃性から保安上の危険性を有し、リチウムイオン電池の容積の拡大をもたらす。この問題を回避するために、保安上の危険を最小化するとともにリチウムイオン電池の容積の削減を達成する固体によって電解液を代替することが試みられている。この技術革新によって、リチウムイオン電池の容積縮小をもたらすと同時に高い自己安全性を確立する固形のリチウム化合物を電解質として使用することが提案された。さらに別の利点は固形のリチウム化合物が乾燥し得ないことであり、それによってリチウムイオン電池の寿命が延長される。
【0005】
固形の電解質としては、例えばエボニックデグサ社から市販されているセパリオン(登録商標)(独国特許出願公開第19653484号A1明細書)等のセラミックセパレータも使用され、それは微細粒子性のAlあるいはSiO等の充填剤を含んでいる。
【0006】
青野氏等は多様な材料をそのリチウムイオン伝導性に関して試験した。ドーピングされたあるいはドーピングされていないリチウムチタンリン酸塩をその極めて良好なリチウムイオン伝導性から固形電解質として使用可能であることが示された(1990年日本電気化学学会第137巻第4号第1023ないし1027頁、1989年日本電気化学学会第136巻第2号第590ないし591頁)。
【0007】
その際特にアルミニウム、スカンジウム、イットリウム、ランタンによってドーピングされた組成物が試験された。アルミニウムによるドーピングが最良の結果をもたらすことが判明した。アルミニウムがTi4+よりも小さいものである陽イオン半径のために結晶状態においてチタンの場所を占めることができるため、ドーピング度合いに応じて最高のリチウムイオン伝導性が示された。加えて、リチウムアルミニウムチタンリン酸塩が低い導電性を示すため、その高い硬度(モース硬度8)と並んでリチウムイオン二次電池内における極めて好適な固形電解質としての特徴を有するものとなる。
【0008】
リチウム金属酸素化合物はリチウムイオン電池内において電解質としてばかりでなくカソードとしても使用される。リチウムイオン電池はしばしば電動工具、コンピュータ、あるいは携帯電話等、多用途に使用され、常により高い出力が求められるため、最優先の目的はリチウムイオン電池の出力特性を高めることである。
【0009】
アノードとしてのリチウムチタン酸塩と組み合わせてリチウム鉄リン酸塩をカソード材料として使用すると、アノード材料としてのリチウムチタン酸塩と共にグラファイトを使用した場合に比べて特に充電工程に際して高い電流耐性がもたらされ、従ってリチウムイオン電池の出力性能の向上につながる。そのリチウムイオン電池は前記の利点に加えてさらに高い耐熱性および構造安定性を有し、寿命が延長する。さらに別の利点はそれに低い毒性とそれに伴った環境負荷の低さである。
【0010】
今日アノード材料としてグラファイトに代えてリチウムチタン酸塩が好適に使用され(米国特許第5545468号A明細書)、代替としてナノ結晶無定形シリコンあるいは二酸化錫、リチウム金属化合物、モリブデン酸マグネシウムあるいはバナジン酸マグネシウムが使用される。別のアノード材料が、ブルース,P.G.氏;スクロサティ,B.氏;タラスコン,J.−M.氏等による応用化学国際版2008年第47巻第2930ないし2946頁に開示されている。
【0011】
リチウムチタン酸塩は、Fd3m空間群のスピネル構造内において立方体上に結晶化する。その構造ならびにLi/Liに対しての約1.5Vの電位のため、リチウムチタン酸塩スピネル電極の表面上の不活性化中間層(SEI)の形成が防止され、それによって電極の劣化が遅延するとともに充電工程のサイクル数が増加する。さらに、改善された機械的および熱安定性がリチウムイオン電池のより高い自己安全性につながり、それによって短絡あるいは過熱の傾向が大幅に低減される。
【0012】
通常リチウムチタン酸塩の製造は二酸化チタンと炭酸リチウムあるいは水酸化リチウムを元にして700℃ないし1000℃の熱気下における3時間ないし24時間の固体反応によって実施される(米国特許第5545468号A明細書)。しかしながら、合成温度に依存して二酸化チタンを多様な形態(ルチル、アナターゼ等)で製品中に含むことができる。固体反応と並んでリチウムチタン酸塩の湿式化学合成物も可能である。
【0013】
リチウム金属酸素化合物はアノード材料としての使用に加えてカソードとしての使用も可能である。グッドイナフ氏等の研究(米国特許第5910382号明細書)によって、ドーピングされたおよびドーピングされていないリチウム遷移金属リン酸塩がカソード材料としての使用に極めて適していることが示された。
【0014】
さらに、例えばリチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物、リチウムマンガン酸化物等のリチウム遷移金属酸化物、ならびにリチウムマンガンニッケル酸化物、リチウムニッケルコバルト酸化物、あるいはリチウム鉄リン酸塩等のドーピングされたリチウム遷移金属酸化物およびリチウム遷移金属リン酸塩が使用される。
【0015】
