(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係るモータ制御装置について説明する。ただし、本発明の技術的範囲はそれらの実施の形態には限定されず、特許請求の範囲に記載された発明とその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0016】
[実施例1]
まず、本発明の実施例1に係るモータ制御装置について図面を用いて説明する。
図1は、本発明の実施例1に係るモータ制御装置の構成図である。本発明の実施例1に係るモータ制御装置101は、電流指令に基づいて、三相モータ20を駆動するモータ制御装置であって、モータ20を駆動するための電流指令値を計算する電流指令計算部1と、モータの動力線30に流れる電流値を検出する電流検出部2と、電流指令値と検出した電流値との差分である電流偏差を計算する電流偏差計算部3と、電流偏差に基づいてモータに印加する電圧指令値を計算する電圧指令計算部6と、電流偏差、電流偏差の絶対値、または、電流偏差のべき乗値に対して、フィルタを掛けたデータを計算して、動力線の断線の検出のための指標データとして出力するフィルタ処理部4と、指標データに基づいて、動力線の断線を検出する動力線断線検出部5と、を有することを特徴とする。
【0017】
電流指令計算部1は、トルク指令に基づいて電流指令値を計算し、電流偏差計算部3に出力する。電流偏差計算部3は減算器であり、電流指令計算部1が計算した電流指令値から電流検出部2が検出した電流値を減算することにより、電流指令値と検出した電流値との差分である電流偏差を計算する。
【0018】
電流偏差計算部3が計算した電流偏差は、電圧指令計算部6とフィルタ処理部4に対して出力される。電圧指令計算部6は、電流偏差に基づいてモータ20に印加する電圧指令値を計算する。電流検出部2は、電圧指令計算部6から出力された電圧指令値がモータに印加されるときにモータの動力線30に流れる電流値を検出し、電流偏差計算部3にフィードバックする。
【0019】
フィルタ処理部4は、電流制御ループにおいて生じる遅れを補償したり、電流値に重畳したノイズを除去したりするために、電流偏差、電流偏差の絶対値、または、電流偏差のべき乗値のうちのいずれかに対して、フィルタを掛けたデータを計算する。フィルタ処理部4がフィルタ処理したデータは、動力線30の断線の検出のための指標データとして動力線断線検出部5に出力される。
【0020】
ここで、フィルタ処理の対象として、電流偏差、電流偏差の絶対値、または、電流偏差のべき乗値のうち、動力線断線の影響が大きく見える値を選択する。例えば、電流指令が交流の場合に、理想(指令)からのずれを正しく評価するために「電流偏差」を選択する。また、動力線断線の影響が短い周期の偏差として現れる場合、理想(指令)からのずれを大きく評価するために「電流偏差の絶対値」を選択する。さらに、電流指令が小さく、電流偏差自体が小さい場合に偏差を拡大するために「電流偏差のべき乗値」を選択する。
【0021】
動力線断線検出部5は、指標データと規定値との大小関係に基づいて、動力線が断線しているか否かを検出する。即ち、指標データが規定値より大きい場合は、動力線は断線していると判定する。一方、指標データが規定値以下である場合は、動力線に断線は生じていないと判定する。なお、規定値は動力線断線検出部5内のメモリ(図示せず)に記憶しておくことができる。
【0022】
本発明の実施例1に係るモータ制御装置101によれば、電流偏差等にフィルタ処理を行って動力線の断線の判定のための指標データを計算し、この指標データに基づいて動力線の断線の有無を判定している。そのため、電流指令値が大きく変化したり、電流値に大きなノイズが重畳したりした場合であっても、動力線が断線したものと誤検出することを回避することができ、動力線の断線の有無を正確に判定することができる。
【0023】
次に、本発明の実施例1に係るモータ制御装置の動作手順について説明する。
図2は、本発明の実施例1に係るモータ制御装置による動力線の断線を検出する手順を説明するためのフローチャートである。
【0024】
まず、ステップS101において、電流指令計算部1が、モータを駆動するための電流指令値を計算する。次に、ステップS102において、電流検出部2が、モータの動力線30に流れる電流値を検出し、検出した電流値を電流偏差計算部3にフィードバックする。
【0025】
次に、ステップS103において、電流偏差計算部3が電流指令値と検出した電流値との差分である電流偏差を計算する。次に、ステップS104において、フィルタ処理部4が、動力線の断線の検出のための指標データを計算する。指標データの計算は、電流偏差、電流偏差の絶対値、または、電流偏差のべき乗値のうちのいずれかに対して、フィルタを掛けることにより行う。計算した指標データは、動力線断線検出部5に出力される。
【0026】
次に、ステップS105において、動力線断線検出部5が、指標データと規定値との大小関係に基づいて、動力線の断線の有無を判定する。指標データが規定値を超えている場合には、ステップS106において、動力線断線検出部5が動力線は断線状態にあると判定する。一方、指標データが規定値以下である場合には、動力線断線検出部5が動力線は断線状態ではないと判定し、ステップS101に戻って新たな電流指令値に基づいて動力線の断線の有無の判定を継続して行う。
