(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記他機異常情報取得手段が取得する他機異常情報は、該他機異常情報を出力した制御装置を特定する異常発生元特定情報を含むことを特徴とする請求項1記載の複数の射出装置を備えた射出成形機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1〜3に開示されている技術は、複数の射出装置を用いて一体の成形品を成形することについては開示されているものの、異常が生じたときの処理については記載されていない。そのため、異常が起きたときに異常が起きた射出装置自体を停止しても、他の射出装置については適切な処理を行なわないために、他の射出装置の駆動により想定外の成形品が成形されてしまうおそれがあった。
【0006】
そこで本発明は、複数の射出装置を備えた射出成形機に異常が発生した場合に、適切な処理によって射出成形機を停止させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の請求項1に係る発明では、複数の射出装置と、前記複数の射出装置のそれぞれに対応する複数の制御装置とを備えた射出成形機であって、前記複数の制御装置を構成するそれぞれの制御装置は、前記制御装置に対応する射出装置の異常を検出する異常検出手段と、該異常検出手段によって検出した異常の種類に対応する異常情報を出力する異常情報出力手段と、前記複数の制御装置に含まれる、前記制御装置以外の他の制御装置の異常情報出力手段が出力した異常情報を他機異常情報として取得する他機異常情報取得手段と、を備え、該他機異常情報取得手段が前記他機異常情報を取得すると、予め設定された他機異常情報に対応する異常処理設定に基づいて異常処理を行うことを特徴とする複数の射出装置を備えた射出成形機が提供される。
【0008】
請求項1に係る発明では、異常発生時に、射出成形機を構成する他の射出装置の制御装置に対して異常情報を出力して、異常情報を受け取った他の射出装置の制御装置は、予め設定された他機異常情報に対応する異常処理設定に基づいて異常処理を行うようにしたことによって、射出成形機において異常が発生したときに、異常が発生した射出装置以外の射出装置が駆動を続けて想定外の成形品が成形されてしまったり、不適切な停止がされることでその後の復旧作業に手間取ったり、さらに別の問題を引き起こしたりするといったことを防ぐことが可能となる。
【0009】
本願の請求項2に係る発明では、複数の射出装置と、前記複数の射出装置のそれぞれに対応する複数の制御装置とを備えた射出成形機であって、前記複数の制御装置を構成するそれぞれの制御装置は、前記制御装置に対応する射出装置の異常を検出する異常検出手段と、該異常検出手段によって検出した異常の種類に対応する異常処理情報を、予め設定された異常の種類に対応する異常処理設定から読みだして出力する異常処理情報出力手段と、前記複数の制御装置に含まれる、前記制御装置以外の他の制御装置の異常情報出力手段が出力した異常処理情報を他機異常処理情報として取得する他機異常処理情報取得手段と、を備え、該他機異常処理情報取得手段が前記他機異常処理情報を取得すると、該他機異常処理情報に基づいて異常処理を行うことを特徴とする複数の射出装置を備えた射出成形機が提供される。
【0010】
請求項2に係る発明では、異常発生時に、射出成形機を構成する他の射出装置の制御装置に対して異常処理情報を出力して、異常処理情報を受け取った他の射出装置の制御装置は、受け取った異常処理情報に基づいて異常処理を行うようにしたことによって、射出成形機において異常が発生したときに、異常が発生した射出装置以外の射出装置が駆動を続けて想定外の成形品が成形されてしまったり、不適切な停止がされることでその後の復旧作業に手間取ったり、さらに別の問題を引き起こしたりするといったことを防ぐことが可能となる。
【0011】
本願の請求項3に係る発明では、前記他機異常情報取得手段が取得する他機異常情報は、該他機異常情報を出力した制御装置を特定する異常発生元特定情報を含むことを特徴とする請求項1記載の複数の射出装置を備えた射出成形機が提供される。
請求項3に係る発明では、他機異常情報が、それを出力した制御装置を特定する異常発生元特定情報を含むようにしたことによって、射出装置毎に異なる異常処理を行う必要がある場合などに、異常情報がいずれの射出装置から出力されたのかを特定することが可能となる。
【発明の効果】
【0012】
本発明により、複数の射出装置を備えた射出成形機に異常が発生した場合に、適切な処理によって射出成形機を停止させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について図面に基づいて説明する。
図2は、本実施形態の複数の射出装置を備えた射出成形機の構成図であり、
図1は、