良好な層構造を有するリチウム遷移金属酸化物はリチウムイオンに対して良好な移行性能を示すためカソード材料としての使用に極めて適している。遷移金属原子が八面体格子部位に対して高い親和性を有することが好適であり、それによってヤーン・テラー変形および対称還元の傾向が低下する。
【0016】
最良の結果を達成するリチウム金属酸素化合物が固体合成、ゾルゲル法、あるいは水熱合成によって形成される。水性の水酸化リチウム溶液と金属塩を元にし、例えば塩基の存在下におけるゲル化された沈殿物の析出によって純粋なリチウム金属酸化物を得ることができ、さらにそれを高い温度で焼鈍する必要がある。
【0017】
リチウムイオン電池内における使用のためのリチウム金属酸素化合物の形成にはその純度が極めて高いことが前提となる。そのため湿式化学合成法を選択することが好適であり、その理由は転化されない抽出物による汚染の度合いを低く抑制することができるためである。しかしながら、長い乾燥、焼鈍、および焼結時間のため大きく凝集された粒子(100μmないし200μmの粒子大)が得られるが、リチウムイオン電池内においては小粒の材料のみがリチウムイオン電池の良好な比容量につながるため、前記大きく凝集された粒子を破砕工程で粉砕しなければならない。
【0018】
リチウム金属酸素化合物は大抵高い硬度を特徴としており、従って凝集した粒子を粉砕するための破砕工程とその後の処理工程において工具ならびに装置に大きな摩耗が発生するか、および/またはリチウム金属酸素化合物中の酸化汚染につながる。
【0019】
前記の汚染はリチウムイオン電池の放電ならびに比容量の低下につながる。さらに磁性および/または酸化汚染のために短絡が形成されそれによってリチウムイオン電池が損傷するか場合によっては爆発することもあり得るため、重大な危険が生じる。
【0020】
機械上の磁性摩耗による汚染と並んで転化されない抽出物が製品中にさらに含有される可能性があり、それもリチウムイオン電池の動作障害として作用する可能性がある。
【0021】
従って、リチウム金属酸素化合物から不純物を除去することは、リチウムイオン電池の自己安全性を高めることと比容量を増加させることの両方の点から大きな意味を有する。
【0022】
従来の技術によって不純物を除去するための多様な方法が知られている。
【0023】
米国特許第3685964号明細書により、硫化物の添加によって水性のアルカリ燐酸塩溶液から不要な鉄不純物を沈殿させて分離する方法が開示されている。この方法は、熱および乾燥によって粒子の凝集が発生するとともにそれによって必要となる粉砕工程から磁性および/または酸化不純物の発生がもたらされるため、リチウム金属酸素化合物には適用することができない。
【0024】
米国特許第4973458号明細書により、不要な不純物の凝集ならびにガス渦流床を使用したセラミックフィルタシステムによる分離を通じて不純物を除去することができる装置ならびに方法が提案されている。この方式によれば、渦流化は出来るものの熱によって誘発される破壊が生じる危険性があるため、固形のリチウム金属酸素化合物から磁性および/または酸化不純物を分離するためには適していない。
【0025】
さらに、固体相における不純物の除去を粒子大(不純物の粒子大>製品の粒子大)に基づいて分級工程で行うか、またはサイクロンを使用して実施することができる。浄化された小径の製品が得られ、他方不純物のより大きな粒子を分級容器内に凝縮して分級工程の後に廃棄することができる。
【0026】
しかしながら、粉砕固定によって不純物の粒子大が製品の粒子大に相当するようになると、不純物が不充分にしか除去されなくなり、それによって不純物が大きな割合でさらに製品中に残留するようになる。
【0027】
従ってその方法よれば、粉砕後に不純物の粒子大がリチウム金属酸素化合物の粒子大に相当するものとなってしまい篩あるいはサイクロンの分離能力が対応できないので上記の方法の篩工程によって分離することが不可能になり、従って粉砕された小粒子大のリチウム金属酸素化合物について所要の純度を達成するために適していない。
【0028】
また、リチウム鉄酸化物内にもしばしば不純物が含まれ、それは材料の硬さに起因する粉砕等の処理工程中における装置の金属摩耗から生じる金属および/または酸化粒子からなる。カソード材料中のそのような不純物によっても、自己放電作用が促進されてしまうため、リチウムイオン電池の高い不良品率につながる。従ってリチウム鉄燐酸塩からの不純物の除去が大きな意味を有する。
【0029】
欧州特許第09013035.2号明細書により、汚染されたリチウム鉄燐酸塩を出発点にして流動床および/または分級工程を使用して金属および/または酸化粒子を大幅に除去する方法が記載されている。粉砕工程および分級工程を早期に中断することにより、金属および/または酸化不純物の大部分を篩によって滞留させて転化されていないリチウム鉄燐酸塩の残留物と一緒に分離して廃棄することができるため、金属および/または酸化不純物をリチウム鉄燐酸塩から除去することができる。
【0030】
先行技術において、小粒子のリチウム金属酸素化合物から磁性および/または酸化不純物を除去する方法は提案されていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0031】