【0027】
以上のように、本発明の実施例1に係るモータ制御装置によれば、電流偏差にフィルタを掛けて計算した指標データに基づいて、動力線の断線の有無を判定しているので、電流指令値が大きく変動した場合や、検出した電流値に大きなノイズが重畳した場合であっても、誤検出することなく、動力線の断線を正確に判定することができる。
【0028】
[実施例2]
次に、本発明の実施例2に係るモータ制御装置について図面を用いて説明する。
図3は、本発明の実施例2に係るモータ制御装置の構成図である。本発明の実施例2に係るモータ制御装置102が、実施例1に係るモータ制御装置101と異なっている点は、電圧指令値が飽和しているか否かを判定し、電圧指令飽和判定結果として出力する電圧指令飽和判定部7をさらに有し、動力線断線検出部5は、電圧指令飽和判定結果に従って、電圧指令値が飽和していないと判定した場合にのみ、指標データに基づいて、動力線の断線の有無を検出する点である。一方、電圧指令値が飽和していると判定した場合は、動力線の断線の検出を休止する。実施例2に係るモータ制御装置102の他の構成は、実施例1に係るモータ制御装置101の構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0029】
電圧指令飽和判定部7は、電圧指令計算部6が計算した電圧指令値を取得して、電圧指令値と規定電圧値とを比較して、電圧指令値が、モータ駆動部の供給可能電圧である規定電圧値を超えている場合は、電圧指令値が飽和していると判定し、電圧指令値が規定電圧値以下である場合は、電圧指令値が飽和していないと判定する。電圧指令飽和判定部7は、この判定結果を電圧指令飽和判定結果として動力線断線検出部5に出力する。
【0030】
動力線断線検出部5は、実施例1と同様に、フィルタ処理部4から指標データを受信しており、電圧指令値が飽和しているか否かに基づいて、動力線の断線の検出を実行するかしないかを決定する。即ち、動力線断線検出部5は、電圧指令飽和判定結果に従って、電圧指令値が飽和していないと判定した場合は、指標データに基づいて、動力線の断線の有無を検出する。一方、電圧指令値が飽和していると判定した場合は、動力線の断線の検出を休止する。
【0031】
電圧指令値が飽和している場合、即ち、電流制御ループの出力である電圧指令値が上限のリミット値に達している場合には、電流偏差が大きくなる可能性があり、このような状態で動力線の断線の有無を判定すると誤検出を生じる恐れがある。そこで、実施例2に係るモータ制御装置においては、電圧指令値が飽和している場合には動力線の断線の検出を休止することにより誤検出を回避するようにしている。
【0032】
次に、本発明の実施例2に係るモータ制御装置の動作手順について説明する。
図4は、本発明の実施例2に係るモータ制御装置による動力線の断線を検出する手順を説明するためのフローチャートである。
【0033】
まず、ステップS201において、電流指令計算部1が、モータを駆動するための電流指令値を計算する。次に、ステップS202において、電流検出部2が、モータの動力線30に流れる電流値を検出し、検出した電流値を電流偏差計算部3にフィードバックする。
【0034】
次に、ステップS203において、電流偏差計算部3が電流指令値と検出した電流値との差分である電流偏差を計算する。次に、ステップS204において、電圧指令計算部6が、電流偏差に基づいてモータに印加する電圧指令値を計算する。
【0035】
次に、ステップS205において、電圧指令飽和判定部7が、電圧指令値が飽和しているか否かを判定し、電圧指令飽和判定結果として出力する。動力線断線検出部5は、電圧指令飽和判定結果に従って、電圧指令値が飽和していないと判定した場合は、ステップS206において計算した、動力線の断線の検出のための指標データに基づいて、ステップS207において動力線の断線を検出する。一方、電圧指令値が飽和していると判定した場合は、動力線の断線の検出を休止し、ステップS201に戻って、新たな電流指令値に基づいて動力線の断線検出を継続する。
【0036】
ステップS206における指標データの計算は、フィルタ処理部4が、電流偏差、電流偏差の絶対値、または、電流偏差のべき乗値のうちのいずれかに対して、フィルタを掛けることにより行う。計算した指標データは、動力線断線検出部5に出力され、ステップS207において、動力線断線検出部5が、指標データと規定値との大小関係に基づいて、動力線の断線の有無を検出する。指標データが規定値を超えている場合には、ステップS208において、動力線が断線状態であると判定する。一方、指標データが規定値以下である場合には、動力線は断線状態ではないと判定し、ステップS201に戻り、新たな電流指令値に基づいて動力線の断線の有無の判定を継続して行う。
【0037】
