(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
熱伝達システム中に含まれている現行の熱伝達流体を置き換える方法であって、該現行の熱伝達流体の少なくとも一部を該システムから取り除くこと、ここで該現行の熱伝達流体がHFC−404Aである;および
(a)25重量%のHFC−32;
(b)25重量%のHFC−125;
(c)20重量%〜30重量%のHFO−1234yf;および
(d)20重量%〜35重量%のHFC−134a;
からなる熱伝達組成物であって、該重量%が組成物中の成分(a)〜(d)の総重量を基準とし、HFC−134aとHFO−1234yfとの比が5:7〜1:1である、熱伝達組成物
を該システム中に導入することによって、該現行の熱伝達流体の少なくとも一部を置き換えること;を含む、上記方法。
【背景技術】
【0003】
機械的冷却システムとそれに関連した熱伝達デバイス(例えば、冷媒液を使用するヒー
トポンプと空調装置)は、工業的用途、商業的用途、および家庭的用途向けとして、当業
界によく知られている。フルオロカーボン系の流体は、空調システム、ヒートポンプシス
テム、および冷却システム等のシステムにおける作動流体としての用途を含めて、多くの
住宅用途、商業的用途、および工業的用途において広く使用されている。従来よりこれら
の用途に利用されている組成物の幾つかの使用に伴う比較的高い地球温暖化係数などの、
懸念されている特定の環境問題のために、オゾン層破壊と地峡温暖化係数の低い(さらに
はゼロの)流体〔例えばハイドロフルオロカーボン(“HFC”)〕を使用することが益
々望まれるようになっている。例えば、多くの政府が、地球環境を保護するための京都議
定書に署名し、CO
2排出(地球温暖化)の削減を表明した。したがって、地球温暖化係
数の高い特定のHFCに置き換えるための、低可燃性もしくは不燃性で非毒性の代替品が
求められている。
【0004】
冷却システムの1つの重要なタイプが“低温冷却システム”として知られている。この
ようなシステムは、消費者に届く食品を新鮮で食用に適した状態におくことを保証する上
で極めて重要な役割を果たすという点で、食品製造業、食品流通業、および食品小売業に
とって特に重要である。このような低温冷却システムにおいて、一般的に使用されている
冷媒液はHFC−404A(HFC−125:HFC−143a:HFC−134aの約
44:52:4重量比での組み合わせ物を、当業界ではHFC−404AまたはR−40
4Aと呼ぶ)である。R−404Aは、3922という高い推定地球温暖化係数(GWP
)を有する。
【0005】
したがって、新たなフルオロカーボン化合物とハイドロフルオロカーボン化合物、およ
びこれらの用途や他の用途において従来使用されている組成物に替わる魅力ある代替品と
なる新たな組成物が益々求められている。例えば、塩素含有冷媒を、オゾン層を激減させ
ない塩素非含有冷媒化合物[例えば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)〕で置き換え
ることによって塩素含有冷媒システムを改良することが望ましくなってきている。産業界
(特に熱伝達業界)は一般に、CFCやHCFCの代替品となるような、そして環境面で
より安全な、CFCやHCFCの代替品と見なされるような、新たなフルオロカーボンベ
ースの混合物を絶えず求めている。しかしながら一般的には(少なくとも熱伝達流体に関
して)、任意の有望な代替品は、最も広く使用されている流体の多くに存在する特性(例
えば、優れた熱伝達性、化学的安定性、低毒性もしくは無毒性、不燃性、及び/又は、潤
滑油との相容性など)を有していなければならないということが重要であると考えられて
いる。
【0006】
使用時の効率に関して、冷媒の熱力学的性能またはエネルギー効率の低下が、電気エネ
ルギーに対する需要増大から生じる化石燃料使用量の増大によって二次的な環境影響をも
たらすことがある、という点に留意することが重要である。
【0007】
さらに、望ましいことに、CFC冷媒代替品は、CFC冷媒と共に現在使用されている