従って、本発明の目的は、浄化された小粒子のリチウム金属酸素化合物を得るために、粒子形態のリチウム金属酸素化合物から磁性および/または酸化不純物を除去する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0032】
前記の課題は、本発明に従って以下の工程からなる方法によって解決される:
a)不純物を含んだ量mのリチウム金属酸素化合物を準備、
b)前記量mのリチウム金属酸素化合物のうちの5ないし15%の割合を投入、
c)浄化されたリチウム金属酸素化合物を継続的に取り出しおよび回収しながら量mの3%ないし0.01%の残留分になるまでリチウム金属酸素化合物を粉砕および分級、
d)浄化されたリチウム金属酸素化合物の取り出し、
e)残留物の廃棄、
f)量mの全てが転化されるまで工程b)から工程e)を繰り返し。
【0033】
意外なことに、継続的に浄化されたリチウム金属酸素化合物を取り出しおよび回収しながら粉砕および分級を行う工程によってリチウム金属酸素化合物中の磁性および/または酸化不純物を分離することができ、従って浄化された小粒子のリチウム金属酸素化合物を生成し得ることが判明した。
【0034】
磁気および/または酸化不純物としては、本発明の枠内において金属不純物も含めて理解される。それには、例えば使用される機械(反応容器、計量装置、粉砕装置、分級装置等)の金属摩耗(例えば多様な鋼からのもの)によってリチウム金属酸素化合物内に混入し得る多様な金属不純物が含まれる。どの合成経路を選ぶかに依存して、合成反応の結果残る抽出物の金属、磁性、および酸化残留物が生じることも可能であり、その一部を挙げると、Fe、Fe、LiO、TiO等である。さらに、本発明に係るリチウム金属酸素化合物をドーピングするために使用される金属の残留物もリチウム金属酸素化合物内に含まれることが可能である。
【0035】
投入されたリチウム金属酸素化合物が完全に転化される前、かつ転化されていないリチウム金属酸素化合物の量が投入された量mの約1%を下回る前に、粉砕工程および分級工程が早期に中断される。粉砕工程と分級工程の早期の中断の後に投入された量mの約1%であり不純物からなる転化されていない残留物が廃棄される。
【0036】
意外なことに、本発明に係る方法によって得られる浄化されたリチウム金属酸素化合物は、その後の処理を行わなくてもリチウムイオン電池の電極として使用できるほど純粋かつ小粒子となる。
【0037】
リチウム金属酸素化合物の粒子と不純物が同程度の大きさであるにも関わらず、本発明に係る方法によってそれらを分離することができる。特定の理論に限定するものではないが、それらは異なった密度のために分離可能であると考えられる。磁性および/または酸化不純物はリチウム金属酸素化合物と比べてより大きな質量を有するためにより長く粉砕および分級洞室中に滞留し、従って粉砕工程の早期の中断によって分離することができる。
【0038】
従って本発明に係る方法によって極めて低い割合の磁性および/または酸化不純物を有すると同時に小粒子で存在する浄化されたリチウム金属酸素化合物が粒子形態で形成され、それによってリチウムイオン電池の比容量の増加と同時に容積の低減がもたらされ、従ってリチウムイオン電池のアノード、カソード、ならびに電解質材料として極めて適したものとなる。リチウム金属酸素化合物の高い純度と小さな粒子大のため、リチウムイオン電池の寿命も大幅に延長される。
【0039】
本発明に係るリチウム金属酸素化合物としては特にリチウムチタン酸塩が理解され、本発明によれば、Fd3mの空間群のLi1+xTi2−xで(0≦x≦1/3)のタイプの全てのリチウムチタンスピネルが含まれ、また一般的に全てのドーピングされたあるいはドーピングされていない一般式Li1+xTiO(0<x、y<1)の混合されたリチウムチタン酸塩が含まれる。
【0040】
ここでリチウム金属酸素化合物として、リチウムと酸素の他に少なくとも1個の主族あるいは亜族金属を含む化合物が理解される。この概念の中には、一般式LiMPOを有する燐酸塩、一般式LiMVOを有するバナジン酸塩、ならびに適宜なモリブデン酸塩およびニオブ酸塩等の化合物も含まれる。加えて、前記概念には、一般式LiO(0≦x,y≦1)の混合リチウム遷移金属酸化物等の“典型的な酸化物”も含まれ、その際MはTi、Zr、あるいはSc等のいわゆる“前周期遷移金属”とすることが好適であるが、それに限らずCo、Ni、Mn、Fe、Cr等の“後周期遷移金属”とすることも有効であり得る。
【0041】
さらに、本発明においてリチウム金属酸素化合物として、ドーピングされたあるいはドーピングされていない、リチウムバナジウム酸化物、リチウムクロム酸化物、リチウム鉄酸化物、リチウムマンガン酸化物、リチウムコバルト酸化物、リチウムニッケル酸化物等のリチウム金属酸素化合物、ならびにリチウムコバルトニッケル酸化物、リチウムマンガンニッケル酸化物、リチウムクロムマンガン酸化物、リチウムチタンアルミニウム燐酸塩、リチウムチタンジルコニウム燐酸塩等の混合リチウム遷移金属酸化物が理解される。
【0042】