以上のように、実施例2に係るモータ制御装置によれば、電圧指令値が飽和していない場合にのみ、動力線の断線の有無を判定している。即ち、電圧指令値が飽和している場合には動力線の断線の検出を休止し、電圧指令値が飽和していないことを確認してから動力線の断線の有無を判定している。このため、電圧指令値の飽和による動力線の断線の誤検出を回避することができる。
【0038】
[実施例3]
次に、本発明の実施例3に係るモータ制御装置について図面を用いて説明する。
図5は、本発明の実施例3に係るモータ制御装置の構成図である。本発明の実施例3に係るモータ制御装置103が、実施例1に係るモータ制御装置101と異なっている点は、モータの回転速度を検出するモータ速度検出部8と、モータの回転速度が規定速度より高いか否かを判定するモータ速度判定部9と、をさらに有し、動力線断線検出部5は、モータの回転速度が規定速度以下の場合にのみ、指標データに基づいて、動力線の断線を検出する点である。一方、モータの回転速度が規定速度より高い場合は、動力線の断線の検出を休止する。実施例3に係るモータ制御装置103の他の構成は、実施例1に係るモータ制御装置101の構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0039】
通常、モータに印加する電圧指令は、モータ速度に比例して大きくなる。しかし、動力線が断線した状態では断線している相に電流が流れないため、電圧指令が増大し、電圧指令が飽和する場合がある。そのため、実施例2のように電圧指令が飽和した場合に動力線の断線の検出を休止すると、動力線の断線を検出できなくなる恐れがある。
【0040】
そこで、実施例3に係るモータ制御装置においては、モータの回転速度を検出するモータ速度検出部8と、モータの回転速度が規定速度より高いか否かを判定するモータ速度判定部9と、を設け、モータの回転速度を監視するようにしている。そのうえで、動力線断線検出部5は、モータの回転速度が規定速度以下の場合は、指標データに基づいて、動力線の断線を検出し、モータの回転速度が規定速度より高い場合は、動力線の断線の検出を休止するようにしている。このようにすることで、モータの回転速度が正常時に電圧指令が飽和しないような範囲内であることを確認したうえで動力線の断線の検出を行うようにしているので、動力線の断線の有無を正確に検出することができる。
【0041】
次に、本発明の実施例3に係るモータ制御装置の動作手順について説明する。
図6は、本発明の実施例3に係るモータ制御装置による動力線の断線を検出する手順を説明するためのフローチャートである。
【0042】
まず、ステップS301において、電流指令計算部1が、モータを駆動するための電流指令値を計算する。次に、ステップS302において、電流検出部2が、モータの動力線30に流れる電流値を検出し、検出した電流値を電流偏差計算部3にフィードバックする。
【0043】
次に、ステップS303において、電流偏差計算部3が電流指令値と検出した電流値との差分である電流偏差を計算する。次に、ステップS304において、モータ速度検出部8が、モータ20の回転速度を検出する。モータ20の回転速度の検出はモータに設けられたエンコーダ(図示せず)を用いて行うことができる。
【0044】
次に、ステップS305において、モータ速度判定部9が、モータの回転速度が規定速度より高いか否かを判定する。規定速度のデータは、モータ速度判定部9内に設けられたメモリ(図示せず)に予め記憶させておくことができる。
【0045】
ステップS305において、モータの回転速度(モータ速度)が規定速度より高いと判定した場合には、動力線の断線の検出を休止し、ステップS301に戻って、新たな電流指令値に基づいて動力線の断線の検出を継続する。一方、モータ速度が規定速度以下である場合には、ステップS306以降において、動力線の断線の検出を実行する。
【0046】
ステップS306において、フィルタ処理部4が、動力線の断線の検出のための指標データを計算する。指標データの計算は、電流偏差、電流偏差の絶対値、または、電流偏差のべき乗値のうちのいずれかに対して、フィルタを掛けることにより行う。計算した指標データは、動力線断線検出部5に出力される。
【0047】
次に、ステップS307において、動力線断線検出部5が、指標データと規定値との大小関係に基づいて、動力線の断線の有無を検出する。指標データが規定値を超えている場合には、ステップS308において、動力線断線検出部5が動力線は断線していると判定する。一方、指標データが規定値以下である場合には、動力線断線検出部5が動力線は断線していないと判定し、ステップS301に戻って新たな電流指令値に基づいて動力線の断線の有無の判定を継続して行う。
【0048】
以上のように、本発明の実施例3に係るモータ制御装置によれば、モータの回転速度が正常時に電圧指令が飽和しないような範囲であることを確認したうえでモータの動力線の断線の有無を検出するようにしているので、動力線の断線の有無を正確に検出することができる。
【0049】
[実施例4]
次に、本発明の実施例4に係るモータ制御装置について図面を用いて説明する。