従来の蒸気圧縮技術を大きく技術的な変更を加えなくても有効である、と一般的には考え
られている。
【0008】
燃焼性が、多くの用途に対するもう一つの重要な特性である。すなわち、不燃性の組成
物を使用することが、特に熱伝達用途を含めた多くの用途において重要もしくは必須であ
ると考えられる。したがって、このような組成物においては、不燃性である化合物を使用
するのが有益であることが多い。本明細書で使用している“不燃性”という用語は、20
02年のASTM基準E−681(参照により本明細書に含める)に従って不燃性である
と決定される化合物または組成物を表わしている。残念なことに、冷媒組成物中に使用す
るのが望ましい多くのHFCは、不燃性ではない。例えば、フルオロアルカンであるジフ
ルオロエタン(HFC−152a)とフルオロアルケンである1,1,1−トリフルオロ
プロペン(HFO−1243zf)はいずれも可燃性であり、したがって多くの用途に使
用するのには実行不可能である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特定の好ましい実施態様では、組成物は、組成物中の成分(a)〜(e)の総重量を基
準して、(a)約15重量%〜約25重量%のHFC−32;(b)約10重量%〜約3
0重量%のHFC−125;(c)約20重量%〜約50重量%のHFO−1234ze
、HFO−1234yf、およびこれらの組み合わせ物;(d)約15重量%〜約35重
量%のHFC−134a;および必要に応じて(e)最大約5重量%までのCF
3Iと最
大約5重量%までのHFCO−1233ze;で構成される多成分混合物を含む。
【0012】
本発明はさらに、熱伝達のための、そして現行の熱伝達システムを改良するための方法
とシステムを含む、本発明の組成物を使用する方法とシステムを提供する。本発明の特定
の好ましい方法態様は、比較的低温の冷却(例えば、低温冷却システムの場合)を提供す
る方法に関する。本発明の方法の別の態様は、R−404A冷媒を含有するように設計さ
れた現行の低温冷却システム、及び/又は、R−404A冷媒を含有している現行の低温
冷却システムを改良する方法を提供する。該方法は、本発明の組成物を、該現行冷却シス
テムの実質的な技術変更なしにシステム中に導入することを含む。
【0013】
“HFO−1234ze”という用語は、ここでは1,1,1,3−テトラフルオロプ
ロペンを総称的に表わすのに使用される(cis体またはtrans体に関係なく)。“
cisHFO−1234ze”および“transHFO−1234ze”という用語は
、ここでは1,1,1,3−テトラフルオロプロペンのそれぞれcis体とtrans体
を表わすのに使用される。したがって“HFO−1234ze”という用語は、その範囲
内に、cisHFO−1234ze、transHFO−1234ze、ならびにこれら
の全ての組み合わせ物と混合物を含む。
【0014】
“HFO−1233”という用語は、ここでは全てのトリフルオロモノクロロプロペン
を表わすのに使用される。トリフルオロモノクロロプロペンには、1,1,1−トリフル
オロ−2−クロロプロペン(HFCO−1233xf)、ならびにcis−およびtra
ns−1,1,1−トリフルオロ−3−クロロプロペン(HFCO−1233zd)が含
まれる。“HFCO−1233zd”という用語は、ここではcis体またはtrans
体にかかわらず1,1,1−トリフルオロ−3−クロロプロペンを総称的に表わすのに使
用される。“cisHFCO−1233zd”および“transHFCO−1233z
d”という用語は、ここではそれぞれ1,1,1−トリフルオロ−3−クロロプロペンの
cis体とtrans体を表わすのに使用される。したがって“HFCO−1233zd
”という用語は、その範囲内に、cisHFCO−1233zd、transHFCO−
1233zd、ならびにこれらの全ての組み合わせ物と混合物を含む。
【0015】
低温冷却システムは多くの用途(例えば、食品製造業、食品流通業、および食品小売業