それらの化合物は極めて硬質であり、通常6ないし8のモース硬度を有する。その材料の硬さが個々の方法工程で使用される装置の摩耗につながり、それによって不純物がもたらされる。
【0043】
ドーピングされたあるいはドーピングされていないリチウム金属酸素化合物と言う概念においては、B,Al,Na,Mg,Ca,Sr,P,Si,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sn,Ga,In,Y,Zr,Nb,Mo,Ru,Wまたはそれらの混合物によるドーピングが理解される。そのドーピングによって、リチウムイオン電池の比容量をさらに高めることができる。
【0044】
特に本発明に係る方法においてドーピングされたリチウム金属酸素化合物を使用することができ、その際リチウム金属酸素化合物がLiMO,Li,Li12,Li1+x2−x,Li,Li,Li,Li,Li1+x,LiMO,Li1−xM′M″2−y,Li,Li,LiMO,LiM′0.5M″0.5,Li1−xM′1.5M″0.5,Li1−xM′M″1−y,またはLi1+xM′2−xM″(PO,LiM′0.79M″0.20M′′′0.01から選択される分子式を有する。
【0045】
前記の分子式においてドーピングされたリチウム金属酸素化合物はB,Al,Na,Mg,Ca,Sr,P,Si,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sn,Ga,In,Y,Zr,Nb,Mo,Ru,またはWの一群から選択される少なくとも1種の金属M′を含むことができる。
【0046】
さらに、前記のリチウム金属酸素化合物はB,Al,Na,Mg,Ca,Sr,P,Si,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sn,Ga,In,Y,Zr,Nb,Mo,Ru,またはWの一群から選択される少なくとも1種の金属M″を含むことができる。
【0047】
さらに、前記のリチウム金属酸素化合物はB,Al,Na,Mg,Ca,Sr,P,Si,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sn,Ga,In,Y,Zr,Nb,Mo,Ru,またはWの一群から選択される少なくとも1種の金属M′′′を含むことができる。
【0048】
Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Cu,Zn,Sn,Al,Zr,Mg,Caであるドーピング金属陽イオンを有する本発明に係るドーピングされたリチウム金属酸素化合物の例は、LiTiO(0<x),(y<1);LiTiOで(0<x≦1)、LiTiで(0<x≦2)、LiTi12で(0<x≦4)、Li1+xTi2―xで(0≦x≦1/3)、LiTiで(0.8≦x≦1.4)かつ(1.6≦y≦2.2)等のリチウムチタン酸化合物;
Liで(0<x≦2.5)、Li(0<x≦3.5)等のリチウムバナジウム酸化合物;
LiCrで(0<x≦3)、LiCrで(0<x≦3.8)等のリチウムクロム酸化合物;
LiMnOで(0<x≦2)、LiMnで(0<x≦2)、Li1+xMnで(0.5<x≦1)、LiMnO等のリチウムマンガン酸化合物;
LiFeO、LiFeで(0<x≦2)、LiFeで(0<x≦2)等のリチウム酸化鉄化合物;
LiCoO等のリチウムコバルト酸化合物;
LiNiO等のリチウムニッケル酸化合物;
または、
マンガンおよびニッケルを含有する:LiMn0.5Ni0.5、Li1−xNi0.5Mn1.5(0<x≦0.5);
クロムおよびマンガンを含有する:Li1−xCrMn2−y(0<x≦1)かつ(0<y≦2);
チタンおよびアルミニウムを含有する:Li1+xTi2−xAl(POで(0<x≦1);
チタンおよびジルコニウムを含有する:LiTi2−xZr(POで(0<x≦1);
コバルトおよびニッケルを含有する:Li1−xCoNi1−yで(0<x≦0.6)かつ(0.2<y≦1);
カルシウムおよび/またはマグネシウムでドーピングしたニッケルおよびコバルトを含有する:LiNi0.79Co0.20(Ca)0.01;LiNi0.79Co0.20(Mg)0.01
等の混合物を含有するリチウム金属酸化合物である。
【0049】
本発明の極めて好適な実施形態によれば、リチウム金属酸素化合物の粉砕洞室への注入が量mの3ないし20%を投入した後、好適には量mの5ないし15%を投入した後、特に好適には量mの10%を投入した後に中断される。
【0050】
本発明に係る方法の意義において、量mの全てが投入され浄化されるまで工程b)からe)に従ってこの方法を繰り返す。
【0051】
本発明に係る方法の好適な実施形態によれば、浄化されたリチウム金属酸素化合物が粉砕および分級の間に継続的に取り出しおよび回収される。
【0052】
その際、浄化されたリチウム金属酸素化合物の取り出しおよび回収は、浄化されたリチウム金属酸素化合物をバッチ式に取り出すことによって粉砕および分級の間に断続的に実施することも可能である。
【0053】