図7は、本発明の実施例4に係るモータ制御装置の構成図である。本発明の実施例4に係るモータ制御装置104が、実施例2に係るモータ制御装置102と異なっている点は、モータを駆動する電流値が規定値を超えた場合に、電流出力制限を行う電流出力制限部10をさらに備え、動力線断線検出部5は、電圧指令飽和判定部7が、電圧指令値が飽和していないと判定し、かつ、電流出力制限部10が、電流出力制限を行っていない場合にのみ、指標データに基づいて、動力線の断線を検出する点である。電圧指令飽和判定部7が、電圧指令値が飽和していると判定した場合、または、電流出力制限部10が電流出力制限を行っている場合は、動力線の断線の検出を休止する。実施例4に係るモータ制御装置104の他の構成は、実施例2に係るモータ制御装置102の構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0050】
実施例2に係るモータ制御装置102においては、電圧指令飽和判定部7により電圧指令値が飽和しているか否かを判定し、電圧指令値が飽和していない場合にモータの動力線の断線の有無を検出するようにしていた。これに対して、実施例4に係るモータ制御装置104においては、これに加えて電流出力制限部10を設け、電流出力制限を行っていない場合にのみ、モータの動力線の断線の有無を検出するようにしている。
【0051】
電流出力制限部10がモータに流れる電流を制限するのは、モータに過電流が流れるのを防止するためであり、そのような場合には一時的にモータに流れる電流が制限され、電流検出部2で検出される電流値は非常に小さくなるものと考えられる。このとき電流偏差計算部3で計算される電流偏差は大きな値となると考えられ、そのまま動力線の断線の有無を判定してしまうと動力線は断線していないにも関わらず、動力線は断線したものと誤検出してしまう恐れがある。そこで、本実施例に係るモータ制御装置においては、電流出力制限部10を設けて、モータに流れる電流値が制限されているような状況では動力線の断線の有無の検出を休止するようにしている。一方、モータへの電流制限が行われていない場合には、実施例2のモータ制御装置と同様に、モータの動力線の断線の有無を検出することができる。このような構成とすることにより、モータへの電流制限の有無を加味することで、動力線の断線の有無を正確に検出することができるようになる。
【0052】
なお、実施例4に係るモータ制御装置においては、実施例2のように電圧指令飽和判定部7を設けて電圧指令値の飽和の有無も判定している。従って、実施例4に係るモータ制御装置においては、電圧指令飽和判定部7が、電圧指令値が飽和していないと判定し、かつ、電流出力制限部10が、電流出力制限を行っていない場合に、指標データに基づいて、動力線の断線を検出するようにしている。一方、電圧指令飽和判定部7が、電圧指令値が飽和していると判定した場合、または、電流出力制限部10が、電流出力制限を行っている場合は、動力線の断線の検出を休止するようにしている。このように、電圧飽和及び電流制限の2つの観点からモータに流れる電流値の異常を排除するようにしているので、モータの動力線の断線の有無を正確に検出することができる。
【0053】
次に、本発明の実施例4に係るモータ制御装置の動作手順について説明する。
図8は、本発明の実施例4に係るモータ制御装置による動力線の断線を検出する手順を説明するためのフローチャートである。
【0054】
まず、ステップS401において、電流指令計算部1が、モータを駆動するための電流指令値を計算する。次に、ステップS402において、電流検出部2が、モータの動力線30に流れる電流値を検出し、検出した電流値を電流偏差計算部3にフィードバックする。
【0055】
次に、ステップS403において、電流偏差計算部3が電流指令値と検出した電流値との差分である電流偏差を計算する。次に、ステップS404において、電圧指令計算部6が、電流偏差に基づいてモータに印加する電圧指令値を計算する。
【0056】
次に、ステップS405において、電圧指令飽和判定部7が、電圧指令値が飽和しているか否かを判定し、電圧指令飽和判定結果として出力する。電圧指令値が飽和していると判定した場合は、動力線の断線の検出を休止し、ステップS401に戻って、新たな電流指令値に基づいて動力線の断線検出を継続する。
【0057】
一方、電圧指令値が飽和していないと判定した場合は、ステップS406において、電流出力制限部10が電流出力制限を実行しているか否かを判定する。電流出力制限が実行されている場合には、ステップS401に戻って、新たな電流指令値に基づいて動力線の断線検出を継続する。一方、電流出力制限が実行されていない場合には、ステップS407以降において、動力線の断線の検出を実行する。
【0058】
ステップS407において、フィルタ処理部4が、動力線の断線の検出のための指標データを計算する。指標データの計算は、電流偏差、電流偏差の絶対値、または、電流偏差のべき乗値のうちのいずれかに対して、フィルタを掛けることにより行う。計算した指標データは、動力線断線検出部5に出力される。
【0059】