)において重要である。このようなシステムは、消費者に届く食品を新鮮で食用に適した
状態におくことを保証する上で極めて重要な役割を果たす。このような低温冷却システム
において、一般的に使用されている冷媒液の1つがHFC−404Aであり、これは39
22という高い推定地球温暖化係数(GWP)を有する。本発明の組成物は、より低いG
WP値を示し、同時に冷却容量及び/又は効率の点でこうしたシステムでのHFC−40
4Aとほぼ同等の、実質的に不燃性で無毒性の流体を提供する、という上記用途における
冷媒(具体的にはそして好ましくはHFC−404A)に対する代替品及び/又は代用品
のニーズを、非常に優れたやり方で且つ予想外のやり方で満足させることを出願者らは見
出した。
【0016】
熱伝達組成物
本発明の組成物は、一般的には、熱伝達用途に(すなわち、加熱及び/又は冷却媒体と
して)使用することができるが、上記のように、これまでHFC−404Aを使用してき
た低温冷却システム、及び/又は、これまでR−22を使用してきたシステムでの使用に
対して特によく適合している。
【0017】
本発明の成分を、本明細書に記載の広汎且つ好適な範囲内において使用することが、現
行組成物によって示されている特性の有利であるが達成困難な組み合わせを、特に、好ま
しいシステムおよび方法において実現するためめに重要であること、そして同一の成分で
はあるが、これらを該特定範囲の実質的に外側で使用すると、本発明の組成物、システム
、または方法の重要な特性の1つ以上に悪影響を及ぼすことがある、ということを出願者
らは見出した。極めて好ましい特性組み合わせは、HFC−32:HFC−125の重量
比が約0.9:1.2〜約1.2:0.9である組成物にて達成され、特定の実施態様で
は約1:1の比が好ましい。極めて好ましい特性組み合わせはさらに、HFO−1234
ze:HFO−1234yfの重量比が約5:1〜約3:1である組成物によって達成さ
れ、特定の実施態様では約4:1の比が好ましい、ということを出願者らは見出した。
【0018】
便宜上、HFO−1234zeとHFO−1234yfとの組み合わせ物を、ここでは
“テトラフルオロプロペン成分”または“TFC”と称するが、特定の実施態様において
は、極めて好ましい特性組み合わせは、HFC−134a:TFCの重量比が約5:7〜
約1:1である組成物によって達成することができ、特定の実施態様では約4:6の比が
好ましい。
【0019】
HFO−1234zeのどちらの異性体も、本発明の特定の態様において役立つように
使用することができると考えられているが、HFO−1234zeがtransHFO−
1234zeを含み、好ましくはtransHFO−1234zeを過半量にて含み、そ
して特定の実施態様では実質的にtransHFO−1234zeからなることが好まし
い、ということを出願者らは見出した。
【0020】
上記のとおり、本発明の組成物は、達成困難な特性の組み合わせ(特に低GWPを含む
)を達成することができる、ということを出願者らは見出した。非限定的な例として、下
記の表Aは、HFC−404AのGWP(3922というGWPを有する)と比べて、本
発明の特定の組成物によって示されるGWPが実質的に改善されたことを示す。
【0022】
本発明の組成物は、組成物の特定の機能を高めるために、あるいは組成物に特定の機能
を付与するために、あるいは場合によっては、組成物のコストを低減させるために、他の
成分を含んでよい。例えば、本発明による冷媒組成物(特に、蒸気圧縮システムにおいて
使用される冷媒組成物)は、潤滑剤(lubricant)を、一般的には組成物の約3
0重量%〜約50重量%の量、場合によっては約50重量%を超える量で、そして別の場
合には約5重量%という少量で含む。本発明の組成物はさらに、潤滑剤の相溶性及び/又
は溶解性を高めるために、プロパン等の相溶化剤を含んでよい。プロパン、ブタン、およ
びペンタンを含めたこのような相溶化剤は、組成物の約0.5重量%〜約5重量%の量で
存在することが好ましい。米国特許第6,516,837号明細書(該特許文献の開示内