残留物が量mの3%ないし0.01%、より好適には量mの2%ないし0.5%、さらに好適には量mの1%になるまで浄化されたリチウム金属酸素化合物を取り出しながらリチウム金属酸素化合物に粉砕工程および分級工程を施すことが有効である。残留物には磁性および/または酸化不純物の他に幾らかのリチウム金属酸素化合物が含まれていてそれが不純物と共に廃棄され損失につながるため、残留物の割合を可能な限り低く抑えることが好適であるが、長時間の材料の粉砕および分級によって転化される不純物の割合も増加するため、前記残留物の割合を過度に低く選択すべきではない。
【0054】
残留物が量mの3%ないし0.01%、より好適には量mの2%ないし0.5%、さらに好適には量mの1%になり、それが不純物を含んでいて従って残留物中に磁性および/または酸化不純物が濃縮されて含まれるようになるまで、浄化されたリチウム金属酸素化合物を取り出しながらリチウム金属酸素化合物に粉砕工程および分級工程を施すことが効果的である。
【0055】
本発明によれば、残留物が量mの3%ないし0.01%を下回る前、より好適には量mの2%ないし0.5%を下回る前、さらに好適には量mの1%を下回る前に粉砕工程および分級工程を中断する。前記の限界値を維持することによってリチウム金属酸素化合物からの磁性および/または酸化不純物の分離につながり、その結果直接的に電極材料として使用することができる浄化された小粒子の材料が得られる。その際の純度は不純物が1ppmで、かつ粒子大分布が0.9μmないし7.5μmとなる。従って、本発明に係る方法によってその後の処理が不要になり、その結果コストおよび時間を節約することができる。
【0056】
本発明の枠内において、量mの3%ないし0.01%、より好適には量mの2%ないし0.5%、さらに好適には量mの1%の残留物が磁性および/または酸化不純物を濃縮して含んでいるため粉砕工程および分級工程を中断した後に除去および廃棄される。
【0057】
リチウム金属酸素化合物の粒子は少なくとも部分的に炭素を含んだ被覆を有することが可能である。本発明の別の実施形態において、粒子の表面あるいは少なくとも大半の粒子の表面が炭素を含有する材料を熱分解することによって生成された炭素(例えば欧州特許第1049182号B1明細書参照)、いわゆる「熱分解炭素」からなる連続的な被覆によって特に完全に被覆される。
【0058】
元素炭素あるいは熱分解炭素の両方が通常まだ浄化されていないリチウム金属酸素化合物の被覆に使用可能である。
【0059】
ここで「元素炭素」という概念は、粒子が非晶質あるいは結晶質のいずれでもあり得る純粋な炭素であるが独立した粒子(例えば球状グラファイト、フレーク、微粒子等の球体)を形成するものとして使用することができる。非晶質の炭素の例は、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、カーボンブラック等である。しかしながら、本発明の枠内において別の実施形態によれば結晶質の元素炭素同素体を使用することが好適ある。その例は、グラファイト、炭素ナノチューブ、ならびにフラーレンの化合物種、およびそれらの混合物である。さらに結晶質の同素体と同様に好適なものが、いわゆるVGCF炭素(気相法炭素繊維)である。
【0060】
「熱分解炭素」の概念は、炭素からなる独立した粒子を含まないものである非結晶質炭素の連続的で破断の無い層を意味する。熱分解炭素は加熱によって、すなわち1500℃未満、より好適には1200℃未満、さらに好適には1000℃未満、最も好適には800℃未満の温度における熱分解によって前駆化合物から得られる。1000℃超の高い温度においてはいわゆる「融着」によってしばしば混合リチウム金属酸化物上への粒子の凝集が発生し、それによって典型的に本発明に係る合成材料の電流負荷特性の悪化がもたらされる。ここで唯一重要なことは、通常気圧化で少なくとも2800℃の温度が製造のために必要される、結晶状に構成された合成グラファイトが存在しないことである。
【0061】
典型的な前駆化合物は例えば、ラクトース、スクロース、グルコース等の炭水化物、ポリスチレンブタジエンブロックコポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリマー、ベンゾール、アントラセン、トルエン、ペリレン等の芳香族化合物、ならびに当業者において周知されているその他の全ての適切な化合物である。
【0062】
正確な温度は被覆する特定の混合リチウム遷移金属酸素に依存し、その理由は例えばリチウム遷移金属燐酸塩が800℃の温度で既に燐化物に分解されるが、一方“典型的な”リチウム金属酸素化合物は分解されることなくしばしば2000℃まで加熱し得るためである。
【0063】
炭素を含有する被覆は1種類の炭素からなることが好適である。
【0064】
本発明によれば、リチウム金属酸素化合物の粉砕と分級の工程が例えば渦流室等のそのために適した唯一の装置内で実施され、その理由はそれによって1つの装置から別の装置への搬送損失を無くし、またこの方法を最適時間で実施することができるためである。
【0065】
リチウム金属酸素化合物の粉砕と分級の工程を、互いに分離された本発明方法に適した装置内で実施することもできる。
【0066】