次に、ステップS408において、動力線断線検出部5が、指標データと規定値との大小関係に基づいて、動力線の断線の有無を検出する。指標データが規定値を超えている場合には、ステップS409において、動力線断線検出部5が動力線は断線していると判定する。一方、指標データが規定値以下である場合には、動力線断線検出部5が動力線は断線していないと判定し、ステップS401に戻って新たな電流指令値に基づいて動力線の断線の有無の判定を継続して行う。
【0060】
以上のように、実施例4に係るモータ制御装置によれば、電圧指令値が飽和しておらず、モータへの電流制限も行われていない場合にのみ、モータの動力線の断線の有無を検出するようにしているので、モータの動力線の断線の有無を正確に検出することができる。
【0061】
[実施例5]
次に、本発明の実施例5に係るモータ制御装置について図面を用いて説明する。
図9は、本発明の実施例5に係るモータ制御装置の構成図である。本発明の実施例5に係るモータ制御装置105が、実施例3に係るモータ制御装置103と異なっている点は、モータを駆動する電流値が規定値を超えた場合に、電流出力制限を行う電流出力制限部10をさらに備え、動力線断線検出部5は、モータの回転速度が、規定速度以下の場合、かつ、電流出力制限部10が、電流出力制限を行っていない場合にのみ、指標データに基づいて、動力線の断線を検出する点である。モータの回転速度が、規定速度より高い場合、または、電流出力制限部10が、電流出力制限を行っている場合は、動力線の断線の検出を休止する。実施例5に係るモータ制御装置105の他の構成は、実施例3に係るモータ制御装置103の構成と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0062】
実施例3に係るモータ制御装置103においては、モータの回転速度を検出するモータ速度検出部8と、モータの回転速度が規定速度より高いか否かを判定するモータ速度判定部9と、を設け、モータの回転速度を監視し、モータの回転速度が規定速度以下の場合にのみ、指標データに基づいて、動力線の断線を検出するようにしている。実施例5に係るモータ制御装置105においては、これに加えて電流出力制限部10を設け、電流出力制限を行っていない場合にモータの動力線の断線の有無を検出するようにしている。
【0063】
電流出力制限部10がモータに流れる電流を制限するのは、モータに過電流が流れるのを防止するためであり、そのような場合には一時的にモータに流れる電流が制限され、電流検出部2で検出される電流値は非常に小さくなるものと考えられる。
【0064】
しかしながら、モータに流れる電流を制限した結果、電流検出部2で検出される電流値は一時的に低下し、そのまま電流偏差に基づいて動力線の断線の有無を判定すると、動力線の断線は生じていないにもかかわらず、動力線は断線しているものと誤検出する可能性も考えられる。そこで、実施例5に係るモータ制御装置においては、電流出力制限部10により電流出力制限が行われている場合には、電流の制限に基づく断線の誤検出を回避するため、動力線の断線の検出を行わないようにしている。このように、モータの回転速度が規定速度以下であって、かつ、電流制限も行われていない場合にのみ、動力線の断線の有無を検出するようにすることにより、動力線の断線の誤検出を回避することができる。
【0065】
次に、本発明の実施例5に係るモータ制御装置の動作手順について説明する。
図10は、本発明の実施例5に係るモータ制御装置による動力線の断線を検出する手順を説明するためのフローチャートである。
【0066】
まず、ステップS501において、電流指令計算部1が、モータを駆動するための電流指令値を計算する。次に、ステップS502において、電流検出部2が、モータの動力線30に流れる電流値を検出し、検出した電流値を電流偏差計算部3にフィードバックする。
【0067】
次に、ステップS503において、電流偏差計算部3が電流指令値と検出した電流値との差分である電流偏差を計算する。次に、ステップS504において、モータ速度検出部8が、モータ20の回転速度を検出する。モータの回転速度の検出はモータに設けられたエンコーダ(図示せず)を用いて行うことができる。
【0068】
次に、ステップS505において、モータ速度判定部9が、モータの回転速度が規定速度より高いか否かを判定する。規定速度のデータは、モータ速度判定部9内に設けられたメモリ(図示せず)に予め記憶させておくことができる。
【0069】
ステップS505において、モータの回転速度(モータ速度)が規定速度より高いと判定した場合には、動力線の断線の検出を休止し、ステップS501に戻って、新たな電流指令値に基づいて動力線の断線の検出を継続する。
【0070】
一方、モータ速度が規定速度以下である場合には、ステップS506において、電流出力制限部10が電流出力制限を実行しているか否かを判定する。電流出力制限が実行されている場合には、ステップS501に戻って、新たな電流指令値に基づいて動力線の断線の検出を継続する。電流出力制限が実行されていない場合には、ステップS507以降において、動力線の断線の検出を実行する。
【0071】
ステップS507において、フィルタ処理部4が、動力線の断線の検出のための指標データを計算する。指標データの計算は、電流偏差、電流偏差の絶対値、または、電流偏差のべき乗値のうちのいずれかに対して、フィルタを掛けることにより行う。計算した指標データは、動力線断線検出部5に出力される。