容を参照より本明細書に含める)に開示されているように、界面活性剤と可溶化剤との組
み合わせ物を本発明の組成物に加えて、油溶性を高めることもできる。一般的に使用され
ている冷却潤滑剤[例えば、ハイドロフルオロカーボン(HFC)冷媒と共に冷却機械装
置において使用されるポリオールエステル(POE)、ポリアルキレングリコール(PA
G)、PAG油、シリコーン油、鉱油、アルキルベンゼ(AB)、およびポリ(α−オレ
フィン)(PAO)等]を本発明の冷媒組成物と共に使用することができる。商業的に入
手可能な鉱油としては、Witco社から商業的に入手可能であるWitoco LP2
50(登録商標)、Shrieve Chemical社から市販のZerol 300
(登録商標)、Witco社から市販のSunisco 3GS、およびCalumet
社から市販のCalumet R015などがある。商業的に入手可能なエステルとして
は、ネオペンチルグリコールジペラルゴネート[Emery2917(登録商標)として
入手可能〕やHatcol2370(登録商標)などがある。他の有用なエステルとして
は、リン酸エステル、二塩基酸エステル、およびフルオロエステルなどがある。幾つかの
ケースでは、炭化水素油は、ヨードカーボンで構成される冷媒に対して十分な溶解性を有
し、ヨードカーボンと炭化水素油との組み合わせ物は、他のタイプの潤滑油より安定であ
ると思われる。したがって、このような組み合わせ物が有利である場合がある。好ましい
潤滑油としては、ポリアルキレングリコールとエステルがある。ポリアルキレングリコー
ルは、可動性の空調等の特定の用途に現在使用されているので、特定の実施態様において
特に好ましい。当然ながら、異なるタイプの潤滑剤の種々の混合物を使用することができ
る。
【0023】
本明細書に記載の開示内容を考慮して、当業者によっては、本発明の新規で基本的な特
徴を逸脱せずに、本明細書に記載されていない他の添加剤も含めることができる。
熱伝達方法と熱伝達システム
したがって、本発明の方法、システム、および組成物は、さまざまの一般的な熱伝達シ
ステムおよび特定の冷却システム[例えば、空調システム(固定空調システムとモバイル
空調システムを含む)、冷却システム、およびヒートポンプシステム等]と接続して使用
するように調整することができる。特定の好ましい実施態様では、本発明の組成物は、H
FC冷媒(例えばR−404)と共に使用するよう最初に設計された冷却システムにおい
て使用される。本発明の好ましい組成物は、R−404Aの望ましい特性の多くを示す傾
向があるが、R−404AのGWPより実質的に低いGWPを有すると共に、R−404
Aと実質的に同等であるか、あるいはR−404Aに匹敵する容量及び/又は効率、そし
て好ましくはR−404Aより高い容量及び/又は効率を有する。特に、本発明の組成物
の特定の好ましい実施態様は、比較的低い地球温暖化係数(GWP)を示す傾向があり、
好ましくは約2500未満であり、さらに好ましくは約2400未満であり、さらに好ま
しくは約2300以下である、ということを出願者らは認めた。特定の実施態様では、本
発明の組成物は、約1500以下のGWPを有し、約1000未満のGWPを有するのが
さらに好ましい。
【0024】
他の特定の実施態様では、本発明の組成物は、R−404Aが組み込まれている冷却シ
ステム、及び/又は、最初からR−404Aと共に使用するように設計されている冷却シ
ステムにおいて使用される。本発明の好ましい冷却組成物は、従来R−404Aと共に使
用されている潤滑剤(例えば、鉱油、ポリアルキルベンゼン油、およびポリアルキレング
リコール油等)を含む冷却システムにおいて使用することもできるし、あるいは、従来H
FC冷媒と共に使用されている他の潤滑剤と共に使用することもできる。本明細書で使用
されている「冷却システム」という用語は、一般的には、冷却を実現するために冷媒を使
用する任意のシステムもしくは装置、またはこのようなシステムもしくは装置の任意の部
位もくしは部分を表わす。このような冷却システムとしては、例えば、空調装置、電気冷