好適な実施形態によれば、粉砕が渦流床方式あるいは流動床方式によって渦流室あるいは流動室内で実施され、その中においてノズルを介してまたは分配装置を使用して流動室内に送入することができる渦流状あるいは流動状の空気流あるいはガス流を使用して粒子がその大きさおよび密度に従って分離される。さらに、チューブローラミル、回転ローラミル、および高圧ローラミルを使用してリチウム金属酸素化合物を粉砕することができる。
【0067】
分級工程は、分級室と分級流を形成する分級機ノズルと分級機ロータとを備えた分級機を使用して実施することができる。本発明に係る方法は多様な装置を使用して実施することができ、例えば風力分級機、サイクロン、サイクロン分級機、またはサイクロンセパレータ等が挙げられる。
【0068】
特別な実施形態によれば、本発明に係る方法が追加的な粉砕工程を含むことができる。この追加的な粉砕工程は、リチウムイオン電池内に好適に使用される小粒子のリチウム金属酸素化合物を生成するために、加熱あるいは焼結工程における部分的な溶着によって生じた大きな粒子を分解するよう機能する。リチウムイオン電池のサイズの小型化は大きな意味を有し、そのために小粒子の電極材料の製造が極めて重要である。小粒子のリチウム電極材料の使用によって同じ体積でもより高いリチウムイオン電池の出力特性が可能になる。
【0069】
特別な実施形態において、追加的な粉砕工程が粉砕および/または分級装置から分離された追加的な装置内で実施される。この追加的な粉砕工程はジェットミルを使用して実施することができるが、その他にも、例えばボールミル、ミキサボールミル、遊星ミル、遠心ミル、乳鉢、マジャックカウンタージェットミル、スパイラルジェットミル、オーバルチューブジェットミル、流動床カウンタージェットミル、バッフル板付ジェットミル、またはフィンプルバ(Finnpulva)カウンタージェットミル等の任意の粉砕装置を使用することができる。凝集したリチウム金属酸素化合物の粒子は、さらに微粉砕、超微粒子化(超微粉砕)、またはクライオジェン粉砕によって粉砕することができる。
【0070】
特別な実施形態によれば、追加的な粉砕工程が流動床室と分級室とさらに選択的に粉砕装置とを合わせて具備した装置内で実施される。そのため本発明に係る方法を実施することが可能な全ての装置を使用することができる。例えばドイツ国アウグスブルグ市のホソカワアルピネ社製のAFG200型流動床カウンタージェットミルが挙げられる。
【0071】
本発明によれば、リチウム金属酸素化合物の粉砕および分級は同時の冷却、加熱、および/または乾燥を伴って実施することができる。
【0072】
浄化されたリチウム金属酸素化合物はそのリチウム金属酸素化合物の総重量に対して20ppm未満の磁性および/または酸化不純物、より好適には10ppm未満、さらに好適には5ppm未満の磁性および/または酸化不純物を有する。別の実施形態によれば、本発明によって得られたリチウム金属酸素化合物がそのリチウム金属酸素化合物の総重量に対して1ppm未満の磁性および/または酸化不純物を有する。
【0073】
本発明によって得られた低い不純物含有率を有する浄化されたリチウム金属酸素化合物は、それによってリチウムイオン電池の高いサイクル耐久性が達成され、出力特性が向上するとともに寿命も延長されるため、リチウムイオン電池内の電極用の活性材料として極めて有効に使用することができる。
【0074】
次に、本発明につき実施例を参照しながら以下詳細に説明するが、それによって本発明が限定されるものではないことが理解される。
【発明を実施するための形態】
【0075】
方法説明:
以下に、使用した方法および装置についてより詳細に説明する。
【0076】
粉砕および分級:
リチウム金属酸素化合物の粉砕および分級の工程は、ドイツ国アウグスブルグ市のホソカワアルピネ社製のAFG200型流動床カウンタージェットミル内で実施した。装置は製造者の操作説明に従って使用した。
【0077】
不純物の測定:
リチウム金属酸素化合物中の不純物の測定は、VWR社製の光源KL2500を備えたVWR社製の光学顕微鏡SZT300を使用して実施した。装置は製造者の操作説明に従って使用した。
【0078】
リチウム金属酸素化合物中の不純物の測定は、ツァイス社製の二次電子検出器ならびにオクスフォードインストルメント社製のEDX検出器を具備したツァイス社製のLeo1530を使用して走査電子顕微鏡(SEM)手段によって実施した。装置は製造者の操作説明に従って使用した。
【0079】
リチウム金属酸素化合物中の不純物の測定は、ヴァリアン社製の720ES ICP発光分光分析装置およびパーキンエルマー社製のOPTIMA3300DVを使用してICP OES法によって実施し、その際装置は製造者の操作説明に従って使用した。
【0080】
実施例
独国特許出願第102008026580.2−41号明細書あるいは米国特許第5545468号明細書の方法に従って得られた5000kg(量m)のリチウム金属酸素化合物LiTi12を本発明に係る方法に従って流動層カウンタージェットミル内で処理した。
【0081】