【0072】
次に、ステップS508において、動力線断線検出部5が、指標データと規定値との大小関係に基づいて、動力線の断線の有無を検出する。指標データが規定値を超えている場合には、ステップS509において、動力線断線検出部5が動力線は断線していると判定する。一方、指標データが規定値以下である場合には、動力線断線検出部5が動力線は断線していないと判定し、ステップS501に戻って新たな電流指令値に基づいて動力線の断線の有無の判定を継続して行う。
【0073】
以上のように、本発明の実施例5に係るモータ制御装置によれば、モータの回転速度が正常時に電圧指令が飽和しない範囲であり、モータへの電流制限も行われていないことを確認したうえでモータの動力線の断線の有無を検出するようにしているので、モータの動力線の断線の有無を正確に検出することができる。
【0074】
[実施例6]
次に、本発明の実施例6に係るモータ制御装置について図面を用いて説明する。
図11は、本発明の実施例6に係るモータ制御装置の構成図である。本発明の実施例6に係るモータ制御装置106が、実施例1に係るモータ制御装置101と異なっている点は、電流検出部2が検出した電流値をd軸電流値及びq軸電流値にdq変換する検出電流dq変換部11をさらに有し、電流指令計算部1は、d軸電流指令値を計算するd軸電流指令計算部1d、及びq軸電流指令値を計算するq軸電流指令計算部1qを備え、電流偏差計算部3は、d軸電流指令値とd軸電流値との差分であるd軸電流偏差を計算するd軸電流偏差計算部3d、及びq軸電流指令値とq軸電流値との差分であるq軸電流偏差を計算するq軸電流偏差計算部3qを備え、電圧指令計算部6は、d軸電流偏差及びq軸電流偏差に基づいてモータに印加する電圧指令値を計算し、フィルタ処理部4は、d軸電流偏差、d軸電流偏差の絶対値、または、d軸電流偏差のべき乗値に対して、フィルタを掛けたデータを計算して、動力線の断線の検出のためのd軸用指標データとして出力するd軸フィルタ処理部4d、及びq軸電流偏差、q軸電流偏差の絶対値、または、q軸電流偏差のべき乗値に対して、フィルタを掛けたデータを計算して、動力線の断線の検出のためのq軸用指標データとして出力するq軸フィルタ処理部4qを備え、動力線断線検出部5は、d軸用指標データまたはq軸用指標データに基づいて、動力線の断線を検出する点である。
【0075】
電流指令計算部1は、d軸電流指令計算部1d及びq軸電流指令部1qを備えている。d軸電流指令計算部1dは、トルク指令に基づいてd軸電流指令値を計算し、d軸電流偏差計算部3dに出力する。q軸電流指令計算部1qは、トルク指令に基づいてq軸電流指令値を計算し、q軸電流偏差計算部3qに出力する。
【0076】
電流偏差計算部3は、d軸電流偏差計算部3d及びq軸電流偏差計算部3qを備えている。d軸電流偏差計算部3dは減算器であり、d軸電流指令計算部1dが計算したd軸電流指令値から、電流検出部2が検出した電流値を検出電流dq変換部11により変換されたd軸電流値を減算することにより、d軸電流指令値と検出したd軸電流値との差分であるd軸電流偏差を計算する。同様に、q軸電流偏差計算部3qは減算器であり、q軸電流指令計算部1qが計算したq軸電流指令値から、電流検出部2が検出した電流値を検出電流dq変換部11により変換されたq軸電流値を減算することにより、q軸電流指令値と検出したq軸電流値との差分であるq軸電流偏差を計算する。
【0077】
フィルタ処理部4は、d軸フィルタ処理部4d及びq軸フィルタ処理部4qを備えている。d軸電流偏差計算部3dが計算したd軸電流偏差は、電圧指令計算部6とd軸フィルタ処理部4dに対して出力される。同様に、q軸電流偏差計算部3qが計算したq軸電流偏差は、電圧指令計算部6とq軸フィルタ処理部4qに対して出力される。
【0078】
電圧指令計算部6は、d軸電流偏差及びq軸電流偏差に基づいてモータ20に印加する電圧指令値を計算する。電流検出部2は、電圧指令計算部6から出力された電圧指令値がモータに印加されるときにモータの動力線30に流れる電流値を検出し、検出電流dq変換部11に出力する。検出電流dq変換部11は、検出電流をd軸電流及びq軸電流に変換し、それぞれ、d軸電流偏差計算部3d及びq軸電流偏差計算部3qにフィードバックする。
【0079】
d軸フィルタ処理部4dは、電流制御ループにおいて生じる遅れを補償したり、d軸電流値に重畳したノイズを除去したりするために、d軸電流偏差、d軸電流偏差の絶対値、または、d軸電流偏差のべき乗値に対して、フィルタを掛けたデータのうちのいずれかを計算する。d軸フィルタ処理部4dがフィルタ処理したデータは、d軸動力線の断線の検出のためのd軸用指標データとして動力線断線検出部5に出力される。
【0080】
同様に、q軸フィルタ処理部4qは、電流制御ループにおいて生じる遅れを補償したり、q軸電流値に重畳したノイズを除去したりするために、q軸電流偏差、q軸電流偏差の絶対値、または、q軸電流偏差のべき乗値に対して、フィルタを掛けたデータのうちのいずれかを計算する。q軸フィルタ処理部4qがフィルタ処理したデータは、q軸動力線の断線の検出のためのq軸用指標データとして動力線断線検出部5に出力される。