蔵庫、および冷却装置(遠心圧縮機を使用する冷却装置を含む)などがある。
【0025】
前述したように、本発明は、低温冷却システムとして知られているシステムと接続する
と、ひときわ優れた利点を達成する。本明細書で使用されている「低温冷却システム」と
いう用語は、1つ以上の圧縮機と約35℃〜約45℃の凝縮器温度を使用する蒸気圧縮冷
却システムを表わす。このようなシステムの好ましい実施態様では、システムは、約−2
5℃〜約−35℃の蒸発器温度を有し、好ましい蒸発器温度は約−32℃である。さらに
、このようなシステムの好ましい実施態様では、システムは、蒸発器出口において約0℃
〜約10℃の過熱度(a degree of superheat)を有し、蒸発器出口での好ましい過熱度
は約4℃〜約6℃である。さらに、このようなシステムの好ましい実施態様では、システ
ムは、吸引ラインにおいて約15℃〜約25℃の過熱度を有し、吸引ラインにおける好ま
しい過熱度は約20℃〜約25℃である。
【実施例】
【0026】
下記の実施例は、本発明を例証するために挙げてあり、これらの実施例によって本発明
の範囲が限定されることはない。
実施例1:性能パラメーター
性能係数(COP)は、冷媒性能の広く受け入れられている尺度であり、冷媒の蒸発と
凝縮を含む特定の加熱・冷却サイクルにおける冷媒の相対的熱力学効率を表わす際に特に
有用である。冷却工学においては、この用語は、有用な冷却と、蒸気を圧縮する際に圧縮
機によって加えられるエネルギーとの比を表わす。冷媒の容量(capacity)は、蒸気を冷
却または加熱する量を表わし、冷媒の所定の体積流量に対する熱量をポンプ移送するため
の圧縮機の能力の尺度を提供する。言い換えると、ある特定の圧縮機が与えられたときに
、より高い容量を有する冷媒は、より高い冷却もしくは加熱能力を供給する。特定の作動
条件での冷媒のCOPを見積もる1つの方法は、標準的な冷却サイクル分析法を使用して
冷媒の熱力学的特性を求めるという方法である(例えば、R.C.Downing,FL
UOROCARBON REFRIGERANTS HANDBOOK,Chapter
3,Prentice−Hall,1988を参照)。
【0027】
低温冷却システムが提供される。本実施例に示すようなシステムの場合は、凝縮器温度
を40.55℃(一般には、約35℃の出口温度に相当する)に設定する。膨張装置入口
の過冷却度を5.55℃に設定する。蒸発温度を−31.6℃(約−26℃のボックス温
度に相当する)に設定する。蒸発器出口での過熱度を5.55℃に設定する。吸引ライン
における過熱度を13.88℃に設定し、圧縮機効率を65%に設定する。接続ラインに
(吸引ラインと液体ライン)おける圧力降下と熱伝達はごくわずかであると考えられ、圧
縮機シェルを介しての熱放散は無視する。上記表Aに記載の本発明による組成物A1〜A
6について幾つかの作動パラメーターを決定し、これらの作動パラメーターを、100%
のCOP値、100%の容量値、および97.6℃の排出温度を有するHFC−404A
を基準にして下記の表1に示す。
【0028】
【表2】
【0029】
表1からわかるように、本発明の組成物は、R−404Aに対するパラメーターに近い
重要な冷却システム性能パラメーター、そして特にこのような組成物を、低温冷却システ
ムでのR−404Aに代わる一時的なの代替品として使用することを可能にするぐらいの
充分に近い、及び/又は、このような現行システムにおいてほんのわずかなシステム変更
を伴って使用することを可能にするぐらいの充分に近い前記パラメータの多くを直ちに達
成することができる、ということを出願者らは見出した。例えば、組成物A1〜A3は、
この低温冷却システムにおいては、R−404Aの容量の約8%以内(さらに好ましくは
約6%以内)の容量と効率(COP)を、そして好ましくはこのような限度内ではあるが
R−404Aの容量より高い容量と効率(COP)を示す。特に、組成物A1〜A3のG
WPが改善されていることを考慮すると、本発明のこれら組成物は、最初からR−404