流動層カウンタージェットミルは、耐摩耗性のセラミック分級ホイールと吸気ノズルと排出バルブとを備えていた。流動室ならびに接続部材が耐摩耗性のブルコラン被覆を有している。
【0082】
粉砕パラメータは通常通り以下のように設定した:
排出バルブ(直径): 5mm
空気流の圧力: 6バール
分級ホイールの回転数: 4600rpm
流動室内における充填レベル: 10ないし15kg
処理量: 約60kg/h
【0083】
500kgのリチウムチタン酸塩(量mの10%)をジェットミルの粉砕室内に投入した。粉砕および分級の工程を開始し、流動室内におけるリチウムチタン酸塩の充填レベルを複数回確認した。粉砕および分級工程は、排出バルブを介しての浄化されたリチウムチタン酸塩の継続的な排出によって流動室の内容物が5kg(量mの0.1%)まで減少した際に初めて中断した。
【0084】
流動層カウンタージェットミルを開放し、前記5kg(量mの0.1%)の残留物を取り出して全て廃棄した。続いて新たなリチウムチタン酸塩を注入し、毎回約500kg(量mの10%)のリチウムチタン酸塩原料を投入しながら、4500kgのリチウムチタン酸塩の残量についてプロセスを反復する。
【0085】
残留した磁性および/または酸化不純物に関しての浄化されたリチウムチタン酸塩の純度を検査するために、500gの浄化されたリチウムチタン酸塩を取り出し以下に記述する方法によって不純物を測定した。
【0086】
検査方法:
容量2lの円筒形のプラスチック容器内で500gの浄化されたリチウムチタン酸塩を1000mlの蒸留水に懸濁した。
【0087】
懸濁液内に直径12.7mmの球形の磁石(NdFeB N35、Ni−Cu−Ni表面、磁束密度11700ないし12100ガウス)を投入した。球形の磁石を懸濁液から分離し、蒸留水で洗浄し、また超音波槽中において流水下で浄化した。その際磁石上に付着した磁性および/または酸化不純物は磁極上に集中した。窯内において90℃で乾燥させた後、導電性の粘着層を備えたSEM試料ホルダ上に磁石の磁極を取り付けた。その後、SEMを使用しBSE検出器によって磁性不純物を測定した。SEMおよびEDX検出器による得られた元素の定量的な測定はそれほど有意義でないことに留意すべきである。表面の組織効果および検査される粒子の相当に小さな粒子大のため電子流が偏向される可能性があり、それによって半定量的に過ぎないものの定量的に一義である電子によって誘導され照射された元素固有のX線放射線の割り当てが可能となる。
【0088】
分析の間に一次電子照射によってしばしば試料の帯電が生じることがある。一次電子照射のエネルギーが小さ過ぎると、極僅かの二次電子のみが放射され、それが試料の負の帯電につながる。逆に、一次電子照射のエネルギーが大き過ぎると、放射された二次電子の大きな数のため、試料は正に帯電する。その帯電作用のため粒子の着色に差異が生じる。これは、炭素の薄い層によって最小化することができる。この効果は利用可能であり、その理由は試料の分析の間の部分的に強くなった帯電効果とそれに従った粒子の視覚的な差異が可能になるためである。一次電子照射が小さ過ぎる場合、試料が帯電し個々の元素に応じて顕著なコントラストが目視可能になる。従って磁性および金属性の元素および化合物、例えば多様な鋼からなる機械の金属質摩耗粉を明るい白で目視可能にし、一方酸化化合物は依然として灰色で確認することができる。
【0089】
浄化されたリチウムチタン酸塩のさらに別の試料について、ICP OESを使用して不純物を測定した。浄化されたリチウムチタン酸塩の可溶化し溶解された試料を、5500℃ないし8000℃におけるアルゴンプラズマのエアゾルとしての噴射によって原子に分解する。プラズマによって原子およびイオンが励磁されて発光し、発光された光のスペクトル分析によって波長および強度に従った元素の定性および定量測定が可能になる。
【0090】
試料を処理した後、上述の検査方法に従って光学顕微鏡を使用して処理する。球磁石上に付着する磁性粒子から、汚染度合を判断することが可能になる。
【0091】
a)未浄化のリチウムチタン酸塩
1.定性分析
一般的な未浄化のリチウムチタン酸塩を通常の製造方法によって製造し上述した検査方式に従って処理した。球磁石上に付着した磁性粒子の成分の光学顕微鏡を使用した定性分析によって、試料が1000ppm超の比較的高い割合の不純物を含むことが示された。
【0092】
球磁石の撮影によって、1000ppm超の比較的多量の磁性不純物が試料内に含まれ、それが付着した磁性粒子として良好に目視可能であった。
【0093】
2.定量分析
2.1.SEM
一般的な未浄化のリチウムチタン酸塩を出発点とした汚染の割合を、SEMによって半定量的に測定した。選択したコントラスト設定に基づいて、極めて良好に不純物とリチウムチタン酸塩とを識別することができた。撮影によって1000ppm超の比較的高い割合の不純物が確認された。少量のLiおよびTiの他に、Fe、Cr,NiおよびZn等の異なった元素が確認された。
【0094】
2.2.ICP OES
さらに、ICP OESを使用して不純物の割合を定量的および定性的に測定した。定量的および定性的なICP OES分析の結果(表1)によって、どれくらいの量のFe、Cr,NiおよびZnによる不純物が未浄化のリチウムチタン酸塩中に含まれていたかが示されている。