【0081】
動力線断線検出部5は、d軸用指標データとd軸用規定値との大小関係に基づいて、動力線が断線しているか否かを検出する。即ち、d軸用指標データがd軸用規定値より大きい場合は、動力線は断線していると判定する。一方、d軸用指標データがd軸用規定値以下である場合は、動力線に断線は生じていないと判定する。同様に、動力線断線検出部5は、q軸用指標データとq軸用規定値との大小関係に基づいて、動力線が断線しているか否かを検出する。即ち、q軸用指標データがq軸用規定値より大きい場合は、動力線は断線していると判定する。一方、q軸用指標データがq軸用規定値以下である場合は、動力線に断線は生じていないと判定する。
【0082】
本発明の実施例6に係るモータ制御装置106によれば、d軸及びq軸のそれぞれについて、d軸及びq軸電流偏差等にフィルタ処理を行って動力線の断線の判定のためのd軸用及びq軸用指標データを計算し、このd軸用及びq軸用指標データに基づいて動力線の断線の有無を判定している。そのため、d軸及びq軸電流指令値が大きく変化したり、d軸及びq軸電流値に大きなノイズが重畳したりした場合であっても、動力線が断線したものと誤検出する恐れがなく、動力線の断線の有無を正確に判定することができる。
【0083】
次に、本発明の実施例6に係るモータ制御装置の動作手順について説明する。
図12は、本発明の実施例6に係るモータ制御装置による動力線の断線を検出する手順を説明するためのフローチャートである。
【0084】
まず、ステップS601において、d軸電流指令計算部1dが、モータを駆動するためのd軸電流指令値を計算する。次に、ステップS602において、電流検出部2が、モータの動力線30に流れる電流値を検出し、検出電流dq変換部11によって変換されたd軸電流値をd軸電流偏差計算部3dにフィードバックする。
【0085】
次に、ステップS603において、d軸電流偏差計算部3dがd軸電流指令値と検出したd軸電流値との差分であるd軸電流偏差を計算する。次に、ステップS604において、d軸フィルタ処理部4dが、動力線の断線の検出のためのd軸用指標データを計算する。d軸用指標データの計算は、d軸電流偏差、d軸電流偏差の絶対値、または、d軸電流偏差のべき乗値のうちのいずれかに対して、フィルタを掛けることにより行う。計算したd軸用指標データは、動力線断線検出部5に出力される。
【0086】
次に、ステップS605において、動力線断線検出部5が、d軸用指標データとd軸用規定値との大小関係に基づいて、動力線の断線の有無を検出する。d軸用指標データがd軸用規定値を超えている場合には、ステップS611において、動力線断線検出部5が動力線は断線していると判定する。一方、d軸用指標データがd軸用規定値以下である場合には、q軸について動力線の断線の有無を検出する。
【0087】
ステップS606において、q軸電流指令計算部1qが、モータを駆動するためのq軸電流指令値を計算する。次に、ステップS607において、電流検出部2が、モータの動力線30に流れる電流値を検出し、検出電流dq変換部11によって変換されたq軸電流値をq軸電流偏差計算部3qにフィードバックする。
【0088】
次に、ステップS608において、q軸電流偏差計算部3qがq軸電流指令値と検出したq軸電流値との差分であるq軸電流偏差を計算する。次に、ステップS609において、q軸フィルタ処理部4qが、動力線の断線の検出のためのq軸用指標データを計算する。q軸用指標データの計算は、q軸電流偏差、q軸電流偏差の絶対値、または、q軸電流偏差のべき乗値のうちのいずれかに対して、フィルタを掛けることにより行う。計算したq軸用指標データは、動力線断線検出部5に出力される。
【0089】
次に、ステップS610において、動力線断線検出部5が、q軸用指標データとq軸用規定値との大小関係に基づいて、動力線の断線の有無を検出する。q軸用指標データがq軸用規定値を超えている場合には、ステップS611において、動力線断線検出部5が動力線は断線していると判定する。一方、q軸用指標データがq軸用規定値以下である場合には、動力線断線検出部5が動力線は断線していないと判定し、ステップS601に戻って新たな電流指令値に基づいて動力線の断線の有無の判定を継続して行う。
【0090】
以上のように、本発明の実施例6に係るモータ制御装置によれば、d軸及びq軸に関してd軸及びq軸電流偏差にフィルタを掛けて計算したd軸用及びq軸用指標データに基づいて、動力線の断線の有無を判定しているので、d軸またはq軸電流指令値が大きく変動した場合や、検出したd軸またはq軸電流値に大きなノイズが重畳した場合であっても、動力線の断線を誤検出することなく、正確に判定することができる。
【0091】
さらに、d軸電流偏差に基づいて計算されたd軸用指標データがd軸用規定値を超えている場合に動力線が断線状態であることを検出することができるので、動力線の断線を迅速に行うことができる。また、d軸電流偏差からは動力線の断線を検出できなかった場合に、q軸電流偏差に基づいて動力線の断線の有無を検出するようにしているので、動力線の断線の有無を正確に検出することができる。