Aを含む低温冷却システム、及び/又は、R−404Aを含むように設計された低温冷却
システムのための一時的な代替品としての優れた候補材料である。他方、組成物A4〜A
6は、より低い容量(68%〜82%)と優れた効率(9%〜10%高い)を有すると同
時に、GWPの実質的な改善を示す(約1000未満のGWPを有し、全環境影響をでき
るだけ小さくするので好ましい)。本発明の組成物A3〜A6は、最初からR−404A
を含む低温冷却システム、及び/又は、R−404Aを含むように設計された低温冷却シ
ステムを改良する[但し、システムのほんのわずかな調整(例えば、圧縮機や膨張弁等の
特定のシステム成分の幾らかの規模調整)を伴う]ための優れた候補材料である。
【0030】
現行の低温冷却システムの多くは、R−404A用に、あるいはR−404Aと類似の
特性を有する他の冷媒用に設計されているので、当業者は、R−404Aの代替品として
使用できる、低いGWPと優れた効率を有する冷媒、あるいはシステムに対する変更が比
較的わずかで済むような類似冷媒の実質的な有利な点を理解することができるであろう。
さらに、当業者であれば、本発明の組成物が、新たな冷却システムもしくは新たに設計さ
れる冷却システム(好ましくは低温冷却システムを含む)に使用する上で実質的な利点を
提供することができる、ということが理解するであろう。
【0031】
実施例2:改造パラメーター(retrofit parameter)
本発明は、特定の実施態様において、好ましくはシステムを実質的に変更せずに、そし
てさらに好ましくは主要なシステム構成部品(例えば、圧縮機、凝縮器、蒸発器、および
膨張弁等)を全く変えずに現行冷媒の少なくとも一部をシステムから取り除くこと、及び
取り除かれた冷媒の少なくとも一部を本発明の組成物で置き換えることを含む改良方法を
提供するものと考えられている。低温冷却システム(特に、R−404A冷媒を含むか、
またはR−404A冷媒を含むように設計された低温冷却システムを含めて)の特定の特
性により、特定の実施態様においては、このようなシステムが、一時的な冷媒を使用して
信頼性のあるシステム作動パラメーターを示すことができる、ということが重要である。
このような作動パラメーターとしては、以下のものがある:
・R−404Aを使用するシステムの高サイド圧力(high side press
ure)の約105%以内、さらに好ましくは約103%以内の高サイド圧力。このパラ
メーターは、このような実施態様において重要である。なぜなら、このパラメーターによ
り、現行の圧力構成部品の使用が可能となるからである。
【0032】
・適切な大きさのR−404A膨張弁を使用するときに約0℃より高い蒸発器過熱。こ
れにより、現行の弁を置き換える必要なく本発明の組成物の使用が可能となる(これによ
って改造のコストと影響が最小限に抑えられる)。
【0033】
・好ましくは約130℃未満の、そしてさらに好ましくは約125℃未満の排出温度。
このような特性の有利な点は、こうした特性により、システム(圧縮機構成部品を保護す
るように設計されているのが好ましい)の熱保護状況(thermal protect
ion aspects)を活性化することなく現行装置の使用が可能になる、というこ
とである。このパラメーターは、このパラメーターを使用することで、コストのかかる制
御機器(例えば、排出温度を下げるための液体注入機器)の使用が避けられる、という点
において有利である。
【0034】
本発明の前記表Aに記載の組成物A1〜A6に対して、上記の作動パラメーターおよび
他の作動パラメーターを決定し、これらの作動パラメーターを下記の表2に示す。
【0035】
【表3】
【0036】
特定の好ましい実施態様では、システムの実質的な再設計または変更を必要としない、
そして本発明の冷媒を収容するのに装置の主要なアイテムを交換する必要がない、という
意味において代用工程は一時的な代替である。このことは組成物A1〜A3の場合にあて
はまり、組成物A1〜A3は、一般的には、主要構成部品を全く変えることなく、ほとん