【0095】
【表1】
【0096】
異なった不純物の割合が表1に列記されており、それによれば未浄化のリチウムチタン酸塩が主に鉄を不純物として含むことが示されている。
【0097】
b)不良に浄化されたリチウムチタン酸塩
1.定性分析
不良に浄化されたリチウムチタン酸塩は本発明に係る方法に従って浄化したが、粉砕および分級工程の早期の中断は行わなかった。その後の処理は前述した検査方法に従って実施した。光学顕微鏡を使用した定性分析によって、試料が200ppmを超える割合の磁性および/または酸化粒子を含むことが示された。
【0098】
球磁石の撮影によって、200ppm超の割合の不純物が不良に浄化された試料中に確認された。
【0099】
2.定量分析
2.1.SEM
不良に浄化されたリチウムチタン酸塩中の汚染を、SEMによって半定量的に測定した。選択したコントラスト設定の撮影によって、少量のリチウムチタン酸塩の他に極めて多くの不純物が含まれることが示された。撮影によって、試料を完全に粉砕および分級することによって初期原料と同様に高い割合の不純物が残留することが確認された。少量のLiおよびTiの他に、Fe、Cr,Ni、Zn等の異なった元素が確認された。
【0100】
2.2.ICP OES
さらに、ICP OESを使用して不良に浄化されたリチウムチタン酸塩中の不純物の割合を定量的に測定した。定量的および定性的なICP OES分析の結果によって、Fe、Cr,NiおよびZnによる不純物が不良に浄化されたリチウムチタン酸塩中に含まれていたことが示されている。表2に不良に浄化されたリチウムチタン酸塩中の不純物の割合が示されている。
【0101】
【表2】
【0102】
異なった不純物の割合が表2に列記されており、それによればこの試料の数値が未浄化のリチウムチタン酸塩の数値に相当することが示されており、その理由は粉砕および分級を早期に中断しなかったことによって製品中に依然として不純物が残留するためである。
【0103】
c)良好に浄化されたリチウムチタン酸塩
1.定性分析
本発明に係る方法に従って製造され良好に浄化されたリチウムチタン酸塩の分析を、前述した検査方法に従って実施した。光学顕微鏡を使用した定性分析によって、試料中に極微量の磁性および/または酸化粒子の痕跡が含まれることが示された。
【0104】
球磁石の撮影によって、球磁石上に殆ど粒子が付着しておらず20ppm未満の不純物しか試料中に含まれないことが確認された。
【0105】
2.定量分析
2.1.SEM
良好に浄化されたリチウムチタン酸塩を、SEMによって半定量的に測定した。選択したコントラスト設定によって、良好に浄化されたリチウムチタン酸塩中には20ppm未満の極僅かの不純物が含まれることが示された。撮影によって、本発明に係るリチウムチタン酸塩の粉砕および分級において、粉砕および分級工程を早期に中断することによって不純物の割合を低減し得ることが示された。多量のLiおよびTiの他に、Fe、Cr,NiおよびZnが確認された。
【0106】
2.2.ICP OES
定量的および定性的なICP OES分析の結果によって、良好に浄化されたリチウムチタン酸塩中にCr,NiおよびFeの不純物が下記の割合で含まれていたことが示されている(表3)。
【0107】
【表3】
【0108】
浄化されたリチウムチタン酸塩の分析から、本発明に係る方法によって不純物の割合が大幅に削減されたことが示されている(表3)。浄化されたリチウムチタン酸塩は極めて高い純度を有し、極僅かなCr、Ni、ZnおよびFeの不純物の痕跡が見られた。
【0109】
d)分離された残留物
1.定性分析
本発明に係る方法に従って分離された残留物の分析を、前述した検査方法に従って実施した。光学顕微鏡を使用した定性分析によって、主に本発明に係る方法によって分離された磁性および/または酸化粒子が試料中に含まれることが示された。
【0110】
極めて高い割合の磁性不純物が球磁石上付着するため、10000ppmを超える極めて多量の磁性不純物が試料中に含まれることが撮影によって示された。
【0111】
2.定量分析
2.1.SEM
分離された残留物中の不純物を、SEMによって半定量的に測定した。選択したコントラスト設定によって、試料が主に不純物からなり、10000ppmを超える不純物を有することが示された。撮影によって、残留物の早期の分離によって主に不純物が分離され、僅かな製品痕跡のみが含まれることが確認された。少量のLiおよびTiの痕跡の他に、Fe、Cr,NiおよびZn等の異なった不純物が確認された。
【0112】
2.2.ICP OES
定量的および定性的なICP OES分析の結果によって、分離された残留物中にCr,Ni、ZnおよびFeの不純物が下記の割合で含まれていたことが示されている(表4)。
【0113】
【表4】
【0114】
分離された残留物の分析から、本発明に係る浄化方法によって不純物が大きく除去されることが示されている(図4)。浄化されたリチウムチタン酸塩は極めて高い純度と極僅かなCr、NiおよびFeの不純物の痕跡を有する。