【0092】
[実施例7]
次に、本発明の実施例7に係るモータ制御装置について図面を用いて説明する。
図13は、本発明の実施例7に係るモータ制御装置の構成図である。本発明の実施例7に係るモータ制御装置107は、電流指令に基づいて、三相モータ20を駆動するモータ制御装置であって、モータを駆動するための電流指令値を計算する電流指令計算部1と、モータの動力線30に流れる電流値を検出する電流検出部2と、電流指令値と検出した電流値との差分である電流偏差を計算する電流偏差計算部3と、電流偏差に基づいてモータに印加する電圧指令値を計算する電圧指令計算部6と、電流偏差、電流偏差の絶対値、または、電流偏差のべき乗値に対して、フィルタを掛けたデータを計算して、パワー素子の破壊の検出のための指標データとして出力するフィルタ処理部4と、指標データに基づいて、モータ用電力変換装置のパワー素子のオープン破壊を検出する電力変換装置パワー素子破壊検出部12と、を有することを特徴とする。
【0093】
電流指令計算部1は、トルク指令に基づいて電流指令値を計算し、電流偏差計算部3に出力する。電流偏差計算部3は減算器であり、電流指令計算部1が計算した電流指令値から電流検出部2が検出した電流値を減算することにより、電流指令値と検出した電流値との差分である電流偏差を計算する。
【0094】
電流偏差計算部3が計算した電流偏差は、電圧指令計算部6とフィルタ処理部4に対して出力される。電圧指令計算部6は、電流偏差に基づいてモータ20に印加する電圧指令値を計算する。電流検出部2は、電圧指令計算部6から出力された電圧指令値がモータに印加されるときにモータの動力線30に流れる電流値を検出し、電流偏差計算部3にフィードバックする。
【0095】
フィルタ処理部4は、電流制御ループにおいて生じる遅れを補償したり、電流値に重畳したノイズを除去したりするために、電流偏差、電流偏差の絶対値、または、電流偏差のべき乗値のうちのいずれかに対して、フィルタを掛けたデータのうちのいずれかを計算する。フィルタ処理部4がフィルタ処理したデータは、パワー素子の破壊の検出のための指標データとして電力変換装置パワー素子破壊検出部12に出力される。
【0096】
電力変換装置パワー素子破壊検出部12は、指標データと規定値との大小関係に基づいて、モータ用電力変換装置のパワー素子がオープン破壊しているか否かを検出する。即ち、指標データが規定値より大きい場合は、モータ用電力変換装置(図示せず)のパワー素子がオープン破壊していると判定する。一方、指標データが規定値以下である場合は、モータ用電力変換装置のパワー素子はオープン破壊していないと判定する。
【0097】
本発明の実施例7に係るモータ制御装置107によれば、電流偏差等にフィルタ処理を行ってパワー素子の破壊の判定のための指標データを計算し、この指標データに基づいてパワー素子の破壊の有無を判定している。そのため、電流指令値が大きく変化したり、電流値に大きなノイズが重畳したりした場合であっても、パワー素子が破壊したものと誤検出する恐れがなく、パワー素子の破壊の有無を正確に判定することができる。
【0098】
次に、本発明の実施例7に係るモータ制御装置の動作手順について説明する。
図14は、本発明の実施例7に係るモータ制御装置によるパワー素子の破壊を検出する手順を説明するためのフローチャートである。
【0099】
まず、ステップS701において、電流指令計算部1が、モータを駆動するための電流指令値を計算する。次に、ステップS702において、電流検出部2が、モータの動力線30に流れる電流値を検出し、検出した電流値を電流偏差計算部3にフィードバックする。
【0100】
次に、ステップS703において、電流偏差計算部3が電流指令値と検出した電流値との差分である電流偏差を計算する。次に、ステップS704において、フィルタ処理部4が、モータ用電力変換装置のパワー素子のオープン破壊の検出のための指標データを計算する。指標データの計算は、電流偏差、電流偏差の絶対値、または、電流偏差のべき乗値のうちのいずれかに対して、フィルタを掛けることにより行う。計算した指標データは、電力変換装置パワー素子破壊検出部12に出力される。
【0101】
次に、ステップS705において、電力変換装置パワー素子破壊検出部12が、指標データと規定値との大小関係に基づいて、パワー素子の破壊の有無を検出する。指標データが規定値を超えている場合には、ステップS706において、電力変換装置パワー素子破壊検出部12がパワー素子はオープン破壊していると判定する。一方、指標データが規定値以下である場合には、電力変換装置パワー素子破壊検出部12がパワー素子はオープン破壊していないと判定し、ステップS701に戻って新たな電流指令値に基づいてパワー素子の破壊の有無の判定を継続して行う。
【0102】
以上のように、本発明の実施例7に係るモータ制御装置によれば、電流偏差等にフィルタを掛けて計算した指標データに基づいて、パワー素子の破壊の有無を判定しているので、電流指令値が大きく変動した場合や、検出した電流値に大きなノイズが重畳した場合であっても、パワー素子のオープン破壊を誤検出することなく、正確に判定することができる。