図2に示されているそれぞれの射出成形機の構成図である。射出成形機は一般に機台上に射出装置と型締装置とを備えており、
図1においては、そのうちの射出装置に相当する射出機構部1と、その射出機構部を全体的に制御する制御装置10について記載されている。
【0015】
射出機構部1においては、スクリュ4が挿入されたシリンダ2の先端にノズル3が装着され、シリンダ2の後端部には樹脂ペレットをシリンダ2に供給するホッパ5が取り付けられている。また、スクリュ4を軸方向に駆動する駆動手段としての射出用サーボモータM1、伝動機構8等が備えられており、これらの射出用サーボモータM1、伝導機構8等によってスクリュ4は軸方向に駆動され、射出及び背圧制御がなされる。また、スクリュ4を回転させるための回転駆動手段としてのサーボモータM2と、ベルト、プーリ等で構成される伝動機構7が備えられており、これらのサーボモータM2、ベルト、プーリ等で構成される伝導機構7によってスクリュ4が回転駆動されるようになっている。
【0016】
射出用サーボモータM1、スクリュ回転用サーボモータM2には、それぞれ、その回転位置・速度を検出する位置・速度検出器Penc1、位置・速度検出器Penc2が取り付けられている。これら位置・速度検出器Penc1,Penc2によって、スクリュ4の位置(スクリュ軸方向の位置)、移動速度(射出速度)、スクリュ4の回転速度を検出できる。また、スクリュ4に加わる溶融樹脂からのスクリュ軸方向に受ける力を検出するロードセル等の力検出器6が設けられている。
【0017】
PMCCPU17には、射出成形機のシーケンス動作を制御するシーケンスプログラム等を記憶したROM18および演算データの一時記憶等に用いられるRAM19が接続されている。CNCCPU20には、射出成形機を全体的に制御する自動運転プログラム等を記憶したROM21および演算データの一時記憶等に用いられるRAM22が接続されている。
【0018】
サーボCPU15には、位置ループ、速度ループ、電流ループの処理を行うサーボ制御専用の制御プログラムを格納したROM13やデータの一時記憶に用いられるRAM14が接続されている。更に、サーボCPU15には、サーボCPU15からの指令に基づいて、射出用サーボモータM1を駆動するサーボアンプ11や、スクリュ回転用サーボモータM2を駆動するサーボアンプ12が接続されている。
【0019】
各サーボモータM1,M2には、前述したように、それぞれ位置・速度検出器Penc1,Penc2が取り付けられている。これら位置・速度検出器Penc1,Penc2からの出力が、サーボCPU15にフィードバックされる。サーボCPU15は、CNCCPU20から指令される各軸(射出用サーボモータM1、または、スクリュ回転用サーボモータM2)への移動指令と位置・速度検出器Penc1、位置・速度検出器Penc2からフィードバックされる検出位置と検出速度に基づいて、位置、速度のフィードバック制御を行うとともに、電流フィードバック制御も実行して、射出用サーボモータM1を駆動するサーボアンプ11、及び、スクリュ回転用サーボモータM2を駆動するサーボアンプ12を駆動制御する。
【0020】
また、位置・速度検出器Penc1からの位置フィードバック信号により、スクリュ4の前進位置(軸方向位置)を求める現在位置レジスタが設けられており、該現在位置レジスタによりスクリュ位置を検出できるように構成されている。また、サーボCPU15には、力検出器6での検出信号をA/D変換器16でデジタル信号に変換した樹脂圧力(スクリュにかかる樹脂圧力)が入力されている。
【0021】
液晶表示装置などで構成される表示装置を有するLCD/MDI(表示装置付き入力装置)25は、LCD表示回路24を介してバス26に接続されている。さらに、不揮発性メモリで構成される成形データ保存用RAM23もバス26に接続されている。この成形データ保存用RAM23には射出成形作業に関する成形条件と各種設定値、パラメータ、マクロ変数等が記憶されている。
また、通信回線との信号の送受信を制御する通信制御部27、及び、入出力信号を制御するI/O制御部28も設けられ、いずれもバス26に接続されている。
【0022】
以上の構成により、PMCCPU17が射出成形機全体のシーケンス動作を制御し、CNCCPU20がROM21の運転プログラムや成形データ保存用RAM23に格納された成形条件等に基づいて各軸のサーボモータM1,M2に対して移動指令の分配を行ない、サーボCPU15は、各軸(射出用サーボモータM1やスクリュ回転用サーボモータM2)に対して分配された移動指令と、位置・速度検出器Penc1,Penc2で検出された位置および速度のフィードバック信号等に基づいて、従来と同様に位置ループ制御、速度ループ制御、さらには電流ループ制御のサーボ制御を行い、いわゆるデジタルサーボ処理を実行する。
【0023】