どの改造処理手順において使用することができる。組成物A1〜A3の全てにおいて、排
出圧力と排出温度は限度未満であり、膨張弁は、蒸発器の出口において十分な過熱をもた
らす。
【0037】
組成物A4〜A6は、比較的良好な代替品性能をもたらすが、このような組成物を、多
くの低温システムにおいてR−404Aの代替品として使用するには、少なくとも新たな
膨張弁を必要とする。したがってこれらの組成物は、膨張弁及び/又は他の装置の変更が
可能である場合に利益をもたらすであろう。当然ながら、組成物A1〜A6の全てが、新
たな装置で使用する場合に素晴らしい優位性をもたらす。
【0038】
好ましい実施態様に関して本発明を説明してきたが、当業者には周知のように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を行ってよく、また本発明の要素を等価物で置き換えてよい。さらに、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、本発明の開示内容に従って特定の状況または材料に適合するよう多くの改良を加えることができる。したがって、本発明は、開示されている特定の実施態様に限定されず、添付のクレームまたは後で加えられる任意のクレームの範囲内に含まれる全ての実施態様を含む、ということが意図されている。
本発明は以下の態様を含む。
[1]
(a)約10重量%〜約35重量%のHFC−32;(b)約10重量%〜約35重量%のHFC−125;(c)約20重量%〜約50重量%のHFO−1234ze、HFO−1234yf、およびこれらの組み合わせ物;ならびに(d)約15重量%〜約35重量%のHFC−134a;を含み、ここで該重量%が組成物中の成分(a)〜(c)の総重量を基準としている、熱伝達組成物。
[2]
(a)約10重量%〜約30重量%のHFC−32;および(b)約10重量%〜約30重量%のHFC−125;を含む、[1]に記載の熱伝達組成物。
[3]
前記HFO−1234zeがtrans−HFO−1234zeを含む、[1]に記載の熱伝達組成物。
[4]
HFC−32:HFC−125の重量比が約0.9:1.2〜約1.2:0.9である、[1]に記載の熱伝達組成物。
[5]
HFO−1234zeとHFO−1234yfを含む、[1]に記載の熱伝達組成物。
[6]
HFO−1234ze:HFO−1234yfの重量比が約5:1〜約3:1である、[5]に記載の熱伝達組成物。
[7]
熱伝達システム中に含まれている現行の熱伝達流体を置き換える方法であって、該現行の熱伝達流体の少なくとも一部を該システムから取り除くこと、ここで該現行の熱伝達流体がHFC−404Aである;および(a)約10重量%〜約30重量%のHFC−32、(b)約10重量%〜約30重量%のHFC−125、(c)約20重量%〜約50重量%のHFO−1234ze、HFO−1234yf、およびこれらの組み合わせ物、ならびに(d)約15重量%〜約35重量%のHFC−134a、を含む熱伝達組成物を該システム中に導入することによって、該現行の熱伝達流体の少なくとも一部を置き換えること;を含み、ここで該重量%が組成物中の成分(a)〜(c)の総重量を基準としている、上記方法。
[8]
前記熱伝達組成物が、(a)約10重量%〜約30重量%のHFC−32;および(b)約10重量%〜約30重量%のHFC−125;を含む、[7]に記載の方法。
[9]
熱伝達システムであって、流体連通状態にある圧縮機と凝縮器と蒸発器、および該システム中の熱伝達組成物を含み、該熱伝達組成物が、(a)約10重量%〜約30重量%のHFC−32;(b)約10重量%〜約30重量%のHFC−125;(c)約20重量%〜約50重量%のHFO−1234ze、HFO−1234yf、およびこれらの組み合わせ物;ならびに(d)約15重量%〜約35重量%のHFC−134a;を含み、ここで該重量%が組成物中の成分(a)〜(c)の総重量を基準としており、該凝縮器が約35℃〜約45℃の作動温度を有する、上記熱伝達システム。
[10]
前記蒸発器が約−25℃〜約−35℃の作動温度を有する、[9]に記載の熱伝達システム。