射出成形機における成形動作工程には、大きく分けて、型締装置において金型を閉じ型締めを行う型閉工程、射出装置においてスクリュを前進させて溶融樹脂を金型内に射出し充填させる射出工程、溶融樹脂が金型内に充填された後、金型内の樹脂の圧力を制御する保圧工程、金型内の樹脂を冷却する冷却工程、スクリュに背圧をかけながら回転させて樹脂を溶融させ、該溶融樹脂を計量する計量工程、計量終了後から射出開始までの間においてスクリュ4を軸方向に移動させて圧力制御を行う予備射出工程、型締装置において金型を開く型開工程、金型内から成形品を突き出して取り出す突出工程(エジェクト工程)等がある。そして、一般に、射出成形機のスクリュ動作の制御方法として、射出開始から所定のスクリュ位置に到達するまではスクリュ位置・速度制御を行い、所定のスクリュ位置(射出保圧切替位置)に到達した後は圧力制御に切替えて、保圧を行う制御方法が広く採用されている。
本発明によれば、射出・保圧工程においては、前記力検出器6を用いて検出した力検出値に基づいて圧力制御を行うため、信号検出の応答速度に遅れを生じること無く、高応答な圧力制御を行うことができる。
【0024】
図2は、先に説明したとおり、本実施形態の複数の射出装置を備えた射出成形機の構成図である。それぞれの射出機構部(1,101)及び制御装置(10,110)の構成はいずれも同じであり、制御装置10の通信制御部27と制御装置110の図示しない通信制御部の間は通信回線によって接続されており、制御装置10のI/O制御部28と制御装置110の図示しないI/O制御部との間は入出力信号が入出力する構成とされている。
【0025】
それぞれのサーボモータ(M1,M2)に設けられている位置・速度検出器(Penc1,Penc2)は動作中に位置や速度に異常が検出された場合には異常信号を出力する。また、力検出器6についても、スクリュ4が動作中に圧力の異常が検出された場合には異常信号を検出する。
さらに、それぞれのサーボモータ(M1,M2)を駆動するサーボアンプ(11,12)には、サーボモータ(M1,M2)を駆動する電流を検出する図示しない電流検出器が備えられていて、電流のフィードバック制御を行うとともに、サーボモータ(M1,M2)が回転中に電流の異常が検出された場合には、異常信号を出力する。
【0026】
また、射出装置のシリンダ2には樹脂を溶融する図示しないヒータ及び実温度を検出する熱電対が設けられており、設定温度にしたがって温度制御を行うとともに、実温度が規定範囲を超えた場合には異常信号を出力する。このように、射出装置には様々な検出器が備えられていて、異常を検出して異常信号を出力している。
【0027】
図4(a)は、本実施形態において、射出装置の制御装置(10,110)が、当該制御装置(10,110)に対応する射出装置から異常信号を検出したときの異常処理設定を示した図である。
図4(a)に示されているように、射出装置で発生した異常情報の種類に応じて、設定された異常処理を実行する。
【0028】
本実施形態においては、各制御装置(10,110)において当該制御装置(10,110)に対応する射出装置から異常信号を検出して、
図4(a)に示されているようにあらかじめ設定された異常の種類に対応した異常処理の設定にしたがって異常処理を実施し、同時に、検出した異常信号を他の射出装置の制御装置に送信する。射出機構部の制御装置間の信号の入出力手段としては、
図3(a)に示されているように、リレーや半導体出力などによる電気的な信号を、I/O制御部28経由で入出力することもできるし、
図3(b)に示されているように、射出装置間を通信回線40で接続して、通信制御部27経由でデータを入出力するようにしてもよい。
なお、射出装置毎に異なる異常処理を行う必要が有り、異常情報がいずれの射出装置から出力されたのかを特定する必要がある場合には、射出装置毎に付与されたID等の射出装置特定情報(異常発生元特定情報)を異常情報に含めて異常信号として出力するようにしてもよい。
【0029】
一方、他の射出装置からの異常信号を受信した射出装置は、
図4(b)に示されているようにあらかじめ設定された他の射出装置の異常情報ごとの異常処理の設定に基づいて異常処理を行う。異常処理には、
図4(b)に示されている射出圧力の過大、樹脂のなくなり、加熱シリンダ温度の過大、射出圧力の規定値からのはずれに加えて、瞬時の運転停止、その成形サイクル終了後の運転停止、ヒータのオフ、ヒータ設定温度の低温への変更、射出装置の後退、樹脂の排出、アラームランプやブザーなどの警報出力、画面への異常情報の表示、不良品信号の出力などがある。これらの異常処理はそれぞれの異常処理を単独で適用してもよいし、複数を組み合わせて適用させてもよい。
【0030】
次に、
図4に基づいて、本発明で異常が検出された際の異常処理の具体的な事例を説明する。以下の説明では、2つの射出装置を備えた射出成形機において、それぞれの射出装置を第1の射出装置および第2の射出装置と呼ぶこととする。
第1の事例は射出圧力が過大になった場合である。第1の射出装置において射出中の圧力が過大になった場合に、さらに第2の射出装置が射出を行うと、圧力が過大になり金型を破損する可能性がある。そのため、
図4に示されているように、第1の射出装置を瞬時に運転停止して警報出力を行うとともに、第2の射出装置は射出を開始しないようにしている。
【0031】
第2の事例は樹脂がなくなった場合である。第1の射出装置において樹脂がなくなった場合には、第2射出装置を即座に停止しなくても金型の破損等の問題は発生しない。そのため、
図4に示されているように、第1の射出装置をその成形サイクルが終了した時点で運転を停止させ、ヒータの設定温度を低温に変更して警報出力を行う。それとともに、第2の射出装置もその成形サイクルを終了後に運転を停止してヒータをオフとする。この事例の場合には、さらに第1、第2の射出装置をそれぞれ後退させて、樹脂の準備ができるまでそれぞれの加熱シリンダの温度を下げたり、樹脂を排出するなどして、加熱シリンダ内の樹脂劣化を防止するようにしてもよい。
【0032】
次に本実施形態の動作について、
図5のフローチャートに基づいてステップ毎に説明する。
・(ステップSA1)射出装置において異常が発生したかどうかを判定する。発生した場合(YES)はステップSA2に進み、発生していない場合(NO)にはステップSA4に進む。
・(ステップSA2)異常の種類に応じて制御装置から異常信号により異常情報を出力する。
【0033】
・(ステップSA3)制御装置のメモリに記憶された処理設定(
図4(a))に従って、射出装置の異常処理を行って、運転を終了する。
・(ステップSA4)制御装置に対して、他の射出装置の制御装置から異常信号により異常情報が入力されたかどうかを判定する。入力された場合(YES)はステップSA5に進み、入力されていない場合(NO)はステップSA1に戻る。
・(ステップSA5)制御装置のメモリに記憶された処理設定(
図4(b))に従って、射出装置の異常処理を行って、運転を終了する。
【0034】
先の実施形態においては、制御装置(10,110)が異常信号を検出すると、
図3に示したような手法で制御装置間で異常信号により異常情報を入出力し、各制御装置上で異常信号の異常情報に基づく異常処理を行うようにしているが、別の実施形態としては、異常信号によって異常情報を送受信する代わりに、異常の種類に応じた異常処理を異常信号によって入出力するようにしてもよい。
【0035】
本実施形態の場合、各射出装置の制御装置には、制御装置に対応する射出装置に異常が発生したときの
図4(a)の表、および他の射出装置異常が発生したときの
図4(b)の表の両方の設定を記憶しておく。そして、制御装置において射出装置において発生した異常を検出すると、
図4(a)の表に従って当該射出装置に対して異常処理を行うとともに、
図4(b)の表に基づいて、検出した異常の種類に対応する他の射出装置の異常処理情報を読み出して出力する。そして、異常処理情報を他の射出装置から取得した射出装置の制御装置は、取得した異常処理情報に基づいて異常処理を行えばよい。なお、射出装置毎に異なる異常処理を行う必要が有り、異常情報がいずれの射出装置から出力されたのかを特定する必要がある場合には、射出装置毎に付与されたID等の射出装置特定情報(異常発生元特定情報)を異常情報に含めるようにしてもよい。
【0036】
次に本実施形態の動作について、
図6のフローチャートに基づいてステップ毎に説明する。
・(ステップSB1)射出装置において異常が発生したかどうかを判定する。発生した場合(YES)はステップSB2に進み、発生していない場合(NO)にはステップSB5に進む。
・(ステップSB2)異常の種類に応じて制御装置から異常信号により異常処理情報を出力する。
・(ステップSB3)異常処理情報に従って、射出装置の異常処理を行う。
【0037】
・(ステップSB4)他の射出装置の制御装置に対して異常処理情報を出力する。
・(ステップSB5)制御装置に対して、他の射出装置の制御装置から異常信号により異常処理情報が入力されたかどうかを判定する。入力された場合(YES)はステップSB6に進み、入力されていない場合(NO)はステップSB1に戻る。
・(ステップSB6)異常処理情報に従って、射出装置の異常処理を行う。
【解決手段】複数の射出装置を備えた射出成形機において、異常が検出された場合には、他の射出装置にも異常情報を出力する。他の射出装置からの異常情報を取得した射出装置は、予め設定された設定された他機異常情報に対応する異常処理設定に基づいて異常処理を行う。これにより、射出成形機において異常が発生したときに、異常が発生した射出装置以外の射出装置が駆動を続けて想定外の成形品が成形されてしまったり、不適切な停止がされることでその後の復旧作業に手間取ったり、さらに別の問題を引き起こしたりするといったことを防ぐことが可能となる。